説明

フロンの再生装置

【課題】フロン中の不純物の除去率が高く、より小型で安全性を向上させたフロンの再生装置を提供すること。
【解決手段】回収フロン用ボンベ1のガス出口と電気式集塵装置20のガス流入口23とを接続する第1管路15にニードルバルブ30を介装し、電気式集塵装置20のガス排出口26と凝縮器50の入口とを接続し、凝縮器50の出口と再生フロン用ボンベ8の液出入口とを接続するように設け、回収フロン用ボンベ1から排出されるガス化したフロンをニードルバルブ30内の狭い通路を通過させることによって当該フロンに含まれる不純物を帯電させ、その帯電させた不純物を電気式集塵装置20によって除去し、凝縮器50によってガス状態から再び液化されたフロンを再生フロン用ボンベ8に収容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収フロンに含まれる油分等の不純物を除去するフロンの再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大気に放出されたフロンは、オゾン層の破壊や地球温暖化の要因となることから、使用済みのフロンを回収して分解処理するとか、回収したフロンを冷凍機油や水分等の不純物の除去処理をした上で再利用することが行なわれている。
【0003】
特許文献1には、回収フロンを充填した回収フロンボンベを加熱する湯煎装置と、ガス化したフロンに含有する油分を分離する油分離器と、油分が分離されたフロンを圧縮するコンプレッサーと、圧縮されたフロンを冷却し液化させる冷却器と、液化されたフロンを充填する再生フロンボンベと、フロンに含有される水分を除くフィルタドライヤを工程途中に配置し、回収フロンを再生フロンに精製するフロン再生装置が開示されている。
【0004】
因みに、フロンは低沸点であり、回収フロンに含有する不純物たる油分や水分よりも先に気化するので、気化させるだけで殆どの油分や水分を除去することができるが、気化したフロンに含まれる僅かなオイルミストや水分を除去することができない。
【0005】
上記フロン再生装置のような簡易再生装置では、フロンに含有する油分を油分離器で除去し、水分をフィルタドライヤで除去しているが、1回の処理では油分や水分が十分に除去されないために同じ処理を2回施すことが行なわれており、再生時間が長くなるという不都合がある。また、油分離器、冷却器やフィルタドライヤ等により再生装置が大型化し、広い設置スペースを要していた。
【0006】
このような現状を鑑みて、本件出願人は特許文献2に示す電気式集塵装置を利用する新たな方式のフロン再生装置を開発して提案している。そのフロン再生装置は、油分(オイルミスト)等の不純物を含むガス化した回収フロンを螺旋形に巻かれた4弗化エチレン樹脂製チューブ内を通過させることによって不純物を摩擦作用により帯電させ、その帯電させた不純物を電気式集塵装置の集塵電極に付着させることにより除去してフロンを再生する構造とされている。その後、本願発明者の研究によれば、フロン中の不純物の帯電量が増えれば不純物の除去処理がさらに容易となり、集塵電極に約2kvの電圧がかけられているが、それよりも低い電圧を使用できれば安全性が向上することが知見された。そこで、かかる点を取り入れて改良した新たな装置を提案するに至った。
【特許文献1】特開2001−26559号公報
【特許文献2】特開2007−144319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、フロン中の不純物の除去率が高く、より小型で安全性を向上させたフロンの再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために請求項1に記載した発明は、回収フロン用ボンベのガス出口と電気式集塵装置のガス流入口とを接続する第1管路にニードルバルブを介装し、その電気式集塵装置のガス排出口と凝縮器の入口とを接続し、その凝縮器の出口と再生フロン用ボンベの液出入口とを接続するように設け、前記回収フロン用ボンベから排出されるガス化した回収フロンを前記ニードルバルブ内の狭い通路を通過させることによって当該フロンに含まれる不純物を帯電させ、その帯電させた不純物を前記電気式集塵装置によって除去し、前記凝縮器によってガス状態から再び液化されたフロンを再生フロン用ボンベに収容するように設けたことを特徴とする。
【0009】
同様の目的を達成するために請求項2に記載した発明は、請求項1に記載のフロンの再生装置において、前記回収フロン用ボンベのボンベ本体にヒータ装置を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
同様の目的を達成するために請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載のフロンの再生装置において、前記電気式集塵装置と凝縮器とを接続する第2管路に、コンプレッサーを介装したことを特徴とするものである。
【0011】
同様の目的を達成するために請求項4に記載した発明は、請求項1から請求項3の何れかに記載のフロンの再生装置において、前記凝縮器と再生フロン用ボンベとを接続する第3管路に、フロンに含まれる水分を除去するフィルタを介装したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
(請求項1の発明)
このフロンの再生装置は、ガス化した回収フロンに含まれる油分(オイルミスト)等の不純物をニードルバルブのニードルに衝突させつつ同バルブの狭い通路を通過させることによって当該不純物に多くの帯電量を生じさせる構成とし、電気式集塵装置によって不純物を短時間で効率よく除去することが可能である。加えて、この装置では、従来のコイル形状の4弗化エチレン樹脂製チューブを用いるフロン再生装置に比べてニードルバルブの採用により帯電量が約30倍となることから、電気式集塵装置の使用電圧が従来の1/2程度に低下して電源部が小型で安価になり、総合的に見れば装置全体が小型化し安全性が向上する。
【0013】
(請求項2の発明)
このフロンの再生装置は、回収フロン用ボンベのボンベ本体を温めるヒータ装置を備えているので、液状回収フロンの気化熱によってボンベ本体が冷却される事態を防止することができてフロンの気化作用が低下するのを回避することができる。加えて、ヒータ装置にてボンベ本体を適宜温度に保持することにより前記不純物に帯電量が増加するという副次的効果も生ずる。
【0014】
(請求項3の発明)
このフロンの再生装置は、電気式集塵装置と凝縮器とを接続する第2管路に介装したコンプレッサーによってフロンが圧縮されるので、後工程の凝縮器による液化の促進を図ることができる。
【0015】
(請求項4の発明)
このフロンの再生装置は、電気式集塵装置と凝縮器とを接続する第2管路に介装したフィルタによってフロンに含まれる水分を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の最良の形態例を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るフロンの再生装置の説明図、図2は電気式集塵装置の説明図、図3はニードルバルブの概要構成を示す模式図である。
【0017】
本発明に係るフロンの再生装置Rは、ガス化した回収フロンに含まれる油分(オイルミスト)等の不純物に摩擦作用により帯電させる機能を有するニードルバルブ30と、帯電した不純物を除去する電気式集塵装置20と、フロンを液状化する凝縮器50を主な構成要素とする。
【0018】
図1において、回収フロン用ボンベ1については、再生処理を施す液化フロンが収容されるボンベ本体2の上部にガス用開閉バルブ3と液用開閉バルブ4を設け、ボンベ本体2の外周囲に電熱ヒータ(図示せず)が内蔵された公知のヒータ装置5を巻くように装着している。ヒータ装置5は、回収フロンの気化熱によりボンベ本体2が冷却されて温度が下がることによりガス化を遅延させることを防止するために設けられる。
【0019】
再生フロン用ボンベ8については、再生処理が施された液化フロンを収容するボンベ本体9の上部にガス用開閉バルブ10と液用開閉バルブ11を設けている。
【0020】
電気式集塵装置20は、図2に示すように、円筒形の胴部21に底蓋22と上蓋25を取り付けて密閉された処理室20aが設けられ、その処理室20a内にステンレス製の平板が所定間隔で縦向きに並設された集塵電極27を配置し、それらの平板に直流電源28の+極と−極を交互に接続して電極間に約1kvの電圧を印加する構造とされている。23は底蓋22に設けられたガス流入口、24は底蓋22のドレン口22aに螺着された埋栓、26は上蓋25に設けられたガス排出口である。
【0021】
回収フロン用ボンベ1のガス用開閉バルブ3のガス出口3aと、電気式集塵装置20のガス流入口23とを接続する第1管路15には、ニードルバルブ30を介装している。この実施形態では、ニードルバルブ30をガス流入口23に直接に取り付けている。
【0022】
ニードルバルブ30は、図3に示すように、金属製バルブ本体31に入口孔32と出口孔33とを直交させて連通するように設けると共に該入口孔32の出口孔33に連通する奥部32aを小径に形成し、その出口孔33の一端側に螺合されたニードル34をナット36で固定可能に設けている。ニードル34の先端部34aは、入口孔32の奥部32aに臨む位置にて進退するように設けられており、ニードル34の頭部34bを回転操作することにより通路の大きさ、言い換えると隙間37を調節可能に設けている。
【0023】
41は電気式集塵装置20のガス排出口26と凝縮器50の入口50aとを接続する第2管路である。第2管路41にはコンプレッサー45を介装している。51は凝縮器50の冷却用ファンである。
【0024】
55は凝縮器50の出口50bと再生フロン用ボンベ8の液用開閉バルブ11の液出入口11aとを接続する第3管路である。第3管路55にはフロンに含まれる水分を除去するフィルタ56を介装している。
【0025】
回収フロンに含まれる水分については、氷の微粒子の状態であれば、ニードルバルブ30を通過する際に摩擦により帯電するので電気式集塵装置20によって除去することが可能である。したがって、上記フィルタ56を必ずしも要しないが、モレキュラシーブ等の吸着剤を内蔵したフィルタ56を備えればより水分の除去率を高めることができるであろう。
【0026】
以上により、回収フロン用ボンベ1から排出されるガス化した回収フロンをニードルバルブ30内の狭い通路(隙間37)を通過させることによって当該フロンに含まれる不純物を帯電させ、その帯電させた不純物を電気式集塵装置20によって除去し、凝縮器50によってガス状態から再び液化されたフロンを再生フロン用ボンベ8に収容するという本発明に係るフロンの再生装置Rが構成される。
【0027】
つぎに、本発明に係るフロンの再生装置Rの作用について述べる。
(1)回収フロン用ボンベ1のガス用開閉バルブ3を開放すると、ボンベ本体2の内部に収容された回収フロンが内外の圧力差によってガス化し、ガス化した回収フロンがニードルバルブ30の内部に導かれる。
(2)回収フロンに含まれるオイルミストは、ニードル34の先端部34aに衝突することにより帯電しつつ隙間37を通過する。ついで、帯電した回収フロンはガス流入口23から電気式集塵装置20の処理室20aに流入する。
(3)処理室20aにおいて、帯電したオイルミストは集塵電極27に付着することによって除去されてガス排出口26からコンプレッサー45に向かう。
(4)ついで、フロン(ガス)はコンプレッサー45により圧縮され、凝縮器50においてガス状態から再び液化される。
(5)凝縮器50によって液化されたフロンは、フィルタ56により水分を除去されて再生フロン用ボンベ8に収容される。
【0028】
(実施例)
本発明に係るフロンの再生装置Rのニードルバルブ30による帯電量を、前述した従来のフロン再生装置(比較例)に用いるコイル形状の4弗化エチレン樹脂製チューブの帯電量と比較する実験を下記条件にて行なった。その結果を表1に示す。
ニードルバルブ : ニードルの直径4mm
4弗化エチレン樹脂製チューブ: 大きさ外径6mm×内径4mm×長さ1m
ただし、冷凍機油10%を含むフロンの流量を1時間当たり10kgとし、帯電量を1分間測定した。
【0029】
【表1】

【0030】
また、本発明に係るフロンの再生装置Rの性能を上記比較例の再生装置と比較する実験を行なった。その結果を表2に示す。ただし、再生装置の稼働時間は約30分間とした。
【0031】
【表2】

【0032】
実験の結果、オイルミストの帯電量について、本発明装置は比較例よりも約30倍多いことが確認された。また、本発明装置は、集塵電極の電圧が比較例の1/2であっても、蒸発残分(フロン中に含まれるオイルの割合)が低く、フロン中のオイルミスト(不純物)の除去率が高いことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るフロンの再生装置の説明図
【図2】電気式集塵装置の説明図
【図3】ニードルバルブの概要構成を示す模式図
【符号の説明】
【0034】
R・・・フロンの再生装置
1・・・回収フロン用ボンベ
2・・・ボンベ本体
5・・・ヒータ装置
8・・・再生フロン用ボンベ
15・・・第1管路
20・・・電気式集塵装置
23・・・ガス流入口
26・・・ガス排出口
30・・・ニードルバルブ
37・・・隙間(通路)
41・・・第2管路
45・・・コンプレッサー
50・・・凝縮器
55・・・第3管路
56・・・フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収フロン用ボンベのガス出口と電気式集塵装置のガス流入口とを接続する第1管路にニードルバルブを介装し、その電気式集塵装置のガス排出口と凝縮器の入口とを接続し、その凝縮器の出口と再生フロン用ボンベの液出入口とを接続するように設け、
前記回収フロン用ボンベから排出されるガス化した回収フロンを前記ニードルバルブ内の狭い通路を通過させることによって当該フロンに含まれる不純物を帯電させ、その帯電させた不純物を前記電気式集塵装置によって除去し、前記凝縮器によってガス状態から再び液化されたフロンを再生フロン用ボンベに収容するように設けたことを特徴とするフロンの再生装置。
【請求項2】
前記回収フロン用ボンベのボンベ本体にヒータ装置を備えたことを特徴とする請求項1に記載のフロンの再生装置。
【請求項3】
前記電気式集塵装置と凝縮器とを接続する第2管路に、コンプレッサーを介装したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフロンの再生装置。
【請求項4】
前記凝縮器と再生フロン用ボンベとを接続する第3管路に、フロンに含まれる水分を除去するフィルタを介装したことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のフロンの再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−183851(P2009−183851A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25826(P2008−25826)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度、経済産業省、中部経済産業局、中小企業地域新生コンソーシアム研究開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(591124400)アサダ株式会社 (8)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】