説明

フレームレート変換方法、フレームレート変換装置およびフレームレート変換プログラム

【課題】本発明は、高フレームレート映像信号のフレームをダウンサンプリングにより選択することで得られた低フレームレート映像信号を符号化する場合に、符号量を低く抑え、かつ、主観画質の低下を抑えることができるようにする技術の提供を目的とする。
【解決手段】等長間隔のダウンサンプリングにより規定されるフレーム位置にある複数のフレームのそれぞれについて、それよりも前のフレーム位置にある複数のフレームのそれぞれとの間で、低フレームレート映像信号についての符号化効率および主観画質を示す評価尺度を算出し、それに基づいて先頭フレーム位置からの評価尺度の総和を最小化するつながりを持つフレームを特定することを最終フレーム位置まで繰り返す。そして、最終フレーム位置にある複数のフレームの中から、最小の評価尺度の総和を持つフレームを検出し、それを起点としてフレームを辿ることでフレームを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高フレームレート映像信号のフレームをダウンサンプリングにより選択することで低フレームレート映像信号に変換するフレームレート変換方法およびその装置と、そのフレームレート変換方法の実現に用いられるフレームレート変換プログラムとに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、臨場感あふれる大画面のスポーツ映像やデジタルシネマに代表される超高画質映像への期待が高まっている。これを受けて、映像の高画質化に関する研究が精力的に行われている。
【0003】
超高画質映像の実現には次の四要素が必要である。すなわち、空間解像度、画素値深度、色再現性、時間解像度である。これを受けて、前者の三要素については、デジタルシネマ等の応用およびナチュラルビジョンプロジェクトにおいて検討が進められている。また、被写体の自然な動きを表現するために不可欠な時間解像度の向上、すなわち、映像の高フレームレート化についても検討がなされている。
【0004】
1000[frame/sec] を超える高フレームレート映像を撮像可能な高速度カメラがすでに市場に流通している。ただし、こうした高速度カメラで撮像された映像はスロー再生用途で用いられる。映像の入力・出力システムのフレームレートの上限は非対称である。現行のディスプレイの上限は120[fps] 程度であるため、高速度カメラで撮影された映像ソースは、実時間再生を目的とした表示形態ではフレームレートを間引く必要がある。
【0005】
通常、図7に示すように、ダウンサンプリング後のフレーム時間間隔が等間隔になるようにダウンサンプリングが実施される(例えば、特許文献1参照)。これは、非等長間隔な時間サンプリングでは、ジャーキネス(画質劣化)を発生させるという仮定に基づくものである。
【0006】
ダウンサンプリングの対象が低フレームレート映像の場合、この仮定は正しい。しかし、ダウンサンプリングの対象が高フレームレート映像の場合は、その限りではない。ダウンサンプリングの対象が高フレームレート映像の場合、フレームを厳密に等間隔に配置してなくても、等間隔からの乖離が一定閾値以内であれば、視覚的には大きなジャーキネス(画質劣化)を発生しない。
【0007】
したがって、ダウンサンプリングの対象が高フレームレート映像の場合には、ダウンサンプリング後のフレーム間隔に対する等長という制約条件を緩和することができる。この制約条件の緩和により、ダウンサンプリング後のフレーム選択に関する自由度が高くなる。つまり、符号化効率の観点から最適なフレームレートのダウンサンプリング法を検討する余地があることになる。
【0008】
このようなことを背景にして、本発明者は、動き補償予測誤差電力を最小化するように、ダウンサンプリング後のフレームを選択するという方法について検討を行った(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−201165号公報
【非特許文献1】坂東幸浩,高村誠之,上倉一人,八島由幸:“高フレームレート映像信号のダウンサンプリング方法に関する一考察”,画像符号化シンポジウム, p5-02, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したように、ダウンサンプリングの対象が高フレームレート映像の場合には、ダウンサンプリング後のフレーム間隔に対する等長という制約条件を緩和することができ、これにより、ダウンサンプリング後のフレーム選択に関する自由度を高くできる。
【0011】
しかしながら、従来技術では、この点について一切検討を行っておらず、これから、高フレームレート映像に対してのダウンサンプリングにより得られた低フレームレート映像を符号化する場合に、フレーム間予測誤差電力の低減に改善の余地が残されていた。
【0012】
このようなことを背景にして、本発明者は、非特許文献1で、動き補償予測誤差電力を最小化するように、ダウンサンプリング後のフレームを選択するという方法について検討を行ったが、この方法では逐次的に選択フレームを設定しており、シーケンス全体での動き補償予測誤差電力の最小化を保証しておらず、その点から改善の余地が残されている。しかも、この方法ではジャーキネス(画質劣化)の抑圧を考慮しておらず、その点からも改善の余地が残されている。
【0013】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、高フレームレート映像信号に対してのダウンサンプリングにより得られた低フレームレート映像信号を入力とする映像符号化処理において、符号量を低く抑えることができるようにするとともに、主観画質の低下を抑えることができるようにする、新たなフレームレートのダウンサンプリング技術を確立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
〔1〕本発明の基本的な考え方
フレームレートの変換の対象となる高フレームレート映像信号について、フレーム間隔をδt として、時刻t=jδt (j=0, 1, ..... )のフレームにおける位置xの画素値をf(x,t)(x=0, 1, .... ,X−1)と表す。
【0015】
この画素信号f(x,t)を、ダウンサンプリングによりフレーム数を1/Mに変換する場合を考える。ダウンサンプリング前後のフレームレートの比Mをダウンサンプリング比と呼ぶ。つまり、この変換は、フレームレートを、“1/δt ”から“1/Mδt ”へ変換することを想定している。
【0016】
なお、以下では、簡単のために一次元信号を例にとり説明するが、同様の議論は、容易に二次元信号にも拡張可能である。
【0017】
フレーム間引きにより、前記の変換を行う場合、従来では、
f(x,iMδt ) i=0, 1, .....
というように、フレーム間隔をM倍するという方法がとられてきた。
【0018】
これは、ダウンサンプリング後のフレーム間隔が非等長である場合、動きの滑らかさを失うという経験則に基づくものである。この経験則は、δt =1/30[秒]といった従来のフレームレートの映像信号の場合には、妥当と言える。
【0019】
しかし、δt =1/1000[秒]といった高フレームレートの映像信号の場合は、その限りではない。例えば、フレーム間隔がδt =1/1000[秒]の高フレームレートの映像信号を、M=16として、フレーム間隔1/62.5[秒]の低フレームレートの映像信号に変換する場合、変換後のフレーム間隔が1/1000[秒]程度伸縮したとしても、視覚的に検知できない。
【0020】
このため、フレーム間隔を非等長にすることによる画質劣化は問題とならない。したがって、ダウンサンプリング後のフレーム間隔に対する等長という制約条件を緩和することができる。この制約条件の緩和により、ダウンサンプリング後のフレーム選択に関する自由度が高くなる。
【0021】
そこで、本発明では、フレーム選択の候補を、
f(x,(iM+Li )δt ) i=1, 2, .....
i =−Δ, .... ,Δ
但し、L0 =0, .... ,Δ
というように、2Δ+1フレーム(i=0の場合には、Δ+1フレーム)にまで拡大する。
【0022】
ここで、Li は、−Δ, .... ,Δの範囲の整数値をとるパラメータ(以下、Li を伸縮パラメータと呼ぶ)であり、ダウンサンプリング後のフレームを指定するために用いるもので、2Δ+1≦Mを満たすものとする。また、Δはダウンサンプリングの対象となるフレーム候補の存在区間を表し、例えば、外部から与えられるパラメータである。
【0023】
伸縮パラメータLi をΔに限定したのは、このLi の値が大きすぎると、フレーム間隔が等長から大きく外れることで、画質劣化が問題となることになるからである。
【0024】
このように、本発明では、フレーム選択の候補を2Δ+1フレームにまで拡大することになるが、いずれのフレームを選択するのかについては、次の基準に従うものとする。
【0025】
〔ダウンサンプリングにおけるフレーム選択の評価尺度〕
フレーム選択の基準として、動き補償予測誤差電力およびダウンサンプリング後のシーケンスのジャーキネスを用いることとする。
【0026】
H.264/AVC,MPEG−2といった代表的な符号化方式では動き補償フレーム間予測を採用しており、動き補償予測誤差電力の低減は重要である。また、主観画質の観点からは、ダウンサンプリング後のシーケンスのジャーキネスを抑圧することも重要である。これから、フレーム選択の基準として、動き補償予測誤差電力およびダウンサンプリング後のシーケンスのジャーキネスを用いることとする。
【0027】
信号f(x,(iM+Li )δt )に対して、サイズSの区間B〔k〕(k=0,1, .... ,K−1)に分割し、各区間B〔k〕(k=0,1, .... ,K−1)に対しての動き補償(推定変移量d〔k〕:変移量は動きベクトルと同義)を考える。
【0028】
フレームf(x,(iM+Li )δt )内の区間B〔k〕がフレームf(x,((i−1)M+Li-1 )δt )を参照して、推定変移量d〔k〕を用いて予測される場合、その区間内の動き補償後の予測誤差電力は下記の式(1)のように表現できる。
【0029】
【数1】

【0030】
i とLi-1 が与えられた場合、この式(1)に従って、σi 2 〔Li ,Li-1 〕を最小化するように推定変移量d〔k〕(k=0,1, .... ,K−1)を設定し、d〔k,Li ,Li-1 〕(k=0,1, .... ,K−1)とおく。このとき、推定変移量d〔k〕の精度は外部から与えられるものとする(例:整数画素精度、1/2画素精度、1/4画素精度など)。
【0031】
さらに、ジャーキネスの評価尺度として、下記の式(2)の値を用いる。
【0032】
【数2】

【0033】
この式(2)に示すジャーキネスの評価尺度ε2 〔Li 〕は、等長でダウンサンプリングされたフレームと可変長でダウンサンプリングされたフレームとの差分値(フレーム間差分値)を表している。
【0034】
その他に、ジャーキネスの評価尺度として、下記の式(3)の値を用いることも可能である。
【0035】
【数3】

【0036】
ここで、Li は、等長でダウンサンプリングされたフレームと可変長でダウンサンプリングされたフレームとの間の距離である。
【0037】
この式(3)に示すジャーキネスの評価尺度ε2 〔Li 〕は、等長でダウンサンプリングされたフレームと可変長でダウンサンプリングされたフレームとのフレーム間差分値を両フレーム間の距離で重み付けた値と言える。
【0038】
また、ジャーキネスの評価尺度として、下記の式(4)の値を用いることも可能である。
【0039】
【数4】

【0040】
ここで、|M+Li −Li-1 |は、参照フレームと被予測フレームとの間の距離である。
【0041】
この式(4)に示すジャーキネスの評価尺度ε2 〔Li 〕は、参照フレームと被予測フレームとのフレーム間差分値を両フレーム間の距離で重み付けた値と言える。
【0042】
また、ジャーキネスの評価尺度として、下記の式(5)の値を用いることも可能である。
【0043】
【数5】

【0044】
ここで、αは、外部から与えられるパラメータであり、|Li −Li-1 |に対する閾値となる。|M+Li −Li-1 |は参照フレームと被予測フレームとの間の距離であり、Mは定数であることを考慮すると、この距離が一定の閾値以上となるのか否かは、|Li −Li-1 |を用いて評価することが可能である。
【0045】
この式(5)に示すジャーキネスの評価尺度ε2 〔Li 〕は、参照フレームと被予測フレームとのフレーム間差分値を両フレーム間の距離で重み付けた値であり、さらに、|Li −Li-1 |が所定の閾値α以下の場合には、ジャーキネスは検知できないという仮説に基づいて設定したものである。
【0046】
本発明では、フレームをダウンサンプリングするための評価尺度として、符号化効率およびジャーキネスの抑圧を考慮すべく、下記の式(6)のコスト関数Ψ〔Li ,Li-1 〕を用いる。
【0047】
【数6】

【0048】
ここで、λは重み係数であり、外部から与えられる。また、ε2 〔Li 〕は、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)に従って算出する。
【0049】
本発明では、このコスト関数Ψ〔Li ,Li-1 〕の最小化を通して、動き補償予測誤差とダウンサンプリング後のジャーキネスとの間のトレードオフを最適化するフレームを選択する。
【0050】
ここで、注意すべきは、Li の設定方法(選択方法)である。Ψ〔Li ,Li-1 〕を最小化するようにLi を設定したのでは、シーケンス全体でのコスト関数の値
ΣΨ〔Li ,Li-1
但し、Σはi=1〜(J/M−1)の総和で、Jはフレーム数
を最小化したことにはならない。なぜなら、Li の選択はΨ〔Li ,Li-1 〕にも影響を与えるからである。
【0051】
従って、求めるべきパラメータは、下記の式(7)を満たすJ/M個のパラメータである。
【0052】
【数7】

【0053】
しかしながら、J/M個のパラメータ(L0 , .... ,LJ/M-1 )の取り得る組み合わせは(Δ+1)×(2Δ+1)J/M-1 通りであり、この中から最適な組み合わせ(L* 0 , .... , L* J/M-1 )を総当たりで探索するのは、計算量的に困難である。
【0054】
そこで、本発明では、Ψ〔Li ,Li-1 〕が直前フレームの結果のみに依存することに着目し、以下のように最適解を算出する。
【0055】
まず、Li として取り得る全ての値に対して、最適なLi-1 , .... ,L0 を用いた場合のΣΨ〔Li ,Li-1 〕(但し、Σはi=1〜iの総和)をSi (Li )として定義する。
【0056】
ここで、Ψ〔Li ,Li-1 〕が直前フレームの結果のみに依存することに着目すると、Si (Li )はSi-1 (Li-1 )を用いて、図1に示すように、下記の式(8)のように表される。なお、i=1, .... ,(J/M−1)である。
【0057】
【数8】

【0058】
この式(8)に従って算出したSi (Li )(Li =−Δ, .... ,Δ)をメモリに格納しておき、Si+1 (Li+1 )の計算で用いるものとする。さらに、この式(8)の最小値を与えるLi-1 を、図1中に示すように、^Li-1 (Li )とおく。この^Li-1 (Li )(Li =−Δ, .... ,Δ)についても、全てメモリに格納しておくものとする。ここで、「^X」(Xは文字)における記号^は、「X」の上に付く記号を示している。
【0059】
式(7)の最小化問題は、下記の式(9)のように表せる。
【0060】
【数9】

【0061】
この式(9)を最小化するLJ/M-1 をL* J/M-1 とおくと、このL* J/M-1 は下記の式(10)で表せる。
【0062】
【数10】

【0063】
* J/M-2 に対する最適解は、^LJ/M-2 (LJ/M-1 )としてメモリに格納されているので、その値を参照し、L* J/M-2 =^LJ/M-2 (LJ/M-1 )とする。以下、同様の参照処理を、
* J/M-3 =^LJ/M-3 (LJ/M-2 ),・・・・・,L* 0 =^L0 (L1
として繰り返す。
【0064】
以上の説明では、式(6)のコスト関数Ψ〔Li ,Li-1 〕における符号化効率を示す値として動き補償予測誤差電力を用いるようにしたが、特定の符号化器(例えば、H.264準拠の符号化器)により符号化を行う際に得られる符号化コストを用いるようにしてもよい。
【0065】
〔2〕本発明の構成
次に、本発明の構成について説明する。
【0066】
本発明のフレームレート変換装置は、高フレームレート映像信号のフレームをダウンサンプリングにより選択することで低フレームレート映像信号に変換することを実現するために、(1)等長間隔のダウンサンプリングにより規定されるフレーム位置の所定範囲にある複数のフレームのそれぞれについて、それよりも前のフレーム位置の所定範囲にある複数のフレームのそれぞれとの間で、ダウンサンプリングする場合に生成される低フレームレート映像信号についての符号化効率および主観画質を示す評価尺度であって、その値が小さくなるほど高い評価を示す評価尺度を算出して、その算出した評価尺度に基づいて、その前のフレーム位置の所定範囲にある複数のフレームの中から、先頭のフレーム位置からの評価尺度の総和を最小化するつながりを持つフレームを特定することを、先頭のフレーム位置から最終のフレーム位置に向けて繰り返し実行する実行手段と、(2)最終のフレーム位置にある複数のフレームのそれぞれについて実行手段が算出した評価尺度の総和について、それらの中の最小値を持つフレームを検出する検出手段と、(3)検出手段の検出したフレームを起点として実行手段の特定したフレームを辿ることで、等長間隔のダウンサンプリングにより規定されるフレーム位置のそれぞれについてフレームを抽出して、それらをダウンサンプリング後のフレームとして選択する選択手段とを備えるように構成する。
【0067】
この構成を採るときに、実行手段は、算出した評価尺度とその算出対象となった前のフレーム位置にあるフレームの持つ評価尺度の総和との加算値を求めて、それらの中の最小値を特定することで、前のフレーム位置の所定範囲にある複数のフレームの中から、先頭のフレーム位置からの評価尺度の総和を最小化するつながりを持つフレームを特定するとともに、その加算値をその特定元のフレームの持つ評価尺度として設定するように処理する。
【0068】
また、実行手段は、ダウンサンプリングする場合に生成される低フレームレート映像信号の符号化効率および主観画質を示す評価尺度として、その値が小さくなるほど高い評価を示す符号化効率値と、その値が小さくなるほど高い評価を示す主観画質値との加重和を用いることがある。
【0069】
このとき、実行手段は、符号化効率値として、動き補償予測誤差電力を算出したり、所定の符号化器を用いて符号化する場合に得られる符号化コストを算出することがある。
【0070】
また、実行手段は、主観画質値として、等長でサンプリングされたフレームと可変長でサンプリングされたフレームとの差分値を算出したり、等長でサンプリングされたフレームと可変長でサンプリングされたフレームとの差分値を両フレーム間の距離で重み付けした値を算出したり、参照フレームと被予測フレームとの差分値を両フレーム間の距離で重み付けした値を算出することがある。
【0071】
以上の各処理手段が動作することで実現される本発明のフレームレート変換方法はコンピュータプログラムでも実現できるものであり、このコンピュータプログラムは、適当なコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して提供されたり、ネットワークを介して提供され、本発明を実施する際にインストールされてCPUなどの制御手段上で動作することにより本発明を実現することになる。
【0072】
このように構成される本発明のフレームレート変換装置では、まず最初に、等長間隔のダウンサンプリングにより規定されるフレーム位置の所定範囲にある複数のフレームのそれぞれについて、例えば、図1に示すように、1つ前のフレーム位置の所定範囲にある複数のフレームのそれぞれとの間で、ダウンサンプリングする場合に生成される低フレームレート映像信号についての符号化効率および主観画質を示す評価尺度(図1ではΨ〔Li ,Li-1 〕)を算出し、その算出した評価尺度とその算出対象となった1つ前のフレーム位置にあるフレームの持つ評価尺度の総和(図1ではSi-1 (Li-1 ))との加算値を求めて、それらの中の最小値を特定することで、1つ前のフレーム位置の所定範囲にある複数のフレームの中から、先頭のフレーム位置からの評価尺度の総和を最小化するつながりを持つフレームを特定するとともに、その加算値をその特定元のフレームの持つ評価尺度の総和として設定するという処理を、最終のフレーム位置まで繰り返し実行する。
【0073】
続いて、最終のフレーム位置にある複数のフレームのそれぞれについて算出した評価尺度の総和について、それらの中の最小値を持つフレームを検出して、その検出したフレームを起点として先に特定したフレームを先頭のフレーム位置に向けて辿ることで、等長間隔のダウンサンプリングにより規定されるフレーム位置のそれぞれについてフレームを抽出して、それらをダウンサンプリング後のフレームとして選択する。
【0074】
このようにして、本発明のフレームレート変換装置は、高フレームレート映像信号から低フレームレート映像信号へフレームレート変換を実行するときに、ダウンサンプリング後の低フレームレート映像信号の全シーケンスに対しての符号化効率およびジャーキネスの抑圧を考慮した形で、そのフレームレート変換処理を実行するように処理するのである。
【発明の効果】
【0075】
本発明では、高フレームレート映像信号から低フレームレート映像信号へフレームレート変換を実行するときに、ダウンサンプリング後の低フレームレート映像信号の全シーケンスに対しての符号化効率およびジャーキネスの抑圧を考慮した形で、そのフレームレート変換処理を実行する。
【0076】
これから、本発明によれば、高フレームレート映像信号に対してのダウンサンプリングにより得られた所望のフレームレートの映像信号を符号化する場合に、均等フレーム間隔の間引きにより得られた映像信号よりも符号量を低く抑えることができるようになる。
【0077】
そして、本発明によれば、全シーケンスに対しての符号化効率およびジャーキネスの抑圧を考慮しないで行う非等長のフレーム間隔の間引きにより得られた映像信号よりも符号量を低く抑えることができるようになるとともに、ジャーキネスを抑圧することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明で算出するSi (Li )の算出処理の説明図である。
【図2】本発明のフレームレート変換装置の装置構成図である。
【図3】本発明のフレームレート変換装置の装置構成図である。
【図4】ダウンサンプリング実行部の実行するフローチャートである。
【図5】ダウンサンプリング実行部の実行するフローチャートである。
【図6】ダウンサンプリング実行部の実行するフローチャートである。
【図7】従来技術によるフレームレートダウンサンプリング処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下、実施の形態に従って本発明を詳細に説明する。
【0080】
図2に、本発明のフレームレート変換装置1の装置構成の一例を図示する。
【0081】
この図に示すように、本発明のフレームレート変換装置1は、フレームレート変換処理の対象となる高フレームレート映像信号を格納する高フレームレート映像ファイル10と、フレームレート変換処理された低フレームレート映像信号を格納する低フレームレート映像ファイル11と、高フレームレート映像信号から低フレームレート映像信号へのフレームレート変換処理を実行するフレームレートダウンサンプリング部12とを備える。
【0082】
このフレームレートダウンサンプリング部12は、式(6)に示されるコスト関数Ψ〔Li ,Li-1 〕の関数値を算出するコスト関数算出部120と、コスト関数算出部120の算出したコスト関数値を使って、高フレームレート映像信号のフレームの中からフレームを選択することでフレームレートダウンサンプリング処理を実行するダウンサンプリング実行部121と、ダウンサンプリング実行部121の作業用データを記憶する作業用メモリ122とを備える。
【0083】
このコスト関数算出部120は、動き推定部1201を備えて、式(1)に示される動き補償予測誤差電力を算出する動き補償予測誤差算出部1200と、式(2)や式(3)や式(4)や式(5)などに示されるジャーキネスの評価尺度ε2 〔Li 〕を算出するジャーキネス評価尺度算出部1202とを備えることで、式(6)に示されるコスト関数Ψ〔Li ,Li-1 〕の関数値を算出する。
【0084】
〔1〕動き推定部1201の処理
ダウンサンプリング実行部121の実行するフレーム選択処理の説明に入る前に、動き補償予測誤差算出部1200の備える動き推定部1201の処理について説明する。
【0085】
動き推定部1201は、予測対象フレームと参照フレームとを入力として、下記に示す処理を実行することで、予測対象フレーム内のブロック毎の動きベクトルd〔k〕、すなわち、式(1)におけるd〔k〕(k=0,1, .... ,K−1)を推定する処理を行う。ここで、kはブロックを同定するインデックスである。
【0086】
処理:・式(1)のΣ{x∈B〔k〕}の項(第kブロックの予測誤差和)を最小化す る動きベクトルd〔k〕を求める
・動きベクトルは、予め与えられた探索範囲−D≦d〔k〕≦D−1内の値から 選択される
・選択の方法は、探索範囲内の全ての候補ベクトルに対して、その候補ベクトル を用いた場合の予測誤差和を算出し、その予測誤差和を最小化するベクトルを d〔k〕とすることで行う
動き補償予測誤差算出部1200は、動き推定部1201の推定したベクトルd〔k〕を使い、式(1)に基づいて、予測対象フレームと参照フレームとの間の動き補償予測誤差電力を算出する。
【0087】
〔2〕ダウンサンプリング実行部121の処理
次に、ダウンサンプリング実行部121により実行されるフレームレートダウンサンプリング処理について説明する。
【0088】
図3に、ダウンサンプリング実行部121の装置構成の一例を図示する。
【0089】
この図に示すように、ダウンサンプリング実行部121は、入力部1210と、処理フレーム位置選択部1211と、処理フレーム選択部1212と、参照フレーム決定部1213と、全フレーム位置終了判定部1214と、累積コスト関数値最小化最終フレーム検出部1215と、決定参照フレーム追跡部1216とを備える。
【0090】
この入力部1210は、高フレームレート映像信号のフレーム数Jと、高フレームレート映像信号のフレーム間隔δt と、ダウンサンプリング比Mと、伸縮パラメータΔとを読み込む。
【0091】
処理フレーム位置選択部1211は、ダウンサンプリング比Mとフレーム間隔δt とに基づく等長間隔のダウンサンプリングにより規定されるダウンサンプリングフレーム位置(以下、フレーム位置と略記する)を選択対象として、先頭のフレーム位置の1つ後のフレーム位置を起点にして、最終のフレーム位置までのフレーム位置を順次、処理フレーム位置として選択する。
【0092】
処理フレーム選択部1212は、処理フレーム位置選択部1211の選択した処理フレーム位置およびその近傍に位置する2Δ+1枚のフレームを順次、処理フレームとして選択する。
【0093】
参照フレーム決定部1213は、処理フレーム選択部1212の選択した処理フレームと、1つ前のフレーム位置およびその近傍に位置する2Δ+1枚のフレームのそれぞれとの間で式(6)に示されるコスト関数の関数値を算出して、その算出したコスト関数値とその算出対象となった1つ前のフレーム位置におけるフレームの持つコスト関数値の総和との加算値を求めて(累積コスト関数値算出機能)、それらの中の最小値を特定することで(最小累積コスト関数値特定機能)、1つ前のフレーム位置における2Δ+1枚のフレームの中から、先頭のフレーム位置からのコスト関数値の総和を最小化するつながりを持つフレームを特定することで参照フレームを決定する。
【0094】
全フレーム位置終了判定部1214は、最終のフレーム位置までの全フレーム位置について処理を行ったのか否かを判定して、全フレーム位置について処理を行っていないことを判定するときには、処理フレーム位置選択部1211に対して次のフレーム位置を選択するように指示し、全フレーム位置について処理を行ったことを判定するときには、累積コスト関数値最小化最終フレーム検出部1215に対して処理の実行を指示する。
【0095】
累積コスト関数値最小化最終フレーム検出部1215は、最終のフレーム位置およびその近傍に位置する2Δ+1枚のフレームのそれぞれについて算出されたコスト関数値の総和(参照フレーム決定部1213が算出したもの)について、それらの中の最小値を持つフレームを検出することで、先頭のフレーム位置からのコスト関数値の総和を最小化する最終フレームを検出する。
【0096】
決定参照フレーム追跡部1216は、累積コスト関数値最小化最終フレーム検出部1215の検出した最終フレームを起点として、参照フレーム決定部1213の決定した参照フレームを辿ることで、等長間隔のダウンサンプリングにより規定されるフレーム位置のそれぞれについて参照フレームを抽出して、それらをダウンサンプリング後のフレームとして選択する。
【0097】
下記に、このように構成されるダウンサンプリング実行部121の実行するフレームレートダウンサンプリング処理の流れを示す。
【0098】
〔i〕ジャーキネスの評価尺度として式(2)の値を用いる場合
1.撮影された映像信号(フレームレート変換処理の対象となる高フレームレート映像 信号)、そのフレーム数J、そのフレームレート(フレーム間隔δt を算出するた めに用いる)を読み込む
2.ダウンサンプリング比Mを読み込む
3.コスト関数算出に用いる重み係数λを読み込む
4.i=1, .... ,J/M−1について以下の処理を行う
5. Li =−Δ, .... ,Δについて以下の処理を行う
6. Li-1 =−Δ, .... ,Δについて以下の処理を行う
(ただし、L0 の場合は、L0 =0, .... ,Δ)
7. 参照フレームをf(x,((i−1)M+Li-1 )δt )とする場合のf( x,(iM+Li )δt )に対する動き補償予測誤差電力(式(1))を最小 化する動きベクトルを求める。動きベクトルの求め方は外部から与えられる 。例えば、探索範囲内の候補をしらみつぶしにあたる全探索法を用いる。求 めた動きベクトルを用いた場合の動き補償予測誤差電力をσi 2 〔Li ,L i-1 〕に格納する
8. ジャーキネスの評価尺度として、等長でダウンサンプリングされたフレーム と可変長でダウンサンプリングされたフレームとの差分値ε2 〔Li 〕を算 出する。具体的な算出方法は式(2)に従う
9. 動き補償予測誤差電力およびジャーキネスの評価尺度の加重和として、コス ト関数Ψ〔Li ,Li-1 〕を次式により求める
Ψ〔Li ,Li-1 〕=σi 2 〔Li ,Li-1 〕+λε2 〔Li
10. Ψ〔Li ,Li-1 〕+Si-1 (Li-1 )の値を算出する
(ただし、L0 の場合は、Ψ〔L1 ,L0 〕の値を算出する)
11. Ψ〔Li ,Li-1 〕+Si-1 (Li-1 )(Li-1 =−Δ, .... ,Δ)の中での 最小値をSi (Li )に格納する
(ただし、L0 の場合は、Ψ〔L1 ,L0 〕(L0 =0, .... ,Δ)の 中での最小値をS1 (L1 )に格納する)
12. Si (Li )を与えるLi-1 を^Li-1 (Li )に格納する
13.SJ/M-1 (LJ/M-1 )を最小化するLJ/M-1 をL* J/M-1 に格納する
14.i=J/M−2, .... ,1について以下の処理を行う
15. L* i-1 =^Li-1 (Li )を算出する
16.ダウンサンプリング後の第iフレームとして、f(x,(iM+Li * )δt
(x=0, .... ,X−1)を格納する。
【0099】
〔ii〕ジャーキネスの評価尺度として式(3)の値を用いる場合
1.撮影された映像信号(フレームレート変換処理の対象となる高フレームレート映像 信号)、そのフレーム数J、そのフレームレート(フレーム間隔δt を算出するた めに用いる)を読み込む
2.ダウンサンプリング比Mを読み込む
3.コスト関数算出に用いる重み係数λを読み込む
4.i=1, .... ,J/M−1について以下の処理を行う
5. Li =−Δ, .... ,Δについて以下の処理を行う
6. Li-1 =−Δ, .... ,Δについて以下の処理を行う
(ただし、L0 の場合は、L0 =0, .... ,Δ)
7. 参照フレームをf(x,((i−1)M+Li-1 )δt )とする場合のf( x,(iM+Li )δt )に対する動き補償予測誤差電力(式(1))を最小 化する動きベクトルを求める。動きベクトルの求め方は外部から与えられる 。例えば、探索範囲内の候補をしらみつぶしにあたる全探索法を用いる。求 めた動きベクトルを用いた場合の動き補償予測誤差電力をσi 2 〔Li ,L i-1 〕に格納する
8. 等長でダウンサンプリングされたフレームと可変長でダウンサンプリングさ れたフレームとの差分値 tildeε2 〔Li 〕を算出する
9. 等長でダウンサンプリングされたフレームと可変長でダウンサンプリングさ れたフレームとのフレーム間距離の絶対値|Li |を算出する
10. 8.で算出した差分値に9.で算出したフレーム間距離を乗じた値を算出し、ジ ャーキネスの評価尺度ε2 〔Li 〕とする。8.〜10. の具体的な算出方法は 式(3)に従う
11. 動き補償予測誤差電力およびジャーキネスの評価尺度の加重和として、コス ト関数Ψ〔Li ,Li-1 〕を次式により求める
Ψ〔Li ,Li-1 〕=σi 2 〔Li ,Li-1 〕+λε2 〔Li
12. Ψ〔Li ,Li-1 〕+Si-1 (Li-1 )の値を算出する
(ただし、L0 の場合は、Ψ〔L1 ,L0 〕の値を算出する)
13. Ψ〔Li ,Li-1 〕+Si-1 (Li-1 )(Li-1 =−Δ, .... ,Δ)の中での 最小値をSi (Li )に格納する
(ただし、L0 の場合は、Ψ〔L1 ,L0 〕(L0 =0, .... ,Δ)の 中での最小値をS1 (L1 )に格納する)
14. Si (Li )を与えるLi-1 を^Li-1 (Li )に格納する
15.SJ/M-1 (LJ/M-1 )を最小化するLJ/M-1 をL* J/M-1 に格納する
16.i=J/M−2, .... ,1について以下の処理を行う
17. L* i-1 =^Li-1 (Li )を算出する
18.ダウンサンプリング後の第iフレームとして、f(x,(iM+Li * )δt
(x=0, .... ,X−1)を格納する。
【0100】
このようにして、ダウンサンプリング実行部121は、まず最初に、図1に示すように、等長間隔のダウンサンプリングにより規定されるフレーム位置およびその近傍に位置する2Δ+1枚のフレームのそれぞれについて、1つ前のフレーム位置およびその近傍に位置する2Δ+1枚のフレームのそれぞれとの間で、フレームをダウンサンプリングするための評価尺度であるコスト関数の関数値を算出し、その算出したコスト関数値とその算出対象となった1つ前のフレーム位置におけるフレームの持つコスト関数値の総和との加算値を求めて、それらの中の最小値を特定することで、1つ前のフレーム位置およびその近傍に位置する2Δ+1枚のフレームの中から、先頭のフレーム位置からのコスト関数値の総和を最小化するつながりを持つフレームを特定するという処理を、最終のフレーム位置まで繰り返し実行し、
続いて、最終のフレーム位置およびその近傍に位置する2Δ+1枚のフレームのそれぞれについて算出したコスト関数値の総和について、それらの中の最小値を持つフレームを検出して、その検出したフレームを起点として先に特定したフレームを先頭のフレーム位置に向けて辿ることで、等長間隔のダウンサンプリングにより規定されるフレーム位置のそれぞれについてフレームを抽出して、それらをダウンサンプリング後のフレームとして選択することで、高フレームレート映像信号から低フレームレート映像信号へのフレームレート変換処理を実行するのである。
【実施例】
【0101】
次に、実施例に従って本発明を詳細に説明する。
【0102】
図4〜図6に、ダウンサンプリング実行部121の実行するフレームレートダウンサンプリング処理のフローチャートの一例を図示する。
【0103】
次に、このフローチャートに従って、ダウンサンプリング実行部121の実行するフレームレートのダウンサンプリング処理について詳細に説明する。
【0104】
ここで、以下の説明では、フレームをダウンサンプリングするための評価尺度として、式(6)に示されるコスト関数Ψ〔Li ,Li-1 〕を用いることを想定するとともに、このコスト関数Ψ〔Li ,Li-1 〕に記述されるジャーキネスの評価尺度ε2 〔Li 〕として、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)のいずれかを用いることを想定する。
【0105】
ダウンサンプリング実行部121は、フレームレートダウンサンプリング処理の実行要求があると、図4のフローチャートに示すように、まず最初に、ステップS10で、フレームレート変換処理の対象となる高フレームレート映像信号と、そのフレーム数Jと、そのフレーム間隔δt と、ダウンサンプリング比Mと、伸縮パラメータΔとを読み込む。
【0106】
続いて、ステップS20で、i=1およびL1 の指定するフレームと、i=0およびL0 の指定するフレームとの間でS1 (L1 )を算出して、それを作業用メモリ122に格納するとともに、S1 (L1 )を与えるL0 を^L0 (L1 )として作業用メモリ122に格納する。このステップS20の処理の詳細については、図5のフローチャートで後述する。
【0107】
続いて、ステップS30で、2≦i≦J/M−1について、iおよびLi の指定するフレームと、i−1およびLi-1 の指定するフレームとの間でSi (Li )を算出して、それを作業用メモリ122に格納するとともに、Si (Li )を与えるLi-1 を^Li-1 (Li )として作業用メモリ122に格納する。このステップS30の処理の詳細については、図6のフローチャートで後述する。
【0108】
続いて、ステップS40で、SJ/M-1 (LJ/M-1 )を最小化するLJ/M-1 をL* J/M-1 として作業用メモリ122に格納する。
【0109】
続いて、ステップS50で、変数iにJ/M−2をセットする。
【0110】
続いて、ステップS60で、L* i-1 =^Li-1 (Li )に従って、L* i-1 を算出して作業用メモリ122に格納する。
【0111】
続いて、ステップS70で、変数iの値を1つディクリメントする。
【0112】
続いて、ステップS80で、変数iの値が0に到達したのか否かを判断して、0に到達していないことを判断するときには、ステップS60の処理に戻り、0に到達したことを判断するときには、ステップS90の処理に進む。
【0113】
続いて、ステップS90で、ダウンサンプリング後の第iフレームとして、f(x,(iM+L* i )δt )(x=0, .... ,X−1)を格納する。
【0114】
次に、図5のフローチャートに従って、ステップS20で実行する処理の詳細について説明する。
【0115】
ダウンサンプリング実行部121は、ステップS20の処理に入ると、図5のフローチャートに示すように、まず最初に、ステップS201で、変数iに1をセットし、続くステップS202で、変数Li に−Δをセットし、続くステップS203で、変数Li-1 に0をセットする。すなわち、変数iに1をセットして、L1 に−Δをセットするとともに、L0 に0をセットするのである。
【0116】
続いて、ステップS204で、i=1の場合において、iおよびLi の指定するフレームと、i−1およびLi-1 の指定するフレームとの間で動き補償予測誤差電力の最小値σi 2 〔Li ,Li-1 〕を算出し、それを用いてジャーキネスの評価尺度ε2 〔Li 〕を考慮したコスト関数Ψ〔Li ,Li-1 〕の関数値を算出して、それを作業用メモリ122に格納する。すなわち、コスト関数Ψ〔L1 ,L0 〕の関数値を算出して、それを作業用メモリ122に格納するのである。
【0117】
続いて、ステップS205で、i=1の場合において、変数Li-1 の値を1つインクリメントし、続くステップS206で、変数Li-1 の値がΔよりも大きくなったのか否かを判断して、Δよりも大きくなっていないことを判断するときには、ステップS204の処理に戻る。すなわち、L0 の値を1つインクリメントして、その値がΔよりも大きくなったのか否かを判断して、Δよりも大きくなっていないことを判断するときには、ステップS204の処理に戻るのである。
【0118】
このようにして、i=1の場合において、変数L0 の値を0からΔまで1つずつインクリメントしながらステップS204の処理を実行することで、i=1および変数L1 の指定するフレームと、1つ前のフレーム位置にあるΔ+1枚のフレームのそれぞれとの間でコスト関数Ψ〔L1 ,L0 〕の関数値を算出して、それを作業用メモリ122に格納するのである。
【0119】
一方、ステップS206で、変数Li-1 の値がΔよりも大きくなったことを判断するときには、ステップS207に進んで、作業用メモリ122に格納したコスト関数値Ψ〔Li ,Li-1 〕の中の最小値Si (Li )を特定して、それを作業用メモリ122に格納するとともに、そのSi (Li )を与えるLi-1 を^Li-1 (Li )として作業用メモリ122に格納する。
【0120】
すなわち、i=1の場合において、変数L1 のある値について、ステップS204を繰り返し実行することで求めたコスト関数値Ψ〔L1 ,L0 〕(L0 =0, .... ,Δ)の中の最小値S1 (L1 )を特定して、それを作業用メモリ122に格納するとともに、そのS1 (L1 )を与えるL0 を^L0 (L1 )として作業用メモリ122に格納するのである。
【0121】
続いて、ステップS208で、i=1の場合において、変数Li の値を1つインクリメントし、続くステップS209で、変数Li の値がΔよりも大きくなったのか否かを判断して、Δよりも大きくなっていないことを判断するときには、ステップS203の処理に戻る。すなわち、変数L1 の値を1つインクリメントして、その値がΔよりも大きくなったのか否かを判断して、Δよりも大きくなっていないことを判断するときには、ステップS203の処理に戻るのである。
【0122】
このようにして、i=1の場合において、変数L1 の値を−ΔからΔまで1つずつインクリメントしながらステップS204/ステップS207の処理を実行することで、変数L1 の値の−Δ〜Δのそれぞれについて、コスト関数Ψ〔L1 ,L0 〕(L0 =0, .... ,Δ)の関数値を求めて、その中の最小値S1 (L1 )を特定して作業用メモリ122に格納するとともに、そのS1 (L1 )を与えるL0 を^L0 (L1 )として作業用メモリ122に格納するのである。
【0123】
そして、ステップS209で、i=1の場合において、変数Li の値がΔよりも大きくなったことを判断するときには、ステップS20の処理を終了する。すなわち、L1 の値がΔよりも大きくなったことを判断するときには、ステップS20の処理を終了するのである。
【0124】
このようにして、ダウンサンプリング実行部121は、ステップS20の処理に入ると、図5のフローチャートを実行することで、i=1およびL1 の指定するフレームと、i=0およびL0 の指定するフレームとの間でS1 (L1 )を算出して、それを作業用メモリ122に格納するとともに、そのS1 (L1 )を与えるL0 を^L0 (L1 )として作業用メモリ122に格納するように処理するのである。
【0125】
次に、図6のフローチャートに従って、ステップS30で実行する処理の詳細について説明する。
【0126】
ダウンサンプリング実行部121は、ステップS30の処理に入ると、図6のフローチャートに示すように、まず最初に、ステップS301で、変数iに2をセットし、続くステップS302で、変数Li に−Δをセットし、続くステップS303で、変数Li-1 に−Δをセットする。
【0127】
続いて、ステップS304で、iおよびLi の指定するフレームと、i−1およびLi-1 の指定するフレームとの間で動き補償予測誤差電力の最小値σi 2 〔Li ,Li-1 〕を算出し、それを用いてジャーキネスの評価尺度ε2 〔Li 〕を考慮したコスト関数Ψ〔Li ,Li-1 〕の関数値を算出する。
【0128】
続いて、ステップS305で、Ψ〔Li ,Li-1 〕+Si-1 (Li-1 )を算出して作業用メモリ122に格納する。
【0129】
すなわち、i=2の場合には、図5のフローチャートの処理に従って、既にS1 (L1 )が算出されているので、そのS1 (L1 )を使って、Ψ〔L2 ,L1 〕+S1 (L1 )を算出して作業用メモリ122に格納するのである。そして、i>2の場合には、後述するステップS308の処理に従って、既にSi-1 (Li-1 )が算出されているので、そのSi-1 (Li-1 )を使って、Ψ〔Li ,Li-1 〕+Si-1 (Li-1 )を算出して作業用メモリ122に格納するのである。
【0130】
続いて、ステップS306で、変数Li-1 の値を1つインクリメントし、続くステップS307で、変数Li-1 の値がΔよりも大きくなったのか否かを判断して、Δよりも大きくなっていないことを判断するときには、ステップS304の処理に戻る。
【0131】
このようにして、変数Li-1 の値を−ΔからΔまで1つずつインクリメントしながらステップS304/ステップS305の処理を実行することで、変数iおよび変数Li の指定するフレームと、1つ前のフレーム位置にある2Δ+1枚のフレームのそれぞれとの間で動き補償予測誤差電力の最小値σi 2 〔Li ,Li-1 〕を算出し、それを用いてジャーキネスの評価尺度ε2 〔Li 〕を考慮したコスト関数Ψ〔Li ,Li-1 〕の関数値を算出して、その算出したコスト関数値と、その2Δ+1枚のフレームのそれぞれが持つ先頭のフレーム位置からのコスト関数値の総和Si-1 (Li-1 )との加算値を算出し、それを作業用メモリ122に格納するのである。
【0132】
一方、ステップS307で、変数Li-1 の値がΔよりも大きくなったことを判断するときには、ステップS308に進んで、作業用メモリ122に格納したΨ〔Li ,Li-1 〕+Si-1 (Li-1 )(Li-1 =−Δ, .... ,Δ)の中の最小値Si (Li )を特定して、それを作業用メモリ122に格納するとともに、そのSi (Li )を与えるLi-1 を^Li-1 (Li )として作業用メモリ122に格納する。
【0133】
すなわち、変数iおよび変数Li のある値(この時点では、i=2、Li =−Δ)について、ステップS304/ステップS305を繰り返し実行することで求めたΨ〔Li ,Li-1 〕+Si-1 (Li-1 )(Li-1 =−Δ, .... ,Δ)の中の最小値Si (Li )を特定して、それを作業用メモリ122に格納するとともに、そのSi (Li )を与えるLi を^Li-1 (Li )として作業用メモリ122に格納するのである。
【0134】
続いて、ステップS309で、変数Li の値を1つインクリメントし、続くステップS310で、変数Li の値がΔよりも大きくなったのか否かを判断して、Δよりも大きくなっていないことを判断するときには、ステップS303の処理に戻る。
【0135】
このようにして、変数Li の値を−ΔからΔまで1つずつインクリメントしながらステップS304/ステップS305/ステップS308の処理を実行することで、変数Li の値の−Δ〜Δのそれぞれについて、Ψ〔Li ,Li-1 〕+Si-1 (Li-1 )(Li-1 =−Δ, .... ,Δ)の中の最小値Si (Li )を特定して、それを作業用メモリ122に格納するとともに、そのSi (Li )を与えるLi-1 を^Li-1 (Li )として作業用メモリ122に格納するのである。
【0136】
一方、ステップS310で、変数Li の値がΔよりも大きくなったことを判断するときには、ステップS311に進んで、変数iの値を1つインクリメントする。
【0137】
続いて、ステップS312で、変数iの値がJ/M−1よりも大きくなったのか否かを判断して、J/M−1よりも大きくなっていないことを判断するときには、ステップS302の処理に戻ることで、最終のフレーム位置まで、Si (Li )を特定して作業用メモリ122に格納するとともに、そのSi (Li )を与えるLi を^Li-1 (Li )として作業用メモリ122に格納する処理を実行する。
【0138】
そして、ステップS312で、変数iの値がJ/M−1よりも大きくなったことを判断するときには、ステップS30の処理を終了する。
【0139】
このようにして、ダウンサンプリング実行部121は、ステップS30の処理に入ると、図6のフローチャートを実行することで、2≦i≦J/M−1について、iおよびLi の指定するフレームと、i−1およびLi-1 の指定するフレームとの間でSi (Li )を算出して、それを作業用メモリ122に格納するとともに、そのSi (Li )を与えるLi-1 を^Li-1 (Li )として作業用メモリ122に格納するように処理するのである。
【0140】
以上に説明したように、ダウンサンプリング実行部121は、図4〜図6のフローチャートを実行することで、まず最初に、図1に示すように、等長間隔のダウンサンプリングにより規定されるフレーム位置およびその近傍に位置する2Δ+1枚のフレームのそれぞれについて、1つ前のフレーム位置およびその近傍に位置する2Δ+1枚のフレームのそれぞれとの間で、ジャーキネスの評価尺度を考慮したコスト関数の関数値を算出し、その算出したコスト関数値とその算出対象となった1つ前のフレーム位置におけるフレームの持つコスト関数値の総和との加算値を求めて、それらの中の最小値を特定することで、1つ前のフレーム位置およびその近傍に位置する2Δ+1枚のフレームの中から、先頭のフレーム位置からのコスト関数値の総和を最小化するつながりを持つフレームを特定するという処理を、最終のフレーム位置まで繰り返し実行し、
続いて、最終のフレーム位置およびその近傍に位置する2Δ+1枚のフレームのそれぞれについて算出したコスト関数値の総和について、それらの中の最小値を持つフレームを検出して、その検出したフレームを起点として先に特定したフレームを先頭のフレーム位置に向けて辿ることで、等長間隔のダウンサンプリングにより規定されるフレーム位置のそれぞれについてフレームを抽出して、それらをダウンサンプリング後のフレームとして選択することで、高フレームレート映像信号から低フレームレート映像信号へのフレームレート変換処理を実行するのである。
【0141】
図示実施例に従って本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、実施例では、式(6)に従って、1つ前のフレーム位置との間でコスト関数の関数値を算出するようにしているが、低フレームレート映像信号の符号化処理に合わせて、1つ前のフレーム位置との間ではなくて、それよりも前のフレーム位置との間でコスト関数の関数値を算出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は高フレームレート映像信号から低フレームレート映像信号へフレームレート変換を実行するときに適用できるものであり、本発明を適用することで、高フレームレート映像信号に対してのダウンサンプリングにより得られた所望のフレームレートの映像信号を符号化する場合に、均等フレーム間隔の間引きにより得られた映像信号よりも符号量を低く抑えることができるようになる。
【0143】
そして、本発明を適用することで、全シーケンスに対しての符号化効率およびジャーキネスの抑圧を考慮しないで行う非等長のフレーム間隔の間引きにより得られた映像信号よりも符号量を低く抑えることができるようになるとともに、ジャーキネスを抑圧することができるようになる。
【符号の説明】
【0144】
1 フレームレート変換装置
10 高フレームレート映像ファイル
11 低フレームレート映像ファイル
12 フレームレートダウンサンプリング部
120 コスト関数算出部
121 ダウンサンプリング実行部
122 作業用メモリ
1200 動き補償予測誤差算出部
1201 動き推定部
1202 ジャーキネス評価尺度算出部
1210 入力部
1211 処理フレーム位置選択部
1212 処理フレーム選択部
1213 参照フレーム決定部
1214 全フレーム位置終了判定部
1215 累積コスト関数値最小化最終フレーム検出部
1216 決定参照フレーム追跡部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高フレームレート映像信号のフレームをダウンサンプリングにより選択することで低フレームレート映像信号に変換するフレームレート変換方法であって、
等長間隔のダウンサンプリングにより規定されるフレーム位置の所定範囲にある複数のフレームのそれぞれについて、それよりも前のフレーム位置の所定範囲にある複数のフレームのそれぞれとの間で、ダウンサンプリングする場合に生成される低フレームレート映像信号についての符号化効率および主観画質を示す評価尺度であって、その値が小さくなるほど高い評価を示す評価尺度を算出して、その算出した評価尺度に基づいて、その前のフレーム位置の所定範囲にある複数のフレームの中から、先頭のフレーム位置からの評価尺度の総和を最小化するつながりを持つフレームを特定することを、先頭のフレーム位置から最終のフレーム位置に向けて繰り返し実行する過程と、
前記最終のフレーム位置にある複数のフレームのそれぞれについて算出した評価尺度の総和について、それらの中の最小値を持つフレームを検出する過程と、
前記検出したフレームを起点として前記特定したフレームを辿ることで、前記フレーム位置のそれぞれについてフレームを抽出して、それらをダウンサンプリング後のフレームとして選択する過程とを備えることを、
特徴とするフレームレート変換方法。
【請求項2】
請求項1に記載のフレームレート変換方法において、
前記実行する過程では、前記算出した評価尺度とその算出対象となった前記前のフレーム位置にあるフレームの持つ評価尺度の総和との加算値を求めて、それらの中の最小値を特定することで、前記前のフレーム位置の所定範囲にある複数のフレームの中から、先頭のフレーム位置からの評価尺度の総和を最小化するつながりを持つフレームを特定するとともに、その加算値をその特定元のフレームの持つ評価尺度として設定することを、
特徴とするフレームレート変換方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフレームレート変換方法において、
前記実行する過程では、前記評価尺度して、その値が小さくなるほど高い評価を示す前記符号化効率値と、その値が小さくなるほど高い評価を示す前記主観画質値との加重和を用いることを、
特徴とするフレームレート変換方法。
【請求項4】
請求項3に記載のフレームレート変換方法において、
前記実行する過程では、前記符号化効率値として、動き補償予測誤差電力を算出することを、
特徴とするフレームレート変換方法。
【請求項5】
請求項3に記載のフレームレート変換方法において、
前記実行する過程では、前記符号化効率値として、所定の符号化器を用いて符号化する場合に得られる符号化コストを算出することを、
特徴とするフレームレート変換方法。
【請求項6】
請求項3に記載のフレームレート変換方法において、
前記実行する過程では、前記主観画質値として、等長でサンプリングされたフレームと可変長でサンプリングされたフレームとの差分値を算出することを、
特徴とするフレームレート変換方法。
【請求項7】
請求項3に記載のフレームレート変換方法において、
前記実行する過程では、前記主観画質値として、等長でサンプリングされたフレームと可変長でサンプリングされたフレームとの差分値を両フレーム間の距離で重み付けした値を算出することを、
特徴とするフレームレート変換方法。
【請求項8】
請求項3に記載のフレームレート変換方法において、
前記実行する過程では、前記主観画質値として、参照フレームと被予測フレームとの差分値を両フレーム間の距離で重み付けした値を算出することを、
特徴とするフレームレート変換方法。
【請求項9】
高フレームレート映像信号のフレームをダウンサンプリングにより選択することで低フレームレート映像信号に変換するフレームレート変換装置であって、
等長間隔のダウンサンプリングにより規定されるフレーム位置の所定範囲にある複数のフレームのそれぞれについて、それよりも前のフレーム位置の所定範囲にある複数のフレームのそれぞれとの間で、ダウンサンプリングする場合に生成される低フレームレート映像信号についての符号化効率および主観画質を示す評価尺度であって、その値が小さくなるほど高い評価を示す評価尺度を算出して、その算出した評価尺度に基づいて、その前のフレーム位置の所定範囲にある複数のフレームの中から、先頭のフレーム位置からの評価尺度の総和を最小化するつながりを持つフレームを特定することを、先頭のフレーム位置から最終のフレーム位置に向けて繰り返し実行する手段と、
前記最終のフレーム位置にある複数のフレームのそれぞれについて算出した評価尺度の総和について、それらの中の最小値を持つフレームを検出する手段と、
前記検出したフレームを起点として前記特定したフレームを辿ることで、前記フレーム位置のそれぞれについてフレームを抽出して、それらをダウンサンプリング後のフレームとして選択する手段とを備えることを、
特徴とするフレームレート変換装置。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のフレームレート変換方法をコンピュータに実行させるためのフレームレート変換プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−19142(P2011−19142A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163276(P2009−163276)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】