説明

ブタ肝臓エステラーゼのイソ型

本発明は、γPLEの新規突然変異体、これを含むビヒクルならびにエナンチオマー的に富化されたアルコール、カルボン酸およびエステルの産生におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブタ肝臓エステラーゼのイソ型(γPLE)、これを含むビヒクルならびにエナンチオマー的に富化されたアルコールおよびエステルの生産におけるその使用に関する。
【0002】
リパーゼおよびエステラーゼは、多数の光学活性化合物を製造するために有効な生体触媒として使用できる。しかし、相当数のリパーゼ、特に微生物起源のものが市販されているが、ラセミ化合物の分割に使用するために工業規模の量で入手可能なエステラーゼはごくわずかである[Bornscheuer,U.T.and Kazlauskas R.J.,Hydrolases in Organic Synthesis(2005),2nd ed,Wiley−VCH,Weinheim]。
【0003】
ブタ肝臓エステラーゼは、有機合成におけるその興味深い触媒特性のために、本明細書において特に興味深い[Faber,K.,Biotransformations in Organic Chemistry(2004),5th ed.Springer,Berlin;Jones,J.B.Pure Appl.Chem,(1990),62,1445−1448,Jones et.al.Can.J.Chem.(1985),63,452−456;Lam,L.K.P.et.al.,J.Org.Chem.(1986),51,2047−2050)。
【0004】
ブタ肝臓組織からのエステラーゼ抽出物は良好な立体選択性で基質を部分的に変換できることが証明されてきたが、このような抽出物の使用には多くの欠点がある。立体選択性に関する具体的な問題は、様々なバッチ間でのエステラーゼの割合のばらつきに加えて、さらに別のヒドロラーゼの存在であると考えられる(Seebach,D.et.al,25 Chimia(1986),40,315−318)。従来の抽出物は多数のイソ酵素(Farb,D.,et.al,Arch.Biochem.Biophys.(1980)203,214−226)からなるというさらなる問題もあり、このイソ酵素の基質特異性は場合によってかなり異なる。Heymann,E.およびJunge,W.(Eur.J.Biochem.(1979),95,509−518;Eur.J.Biochem.(1979),95,519−525)は複雑な電気泳動的分離を実施し、これにより好ましくはブチリルコリン、プロリン−β−ナフチルアミドおよびメチルブチレートを切断するフラクションを単離した。対照的に、他の研究(例えば、Lam,L.K.P.,et.al,J.Am.Chem.Soc.(1988)110,4409−4411)は異なる活性を有するが、異なる特異性を有さない個々のフラクションを示すだけである。
【0005】
推定ブタ肝臓エステラーゼ−遺伝子のクローニングはかなり前から知られ(Takahashi,T,et.al.,J.Biol.Chem.(1989),264,11565−11571;FEBS Lett.(1991),280,297−300;FEBS Lett.(1991),293,37−41;David,L.et.al,Eur,J.Biochem.(1998)257,142−148)、活性ブタ肝臓エステラーゼの機能的組換え発現は、Pichia pastoris(Lange,S.et al.,ChemBioChem(2001),2,576−582)およびE.coli(独国特許第10061864号)においてのみ、すでに記載されている。
【0006】
文献は同様にE.coliにおける発現中の培地への添加を記載している。エタノールを最高3%(v/v)まで培地に添加することにより、フォールディングプロセスを助け、通常は正しいフォールディングを支援する酵素である、内因性E.coliシャペロンの形成が誘発される(Thomas,JG,Protein Expression and Purif(1997),11,289−296)。3%(v/v)エタノールを培地に添加して、ブタ肝臓エステラーゼをE.coli Origamiにおいて発現させると、E.coliにおいて検出可能な活性エステラーゼ発現は得られず、封入体のみが得られた。
【0007】
独国特許第10061864号は特定のシャペロンおよびγPLEの同時発現を提案している。このようにしてE.coliから活性γPLEを最初に生成させることができた。
【0008】
まとめると、E.coliからの天然のブタ肝臓エステラーゼの発現は可能であるが、まだ工業規模で確立されていないと言える。化学中間体の生合成による製造のフレームワーク内で、好ましくは工業的規模で使用できる改善されたシステムをさらに得るために、ブタ肝臓エステラーゼの(基質)活性を改善することはさらに有用であり、必要である。
【0009】
したがって、従来技術よりも改善された新規エステラーゼを特定することが本発明の1つの目的であった。改善された活性および/または選択性および/または安定性を有する新規エステラーゼを提供することを目的とした。これらのエステラーゼは従来技術のものよりも、特に空時収量および変換中のエナンチオ選択性および変更または拡張された基質特異性に関して優れている。
【0010】
この目的を請求の範囲にしたがって達成する。
【0011】
以下のもの:
【表1】

【0012】
からなる群から選択される少なくとも1つの突然変異を有する配列番号2のエステラーゼを提供することにより、意外にも前述の目的を実現する種が得られる。さらに詳細には、これらの部位での突然変異により、γPLEの基質特異性、エナンチオ選択性および/または天然活性を修飾し、改善することができる。ここでの位置はもちろん配列番号2の第1アミノ酸をさす。
【0013】
配列番号4、6、8および10のエステラーゼが好ましい。これらは天然のγPLEよりも優れた活性および/または選択性および/または安定性を有する。本発明のエステラーゼは特に活性、エナンチオ選択性および他の基質特異性に関して区別される。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、本発明のエステラーゼをコードする単離された核酸に関する。好適な核酸配列は、配列番号3、5、7および9のもの、またはその相補性形態である。
【0015】
さらに別の展開で、本発明は、1以上の本発明の核酸を有する遺伝子、組換え発現系(例えば、微生物)または組換えプラスミド/ベクターに関する。
発現系とは、本発明の核酸の組換え発現系、ひいては本発明のポリペプチドの組換え産生系を意味する。前記産生は、好ましくは対応する核酸配列またはベクター(下記参照)を用いて形質転換または形質移入された(「形質転換」および「形質移入」という用語を本発明では同義的に用いる)微生物または他の宿主においておこなうことができる。形質転換および形質移入は公知の方法、例えばリン酸カルシウム共沈、リポフェクション、エレクトロポレーション、PEG/DMSO法、粒子衝撃またはウイルス/バクテリオファージ感染に従っておこなうことができる。本発明の細胞は、組換え核酸を染色体外または染色体に組み込まれた形態で含み得る。言い換えると、形質移入/形質転換は安定であるか、または一時的であり得る。形質移入および形質転換プロトコルは当業者に公知である(Chan and Cohen.1979.High Frequency Transformation of Bacillus subtilis Protoplasts by Plasmid DNA.Mol Gen Genet.168(1):111−5;Kieser et al.2000.Practical Streptomyces Genetics.The John Innes Foundation Norwich;Sambrook et al.1989.Molecular Cloning.A Laboratory Manual.In:second ed.Cold Spring Harbor Laboratory Press.Cold Spring Harbor.NY.;Irani and Rowe.1997.Enhancement of transformation in Pseudomonas aeruginosa PAO1 by Mg2+ and heat.Biotechniques 22:54−56;Balbas,P.and Bolivar,F.(1990),Design and construction of expression plasmid vectors in E.coli,Methods Enzymol.185,14−37;Rodriguez,R.L. and Denhardt,D.T(eds)(1988),Vectors:a survey of molecular cloning vectors and their uses,205−225,Butterworth,Stoneham)。一般的な手順(PCR、クローニング、発現等)に関しては、以下の文献およびその中で言及されている引例も参照する:Universal GenomeWalker(商標)Kit User Manual,Clontech,3/2000;Triglia T.;Peterson,M.G.and Kemp,D.J.(1988),A procedure for in vitro amplification of DNA segments that lie outside the boundaries of known sequences,Nucleic Acids Res.16,8186。
【0016】
宿主は好ましくは原核生物起源の組換え微生物である。好適な宿主細胞は、単細胞微生物の細胞、例えば細菌細胞を包含する。この点に関して言及される微生物は原核生物、例えば大腸菌(E.coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)である。本発明の核酸配列の発現に用いることができる他の細菌は、ラクトバチルス(Lactobacillus)、バシラス(Bacillus)、ロドコッカス(Rhodococus)、カンピロバクター(Campylobacter)、カウロバクター(Caulobacter)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、ストレプトミセス(Streptomyces)、ナイセリア(Neisseria)、ラルストニア(Ralstonia)、シュードモナス(Pseudomonas)、およびアグロバクテリウム(Agrobacterium)属/種のものである。この目的のためにE.coli株を用いるのが好適である。E.coli XL1 Blue、NM 522、JM101、JM109、JM105、RR1、DH5α、TOP 10−、HB101、BL21 codon plus、BL21(DE3)codon plus、BL21、Rosetta、Rosetta−gami、MM294、W3110、DSM14459(欧州特許第1444367号)、Origamiが特に好適である。対応する株は従来技術において入手可能であり、国際寄託機関、例えばATCCまたはDMSZ経由で少なくとも一部入手することができる。
真核生物、例えば哺乳動物細胞、昆虫細胞もしくは植物細胞または生命体、例えばハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ピチア種(Pichia sp.)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の酵母、あるいは真菌、例えばアスペルギルス種(Aspergillus sp.)等をポリペプチドの組み換え産生に用いることが同様に可能である。好適な真核細胞としては、CHO細胞、HeLa細胞等が挙げられる。これらの細胞の多くはATCCまたはDMSZ等の寄託機関経由で入手できる。
【0017】
本発明のポリペプチドを非ヒト宿主において組み換え的に製造することもできる。非ヒト宿主は単細胞または複数細胞ないし多細胞生物であってもよい。好適な多細胞生命体としては、分子生物学でよく知られているモデル系、例えばキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、ゼブラフィッシュまたはシー・エレガンス(C.elegans)が挙げられる。トランスジェニック非ヒト動物を従来技術で公知の方法により産生することができる。本発明のトランスジェニック非ヒト動物は好ましくは異なる遺伝子構成を有し得る。これは(i)本発明の核酸配列の遺伝子を構造的または誘導的に過剰発現するか、(ii)本発明の核酸配列の内在性遺伝子の不活性形態を含むか、(iii)本発明の核酸配列の突然変異遺伝子を含むか(この遺伝子は本発明の核酸配列内在性遺伝子を完全に、または部分的に置換する)、(iv)本発明の核酸配列の遺伝子の条件付および組織特異的過剰発現または過小発現を有するか、または(v)本発明の核酸配列の遺伝子の条件付および組織特異的ノックアウトを有し得る。
【0018】
トランスジェニック動物は、好ましくはさらに、過剰発現を可能にするプロモータの制御下にある本発明の核酸配列の外来遺伝子を含む。あるいは、本発明の核酸配列の内在性遺伝子を、内因性プロモータの活性化および/または置換により過剰発現させることができる。好ましくは、本発明の核酸配列の遺伝子の内因性プロモータは遺伝子改変を含み、その結果、前記遺伝子の発現が増大する。内因性プロモータの遺伝子改変は、個々の塩基の突然変異ならびに欠失変異および挿入変異の両方を含む。本発明の宿主の特に好適な実施形態において、前記宿主は、トランスジェニック齧歯動物、好ましくはトランスジェニックマウス、トランスジェニックウサギ、トランスジェニックラット、またはトランスジェニックヒツジ、トランスジェニックウシ、トランスジェニックヤギまたはトランスジェニックブタである。マウスは他の動物よりも優れた多くの利点を有する。マウスは飼いやすく、その生理機能はヒトの生理機能のモデル系と見なされる。このような遺伝子操作された動物の産生は当業者に周知であり、通常の方法により実施される(例えば、Hogan,B.,Beddington,R.,Costantini,F.and Lacy,E.(1994),Manipulating the Mouse−Embryo;A Laboratory Manual,2nd edition.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY;国際特許公開第91/08216号を参照)。あるいは、またはそれに加えて、細胞培養系、特にヒト細胞培養系を、本発明の非ヒトトランスジェニック動物について記載した用途に用いることも可能である。
【0019】
本発明の別の展開は、本発明の核酸を有する完全遺伝子に関する。遺伝子とは、本出願によると、原則として次の2つの異なる領域:
・DNA切片(これから一本鎖RNAコピーを転写により作製する)
・このコピープロセスの調節に関与するすべての追加のDNA切片
からなる分子レベルでの部分を意味する。
【0020】
さらに詳細な定義は:http://de.wikipedia.org/wiki/Genで見いだすことができる。
【0021】
コード核酸配列を通常のプラスミド/ベクター中にクローニングし、かかるベクターを用いて微生物または他の宿主細胞を形質移入した後に、細胞培養において発現することができる。好適なプラスミドまたはベクターは原則として、このために当業者が入手可能な任意の実施形態である。このようなプラスミドおよびベクターは、例えばStudierおよび共同研究者(Studier,W.F.;Rosenberg A.H.;Dunn J.J.;Dubendroff J.W.;Use of the T7 RNA polymerase to direct expression of cloned genes,Methods Enzymol.1990,185,61−89)またはNovagen、Promega、New England Biolabs、ClontechもしくはGibco BRL社のカタログで見いだすことができる。他の好適なプラスミドおよびベクターは:Glover,D.M.(1985),DNA cloning:a practical approach,Vol.I−Ill、IRL Press Ltd.,Oxford;Rodriguez,R.L.and Denhardt,D.T(eds)(1988),Vectors:a survey of molecular cloning vectors and their uses,179−204,Butterworth,Stoneham;Goeddel,D.V.,Systems for heterologous gene expression,Methods Enzymol.1990,185,3−7;Sambrook,J.;Fritsch,E.F.and Maniatis,T.(1989),Molecular cloning:a laboratory manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkにおいて見いだすことができる。
本発明の核酸配列またはこれらを含む遺伝子構築物を非常に好適な方法で宿主生物中にクローニングするために用いることができるプラスミドは次のものである:pUC18(Roche Biochemicals)、pKK−177−3H(Roche Biochemicals)、pBTac2(Roche Biochemicals)、pKK223−3(Amersham Pharmacia Biotech)、pKK−233−3(Stratagene)またはpET(Novagen)。好適なベクターはまた、例えばE.coliについてはpET−21a(+)であるが、原核単細胞生物の他の発現ベクターおよび真核生物のベクターも使用できる。酵母に好適であることがわかっている好適なベクターの例は、pREPベクターおよびplNTベクターである。バクロウイルスベクター、例えば欧州特許第127839号または同第549721号のバクロウイルスベクターが昆虫細胞における発現について開示されており、SV40ベクターは、例えば哺乳動物細胞における発現に好適であり、一般に入手可能である。E.coli細胞、特にE.coli Origamiの形質転換に関して、単細胞真核生物のベクター、特にpETベクター群からのもの特に好適である。
【0022】
特に好適な実施形態において、ベクター中に導入された本発明の核酸配列をさらに前記ベクターにより提供されるヒスチジンタグと融合させる。ベクター中に存在するIPTG調節可能なプロモータの制御下に転写があるような方法で、導入された核酸配列を好適なpETベクター中にクローニングすることが好ましい。あるいは、ラムノース調節可能なプロモータを用いることも好ましい。
【0023】
抗生物質耐性遺伝子等の通常のマーカーのほかに、ベクターはADH遺伝子および/またはレポーター遺伝子の発現を調節、特に抑制または誘発するためのさらに別の機能性ヌクレオチド配列を含むことができる。調節可能な弱いプロモータ、例えばrhaプロモータまたはnmt1プロモータ、または調節可能な強いプロモータ、例えば、lac、ara、ラムダ、pL、T7またはT3プロモータであるプロモータを用いることが好ましい。コードDNAフラグメントはベクター中のプロモータから転写可能でなければならない。確立されたプロモータの他の例は、昆虫細胞における発現に関してはバクロウイルスポリヘドリンプロモータ(例えば、欧州特許第127839号参照)および早期SV40プロモータ、および例えばMMTV(マウス乳癌ウイルス;Lee et al.(1981)Nature,294(5838),228−232)のLTRプロモータである。
【0024】
したがって、本発明の遺伝子、ベクター/プラスミドはさらに別の機能的配列領域、例えば、複製起点、オペレータ、または終結シグナルを含んでもよい。
【0025】
特に有利な実施形態において、本発明は、本発明の核酸配列に加えて、1以上のクローニングされたシャペロン遺伝子も含む組み換え型微生物に関する。好ましい適当なシャペロンは、GroELおよびGroES、好ましくはE.coli Origami株におけるものである。意外にも、活性酵素の発現は、これらの2つのフォールディングヘルパータンパク質の存在下で達成されたが、別のシャペロン系、例えば、エタノールの添加により誘発された内在性E.coliシャペロンまたは他の同時発現されたシャペロン、例えばDnaK、DnaJおよびGrpEは成功しなかった(独国特許第10061864号)。
【0026】
当業者には、シャペロン系Dnak、DnaJ、GrpEおよびGroEL、GroESの等価な同時発現、またはGroELもしくはGroES単独をE.coli Origamiにおいてブタ肝臓エステラーゼと一緒に同時発現すると、結果として封入体の形態で発現が得られるだけで、E.coli粗細胞抽出物において検出可能な活性が得られないことは意外である。したがってどんな場合でも、他のシャペロン系が同時に宿主生物中に存在していても、シャペロン系GroEL/GroESが好適な誘発/発現系であることが好ましい。
【0027】
E.coli株における真核生物のタンパク質の機能的発現は、特に前記タンパク質が翻訳後にグリコシル化されたタンパク質である場合に、厄介な問題である。E.coliにおけるブタ肝臓エステラーゼの組換え発現の場合、特別なシャペロン系GroEL、GroESを利用すると、明らかに翻訳後グリコシル化がないことが無効にされる。この発展およびその実施形態に関しては、独国特許第102006031600号が参照される。
【0028】
さらに別の発展において、本発明は、エナンチオマー的に富化されたアルコール、カルボン酸およびエステルを、特に前記化合物のメソ型、例えばマロン酸ジエステル等の場合により置換されたジカルボン酸エステルから製造するために、本発明の(組み換え型)ポリペプチドを使用することに関する。
【0029】
固定化形態の酵素を使用することが可能である(Sharma B.P.;Bailey L.F.and Messing R.A.(1982),Immobilisierte Biomaterialien−Techniken und Anwendungen[Immobilized biomaterials−Techniques and applications],Angew.Chem.94、836−852)。固定化は凍結乾燥により有利に行うことができる(Paradkar,V.M.;Dordick,J.S.(1994),Aqueous−Like Activity of α−Chymotrypsin Dissolved in Nearly Anhydrous Organic Solvents,J.Am.Chem.Soc.116,5009−5010;Mori,T.;Okahata,Y.(1997),A variety of lipi−coated glycoside hydrolases as effective glycosyl transfer catalysts in homogeneous organic solvents,Tetrahedron Lett.38,1971−1974;Otamiri,M.;Adlercreutz,P.;Matthiasson,B.(1992),Complex formation between chymotrypsin and ethyl cellulose as a means to solubilize the enzyme in active form in toluene,Biocatalysis 6,291−305)。例えばAerosol OTまたはポリビニルピロリドンまたはポリエチレングリコール(PEG)またはBrij52(ジエチレングリコールモノセチルエーテル)等の界面活性剤の存在下での凍結乾燥が非常に好ましい(Kamiya,N.;Okazaki,S.−Y.;Goto,M.(1997),Surfactant−horseradish peroxidase complex catalytically active in anhydrous benzene,Biotechnol.Tech.11,375−378)。
【0030】
Eupergit(登録商標)、特にEupergit C(登録商標)およびEupergit250L(登録商標)(Roehm)に対する固定化が最も好ましい(総説については:E.Katchalski−Katzir,D.M.Kraemer,J.Mol.Catal.B:Enzym.2000,10,157参照)。Hisタグ(ヘキサヒスチジン)を結合させることにより修飾されたポリペプチドと組み合わせてNi−NTAへ固定化することが同様に好ましい(Petty,K.J.(1996),Metal−chelate affinity chromatography In:Ausubel,F.M.et al.eds.Current Protocols in Molecular Biology,Vol.2,New York:John Wiley and Sons)。
【0031】
CLECとしての使用も想定できる(St.Clair,N.;Wang,Y.−F.;Margolin,A.L.(2000),Cofactor−bound cross−linked enzyme crystals(CLEC)of alcohol dehydrogenase,Angew.Chem.Int.Ed.39.380−383)。
【0032】
これらの方法により、水性および有機溶媒の混合物において、または完全に有機物中で機能し得る有機溶媒ポリペプチドにより不安定にされる(組み換え型)ポリペプチドから作製できる可能性がある。
【0033】
本発明のポリペプチドを用いてエステルまたはカルボン酸およびアルコールを好ましくは以下のように変換する。ポリペプチドを所望の形態(遊離、固定化、宿主生物中またはランダムに分裂された形態)で適切な培地、好ましくは水性溶液に添加する。最適温度範囲および最適pH範囲を維持しつつ、基質をこの混合物に添加する。変換の完了後、得られたアルコールまたはエステルを当業者に公知の方法(結晶化、抽出、クロマトグラフィー)により反応混合物から単離することができる。
【0034】
エステルまたはカルボン酸およびアルコールをエステラーゼによりエナンチオマー的に富化されたアルコール、カルボン酸およびエステルに酵素変換することは原則として当業者に公知である(はじめに記載した引例;図2参照)。これに関して特に興味深いのは、前記誘導体のメソ型の変換である。ここで、エナンチオマー的に富化された生成物を100%の収率で得ることができ、一方、ラセミ化合物の通常の分割により最高50%までの特定のエナンチオマーしか得られない点で、本発明の変換は有益である。したがって、例えば特定の置換マロン酸ジエステルを用いて、化学合成における有益な中間体であるエナンチオマー的に富化された生成物を作製することができる。このようにして、場合によりN保護されたアミノマロン酸ジエステルから、対応するエナンチオマー的に富化された不斉アミノカルボン酸モノエステルを有効かつ容易に作製することが可能である。下記図1に示す反応シーケンスも興味深い。
【0035】
図1:
【化1】

【0036】
この反応の好適なラジカルを以下のリストで見いだすことができる。
【0037】
アミド化およびC1分解の手段は当業者に周知である(Organikum,VEB Deutscher Verlag der Wissenschaften,Berlin 1986,pp.388ff,pp.571ff)。
【0038】
図2:
【化2】

【0039】
IまたはVIの対応するキラルエステルから製造できるか、またはエナンチオマー的に富化されたエステルを製造するために使用できるエナンチオマー的に富化されたアルコールの例も同様に当業者には公知である。これらを例えば次の一般式:
【化3】

【0040】
[式中、R、R’およびR"は互いに異なり、特に、H、(C1−C8)アルキル、(C1−C8)アルコキシ、HO−(C1−C8)アルキル、(C2−C8)アルコキシアルキル、(C6−C18)アリール、(C7−C19)アルアルキル、(C3−C18)ヘテロアリール、(C4−C19)ヘテロアルアルキル、(C1−C8)アルキル−(C6−C18)アリール、(C1−C8)アルキル−(C3−C18)ヘテロアリール、(C3−C8)シクロアルキル、(C1−C8)アルキル−(C3−C8)シクロアルキル、(C3−C8)シクロアルキル−(C1−C8)アルキルであるか、またはRおよびR’および/またはRおよびR"および/またはR’およびR"は(C3−C5)アルキレン架橋を形成する]により要約することができる。
【0041】
エナンチオマー的に富化されたエステルまたは酸の例は下記の一般式:
【化4】

【0042】
[式中、R、R’およびR"は同一または互いに異なり、特に、H、(C1−C8)アルキル、(C1−C8)アルコキシ、HO−(C1−C8)アルキル、(C2−C8)アルコキシアルキル、(C6−C18)アリール、(C7−C19)アルアルキル、(C3−C18)ヘテロアリール、(C4−C19)ヘテロアルアルキル、(C1−C8)アルキル−(C6−C18)アリール、(C1−C8)アルキル−(C3−C18)ヘテロアリール、(C3−C8)シクロアルキル、(C1−C8)アルキル−(C3−C8)シクロアルキル、(C3−C8)シクロアルキル−(C1−C8)アルキルであるか、またはRおよびR’もしくはRおよびR"もしくはR’およびR"は(C3−C5)アルキレン架橋を形成し、
1、R2およびR3は同一または互いに異なり、特に、H、(C1−C8)アルキル、(C1−C8)アルコキシ、HO−(C1−C8)アルキル、(C2−C8)アルコキシアルキル、シクロペンタジエニル、(C6−C18)アリール、(C7−C19)アルアルキル、(C3−C18)ヘテロアリール、(C4−C19)ヘテロアルアルキル、(C1−C8)アルキル−(C6−C18)アリール、(C1−C8)アルキル−(C3−C18)ヘテロアリール、(C3−C8)シクロアルキル、(C1−C8)アルキル−(C3−C8)シクロアルキル、(C3−C8)シクロアルキル−(C1−C8)アルキルであるか、またはR1およびR2および/またはR1およびR3および/またはR2およびR3は(C3−C5)アルキレン架橋を形成する]により指定できる。
【0043】
本発明の使用に適しているのは、好適に緩衝された水性溶媒である。しかし、pHスタット装置(Schott AG(ドイツ国マインツ)、商標TitroLine alpha)を用いて反応を実施することも可能である。
【0044】
0℃〜85℃、特に好ましくは30〜80℃、非常に好ましくは50℃付近の温度で変換をおこなうことが好ましい。当業者は、反応のpHを自由に選択することもでき、固定されたpHで、またpHをあるpH範囲内で変えて反応をおこなうこともできる。特に本発明の最適の反応結果に関してpHを選択する。pH5〜9、好ましくはpH6〜8、特に好ましくはpH6.5〜7.5で反応をおこなうことが好ましい。
【0045】
前述のように、関連するポリペプチドを均質に精製された化合物により、または組換え産生された酵素として天然形で適用することができる。さらに、(組み換え型)ポリペプチドを、無傷寄生生物の成分として、または宿主生物の破壊細胞塊に関連して用いることもでき、どの程度の純度であってもよい。
【0046】
使用される基質が細胞培養において,例えば好適な宿主を用いることにより所望の生成物に変換されるならば、使用される宿主生物または使用される細胞培養物に応じて好適な栄養培地を用いる。宿主細胞に適した培地は、一般に公知であり、市販されている。さらに、細胞培養物に通常の添加剤、例えば、抗生物質、成長促進剤、例えば、血清(ウシ胎仔血清等)および類似の公知の補給剤を添加することができる。
【0047】
さらなる最適な反応条件は、独国特許第102006031600号で見いだすことができる。
【0048】
別の出願は、
(i)本発明の核酸、好ましくは配列番号3、5、7、9の突然変異誘発、
(ii)(i)から得ることができる核酸配列の好適なベクター中へのクローニングと、それに続く好適な発現系中への形質転換、ならびに
(iii)改善された活性および/または選択性および/または安定性を有する前記ポリペプチドの検出および単離
による、配列番号2のポリペプチドよりも改善された活性および/または選択性および/または安定性を有するポリペプチドの製造に関する。
【0049】
本発明の核酸配列またはこれらによりコード化されるポリペプチドを突然変異誘発法によって改善する手順は当業者に周知である。好適な突然変異誘発法は、この目的のために当業者が利用可能な任意の方法である。これらは特に、飽和突然変異誘発、ランダム変異導入法、in vitro組み換え法、および部位特異的突然変異誘発法である(Eigen,M.and Gardiner,W.,Evolutionary molecular engineering based on RNA replication,Pure Appl.Chem.1984,56,967−978;Chen,K. and Arnold,F.,Enzyme engineering for nonaqueous solvents:random mutagenesis to enhance activity of subtilisin E in polar organic media.Bio/Technology 1991,9.1073−1077;Horwitz,M.and Loeb,L.,Promoters Selected From Random DNA−Sequences,Proc Natl Acad Sci USA 83,1986,7405−7409;Dube,D.and L.Loeb,Mutants Generated By The Insertion Of Random Oligonucleotides Into The Active−Site Of The Beta−Lactamase Gene,Biochemistry 1989.28,5703−5707;Stemmer,P.C.,Rapid evolution of a protein in vitro by DNA shuffling,Nature 1994,370,389−391およびStemmer、P.C.,DNA shuffling by random fragmentation and reassembly:In vitro recombination for molecular evolution.Proc Natl Acad Sci USA 91,1994,10747−10751)。
【0050】
得られた新規核酸配列を後述の方法(下記参照)により宿主生物中にクローニングし、このようにして発現されたポリペプチドを、好適なスクリーニング法を用いて検出し、続いて単離する。検出に好適なのは、原則としてこのポリペプチドにより産生される分子について可能な任意の検出反応である。これに関して特に好適なのは、産生・消費されたNADHの測光分析、この酵素により産生されたアルコールを検出するためのHPLCまたはGC法である。さらに、ゲル電気泳動または抗体を用いた検出法も、遺伝子操作法により修飾された新規ポリペプチドの検出に適している。
【0051】
光学的に富化された(エナンチオマー的に富化された、エナンチオマー富化された?)化合物とは、本発明において、1つの光学対掌体の他の対掌体との混合物中の存在が>50モル%であることを意味する。
【0052】
核酸配列という用語は、あらゆる種類の一本鎖または二本鎖DNAならびにRNAまたはその混合物を意味する。したがって、本発明の核酸配列はDNA分子またはRNA分子であり得る。核酸分子がcDNA分子またはmRNA分子であるのが好ましい。本発明によると、DNA分子はゲノムDNA分子であってもよい。本発明は、DNA分子がPNA分子またはDNA分子のもう1つ別の誘導体である実施形態もさらに含む。
【0053】
「相補的な」という用語は、本発明によると、相補性が本発明の核酸分子の全領域にわたり、ギャップがないことを意味する。言い換えると、本発明では100%の相補性が本発明の配列の全領域にわたり、すなわち図示された5’末端から図示された3’末端までおよぶのが好ましい。
【0054】
活性および/または選択性および/または安定性の改善とは、本発明によると、ポリペプチドがより活性および/またはより選択的および/または使用される反応条件下でより安定であることを意味する。酵素の活性および安定性はもちろん工業用途に関してはできるだけ高くなければならないが、選択性に関する改善とは、基質の選択性が減少するが、酵素のエナンチオ選択性は増加する状態を意味する。同じことが、必要ならば変更を加えて、これに関連して用いられる実質的に減少しないという表現について当てはまる。
【0055】
特許請求の範囲のタンパク質配列および核酸配列のうち、本発明はこれらの配列のいずれかと97%以上、好ましくは97.5%以上、98%または98.5%以上、さらに好ましくは99%または99.5%以上の相同性(自然分解を除く)である配列も含む。ただし配列はその機能性または目的を保持するものとする。「相同性」(または同一性)という表現は、本明細書において用いられる場合、等式H(%)=[1−V/X]×100(式中、Hは相同性を意味し、Xは比較配列の核酸塩基/アミノ酸の合計数であり、Vは検討される配列の異なる核酸塩基/アミノ酸の数である(比較配列基準))により定義できる。どんな場合でも、ポリペプチドをコードする核酸配列という用語は、遺伝子コードの縮重にしたがって可能であると思われる任意の配列を包含する。
【0056】
「ストリンジェントな条件下」という表現は、本明細書においてはSambrook等(Sambrook,J.;Fritsch,E.F.and Maniatis,T.(1989),Molecular cloning:a laboratory manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York)に記載されているとおりであると理解される。好ましくは、本発明によると、1×SSC(150mMの塩化ナトリウム、15mMのクエン酸ナトリウム、pH7.0)および0.1%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を用いて、50℃、好ましくは55℃、さらに好ましくは62℃、最も好ましくは68℃で1時間、さらに好ましくは0.2×SSCおよび0.1%のSDSを用いて50℃、より好ましくは55℃、さらに好ましくは62℃、最も好ましくは68℃で1時間洗浄した後、プラスのハイブリダイゼーションシグナルが依然として観察されるならば、ハイブリダイゼーションはストリンジェントである。
【0057】
(C1−C8)アルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルまたはオクチル、およびこれらの結合異性体のいずれかと考えられる。
【0058】
(C1−C20)アルキル基は、本発明の定義の範囲内で、1から最高20個までの炭素原子を有する対応する基である。
【0059】
(C3−C20)アルキル基は、本発明の定義の範囲内で、3から最高20個までの炭素原子を有する対応する基である。
【0060】
基(C1−C8)アルコキシは、酸素原子を介して結合するという条件で基(C1−C8)アルキルに相当する。
【0061】
(C2−C8)アルコキシアルキルは、アルキル鎖に少なくとも1つの酸素官能基が割り込んでいる基を意味し、2個の酸素原子は互いに結合できない。炭素原子の数は、基中に含まれる炭素原子の合計数を示す。
【0062】
(C3−C5)アルキレン架橋は、3〜5個の炭素原子を有する炭素鎖であり、この鎖は2個の異なる炭素原子により、検討される分子に結合する。
【0063】
前述の基はハロゲンおよび/または(C1−C8)アルコキシカルボニルおよび/またはN、O、P、S、Si原子含有基で一置換または多置換されていてもよい。後者は特に前記種類のアルキル基であり、その鎖が1以上の前記ヘテロ原子を有するものであるか、またはこれらのヘテロ原子の1つを介して分子と結合するものである。
【0064】
(C3−C8)シクロアルキルとは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル基等を意味する。これらは1以上のハロゲンおよび/またはN、O、P、S、Si原子含有基で置換されていてもよい、および/または例えば、1−、2−、3−、4−ピペリジル、1−、2−、3−ピロリジニル、2−、3−テトラヒドロフリル、2−、3−、4−モルホリニル等の環中にN−、O−、P−、S−原子を有してもよい。
【0065】
(C3−C8)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル基は、前述のようにアルキル基を介して分子と結合する、前述のシクロアルキル基を意味する。
【0066】
(C1−C8)アルコキシカルボニルとは、本発明では、最高8個までの炭素原子を有する前記定義のアルキル基であって、O(C=O)官能基を介して結合するものを意味する。
【0067】
(C1−C8)アシルオキシとは、本発明では、最高8個までの炭素原子を有する前記定義のアルキル基であって、(C=O)O官能基を介して結合するものを意味する。
【0068】
(C1−C8)アシルとは、本発明では、最高8個までの炭素原子を有する前記定義のアルキル基であって、(C=O)官能基によりを介して結合するものを意味する。
【0069】
(C6−C18)アリール基とは、6〜18個の炭素原子を有する芳香族基を意味する。さらに詳細には、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ビフェニル基等の化合物、または該分子とアニールしている前記種類の系、例えばインデニル系を包含し、これらは(C1−C8)アルキル、(C1−C8)アルコキシ、(C2−C8)アルコキシアルキル、NH(C1−C8)アルキル、N((C1−C8)アルキル)2、OH、O(C1−C8)アルキル、NO2、NH(C1−C8)アシル、N((C1−C8)アシル)2、F、Cl、CF3、(C1−C8)アシル、(C1−C8)アシルオキシ、(C7−C19)アルアルキル基、(C4−C19)ヘテロアルアルキルで場合によって置換されていてもよい。
【0070】
(C7−C19)アルアルキル基は、(C1−C8)アルキル基を介して分子と結合する(C6−C18)アリール基である。
【0071】
(C3−C18)ヘテロアリール基は、本発明の範囲では、3から18個の炭素原子の5、6または7員芳香族環系であって、環中に例えば窒素、酸素または硫黄等のヘテロ原子を有するものを意味する。このようなヘテロ原子は、特に1−、2−、3−フリル、例えば1−、2−、3−ピロリル、1−、2−、3−チエニル、2−、3−、4−ピリジル、2−、3−、4−、5−、6−、7−インドリル、3−、4−、5−ピラゾリル、2−、4−、5−イミダゾリル、アクリジニル、キノリニル、フェナントリジニル、2−、4−、5−、6−ピリミジニル等の基と考えられる。ヘテロ芳香族化合物は前述の(C6−C18)アリール基と同様に置換されていてもよい。
【0072】
(C4−C19)ヘテロアルアルキルとは、(C7−C19)アルアルキル基に対応するヘテロ芳香族系を意味する。
【0073】
好適なハロゲン(Hal)は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。
【0074】
水性溶媒という用語は、水、または主に水からなり、水溶性有機溶媒、例えばアルコール、特にメタノールもしくはエタノール、またはエーテル、例えばTHFもしくはジオキサン、または他の共溶媒、例えばDMSOを含む溶媒混合物を意味する。
【0075】
本明細書において言及する文献も本開示の範囲内に含まれると見なされる。
【0076】
配列表に示すタンパク質配列はHisタグおよびリンカー配列をC末端でさらに含む。活性γPLEを代表する実際のタンパク質配列は、したがって配列表に示す配列であって、C末端で21アミノ酸により切断されたものである。同じことが、前記タンパク質配列をコードする核酸配列に当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、β−アクチン遺伝子の増幅によるcDNA品質管理を示す。
【図2】図2は、ブタ肝臓cDNA由来のPLE遺伝子の増幅を示す。
【図3】図3は、見いだされたPLEであるPLE2、3、4および5のアミノ酸配列のγ−PLE配列(PLE1)との部分アラインメントを示す。
【図4】図4は、PLE2、クローン12、PLE3、PLE4、PLE5、γPLEおよびE.coli Origami pGro7野生型(負の対照)の粗抽出物の天然PAGEを示す。
【図5】図5は、基質1〜4のラセミ化合物の速度論的分割における様々なブタ肝臓エステラーゼイソ酵素のエナンチオ選択性を示す。
【図6】図6は、シス−3,5−ジアセトキシシクロペント−1−エンの加水分解における様々なブタ肝臓エステラーゼイソ酵素の生成物のエナンチオマー過剰を示す。
【0078】
方法:
mRNAの単離およびcDNAの合成
新鮮なブタ肝臓組織(0.1g)をTrizol(登録商標)試薬(TRIzol(登録商標)Plus RNA Purification Kit、Invitrogen(米国カリフォルニア州))で処理し、均質化し(室温で10分;Ultraturrax T25、IKA−Labortechnik)、製造元の指示に従ってRNAを単離した。RNA濃度を分光光度法で測定した。oligo(dT)15プライマーおよびRNaseH活性を有するMMLV逆転写酵素(Promega(米国ウィスコンシン州マディソン))を用いたRT−PCRによりcDNA合成を実施した。
【0079】
PLE遺伝子の増幅およびクローニング
RT−PCR生成物を、γPLE配列(5’−CACCCATATGGGGCAGCCAGCCTCGC−3’(配列番号11)(Ndel制限切断部位を斜字体で表す)、および5’−CCGCTCGAGTCACTTTATCTTGGGTGGCTTCTTTGC−3’(配列番号12)(Xhol制限切断部位を斜字体で表し;開始コドンおよび終始コドンに下線を施す)に基づく2つの遺伝子特異的プライマーを用いたPLE遺伝子の増幅に使用した。順プライマーはさらにその5’末端で、その後のTOPOベクター中へのクローニングを可能にする塩基CACCを含む(下記参照)。これらのプライマーは、もとのブタ遺伝子のN末端と結合した18アミノ酸シグナル配列、および4アミノ酸C末端ER(小胞体)残留シグナルをすでに削除し、これによりE.coliにおけるその後の発現を促進する(Lange,S,et.al.,ChemBioChem(2001),2,576−582)。PCRをサーモサイクラー(Techne Progene(Jepson Bolton Laboratory Equipment(英国ウォトフォード))で実施した。PCRは製造元の指示に従い、下記の温度プログラムにしたがって、Pfu Plus Polymerase(Roboklon(ドイツ国ベルリン))を使用した:95℃で5分間変性後、95℃で1分、60℃で1分、72℃で3分を30サイクル実施し、最後は72℃で7分であった。PCR産物をアガロースゲル中で分画し、精製し、製造元の指示にしたがってTOPO/pET101ベクター中にクローニングした(ChampionTM pET Directional TOPO(登録商標)Expression Kit;Invitrogen(米国カリフォルニア州カールズバッド))。E.coli TOP10細胞[FmcrA D(mrr−hsdRMSmcrBC)(F801acZDM15)DlacX74 recA1 deoR araD139 D(ara−leu)7697 galU galK rpsL(StrR)endAl nupG](Invitrogen)を、構築物混合物を用いて形質転換し、寒天プレート上で分離させた。このようにして得られた組換えシグナルクローンを別々に培養し、プラスミドDNAを単離し、サイズ決定または制限マッピングにより同定し、PLE配列のPCR増幅用テンプレートとして使用した。増幅された配列を次いで配列決定した(MWG−Biotech(ドイツ国マーチンスリード))。
【0080】
発現系の構築
各TOPO/pET101−PLE構築物のプラスミドDNAを製造元の指示にしたがってNdelおよびXholで消化し(New England Biolabs(米国マサチューセッツ州ベバリー);Promega(米国ウィスコンシン州マディソン))、約1694bpのサイズの特定のフラグメントをNdel/Xhol消化されたアガロースゲル精製pET15bベクター(Novagen(米国ウィスコンシン州マディソン))中に挿入し、これはさらにN末端Hisタグを遺伝子に追加した。結紮産物をE.coli DH5α株(Novagen(米国ウィスコンシン州マディソン))[supE44ΔlacU169(Φ801acZΔM15)hsdR17 recAl endAl gyrA96 thi−lrelAl]の形質転換のために使用し、形質転換された株を培養することによりプラスミドを増殖させた。プラスミドを組換え株から単離し、試験するために再度配列決定した。このようにして得られたpET15b−PLE構築物を、あらかじめpGro7プラスミド(Chaperone Plasmid Set(タカラバイオ株式会社会社(日本国滋賀県大津市))で形質転換したE.coli Origami(DE3)株[Δ(ara−leu)7697 ΔlacX74 ΔphoA PvuII phoR araD139 ahpC galE galK rpsL F’[lac+ laclq pro](DE3)gor522::Tn10 trxB(KanR、StrR、TetR)4](Novagen(米国ウィスコンシン州マディソン))の形質転換のために使用し、これによりシャペロンGroEL+GroESを発現させることができる。
【0081】
ブタ肝臓エステラーゼの発現とシャペロン複合体GroEL/ESの同時発現の詳細については、Boettcher、D.,Bruesehaber,E.,Doderer.K.,Bornscheuer,U.T.(2007),Functional expression of the gamma−isoenzyme of pig liver carboxyl esterase in Escherichia coli,Appl.Microbiol.Biotechnol.,(2007),73(6),1282−1289を参照。
【0082】
E.coli Origamiにおける組換えPLEイソ酵素の発現とシャペロン複合体GroEL/ESの同時発現
プラスミド選択のために20μgmL-1のクロラムフェニコールおよび50μgmL-1のアンピシリンを含む150mLのLB培地中でシャペロンをPLEイソ酵素と同時発現させた。1mgmL-1のL−アラビノースを添加することにより、シャペロン発現を直ちに開始した。40μMのIPTGを添加することにより、OD600=0.5でPLE産生を誘発した。24時間後、細胞を遠心分離により除去し、10mlのリン酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.5)中に再懸濁させ、超音波を用いて破壊した。細胞片を遠心分離により除去し、上清をさらなる実験に使用した(粗細胞抽出物)。タンパク質含量およびエステラーゼ活性をBradfordにしたがうか、またはpNPA分析を用いて決定した。
【0083】
天然ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびFast Redを用いた活性染色
組換え産生されたPLEの粗抽出物を含む混合物(5〜15μL、pNPA分析の0.05〜0.15Uに相当)を緩衝液(20%(w/v)グリセリン;0.0025%(w/v)dH20中ブロモフェノールブルー)(5〜10μL)と混合した。そのアリコートを天然ポリアクリルアミドゲル(7.5%)上で分離した。活性染色のために、新たに製造したα−ナフチルアセテートおよびFast Redの混合物中でゲルをインキュベートした。生成したα−ナフトールおよびFast Red間に赤色複合体が形成されることはエステラーゼの加水分解活性を示す。(Krebsfaenger,N.,et.al.,(1998)Enzyme Microb.Technol,22,641−646)。ゲルを次にクマシーブリリアントブルーで染色した。
【0084】
エステラーゼ活性
基質としてp−ニトロフェニルアセテート(10mM、ジメチルスルホキシド中に溶解)を用いて、リン酸ナトリウム緩衝液(50mM)中分光光度法でエステラーゼ活性を決定した。生成したp−ニトロフェノールの量を410nm(ε=15103-1cm-1)の波長、RTおよびpH7.5で決定した。1単位(U)を、1分あたり1μMのp−ニトロフェノールを分析条件下で変換できる酵素の量と定義する(Krebsfaenger,N.,et.al.(1998)Enzyme Microb.Technol,22,641−646)。
エステラーゼの基質特異性を一定pHで分析した。既知量のエステラーゼを、エステル基質(5%(v/v);トリブチリン、酢酸エチル、トリオレインまたは酪酸メチル)およびアラビアゴム(2%(w/v))を含むエマルジョン(20mL)に37℃で添加した。遊離した酸をpH−Statiometer(Schott(ドイツ国マインツ))中、一定のpH7.5に維持するために0.01NのNaOHを用いて自動的に滴定した。1単位(U)を、分析条件下で1分あたり1μMの酸を生成できる酵素の量と定義する。
【0085】
第2アルコールのアセテートの酵素加水分解の立体選択性(独国特許公開第10258327(A1)号を参照)
加水分解をサーモミキサー(Thermomixer comfort Eppendorf(ドイツ国ハンブルク))中の1.5mlの反応容器中、37℃で実施した。1mlの基質溶液(リン酸ナトリウム緩衝液中(pH7.5、50mM)中10mM)について0.5Uのエステラーゼ粗抽出物(pNPA分析に基づく)を使用した。混合物をジクロロメタンで抽出することにより反応を停止し、有機相を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。
【0086】
エナンチオマー純度および変換率をガスクロマトグラフィーにより決定した。変異型酵素のエナンチオ選択性をChen等(C.S.Chen,Y.Fujimoto,G.Girdaukas,C.J.Sih,J.Am.Chem.Soc.1982,104,7294.)にしたがって計算した。
【0087】
基質の合成およびGC分析における滞留時間についてのさらも詳細な説明については、Musidlowska−Persson,A.and Bornscheuer,U.T.,"Substrate Specificity of the γ−isoenzyme of recombinant pig liver esterase towards acetaes of secondary alcohols" J.Mol.Catal.B.Enzym.2002,19−20,129−133.を参照。
【0088】
シス−3,5−ジアセトキシシクロペント−1−エンの酵素加水分解の立体選択性
実験手順は、第2アルコールのラセミ化合物の分割についてと同じであり、リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5、50mM)中10mMの基質を含む1mlの反応混合物において0.5単位(pNPA)のPLE粗抽出物を使用した。反応を37℃で実施し、表示した時間で試料を採取した。変換率および生成物エナンチオマー過剰の分析をガスクロマトグラフィーにより実施した。分析はC−R5A Chromatopac/Integrator GC装置(Shimadzu(ドイツ国デュイスブルク))中Hydrodex(登録商標)−b−3P(ヘプタキス−(2,6−ジ−O−メチル−3−O−ペンチル−b−シクロデキストリン(25m、0.25mM))GCカラム(Machery Nagel(ドイツ国デューレン))を使用した。110℃のカラム温度での等温分別の滞留時間は次のとおりであった:シス−3,5−ジアセトキシ−シクロペント−1−エン:21.8分、3(S)アセトキシ−5(R)−ヒドロキシ−シクロペント−1−エン:18.2分、3(R)アセトキシ−5(S)−ヒドロキシ−シクロペント−1−エン:16.0分。
【0089】
結果:
ブタ肝臓からのmRNAの単離およびRT−PCR
単離されたRNAの品質をアガロースゲル上で試験し(不図示)、前記RNAを分光光度法により定量し(2.6μg/μl);このようにして、使用した組織0.1gから260μgのRNAを得た。RT−PCRによりcDNA中に転写した後、前記cDNAの品質を、ハウスホールド遺伝子β−アクチン増幅用の鋳型として使用することにより試験した。図1は、cDNAによりβ−アクチン遺伝子の増幅が可能になり、その品質はしたがってさらなる実験に適していることを示す。
【0090】
図1:β−アクチン遺伝子の増幅によるcDNA品質管理。鋳型:レーン1:ヒトcDNA(正の対照)、レーン2:ブタ肝臓由来のcDNA、レーン3:水(負の対照)。
【0091】
PLE遺伝子の増幅およびクローニング
γPLEの配列に基づいたプライマーを使用したPLE遺伝子の増幅のためにcDNAを使用した。図2に示すように、PCR後に反応混合物をアガロースゲルに付すことにより、約1.7kbpでγPLEのサイズに対応する鋭いバンドが得られた。このバンドを切除し、DNAを単離し、順プライマーを介して結合したCACCオーバーハングを用いてTOPOベクター中にクローニングした。E.coli Top10細胞を、この構造混合物を用いて形質転換した後、組換えクローンを得た。プラスミドDNAをこれらのクローンから単離し、制限マッピングにより試験し、配列決定した。
【0092】
図2:ブタ肝臓cDNA由来のPLE遺伝子の増幅。レーン1:鋳型としてのcDNA、レーン2:1kbpのマーカー、レーン3:鋳型としての水(負の対照)。
【0093】
配列決定結果
新規PLE遺伝子の配列決定により、互いに異なり、γ−PLEに関して異なる4つの新規遺伝子配列が得られたことが明らかになった。γ−PLE配列と異なる部位を図3のアミノ酸配列のアラインメントで図示する。このように存在するPLEおよびその遺伝子に1から5の番号をつけ、PLE1はすでに開示されているγ−PLEに相当する。新規PLEの公知のγ−PLEとの違いは次のようにまとめることができる:
PLE2:6ヌクレオチド置換(3アミノ酸置換)[イソ酵素4]
PLE3:35ヌクレオチド置換(20アミノ酸置換)[イソ酵素24]
PLE4:34ヌクレオチド置換(20アミノ酸置換)[イソ酵素39]
PLE5:34ヌクレオチド置換(21アミノ酸置換)[イソ酵素41]
【0094】
図3:見いだされたPLEであるPLE2、3、4および5のアミノ酸配列のγ−PLE配列(PLE1)との部分アラインメント。
【0095】
タンパク質の発現
見いだされた5つの遺伝子をpET15bベクター中にサブクローニングした。E.coli Origamiをこれらの構築物ならびに2つのシャペロン部分であるGroESおよびGroELをコードするプラスミドpGro7で形質転換した。この発現系に関してE.coliにおけるPLEの有効な過剰発現が記載されている(独国特許第10061864号)。株を小規模(50ml/150ml)で培養し、シャペロンおよびPLE構築物のタンパク質発現を誘発した。加えて、pGro7を用い、pETベクターを用いないでγPLEおよびE.coli Origamiを比較のために同時培養し、タンパク質発現を誘発した。上清を破砕し(体積:3ml/9ml)、遠心分離により可溶性細胞内タンパク質を含む粗抽出物を得、次の実験に使用した。
【0096】
すべての粗抽出物中のタンパク質含量は約7〜9mg/mlであり(そのうち、形成されたタンパク質の大部分はシャペロンに相当する);粗抽出物の最終体積は、培養物のサイズによって3または9mlであった。
【0097】
天然ゲルおよびFast Red染色
粗抽出物を天然ゲルに適用し、これを次いで、α−ナフチルアセテートを基質として含むFast Red溶液中でインキュベートすることにより、エステラーゼ活性を試験した。これに続いてクマシー染色をおこなった(図4:PLE2、クローン12、PLE3、PLE4、PLE5、γPLEおよびE.coli Origami pGro7野生型(負の対照)の粗抽出物の天然PAGE。左図:α−ナフチルアセテートを用いたFast Red染色、右図:その後のクマシーブリリアントブルー染色)。
【0098】
活性エステラーゼバンドはPLE2、PLE3、PLE4、PLE5およびγPLEで可視であり、これらは異様に異なるサイズを有し、ひどく汚染されていた。これは、方法によるものであり、天然ゲルは変性SDSゲルほど明確に動作しないからである;しかし、いくつかの抽出物は三量体および四量体PLE構築物を含む可能性があり、これらはどちらも活性である。
【0099】
クローン12は活性を示さない。同様に、予想されるように、pET15b構築物なしでE.coli Origamiの粗抽出物においてエステラーゼ活性は検出できない。
【0100】
クマシー染色におけるタンパク質バンドは、γPLEに加えて多くのシャペロンが過剰発現されたことを明らかに示す。Bradfordにより決定されたタンパク質含量はしたがって主にシャペロンを含み、γPLE含量についての情報は得られない。Fast Red後におこなわれたクマシー染色に基づいて過剰発現の程度をもはや正確に評価できない。シャペロンを用いたE.coli野生型と比較して、活性バンドの領域中で見ることができる追加のタンパク質バンドはない。しかし、活性染色後にタンパク質をクマシーでもはや染色できないことが多い。しかし、このことは、過剰発現がごくわずかであるが、それでも良好な活性を有するタンパク質を提供することも意味する。
【0101】
p−ニトロフェニルアセテートに関する活性
まずpNPA分析を用いることによりエステラーゼ活性を試験した。これにより、第1表に記載する結果が得られた。
【0102】
第1表:PLE変異体および発現株(E.coli OrigamiとシャペロンプラスミドpGro7)のpNPAに関する体積活性(U/ml)。すべてのエステラーゼはN末端His6タグを有する。
【0103】
【表2】

【0104】
すべてのPLEはpNPAに関して活性を示し、いくつかの新規エステラーゼについてはγ−PLEよりもさらに2倍〜4倍高かった。
【0105】
アキラルエステルに関する活性
pHスタットを用いて新規PLE変異体のアキラルエステルに関する活性を調べた。酵素の精製後、比活性を測定し、第2表に記載した。
【0106】
第2表:pHスタットにより37℃で、およびpH7.5で10分間の測定期間にわたって測定した、新規PLEおよびγ−PLEのいくつかのアキラルエステルに関する比活性。
【0107】
【表3】

【0108】
第2アルコールのアセテートのラセミ化合物の分割
次のラセミアセテートの加水分解を調べた:
【化5】

【0109】
ガスクロマトグラフィー研究により第3表〜第6表に示した結果を得た。A.Musidlowska(Musidlowska−Persson,A.and Bornscheuer,U.T.,J.Mol.Catal.B.Enzym.2002,19−20,129−133.)による市販のPLE製造物について得られたデータを比較のために付け加えた。
【0110】
第3表:1(R,S)−1−フェニル−1−プロピルアセテートのラセミ化合物の速度論的分割における新規PLE変異体のエナンチオ選択性。(*)Fluka PLEおよびChirazyme E2のデータは、Musidlowska−Persson,A.and Bornscheuer、U.T.,J.Mol.Catal.B.Enzym.2002,19−20,129−133から取得した。
【0111】
【表4】

【0112】
第4表:2(R,S)−1−フェニル−エチルアセテートのラセミ化合物の速度論的分割における新規PLE変異体のエナンチオ選択性。(*)Fluka PLEおよびChirazyme E2のデータは、Musidlowska−Persson,A.and Bornscheuer,U.T.,J.Mol.Catal.B.Enzym.2002,19−20,129−133から取得した。
【0113】
【表5】

【0114】
第5表:3(R,S)−1−フェニル−2−ブチルアセテートのラセミ化合物の速度論的分割における新規PLE変異体のエナンチオ選択性。(*)Fluka PLEおよびChirazyme E2のデータはMusidlowska−Persson,A.and Bornscheuer,U.T.,J.Mol.Catal.B.Enzym.2002,19−20,129−133から取得した。
【0115】
【表6】

【0116】
第6表:4(R,S)−1−フェニル−2−ペンチルアセテートのラセミ化合物の速度論的分割における新規PLE変異体のエナンチオ選択性。(*)Fluka PLEおよびChirazyme E2のデータは、Musidlowska−Persson,A.and Bornscheuer,U.T.,J.Mol.Catal.B.Enzym.2002,19−20,129−133から取得した。
【0117】
【表7】

【0118】
図5は、エナンチオマー過剰における違いを再度図式により示す。
【0119】
図5 基質1〜4のラセミ化合物の速度論的分割における様々なブタ肝臓エステラーゼイソ酵素のエナンチオ選択性。市販のFluka PLEのデータは文献(Musidlowska−Persson,A.and Bornscheuer,U.T.,J.Mol.Catal.B.Enzym.2002,19−20,129−133)から取得した。
【0120】
シス−3,5−ジアセトキシシクロペント−1−エンの加水分解
【化6】

【0121】
第7表:新規PLE変異体、γ−PLE(PLE1)および市販のFluka PLEによるメソ−シス−3,5−ジアセトキシシクロペント−1−エンの不斉化。0.5単位(pNPA)の粗抽出物を用いて37℃で反応を実施し、ガスクロマトグラフィーによりエナンチオマー過剰を決定した。
【0122】
【表8】

【0123】
図6は、生成物のエナンチオマー過剰に関するPLE変異体の違いを示す。
【0124】
図6 シス−3,5−ジアセトキシシクロペント−1−エンの加水分解における様々なブタ肝臓エステラーゼイソ酵素の生成物のエナンチオマー過剰
【0125】
阻害剤の影響
粗抽出物を3つのエステラーゼ阻害剤のいずれかで処理することにより、新規PLE変異体の阻害可能性を決定した。フェニルメチルスルホニルフルオリド、フッ化ナトリウムおよびフィゾスチグミンの影響を調べた。試料をある時点で採取し、残存エステラーゼ活性をpNPA分析により決定した。第8表に結果を示す。
【0126】
第8表:フッ化ナトリウム、フェニルメチルスルホニルフルオリドおよびフィゾスチグミンの3つの阻害剤で25℃でインキュベーションした後の新規PLEイソ酵素の残存活性[%]。活性をpNPA分析により決定した。
【0127】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの突然変異を有する、配列番号2のエステラーゼであって、前記突然変異が、以下の
【表1】

からなる群から選択されるエステラーゼ。
【請求項2】
配列番号4、6、8または10のエステラーゼ。
【請求項3】
請求項1および/または2に記載のエステラーゼをコードする単離された核酸。
【請求項4】
請求項3に記載のクローニングされた核酸を有する遺伝子、ベクター、プラスミドおよび組み換え型微生物。
【請求項5】
少なくとも1つのクローニングされたシャペロン遺伝子をさらに含む、請求項4に記載の組み換え型微生物。
【請求項6】
エナンチオマー的に富化されたアルコール、カルボン酸およびエステルを製造するための請求項1および/または2に記載のエステラーゼの使用。
【請求項7】
(i)配列番号3、5、7または9の突然変異誘発、
(ii)(i)から得られる核酸配列の好適なベクター中へのクローニングと、それに続く好適な発現系中への形質転換、ならびに
(iii)改善された活性および/または選択性および/または安定性を有する前記ポリペプチドの検出および単離
により製造される、配列番号2のポリペプチドに対して改善された活性および/または選択性および/または安定性を有するポリペプチドの製造法における請求項3に記載の核酸の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−521192(P2010−521192A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500178(P2010−500178)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052880
【国際公開番号】WO2008/116745
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】