説明

フロントロータリ作業機

【課題】 前輪を支持する支持装置の強度を高めたフロントロータリ作業機を提供することを課題とする。
【解決手段】 フロントロータリ作業機10は、エンジンの下部にミッションケース27を取付け、ミッションケースの前部21にロータリ作業部15,16を配置し、前部に支持装置31を介して前輪32を取付けるとともに前輪32をロータリ作業部より前方に配置し、ミッションケースからロータリ作業部の上側33をガードするガード部材34を伸ばした。支持装置31は、ガード部材に上部45を結合した。また、前輪を先端46に支持する前輪支持腕部材47と、前輪支持腕部材を回動自在に支承し、且つ、ミッションケースとの連結部51に開口部52を備えた側板部材53と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミッションケースの前部にロータリ作業部を配置し、前部に支持装置を介して前輪を取付けるとともに前輪をロータリ作業部より前方に配置したフロントロータリ作業機に関するものである。
【0002】
ロータリ作業部の前方に前輪を配置した歩行型農作業機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−225202号公報(第12頁、図3)
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図10は、従来の技術の基本構成を説明する図であり、従来の歩行型農作業機201は、機体202の下部に配置した駆動ケース203(ミッションケース204、ロータリケース205を備える)と、ロータリケース205に設けたロータリ装置のロータリ軸206と、機体202の左右の板体に枢軸207で取付けた車輪支持アーム208と、車輪支持アーム208の先端に取付けた前側昇降車輪209と、車輪支持アーム208に連結した昇降調節レバー211と、を備え、昇降調節レバー211を操作することで、前側昇降車輪209の高さを調節することができるというものである。
【0004】
しかし、特許文献1の歩行型農作業機201では、車輪支持アーム208に大きな負荷が加わったとき、車輪支持アーム208を支持する左右の板体が変形する心配がある。特に、大型の農作業機に対して、軽量化を損なうことなく強度を高めた車輪支持アーム208の支持構造が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前輪を支持する支持装置の強度を高めたフロントロータリ作業機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明では、エンジンの下部にミッションケースを取付け、ミッションケースの前部にロータリ作業部を配置し、前部に支持装置を介して前輪を取付けるとともに前輪をロータリ作業部より前方に配置したフロントロータリ作業機において、ミッションケースからロータリ作業部の上側をガードするガード部材を伸ばし、支持装置は、ガード部材に上部を結合したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明では、支持装置は、前輪を先端に支持する前輪支持腕部材と、前輪支持腕部材を回動自在に支承し、且つ、ミッションケースとの連結部に開口部を備えた側板部材と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、ミッションケースからロータリ作業部の上側をガードするガード部材を伸ばし、支持装置は、ガード部材に上部を結合したので、前輪からの負荷が支持装置に加わると、負荷はミッションケースに伝わるとともに、上部からガード部材に伝わり、分散するので、ミッションケースに1点で支持した構造に比べ、前輪を支持する支持装置の強度を高めることができるという利点がある。
【0009】
また、フロントロータリ作業機では、前輪からの負荷が支持装置に加わると、負荷はミッションケースに伝わるとともに、上部からガード部材に伝わり、分散するので、前輪を支持する支持装置の弾性変形を抑制することができ、前輪の昇降高さは安定し、的確な耕深量を得ることができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、支持装置は、前輪を先端に支持する前輪支持腕部材と、前輪支持腕部材を回動自在に支承し、且つ、ミッションケースとの連結部に開口部を備えた側板部材と、を備えたので、ロータリ作業部で跳ね上げられた後に、ガード部材に当たって落下する土砂を開口部から自然排出することができ、側板部材に堆積するのを防ぐことができるという利点がある。
【0011】
また、支持装置31では、開口部からガード部材に当たって落下する土砂を自然排出することができ、支持装置の洗浄性の向上を図ることができるとともに、支持装置の点検整備性の向上を図ることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は、本発明のフロントロータリ作業機の側面図である。「上」「下」「左」「右」は作業者から見た方向、「前」は前進側、「後」はその逆側をいう。
【0013】
フロントロータリ作業機10は、エンジン11から動力伝達装置12を介して左右の走行輪13,14(車輪13と同じ)及びこれらの走行輪13,14の前方に配置した左右のロータリ作業部15,16(ロータリ作業部15と同様)へ動力を伝達する構造を有した農業機械であり、ロータリ作業部15,16で圃場を耕す。
【0014】
また、フロントロータリ作業機10は、エンジン11の下部にクラッチ17を介して取付けた動力伝達装置12と、この動力伝達装置12の前部21に左右の作業駆動軸22,23(図に示していない)を介して回転可能に取付けたロータリ作業部15,16と、動力伝達装置12の後部に左・右車軸24,25(図に示していない)を介して回転可能に取付けた走行輪13,14と、動力伝達装置12の後部から後方斜め上方に延ばしたハンドル26と、を備える。27はミッションケース、Dは耕深量、Gは走行面を示す。
【0015】
さらに、フロントロータリ作業機10では、ミッションケース27の前部21にロータリ作業部15,16を配置し、前部21に支持装置31を介して前輪(走行補助輪)32を取付けるとともに前輪32をロータリ作業部15,16より前方(矢印a1の方向)に配置し、ミッションケース27からロータリ作業部15,16の上側33をガードするようにガード部材34を伸ばした(矢印a1の方向)。35は動力伝達装置12及びロータリ作業部15,16の上方を覆うフェンダ、36はエンジン11の上方を覆うエンジンカバー、37はエアクリーナ、38は燃料タンク、41はシフトレバー、42はデフロック用レバー、43はクラッチレバーである。
【0016】
支持装置31は、前輪32を支持するとともに、前輪32の昇降高さHを設定することを目的とする。ここでは、前輪32の昇降高さHをh4に設定した状態を示す。当然、前輪32の昇降高さHが変化するのに伴い耕深量Dは変化する。
前輪32は、非作業時におけるフロントロータリ作業機10の移動手段であるとともに、作業時における耕深量Dの設定手段である。
なお、図1の耕深量は前輪32の昇降高さHをh3(二点鎖線で示す。)に設定したときである。
【0017】
図2は、図1の2部詳細図であり、フェンダ35を断面にして示す。
支持装置31は、ガード部材34に上部45を結合した構造で、前輪32を先端46に支持する前輪支持腕部材47と、前輪支持腕部材47を回動自在(矢印a2の方向)に支承し、且つ、ミッションケース27との連結部51に開口部52を備えた側板部材53と、を備える。
【0018】
ガード部材34は、ミッションケース27にボルト54で取付けた基部55と、側板部材53を結合する結合部56とを備える。具体的には後述する。
側板部材53は、ミッションケース27にボルト57,58で連結する連結部51と、ガード部材34の結合部56にボルト61,61(図3参照)で取付けるフランジ部62とを備える。具体的には後述する。
【0019】
前輪支持腕部材47は、側板部材53に嵌合する嵌合部63と、嵌合部63を支持するとともに回動の支点となる支点ボルト64と、支点ボルト64に掛けた引張りばね65と、掛止軸66と、前輪32を取付けるフォーク部67とを備え、距離Sだけ必要に応じてスライドする。具体的には後述する。
【0020】
図3は、図2の3−3線断面図であり、支持装置31の断面を示す。
支持装置31は、既に述べたように、ガード部材34に側板部材53をボルト61,61で取付け、ミッションケース27に側板部材53をボルト57,58で取付け、側板部材53に前輪支持腕部材47の嵌合部63を支点ボルト64で支持し、支点ボルト64に引張りばね65の一端を掛け、引張りばね65の他端を掛止軸66に掛けた構成である。
側板部材53は、左板部材71と右板部材72とからなり、左右板部材71,72をボルト73でさらに締結した構成である。
【0021】
図4は、本発明のフロントロータリ作業機に用いたガード部材の平面図である。
ガード部材34は、具体的には、ミッションケース27にボルト54,54で取付けた基部55,55と、基部55に取付けた土ガイド板部74と、土ガイド板部74に取付けたパイプ部材75と、パイプ部材75に取付けた結合部56と、結合部56に連ねて成形した補強板部76と、パイプ部材75に取付けフェンダ35(図1参照)を支持するラグ77,77と、からなる。
【0022】
図5は、本発明のフロントロータリ作業機に用いた支持装置の分解図である。
支持装置31の組立て要領を簡単に説明する。
まず、右板部材72に支点ボルト64を通し、前輪支持腕部材47の嵌合部63に第1カラー78を通し、第1カラー78に右板部材72から出した支点ボルト64を通す。第1カラー78と掛止軸66との間に引張りばね65を掛けた後、第1カラー78から出した支点ボルト64を左板部材71に通してナット81を80%程度ねじ込む。その際、掛止軸66にワッシャー82,82を取付ける。
【0023】
その次に、右板部材72、第2カラー83及び左板部材71にボルト73を通し、ナット81を80%程度ねじ込む。
最後に、ボルト57,58並びにナット81,81で締結するとともに、ナット81,81を100%程度ねじ込む。ボルト61,61でフランジ部62,62を締結する。
なお、フォーク部67に前輪32を取付けるタイミングは任意であり、フォーク部67に第3カラー85、ボルト86、ナット87で取付ける。
【0024】
図6(a),(b)は、本発明のフロントロータリ作業機に用いた側板部材の説明図である。(a)は左板部材71の正面図、(b)は(a)のb矢視図である。
左板部材71は、連結部51に開口部52を形成し、連結部51に取付け孔88,88をミッションケース27(図2参照)に対応するように形成し、連結部51に支点孔89を開け、連結部51に連ねて前方に第1〜第6掛止凹部91〜96を形成し、連結部51に連ねて上方にフランジ部62を成形し、フランジ部62の後方で且つ連結部51に連ねて突き合わせ部97を成形し、フランジ部62の下方に合せ孔98を開け、フランジ部62に孔101を開けたものである。
第1〜第6掛止凹部91〜96は、前輪32(図1参照)の昇降高さを設定する部位である。
右板部材72(図3参照)は、中心軸線Cを基準にして左板部材71と対称構造であり、説明を省略する。
【0025】
図7(a)〜(c)は、本発明のフロントロータリ作業機に用いた前輪支持腕部材の説明図である。(a)は前輪支持腕部材47の正面図、(b)は(a)のb−b線断面図、(c)は(a)のc−c線断面図である。
前輪支持腕部材47は、嵌合部63を備え、嵌合部63は、断面U字状に回動部材102を成形し、回動部材102の一方にストローク孔103を形成し、他方に掛止軸66を取付けるための掛止部104を形成し、他方にへの字状の第1支持部材105を溶接にて固定し、中央に第2支持部材106を溶接にて固定したものである。107は掛止軸66を固定した第1溶接部(ビードを含む。)、108は第1支持部材105を固定した第2溶接部(ビードを含む。)を示す。
ストローク孔103は、第1カラー78(図5参照)の外径より大きい径で、長さをS1(S1=S)に設定した孔である。
フォーク部67は、第1支持部材105及び第2支持部材106に溶接にて固定する固定部111を有する。
【0026】
ここで、図2で前輪32の昇降高さの設定要領を説明する。
手で前輪支持腕部材47の第1支持部材105を二点鎖線で示すように引く(矢印a3の方向)ことで、引張りばね65で掛かっている掛止軸66を、引張りばね65に抗して第4掛止凹部94から引き出し、回動可能(矢印a2の方向)な状態とし、所望の昇降高さ、例えば、第1掛止凹部91に掛止軸66を掛ける。これで昇降高さの設定は完了する。
「第1掛止凹部91に掛止軸66を掛ける」ことが、第1掛止凹部91を選択するということである。
【0027】
図8は、本発明のフロントロータリ作業機に用いたガード部材の斜視図である。
ガード部材34は、土ガイド板部74を備え、土ガイド板部74は、中心軸線C2より左に設定した左板部112と、左板部112に連ねた右板部113とを有する。右板部113は左板部112と同様の形状である。
また、土ガイド板部74は、ロータリ作業部15(図1参照),16が跳ね上げた土砂を受け止めるとともに、衝突した際の衝撃によって跳ね上げた土砂を細かく砕き、圃場へ落下させる。その際、落下する土の一部は図3の左板部材71と右板部材72との間に浸入する。
【0028】
結合部56は、フランジ部62(図3参照),62(図3参照)が取付けられる取付け部114を形成し、取付け部114に連ねて補強部115,115を成形し、取付け部114に孔116,116を開けた。
補強板部76には、フェンダ35(図1参照)を取付けるめねじ部117,117を形成した。
【0029】
なお、基部55に連ねて一体に補強板部76を成形したが、基部55に連ねて土ガイド板部74を形成することも可能であり、土ガイド板部74、基部55、補強板部76、結合部56を得るための素材の板取り形状や分割位置や溶接位置は任意である。
【0030】
以上に述べたフロントロータリ作業機10の作用を次に説明する。
図9は本発明のフロントロータリ作業機の作用図である。図1、図2及び図4を併用して説明する。
フロントロータリ作業機10では、前輪32からの負荷Fが支持装置31に加わると、負荷Fは側板部材53の連結部51からミッションケース27に矢印f1,f2のように伝わるとともに、上部45からガード部材34に矢印f3のように伝わり、3点に分散するので、ミッションケース27に1点で支持した構造(例えば、ボルト58の1点)に比べ、前輪32を支持する支持装置31の強度を高めることができる。
【0031】
また、フロントロータリ作業機10では、前輪32からの負荷Fが支持装置31に加わると、負荷Fは側板部材53の連結部51からミッションケース27に伝わるとともに、ガード部材34に伝わり分散するので、前輪32を支持する支持装置31の弾性変形を抑制することができ、前輪32の昇降高さHは安定し、的確な耕深量Dを得ることができる。
【0032】
支持装置31では、ミッションケース27との連結部51に開口部52を備えた側板部材53を備えたので、ロータリ作業部15,16で矢印a4のように跳ね上げられた後に、ガード部材34の土ガイド板部74に当たって落下する土砂121・・・を開口部52から矢印a5のように自然排出することができ、側板部材53に堆積するのを防ぐことができる。
【0033】
支持装置31では、ミッションケース27との連結部51に開口部52を備えた側板部材53を備えたので、開口部52から土ガイド板部74に当たって落下する土砂121・・・を自然排出することができ、支持装置31の洗浄性の向上を図ることができるとともに、支持装置31の点検整備性の向上を図ることができる。
【0034】
支持装置31では、第1〜第6掛止凹部91〜96(図6参照)を設けたので、第1掛止凹部91を選択することで、前輪32の昇降高さHをh1(最小)に設定することができ、第6掛止凹部96を選択することで、昇降高さHをh6(最大)に設定することができる。
【0035】
また、前輪32の昇降高さHをh1に設定すると、前輪32によって非作業時にフロントロータリ作業機10を支持して移動させることができる。
一方、第2〜第6掛止凹部92〜96のうち何れかに設定することで、作業時における、耕深量Dを設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のフロントロータリ作業機は、耕耘機に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のフロントロータリ作業機の側面図
【図2】図1の2部詳細図
【図3】図2の3−3線断面図
【図4】本発明のフロントロータリ作業機に用いたガード部材の平面図
【図5】本発明のフロントロータリ作業機に用いた支持装置の分解図
【図6】本発明のフロントロータリ作業機に用いた側板部材の説明図
【図7】本発明のフロントロータリ作業機に用いた前輪支持腕部材の説明図
【図8】本発明のフロントロータリ作業機に用いたガード部材の斜視図
【図9】本発明のフロントロータリ作業機の作用図
【図10】従来の技術の基本構成を説明する図
【符号の説明】
【0038】
10…フロントロータリ作業機、11…エンジン、15,16…ロータリ作業部、21…ミッションケースの前部、27…ミッションケース、31…支持装置、32…前輪(走行補助輪)、33…ロータリ作業部の上側、34…ガード部材、45…支持装置の上部、46…前輪支持腕部材の先端、47…前輪支持腕部材、51…連結部、52…開口部、53…側板部材、D…耕深量、H…昇降高さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの下部にミッションケースを取付け、ミッションケースの前部にロータリ作業部を配置し、前部に支持装置を介して前輪を取付けるとともに前輪をロータリ作業部より前方に配置したフロントロータリ作業機において、
前記ミッションケースからロータリ作業部の上側をガードするガード部材を伸ばし、
前記支持装置は、ガード部材に上部を結合したことを特徴とするフロントロータリ作業機。
【請求項2】
前記支持装置は、前輪を先端に支持する前輪支持腕部材と、前輪支持腕部材を回動自在に支承し、且つ、ミッションケースとの連結部に開口部を備えた側板部材と、を備えたことを特徴とする請求項1記載のフロントロータリ作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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