説明

フロアパネル、およびそのようなパネルを含むレイアウト部材の固定用設備

【課題】本発明は、航空機などの乗客輸送手段用フロアパネル、およびそのようなパネルを含むレイアウト部材の固定用設備に関する。
【解決手段】本発明によれば、フロアパネル(9)は、このパネル(9)の厚さ方向に挿入された長手方向軸(15)を有する少なくとも1つの取り付けレール(14)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用フロアパネル、およびそのようなパネルを含むレイアウト部材の固定用設備に関する。より詳細には本発明は、航空機内へのキャビンレイアウト部材(座席、ギャレー…)の固定用設備を対象とする。
【背景技術】
【0002】
たとえば、乗客輸送航空機内でのそのような設備が知られており、その場合、航空機は、相互に間隔がとられ、航空機の前/後方向に延長される少なくとも2つの座席取り付けレールを備える。ある座席列を形成するよう2つまたはそれ以上の座席をそれぞれが含むシャーシをこれらの取り付けレールに固定することができる。調理室(ギャレー)、トイレ、その他のキャビンレイアウト部材はこれらのレール上、あるいは必要でれば適当な構造部材上に固定される。
【0003】
図1は、座席取り付けレール1をともなう、先行技術のキャビンフロアの部分断面略図である。各レール1は通常、I字形の形状鋼を有する下側レール部材を含み、このレールは、下側フランジ2、垂直コア3、および上側フランジ4で構成される。この上側フランジ4からは、レイアウト部材、特に座席の固定用摺動面を形成するようC字形の断面5を有する上側レール部材が上方に向かって延びる。上側フランジ4は、フロアパネル8が取り付けられるようになる平坦なサイドフランジ6、7も含む。
【0004】
キャビンフロアの従来の被覆は、複合材サンドイッチフロアパネル8(ハニカム構造)で構成される。通常、10mm程度の薄肉なフロアパネル8は、ボルトにより、座席取り付けレールのサイドフランジ6、7に固定される。商業的装飾の設置の際には、たとえばモケットなどのフローリングMが設置される。このフローリングMは、移動に伴う作用、ならびに輸送手段のキャビンの占有に伴うその他の作用からフロアパネルを保護するのに用いられる。
【0005】
座席取り付けレール1は、レイアウト部材、特に座席への対応する応力を支持するのに充分な機械的特性を有する。しかしながらこれらの機械的特性だけでは充分ではない、というのは、図1に示すように、取り付けレール1は飛行機内の腐食に著しく晒されるからである。事実、飛行機のキャビンのフロアは、こぼれた液体、結露した水分、その他、種々の腐食部材の影響を受ける。したがってこれらのレールの機械的特性の急速な低下が見られることがある。したがって、稼動中の航空機において有資格作業者による頻繁な修理または交換が必要になる。
【0006】
また、座席の固定用設備は、規格化された飛行機内部レイアウト図を満たしている。
【0007】
ただ、数社の航空会社に特有な運行および快適性に関する基準を満たすためには、飛行機の内部レイアウトにおいてより高い柔軟性を提供する座席固定用設備を使用できるようにすることが重要である。
【0008】
また、搭乗する乗客が少ないフライトの場合、たとえば、内部レイアウトをより容易に変えることができれば有利であろう。そうすることにより、座席列間、さらには座席間により大きなスペースを設けることができ、追加構造の設置に頼ることなく、乗客により高い快適性を提供することができよう。あるいは、航空会社のニーズに応じて、一次構造を変更することなくカーゴスペースを設けることも可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の目的は、その設計およびその使用方法が単純明快であり、安価であり、最小の質量でありながらきわめて高い機械的強度、耐腐食性を有する、航空機などの乗客輸送手段用フロアパネルを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、乗客輸送手段の内部レイアウトにおいて高い柔軟性を可能にするレイアウト部材のアセンブリーの固定用設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のため、本発明は、航空機など、乗客の輸送手段用フロアパネルに関する。
【0012】
本発明によれば、このパネルは、長手方向軸を有しパネルの厚さ方向に挿入される少なくとも1つの取り付けレールを備える。
【0013】
このフロアパネルの種々の個別の実施形態においては、各フロアパネルは、多数の技術的組み合せが可能な個々の長所を有する:
− パネルは、前記レール上に、レイアウト部材、特に座席を設置できるよう、長手方向軸方向に配置された長形開口部を有する上面を含む。
【0014】
レイアウト部材のアセンブリーとの結合部の幾何学的設計は先行技術の原理と比較して変化していないことに留意すべきである。
− パネルは、ハニカムコアの対向外面上にそれぞれ配設された少なくとも2つの壁を有するサンドイッチコア構造を含み、これらの壁は複合材のアーマチャーであり、取り付けレールはI字形の断面を有し、ハニカムコアに挿入される。
【0015】
有利には、この取り付けレールは、航空分野における用途に関連する機械的強度および耐腐食性についての基準を満たす材料で作製される。たとえばチタンあるいはアルミニウム合金が該当する。
【0016】
本発明は、ほぼ平行なクロスビームのアセンブリーのみを含む乗客輸送用手段内へのレイアウト部材、とくに座席のアセンブリーの固定用設備にも関する。
【0017】
本発明によれば、この設備は、上で記載したようなフロアパネルを含み、これらのフロアパネルはボルトタイプの固定手段によりクロスビームに組み付けられる。
【0018】
最後に本発明は、レイアウト部材アセンブリーの固定用そのような設備を含む航空機に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態による乗客の輸送手段用フロアパネルを示す図である。フロアパネル9は、ハニカムコア12の対向する外面上にそれぞれ配置された少なくとも2つの壁10、11を備えるサンドイッチコア構造からなる。
【0021】
これらの壁10、11は複合材からなる骨組の一部を構成する。複合材は、炭素複合材、黒鉛複合材、ガラス複合材、シリカ複合材、炭化ケイ素複合材、その他、航空分野と密接に結びついている軽量という制約を満たしつつ必要な剛性を提供するあらゆる複合材を包含する非限定的群の中から選択することができる。
【0022】
ハニカムコア12はたとえばアラミドから作製することができる。事実、アラミドファイバーは引火性が低く、破断強度が高く、弾性係数が高い。
【0023】
先行技術における場合と同様、モケットなどのフロアリング13をフロアパネル9上に設置できる。その際、このフロアリング13はフロアパネルの保護材として使用される。
【0024】
フロアパネル9は、パネル9の厚さ方向に挿入された、長手方向軸15を有する1つの座席取り付けレール14を備える。ただ、同パネル9は、ユーザーのニーズに応じたレイアウト構成ができるよう、種々の位置に設置される2つまたは複数のレール14を含むこともできる。
【0025】
取り付けレール14は、上下逆転T字形を有し下側フランジ16および垂直コア17を含む下側レール部分を備える。また取り付けレールは、一対のフランジ18、19を備える上側レール部分も含む。これらのフランジは、取り付けレールの長手方向軸15の方向に沿って横方向に間隔がとられ、リップ20、21をそれぞれ備える。これらのリップ20、21は、取り付けレールの長手方向軸15に沿って配設される摺動面を形成するよう、それぞれ相手側に向いている。この摺動面は、レイアウト部材、および特に座席レールの固定に用いられる。
【0026】
しかしながら取り付けレール14は、専ら例として示したこの実施形態に限定されるものではなく、たとえば、Q字形の断面を有する垂直コア17、下側フランジ16を含むことができる。
【0027】
フロアパネルの上面22は、レイアウト部材の固定ができるよう、取り付けレールの長手方向軸15に沿って配置された長形開口部を有する。
【0028】
特定の実施形態では、レール14は、コア12および少なくとも2つの壁10、11を備えるアセンブリーの組み付け前に、フロアパネル9に挿入される。そのために、少なくとも下側フランジを収納することができる凹部をコア12の厚さ方向に加工し、取り付けレール14の少なくも外表面部分を非重合化接着剤のフィルムで覆う。下側フランジを少なくとも凹部の中に入れ、レールをコアサンドイッチ構造に固設するために重合化する。凹部は、フロアパネル9の厚さ方向に挿入されるようになっている取り付けレール14の部分を収納するのに適した形態を有する。
【0029】
上側レール部分は、クロスメンバー上でパネルの固定手段26を通過させるための少なくとも1つの穴をそれぞれが有する2つのサイドフランジ24、25も含む。この固定手段26はたとえば鋼またはチタン製のボルトである。
【0030】
しかしながら、コア12および壁10、11は、ボルトによって生じる荷重のようにサンドイッチ構造のある一点に集中する荷重を支持するには機械的特性が不充分である。したがってパネル9は、固定手段26とサンドイッチ構造の結合を実現し、局所的である結合応力をサンドイッチ構造のうちのより大きい体積に分散させるためのインサート27を備える。
【0031】
これらのインサート27のそれぞれはボルトタイプの固定手段26を通過させるための中空円筒体を備える。さらに、応力をパネルの下面のより広いゾーンに分布させるために、フロアパネル9の下面の外表面に載架するようになるフランジまたはビッグヘッドボルトも備える。有利には、サンドイッチ構造の気密性を確かなものにするよう、フランジとフロアパネル9の下壁の外表面との間に接着層が配設される。
【0032】
中空円筒体の主軸がサイドフランジ24、25の対応する穴にセンタリングされるよう、インサート27がサンドイッチ構造に組みつけられる。このインサート27は金属製であり、好ましくは、アルミニウム合金、チタン合金、さらにはインバー合金から作製される。
【0033】
図3は本発明の特定の実施形態におけるレイアウト部材の固定用設備の部分断面図である。この設備は航空機のキャビンの内部レイアウトができるようにすることを目的とする。
【0034】
この設備は、高さが一定でほぼ平行なクロスビーム28のアセンブリーと、ボルトタイプの固定手段26によりこれらのクロスビーム28に組み付けられた、上で記載したようなフロアパネル9を含む。有利には、これらの固定手段26はパネルの各コーナーに設置される(図2a)。さらに、より高い取り付けレール14の剛性を確保するために、固定手段26は固定レールのサイドフランジ24、25のレベルに設けられるのが好ましい。
【0035】
2つのフロアパネル9の長手方向接合がクロスビーム28の上方で行われる時には、これらのパネルとこのクロスビーム28のフランジ30との間にガスケット29を設置するのが好ましい。2つのフロアパネル9の長手方向接合がクロスビーム28の上方で行われない時には、これらのフロアパネル9と、連続する2つのクロスビーム28の上側フランジの間にガスケット29を設置するのが有利である(図3)。このガスケット29の材質は、金属製、複合材、あるいは場合によってはゴムとすることができる。
【0036】
これらのクロスビーム28はそれぞれ航空機の胴体に固定される。これらのクロスビーム28はたとえば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で作製される。
【0037】
システム(ケーブル、エアー配管…)31を設置するために、通常、コンテナを使用するまたはしない貨物室として使用される航空機の下部内にスペースが設けられる。このスペースは、飾りパネル32によって得られるフロア構造から分離する必要がある。これらの飾りパネル32はクロスビーム28の下部に連結された形状鋼33に固定される。したがってそれぞれのクロスビーム28は、システム31を通すためのスペースを作り出すことができる形状鋼33のアセンブリーを支持する。これらの飾りパネル32は貨物室の天井を形成する。システム31は飾りパネル32とクロスビーム28の下部の間に配設される。これらの形状鋼33は軽量合金で作製することができる。形状鋼はたとえばアルミニウム製である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】先行技術のキャビンフロアの部分断面図である。
【図2a】本発明の一実施形態による乗客輸送手段のキャビンフロアの略図で、キャビンフロアの上面図である。
【図2b】本発明の一実施形態による乗客輸送手段のキャビンフロアの略図で、キャビンフロアのA−A軸断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による航空機内でのレイアウト部材の固定用設備の部分断面略図である。
【符号の説明】
【0039】
9 フロアパネル
10、11 壁
12 ハニカムコア
13 フロアリング
14 取り付けレール
15 長手方向軸
16 下側フランジ
17 垂直コア
18、19 フランジ
20、21 リップ
22 上面
24、25 サイドフランジ
26 固定手段
27 インサート
28 クロスビーム
29 ガスケット
30 フランジ
31 システム
32 飾りパネル
33 形状鋼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸(15)を有しパネル(9)の厚さ方向に挿入される少なくとも1つの取り付けレール(14)を備えるとともに、前記パネルの固定手段(26)と協動するようになっているインサート(27)を備えることを特徴とする乗客輸送手段用フロアパネル。
【請求項2】
前記レール(14)上にレイアウト部材を設置できるよう、前記長手方向軸(15)方向に配置された長形開口部を有する上面(22)からなることを特徴とする請求項1に記載のパネル。
【請求項3】
ハニカムコア(12)の対向する外面上にそれぞれ配設された少なくとも2つの壁(10、11)を有するサンドイッチコア構造からなり、前記壁(10、11)が複合材からなる骨組を有するであり、前記取り付けレール(14)がI字形の断面を有し、前記ハニカムコア(12)に挿入されることを特徴とする請求項1または2に記載のパネル。
【請求項4】
前記取り付けレール(14)が、固定手段(26)を通すための少なくとも1つの穴をそれぞれが有するサイドフランジ(24、25)からなる上側レール部分を備え、前記インサート(27)のそれぞれが、対応する穴を中心とし前記ハニカムコア(12)に固設された中空円筒体を備えることを特徴とする請求項3に記載のパネル。
【請求項5】
前記取り付けレール(14)が、1対のフランジ(18、19)を備える上側レール部分からなり、前記フランジ(18、19)が前記長手方向軸(15)の方向に沿って横方向に間隔がとられ、それぞれリップ(20、21)を備え、前記リップが前記取り付けレールの長手方向軸(15)方向に配置される摺動面を形成するよう相互に向き合うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のパネル。
【請求項6】
ほぼ平行なクロスビーム(28)のアセンブリーからなる乗客輸送用手段内へのレイアウト部材の固定用設備において、固定手段(26)によりクロスビーム(28)に組み付けられた請求項1から5のいずれか1項に記載のフロアパネル(9)からなることを特徴とする乗客輸送用手段内へのレイアウト部材の固定用設備。
【請求項7】
2つのフロアパネル(9)の各接合部にガスケット(29)を備え、前記ガスケット(29)が前記パネルと少なくとも1つのクロスビーム(28)のフランジの間に設置されることを特徴とする請求項6に記載の設備。
【請求項8】
前記クロスビーム(28)のそれぞれが、システム(31)の通過のための空間を設けることができる形状鋼(33)のアセンブリーを支持することを特徴とする請求項6または7に記載の設備。
【請求項9】
設備が請求項6から8のいずれか1項に記載の設備であることを特徴とするレイアウト部材の固定用設備を含む航空機。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−509840(P2009−509840A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532755(P2008−532755)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066711
【国際公開番号】WO2007/036508
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(501446228)エアバス・フランス (93)