説明

フローティングルーフ式貯蔵タンクの揺動緩和構造

【課題】 原油等の液体を貯蔵するフローティングルーフ式貯蔵タンクに関し、液体の揺動を防止するための構造を提供する。
【解決手段】 フローティングルーフ式貯蔵タンクの側壁部に開口部16を設け、開口部16に袋状で内部に空洞部15を持つ伸縮可能なベローズ状部材14を複数設置し、タンク1内の液体が外界から遮断された状態で、空洞部15に出入りできる構成にすることを特徴とするフローティングルーフ式貯蔵タンクの揺動緩和構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油等の液体を貯蔵するフローティングルーフ式貯蔵タンクに関し、液体の揺動を防止するための構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は従来のフローティングルーフ式貯蔵タンクの一例である。タンク1本体は上部が開放になっており、タンク1本体に充填された液体3の上面に、フローティングルーフ2が浮かんでいる。フローティングルーフ2とタンク1の側壁部との間には、シール部4が取り付けられている。
【0003】
シール部4は、ウレタンフォームなどのシール材をゴムシートで被覆し、フローティングルーフ2に固定されており、シール部4のゴムシートがタンク1の内面に圧接されながら滑る構造である。
【0004】
そのため、タンク1内に充填された液体3の液面高さに対応し、フローティングルーフ2は自在に昇降する機構になっており、液体3からの蒸発ガスをシールする役目である。また、フローティングルーフ2におけるシール部4の上面外周には、雨、雪等の侵入を防止するウェザーシールド5が、周方向に分割され設置されている。ウェザーシールド5もタンク1の内面に圧接されながら滑る構造になっている。
【0005】
図7は従来のフローティングルーフ式貯蔵タンク内における、液体の揺動状態を示す説明図である。地震等の振動により、タンク1が振動し、タンク1内の液体3が揺動すると、液体3の上部に設置されているフローティングルーフ2も液体3の動きに追従して、大きく傾き揺動することになる。地震が収まっても、一旦揺動が始まると長い時間、揺動現象は継続する。
【特許文献1】特開平5−294384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フローティングルーフ式貯蔵タンクにおいて、地震などによりタンク本体が振動すると内部に貯蔵されている液体が揺動し、いわゆる波打現象が発生する。特に地震による振動と液体の揺動現象が共振すると、激しい波打ち現象が発生し、この現象はさらに長時間継続する。この時、フローティングルーフも液体の揺動現象に追従して大きく揺れることになる。
【0007】
そのため、タンクとフローティングルーフのシール構造の破損、フローティングルーフに取り付けられているウェザーシールドの破損等が発生する。また時として、フローティングルーフが激しく揺動するため、フローティングルーフ自身、あるいはタンク自身が破損する危険がある。
【0008】
さらに、フローティングルーフが液体の揺動により大きく傾くと、フローティングルーフのシール部とタンク間に隙間ができ、液体が流出し、タンクの上部から溢流する危険がある。そのため、発生した液体の揺動現象を速やかに沈静化させることが重要である。
【0009】
本発明は、タンク内の揺動現象を緩和し沈静化させる構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、フローティングルーフ式貯蔵タンクにおいて、タンクの側壁部あるいはフローティングルーフに、タンク内の液体と連通した伸縮可能な構造からなる液溜部を設けることを特徴とするフローティングルーフ式貯蔵タンクの揺動緩和構造である。
【0011】
また、本発明は、タンクの側壁部あるいはフローティングルーフに開口部を設け、開口部に袋状で内部に空洞部を持ち伸縮可能な構造からなるベローズ状部材を複数設置し、タンク内の液体が外界から遮断された状態で、空洞部に連通していることを特徴とするフローティングルーフ式貯蔵タンクの揺動緩和構造である。また、本発明のベローズ状部材はゴムまたはアルミニュームを材料とする蛇腹筒からなることを特徴とするフローティングルーフ式貯蔵タンクの揺動緩和構造である。
【0012】
また、本発明は、フローティングルーフに開口部を設け、開口部の上部に複数の外筒を設け、外筒内に上下に可動する小型フローティングルーフを設置し、タンク内の液体が外界から遮断された状態で、外筒内に連通していることを特徴とするフローティングルーフ式貯蔵タンクの揺動緩和構造である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、タンクの側壁部あるいはフローティングルーフに、伸縮可能な液溜部を設けることを特徴としており、フローティングルーフ式貯蔵タンクの側壁部に伸縮可能なベローズ状部材を設置あるいは、フローティングルーフに開口部を設け、上下に可動する小型フローティングルーフあるいは伸縮可能なベローズ状部材を設置する方法である。
【0014】
タンク内の液体の揺動は地震等で発生するが、この動きは図7で示すように、右側に液体が移動した場合は、タンクの右側の液体がタンクの内壁に衝突して上昇する。逆に左側の液体は降下する。次の瞬間には逆の現象が起り、タンクの左側の液体が上昇し、右側の液体が降下する。液体の揺動現象は、この動きを繰り返す状態で、いわゆる振動現象である。
【0015】
タンクの外壁あるいはフローティングルーフに、伸縮可能なベローズ状部材を設置する方法、又は、フローティングルーフに小型フローティングルーフを設置する方法を採用することにより、液体の揺動現象によるフローティングルーフの上下運動が抑えられる。
【0016】
すなわち、ベローズ状部材や小型フローティングルーフを取り付けた外筒内に液体が出入りできることから、液体の揺動現象が緩和され、フローティングルーフの揺動が抑えられる。また、ベローズ状部材や小型フローティングルーフが設置されている部分と設置されていない部分で、タンク内の液体の揺動周期など相対的な動きが異なることから、お互いに干渉し液体の揺動が沈静化される。
【0017】
さらに、液体の出入りによる液流の縮流あるいは拡大による圧力損失が発生し、この点でも液体の揺動エネルギーを一部吸収することができる。これらの現象により、フローティングルーフの上下運動が抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、フローティングルーフ式貯蔵タンクの側壁部、あるいはフローティングルーフに、伸縮可能な液溜部を設ける方法で、地震等で発生する液体の揺動による液流れを吸収し、揺動を緩和させることを特徴としている。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明によるタンクの外壁に設置したベローズ状部材の説明図である。図1はタンク1の両側壁部に開口部16を設け、この開口部16にベローズ状部材14を設置した構成を例に示している。なお、実際には、タンク1の側壁部に複数の開口部16を設け、この開口部16の外壁に、開口部16を覆う形で複数のベローズ状部材14を設置することになる。なお、ベローズ状部材はゴムまたはアルミニュームを材料とする蛇腹筒である。
【0020】
ベローズ状部材14の内部の空洞部15とタンク1内は、タンク1の開口部16を通じて連通している。そのため、タンク1内の液体3がベローズ状部材14内の空洞部15に自由に出入りできる構造になっている。地震等の振動により液体3が揺動すると、液体3は一定の周期でタンク1内を水平に移動し反復する。
【0021】
図7で示したように、タンク1内の右側に移動する液体3は、タンク1の内壁に衝突し上昇する。この液体3の上昇流はフローティングルーフ2を押し上げることになる。タンク1内の左側では液体3が右側に移動するため液体3の表面は下降する。これに伴って、フローティングルーフ2も下降する。すなわち、フローティングルーフ2は右上がりに大きく傾くことになる。その後、逆の現象がおこりこの動作を繰り返す。
【0022】
これらの現象に対し、本発明では、タンク1の右側の内壁に向かって移動した液体3の一部が、タンク1の開口部16を通りベローズ状部材14の内部へ流入する。逆に左側の位置では、液体3がベローズ状部材14の空洞部15からタンク1内へ流出する。この液体3の流れに従って、ベローズ状部材14自身も伸縮する。
【0023】
図2は本発明のベローズ状部材の機能を示す説明図である。図2は、タンク1内の液体3の揺動に伴って動くベローズ状部材14の断面を示している。図2の(a)はタンク1内の液体3が静止した状態であり、タンク1の側壁部に取り付けられたベローズ状部材14の空洞部15の内部には一定量の液体3が入っている状態を示す。(b)はタンク1内の液体3が揺動することにより、タンク1内の液体3が開口部16に向かって流れ、タンク1の開口部16を通りベローズ状部材14の空洞部15内に液体3が流れ込んだ状態を示す。(c)は(b)の後におこる現象で、タンク1内の液体3の揺動により、タンク1内の液体3が、ベローズ状部材14の空洞部15内からタンク1の開口部16を通り、タンク1内へ流出する状態を示す。
【0024】
例えば(a)の状態から、地震等によりタンク1内の液体3が揺動し、タンク1の側壁部の開口部16へ向かって液体3が移動してくると、伸縮可能なベローズ状部材14の空洞部15内に液体3が流れ込み、(b)に示すようにベローズ状部材14が膨張する。この時、タンクの内壁付近に発生する上昇流が抑えられ、これに伴いフローティングルーフ2の上昇も低減される。その後は、逆にベローズ状部材14の空洞部15内の液体3がタンク1内へ移動する現象がおこるが、この時、(c)に示すようにベローズ状部材14の空洞部15内の液体3はタンク1内へ排出され、ベローズ状部材14自身は収縮する。この時、タンク1の内壁付近に発生する下降流が抑えられ、これに伴いフローティングルーフ2の下降も低減される。
【0025】
すなわち、タンク1の側壁部に取り付けられたベローズ状部材14内へ液体3が出入りすることにより、タンク1内の液体3の揺動によるタンク1内壁への圧力あるいは内壁付近に発生する液体3の上下運動を緩和することができる。そのため、フローティングルーフ2の激しい上下運動の発生を防止することができる。なお、予測される揺動に対応して、ベローズ状部材14の大きさ、設置数を選択することになる。
【0026】
図1では、タンク1の側壁部にベローズ状部材14を取り付けた構成について示したが、フローティングルーフ2にベローズ状部材14を取り付けても同様な効果が得られる。
【実施例2】
【0027】
図3は本発明によるフローティングルーフに小型フローティングルーフを設置した構成の説明図の1例である。小型フローティングルーフ20は図3に示すようにフローティングルーフ2上に複数設置されている。
【0028】
図4は本発明の小型フローティングルーフの説明図である。小型フローティングルーフ20の構造はフローティングルーフ2と同様な構造である。すなわち。小型フローティングルーフ20はフローティングルーフ2上の開口部に取り付けられた外筒21の内部に設置されている。
【0029】
外筒21の上部は開放になっており、外筒21内の液面の上に小型フローティングルーフ20が浮かんでいる。小型フローティングルーフ20と外筒21の内壁との間には、小型フローティングルーフ用シール部22が小型フローティングルーフ20に固定され取り付けられている。小型フローティングルーフ用シール部22は、外筒21の内面に圧接されながら滑る構造である。
【0030】
そのため、外筒21内の液体3の液面に対応し、小型フローティングルーフ20は自在に昇降し、しかも液体3からの蒸発ガスをシールする構造になっている。また、フローティングルーフ2の小型フローティングルーフ用シール部22の上面には、小型フローティングルーフ用ウェザーシールド23が設置されている。
【0031】
図5は本発明の小型フローティングルーフの機能を示す説明図である。図5の(a)はタンク1内の液体3が静止した状態であり、フローティングルーフ2に取り付けられた小型フローティングルーフ20はフローティングルーフ2と同レベルにある。(b)はタンク1内の液体3が揺動することにより、タンク1内の液体3が開口部に向かって流れ込み、小型フローティングルーフ20を押し上げた状態を示す。(c)は(b)の後におこる現象で、タンク1内の液体3の揺動により、外筒21内の液体3がタンク1内に流出し、小型フローティングルーフ20が元の位置に下降した状態を示す。
【0032】
そのため、タンク1内の液体3の揺動によりフローティングルーフ2に取り付けた小型フローティングルーフ20は上下に移動する。すなわち、小型フローティングルーフ20が取り付けられた外筒21内へ液体3が出入りすることにより、タンク1内に発生する液体3の上下運動を緩和することができる。その結果、フローティングルーフ2の激しい上下運動の発生を防止することができる。
【0033】
小型フローティングルーフ20の無い部分はフローティングルーフ2の荷重により、揺動がある程度抑えられる。例えば左右に動く揺動が発生している状態では、小型フローティングルーフ20の有無により、揺動の周期や大きさに差を生じる。そのため、お互いに干渉し揺動が沈静化することになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明によるタンクの外壁に設置したベローズ状部材の説明図である。
【図2】本発明のベローズ状部材の機能を示す説明図である。
【図3】本発明によるフローティングルーフに小型フローティングルーフを設置した構成の説明図の1例である。
【図4】本発明の小型フローティングルーフの説明図である。
【図5】本発明の小型フローティングルーフの機能を示す説明図である。
【図6】従来のフローティングルーフ式貯蔵タンクの一例である。
【図7】従来のフローティングルーフ式貯蔵タンク内における液体の揺動状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 タンク
2 フローティングルーフ
3 液体
4 シール部
5 ウェザーシールド
14 ベローズ状部材
15 空洞部
16 開口部
20 小型フローティングルーフ
21 外筒
22 小型フローティングルーフ用シール部材
23 小型フローティングルーフ用ウェザーシールド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローティングルーフ式貯蔵タンクにおいて、タンクの側壁部あるいはフローティングルーフに、前記タンク内の液体と連通した伸縮可能な構造からなる液溜部を設けることを特徴とするフローティングルーフ式貯蔵タンクの揺動緩和構造。
【請求項2】
前記タンクの側壁部あるいは前記フローティングルーフに開口部を設け、前記開口部に袋状で内部に空洞部を持ち伸縮可能な構造からなるベローズ状部材を複数設置し、前記タンク内の液体が外界から遮断された状態で、前記空洞部に連通していることを特徴とする請求項1に記載のフローティングルーフ式貯蔵タンクの揺動緩和構造。
【請求項3】
前記ベローズ状部材はゴムまたはアルミニュームを材料とする蛇腹筒からなることを特徴とする請求項2に記載のフローティングルーフ式貯蔵タンクの揺動緩和構造。
【請求項4】
前記フローティングルーフに開口部を設け、前記開口部の上部に複数の外筒を設け、前記外筒内に上下に可動する小型フローティングルーフを設置し、前記タンク内の液体が外界から遮断された状態で、前記外筒内に連通していることを特徴とする請求項1に記載のフローティングルーフ式貯蔵タンクの揺動緩和構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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