説明

フロントバンパグリル構造

【課題】 冠水走行時に生じ得る不具合を未然に防止する。
【解決手段】 開口部14のフランジ21上部に取付面22を設け、取付面22に固定穴23を設ける。固定穴23は、開口部14を覆うグリル構成部材15の固定点を形成する。取付面22にV字溝25を形成し、薄肉のPPヒンジ26を形成する。PPヒンジ26の下側に固定部27を設定し、固定部27の車両後方Rへの傾倒を許容する。フランジ21下部の棚面31に係合凹溝32を形成する。グリル本体42上部をタッピンネジ54で固定部27に固定する。グリル構成部材15下部に延出片61を設け、延出片61の自由端部に係合凸条62を設ける。係合凸条62と係合凹溝32で係合構造71を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントバンパにバンパグリルが設けられたフロントバンパグリル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前部には、図5に示すように、フロントバンパ101が設けられており、該フロントバンパ101には、開口又は没入した穴部102が形成されている。
【0003】
この穴部102には、突条111,・・・及び横溝112,・・・が交互に形成されたグリル構成部材113がボルトやクリップ等の締結部材114,114によって上部及び下部が固定されており、バンパグリル115が形成されている。これにより、内部の露出を防止しつつ、デザイン性の向上が図られていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなフロントバンパ101にあっては、前後に貫通する開口部が閉鎖される、あるいは開口部が無い構造のため、冠水路走行時には、大きな水圧を受けることとなる。これにより、フロントバンパ101が破損することがあった。
【0005】
また、フロントバンパ101によって巻き上げられた水が、上部に設けられたラジエータグリル(図示省略)からエンジンルーム内に進入することもあった。この場合、エンジンルーム内に設けられたエアクリーナを介してエンジン内に水が浸入し、エンジンを停止させてしまう恐れもあった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、冠水走行時に生じ得る不具合を未然に防止することができるフロントバンパグリル構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明の請求項1のフロントバンパグリル構造にあっては、前面に前後に貫通する開口部が設けられたフロントバンパにおいて、前記開口部の上縁より下方に延出した取付面に、当該開口部を覆うグリル構成部材の固定点を設定し、前記取付面の前記固定点より上方に車幅方向に延在する薄肉のヒンジを形成して、該ヒンジより下側に設けられた固定部の車両後方への傾倒を許容する一方、上部が前記固定点に固定された前記グリル構成部材の下部及び前記開口部の下縁より車両後方に延出した棚面に、前記グリル構成部材が前記開口部を覆った状態で互いに係合するとともに、前記グリル構成部材に車両後方へ向けた所定以上の外力が加えられた際に当該グリル構成部材下部の車両後方への移動を許容する係合構造を設けた。
【0008】
すなわち、通常時において、フロントバンパに設けられた開口部は、グリル構成部材によって覆われており、開口部からの内部の露出が防止される。
【0009】
このとき、前記開口部上縁の取付面に設定された固定点には、前記グリル構成部材が固定されており、該グリル構成部材が固定された固定部は、前記固定点より上方に形成されたヒンジによって車両後方への傾倒が許容されている。また、このグリル構成部材の下部及び前記開口部の棚面には、前記グリル構成部材が前記開口部を覆った状態で互いに係合するとともに、前記グリル構成部材に車両後方へ向けた所定以上の外力が加えられた際に当該グリル構成部材下部の車両後方への移動を許容する係合構造が設けられている。
【0010】
このため、冠水路走行時において、大きな水圧がフロントバンパに加えられた際には、前記グリル構成部材の下部が前記ヒンジを中心として車両後方へ傾倒することによって、前記開口部が開口し、車両後方へ連通した水路が形成される。
【0011】
また、請求項2のフロントバンパグリル構造においては、前記グリル構成部材の下部に、車両後方に延出する延出片を設けるとともに、該延出片の自由端部に、前記係合構造の一方を構成する係合部を設定した。
【0012】
すなわち、グリル構成部材で開口部を覆った状態を維持する係合構造の一方の係合部は、前記グリル構成部材の下部に設けられた延出片の自由端部に設けられており、当該グリル構成部材に所定以上の外力が加えられた際には、前記延出片が弾性変形することによって、前記グリル構成部材の下部と前記開口部の棚面との係合状態が容易に解除される。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明の請求項1のフロントバンパグリル構造にあっては、冠水路走行時にフロントバンパに大きな水圧が加えられた際に、フロントバンパに設けられた開口部を覆うグリル構成部材を、その水圧によって傾倒することで、前記開口部を開口して車両後方へ連通した水路を形成することができる。これにより、この水路を介してフロントバンパ前部の水を車両後方へ流すことができ、フロントバンパが受ける水圧を小さくすることができる。
【0014】
したがって、開口部が閉鎖され車両前方からの水圧の総てがフロントバンパに加えられてしまう従来と比較して、フロントバンパの破損を防止することができる。
【0015】
また、フロントバンパによる水の巻き上げも抑制することができる。このため、フロントバンパによって大量の水が上方に巻き上げられ、上部のラジエータグリルからエンジンルーム内に進入して不具合を起こす恐れのあった従来と比較して、冠水走行時に生じ得る不具合を未然に防止することができる。
【0016】
また、請求項2のフロントバンパグリル構造においては、グリル構成部材で開口部を覆った状態を維持する係合構造の一方の係合部は、前記グリル構成部材の下部に設けられた延出片の自由端部に設けられており、当該グリル構成部材に所定以上の外力が加えられた際には、前記延出片が弾性変形することによって、前記グリル構成部材の下部と前記開口部の棚面との係合状態を容易に解除することができる。これにより、係合状態解除構造を容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1は、本実施の形態にかかるフロントバンパグリル構造を備えたフロントバンパ1を示す図であり、該フロントバンパ1の左部が示されている。
【0018】
すなわち、車両前部には、衝撃緩衝用のフロントバンパ1が車幅方向に延設されており、該フロントバンパ1は金型によって樹脂成形されている。該フロントバンパ1は、車両前部を構成する前面部11と、該前面部11の両端部より車両側部に回り込んで車両後方Rへ向けて延出した後方延出部12,12とによって一体形成されており、前記前面部11は、車幅方向中央部にナンバープレート取付部13が設けられている。該ナンバープレート取付部13の両脇には(左方のみ図示)、図2にも示すように、前後に貫通した長方形状の開口部14が開設されており、該開口部14に、図1及び図3に示すように、グリル構成部材15が取り付けられることによって、当該フロントバンパ1にはバンパグリル16が設けられている。
【0019】
前記開口部14の開口縁には、車両後方Rへ向けて延出したフランジ21が全周に渡って一体形成されており、該フランジ21の上部からは、図2及び図3に示したように、下方に延出した板状の取付面22が形成されている。該取付面22には、左右の二カ所に円形の固定穴23,23が開設されており、該固定穴23,23によって、当該開口部14を覆う前記グリル構成部材15の固定点が設定されている。前記取付面22の車両後方R側の後面24には、図3に示したように、車幅方向に延在するV字溝25が金型成型時に形成されており、このV字溝25によって当該取付面22には、薄肉のPPヒンジ26が当該取付面22の全長に渡って形成されている。このPPヒンジ26は、前記各固定点23,23より上方に設定されており、前記PPヒンジ26より下側の部位には、前記固定穴23,23を有した固定部27が設定され、該固定部27の車両後方Rへの傾倒が許容されている。
【0020】
前記開口部14の開口縁に設けられたフランジ21の下部は、前記グリル構成部材15の下部を支持する棚面31を構成しており、該棚面31の車両後方Rの縁部には、図2から図4に示すように、車幅方向に延在する係合凹溝32が全長に渡って形成されている。
【0021】
前記グリル構成部材15は、図1に示したように、前記開口部14に適合した横長の長方形状に形成されており、当該グリル構成部材15は、前記開口部14内に配置されるように構成されている。このグリル構成部材15は、弾性変形可能な合成樹脂によって形成されており、左右側壁41,41間に一体形成されたグリル本体42は、板状部材が波形に形成された形状を成している。
【0022】
すなわち、このグリル本体42には、図3に示したように、車両前方Fへ膨出形成された突条43が車幅方向に延設されており、複数の突条43,・・・が間隔をおいて上下に並設されている。これにより、各突条43,43間には、車幅方向に延在する凹溝44,・・・が形成されており、グリル形状が構成されている。
【0023】
各突条43,・・・は、図1に示したように、車両中央部側の厚みが薄肉となるようにデザインされており、最上段の突条43の上面51には、ネジ取付部52が設けられている。また、最上段の凹溝44の奥部には、図3にも示したように、ネジ挿入穴53が開設されており、前記ネジ取付部52に挿入されたタッピンネジと、前記ネジ挿入穴53に挿入されたタッピンネジ54は、前記フロントバンパ1の前記固定部27に取り付けられたスプリングナット55に螺入されている。これにより、当該グリル構成部材15は、その上部が前記タッピンネジ54によって前記フロントバンパ1の前記固定部27に固定されており、このグリル構成部材15で前記開口部14が覆われて成る前記バンパグリル16が形成され、前記開口部14からの内部の露出を防止しつつ、デザイン性の向上が図られている。
【0024】
このグリル構成部材15の下部には、図4に示したように、最下部に設けられた突条43より車両後方Rに延出する延出片61が一体形成されている。該延出片61の後端部を構成する自由端部には、下方に突出する係合部としての係合凸条62が長さ方向の全域に渡って形成されており、該係合凸条62は、当該グリル構成部材15が前記開口部14を覆った状態で、前記フロントバンパ1の前記棚面31に形成された前記係合凹溝32内に挿入され係合するように構成されている。
【0025】
この係合凸条62の突出量及び長さ寸法と、前記係合凹溝32の没入量及び長さ寸法とは、車両前方Fから前記グリル構成部材15に加えられる入力が予め設定された所定値以上となった際に、前記係合凸条62と前記係合凹溝32との係合状態が解除され、当該グリル構成部材15下部の車両後方Rへの移動を許容するように設定されており、その所定値は、走行時に生じる風圧より大きく、かつ冠水路走行時に加わる水圧より小さな値に設定されている。これにより、前記係合凸条62と前記係合凹溝32とによって本発明の係合構造71が構成されている。
【0026】
以上の構成にかかる本実施の形態において、通常時にはフロントバンパ1に設けられた開口部14は、グリル構成部材15によって覆われており、開口部14からの内部の露出を防止することができる。
【0027】
このとき、前記開口部14上縁の取付面22に設けられた固定穴23,23からなる固定点には、前記グリル構成部材15が固定されており、該グリル構成部材15が固定された固定部27は、前記固定点より上方に形成されたPPヒンジ26によって車両後方Rへの傾倒が許容されている。また、このグリル構成部材15の下部及び前記開口部14の棚面31には、前記グリル構成部材15が前記開口部14を覆った状態で互いに係合するとともに、前記グリル構成部材15に車両後方Rへ向けた所定以上の外力が加えられた際に当該グリル構成部材15下部の車両後方Rへの移動を許容する係合構造71が設けられている。
【0028】
このため、冠水路走行時において、大きな水圧がフロントバンパ1に加えられた際には、前記グリル構成部材15の下部が前記PPヒンジ26を中心として車両後方Rへ傾倒することによって、前記開口部14が開口し、車両後方Rに連通した水路が形成される。これにより、この水路を介してフロントバンパ1前部の水を車両後方Rへ流すことができ、フロントバンパ1が受ける水圧を小さくすることができる。
【0029】
したがって、開口部14が閉鎖され車両前方Fからの水圧の総てがフロントバンパ1に加えられてしまう従来と比較して、フロントバンパ1の破損を防止することができる。
【0030】
また、フロントバンパ1による水の巻き上げも抑制することができる。このため、フロントバンパ1によって大量の水が上方に巻き上げられ、上部のラジエータグリルからエンジンルーム内に進入して不具合を起こす恐れのあった従来と比較して、冠水走行時に生じ得る不具合を未然に防止することができる。
【0031】
そして、前記グリル構成部材15で前記開口部14を覆った状態を維持する係合構造71の一方の係合凸条62は、前記グリル構成部材15の下部に設けられた延出片61の自由端部に設けられており、当該グリル構成部材15に所定以上の外力が加えられた際には、前記延出片61及び該延出片61を備えた断面コ字形状の突条43が弾性変形することによって、前記グリル構成部材15の下部の係合凸条62と前記棚面31の係合凹溝32との係合状態を容易に解除することができる。これにより、係合状態解除構造を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施の形態を示す要部の斜視図である。
【図2】同実施の形態を示す要部の正面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図3のB部拡大図である。
【図5】従来例を示す要部の断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 フロントバンパ
11 前面部
14 開口部
15 グリル構成部材
16 バンパグリル
22 取付面
23 固定穴
25 V溝
26 PPヒンジ
27 固定部
31 棚面
32 係合凹部
61 延出片
62 係合凸条
71 係合構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に前後に貫通する開口部が設けられたフロントバンパにおいて、
前記開口部の上縁より下方に延出した取付面に、当該開口部を覆うグリル構成部材の固定点を設定し、前記取付面の前記固定点より上方に車幅方向に延在する薄肉のヒンジを形成して、該ヒンジより下側に設けられた固定部の車両後方への傾倒を許容する一方、
上部が前記固定点に固定された前記グリル構成部材の下部及び前記開口部の下縁より車両後方に延出した棚面に、前記グリル構成部材が前記開口部を覆った状態で互いに係合するとともに、前記グリル構成部材に車両後方へ向けた所定以上の外力が加えられた際に当該グリル構成部材下部の車両後方への移動を許容する係合構造を設けたことを特徴とするフロントバンパグリル構造。
【請求項2】
前記グリル構成部材の下部に、車両後方に延出する延出片を設けるとともに、該延出片の自由端部に、前記係合構造の一方を構成する係合部を設定したことを特徴とする請求項1記載のフロントバンパグリル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−88782(P2006−88782A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274276(P2004−274276)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000128544)株式会社オーテックジャパン (183)