説明

フロースルーアッセイ方法、キット及び装置

【課題】操作が極めて容易であり、より迅速に行えるフロースルーアッセイ方法及びフロースルーアッセイ装置を提供すること。
【解決手段】分析対象物に対する第一のレセプターが結合した着色粒子及び分析対象物に対する第二のレセプターが結合したシート状担体を用いて、前記シート状担体表面に、着色粒子/第一レセプター/分析対象物/第二レセプター複合体を形成し、これを検出することを特徴とするフロースルーアッセイ方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫測定法の一種であるフロースルーアッセイ方法及びフロースルーアッセイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
迅速免疫測定法の一種であるメンブランを用いたフロースルーアッセイ方法において、検体を滴下後、酵素で標識したレセプターを滴下し、リガンド(分析対象物)を検出又は測定する方法が知られている(特許文献1参照)。しかしながらこの方法は、酵素で標識したレセプターを滴下する工程、未反応の酵素を除去する工程、更にその酵素に対応する基質を反応させる工程など、多くの工程が必要であり、時間もかかるものであった。
このような酵素基質反応を行わないフロースルーアッセイ方法としては、Alice R. Arredondoらにより、IgG抗体が結合したブルーラテックスルビーズ、IgM抗体及び検体を混合後、フィルター濾過する方法が報告されている(非特許文献1参照)。しかしこの方法は、3種類の物質を混合して、その後フィルター濾過する操作が必要であるため依然として操作が煩雑であり、臨床診断の場で用いるには不便であった。
【0003】
【特許文献1】特公平7−34016号公報
【非特許文献1】Biotechnology Letters, 22: 547-550, 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は検査を行うための操作が極めて容易であり、より迅速に行えるフロースルーアッセイ方法、キット及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、分析対象物を含む検体液を、前記分析対象物に対する第一のレセプターが結合した着色粒子と接触させ、次いで前記分析対象物に対する第二のレセプターが結合したシート状担体を通過させることにより、前記シート状担体表面に、着色粒子/第一レセプター/分析対象物/第二レセプター複合体を形成し、これを検出することを特徴とするフロースルーアッセイ方法により解決される。
上記課題はまた、上記シート状担体表面より上部に多孔質性パッドが配置されており、その多孔質性パッドの表面または中に上記着色粒子が含有されていることを特徴とする上記フロースルーアッセイ方法により解決される。
【0006】
また、更に上記課題は、分析対象物に対する第一のレセプターが結合した着色粒子及び前記分析対象物に対する第二のレセプターが結合したシート状担体を含む、フロースルーアッセイ用キット、及び多孔質性パッドをさらに含み、該多孔質性パッドの表面または中に該着色粒子が含有されている前記キット、並びに分析対象物に対する第一のレセプターが結合した着色粒子を表面または中に含有する多孔質性パッド、及び前記分析対象物に対する第二のレセプターが結合したシート状担体を含む、フロースルーアッセイ装置により解決される。
【0007】
本発明はまた、該着色粒子が金コロイドまたはラテックスである、上記方法、キット及び装置に関する。本発明はまた、該シート状担体が膜またはフィルターである、上記方法、キット及び装置に関する。本発明はまた、該第一および/または第二のレセプターが抗体である、上記方法、キット及び装置に関する。本発明はまた、該分析対象物がウイルスまたは細菌である、上記方法、キット及び装置に関する。
【0008】
患者等から採取した分析対象物を含む検体液を、前記分析対象物に対する第一のレセプターが結合した着色粒子と混合するなどにより接触させ、次いでこの混合液を、前記分析対象物に対する第二のレセプターが結合したシート状担体に滴下することにより、着色粒子/第一レセプター/分析対象物/第二レセプター複合体がシート状担体表面に形成される。一方、複合体とならなかった検体中の他の成分や第一レセプターが結合した着色粒子などの成分は、担体に捕捉されず通過する。従って、上記複合体のみがシート状担体表面に残存し、着色粒子によりこの複合体を視覚により検出することができる。以上のように、本発明の方法により検体中の分析対象物のみを非常に簡便な操作で確実に検出することができる。
【0009】
また、第一レセプターと結合した着色粒子がシート状担体上部に配置されている多孔質性パッド表面または中に配置した場合には、分析対象物を含む検体液をこの多孔質性パッド上から滴下するのみで同様に着色粒子/第一レセプター/分析対象物/第二レセプター複合体がシート状担体表面に形成されて分析対象物を検出することができ、非常に簡便である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフロースルーアッセイ方法及び装置を使用することにより、従来より簡便で、かつ迅速にウイルス等の検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の方法及び装置について以下に説明する。
(フロースルーアッセイ方法)
フロースルーアッセイ方法の原理は、“Guide to Diagnostic Rapid Test Device Components”, 2nd edition, published by Schleicher & Schuell company, January 2000, Edited by Lisa Vickers, p6-8、にフロースルーフォーマット(Flow Through Formats)として記載されるとおりである。すなわち、メンブラン等のシート状担体を使用する免疫アッセイ法において、分析対象物を含む検体液がシート状担体を通過し、その際に担体に固定されたレセプターに分析対象物が捕捉されることを特徴とする方法である。シート状担体の下には検体液を下方に吸引する役割を果たす、液体を吸収する部材が存在することが好ましく、この部材により、より迅速な検出が可能となる。また、特公平7−34016号(ハイブリテック)公報もフロースルーアッセイ方法の一形態が記載される文献として挙げられる。
【0012】
本発明の第一の方法は、上記フロースルーアッセイ方法において、分析対象物に対する第一のレセプターが結合した着色粒子を用い、これと分析対象物を含む検体液とを接触させ、さらにこの検体液を、分析対象物に対する第二のレセプターが結合したシート状担体を通過させる方法である。着色粒子/第一レセプター/分析対象物/第二レセプター複合体がシート状担体表面に形成され、この複合体を前記マーカーにより検出することができる。
また、本発明の第二の方法は、上記フロースルーアッセイ方法において、該シート状担体表面より上部に配置されている、表面または中に着色粒子を含有する多孔質性パッドの表面上に、分析対象物を含む検体液を滴下する方法である。着色粒子/第一レセプター/分析対象物/第二レセプター複合体がシート状担体表面に形成され、この複合体を前記マーカーにより検出することができる。
【0013】
(着色粒子)
着色粒子とは、本明細書において、水、緩衝液等の検体浮遊液に不溶性である粒子状物質であって、色素等による着色標識化物等、視覚により検出可能な標識化物を意味する。着色粒子は第一のレセプターに結合して使用するので、吸着などの手段によりレセプターと結合できることが必要である。また、レセプターが結合した着色粒子はシート状担体中を通過して担体表面には残存しないことが必要であるので、担体のポアサイズより小さいサイズの粒子であることが必要である。担体の種類にもよるが、通常、直径が0.01〜1μm程度の大きさの粒子であることが好ましい。このような着色粒子としては、例えば金コロイド、着色ラテックス等が挙げられる。
【0014】
分析対象物に対する第一レセプターに結合した着色粒子は、分析対象物を含む検体液に固体のまま添加して混合した後にシート状担体を通過させてもよく、または着色粒子を緩衝液等に希釈し、この希釈液と分析対象物を含む検体液とを混合した後に担体を通過させてもよい。着色粒子を希釈する液は、後述する検体浮遊液について記載されるものを使用することができる。着色粒子を希釈する場合の希釈倍率は、着色粒子の種類、抗体の性能により変動するので当業者が適切な濃度となるように適宜決定することができる。
例えば抗体を結合した金コロイドの場合、530nmでの吸光度が1.0〜10の金コロイド溶液を使用した場合には、例えば金コロイド溶液1(容量)に対して、試料溶液(検体液)を0.1〜20(容量)の割合で、すなわち約1〜20倍希釈程度で使用できる。
また、着色ラテックスを使用する場合には、0.0001w/v%〜0.01w/v%程度の範囲で使用できる。
【0015】
また、第一のレセプターが結合した着色粒子を、予め第二のレセプターが結合したシート状担体表面より上部に配置された多孔質性パッド表面または中に含有させておいてもよい。この方法では、検体液を多孔質性パッド上から滴下するのみでアッセイが行えるため、非常に簡便であり好ましい。
着色粒子を多孔質性パッドの表面または中に含有させる方法としては、着色粒子を溶液または懸濁液にして多孔質性パッド中に含浸させた後乾燥させてもよく、またはパッド表面に噴霧した後乾燥させる方法でもよい。または着色粒子を多孔質性パッド表面または中に乾燥状態で包埋してもよい。
着色粒子を溶液または懸濁液として使用する場合、または多孔質性パッドに吸着させる際に希釈するための溶媒としては、燐酸塩緩衝生理食塩水、またはGoodの緩衝液等の緩衝液が挙げられ、さらにタンパク質(カゼイン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、精製グロブリン画分など)、さらには糖類(マンニトール、トレハロース、ソルビトール、シュークロース、グルコースなど)等を含むことが好ましい。
【0016】
また、分析対象物に対するレセプターを着色粒子へ結合させるには、物理的吸着法、化学的結合法等を利用することができる。物理的吸着法としては、例えば適当な溶媒中に浮遊した着色粒子を分析対象物に対するレセプターに接触させる方法が挙げられる。レセプター吸着後、着色粒子表面の吸着に関与しなかった部分を被覆するため、ウシ血清アルブミン等のタンパク性ブロッキング剤で処理し、その後遠心分離、あるいは限外濾過法などによりレセプターが結合(吸着)した着色粒子と吸着しなかった過剰のレセプターとを分離する。また、化学的結合法としては、カルボキシル基、アミノ基等の官能基を介して共有結合を形成させる方法が挙げられる。各着色粒子に結合可能なレセプター濃度は、着色粒子の材質、大きさ(粒径、表面積)等により異なるため、当業者が適宜決定することができる。
【0017】
(多孔質性パッド)
多孔質性のパッドとしては、ポアの直径が10〜200μm、厚さ300〜3000μmのガラス繊維濾紙、ポリプロピレン不織布、その他のポリマー系不織布が好適に用いられる。上述したように着色粒子を表面または中に含有させた多孔質性パッドを使用する場合には、このパッドを後述するシート状担体表面より上部に配置することが好ましい。多孔質性パッドがシート状担体上に直接接触するように積載されていてもよく、または多孔質性パッドがシート状担体に接触せずに、一定の間隔でシート状担体表面より上部に配置されていてもよい。
【0018】
(シート状担体)
シート状担体は、水に不溶性の支持体であり、レセプターを固定化し、着色粒子/第一レセプター/分析対象物/第二レセプター複合体を捕捉して他の成分から分離するために用いる。例としては膜またはフィルターが挙げられる。このような膜またはフィルターは、検体液中に含まれる分析対象物以外の物質及び第一レセプターが結合する着色粒子を通過させることができるような一定のポアサイズを有するものであれば特に制限はない。一般に市販されているものであればいずれでもよいが、好適にはニトロセルロース、アセテート混ニトロセルロース、ナイロン、ポリエーテルスルホン、ポリビニリデンジフルオライド等が用いられる。
【0019】
またシート状担体のポアサイズは上述したように、分析対象物及び第一レセプターが結合する着色粒子の大きさ等に依るため、特に規定されないが、0.22μm〜12μmが最もよく用いられる。
シート状担体へのレセプターの固定化(結合)方法は、物理的吸着であってもよく、または化学的な結合によるものであってもよい。レセプターが結合したシート状担体の調製は、例えば、レセプターを緩衝液等に希釈した溶液をシート状担体に吸着してその後乾燥することにより行われる。
【0020】
(フロースルーアッセイ装置)
本発明の第一のフロースルーアッセイ方法に使用される装置は、少なくとも分析対象物に対するレセプターが結合したシート状担体を含むものである。この装置を用いる方法は以下のとおりである。分析対象物を含む検体液を、前記分析対象物に対する第一のレセプターが結合した着色粒子と接触させ、次いで前記装置中のシート状担体を通過させることにより、前記シート状担体表面に、着色粒子/第一レセプター/分析対象物/第二レセプター複合体を形成し、これを検出する。
この装置の模式図を図1及び図2に示す。図1は装置の平面図であり、図2は、図1のI−I’切断端面図である。図1及び2において、aは、調製した試料(検体液)を滴下する開口部を有し、底面部に試料が通過するための穴(Aホール及びBホール)を備えたアダプターである。bは分析対象物に対するレセプターが結合したシート状担体であり、cは液体を吸収する部材である。
【0021】
また、本発明の第二のフロースルーアッセイ方法に使用される装置は、分析対象物に対する第一のレセプターが結合した着色粒子を表面または中に含む多孔質性パッド、及び前記分析対象物に対する第二のレセプターが結合したシート状担体を含む、フロースルーアッセイ装置である。この装置を用いる方法は以下のとおりである。分析対象物を含む検体液を、前記多孔質性パッド表面に滴下して、次いで前記シート状担体を通過させることにより、前記シート状担体表面に、着色粒子/第一レセプター/分析対象物/第二レセプター複合体を形成され、これを検出する。
図3は、レセプターが結合した着色粒子が多孔質性パッド表面または中に含有されており、前記多孔質性パッドがシート状担体表面より上部に配置されている本発明のフロースルーアッセイ装置の切断端面図を表す。図3において、dは分析対象物に対するレセプターが結合した着色粒子を表面または中に含む多孔質性パッドである。
【0022】
上記フロースルーアッセイ装置は、シート状担体へ滴下した検体液等の液体を吸収する液体吸収部材を、シート状担体の下部に有することが好ましい。このような液体吸収部材としては、ガラス繊維、セルロース、あるいはこれらの混合物等の材料が挙げられる。また、液体の吸収が迅速に進行するように、液体吸収部材はレセプターが結合したシート状担体と接触または密着していることが好ましい。このようなシート状担体と接触または密着した液体吸収部材が存在することにより、検体液の液体等のシート状担体通過が促進され、迅速な検出を可能とする。
【0023】
(レセプター)
分析対象物に対する第一及び第二のレセプターとは、分析対象物と特異的に反応し、複合体を形成する受容体である。従って、分析対象物により使用するレセプターが異なることは当然であるが、一般には分析対象物が細菌、ウイルス、ホルモン、その他臨床マーカー等の場合には、これらに対し特異的に反応して結合するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体等が挙げられる。そのほか、ウイルス抗原、ウイルス中空粒子、遺伝子組換え大腸菌発現タンパク質、遺伝子組換え酵母発現タンパク質等が挙げられる。
使用する第一及び第二のレセプターは同じでも異なっていてもよい。
【0024】
(分析対象物)
本発明のフロースルーアッセイ方法により、細菌、ウイルス、ホルモン、その他臨床マーカー等の様々な抗原、抗体等を分析することができる。特に、インフルエンザウイルス、小型小球ウイルス等の分析には有効である。
【0025】
(検体浮遊液)
検体は、例えば患者の咽頭・鼻腔等から綿棒等を使用して採取するか、または鼻腔吸引液等を用いることができるが、このようにして得られた検体は、通常検体浮遊液に浮遊させてアッセイを行う。検体浮遊液としては、免疫拡散法、酵素免疫測定法、凝集法等の免疫学的手法による試料検出または定量法において通常使用されるバッファー類等を使用することができる。
より具体的には、生理食塩水、リン酸緩衝性生理食塩水(PBS)、ゼラチン添加PBS、ウシ血清アルブミン(BSA)添加PBS、グッドの緩衝液、子牛インフュージョンブロス(VIB)、ハートインフュージョンブロス、イーグルの最小必須培地(EMEM)、BSA添加EMEMなどが挙げられるがこの限りではない。また、上記バッファー類は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、さらに上記組成に加えて、塩基性アミノ酸、無機塩類および/または界面活性剤を添加することもできる。塩基性アミノ酸、無機塩類および界面活性剤の少なくとも二種類を含む検体浮遊液を使用することにより、検体中に含まれる分析対象物以外の成分の担体や担体に結合したレセプターへの非特異的な結合を軽減させることができ好ましい。
また、本発明の方法において、検体を検体浮遊液に浮遊した後、着色粒子と混合する前に濾過を行ってもよい。
【0026】
(フロースルーアッセイ用キット)
本発明のフロースルーアッセイ用キットは、上述したフロースルーアッセイ方法に用いるキットである。本発明のフロースルーアッセイ用キットは少なくとも以下の(i)及び(ii)を含む。
(i) 分析対象物に対する第一のレセプターが結合した着色粒子又は分析対象物に対する第一のレセプターが結合した着色粒子を含むパッド
(ii) 分析対象物に対する第二のレセプターが結合したシート状担体
さらに必要により、検体浮遊液、着色粒子希釈液を含んでいてもよい。(i)および/または(ii)は、上述したフロースルーアッセイ装置の形態で、キットに含まれていてもよい。
【0027】
また、必要に応じて、キットの活性を検査するためのバッファーのみからなる陰性コントロール液、抗原性物質などの分析対象物を含むバッファーからなる陽性コントロールを含んでいてもよい。さらに、試料を濾過するためのフィルターや滅菌綿棒を含んでいてもよい。
【実施例】
【0028】
[実施例1]
以下の試薬及び装置を用いた。
1.モノクローナル抗体の作製
(抗A型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体(マウス)の作製)
精製A型インフルエンザウイルス抗原を免疫し、一定期間維持したBALB/cマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al.,Nature,vol,256,p495−497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。
得られた融合細胞(ハイブリドーマ)は、37℃インキュベーター中で維持し、A型インフルエンザウイルスNP抗原固相プレートを用いたELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。
取得した該細胞株をプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。得られた腹水から硫安分画法によってIgGを精製した。
(抗B型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体(マウス)の作製)
精製B型インフルエンザウイルス抗原を免疫し、一定期間維持したBALB/cマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol.256, p495−4397(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。得られた融合細胞(ハイブリドーマ)は、37℃でインキュベーター中で維持し、B型インフルエンザウイルスNP抗原固相プレートを用いた。ELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。取得した該細胞株をプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。得られた腹水から硫安分画法によってIgGを精製した。
【0029】
2.金コロイドとモノクローナル抗体の結合
10mLの金コロイド溶液(BBI社、粒径40nm、塩化金酸濃度として0.01%)を取り、100mM炭酸カリウムでpHを5.5に調整する。精製した抗A型又はB型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体を2mMホウ酸ナトリウム溶液(pH9.2)で透析し、100μg/mLの濃度になるように調製した。pHを5.5に調整した金コロイド溶液に、抗体の最終濃度が10μg/mLとなる量を加え、金コロイドと抗体が十分結合されるように、手でゆっくりと撹拌した。5分後、10%BSAを1mL加え、穏やかに10分間手で撹拌した。全量を遠心管に移し、14000rpm、30分、4℃で遠心した。遠心後、上清を吸引廃棄し、沈殿している抗体結合金コロイドに、1%BSA、150mM塩化ナトリウムを含む10mMトリス塩酸緩衝液pH8.5、1mLを加えて浮遊した。
3.アッセイ装置
アッセイ装置は図1および図2に示すものと同じ構成を有するものを用いた。
【0030】
4.抗体のシート状担体への固定化
シート状担体はニトロセルロースを用いた。固定化は、2種の抗体溶液をニトロセルロースメンブランヘスポットして行った。装置のAホールには抗A型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体1mgが含まれる溶液を1μL、Bホールには抗B型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体1mgが含まれる溶液を12μLそれぞれスポットした。抗体を希釈する緩衝液は10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いた。スポット後、45℃の乾燥室で40分間乾燥を行った。
【0031】
5.抗原の検出方法
2.で調製した抗体結合金コロイドをOD530nmで吸光度が1.0となるように5mMリン酸緩衝液(pH7.4)で希釈したものと、5%BSA、4.5%TritonX−100、2%魚ゼラチンを含む5mM燐酸緩衝液(pH7.4)で希釈した検体を1:4に希釈混合し、アッセイ装置に500μL滴下した。検出は、陽性検体として希釈したA型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルス、陰性検体として上記緩衝液を使用して行った。検体をAホール、Bホールに500μLずつ気泡を入れないように滴下し、メンブラン上に液がなくなるまで常温に静置した。その後アダプターを取り外し、目視で判定した。判定の結果、Aホールに関しては、A型インフルエンザウイルスが10の4乗pfu/mLまで検出でき、B型インフルエンザウイルスに対しては陰性と判定された。一方Bホールに関しては、B型インフルエンザウイルスが10の4乗pfu/mLまで検出でき、A型インフルエンザウイルスに対しては陰性と判定された。
【0032】
[実施例2]
実施例1と同様に、1.モノクローナル抗体の作製、2.金コロイドとモノクローナル抗体の結合、4.抗体の担体への固定化を行った。
3.アッセイ装置は、図3に示されるようなシート状担体表面に着色粒子を含む多孔質性パッドが積載された構成の装置を用いた。すなわち、以下のようにしてモノクローナル抗体を結合した金コロイドを乾燥して製造したアッセイ装置を使用し、以下に記載するように抗体の検出を行った。
【0033】
5.金コロイドの乾燥
2.で調製した抗体結合金コロイドをOD530nmで吸光度が1.0となるように10%ショ糖添加10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で希釈し、パッド(Whatman製:Conjugate Release Pad F075−14(ポアサイズ:直径23μm、厚さ355μm)に載せ温風送風乾燥した。温風送風乾燥後の抗A型インフルエンザウイルスNP抗体吸着パッドはアッセイ装置のAホールヘ載せ、一方温風送風乾燥後の抗B型インフルエンザウイルスNP抗体吸着パッドはアッセイ装置のBホールヘ載せた。
【0034】
6.抗原の検出方法
検体の希釈は5mMリン酸緩衝液(pH7.4)に5%BSA、4.5%TritonX−100、2%魚ゼラチンとなるように調製したものを用いた。検出は、陽性検体として希釈したA型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルス、陰性検体として上記緩衝液を使用して行った。検体をAホール、Bホールに500μLずつ気泡を入れないように滴下し、メンブレン上に液がなくなるまで常温に静置した。その後アダプターを取り外し、目視で判定した。判定の結果、Aホールに関しては、A型インフルエンザウイルスが10の4乗pfu/mLまで検出でき、B型インフルエンザウイルスに対しては陰性と判定された。一方Bホールに関しては、B型インフルエンザウイルスが10の4乗pfu/mLまで検出でき、A型インフルエンザウイルスに対しては陰性と判定された。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のアッセイ装置の一例の平面図である。
【図2】図1のI−I’切断端面図である。
【図3】本発明のアッセイ装置の一例の切断端面図である。
【符号の説明】
【0036】
A:穴
B:穴
a:アダプター
b:シート状担体
c:液体吸収部材
d:着色粒子を含む多孔質性パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象物を含む検体液を、前記分析対象物に対する第一のレセプターが結合した着色粒子と接触させ、次いで前記分析対象物に対する第二のレセプターが結合したシート状担体を通過させることにより、前記シート状担体表面に、着色粒子/第一レセプター/分析対象物/第二レセプター複合体を形成し、これを検出することを特徴とするフロースルーアッセイ方法。
【請求項2】
該シート状担体表面より上部に多孔質性パッドが配置されており、該多孔質性パッドの表面または中に該着色粒子が含有されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該着色粒子が金コロイドまたは着色ラテックスである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該シート状担体が膜またはフィルターである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
該第一および/または第二のレセプターが抗体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
該分析対象物がウイルスまたは細菌である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
分析対象物に対する第一のレセプターが結合した着色粒子及び前記分析対象物に対する第二のレセプターが結合したシート状担体を含む、フロースルーアッセイ用キット。
【請求項8】
多孔質性パッドをさらに含み、該多孔質性パッドの表面または中に該着色粒子が含有されている、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
該着色粒子が金コロイドまたは着色ラテックスである、請求項7または8に記載のキット。
【請求項10】
該シート状担体が膜またはフィルターである、請求項7〜9のいずれか一項に記載のキット。
【請求項11】
該第一および/または第二のレセプターが抗体である、請求項7〜10のいずれか一項に記載のキット。
【請求項12】
該分析対象物がウイルスまたは細菌である、請求項7〜11のいずれか一項に記載のキット。
【請求項13】
分析対象物に対する第一のレセプターが結合した着色粒子を表面または中に含有する多孔質性パッド、及び前記分析対象物に対する第二のレセプターが結合したシート状担体を含む、フロースルーアッセイ装置。
【請求項14】
該多孔質性パッドが該シート状担体表面より上部に配置されている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
該着色粒子が金コロイドまたは着色ラテックスである、請求項13または14に記載の装置。
【請求項16】
該シート状担体が膜またはフィルターである、請求項13〜15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
該第一および/または第二のレセプターが抗体である、請求項13〜16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
該分析対象物がウイルスまたは細菌である、請求項13〜17のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−121320(P2007−121320A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30761(P2007−30761)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【分割の表示】特願2002−152111(P2002−152111)の分割
【原出願日】平成14年5月27日(2002.5.27)
【出願人】(591125371)デンカ生研株式会社 (72)
【Fターム(参考)】