フロアマット及びこれを用いたフロア構造
【課題】 設置面に対して滑らないように安定して設置することができるとともに、優れた吸音性能を備えたフロアマット、及びこれを用いたフロア構造を提供する。
【解決手段】 織物等からなる表面繊維層2と軟質材料からなる裏面軟質層3とを備えたフロアマット1において、上記裏面軟質層3に、上面と下面を貫通する複数の貫通孔25と、上記下面から先端近傍の所定位置までは同一の横断面を有する軸部21を備えた複数の柱状部20とを、それぞれ上記裏面軟質層3をその上方又は下方から見たときに所定のパターンで配置して設けた。
【解決手段】 織物等からなる表面繊維層2と軟質材料からなる裏面軟質層3とを備えたフロアマット1において、上記裏面軟質層3に、上面と下面を貫通する複数の貫通孔25と、上記下面から先端近傍の所定位置までは同一の横断面を有する軸部21を備えた複数の柱状部20とを、それぞれ上記裏面軟質層3をその上方又は下方から見たときに所定のパターンで配置して設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として自動車の車輌フロア材上に設置するためのフロアマット、及びこれを用いたフロア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車輌フロア材は複数の層からなり、その最上層は、車室内側の表面を化粧するための床カーペット層となっている。床カーペット層は、基布と基布表面から立ち上がった起毛とからなり、特にタフテッドカーペット又はニードルパンチカーペットが広く用いられている。
【0003】
床カーペット層の上には、床カーペット層の汚れを防いだり、車室内の意匠性を高めたりする目的で、フロアマットが敷設されるのが一般的である。そのような自動車用のフロアマットとしては、図12に示す従来品(1)や、図13に示す従来品(2)等が知られている。
【0004】
図12に示すように、従来品(1)101は、表面カーペット層102と裏面ゴム層103とからなり、裏面ゴム層103の下面に、多数の滑り防止用突起104が設けられている。滑り防止用突起104は、先端に向かうに連れて横断面の径が小さくなる略円錐状であり、床カーペット層121の起毛122の間へ、比較的小径の先端から比較的大径の基端までスムーズに入り込むようになっている。このようにして滑り防止用突起104が床カーペット層121の中へ入り込むことによって、フロアマット101が床カーペット層121上を滑るのを防ぐことができる。
【0005】
他方、従来品(2)111は、図13に示すように、表面カーペット層112の裏側にフェルトからなる吸音材層113が積層されたものである。従来品(2)111では、その表面側(車室内側)から入射してきた音の一部を吸音材層113において吸収できるようになっている。なお、表面カーペット層の裏側に吸音材層を積層する構成は、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2004−198611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、床カーペット層上面とフロアマット下面との間に所定高さ以上の空間層を形成すると、その空間層において効果的に吸音することが可能である。つまり、車室内からフロアマット表面へ入射して空間層へ達した音は、床カーペット層上面及びフロアマット下面において乱反射を繰り返し、反射する度に減衰していくため、結果として空間層において吸音することができる。
【0007】
この点に関して、図12に示す従来品(1)101は、裏面ゴム層103下面に滑り防止用突起104が設けられているため、滑り防止用突起104の高さ分だけ上記の空間層を形成できるようにも考えられる。しかし、滑り防止用突起104は、上述のように全体的に床カーペット層121の中へ入り込んでしまうため、従来品(1)101は、空間層を形成することが困難であり、有効に吸音することができるものではない。
【0008】
また、従来品(1)101における裏面ゴム層103は、ソリッド状のゴム又は熱可塑性エラストマーからなり、通気性を全く備えていない。したがって、従来品(1)101の表面側から入射してきた音を裏面ゴム層103で反射してしまい、従来品(1)101や車輌フロア材120によって吸音できないため、車室内の静粛性を阻害してしまう。
【0009】
他方、図13に示す従来品(2)111は、吸音材層113を備えているものの、その吸音材層113による吸音だけでは依然として十分な吸音効果を得ることができなかった。また、従来品(2)111は、その下面全体が床カーペット層121上面に当接した状態で設置されるため、上記のように空間層を形成して吸音性能を向上させることもできない。さらに、従来品(2)111は、従来品(1)101のような滑り防止用突起104を備えていないため、設置面に対して滑らないように安定して設置することができず、車輌運転の安全性が悪化する恐れがある。
【0010】
そこで、本発明は、設置面に対して滑らないように安定して設置することができるとともに、優れた吸音性能を備えたフロアマット、及びこれを用いたフロア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係るフロアマットは、
表面繊維層と軟質材料からなる裏面軟質層とを備えたものにおいて、
上記裏面軟質層は、
上記裏面軟質層の上面と下面を貫通すると共に上記裏面軟質層をその上方又は下方から見たときに所定のパターンで配置されている複数の貫通孔と、
上記下面から下方に伸びると共に上記下面から先端近傍の所定位置までは同一の横断面を有する軸部を備えており、上記裏面軟質層をその上方又は下方から見たときに所定のパターンで配置されている複数の柱状部を備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2に係るフロアマットは、上記裏面軟質層が、上記複数の貫通孔の下面開口部をそれぞれ囲み且つ上記貫通孔から径方向外側に向かってすり鉢状に広がる傾斜面を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3に係るフロアマットは、上記複数の柱状部が、上下方向の所定の長さを有する第1の柱状部と、上記第1の柱状部よりも長さの短い第2の柱状部を含み、上記裏面軟質層をその上方又は下方から見たときに上記第1の柱状部と第2の柱状部が所定のパターンで配置されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4に係るフロアマットは、上記柱状部の径が2〜6mmであり、上記柱状部の長さが2〜6mmであることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項5に係るフロアマットは、上記柱状部における上記軸部の長さが1〜3.5mmであることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項6に係るフロアマットは、上記柱状部が、上記裏面軟質層をその上方又は下方から見たときに、5〜20mmの間隔を空けて格子状に配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項7に係るフロアマットは、上記貫通孔の開孔率が2〜20%であることを特徴とする。ここで、貫通孔の開孔率とは、裏面軟質層の面積に対する貫通孔の開孔面積の総和の割合で定義されるものである。
【0018】
本発明の請求項8に係るフロアマットは、上記裏面軟質層の厚みが0.5〜2mmであることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項9に係るフロアマットは、上記表面繊維層が、基布とその基布から立ち上がった起毛とを備え、上記表面繊維層の目付が500〜3000g/m2であり、上記表面繊維層における起毛の高さが3〜20mmであることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項10に係るフロアマットは、上記表面繊維層と上記裏面軟質層との間に、通気性を有する吸音材層が介在していることを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項11に係るフロアマットは、上記吸音材層の目付が100〜1000g/m2であり、上記吸音材層の厚みが1〜10mmであることを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項12に係るフロアマットは、上記貫通孔の開孔率をβ(%)、上記軸部の長さをα(mm)、及び上記裏面軟質層の厚みをγ(mm)とそれぞれしたときに、下記の関係式を満たしていることを特徴とする。
【数1】
【0023】
本発明の請求項13に係るフロア構造は、上記のフロアマットにおける上記裏面軟質層の下に床繊維層が配置され、その床繊維層上面と上記裏面軟質層下面との間に空間層が形成されていることを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項14に係るフロア構造は、上記床繊維層が、基布とその基布表面から立ち上った起毛とを備え、その起毛の長さが0.5〜3mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、裏面軟質層の柱状部が、裏面軟質層下面から先端近傍の所定位置まで同一の横断面を有する軸部を備えたものであり、フロアマットの下側に配置された床繊維層の中へ深く入り込まない形状となっているため、床繊維層上面と裏面軟質層下面との間に所望高さの空間層を形成することができる。そして、その空間層に達した音は、床繊維層上面及び裏面軟質層下面おいて乱反射を繰り返し、反射する度に減衰するため、空間層において有効に吸音することができ、室内の静粛性を向上させることができる。
【0026】
しかも、裏面軟質層は、所定パターンで配置された複数の貫通孔により通気性が確保されているため、裏面軟質層の下側に形成された上記空間層の吸音機能、及びその空間層のさらに下側のフロア材の吸音機能を阻害するのを防ぐことができる。
【0027】
特に、裏面軟質層に、貫通孔の下面開口部を囲むすり鉢状の傾斜面を設けることで、上記のように反射を繰り返す音を、再び貫通孔から出ていかないように上記傾斜面で反射させることができる。したがって、上述した音の反射を十分に繰り返させて、その音を十分に減衰させることができ、空間層における吸音効果を一層高めることができる。
【0028】
さらに、裏面軟質層の柱状部は、従来の滑り防止用突起と同様、フロアマットが設置面上を滑ることを防ぐ機能も有しており、設置面に対して滑らないように安定して設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1〜図3は、本発明の第1の実施形態に係るフロアマット1を示している。このフロアマット1は、図1に示すように、自動車の床に予め取り付けられた車輌フロア材30上に敷設されるものである。
【0030】
車輌フロア材30は、複数の層を備えており、その最上層が床繊維層31となっている。車輌フロア材30は、床繊維層31以外の層を1又は複数備えているが、その層の種類は特に限定されるものではない。なお、車輌フロア材30に設けられる床繊維層31以外の層としては、例えば、車輌フロア材30の成型に寄与する熱可塑性樹脂層、吸音機能を備えた吸音材層、遮音機能を備えた遮音材層等が挙げられる。
【0031】
床繊維層31は、図2に示すように、基布32とその基布32表面から立ち上がった起毛33とを備えている。起毛33の高さは、0.5〜3mmである。床繊維層31の材料としては、少なくとも1種類の繊維が用いられ、天然繊維と合成繊維の少なくとも一方が用いられる。床繊維層31としては、様々な織物等が用いられ、特にタフテッドカーペット又はニードルパンチカーペットが好適に用いられる。
【0032】
フロアマット1は、織物等からなる表面繊維層2と軟質材料からなる裏面軟質層3とを備えている。また、表面繊維層2と裏面軟質層3との間に、通気性を有する吸音材層4が介在している。
【0033】
表面繊維層2は、基布11とその基布11から立ち上がった起毛12とを備えている。表面繊維層2の材料としては、少なくとも1種類の繊維が用いられ、天然繊維と合成繊維の少なくとも一方が用いられる。表面繊維層2における繊維の種類は、通気性を有するものであれば良く、特に限定されるものではない。
【0034】
表面繊維層2の素材としては、様々な織物等が用いられるが、外観、機能、及びコスト面等の観点から、タフテッドカーペット又はニードルパンチカーペットが好適に用いられる。タフテッドカーペット又はニードルパンチカーペットを用いる場合は、合繊繊維製であり、且つ、裏面に合成ゴムラテックス等により薄くバッキング処理されたものが特に好適に用いられる。
【0035】
表面繊維層2の目付は、500〜3000g/m2とするのが好ましく、3000g/m2とするのが最適である。表面繊維層2における起毛12の高さは、3〜20mmとするのが好ましく、20mmとするのが最適である。
【0036】
裏面軟質層3の素材としては、例えば、ソリッド状のゴム又はゴム発泡体が用いられる。裏面軟質層3の原料としては、天然ゴム、合成ゴム、又は再生ゴム等の原料ゴムが用いられる。また、裏面軟質層3は、上記原料ゴムに、必要に応じて加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤、補強剤、充填剤、軟化剤、発泡剤、発泡助剤、及びその他のゴム薬品剤を調合して製造される。ただし、裏面軟質層3の素材として、ゴム以外の軟質材料を用いることを妨げるものではなく、例えば熱可塑性エラストマーを用いても良い。
【0037】
裏面軟質層3の比重は、0.3〜3.0g/cm3とするのが好ましく、裏面軟質層3の単位面積当たりの重量は、1000g/m2とするのが最適である。裏面軟質層3の厚みは、0.5〜2.0mmとするのが好ましく、1.5mmとするのが最適である。裏面軟質層の硬度は、JIS K 6253規格(タイプA)において40〜85とするのが好ましい。
【0038】
裏面軟質層3は、裏面軟質層3をその上方又は下方から見たときに所定のパターンで配置されている複数の柱状部20を備えている。具体的に、柱状部20は、裏面軟質層3をその上方又は下方から見たときに、図3に示すように一定の間隔を空けて格子状に配置されている。隣接する柱状部20の軸芯間の間隔は、例えば5〜20mmとするのが好ましく、15mmとするのが最適である。ただし、柱状部20は、必ずしも上記のパターンで配置する必要はなく、様々なパターンで配置することができる。
【0039】
これら柱状部20は、裏面軟質層3下面から下方に伸びると共に上記下面から先端近傍の所定位置までは同一の横断面を有する軸部21と、先端に向かうに連れて横断面の径が小さくなる先端部22とを備えている。
【0040】
柱状部20の先端部22は、具体的には、円錐状に形成されており、床繊維層31における起毛33の間へスムーズに入り込むようになっている。したがって、床繊維層31の上にフロアマット1を敷設した状態では、柱状部20の先端部22でフロアマット1を確実に支持して、フロアマット1が床繊維層31上を滑るのを防止できるようになっている。なお、先端部22の形状は、先端に向かうに連れて横断面の径が小さくなる形状であれば特に限定されるものではなく、例えば多角錐状であっても良い。
【0041】
柱状部20の軸部21は、具体的には、円柱状に形成されており、床繊維層31における起毛33の間へ容易には入り込まないようになっている。したがって、床繊維層31の上にフロアマット1を敷設した状態では、柱状部20の軸部21が床繊維層31の起毛33上端より上側に突出するため、裏面軟質層3の下に配置された床繊維層31の上面と、裏面軟質層3下面との間に空間層29が形成される。なお、軸部21の形状は、裏面軟質層3下面から先端近傍の所定位置まで同一の横断面を有する形状であれば特に限定されるものではなく、例えば多角柱状であっても良い。
【0042】
柱状部20の径は、2〜6mmとするのが好ましく、4mmとするのが最適である。また、柱状部20の長さは、2〜6mmとするのが好ましく、5mmとするのが最適である。さらに、柱状部20の軸部21の長さは、1〜3.5mmとするのが好ましく、3mmとするのが最適である。
【0043】
また、裏面軟質層3は、裏面軟質層3の上面と下面を貫通すると共に裏面軟質層3をその上方又は下方から見たときに所定のパターンで配置されている複数の貫通孔25を備えている。具体的に、貫通孔25は、裏面軟質層3をその上方又は下方から見たときに、図3に示すように柱状部20と干渉しないようにして、一定の間隔を空けて格子状に配置されている。隣接する貫通孔25の中心間の間隔は、隣接する柱状部20の軸芯間の間隔と等しくなるように設定されている。ただし、貫通孔25は、必ずしも上記のパターンで配置する必要はなく、柱状部20と干渉しないようにすれば、様々なパターンで配置することができる。
【0044】
このように裏面軟質層3に貫通孔25を設けることにより、裏面軟質層3の通気性が確保され、フロアマット1表面から入射してきた音が裏面軟質層3を通過できるようになっている。
【0045】
貫通孔25の開孔率(裏面軟質層3の面積に対する貫通孔25の開孔面積の総和の割合)は、2〜20%とするのが好ましく、10%とするのが最適である。これにより、フロアマット1の防水性を確保しつつ、良好な通気性が得られるようになっている。
【0046】
ここで、貫通孔25の開孔率、軸部21の長さ、及び裏面軟質層3の厚みは、貫通孔25の開孔率をβ(%)、軸部21の長さをα(mm)、及び裏面軟質層3の厚みをγ(mm)としたときに、下記の関係式(1)を満たすように設定するのが望ましい。
【数2】
これにより、空間層29における後述の吸音機能を十分に発揮することができる。
【0047】
また、裏面軟質層3は、複数の貫通孔25の下面開口部をそれぞれ囲み且つ貫通孔25から径方向外側に向かってすり鉢状に広がる傾斜面26を有する。この傾斜面26を設けることにより、裏面軟質層3の下側から貫通孔25へ入射しようとする音が、傾斜面26で反射して貫通孔25へ入り込みにくいようになっている。
【0048】
吸音材層4の素材としては、例えば不織布、フェルト、又はウレタン発泡体が用いられるが、通気性を有するものであれば、特に限定されるものではない。吸音材層4の目付は100〜1000g/m2とするのが好ましい。吸音材層4の厚みは1〜10mmとするのが好ましく、10mmとするのが最適である。
【0049】
以上の構成からなるフロアマット1を車輌フロア材30の上に敷設すると、フロアマット1表面から入射した音が吸音材層4において吸収され、吸収しきれなかった音は吸音材層4を通過して裏面軟質層3に達する。裏面軟質層3に達した音は貫通孔25を通り抜けて上述の空間層29に達し、その空間層29において吸収される。すなわち、空間層29に達した音は、床繊維層31上面及び裏面軟質層3下面において乱反射を繰り返し、反射する度に減衰するため、空間層29において有効に吸音できるようになっている。
【0050】
また、そのように反射を繰り返す音は、上記傾斜面26で反射することによって、空間層29から貫通孔25を通って出ていきにくくなっているため、上述した音の反射を十分に繰り返させて、その音を十分に減衰させることができ、空間層29における吸音効果が一層高められている。
【0051】
また、フロアマット1を車輌フロア材30の上に敷設した状態においては、柱状部20の先端部22が床繊維層31の中へ入り込んでフロアマット1を確実に支持しているため、フロアマット1が車輌フロア材30上を滑るのを防ぐことができ、自動車の安全運転に支障をきたさないようになっている。
【0052】
図4及び図5は、この本発明の第2の実施形態に係るフロアマット41を示している。この実施形態では、裏面軟質層3が、上下方向に所定の長さを有する第1の柱状部50と、第1の柱状部50よりも長さの短い第2の柱状部60とを備え、裏面軟質層3をその上方又は下方から見たときに第1の柱状部50と第2の柱状部60が所定のパターンで配置されている。
【0053】
具体的には、図5に示すように、すべての柱状部50,60が一定の間隔を空けて格子状となるように配置されると共に、第1の柱状部50と第2の柱状部60とが、横方向及び縦方向において交互に並ぶように配置されている。ただし、第1の柱状部50及び第2の柱状部60は、上記以外にも様々なパターンで配置することができる。
【0054】
第2の柱状部60は第1の柱状部50よりも短いため、図4に示すように、第1の柱状部50のみでフロアマット41を支持して、第2の柱状部60が床繊維層31の上方に浮いた状態で、フロアマット41を敷設することが可能であり、その場合は、空間層29の高さを比較的大きく確保することができる。
【0055】
また、第2の柱状部60は、第1の柱状部50よりも大径となっており、第2の柱状部60の軸部61は、床繊維層31の起毛33の間へ第1の柱状部50の軸部51よりも一層入り込みにくくなっている。したがって、仮に床繊維層31における起毛33間の隙間が大きく、その隙間へ第1の柱状部50の軸部51が入り込んでしまう場合でも、第2の柱状部60の軸部61は床繊維層31へ入り込んでしまわないため、ある程度の高さを備えた空間層29を確保することが可能である。
【0056】
第1の柱状部50の径は、2〜6mmとするのが好ましく、4mmとするのが最適である。また、第1の柱状部50の長さは、2〜6mmとするのが好ましく、5mmとするのが最適である。さらに、第1の柱状部50における軸部51の長さは、1〜3.5mmとするのが好ましく、3.5mmとするのが最適である。
【0057】
第2の柱状部60の径は、第1の柱状部50の径よりも大きい範囲内で、4〜8mmとするのが好ましく、6mmとするのが最適である。また、第2の柱状部60の長さは、第1の柱状部50よりも短い範囲内で、1〜3mmとするのが好ましく、2mmとするのが最適である。さらに、第2の柱状部60における軸部61の長さは、第1の柱状部50の軸部51よりも短い範囲内で、1〜2mmとするのが好ましく、2mmとするのが最適である。
【0058】
なお、第2の実施形態において、その他の構成及び効果は第1の実施形態と同様であり、図4及び図5において、第1の実施形態と同様の機能を有する部材については同符号を付してある。
【0059】
次に、フロアマット1,41の製造方法について説明する。ただし、フロアマット1,41の製造方法は、必ずしも以下の製造方法に限定されるものではなく、様々な方法で製造することができる。
【0060】
フロアマット1,41の製造には、裏面軟質層3の素材である未加硫ゴムシート66の加硫、裏面軟質層3の成型、及び裏面軟質層3と吸音材層4との接着を同時に行うために、図6に示す加硫成型用プレス機68を用いる。なお、裏面軟質層3の素材として発泡体を用いる場合は、未加硫ゴムシート66の発泡も同時に行うようにしても良い。
【0061】
加硫成型用プレス機68は、上金型70と下金型90とを備えている。上金型70下面には、図7に示すように、裏面軟質層3の柱状部20を成型するための柱状部成型用の凹部72が複数設けられている。なお、上金型70は、上層75と下層76とからなっており、柱状部成型用の凹部72は、上金型70の下層76を上下方向に貫通して設けられている。これにより、未加硫ゴムシート66の加硫及び成型を行う際に、未加硫ゴムシート66に調合されたゴム薬品からガスが発生しても、柱状部成型用の凹部72にガスがたまらないため、成型不良を防止することができる。
【0062】
また、上金型70には、裏面軟質層3の貫通孔成型用のピン71が下方に突出して設けられている。これにより、加硫成型用プレス機68を閉じた際に、貫通孔成型用ピン71が未加硫ゴムシート66を貫通して裏面軟質層3の貫通孔25が成型される。貫通孔成型用のピン71は、貫通孔25を確実に開けることができるように、4〜10mmとすることが好ましい。さらに、上金型70下面には、貫通孔成型用のピン71を囲むようにして、傾斜面成型用の凹部73が設けられている。
【0063】
下金型90は、加硫成型用プレス機68を閉じた状態における上金型70と下金型90との隙間を調節するスペーサー92を備えている。このスペーサー92の厚みを調節することによって、加圧による吸音材67の潰れを防ぎ、裏面軟質層3を成型するだけの微弱な圧力を制御することができる。
【0064】
また、下金型90上面には、上金型70の貫通孔成型用のピン71の位置に対応してピン回避用の凹部91が設けられている。これにより、加硫成型用プレス機68を閉じた際に、貫通孔成型用のピン71が下金型90に干渉しないようになっている。
【0065】
加硫成型用プレス機68を用いる際には、その準備として、裏面軟質層3の上記原料ゴムと、要求される機能に合わせて必要となるゴム用薬品とを調合してなるゴム組成物を混練りし、混練りしたゴム組成物をカレンダーロールで0.5〜2mmの厚みに圧延して、フロアマット1,41よりも僅かに大きい寸法になるように裁断することで、裏面軟質層3の素材である未加硫ゴムシート66を形成しておく。また、吸音材層4の素材である吸音材67を、フロアマット1,41よりも僅かに大きい寸法となるように裁断しておく。
【0066】
加硫成型用プレス機68は、上金型70の温度が150〜180℃に、下金型90の温度が40〜60℃に保たれるようにそれぞれ調整する。上金型70の温度調整は、図6に示す蒸気入口81から導入し蒸気出口82から排出する蒸気の温度及び圧力と、断熱材83の温度とによって、プレス上盤80を常に150〜180℃に保つように調整することで行う。下金型90の温度調整は、冷却水入口86から導入し冷却水出口87から排出する冷却水の循環と、断熱材88の温度とによって、プレス下盤85を常に40〜60℃に保つように調整することで行う。
【0067】
このように、加硫成型用プレス機68の上金型70及び下金型90の温度調整を行った状態において、下金型90の上に吸音材67を載置し、さらに吸音材67の上に未加硫ゴムシート66を重ね置く。そして、加硫成型用プレス機68を閉じて、589kPa以下の圧力で5〜8分間の加圧及び加熱を行うことで、未加硫ゴムシート66の加硫、裏面軟質層3の成型、及び裏面軟質層3と吸音材層4との接着を同時に行うことができる。
【0068】
これにより、裏面軟質層3と吸音材層4とが一体的に成型され、その成型品を、加硫成型用プレス機68を開放して取り出す。そして、取り出した成型品における吸音材層4に、表面繊維層2の素材である織物等を接着することで、フロアマット1,41を製造できる。吸音材層4と表面繊維層2との接着は、通気性を阻害しないような部分接着により行うものとし、例えば、蜘蛛の巣状ホットメルト、穴開きホットメルト、又は接着剤等による部分的な接着にする。
【実施例】
【0069】
本発明に係るフロアマットの吸音性能及び滑り防止性能を以下の試験によって確認した。本発明品のサンプルは、上述の製造方法によって、吸音材(厚み5mm、目付500g/m2)と未加硫ゴムシート(厚み1.5mm、比重1.6g/cm3)とを加硫成型用プレス機によって一体的に成型し、それにより得られた成型品とカーペット(目付800g/m2、パイル長8mm)とを貼り合わせて作製した。また、裏面軟質層の柱状部は、長さが5mm、径が3mmとなるように成型し、10mmの間隔を空けて格子状に配置して設けた。また、比較例として、図12に示す従来品(1)、及び図13に示す従来品(2)のサンプルを、適当な大きさとなるように裁断して作製した。
【0070】
(吸音性能評価試験)
本発明品の吸音性能を確認する試験では、本発明品のサンプル、従来品(1)のサンプル及び従来品(2)のサンプルについて、JISA1405に準じて垂直入射法吸音率を測定した。ただし、本発明品については、貫通孔の開孔率が異なる複数のサンプルを作製し、それぞれのサンプルについて吸音率(%)を測定した。
【0071】
図8は、貫通孔の開孔率が10%である本発明品、従来品(1)及び従来品(2)の吸音率を示すグラフである。図8に示すように、従来品(1)は全周波数領域で吸音率が悪く、従来品(2)は1000Hz以上の周波数領域で吸音率が高くなることが確認できた。これらに対して、本発明品は、全周波数領域で従来品(1)及び従来品(2)よりも優れた吸音率を示している。特に2000Hz以下の領域では、従来品(1)及び従来品(2)と比較して顕著に高い吸音率を示している。すなわち、一般的に20〜2000Hzと言われている人間の可聴域において、本発明品が大きな吸音効果を有することが確認できた。
【0072】
図9は、貫通孔の開孔率を0%、2%、5%、10%、15%及び20%とした場合の本発明品と、従来品(2)との吸音率を示すグラフである。図9に示すように、開孔率を10%とした場合の本発明品が、全周波数領域で最も高い吸音率を示している。続いて、開孔率が15%の本発明品、5%の本発明品、20%の本発明品、2%の本発明品の順で吸音率が高く、貫通孔を設けなかった場合(開孔率0%)の本発明品と従来品(2)とが、全周波数領域においてほぼ同じで且つ最も低い吸音率を示している。このことから、本発明品の吸音率が、貫通孔の開孔率によって変化することが分かり、開孔率を10%としたきに最も高い吸音効果を示すことが確認できた。
【0073】
図10は、貫通孔の開孔率を4.5%、10%及び33%とした場合の本発明品と、従来品(2)との吸音率を示すグラフであり、上記関係式(1)を満たす場合の吸音効果を示すものである。上述のように、軸部の長さαを1〜3.5mm、裏面軟質層の厚みγを0.5〜2.0mmとそれぞれ設定した場合、上記関係式(1)に当てはめると、貫通孔の開孔率βは、4.5<β<33(%)となる。すなわち、上記関係式(1)を満たした場合の本発明の吸音率は、図10の斜線部分に相当し、2000Hz以下の周波数領域において従来品(2)よりも高くなることが確認できる。
【0074】
(滑り防止性能評価試験)
本発明品の滑り防止性能を確認する試験では、本発明品のサンプル、従来品(1)のサンプル、及び従来品(2)のサンプルについて、滑り抵抗値(N)を測定した。この試験は、各サンプルを100×140mmの大きさに裁断してなる試験片を車輌フロア材上に設置し、試験片に1kgf(9.8N)の荷重をかけた状態で、100mm/分の速度で車輌フロア材表面と平行な方向へ引っ張って測定した。
【0075】
図11は、本発明品、従来品(1)及び従来品(2)の滑り抵抗値を示している。図11に示すように、従来品(2)の滑り抵抗値が最も低く、本発明品及び従来品(1)の滑り抵抗値は、ほぼ同等で且つ高い抵抗値を示すことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフロアマットを示す断面図である。
【図2】同じくその拡大断面図である。
【図3】同じくその下面側から見た斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るフロアマットを示す断面図である。
【図5】同じくその下面側から見た斜視図である。
【図6】フロアマットの製造に用いる加硫成型用プレス機を示す断面図である。
【図7】同じくその要部拡大断面図である。
【図8】本発明のフロアマット、従来品(1)、及び従来品(2)の吸音率を示す図である。
【図9】貫通孔の開孔率による吸音率の変化を示す図である。
【図10】貫通孔の開孔率を、所定の関係式を満たすように設定した場合における吸音率を示す図である。
【図11】本発明のフロアマット、従来品(1)、及び従来品(2)の滑り抵抗値を示す図である。
【図12】従来品(1)を示す断面図である。
【図13】従来品(2)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1,41 フロアマット
2 表面繊維層
3 裏面軟質層
4 吸音材層
11 表面繊維層の基布
12 表面繊維層の起毛
20 柱状部
21 柱状部の軸部
22 柱状部の先端部
25 貫通孔
26 傾斜面
31 床繊維層
32 床繊維層の基布
33 床繊維層の起毛
50 第1の柱状部
60 第2の柱状部
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として自動車の車輌フロア材上に設置するためのフロアマット、及びこれを用いたフロア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車輌フロア材は複数の層からなり、その最上層は、車室内側の表面を化粧するための床カーペット層となっている。床カーペット層は、基布と基布表面から立ち上がった起毛とからなり、特にタフテッドカーペット又はニードルパンチカーペットが広く用いられている。
【0003】
床カーペット層の上には、床カーペット層の汚れを防いだり、車室内の意匠性を高めたりする目的で、フロアマットが敷設されるのが一般的である。そのような自動車用のフロアマットとしては、図12に示す従来品(1)や、図13に示す従来品(2)等が知られている。
【0004】
図12に示すように、従来品(1)101は、表面カーペット層102と裏面ゴム層103とからなり、裏面ゴム層103の下面に、多数の滑り防止用突起104が設けられている。滑り防止用突起104は、先端に向かうに連れて横断面の径が小さくなる略円錐状であり、床カーペット層121の起毛122の間へ、比較的小径の先端から比較的大径の基端までスムーズに入り込むようになっている。このようにして滑り防止用突起104が床カーペット層121の中へ入り込むことによって、フロアマット101が床カーペット層121上を滑るのを防ぐことができる。
【0005】
他方、従来品(2)111は、図13に示すように、表面カーペット層112の裏側にフェルトからなる吸音材層113が積層されたものである。従来品(2)111では、その表面側(車室内側)から入射してきた音の一部を吸音材層113において吸収できるようになっている。なお、表面カーペット層の裏側に吸音材層を積層する構成は、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2004−198611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、床カーペット層上面とフロアマット下面との間に所定高さ以上の空間層を形成すると、その空間層において効果的に吸音することが可能である。つまり、車室内からフロアマット表面へ入射して空間層へ達した音は、床カーペット層上面及びフロアマット下面において乱反射を繰り返し、反射する度に減衰していくため、結果として空間層において吸音することができる。
【0007】
この点に関して、図12に示す従来品(1)101は、裏面ゴム層103下面に滑り防止用突起104が設けられているため、滑り防止用突起104の高さ分だけ上記の空間層を形成できるようにも考えられる。しかし、滑り防止用突起104は、上述のように全体的に床カーペット層121の中へ入り込んでしまうため、従来品(1)101は、空間層を形成することが困難であり、有効に吸音することができるものではない。
【0008】
また、従来品(1)101における裏面ゴム層103は、ソリッド状のゴム又は熱可塑性エラストマーからなり、通気性を全く備えていない。したがって、従来品(1)101の表面側から入射してきた音を裏面ゴム層103で反射してしまい、従来品(1)101や車輌フロア材120によって吸音できないため、車室内の静粛性を阻害してしまう。
【0009】
他方、図13に示す従来品(2)111は、吸音材層113を備えているものの、その吸音材層113による吸音だけでは依然として十分な吸音効果を得ることができなかった。また、従来品(2)111は、その下面全体が床カーペット層121上面に当接した状態で設置されるため、上記のように空間層を形成して吸音性能を向上させることもできない。さらに、従来品(2)111は、従来品(1)101のような滑り防止用突起104を備えていないため、設置面に対して滑らないように安定して設置することができず、車輌運転の安全性が悪化する恐れがある。
【0010】
そこで、本発明は、設置面に対して滑らないように安定して設置することができるとともに、優れた吸音性能を備えたフロアマット、及びこれを用いたフロア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係るフロアマットは、
表面繊維層と軟質材料からなる裏面軟質層とを備えたものにおいて、
上記裏面軟質層は、
上記裏面軟質層の上面と下面を貫通すると共に上記裏面軟質層をその上方又は下方から見たときに所定のパターンで配置されている複数の貫通孔と、
上記下面から下方に伸びると共に上記下面から先端近傍の所定位置までは同一の横断面を有する軸部を備えており、上記裏面軟質層をその上方又は下方から見たときに所定のパターンで配置されている複数の柱状部を備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2に係るフロアマットは、上記裏面軟質層が、上記複数の貫通孔の下面開口部をそれぞれ囲み且つ上記貫通孔から径方向外側に向かってすり鉢状に広がる傾斜面を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3に係るフロアマットは、上記複数の柱状部が、上下方向の所定の長さを有する第1の柱状部と、上記第1の柱状部よりも長さの短い第2の柱状部を含み、上記裏面軟質層をその上方又は下方から見たときに上記第1の柱状部と第2の柱状部が所定のパターンで配置されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4に係るフロアマットは、上記柱状部の径が2〜6mmであり、上記柱状部の長さが2〜6mmであることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項5に係るフロアマットは、上記柱状部における上記軸部の長さが1〜3.5mmであることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項6に係るフロアマットは、上記柱状部が、上記裏面軟質層をその上方又は下方から見たときに、5〜20mmの間隔を空けて格子状に配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項7に係るフロアマットは、上記貫通孔の開孔率が2〜20%であることを特徴とする。ここで、貫通孔の開孔率とは、裏面軟質層の面積に対する貫通孔の開孔面積の総和の割合で定義されるものである。
【0018】
本発明の請求項8に係るフロアマットは、上記裏面軟質層の厚みが0.5〜2mmであることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項9に係るフロアマットは、上記表面繊維層が、基布とその基布から立ち上がった起毛とを備え、上記表面繊維層の目付が500〜3000g/m2であり、上記表面繊維層における起毛の高さが3〜20mmであることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項10に係るフロアマットは、上記表面繊維層と上記裏面軟質層との間に、通気性を有する吸音材層が介在していることを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項11に係るフロアマットは、上記吸音材層の目付が100〜1000g/m2であり、上記吸音材層の厚みが1〜10mmであることを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項12に係るフロアマットは、上記貫通孔の開孔率をβ(%)、上記軸部の長さをα(mm)、及び上記裏面軟質層の厚みをγ(mm)とそれぞれしたときに、下記の関係式を満たしていることを特徴とする。
【数1】
【0023】
本発明の請求項13に係るフロア構造は、上記のフロアマットにおける上記裏面軟質層の下に床繊維層が配置され、その床繊維層上面と上記裏面軟質層下面との間に空間層が形成されていることを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項14に係るフロア構造は、上記床繊維層が、基布とその基布表面から立ち上った起毛とを備え、その起毛の長さが0.5〜3mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、裏面軟質層の柱状部が、裏面軟質層下面から先端近傍の所定位置まで同一の横断面を有する軸部を備えたものであり、フロアマットの下側に配置された床繊維層の中へ深く入り込まない形状となっているため、床繊維層上面と裏面軟質層下面との間に所望高さの空間層を形成することができる。そして、その空間層に達した音は、床繊維層上面及び裏面軟質層下面おいて乱反射を繰り返し、反射する度に減衰するため、空間層において有効に吸音することができ、室内の静粛性を向上させることができる。
【0026】
しかも、裏面軟質層は、所定パターンで配置された複数の貫通孔により通気性が確保されているため、裏面軟質層の下側に形成された上記空間層の吸音機能、及びその空間層のさらに下側のフロア材の吸音機能を阻害するのを防ぐことができる。
【0027】
特に、裏面軟質層に、貫通孔の下面開口部を囲むすり鉢状の傾斜面を設けることで、上記のように反射を繰り返す音を、再び貫通孔から出ていかないように上記傾斜面で反射させることができる。したがって、上述した音の反射を十分に繰り返させて、その音を十分に減衰させることができ、空間層における吸音効果を一層高めることができる。
【0028】
さらに、裏面軟質層の柱状部は、従来の滑り防止用突起と同様、フロアマットが設置面上を滑ることを防ぐ機能も有しており、設置面に対して滑らないように安定して設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1〜図3は、本発明の第1の実施形態に係るフロアマット1を示している。このフロアマット1は、図1に示すように、自動車の床に予め取り付けられた車輌フロア材30上に敷設されるものである。
【0030】
車輌フロア材30は、複数の層を備えており、その最上層が床繊維層31となっている。車輌フロア材30は、床繊維層31以外の層を1又は複数備えているが、その層の種類は特に限定されるものではない。なお、車輌フロア材30に設けられる床繊維層31以外の層としては、例えば、車輌フロア材30の成型に寄与する熱可塑性樹脂層、吸音機能を備えた吸音材層、遮音機能を備えた遮音材層等が挙げられる。
【0031】
床繊維層31は、図2に示すように、基布32とその基布32表面から立ち上がった起毛33とを備えている。起毛33の高さは、0.5〜3mmである。床繊維層31の材料としては、少なくとも1種類の繊維が用いられ、天然繊維と合成繊維の少なくとも一方が用いられる。床繊維層31としては、様々な織物等が用いられ、特にタフテッドカーペット又はニードルパンチカーペットが好適に用いられる。
【0032】
フロアマット1は、織物等からなる表面繊維層2と軟質材料からなる裏面軟質層3とを備えている。また、表面繊維層2と裏面軟質層3との間に、通気性を有する吸音材層4が介在している。
【0033】
表面繊維層2は、基布11とその基布11から立ち上がった起毛12とを備えている。表面繊維層2の材料としては、少なくとも1種類の繊維が用いられ、天然繊維と合成繊維の少なくとも一方が用いられる。表面繊維層2における繊維の種類は、通気性を有するものであれば良く、特に限定されるものではない。
【0034】
表面繊維層2の素材としては、様々な織物等が用いられるが、外観、機能、及びコスト面等の観点から、タフテッドカーペット又はニードルパンチカーペットが好適に用いられる。タフテッドカーペット又はニードルパンチカーペットを用いる場合は、合繊繊維製であり、且つ、裏面に合成ゴムラテックス等により薄くバッキング処理されたものが特に好適に用いられる。
【0035】
表面繊維層2の目付は、500〜3000g/m2とするのが好ましく、3000g/m2とするのが最適である。表面繊維層2における起毛12の高さは、3〜20mmとするのが好ましく、20mmとするのが最適である。
【0036】
裏面軟質層3の素材としては、例えば、ソリッド状のゴム又はゴム発泡体が用いられる。裏面軟質層3の原料としては、天然ゴム、合成ゴム、又は再生ゴム等の原料ゴムが用いられる。また、裏面軟質層3は、上記原料ゴムに、必要に応じて加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤、補強剤、充填剤、軟化剤、発泡剤、発泡助剤、及びその他のゴム薬品剤を調合して製造される。ただし、裏面軟質層3の素材として、ゴム以外の軟質材料を用いることを妨げるものではなく、例えば熱可塑性エラストマーを用いても良い。
【0037】
裏面軟質層3の比重は、0.3〜3.0g/cm3とするのが好ましく、裏面軟質層3の単位面積当たりの重量は、1000g/m2とするのが最適である。裏面軟質層3の厚みは、0.5〜2.0mmとするのが好ましく、1.5mmとするのが最適である。裏面軟質層の硬度は、JIS K 6253規格(タイプA)において40〜85とするのが好ましい。
【0038】
裏面軟質層3は、裏面軟質層3をその上方又は下方から見たときに所定のパターンで配置されている複数の柱状部20を備えている。具体的に、柱状部20は、裏面軟質層3をその上方又は下方から見たときに、図3に示すように一定の間隔を空けて格子状に配置されている。隣接する柱状部20の軸芯間の間隔は、例えば5〜20mmとするのが好ましく、15mmとするのが最適である。ただし、柱状部20は、必ずしも上記のパターンで配置する必要はなく、様々なパターンで配置することができる。
【0039】
これら柱状部20は、裏面軟質層3下面から下方に伸びると共に上記下面から先端近傍の所定位置までは同一の横断面を有する軸部21と、先端に向かうに連れて横断面の径が小さくなる先端部22とを備えている。
【0040】
柱状部20の先端部22は、具体的には、円錐状に形成されており、床繊維層31における起毛33の間へスムーズに入り込むようになっている。したがって、床繊維層31の上にフロアマット1を敷設した状態では、柱状部20の先端部22でフロアマット1を確実に支持して、フロアマット1が床繊維層31上を滑るのを防止できるようになっている。なお、先端部22の形状は、先端に向かうに連れて横断面の径が小さくなる形状であれば特に限定されるものではなく、例えば多角錐状であっても良い。
【0041】
柱状部20の軸部21は、具体的には、円柱状に形成されており、床繊維層31における起毛33の間へ容易には入り込まないようになっている。したがって、床繊維層31の上にフロアマット1を敷設した状態では、柱状部20の軸部21が床繊維層31の起毛33上端より上側に突出するため、裏面軟質層3の下に配置された床繊維層31の上面と、裏面軟質層3下面との間に空間層29が形成される。なお、軸部21の形状は、裏面軟質層3下面から先端近傍の所定位置まで同一の横断面を有する形状であれば特に限定されるものではなく、例えば多角柱状であっても良い。
【0042】
柱状部20の径は、2〜6mmとするのが好ましく、4mmとするのが最適である。また、柱状部20の長さは、2〜6mmとするのが好ましく、5mmとするのが最適である。さらに、柱状部20の軸部21の長さは、1〜3.5mmとするのが好ましく、3mmとするのが最適である。
【0043】
また、裏面軟質層3は、裏面軟質層3の上面と下面を貫通すると共に裏面軟質層3をその上方又は下方から見たときに所定のパターンで配置されている複数の貫通孔25を備えている。具体的に、貫通孔25は、裏面軟質層3をその上方又は下方から見たときに、図3に示すように柱状部20と干渉しないようにして、一定の間隔を空けて格子状に配置されている。隣接する貫通孔25の中心間の間隔は、隣接する柱状部20の軸芯間の間隔と等しくなるように設定されている。ただし、貫通孔25は、必ずしも上記のパターンで配置する必要はなく、柱状部20と干渉しないようにすれば、様々なパターンで配置することができる。
【0044】
このように裏面軟質層3に貫通孔25を設けることにより、裏面軟質層3の通気性が確保され、フロアマット1表面から入射してきた音が裏面軟質層3を通過できるようになっている。
【0045】
貫通孔25の開孔率(裏面軟質層3の面積に対する貫通孔25の開孔面積の総和の割合)は、2〜20%とするのが好ましく、10%とするのが最適である。これにより、フロアマット1の防水性を確保しつつ、良好な通気性が得られるようになっている。
【0046】
ここで、貫通孔25の開孔率、軸部21の長さ、及び裏面軟質層3の厚みは、貫通孔25の開孔率をβ(%)、軸部21の長さをα(mm)、及び裏面軟質層3の厚みをγ(mm)としたときに、下記の関係式(1)を満たすように設定するのが望ましい。
【数2】
これにより、空間層29における後述の吸音機能を十分に発揮することができる。
【0047】
また、裏面軟質層3は、複数の貫通孔25の下面開口部をそれぞれ囲み且つ貫通孔25から径方向外側に向かってすり鉢状に広がる傾斜面26を有する。この傾斜面26を設けることにより、裏面軟質層3の下側から貫通孔25へ入射しようとする音が、傾斜面26で反射して貫通孔25へ入り込みにくいようになっている。
【0048】
吸音材層4の素材としては、例えば不織布、フェルト、又はウレタン発泡体が用いられるが、通気性を有するものであれば、特に限定されるものではない。吸音材層4の目付は100〜1000g/m2とするのが好ましい。吸音材層4の厚みは1〜10mmとするのが好ましく、10mmとするのが最適である。
【0049】
以上の構成からなるフロアマット1を車輌フロア材30の上に敷設すると、フロアマット1表面から入射した音が吸音材層4において吸収され、吸収しきれなかった音は吸音材層4を通過して裏面軟質層3に達する。裏面軟質層3に達した音は貫通孔25を通り抜けて上述の空間層29に達し、その空間層29において吸収される。すなわち、空間層29に達した音は、床繊維層31上面及び裏面軟質層3下面において乱反射を繰り返し、反射する度に減衰するため、空間層29において有効に吸音できるようになっている。
【0050】
また、そのように反射を繰り返す音は、上記傾斜面26で反射することによって、空間層29から貫通孔25を通って出ていきにくくなっているため、上述した音の反射を十分に繰り返させて、その音を十分に減衰させることができ、空間層29における吸音効果が一層高められている。
【0051】
また、フロアマット1を車輌フロア材30の上に敷設した状態においては、柱状部20の先端部22が床繊維層31の中へ入り込んでフロアマット1を確実に支持しているため、フロアマット1が車輌フロア材30上を滑るのを防ぐことができ、自動車の安全運転に支障をきたさないようになっている。
【0052】
図4及び図5は、この本発明の第2の実施形態に係るフロアマット41を示している。この実施形態では、裏面軟質層3が、上下方向に所定の長さを有する第1の柱状部50と、第1の柱状部50よりも長さの短い第2の柱状部60とを備え、裏面軟質層3をその上方又は下方から見たときに第1の柱状部50と第2の柱状部60が所定のパターンで配置されている。
【0053】
具体的には、図5に示すように、すべての柱状部50,60が一定の間隔を空けて格子状となるように配置されると共に、第1の柱状部50と第2の柱状部60とが、横方向及び縦方向において交互に並ぶように配置されている。ただし、第1の柱状部50及び第2の柱状部60は、上記以外にも様々なパターンで配置することができる。
【0054】
第2の柱状部60は第1の柱状部50よりも短いため、図4に示すように、第1の柱状部50のみでフロアマット41を支持して、第2の柱状部60が床繊維層31の上方に浮いた状態で、フロアマット41を敷設することが可能であり、その場合は、空間層29の高さを比較的大きく確保することができる。
【0055】
また、第2の柱状部60は、第1の柱状部50よりも大径となっており、第2の柱状部60の軸部61は、床繊維層31の起毛33の間へ第1の柱状部50の軸部51よりも一層入り込みにくくなっている。したがって、仮に床繊維層31における起毛33間の隙間が大きく、その隙間へ第1の柱状部50の軸部51が入り込んでしまう場合でも、第2の柱状部60の軸部61は床繊維層31へ入り込んでしまわないため、ある程度の高さを備えた空間層29を確保することが可能である。
【0056】
第1の柱状部50の径は、2〜6mmとするのが好ましく、4mmとするのが最適である。また、第1の柱状部50の長さは、2〜6mmとするのが好ましく、5mmとするのが最適である。さらに、第1の柱状部50における軸部51の長さは、1〜3.5mmとするのが好ましく、3.5mmとするのが最適である。
【0057】
第2の柱状部60の径は、第1の柱状部50の径よりも大きい範囲内で、4〜8mmとするのが好ましく、6mmとするのが最適である。また、第2の柱状部60の長さは、第1の柱状部50よりも短い範囲内で、1〜3mmとするのが好ましく、2mmとするのが最適である。さらに、第2の柱状部60における軸部61の長さは、第1の柱状部50の軸部51よりも短い範囲内で、1〜2mmとするのが好ましく、2mmとするのが最適である。
【0058】
なお、第2の実施形態において、その他の構成及び効果は第1の実施形態と同様であり、図4及び図5において、第1の実施形態と同様の機能を有する部材については同符号を付してある。
【0059】
次に、フロアマット1,41の製造方法について説明する。ただし、フロアマット1,41の製造方法は、必ずしも以下の製造方法に限定されるものではなく、様々な方法で製造することができる。
【0060】
フロアマット1,41の製造には、裏面軟質層3の素材である未加硫ゴムシート66の加硫、裏面軟質層3の成型、及び裏面軟質層3と吸音材層4との接着を同時に行うために、図6に示す加硫成型用プレス機68を用いる。なお、裏面軟質層3の素材として発泡体を用いる場合は、未加硫ゴムシート66の発泡も同時に行うようにしても良い。
【0061】
加硫成型用プレス機68は、上金型70と下金型90とを備えている。上金型70下面には、図7に示すように、裏面軟質層3の柱状部20を成型するための柱状部成型用の凹部72が複数設けられている。なお、上金型70は、上層75と下層76とからなっており、柱状部成型用の凹部72は、上金型70の下層76を上下方向に貫通して設けられている。これにより、未加硫ゴムシート66の加硫及び成型を行う際に、未加硫ゴムシート66に調合されたゴム薬品からガスが発生しても、柱状部成型用の凹部72にガスがたまらないため、成型不良を防止することができる。
【0062】
また、上金型70には、裏面軟質層3の貫通孔成型用のピン71が下方に突出して設けられている。これにより、加硫成型用プレス機68を閉じた際に、貫通孔成型用ピン71が未加硫ゴムシート66を貫通して裏面軟質層3の貫通孔25が成型される。貫通孔成型用のピン71は、貫通孔25を確実に開けることができるように、4〜10mmとすることが好ましい。さらに、上金型70下面には、貫通孔成型用のピン71を囲むようにして、傾斜面成型用の凹部73が設けられている。
【0063】
下金型90は、加硫成型用プレス機68を閉じた状態における上金型70と下金型90との隙間を調節するスペーサー92を備えている。このスペーサー92の厚みを調節することによって、加圧による吸音材67の潰れを防ぎ、裏面軟質層3を成型するだけの微弱な圧力を制御することができる。
【0064】
また、下金型90上面には、上金型70の貫通孔成型用のピン71の位置に対応してピン回避用の凹部91が設けられている。これにより、加硫成型用プレス機68を閉じた際に、貫通孔成型用のピン71が下金型90に干渉しないようになっている。
【0065】
加硫成型用プレス機68を用いる際には、その準備として、裏面軟質層3の上記原料ゴムと、要求される機能に合わせて必要となるゴム用薬品とを調合してなるゴム組成物を混練りし、混練りしたゴム組成物をカレンダーロールで0.5〜2mmの厚みに圧延して、フロアマット1,41よりも僅かに大きい寸法になるように裁断することで、裏面軟質層3の素材である未加硫ゴムシート66を形成しておく。また、吸音材層4の素材である吸音材67を、フロアマット1,41よりも僅かに大きい寸法となるように裁断しておく。
【0066】
加硫成型用プレス機68は、上金型70の温度が150〜180℃に、下金型90の温度が40〜60℃に保たれるようにそれぞれ調整する。上金型70の温度調整は、図6に示す蒸気入口81から導入し蒸気出口82から排出する蒸気の温度及び圧力と、断熱材83の温度とによって、プレス上盤80を常に150〜180℃に保つように調整することで行う。下金型90の温度調整は、冷却水入口86から導入し冷却水出口87から排出する冷却水の循環と、断熱材88の温度とによって、プレス下盤85を常に40〜60℃に保つように調整することで行う。
【0067】
このように、加硫成型用プレス機68の上金型70及び下金型90の温度調整を行った状態において、下金型90の上に吸音材67を載置し、さらに吸音材67の上に未加硫ゴムシート66を重ね置く。そして、加硫成型用プレス機68を閉じて、589kPa以下の圧力で5〜8分間の加圧及び加熱を行うことで、未加硫ゴムシート66の加硫、裏面軟質層3の成型、及び裏面軟質層3と吸音材層4との接着を同時に行うことができる。
【0068】
これにより、裏面軟質層3と吸音材層4とが一体的に成型され、その成型品を、加硫成型用プレス機68を開放して取り出す。そして、取り出した成型品における吸音材層4に、表面繊維層2の素材である織物等を接着することで、フロアマット1,41を製造できる。吸音材層4と表面繊維層2との接着は、通気性を阻害しないような部分接着により行うものとし、例えば、蜘蛛の巣状ホットメルト、穴開きホットメルト、又は接着剤等による部分的な接着にする。
【実施例】
【0069】
本発明に係るフロアマットの吸音性能及び滑り防止性能を以下の試験によって確認した。本発明品のサンプルは、上述の製造方法によって、吸音材(厚み5mm、目付500g/m2)と未加硫ゴムシート(厚み1.5mm、比重1.6g/cm3)とを加硫成型用プレス機によって一体的に成型し、それにより得られた成型品とカーペット(目付800g/m2、パイル長8mm)とを貼り合わせて作製した。また、裏面軟質層の柱状部は、長さが5mm、径が3mmとなるように成型し、10mmの間隔を空けて格子状に配置して設けた。また、比較例として、図12に示す従来品(1)、及び図13に示す従来品(2)のサンプルを、適当な大きさとなるように裁断して作製した。
【0070】
(吸音性能評価試験)
本発明品の吸音性能を確認する試験では、本発明品のサンプル、従来品(1)のサンプル及び従来品(2)のサンプルについて、JISA1405に準じて垂直入射法吸音率を測定した。ただし、本発明品については、貫通孔の開孔率が異なる複数のサンプルを作製し、それぞれのサンプルについて吸音率(%)を測定した。
【0071】
図8は、貫通孔の開孔率が10%である本発明品、従来品(1)及び従来品(2)の吸音率を示すグラフである。図8に示すように、従来品(1)は全周波数領域で吸音率が悪く、従来品(2)は1000Hz以上の周波数領域で吸音率が高くなることが確認できた。これらに対して、本発明品は、全周波数領域で従来品(1)及び従来品(2)よりも優れた吸音率を示している。特に2000Hz以下の領域では、従来品(1)及び従来品(2)と比較して顕著に高い吸音率を示している。すなわち、一般的に20〜2000Hzと言われている人間の可聴域において、本発明品が大きな吸音効果を有することが確認できた。
【0072】
図9は、貫通孔の開孔率を0%、2%、5%、10%、15%及び20%とした場合の本発明品と、従来品(2)との吸音率を示すグラフである。図9に示すように、開孔率を10%とした場合の本発明品が、全周波数領域で最も高い吸音率を示している。続いて、開孔率が15%の本発明品、5%の本発明品、20%の本発明品、2%の本発明品の順で吸音率が高く、貫通孔を設けなかった場合(開孔率0%)の本発明品と従来品(2)とが、全周波数領域においてほぼ同じで且つ最も低い吸音率を示している。このことから、本発明品の吸音率が、貫通孔の開孔率によって変化することが分かり、開孔率を10%としたきに最も高い吸音効果を示すことが確認できた。
【0073】
図10は、貫通孔の開孔率を4.5%、10%及び33%とした場合の本発明品と、従来品(2)との吸音率を示すグラフであり、上記関係式(1)を満たす場合の吸音効果を示すものである。上述のように、軸部の長さαを1〜3.5mm、裏面軟質層の厚みγを0.5〜2.0mmとそれぞれ設定した場合、上記関係式(1)に当てはめると、貫通孔の開孔率βは、4.5<β<33(%)となる。すなわち、上記関係式(1)を満たした場合の本発明の吸音率は、図10の斜線部分に相当し、2000Hz以下の周波数領域において従来品(2)よりも高くなることが確認できる。
【0074】
(滑り防止性能評価試験)
本発明品の滑り防止性能を確認する試験では、本発明品のサンプル、従来品(1)のサンプル、及び従来品(2)のサンプルについて、滑り抵抗値(N)を測定した。この試験は、各サンプルを100×140mmの大きさに裁断してなる試験片を車輌フロア材上に設置し、試験片に1kgf(9.8N)の荷重をかけた状態で、100mm/分の速度で車輌フロア材表面と平行な方向へ引っ張って測定した。
【0075】
図11は、本発明品、従来品(1)及び従来品(2)の滑り抵抗値を示している。図11に示すように、従来品(2)の滑り抵抗値が最も低く、本発明品及び従来品(1)の滑り抵抗値は、ほぼ同等で且つ高い抵抗値を示すことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフロアマットを示す断面図である。
【図2】同じくその拡大断面図である。
【図3】同じくその下面側から見た斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るフロアマットを示す断面図である。
【図5】同じくその下面側から見た斜視図である。
【図6】フロアマットの製造に用いる加硫成型用プレス機を示す断面図である。
【図7】同じくその要部拡大断面図である。
【図8】本発明のフロアマット、従来品(1)、及び従来品(2)の吸音率を示す図である。
【図9】貫通孔の開孔率による吸音率の変化を示す図である。
【図10】貫通孔の開孔率を、所定の関係式を満たすように設定した場合における吸音率を示す図である。
【図11】本発明のフロアマット、従来品(1)、及び従来品(2)の滑り抵抗値を示す図である。
【図12】従来品(1)を示す断面図である。
【図13】従来品(2)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1,41 フロアマット
2 表面繊維層
3 裏面軟質層
4 吸音材層
11 表面繊維層の基布
12 表面繊維層の起毛
20 柱状部
21 柱状部の軸部
22 柱状部の先端部
25 貫通孔
26 傾斜面
31 床繊維層
32 床繊維層の基布
33 床繊維層の起毛
50 第1の柱状部
60 第2の柱状部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面繊維層と軟質材料からなる裏面軟質層とを備えたフロアマットにおいて、
上記裏面軟質層は、
上記裏面軟質層の上面と下面を貫通すると共に上記裏面軟質層をその上方又は下方から見たときに所定のパターンで配置されている複数の貫通孔と、
上記下面から下方に伸びると共に上記下面から先端近傍の所定位置までは同一の横断面を有する軸部を備えており、上記裏面軟質層をその上方又は下方から見たときに所定のパターンで配置されている複数の柱状部を備えていることを特徴とするフロアマット。
【請求項2】
上記裏面軟質層は、上記複数の貫通孔の下面開口部をそれぞれ囲み且つ上記貫通孔から径方向外側に向かってすり鉢状に広がる傾斜面を有することを特徴とする請求項1に記載のフロアマット。
【請求項3】
上記複数の柱状部は、上下方向の所定の長さを有する第1の柱状部と、上記第1の柱状部よりも長さの短い第2の柱状部を含み、上記裏面軟質層をその上方又は下方から見たときに上記第1の柱状部と第2の柱状部が所定のパターンで配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフロアマット。
【請求項4】
上記柱状部の径が2〜6mmであり、上記柱状部の長さが2〜6mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項5】
上記柱状部における上記軸部の長さが1〜3.5mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項6】
上記柱状部は、上記裏面軟質層をその上方又は下方から見たときに、5〜20mmの間隔を空けて格子状に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項7】
上記貫通孔の開孔率が2〜20%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項8】
上記裏面軟質層の厚みが0.5〜2mmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項9】
上記表面繊維層は、基布とその基布から立ち上がった起毛とを備え、上記表面繊維層の目付が500〜3000g/m2であり、上記表面繊維層における起毛の高さが3〜20mmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項10】
上記表面繊維層と上記裏面軟質層との間に、通気性を有する吸音材層が介在していることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項11】
上記吸音材層の目付が100〜1000g/m2であり、上記吸音材層の厚みが1〜10mmであることを特徴とする請求項10に記載のフロアマット。
【請求項12】
上記貫通孔の開孔率をβ(%)、上記軸部の長さをα(mm)、及び上記裏面軟質層の厚みをγ(mm)とそれぞれしたときに、下記の関係式を満たしていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のフロアマット。
【数1】
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のフロアマットにおける上記裏面軟質層の下に床繊維層が配置され、その床繊維層上面と上記裏面軟質層下面との間に空間層が形成されていることを特徴とするフロア構造。
【請求項14】
上記床繊維層は、基布とその基布表面から立ち上った起毛とを備え、その起毛の長さが0.5〜3mmであることを特徴とする請求項13に記載のフロア構造。
【請求項1】
表面繊維層と軟質材料からなる裏面軟質層とを備えたフロアマットにおいて、
上記裏面軟質層は、
上記裏面軟質層の上面と下面を貫通すると共に上記裏面軟質層をその上方又は下方から見たときに所定のパターンで配置されている複数の貫通孔と、
上記下面から下方に伸びると共に上記下面から先端近傍の所定位置までは同一の横断面を有する軸部を備えており、上記裏面軟質層をその上方又は下方から見たときに所定のパターンで配置されている複数の柱状部を備えていることを特徴とするフロアマット。
【請求項2】
上記裏面軟質層は、上記複数の貫通孔の下面開口部をそれぞれ囲み且つ上記貫通孔から径方向外側に向かってすり鉢状に広がる傾斜面を有することを特徴とする請求項1に記載のフロアマット。
【請求項3】
上記複数の柱状部は、上下方向の所定の長さを有する第1の柱状部と、上記第1の柱状部よりも長さの短い第2の柱状部を含み、上記裏面軟質層をその上方又は下方から見たときに上記第1の柱状部と第2の柱状部が所定のパターンで配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフロアマット。
【請求項4】
上記柱状部の径が2〜6mmであり、上記柱状部の長さが2〜6mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項5】
上記柱状部における上記軸部の長さが1〜3.5mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項6】
上記柱状部は、上記裏面軟質層をその上方又は下方から見たときに、5〜20mmの間隔を空けて格子状に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項7】
上記貫通孔の開孔率が2〜20%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項8】
上記裏面軟質層の厚みが0.5〜2mmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項9】
上記表面繊維層は、基布とその基布から立ち上がった起毛とを備え、上記表面繊維層の目付が500〜3000g/m2であり、上記表面繊維層における起毛の高さが3〜20mmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項10】
上記表面繊維層と上記裏面軟質層との間に、通気性を有する吸音材層が介在していることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項11】
上記吸音材層の目付が100〜1000g/m2であり、上記吸音材層の厚みが1〜10mmであることを特徴とする請求項10に記載のフロアマット。
【請求項12】
上記貫通孔の開孔率をβ(%)、上記軸部の長さをα(mm)、及び上記裏面軟質層の厚みをγ(mm)とそれぞれしたときに、下記の関係式を満たしていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のフロアマット。
【数1】
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のフロアマットにおける上記裏面軟質層の下に床繊維層が配置され、その床繊維層上面と上記裏面軟質層下面との間に空間層が形成されていることを特徴とするフロア構造。
【請求項14】
上記床繊維層は、基布とその基布表面から立ち上った起毛とを備え、その起毛の長さが0.5〜3mmであることを特徴とする請求項13に記載のフロア構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−126084(P2007−126084A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322239(P2005−322239)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(591000506)早川ゴム株式会社 (110)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(591000506)早川ゴム株式会社 (110)
【Fターム(参考)】
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