説明

フローティング機能付きカードエッジコネクタ

【課題】フローティング機能を有するカードエッジコネクタにおいて、基板上での実装高さを削減する。
【解決手段】カードエッジコネクタ10は、実装面14を有する固定本体16と、固定本体16に対し移動可能な可動本体24と、固定本体16と可動本体24との双方に取り付けられるコンタクト26とを備える。固定本体16と可動本体24とは、実装面14に平行なXY平面に沿って並ぶように配置される。コンタクト26は、固定本体16に取り付けられる固定側取付部と、可動本体24に取り付けられる可動側取付部と、固定側取付部と可動側取付部との間に延び、固定本体16に対する可動本体24の移動に伴って変形する中間部44とを有し、固定側取付部と中間部44と可動側取付部とが、実装面14に平行なX方向へそれぞれに隣接して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローティング機能を有するカードエッジコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
カードエッジコネクタにおいて、接続相手の回路基板の縁部分(すなわちカードエッジ部分)との接続時の相対位置誤差を許容するためのフローティング機能を備えたものは、公知である。例えば特許文献1は、カードエッジ挿入長孔が取付面に対して平行に設けられたいわゆる水平接続型のコネクタソケットにおいて、取付面を有する固定コネクタハウジングにカードエッジ挿入長孔を有する揺動コネクタハウジングを揺動自在に組み込んだ構成を開示する。
【0003】
特許文献1に記載のコネクタソケットは、取付面にて基板に取り付けられる固定コネクタハウジングの上方に、揺動コネクタハウジングが、固定コネクタハウジングの取付面に対して直交する方向(或いは「上下方向」と記載)へ揺動可能に組み込まれた構成を備えている。複数のコンタクトは、各々の一端の接触部をカードエッジ挿入長孔に臨ませて揺動コネクタハウジングに組み込まれるとともに、各々の他端の端子部分が固定コネクタハウジングに固定される。各コンタクトは、揺動コネクタハウジングと固定コネクタハウジングとの間の空間に延びる部分に、揺動コネクタハウジングの揺動を可能にする屈曲部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−165129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のコネクタソケットは、揺動コネクタハウジングが、固定コネクタハウジングの上方で上下方向へ揺動する構成を有しているから、基板上での実装高さが比較的高くなり、結果として、実装基板と接続相手の回路基板とを含む電子機器の全体寸法が大きくなる傾向がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、実装面を有する固定本体と、固定本体に対し移動可能な可動本体と、固定本体と可動本体との双方に取り付けられるコンタクトとを具備するカードエッジコネクタにおいて、固定本体と可動本体とは、実装面に平行な仮想平面に沿って並ぶように配置され、コンタクトは、固定本体に取り付けられる固定側取付部と、可動本体に取り付けられる可動側取付部と、固定側取付部と可動側取付部との間に延び、固定本体に対する可動本体の移動に伴って変形する中間部とを有し、固定側取付部と中間部とが実装面に平行な第1方向へ隣接して配置されるとともに、中間部と可動側取付部とが第1方向へ隣接して配置されること、を特徴とするカードエッジコネクタである。
【0007】
可動本体は、固定本体に対し、実装面に平行でかつ第1方向に交差する第2方向へ移動するように構成できる。また、可動本体は、固定本体に対し、実装面に交差する第3方向へ移動するように構成できる。
【0008】
可動本体は、接続相手の回路基板のカードエッジ部分を受容するカードエッジ受容部を備え、カードエッジ受容部は、カードエッジ部分を実装面に平行する接続姿勢に保持する保持構造を有することができる。またカードエッジコネクタは、可動本体に対するカードエッジ部分の接続姿勢での第1方向への移動を所定範囲で許容する移動規制構造を有することができる。
【0009】
コンタクトは、可動側取付部から中間部とは反対側へ延長されるばね腕部と、ばね腕部の自由端に形成される接点とを有し、接点の表面が、プレス成形時の板金材料の破断面を含み、接続相手の回路基板のカードエッジ部分に接点が導通接触するときに、ばね腕部が、プレス成形時の板金材料の破断面に直交する方向へ撓んで接触圧力を生ずるように構成できる。
【0010】
本発明の他の態様は、上記したカードエッジコネクタと、カードエッジコネクタに接続されるカードエッジ部分を有する回路基板とを具備する電子部品である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によるカードエッジコネクタは、可動本体が固定本体に対しコンタクトの中間部の変形を伴いながら所定範囲に渡って移動可能な構成(すなわちフローティング機能)を有している。しかも、固定本体と可動本体とが、実装面に平行な仮想平面に沿って並ぶように配置され、コンタクトの固定側取付部と中間部と可動側取付部とが、実装面に平行な第1方向へそれぞれ隣接して配置される構成であるから、カードエッジコネクタの実装高さを比較的低く抑制することができる。したがって、カードエッジコネクタを介して相互に接続した回路基板を含む電子機器の全体寸法を削減でき、電子機器の小型化に寄与することができる。
【0012】
本発明の他の態様による電子部品は、上記したカードエッジコネクタを備えているから、当該電子部品を含む電子機器の全体寸法を削減でき、電子機器の小型化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態によるカードエッジコネクタの斜視図である。
【図2】図1のカードエッジコネクタの分解斜視図である。
【図3】図1のカードエッジコネクタの平面図である。
【図4】図1のカードエッジコネクタの正面図である。
【図5】図1のカードエッジコネクタの側面図である。
【図6】図1のカードエッジコネクタが有するコンタクトの拡大斜視図である。
【図7】図1のカードエッジコネクタの線VII−VIIに沿った断面図である。
【図8】図1のカードエッジコネクタを使用状態で示す斜視図である。
【図9】図1のカードエッジコネクタを使用状態で示す平面図である。
【図10】図1のカードエッジコネクタの一部分を拡大して示す斜視図である。
【図11】図1のカードエッジコネクタの一部分を使用状態で拡大して示す平面図である。
【図12】図1のカードエッジコネクタへの回路基板の接続方法を説明する図で、(a)接続初期状態、及び(b)接続完了状態をそれぞれに示す断面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態によるカードエッジコネクタの斜視図である。
【図14】図13のカードエッジコネクタの平面図である。
【図15】図13のカードエッジコネクタの正面図である。
【図16】図13のカードエッジコネクタの側面図である。
【図17】図13のカードエッジコネクタが有するコンタクトの拡大斜視図である。
【図18】図13のカードエッジコネクタの線XVIII−XVIIIに沿った断面図である。
【図19】図13のカードエッジコネクタへの回路基板の接続方法を説明する図で、(a)接続初期状態、及び(b)接続完了状態をそれぞれに示す断面図である。
【図20】本発明の一実施形態によるキーボードの分解斜視図である。
【図21】図20のキーボードの線XXI−XXIに沿った断面図である。
【図22】図20のキーボードにおけるカードエッジコネクタへの回路基板の接続方法を説明する図で、(a)接続初期状態の部分斜視図、(b)同拡大図、(c)接続完了状態の部分斜視図、及び(d)同拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1〜図5は、本発明の第1の実施形態によるカードエッジコネクタ10の外観を示す図、図6は、カードエッジコネクタ10の一構成要素の図、図7は、カードエッジコネクタ10の断面図、図8及び図9は、カードエッジコネクタ10を使用状態で示す図、図10及び図11は、カードエッジコネクタ10の部分拡大図、図12は、カードエッジコネクタ10への基板接続方法を示す図である。
【0015】
カードエッジコネクタ10は、実装対象の第1の回路基板12の表面12aに当接される実装面14を有する固定本体16と、接続相手の第2の回路基板18のカードエッジ部分20を受容するカードエッジ受容部22を有する可動本体24と、固定本体16と可動本体24との双方に取り付けられるコンタクト26とを具備する(図1、図8)。カードエッジコネクタ10は、固定本体16に対して可動本体24が移動可能なフローティング機能を備えている。
【0016】
固定本体16及び可動本体24は、いずれも、例えば樹脂材料から一体に成形される電気絶縁性のコ字形(U字形)の枠状部材である(図2)。固定本体16は、複数のコンタクト26を整列配置で支持する棒状の主部分28と、主部分28の長手方向両端から主部分28に直交する同一方向へ延長される互いに平行な一対の棒状の副部分30とを備え、主部分28及び両副部分30の底面の全体に、連続する平坦な実装面14が形成される。なお実装面14は、主部分28及び両副部分30の底面の一部分にのみ設けられていてもよい。可動本体24は、複数のコンタクト26を整列配置で支持する棒状の主部分32と、主部分32の長手方向両端から主部分32に直交する同一方向へ延長される互いに平行な一対の副部分34とを備え、主部分32及び両副部分34に囲まれる内側にカードエッジ受容部22が形成される。可動本体24は、主部分32及び両副部分34の全体に、固定本体16の実装面14に平行する底面24aを有する。
【0017】
固定本体16の主部分28及び副部分30は、それぞれの長手方向寸法が、可動本体24の主部分32及び副部分34の長手方向寸法よりも大きくなっている。それにより、全体としてコ字形(U字形)の固定本体16の内側に、同様にコ字形(U字形)の可動本体24が、実装面14に平行な仮想平面(図では直交3軸座標系におけるXY平面)に沿って並ぶように配置される。固定本体16の主部分28と可動本体24の主部分32との間には、所定寸法の空間36が形成される(図3)。また、固定本体16の副部分30と可動本体24の対応する副部分34との間には、寸法可変の隙間38が形成される(図4)。固定本体16と可動本体24とは、全体に渡り、互いに略同一の高さ(すなわち実装面14及び底面24aに直交する方向(図では直交3軸座標系におけるZ方向)への寸法)を有する(図7)。
【0018】
固定本体16は、実装面14を回路基板12の表面12aに一様に当接させた状態で、図示しない半田、接着剤、ねじ、リベット等の固定手段により、回路基板12に固定される。可動本体24は、固定本体16の内側で、後述するようにコンタクト26の変形を伴いながら所定範囲(隙間38によって許容される範囲)に渡って移動可能に、回路基板12の表面12aに搭載される。可動本体24が固定本体16に対し所定移動範囲内の中間位置(コンタクト26の変形が生じない基準位置)に配置された状態で、固定本体16の主部分28と可動本体24の主部分32とは互いに略平行に配置され、固定本体16の副部分30と可動本体24の対応する副部分34とは互いに略平行に配置される(図3)。またこの中間(基準)位置で、固定本体16の副部分30と可動本体24の対応する副部分34との間には、対称な(つまり同一寸法の)隙間38が形成される(図4)。
【0019】
コンタクト26は、例えば金属材料から一体に成形される電気良導性のピン状部材である(図6)。コンタクト26は、固定本体16に固定的に取り付けられる固定側取付部40と、可動本体24に固定的に取り付けられる可動側取付部42と、固定側取付部40と可動側取付部42との間に延び、固定本体16に対する可動本体24の移動に伴って変形する中間部44とを有する。図示構成では、固定側取付部40と中間部44と可動側取付部42とは、略一直線に連続して延びる線状の形態を有する。コンタクト26が固定本体16及び可動本体24に適正に取り付けられた状態で、固定側取付部40と中間部44とは、固定本体16の実装面14に平行な第1方向(図では直交3軸座標系におけるX方向)へ隣接して配置されるとともに、中間部44と可動側取付部42とは、同第1方向へ隣接して配置される(図7)。
【0020】
コンタクト26はさらに、固定側取付部40から中間部44とは反対側へ延長される端末部46と、可動側取付部42から中間部44とは反対側へ延長されるばね腕部48と、ばね腕部48の自由端に形成される接点50とを有する。コンタクト26の中間部44は、固定本体16の主部分28と可動本体24の主部分32との間の空間36に露出して配置され、コンタクト22のばね腕部48及び接点50は、可動本体24のカードエッジ受容部22に露出して配置される。コンタクト26の端末部46は、固定本体16を回路基板12に固定したときに、回路基板12の表面12aに形成された導体パッド(図示せず)に、例えばリフロー半田付け等によって電気的及び機械的に接続される。なお端末部46は、スルーホール接続型のものであってもよい。コンタクト26の接点50は、可動本体24のカードエッジ受容部22に回路基板18のカードエッジ部分20を受容したときに、カードエッジ部分20の表面に形成された接点(図示せず)に接触する。このとき、コンタクト26のばね腕部48が弾性的に撓むことにより、その弾性復元力により、カードエッジ部分20の接点とコンタクト26の接点50とが、所望の接触圧力の下で導通した状態に維持される。
【0021】
カードエッジコネクタ10は、互いに同一の形状及び寸法を有する複数のコンタクト26を備えている。それらコンタクト26は、実装面14に平行でかつ第1方向(つまりコンタクト26の延長方向)に交差する第2方向(図では直交3軸座標系におけるY方向)へ一列に整列して、互いに平行に配置されている(図3)。図示構成では、複数のコンタクト26は、固定本体16及び可動本体24を樹脂材料から成形する際に、成形型内にインサートとして配置されて、成形された固定本体16及び可動本体24に一体に組み付けられる。これに関し、図2の分解図では、固定本体16及び可動本体24の各々の主部分28、32に、コンタクト26を個別に受容する複数の孔Hが示されているが、実際にはこれらの孔Hは、インサート成形の結果として形成されるものである。なお、コンタクト26の本数、列数、配置、固定本体16及び可動本体24への組付方法等は、特に限定されない。
【0022】
カードエッジコネクタ10は、可動本体24が固定本体16に対しコンタクト26の中間部44の変形を伴いながら所定範囲に渡って移動可能な構成(すなわちフローティング機能)を有している。したがって、固定本体16を第1の回路基板12に固定して実装したカードエッジコネクタ10に対し、第2の回路基板18を、そのカードエッジ部分20を可動本体24のカードエッジ受容部22に嵌入することで接続したときに、第1の回路基板12と第2の回路基板18との間に、予め定めた相対位置関係(例えば両回路基板12、18同士を固定する位置関係)からの位置ずれ(すなわち相対位置誤差)が生じていたとしても、そのような相対位置誤差を、固定本体16に対する可動本体24の移動によって許容することができる。
【0023】
しかも、固定本体16と可動本体24とが、実装面14に平行な仮想平面(図ではXY平面)に沿って並ぶように配置され、コンタクト26の固定側取付部40と中間部44と可動側取付部42とが、実装面14に平行な第1方向(図ではX方向)へそれぞれ隣接して配置される構成であるから、回路基板12上でのカードエッジコネクタ10の実装高さを比較的低く(図示構成では固定本体16及び可動本体24の個々の高さまで)抑制することができる。したがって、カードエッジコネクタ10によれば、回路基板12と接続相手の回路基板18とを含む電子機器(図示せず)の全体寸法を削減でき、電子機器の小型化に寄与することができる。なお、コンタクト26が全体として線状の形態を有している図示構成によれば、所期のフローティング機能を確保しつつ、カードエッジコネクタ10の実装高さを一層効果的に削減することができる。
【0024】
カードエッジコネクタ10が有するフローティング機能を、さらに詳細に説明する。
可動本体24は、固定本体16に対し、実装面14に平行でかつ第1方向(X方向)に交差する第2方向(Y方向)へ移動できる。そしてカードエッジコネクタ10は、固定本体16に対する可動本体24の第2方向(Y方向)への移動を所定範囲(寸法可変の隙間38によって許容される範囲)に制限する移動規制構造52を備えている(図3)。図示構成では、移動規制構造52は、固定本体16の副部分30と可動本体24の対応する副部分34との、互いに第2方向(Y方向)へ対向する側面30a、34aから構成される。したがって、固定本体16の副部分30の側面30aと可動本体24の対応する副部分34の側面34aとが互いに当接された位置が、可動本体24の第2方向(Y方向)への移動の両端(限界)位置となる。
【0025】
可動本体24は、固定本体16に対し所定移動範囲の中間(基準)位置に配置された状態から、移動規制構造52が規定する±Fyの距離だけ第2方向(Y方向)へ平行移動できる(図3)。このとき、複数のコンタクト26は、それぞれの中間部44に第2方向(Y方向)への弾性的な撓みを一様に生じて、可動本体24に対し、中間(基準)位置への復帰力を及ぼす。なお、コンタクト26の中間部44は、撓みによる弾性復元力が極めて小さいものや実質的に生じないものであってもよい。いずれの場合も、個々のコンタクト26は、固定本体16に対する可動本体24の第2方向(Y方向)への移動に際して、中間部44に撓みを生じることで、接点50と回路基板18の接点(図示せず)との接触状態、及び端末部46と回路基板12の導体パッド(図示せず)との接続状態を、適正な状態に安定して維持できるようになっている。
【0026】
可動本体24はまた、固定本体16に対し、実装面14に交差する第3方向(図では直交3軸座標系におけるZ方向)へ移動できる。そしてカードエッジコネクタ10は、固定本体16に対する可動本体24の第3方向(Z方向)への移動を所定範囲(寸法可変の隙間38によって許容される範囲)に制限する移動規制構造54を備えている(図4)。図示構成では、移動規制構造54は、固定本体16の副部分30と可動本体24の対応する副部分34との、互いに第3方向(Z方向)へ対向する肩面30b、34bから構成される。詳述すると、固定本体16の各副部分30は、先端の所定長さ領域に、実装面14を有さずに長手方向へ突出する上張出部分56を備えている。また、可動本体24の各副部分34は、先端の所定長さ領域に、側面34aの下方部位から外方へ突出する下張出部分58を備えている。可動本体24の副部分34の下張出部分58は、固定本体16の対応する副部分30の上張出部分56の下方空間に配置され、上張出部分56の下端の肩面30bと、下張出部分58の上端の肩面34bとが、寸法可変の隙間38を介して対向配置される(図5)。
【0027】
したがって、固定本体16の副部分30の肩面30bと可動本体24の対応する副部分34の肩面34bとが互いに当接された位置が、可動本体24の第3方向(Z方向)への移動の一端(限界)位置となる。また、カードエッジコネクタ10を回路基板12に実装した状態で、可動本体24の底面24aが回路基板12の表面12aに当接された位置が、可動本体24の第3方向(Z方向)への移動の他端(限界)位置となる。なお、可動本体24が固定本体16に対し、前述した中間(基準)位置であって、第3方向(Z方向)への移動の他端(限界)位置に配置された状態では、コンタクト26の変形(中間部44の撓み)は生じないようになっている。
【0028】
可動本体24は、固定本体16に対し所定移動範囲の他端(限界)位置に配置された状態から、移動規制構造54が規定するFzの距離だけ第3方向(Z方向)へ平行移動できる(図4)。このとき、複数のコンタクト26は、それぞれの中間部44に第3方向(Z方向)への弾性的な撓みを一様に生じて、可動本体24に対し、他端(限界)位置への復帰力を及ぼす。なお、コンタクト26の中間部44は、撓みによる弾性復元力が極めて小さいものや実質的に生じないものであってもよい。いずれの場合も、個々のコンタクト26は、固定本体16に対する可動本体24の第3方向(Z方向)への移動に際して、中間部44に撓みを生じることで、接点50と回路基板18の接点(図示せず)との接触状態、及び端末部46と回路基板12の導体パッド(図示せず)との接続状態を、適正な状態に安定して維持できるようになっている。
【0029】
カードエッジコネクタ10が上記した第2方向(Y方向)及び第3方向(Z方向)へのフローティング機能を円滑に発揮するためには、可動本体24のカードエッジ受容部22に受容した回路基板18のカードエッジ部分20を実質的に変形させることなく、複数のコンタクト26の中間部44が変形できることが肝要である。各コンタクト26の中間部44がそのような可撓性を有することで、接点50と回路基板18の接点(図示せず)との接触状態、及び端末部46と回路基板12の導体パッド(図示せず)との接続状態を、適正な状態に安定して維持しながら、可動本体24が第2方向(Y方向)及び第3方向(Z方向)へフローティング動作することができる。換言すれば、回路基板18のカードエッジ部分20は、可動本体24のフローティング動作中に複数のコンタクト26の中間部44が発揮する弾性復元力に抗して、自己形状を保持し得る剛性を有していればよい。したがって、コンタクト26の中間部44が撓みにより比較的大きな弾性復元力を生じる場合は、回路基板18のカードエッジ部分20は容易には変形しない剛性を有していることが望ましく、また、コンタクト26の中間部44が撓みにより比較的小さな弾性復元力を生じる(或いは弾性復元力を殆ど生じない)場合は、回路基板18のカードエッジ部分20はいわゆるフレキシブル基板程度の剛性を有していてもよい。
【0030】
可動本体24のカードエッジ受容部22は、可動本体24が固定本体16に対し第2方向(Y方向)又は第3方向(Z方向)へ移動する間に、特にコンタクト26の接点50と回路基板18のカードエッジ部分20の接点(図示せず)との接触状態を適正な状態に安定して維持できるようにするべく、カードエッジ部分20を実装面14に平行する適正な接続姿勢に保持する保持構造60(図2)を備えている。図示構成では、保持構造60は、可動本体24の両副部分34の実質的全長に渡る領域で、副部分34の側面34aとは反対側の側面34cの下方部位から突出する一対の支持台62と、両副部分34の長手方向中間の所定長さ領域で、副部分34の側面34cの上方部位から突出する一対の第1爪64と、両副部分34の先端の所定長さ領域で、副部分34の側面34cの上方部位から突出する一対の第2爪66と、可動本体24の主部分32の長手方向中央の所定長さ領域で、副部分34の側面34cに隣接する側面32aの上方部位から突出する1つの第3爪68とから構成される。
【0031】
各副部分34の支持台62と第1爪64及び第2爪66との間には、回路基板18のカードエッジ部分20の厚みに相当する所定寸法の空間が形成される。また、第1爪64、第2爪66及び第3爪68の下端面(支持台62に対向する側の端面)は、固定本体16の実装面14に平行する共通の仮想平面上に配置される。なお図示構成では、カードエッジコネクタ10の前述したインサート成形工程において、第1爪64及び第2爪66を成形するための型部分(中子)を配置した結果としての貫通穴が、支持台62に形成されているが、このような貫通穴は省略できる。また、複数のコンタクト26も、第3爪68を成形するための型部分(中子)を配置した結果として、固定本体16及び可動本体24の主部分28、32の長手方向中央領域には配置されないようになっている。
【0032】
保持構造60は、カードエッジ受容部22に回路基板18のカードエッジ部分20を受容したときに、一対の支持台62が、カードエッジ部分20の接点(図示せず)を有する表面の一部分を支持するとともに、一対の第1爪64、一対の第2爪66及び1つの第3爪68が、カードエッジ部分20の接点(図示せず)を有しない裏面20a(図8)の一部分に当接されることで、カードエッジ部分20を上記接続姿勢に保持する。特に、第1爪64及び第3爪68は、コンタクト26の接点50からカードエッジ部分20の接点に加わる接触圧力に抗して、カードエッジ受容部22におけるカードエッジ部分20の浮き上がりを防止し、コンタクト26の接点50とカードエッジ部分20の接点との接触圧力を適正な大きさに安定して維持するように作用する。なお、保持構造60による保持機能は、回路基板18のカードエッジ部分20が、人手により容易には変形しない程度の剛性を有している場合に、有効に発揮される。カードエッジ部分20の剛性が極めて高い場合は、第3爪68を省略することもできる。
【0033】
カードエッジコネクタ10では、可動本体24は、固定本体16に対し第1方向(X方向)へは実質的に移動できない。その代わりに、保持構造60によって上記した適正な接続姿勢に保持されたカードエッジ部分20が、その接続姿勢を維持しつつカードエッジ受容部22内で、前述した第1方向(X方向、コンタクト26の延長方向)へ移動できるようになっている。すなわちカードエッジコネクタ10は、可動本体24に対するカードエッジ部分20の上記接続姿勢での第1方向への移動を、所定範囲で許容する(或いは所定範囲に制限する)移動規制構造70(図2)を備えている。図示構成では、移動規制構造70は、可動本体24の両副部分34に設けた支持台62の、第2爪66に対応する先端位置に、上方へ突出するように形成される一対の突起72から構成される(図10)。
【0034】
回路基板18のカードエッジ部分20には、可動本体24の一対の突起72に対応する位置に、隙間を介して突起72を受容可能な一対の穴74が形成される。保持構造60によってカードエッジ受容部22にカードエッジ部分20を上記接続姿勢で保持した状態で、個々の突起72は、対応の穴74に、第1方向(X方向)へ相対移動可能に、かつ第2方向(Y方向)へは実質的に相対移動不能に受容される(図11)。したがって、可動本体24の突起72の第1方向(X方向)の両側面72aとカードエッジ部分20の穴74の第1方向(X方向)の対応する縁74aとが互いに当接された位置が、カードエッジ部分20の第1方向(X方向)への移動の両端(限界)位置となる。
【0035】
回路基板18のカードエッジ部分20は、カードエッジ受容部22内で上記接続姿勢を維持しつつ、移動規制構造70(突起72)が規定する距離だけ第1方向(X方向)へ平行移動できる。この移動の間、複数のコンタクト26はそれぞれの接点50で、カードエッジ部分20の対応の接点(図示せず)に適正な接触圧力下で接触し続けることが要求される。したがって、カードエッジコネクタ10が第1方向(X方向)へのフローティング機能を円滑に発揮するためには、回路基板18のカードエッジ部分20の接点(図示せず)の長さを、第1方向(X方向)への移動範囲の全体に渡って接点同士の適正な接触状態を維持できるように拡大して、カードエッジコネクタ10の一特性としての有効嵌合長が増加するように構成することが望ましい。
【0036】
このように、カードエッジコネクタ10は、回路基板12の表面12aに実装され、かつ回路基板18のカードエッジ部分20に接続された状態で、それら回路基板12、18の間に生じている相対位置誤差を、直交3軸座標系内のあらゆる方向へ予め定めた範囲で許容することができる。例えば図9に示すように、回路基板12に実装されたカードエッジコネクタ10に回路基板18を接続したときに、回路基板12、18同士を互いに固定するためにそれら回路基板12、18に予め形成されたボルト穴76、78の位置が互いにずれていたとしても、カードエッジコネクタ10が有するフローティング機能の許容範囲内で、それらボルト穴76、78の位置ずれが解消される方向(矢印α)へ、回路基板18を回路基板12に対して移動させることができる。
【0037】
カードエッジコネクタ10は、回路基板12の表面12aに実装された状態での、回路基板18の接続作業を容易にするための、下記構成をさらに備えている。
【0038】
可動本体24のカードエッジ受容部22が具備している保持構造60の第1爪64及び第2爪66は、回路基板18のカードエッジ部分20を固定本体16の実装面14(或いはXY平面)に斜交する初期姿勢(図12(a))に支持できるとともに、初期姿勢から上記接続姿勢(図12(b))へのカードエッジ部分20の移行を許容するように構成される。具体的には、可動本体24の各副部分34の先端領域に形成される第2爪66は、副部分34の側面34cからの突出量が、カードエッジ部分20及び副部分34の少なくとも一方の弾性変形によりカードエッジ部分20の側縁が第2爪66を乗り越えることができる程度に、小さくなっている。そして第2爪66の上面は、上に向かって徐々に突出量が減少するテーパ面66aとして形成される(図10)。他方、可動本体24の各副部分34の中間領域に形成される第1爪64は、副部分34の側面34cからの突出量が第2爪66よりも十分に大きくなっている。
【0039】
第2爪66は、テーパ面66aでカードエッジ部分20の側縁に接触することにより、カードエッジ部分20を初期姿勢に支持できる一方、カードエッジ部分20及び副部分34の少なくとも一方の弾性変形を伴いながらカードエッジ部分20の側縁をテーパ面66aに沿って下方へ摺動させることにより、カードエッジ部分20を接続姿勢に移行させてスナップ式に保持することができる。カードエッジ部分20の姿勢移行の間、第1爪64は、カードエッジ部分20の先端近傍の側縁領域を支持し、第2爪66のテーパ面66aとカードエッジ部分20の側縁との摺動接触点(作用点)に対して、梃子の支点として作用する。このようにしてカードエッジ部分20を初期姿勢から接続姿勢に移行させると、可動本体24に設けたX方向の移動規制構造70である一対の突起72が、カードエッジ部分20に設けた一対の穴74に、自動的に挿入される。なお、第1爪64の下面は、カードエッジ受容部22へのカードエッジ部分20の挿入(嵌合)を容易にするためのテーパ面64aとして形成されている(図12)。
【0040】
保持構造60の第1爪64及び第2爪66が有する上記構成によれば、カードエッジ受容部22へのカードエッジ部分20の挿入(嵌合)方向を実装面14に平行な水平方向とする構成(例えば既述の特許文献1に記載された構成)に比べて、カードエッジコネクタ10を実装した回路基板12の内外の各種部品や構造物等の存在により回路基板18の接続作業が阻害される傾向が軽減され、結果として接続作業が容易になる。また、回路基板18をカードエッジ受容部22にスナップ式に嵌合させる構成としたから、接続の完了を作業者が触覚及び聴覚により容易に確認できる。
【0041】
図13〜図19を参照して、本発明の第2の実施形態によるカードエッジコネクタ80の構成を説明する。カードエッジコネクタ80は、コンタクトの構成、並びにコンタクトに関連する部分での固定本体及び可動本体の構成を除いて、カードエッジコネクタ10と実質的に同一の構成を有する。したがって、対応する構成要素には共通の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0042】
カードエッジコネクタ80は、実装面14を有する固定本体82と、カードエッジ受容部22を有する可動本体84と、固定本体82と可動本体84との双方に取り付けられるコンタクト86とを具備する(図13)。カードエッジコネクタ80は、固定本体82に対して可動本体84が移動可能なフローティング機能を備えている。
【0043】
固定本体82及び可動本体84は、いずれも、例えば樹脂材料から一体に成形される電気絶縁性のコ字形(U字形)の枠状部材である(図14)。固定本体82は、複数のコンタクト86を整列配置で支持する棒状の主部分88と、主部分88の長手方向両端から主部分88に直交する同一方向へ延長される互いに平行な一対の棒状の副部分90とを備え、主部分88及び両副部分90の底面の全体に、連続する平坦な実装面14が形成される。可動本体84は、複数のコンタクト86を整列配置で支持する棒状の主部分92と、主部分92の長手方向両端から主部分92に直交する同一方向へ延長される互いに平行な一対の副部分94とを備え、主部分92及び両副部分94に囲まれる内側にカードエッジ受容部22が形成される。
【0044】
固定本体82の主部分88及び副部分90は、それぞれの長手方向寸法が、可動本体84の主部分92及び副部分94の長手方向寸法よりも大きくなっている。それにより、全体としてコ字形(U字形)の固定本体82の内側に、同様にコ字形(U字形)の可動本体84が、実装面14に平行な仮想平面(図では直交3軸座標系におけるXY平面)に沿って並ぶように配置される。固定本体82の主部分88と可動本体84の主部分92との間には、所定寸法の空間36が形成される。また、固定本体82の副部分90と可動本体84の対応する副部分94との間には、寸法可変の隙間38が形成される。固定本体82と可動本体84とは、全体に渡り、互いに略同一の高さ(すなわち実装面14及び底面24aに直交する方向(図では直交3軸座標系におけるZ方向)への寸法)を有する。
【0045】
コンタクト86は、例えば金属材料から一体に成形される電気良導性のピン状部材である(図17)。コンタクト86は、固定本体82に固定的に取り付けられる固定側取付部96と、可動本体84に固定的に取り付けられる可動側取付部98と、固定側取付部96と可動側取付部98との間に延び、固定本体82に対する可動本体84の移動に伴って変形する中間部100とを有する。図示構成では、中間部100は略一直線に延びる線状の形態を有し、固定側取付部96と可動側取付部98とは、中間部100の側方へ延長される矩形平板状の形態を有する。コンタクト86が固定本体82及び可動本体84に適正に取り付けられた状態で、固定側取付部96と中間部100とは、固定本体82の実装面14に平行な第1方向(図では直交3軸座標系におけるX方向)へ隣接して配置されるとともに、中間部100と可動側取付部98とは、同第1方向へ隣接して配置される(図18)。
【0046】
コンタクト86はさらに、固定側取付部96から中間部100とは反対側へ延長される端末部102と、可動側取付部98から中間部100とは反対側へ延長されるばね腕部104と、ばね腕部104の自由端に形成される接点106とを有する。コンタクト86の中間部100は、固定本体82の主部分88と可動本体84の主部分92との間の空間36に露出して配置され、コンタクト22のばね腕部104及び接点106は、可動本体84のカードエッジ受容部22に露出して配置される。コンタクト86の端末部102は、固定本体82を回路基板12に固定したときに、回路基板12の表面に形成された導体パッド(図示せず)に、例えばリフロー半田付け等によって電気的及び機械的に接続される。なお端末部102は、スルーホール接続型のものであってもよい。コンタクト86の接点106は、可動本体84のカードエッジ受容部22に回路基板18のカードエッジ部分20を受容したときに、カードエッジ部分20の表面に形成された接点(図示せず)に接触する。このとき、コンタクト86のばね腕部104が弾性的に撓むことにより、その弾性復元力により、カードエッジ部分20の接点とコンタクト86の接点106とが、所望の接触圧力の下で導通した状態に維持される。
【0047】
カードエッジコネクタ80は、互いに同一の形状及び寸法を有する複数のコンタクト86を備えている。それらコンタクト86は、実装面14に平行でかつ第1方向(つまりコンタクト86の延長方向)に交差する第2方向(図では直交3軸座標系におけるY方向)へ一列に整列して、互いに平行に配置されている(図14)。図示構成では、複数のコンタクト86は、予め所定形状に成形された固定本体82及び可動本体84に対し、圧入工程により組み付けられる。したがって、固定本体82及び可動本体84の各々の主部分88、92に、個々のコンタクト86の固定側取付部96及び可動側取付部98を個別に圧入する複数の孔108、110が形成されている。なお、コンタクト86の本数、列数、配置、固定本体82及び可動本体84への組付方法等は、特に限定されない。
【0048】
コンタクト86は、電気量導性の板金材料から、プレス機械により全体の輪郭形状を打ち抜くことにより、追加の曲げ工程を行うことなく作製される。その結果、接点106の表面106aを含むコンタクト86の図で上下方向(Z方向)の端面は、プレス成形時の板金材料の破断面によって形成されている。したがって、コンタクト86の接点106が回路基板18のカードエッジ部分20の接点(図示せず)に導通接触するときに、ばね腕部104は、プレス成形時の板金材料の破断面に直交する方向へ撓んで接触圧力を生ずるようになっている。
【0049】
このような構成によれば、コンタクト86の特に接触圧力に影響するばね腕部104の高さ方向(Z方向)寸法を、自由に選択することが可能になる。例えば、ばね腕部104の高さ方向(Z方向)寸法を一様に大きくして接触圧力を増加させたり、その逆にしたりすることができる。或いは、ばね腕部104の高さ方向(Z方向)寸法を、接点106に隣接する末端から可動側取付部98に隣接する基端に向かって徐々に増加させることで、ばね腕部104と可動側取付部98との境界領域への応力集中を軽減することができる。その結果、回路基板18の接続及び離脱の繰り返しによるコンタクト86の破損を、未然に防止することができる。
【0050】
コンタクト86はさらに、可動側取付部98からばね腕部104に対向する方向へ延長される押え腕部112を有する。押え腕部112は、ばね腕部104よりも短い長さを有してばね腕部104に略平行に配置され、ばね腕部104と押え腕部112との間に、回路基板18のカードエッジ部分20を受容できるようになっている。複数のコンタクト86を固定本体82及び可動本体84に適正に取り付けた状態で、個々のコンタクト86の押え腕部112は、カードエッジ部分20を実装面14に平行する適正な接続姿勢に保持する前述した保持構造60の一構成要素として作用する。その目的で、固定本体82及び可動本体84に取り付けた各コンタクト86の押え腕部112の下端面112aは、可動本体84の副部分94に設けた第2爪66の下端面(支持台62に対向する側の端面)と共に、固定本体82の実装面14に平行する共通の仮想平面上に配置される。また、カードエッジコネクタ10の保持構造60が有する第1爪64及び第3爪68は、カードエッジコネクタ80では省略され、その代わりに、可動本体84の副部分94に、複数のコンタクト86の押え腕部112を覆う張出壁114が形成されている。なお、保持機構60の支持台62及び第2爪66の構成は、カードエッジコネクタ10のものと同様であるから、説明を省略する。
【0051】
コンタクト86の押え腕部112は、コンタクト86の接点106からカードエッジ部分20の接点(図示せず)に加わる接触圧力に抗して、カードエッジ受容部22におけるカードエッジ部分20の浮き上がりを防止し、コンタクト86の接点106とカードエッジ部分20の接点との接触圧力を適正な大きさに安定して維持するように作用する。このような構成によれば、例えば樹脂材料から形成されるカードエッジコネクタ10の第1爪64及び第3爪68に比べて、コンタクト86の押え腕部112の剛性(特に高温環境での形状維持特性)が一般に優れているので、保持機構60の信頼性を向上させることができる。なお、コンタクト86を、板金材料からプレス機械により全体の輪郭形状を打ち抜くことにより作製する前述の構成を採用することで、所望形状の押え腕部112を容易に形成することができる。
【0052】
カードエッジコネクタ80が有するフローティング機能は、カードエッジコネクタ10と同様である。要約すると、可動本体84は、固定本体82に対し、実装面14に平行でかつ第1方向(X方向)に交差する第2方向(Y方向)へ、移動規制構造52によって規定される所定範囲(±Fy)に渡って移動できる(図14)。また、可動本体84は、固定本体82に対し、実装面14に交差する第3方向(Z方向)へ、移動規制構造54によって規定される所定範囲(Fz)に渡って移動できる(図15)。また、保持構造60によって可動本体84上で適正な接続姿勢に保持されたカードエッジ部分20は、その接続姿勢を維持しつつ第1方向(X方向)へ、移動規制構造70によって規定される所定範囲に渡って移動できる。なお、移動規制構造52、54、70の構成は、カードエッジコネクタ10のものと同様であるから、説明を省略する。
【0053】
カードエッジコネクタ80においては、保持構造60の第2爪66と個々のコンタクト86の押え腕部112とが、カードエッジコネクタ10における保持構造60の第1爪64及び第2爪66と同様に作用して、回路基板12の表面12aに実装された状態での、回路基板18の接続作業を容易にする。要約すると、保持構造60の第2爪66は、回路基板18のカードエッジ部分20を固定本体82の実装面14(或いはXY平面)に斜交する初期姿勢(図19(a))に支持できる一方、初期姿勢から接続姿勢(図19(b))へのカードエッジ部分20の移行を許容する。そして、カードエッジ部分20の姿勢移行の間、個々のコンタクト86の押え腕部112が、梃子の支点として作用する。
【0054】
図20〜図22は、本発明に係る電子部品の一実施形態として、カードエッジコネクタ10と、カードエッジコネクタ10に接続されるカードエッジ部分20を有する回路基板18とを備えたキーボード120の構成を、概略で示す。キーボード120は、複数のキースイッチ122と、それらキースイッチ122の接点構造(図示せず)を担持する共通の回路基板18と、回路基板18及びキースイッチ122の他の構成要素を支持する支持板124と、回路基板18を被覆するカバー板126と、カードエッジコネクタ10を介して個々のキースイッチ122の接点構造に電気的に接続される回路基板12とを備えている。
【0055】
支持板124は、例えば板金材料から形成される剛性の板状部材である。支持板124は、全てのキースイッチ122の接点構造を担持する主部124aと、主部124aの外周縁の一部分から外方へ突出して配置される延長部124bと、主部124aと延長部124bとを連結する連結部124cとを備える。連結部124cは、カバー板126から離れる方向であって、主部124a及び延長部124bの双方に斜交する方向へ延びる。それにより延長部124bは、主部124aに対して、カバー板126から離れる方向へ略平行にずれて配置される。主部124aと延長部124bと連結部124cとの間には、回路基板18のカードエッジ部分20を挿通可能な開口128が形成される。
【0056】
回路基板18は、可撓性を有するフィルム状の回路基板構造を有するいわゆるフレキシブルプリント基板から構成される。回路基板18のカードエッジ部分20は、支持板124の開口128を通って延長部124bの裏面側(カバー板126とは反対側)に配置され、接着剤等の固定手段により延長部124bの裏面に固定される。これにより、カードエッジ部分20は、接点(図示せず)を支持板124の外部に露出させた状態で、支持板124の延長部124b(すなわち剛性の板)によって背面支持される。
【0057】
回路基板18のカードエッジ部分20をカードエッジコネクタ10に接続する際には、前述した保持構造60の第1爪64及び第2爪66の作用を利用して、まず、回路基板18のカードエッジ部分20を、回路基板12の表面12aに斜交する初期姿勢(図22(a)、(b))で、カードエッジコネクタ10のカードエッジ受容部22に挿入する。この初期姿勢から、カードエッジ部分20を適正な接続姿勢(図22(c)、(d))に移行させて、カードエッジ受容部22にスナップ式に保持する。
【0058】
上記構成を有するキーボード120では、両回路基板12、18の間に、予め定めた相対位置関係(例えば両回路基板12、18同士を固定する位置関係)からの位置ずれ(すなわち相対位置誤差)が生じていたとしても、そのような相対位置誤差を、カードエッジコネクタ10が有する前述したフローティング機能によって許容することができる。回路基板18のカードエッジ部分20は、剛性の板によって背面支持されているから、カードエッジコネクタ10のフローティング機能を安定して発揮させることができる。特にキーボード120は、低背化が容易なカードエッジコネクタ10によって回路基板12、18同士を電気的に接続しているから、それら回路基板12、18の間隔を縮小でき、以ってキーボード120の全体寸法を効果的に削減できる。このようなキーボード120は、例えば携帯型情報機器のキーボードに好適に採用できる。
【符号の説明】
【0059】
10、80 カードエッジコネクタ
12、18 回路基板
14 実装面
16、82 固定本体
20 カードエッジ部分
22 カードエッジ受容部
24、84 可動本体
26、86 コンタクト
40、96 固定側取付部
42、98 可動側取付部
44、100 中間部
46、102 端末部
48、104 ばね腕部
50、106 接点
52 移動規制構造(Y方向)
54 移動規制構造(Z方向)
60 保持構造
62 支持台
64 第1爪
66 第2爪
68 第3爪
70 移動規制構造(X方向)
120 キーボード
124 支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面を有する固定本体と、該固定本体に対し移動可能な可動本体と、該固定本体と該可動本体との双方に取り付けられるコンタクトとを具備するカードエッジコネクタにおいて、
前記固定本体と前記可動本体とは、前記実装面に平行な仮想平面に沿って並ぶように配置され、
前記コンタクトは、前記固定本体に取り付けられる固定側取付部と、前記可動本体に取り付けられる可動側取付部と、該固定側取付部と該可動側取付部との間に延び、前記固定本体に対する前記可動本体の移動に伴って変形する中間部とを有し、該固定側取付部と該中間部とが前記実装面に平行な第1方向へ隣接して配置されるとともに、該中間部と該可動側取付部とが該第1方向へ隣接して配置されること、
を特徴とするカードエッジコネクタ。
【請求項2】
前記可動本体は、前記固定本体に対し、前記実装面に平行でかつ前記第1方向に交差する第2方向へ移動できる、請求項1に記載のカードエッジコネクタ。
【請求項3】
前記固定本体に対する前記可動本体の前記第2方向への移動を所定範囲に制限する移動規制構造を有する、請求項2に記載のカードエッジコネクタ。
【請求項4】
前記可動本体は、前記固定本体に対し、前記実装面に交差する第3方向へ移動できる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のカードエッジコネクタ。
【請求項5】
前記固定本体に対する前記可動本体の前記第3方向への移動を所定範囲に制限する移動規制構造を有する、請求項4に記載のカードエッジコネクタ。
【請求項6】
前記可動本体は、接続相手の回路基板のカードエッジ部分を受容するカードエッジ受容部を備え、該カードエッジ受容部は、該カードエッジ部分を前記実装面に平行する接続姿勢に保持する保持構造を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のカードエッジコネクタ。
【請求項7】
前記保持構造は、前記カードエッジ部分を前記実装面に斜交する初期姿勢に支持できるとともに該初期姿勢から前記接続姿勢への前記カードエッジ部分の移行を許容する爪を有する、請求項6に記載のカードエッジコネクタ。
【請求項8】
前記可動本体に対する前記カードエッジ部分の前記接続姿勢での前記第1方向への移動を所定範囲で許容する移動規制構造を有する、請求項6又は7に記載のカードエッジコネクタ。
【請求項9】
前記コンタクトは、前記可動側取付部から前記中間部とは反対側へ延長されるばね腕部と、該ばね腕部の自由端に形成される接点とを有し、該接点の表面が、プレス成形時の板金材料の破断面を含み、接続相手の回路基板のカードエッジ部分に該接点が導通接触するときに、該ばね腕部が、プレス成形時の板金材料の破断面に直交する方向へ撓んで接触圧力を生ずる、請求項1〜8のいずれか1項に記載のカードエッジコネクタ。
【請求項10】
前記コンタクトは、前記ばね腕部に対向する方向へ延長される押え腕部を有し、前記ばね腕部と該押え腕部との間に、前記カードエッジ部分を受容できる、請求項9に記載のカードエッジコネクタ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のカードエッジコネクタと、該カードエッジコネクタに接続されるカードエッジ部分を有する回路基板とを具備する電子部品。
【請求項12】
前記回路基板は、可撓性を有するフィルム状の回路基板構造を有し、前記カードエッジ部分は、剛性の板によって背面支持される、請求項11に記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−212613(P2012−212613A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78388(P2011−78388)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】