説明

フロアマット

【課題】 ブレーキ操作性を向上させること。
【解決手段】 車両の運転座席近傍に敷設されるフロアマットであって、フロアマットに掛かる踏力が増加すると、フロアマットの摩擦係数が増加する。また、ベース部材と、ベース部材上に設けられ、車両上方に延びる第1ヒゲ状部材および第2ヒゲ状部材と、を備え、第1ヒゲ状部材の摩擦係数は第2ヒゲ状部材の摩擦係数よりも大きく、かつ第1ヒゲ状部材は第2ヒゲ状部材よりも車両上下方向に低く形成されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ操作性を向上させた車両用のフロアマットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベースシートの裏面に多数の滑り止め突起を形成し、このベースシートの表面に被覆シートを貼着することにより、足元を滑り難くしたカーマットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平5−76866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来のカーマットにおいては、足元が滑り難くなった一方で、パニックブレーキの様にブレーキペダルが急踏みされた場合に、踵がカーマットにひっかかり、ブレーキ操作力がロスされるおそれがある。
【0004】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、ブレーキ操作性を向上させることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、車両の運転座席近傍に敷設されるフロアマットであって、上記フロアマットに掛かる踏力が増加すると、上記フロアマットの摩擦係数が増加することを特徴とするフロアマットである。
【0006】
なお、この一態様において、当該フロアマットにはフロアカーペットも含むものとする。
【0007】
この一態様において、上記フロアマットに掛かる踏力が増加すると、上記フロアマットの摩擦係数が増加する。これにより、例えば通常のブレーキペダルの踏込操作において、踵の踏力が増加すると、当該フロアマットの摩擦係数が増加する。したがって、踵が安定的に固定させることができ、ブレーキの操作フィーリングが向上する。一方、ブレーキペダルの急踏み操作時において、踵の踏力が減少すると、当該フロアマットの摩擦係数が減少する。したがって、踵を車両前方へ容易に滑らせることができることから、運転者のブレーキ操作力をブレーキペダルへ直接的に作用させることができ、ブレーキ操作力を効率的にブレーキペダルに伝達することができる。すなわち、ブレーキ操作性を向上させることができる。
【0008】
なお、この一態様において、例えばベース部材と、上記ベース部材上に設けられ、上記車両上方に延びる第1ヒゲ状部材および第2ヒゲ状部材と、を備え、上記第1ヒゲ状部材の摩擦係数は上記第2ヒゲ状部材の摩擦係数よりも大きく、かつ上記第1ヒゲ状部材は上記第2ヒゲ状部材よりも車両上下方向に低く形成されていてもよい。これにより、通常のブレーキペダルの踏込操作において当該フロアマットの摩擦係数を大きくし、ブレーキペダルの急踏み操作時において、当該フロアマットの摩擦係数が小さくなる。
【0009】
また、上記一態様において、上記第1ヒゲ状部材および上記第2ヒゲ状部材は、ブレーキペダル近傍に形成されていてもよく、上記第1ヒゲ状部材が形成される面積は、車両前方へ行くにしたがって減少してもよい。さらに、上記第1ヒゲ状部材のヒゲの外周は、上記車両上方へ行くにしたがって増加してもよく、上記第1ヒゲ状部材の各ヒゲの断面形状は、多角形であってもよい。上記第1ヒゲ状部材は、格子状に形成されていてもよい。上記第1ヒゲ状部材のヒゲの高さは、車両前方へ行くにしたがって減少してもよい。
【0010】
なお、上記一態様において、例えばベース部材と、上記ベース部材に接続される下側部分と、上記下側部分に接続される上側部分とを有するヒゲ状部材と、を備え、上記下側部分の摩擦係数は上記上側部分の摩擦係数よりも大きくてもよく、上記ヒゲ状部材はブレーキペダル近傍に形成されていてもよい。また、上記ヒゲ状部材が形成される面積は、車両前方へ行くにしたがって減少してもよく、上記ヒゲ状部材の断面形状は、多角形であってもよい。上記下側部分の長さは、車両前方へ行くにしたがって減少するのが好ましい。
【0011】
さらに、この一態様において、例えばベース部材と、上記ベース部材上に設けられ、複数の貫通孔が形成される弾性のシート部材と、上記ベース部材上に設けられ、上記複数の貫通孔を貫通するヒゲ状部材と、を備え、上記シート部材の摩擦係数は上記ヒゲ状部材の摩擦係数よりも小さくてもよい。
【0012】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、車両の運転座席近傍に敷設されるフロアマットであって、ブレーキペダルの急踏みを検知する急踏検知手段と、上記急踏検知手段により上記急踏みが検知されたとき、上記フロアマットの摩擦係数を小さくする摩擦係数変化手段と、を備えることを特徴とするフロアマットであってもよい。
【0013】
この一態様において、上記急踏検知手段は前記ブレーキペダルのストローク速度を検出するストローク速度検出部を有し、上記摩擦係数変化手段は上記ストローク速度検出部からの上記ストローク速度が所定値以上のとき、上記摩擦係数を小さくしてもよい。また、上記急踏検知手段は上記車両周辺の障害物と車両との距離を検出する距離検出部を有し、上記摩擦係数変化手段は上記距離検出部からの上記距離が所定値以下のとき、上記摩擦係数を小さくしてもよい。
【0014】
これら態様において、アクセルペダル近傍の当該フロアマットの摩擦係数は、上記アクセルペダル近傍以外の部分の摩擦係数より大きくしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ブレーキ操作性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。なお、フロアマットおよびカーペットの基本概念等については当業者には既知であるため、詳しい説明を省略する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るフロアマットを示す部分断面図である。
【0017】
本実施の形態に係るフロアマット1は、車両の運転座席のフロアカーペット上に敷設される。フロアマット1のベース部材3上には、車両上方に延びるヒゲ状の第1ヒゲ状部材5が植設されている。また、第1ヒゲ状部材5と共に、フロアマット1のベース部材3上には車両上方に延びるヒゲ状の第2ヒゲ状部材7が植設されている。なお、第1ヒゲ状部材5および第2ヒゲ状部材7は繊維材料により形成されているが、ゴム等の樹脂材料により形成されていてもよい。また、ベース部材3、第1ヒゲ状部材5、および第2ヒゲ状部材7は同一材料により形成されていてもよく、各部材3、5、7は別々の材料で夫々形成されていてもよい。
【0018】
第1ヒゲ状部材5の摩擦係数は第2ヒゲ状部材7の摩擦係数よりも大きくなるように、第1ヒゲ状部材5および第2ヒゲ状部材7は形成されている。例えば、第2ヒゲ状部材7の各ヒゲは車両上下方向に細長く弾性力が小さくなるように形成され、第1ヒゲ状部材5の各ヒゲは太く、かつ先端部が球状で構成され弾性力が大きくなるように形成されている。したがって、運転者の足(例えば踵)が第1ヒゲ状部材5に摺接したときの摩擦力は、第2ヒゲ状部材7に摺接したときの摩擦力と比較して、大きくなる。なお、第1ヒゲ状部材5は粘着力の高い材料で構成されることにより、摩擦力が大きくなるようにしてもよい。
【0019】
また、第1ヒゲ状部材5の各ヒゲは第2ヒゲ状部材7の各ヒゲよりも車両上下方向において低く形成されている。例えば、通常のブレーキ操作において、フロアマット1に踵9を支点として、ブレーキペダル11が踏込まれた場合(図2(a))、踵9はベース部材3近傍まで潜り込み、第2ヒゲ状部材7および摩擦係数の大きい第1ヒゲ状部材5と接触する(図2(b))。したがって、第1ヒゲ状部材5および第2ヒゲ状部材7の摩擦力Fx3により踵9がより安定的に固定され、ブレーキの操作フィーリングが向上する。すなわち、ブレーキ操作性が向上する。一方、パニックブレーキのように、ブレーキペダル11が急踏みされた場合(図3(a))、踵9は摩擦係数の小さい第2ヒゲ状部材7の上側部および第1ヒゲ状部材5の球状の上部に摺接する(図3(b))。したがって、ブレーキ踏力Finは、第1ヒゲ状部材5および第2ヒゲ状部材7の摩擦力Fx4(Fx3>Fx4)の影響をほとんど受けること無く、ブレーキペダル11に対して直接的に作用する(Fx2>Fx1)。ずなわち、ブレーキ踏力Finを効率的にブレーキペダル11に対して作用させ、ブレーキ操作性を向上させることができる。なお、ブレーキペダル11に作用するブレーキ踏力Finは、リンク部材および入力ロッドを介してブレーキブースタ(B/B)に伝達される。
【0020】
以上、通常のブレーキペダル11の踏込操作においてフロアマット1の摩擦係数を大きくし、ブレーキペダル11の急踏み操作時において、フロアマット1の摩擦係数が小さくなるように、フロアマット1を構成している。これにより、通常のブレーキペダル11の踏込操作において、踵9を安定的に固定させることができ、ブレーキの操作フィーリングが向上する。一方、ブレーキペダル11の急踏み操作時において、運転者の踏力をブレーキペダル11に直接的に作用させることができ、ブレーキ踏力を効率的にブレーキペダル11に伝達することができる。すなわち、ブレーキ操作性を向上させることができる。
【0021】
次に第1の実施の形態に係る変形例について説明する。
【0022】
例えば、上記実施の形態において、第1ヒゲ状部材5および第2ヒゲ状部材7はフロアマット1全面に形成されているが、ブレーキペダル11近傍にのみ形成(例えばブレーキペダル11を中心に矩形状に形成)されていてもよく(図4(a))、さらにブレーキペダル11近傍のみ形成され、かつ当該形成される面積が車両前方に行くに従い減少するように形成されてもよい(図4(b))。この場合、図4(b)に示す如く、踵9を着ける範囲(踵9を固定してブレーキ操作を行う範囲)より車両前方側において、摩擦係数の大きい第1ヒゲ状部材5が減少し、踵9がより滑り易くなる。したがって、ひっかかりが無くなり、摩擦力によるブレーキ踏力のロスが低減される。
【0023】
また、上記実施の形態において、第1ヒゲ状部材5の各ヒゲは車両上下方向に同一の太さで、かつ先端部が球状で構成されているが、第1ヒゲ状部材5の各ヒゲの外周(外周の表面積)が車両上方に行くにしたがって増加するように第1ヒゲ状部材5は形成されてもよい(図5)。さらに、第1ヒゲ状部材5の各ヒゲの断面形状が四角形(図6(a))、三角形(図6(b))等の多角形となるように形成されていてもよい。この場合、図6(a)および(b)に示す如く、踵9がフロアマット1に着いたときに、第1ヒゲ状部材5と踵9との接触面積を増加させることができ、より安定的に踵9をフロアマット1に固定することが可能となる。すなわち、ブレーキ操作性が向上する。なお、第1ヒゲ状部材5は格子状に形成されていてもよい(図7)。
【0024】
さらに、上記実施の形態において、第1ヒゲ状部材5の各ヒゲは車両上下方向に略同一の高さに形成されているが、車両前方に行くにしたがって各ヒゲの高さは、減少するように形成されていてもよい(図8)。この場合、踵9を着ける範囲より車両前方側において、摩擦係数の大きい第1ヒゲ状部材5と踵9との接触を減少させ、踵9をより滑り易くさせることができる。したがって、ひっかかりが無くなり、摩擦力によるブレーキ踏力のロスが低減される。
【0025】
なお、上記実施の形態において、ベース部材3上に第1ヒゲ状部材5および第2ヒゲ状部材7が植設されているが、ベース部材3に接続される下側部分13aと、下側部分13aに接続される上側部分13bとから構成されるヒゲ状部材13が形成されていてもよい(図9(a))。また、下側部分13aの摩擦係数は上側部分13bの摩擦係数よりも小さくなるように、ヒゲ状部材13は形成されている。なお、下側部分13aの長さは、車両前方に行くにしたがい減少するように形成されていてもよい(図9(b))。これにより、踵9を着ける範囲より車両前方側において、摩擦係数の大きい下側部分13aの長さが減少し、踵9がより滑り易くなる。したがって、ひっかかりが無くなり、摩擦力によるブレーキ踏力のロスが低減される。
【0026】
上記実施の形態において、フロアマット1上のアクセルペダル近傍の摩擦係数は、他の部分の摩擦係数より大きくなるように構成されていてもよい。この場合、アクセルペダル近傍のフロアマット1において、踵9がひっかかり易く、アクセルペダルが急踏みされ難くなる。すなわち、車両の安全性が向上する。
(第2の実施の形態)
図10(a)は本発明の第2の実施の形態に係るフロアマットを示す図である。図10(b)は図10(a)に示すフロアマットを直線A−A′で切断した際の断面図である。
【0027】
図10(a)および(b)に示す如く、ベース部材3上には、摩擦係数が大きいヒゲ状部材15が接合されている。また、ベース部材3上には複数の貫通孔17aが形成され、摩擦係数が小さい弾性のシート部材17が設けられている。ヒゲ状部材15の各ヒゲがシート部材17の複数の貫通孔17aを貫通している。
【0028】
他の構成は図1乃至図9に示す第1の実施の形態と略同一である。図10および図11において、図1乃至図9に示す第1の実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0029】
例えば、通常のブレーキ操作において、フロアマット1に踵9が接触すると、弾性のシート部材17が撓み、摩擦係数の大きいヒゲ状部材15のヒゲの先端部がシート部材17の貫通孔17aから突出する。この貫通孔17aから突出したヒゲの先端部が踵9に接触し、踵9に大きな摩擦力が作用する。これにより、踵9の位置が安定し、ブレーキの操作フィーリングが向上する。すなわち、ブレーキ操作性が向上する。一方、ブレーキペダル11が急踏みされた場合、踵9は摩擦係数の小さいシート部材17の上面と摺接する。したがって、ブレーキ踏力は、摩擦係数の大きいヒゲ状部材15の摩擦力の影響をほとんど受けること無く、ブレーキペダル11に対して直接的に作用する。ずなわち、ブレーキ踏力を効率的にブレーキペダル11に対して作用させ、ブレーキ操作性を向上させることができる。
【0030】
なお、上記実施の形態において、シート部材17は一層構造であるが、撓み易い下層部17bと、上面の摩擦係数が小さい上層部17cとから構成される多層構造であってもよい(図11(a))。
【0031】
また、上記実施の形態において、シート部材17の上端は略水平となっているが、車両前方側が高く、傾斜するように形成されていてもよい(図11(b))。この場合、例えば、ブレーキペダル11が急踏みされ、踵9からシート部材17に車両下方向に荷重が掛かった場合においても、シート部材17の傾斜により高くなった分、踵9とヒゲ状部材15との接触を避けることができる。すなわち、ブレーキ踏力は、摩擦係数の大きいヒゲ状部材15の摩擦力の影響をほとんど受けること無く、ブレーキペダル11に対して直接的に作用する。
(第3の実施の形態)
図12(a)は本発明の第3の実施の形態に係るフロアマットを示す図であり、図12(b)は図12(a)に示すフロアマットをB方向から見た図である。図13(a)は図12(b)に示すフロアマットを直線C−C′で切断した際の断面図であり、通常時の状態を示す図である。また、図13(b)は図12(b)に示すフロアマットを直線C−C′で切断した際の断面図であり、ブレーキペダル急踏み時の状態を示す図である。
【0032】
図12(b)、図13(a)および(b)に示す如く、車両本体にベース19が固定されている。ベース19上にはフレーム21が配設され、フレーム21にはプレート23の一端が第1ヒンジにより傾動自在に連結されている。また、プレート23とフレーム21との間にはバネ25が介装され、バネ25はプレート23を車両上方に付勢している。ベース19には車両上下方向に伸縮自在のロッド27を有するソレノイド29が配設され、ソレノイド29は通電状態でロッド27を収縮する。ソレノイド29のロッド27の端部には、プレート23の他端が第2ヒンジにより連結されている。フレーム21の上面には複数の貫通孔が形成され、摩擦係数が小さいマット部材31が配設されている。また、プレート23の上面には摩擦係数が大きいヒゲ状部材33が形成され、ヒゲ状部材33のヒゲがプレート23上面の貫通孔およびマット部材31の貫通孔を貫通している。なお、ベース19上でフレーム21周囲にはマットが配設されている。
【0033】
ソレノイド29が無通電状態において、プレート23にはソレノイド29からロッド27を介して力が作用することなく、プレート23はバネ25により車両上方に付勢され、略水平位置に維持される(図13(a))。このとき、ヒゲ状部材33のヒゲはマット部材31の貫通孔から突出した状態となる。一方、ソレノイド29が通電状態において、プレート23にはバネ25による車両上方の付勢力が作用しているが、プレート23にはこの付勢力を超えるソレノイド29の収縮力が作用し、プレート23は反時計方向に傾斜した状態で維持される(図13(b))。このとき、ヒゲ状部材33のヒゲの上端面とマット部材31の上面とが略同一平面上にある。
【0034】
図12(a)に示す如く、ソレノイド29にはECU等の制御部35が接続され、ECU35からの制御信号に基づいて、ソレノイド29は所定時間(T秒)、通電状態となる。また、ECU35にはブレーキペダル11の踏込速度(ストローク速度)を検出するストロークセンサ37が接続され、ECU35はストロークセンサ37からの踏込速度に基づいて、ソレノイド29に制御信号を送信する。なお、ECU(Electronic Control Unit)35はマイクロコンピュータによって構成されており、制御プログラムを格納するROM、演算結果等を格納する読書き可能なRAM、タイマ、カウンタ、入力インターフェイス、及び出力インターフェイスを有している。
【0035】
他の構成は図1乃至図11に示す第1および第2の実施の形態と略同一である。図12乃至図16において、図1乃至図11に示す第1および第2の実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0036】
図14はECUが踏込速度に基づいて制御処理するフローチャートを示す図である。
【0037】
ECU35はストロークセンサ37からの踏込速度が所定値D以上で、ブレーキペダル11が急踏みされたと判断すると(S100)、ソレノイド29に制御信号を送信する。制御信号を受信したソレノイド29は所定時間T、通電状態となり(S110)、ロッド27を収縮させる(図13(b))。このとき、ヒゲ状部材33のヒゲの上端とマット部材31の上面とが略同一平面上にある(S120)。したがって、ブレーキペダル11が急踏みされた場合、踵9は摩擦係数の大きいヒゲ状部材33とあまり摺接しない。したがって、ブレーキ踏力は、摩擦係数の大きいヒゲ状部材33の摩擦力の影響をあまり受けること無く、ブレーキペダル11に対して直接的に作用する。すなわち、ブレーキ踏力を効率的にブレーキペダル11に対して作用させることができ、ブレーキ操作性を向上させることができる。一方、ECU35はストロークセンサ37からの踏込速度が所定値D未満で、ブレーキペダル11が急踏みされていない(通常状態)と判断すると(S100)、ソレノイド29に制御信号を送信しない。この場合、ソレノイド29は無通電状態にあり(S130)、プレート23はバネ25の付勢力により略水平位置に維持される(図13(a))。このとき、ヒゲ状部材33のヒゲはマット部材31の貫通孔から突出した状態となる。したがって、この貫通孔から突出したヒゲが踵9に接触し、踵9に大きな摩擦力が作用する。これにより、踵9の位置が安定し、ブレーキの操作フィーリングが向上する。すなわち、ブレーキ操作性が向上する。
【0038】
なお、上記実施の形態において、ECU35はストロークセンサ37からの踏込速度に基づいて、ソレノイド29に制御信号を送信しているが、ECU35は前方車両等との車間距離を検出するプレビューセンサ等の車間距離センサ39からの車間距離に基づいて、ソレノイド29に制御信号を送信してもよい。
【0039】
図15はECUが車間距離に基づいて制御処理するフローチャートを示す図である。
【0040】
図15に示す如く、例えばECU35はプレビューセンサ39からの車間距離が所定値E(所定値Eは車速に応じた値)以下で、ブレーキペダル11が急踏みされたと判断すると(S200)、ソレノイド29に制御信号を送信する。ECU35から制御信号を受信したソレノイド29は所定時間T、通電状態となる(S210)。ここで、所定値Eは車速センサからの車速に応じた値に設定され、例えば車速に略比例して所定値Eは増加する(図16)。ECU35は車間距離と車速に応じた所定値Eとを比較することにより、ブレーキペダル11が急踏される可能性をより的確に予測し得る。一方、ECU35はプレビューセンサ39からの車間距離が所定値E未満で、ブレーキペダル11が急踏みされていない(通常状態)と判断すると(S200)、ソレノイド29に制御信号を送信しない。この場合、ソレノイド29は無通電状態にある(S220)。
【0041】
また、上記実施の形態において、運転座席に荷重センサが内蔵され、ECU35は荷重センサからの荷重変化量に基づいて、ソレノイド29に制御信号を送信してもよい。例えば、ECU35は荷重センサからの荷重変化量が所定値以上であるとき、ブレーキペダル11が急踏されたと判断して、ソレノイド29に制御信号を送信してもよい。ECU35から制御信号を受信したソレノイド29は所定時間T、通電状態となる。
【0042】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施の形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0043】
例えば、上記第1乃至第3実施の形態において、フロアマット1に適用されているが、フロアカーペットにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、車両用のフロアマットおよびフロアカーペットに利用できる。敷設される車両の外観、重量、サイズ、走行性能等は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るフロアマットを示す部分断面図である。
【図2】(a)通常のブレーキ操作においてフロアマットに踵を支点として、ブレーキペダルが踏込まれた状態を示す図である。(b)図2(a)に示すX部分の部分拡大図である。
【図3】(a)ブレーキペダルが急踏みされた状態を示す図である。(b)図3(a)に示すY部分の部分拡大図である。
【図4】(a)第1ヒゲ状部材および第2ヒゲ状部材が、ブレーキペダル近傍にのみ形成された状態を示す図である。(b)第1ヒゲ状部材の面積が車両前方に行くにしたがって減少するように形成された状態を示す図である。
【図5】第1ヒゲ状部材の各ヒゲの外周が車両上方に行くにしたがって増加する状態を示す図である。
【図6】(a)第1ヒゲ状部材の各ヒゲの断面形状が四角形である場合を示す図である。(b)第1ヒゲ状部材の各ヒゲの断面形状が三角形である場合を示す図である。
【図7】第1ヒゲ状部材が格子状に形成された状態を示す図である。
【図8】第1ヒゲ状部材の各ヒゲの高さが、車両前方に行くにしたがって減少するように形成された状態を示す図である。
【図9】(a)下側部分と下側部分に接続される上側部分とから構成されるヒゲ状部材を示す図である。(b)下側部分の長さが、車両前方に行くにしたがって減少するように形成された状態を示す図である。
【図10】(a)本発明の第2の実施の形態に係るフロアマットを示す図である。(b)図10(a)に示すフロアマットを直線A−A′で切断した際の断面図である。
【図11】(a)撓み易い下層部と、上面の摩擦係数が小さい上層部とから構成される多層構造からなるシート部材を示す図である。(b)シート部材の上端の車両前方側が高く、傾斜するように形成された状態を示す図である。
【図12】(a)本発明の第3の実施の形態に係るフロアマットを示す図である。(b)図12(a)に示すフロアマットをB方向から見た図である。
【図13】(a)図12(b)に示すフロアマットを直線C−C′で切断した際の断面図であり、通常時の状態を示す図である。(b)図12(b)に示すフロアマットを直線C−C′で切断した際の断面図であり、ブレーキペダル急踏み時の状態を示す図である。
【図14】ECUが踏込速度に基づいて制御処理するフローチャートを示す図である。
【図15】ECUが車間距離に基づいて制御処理するフローチャートを示す図である。
【図16】車速と所定値Eとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 フロアマット
3 ベース部材
5 第1ヒゲ状部材
7 第2ヒゲ状部材
11 ブレーキペダル
13 ヒゲ状部材
13a 下側部分
13b 上側部分
15 ヒゲ状部材
17 シート部材
17a 貫通孔
29 ソレノイド
31 マット部材
33 ヒゲ状部材
35 ECU
37 ストロークセンサ
39 車間距離センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転座席近傍に敷設されるフロアマットであって、
該フロアマットに掛かる踏力が増加すると、前記フロアマットの摩擦係数が増加することを特徴とするフロアマット。
【請求項2】
請求項1記載のフロアマットであって、
ベース部材と、
該ベース部材上に設けられ、前記車両上方に延びる第1ヒゲ状部材および第2ヒゲ状部材と、を備え、
前記第1ヒゲ状部材の摩擦係数は前記第2ヒゲ状部材の摩擦係数よりも大きく、かつ前記第1ヒゲ状部材は前記第2ヒゲ状部材よりも車両上下方向に低く形成されていることを特徴とするフロアマット。
【請求項3】
請求項2記載のフロアマットであって、
前記第1ヒゲ状部材および前記第2ヒゲ状部材は、ブレーキペダル近傍に形成されていることを特徴とするフロアマット。
【請求項4】
請求項3記載のフロアマットであって、
前記第1ヒゲ状部材が形成される面積は、車両前方へ行くにしたがって減少することを特徴とするフロアマット。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1項記載のフロアマットであって、
前記第1ヒゲ状部材のヒゲの外周は、前記車両上方へ行くにしたがって増加することを特徴とするフロアマット。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか1項記載のフロアマットであって、
前記第1ヒゲ状部材の各ヒゲの断面形状は、多角形であることを特徴とするフロアマット。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか1項記載のフロアマットであって、
前記第1ヒゲ状部材は、格子状に形成されていることを特徴とするフロアマット。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれか1項記載のフロアマットであって、
前記第1ヒゲ状部材のヒゲの高さは、車両前方へ行くにしたがって減少することを特徴とするフロアマット。
【請求項9】
請求項1記載のフロアマットであって、
ベース部材と、
該ベース部材に接続される下側部分と、該下側部分に接続される上側部分とを有するヒゲ状部材と、を備え、前記下側部分の摩擦係数は前記上側部分の摩擦係数よりも大きいことを特徴とするフロアマット。
【請求項10】
請求項9記載のフロアマットであって、
前記ヒゲ状部材はブレーキペダル近傍に形成されていることを特徴とするフロアマット。
【請求項11】
請求項10記載のフロアマットであって、
前記ヒゲ状部材が形成される面積は、車両前方へ行くにしたがって減少することを特徴とするフロアマット。
【請求項12】
請求項9乃至11のうちいずれか1項記載のフロアマットであって、
前記ヒゲ状部材の断面形状は、多角形であることを特徴とするフロアマット。
【請求項13】
請求項9乃至12のうちいずれか1項記載のフロアマットであって、
前記下側部分の長さは、車両前方へ行くにしたがって減少することを特徴とするフロアマット。
【請求項14】
請求項1記載のフロアマットであって、
ベース部材と、
該ベース部材上に設けられ、複数の貫通孔が形成される弾性のシート部材と、
前記ベース部材上に設けられ、前記複数の貫通孔を貫通するヒゲ状部材と、を備え、
前記シート部材の摩擦係数は前記ヒゲ状部材の摩擦係数よりも小さいことを特徴とするフロアマット。
【請求項15】
車両の運転座席近傍に敷設されるフロアマットであって、
ブレーキペダルの急踏みを検知する急踏検知手段と、
前記急踏検知手段により前記急踏みが検知されたとき、前記フロアマットの摩擦係数を小さくする摩擦係数変化手段と、を備えることを特徴とするフロアマット。
【請求項16】
請求項15記載のフロアマットであって、
前記急踏検知手段は前記ブレーキペダルのストローク速度を検出するストローク速度検出部を有し、
前記摩擦係数変化手段は前記ストローク速度検出部からの前記ストローク速度が所定値以上のとき、前記摩擦係数を小さくすることを特徴とするフロアマット。
【請求項17】
請求項15記載のフロアマットであって、
前記急踏検知手段は前記車両周辺の障害物と車両との距離を検出する距離検出部を有し、
前記摩擦係数変化手段は前記距離検出部からの前記距離が所定値以下のとき、前記摩擦係数を小さくすることを特徴とするフロアマット。
【請求項18】
請求項1乃至17のうちいずれか1項記載のフロアマットであって、
アクセルペダル近傍の当該フロアマットの摩擦係数は、前記アクセルペダル近傍以外の部分の摩擦係数より大きいことを特徴とするフロアマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−160184(P2006−160184A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358164(P2004−358164)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】