説明

ブラケット固定構造

【課題】座りが良く、変形することに伴う半田割れやランド剥がれの少ないブラケットの固定構造を提供する。
【解決手段】基板10に穿設された取付穴11にブラケット20の脚部21の一部を挿入して半田付けで固定するようにしたブラケットの固定構造であって、脚部21は、その内側に略T字状の割り溝22Rが形成されるように、ブラケットの側面22下部に設けた一対の脚基部23a,23bと、該脚基部の下端から互いに接近する方向に延びる一対の脚先部24,24と、脚先部の内側端部から屈曲部24b,24bを介して下方に延び取付穴内に挿入される脚先端部24a,24aとからなり、該脚先端部が取付穴に挿入された状態で、脚先端部の膨出部24c,24cと脚先部下端の肩部23a’,23b’とにより基板が挟持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板等の基板上に板金製のブラケットを固定する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板等の基板上に電気部品でない板金製の部品を固定する場合がある。このような部品として、例えば、基板上の発熱するIC類を抱き込み、ヒートシンクに接触させるためのブラケットや、ノイズ対策のためにコネクタを覆うように設けられるブラケットがあげられる。
このようなブラケットを基板上に固定するには、コストの面を考慮すると、ネジ止めではなくカシメ固定が適当であり、そのカシメ部分を基板に対して強固に固定したり、あるいは接地を取ったりする必要から、そのカシメ部分に半田付けが行われる。
【0003】
ブラケットの固定作業工程としては、図10に示すように、先ず、回路基板等の基板1上へ図示しないICやコネクタ等の電子部品を装填し、次に、ブラケット3によって電子部品を抱え込む状態で、基板1の取付穴2にブラケット3の脚部4を挿入して該脚部4の先端部4aを基板1の裏面(ディップ面)側でカシメし、最後にディップ方式で電子部品の端子と脚部4の先端部4aとを基板1のランドに半田付けする工程となる。その際、カシメ作業は、脚部4の先端部4aを、治具を用いて基板1の面方向に捻り変形させることによって行われる。カシメ作業後の脚部4の状態をディップ面側から見た図を、図11に示す。図11中、符号5は基板1の裏面上に設けられた半田用ランドである。
カシメ作業の際、先端部4aの捻り作業を容易にするために、基板1をひっくり返そうとすると、ブラケット3の脚部4は取付穴2に上方から挿入してあるだけなので、この脚部4が取付穴2から抜けてブラケット3が落下してしまう。したがって、このカシメ作業は、基板1の裏側から専用の治具を用いて行う必要があるだけでなく、作業状況が作業者に見え難い不便さがある。また、調整や修理のために一旦装着したブラケット3を取り外して再度取り付けるには、先端部4aを元の状態まで逆方向に捻り、再びカシメ変形させることとなるので、繰返しの塑性変形により先端部4aが破断し易くなるという欠点も生じる。
【0004】
また、半田工程においては、ディップ半田方式によってブラケット3のカシメ傾斜部4b(図10参照)とランド5との間に半田が入り込むことにより基板1に対する脚部4のアンカー効果が得られることとなるが、カシメ傾斜部4bがテーパ面であることからランド5との間の隙間が一様ではなく、さらに、図11に示すようにランド5に対して捻り変形後の先端部4aが平面視で傾斜することから、脚部4の根元部位と先端部位とでは半田の付着量が異なってしまうので、半田の凝固時に、部位による半田収縮量の差が生じることによって、半田にクラックが発生してしまうこととなる。
【0005】
また、上記半田工程後、ブラケット3に対しネジ等でヒートシンク等を組み付けたりする作業が行われるが、これら部品の組み付けに際しネジの締付力などによってブラケット3の脚部4の半田付け部にストレスを生じさせてしまい、それに加えて、長期の使用での振動等が加わることによって、さらに半田割れやランド5の剥がれが生じる可能性が高まる。
【0006】
このような課題の対策として、特開2001−60784号公報に記載されているように、放熱板を基板上に固定するに際し、該放熱板の下部に、基板に対して垂直に延びる割り溝を有する脚部を設け、該脚部の外側面にテーパ縁面、先端部に抜け止め用突出部をそれぞれ形成することで、基板上の取付穴に該脚部をスナップインして仮固定できるようにし、該脚部を捻り変形させることなく半田付け作業を行うことができるようにする提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−60784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような先行文献に記載の脚部の構成では、該脚部を基板にスナップインして仮固定することはできるものの、仮固定時の基板に対する座りを良くして放熱板の倒れや傾きを生じ難くする配慮はなされていない。
また、放熱板に別部品を組み付けたときの、脚部の半田に対する応力を吸収することも考慮されていない。
【0009】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、ブラケットの脚部を挿入したときの基板上での座りを良くして作業性を向上させると共に、該ブラケットにヒートシンク等の別部品を取り付ける際、該ブラケットが変形することに伴う半田割れやランド剥がれの少ないブラケットの固定構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基板に対して略垂直に形成され該基板に取付けられた部品を保持する保持面と、該保持面よりも下部に設けられた脚部とを備えた板金製のブラケットを、前記脚部の先端を基板に穿設された長穴形状の取付穴に挿入して該基板の裏面に半田付けすることで固定するようにしたブラケットの固定構造であって、
前記脚部は、前記基板の取付穴の長手方向両側に位置しそれぞれ上下方向に延びる一対の脚基部と、各脚基部の下端から互いに接近する方向に延びる一対の脚先部と、各脚先部の内側端部から屈曲部を介して下方に延び前記基板の取付穴に挿入されて半田付けされる一対の脚先端部とからなり、各脚基部と各脚先部および各脚先端部の内側に略T字状の割り溝が形成されており、
前記各脚先端部の前記取付穴の長手方向外側に向く端面には、外方に突出する膨出部が設けられているとともに、前記各脚先部の下端には前記脚先端部が前記取付穴に挿入された際に前記基板と接する肩部が形成されており、
前記各脚先端部の膨出部間の幅寸法は前記取付穴の長手方向の寸法よりも大きく、前記各脚先端部を前記割り溝により互いに接近する方向へ撓ませて前記取付穴に挿入した状態で、前記脚先端部の弾性復元力により前記膨出部と前記肩部とで前記基板が挟持されることを特徴とするブラケットの固定構造である。
【0011】
また本発明は、前記脚部は、前記保持面と垂直な側面の下部に形成されており、前記一対の脚基部は前記取付穴の長手方向において前記保持面を挟んで両側に位置しており、そのうち一方の前記脚基部の上端には、前記保持面に向かって前記基板と略平行に延び前記側面に接続される延長部が設けられていることを特徴とするブラケットの固定構造である。
【0012】
また本発明は、前記脚部は、前記保持面の下部と、前記保持面の両側にそれぞれ設けられた該保持面と垂直な一対の側面の下部とにそれぞれ形成されており、前記各側面に設けられた前記脚部の前記一対の脚基部は、前記取付穴の長手方向において前記保持面を挟んで両側に位置しており、そのうち一方の前記脚基部の上端には、前記保持面に向かって前記基板と略平行に延び前記側面に接続される延長部が設けられていることを特徴とするブラケットの固定構造である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記した構成により、脚部に略T字状の割り溝が形成されているので、脚部の基板表面からの高さ寸法に制限がある場合でも、各脚先端部の互いに接近する方向への可撓性を充分に持たせることができ、各脚先端部の取付穴内への挿入作業性が悪化することがない。また、該脚先端部の挿入後は膨出部と脚先部の肩部とで基板が挟持されて基板上でのブラケットの座りがよくなり、その後の脚先端部の半田付け作業が容易となる。さらに、脚部に形成されるT字状の割り溝によって、半田付け後にブラケットに加わる応力を吸収することができ、脚先端部の半田割れを抑制することができる。
特に、脚部の一方の脚基部の上端に、基板と略平行に延びる延長部が設けられている構成では、延長部による応力の吸収作用が高いので、半田付け部に対するストレスをより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係る基板とブラケットの分解斜視図。
【図2】本発明の実施例に係るブラケットの斜視図及び脚部拡大図。
【図3】本発明の実施例に係るブラケットの展開図。
【図4】本発明の実施例に係るブラケットの脚部の拡大図。
【図5】本発明の実施例に係るブラケットの脚部を半田ディップ面から見た説明図。
【図6】本発明の実施例に係るブラケットの実装状態の斜視図。
【図7】本発明の実施例に係るブラケットの実装状態をヒートシンク側からみた分解斜視図。
【図8】本発明の実施例に係るブラケットの実装状態の平面図。
【図9】本発明の実施例に係るブラケットの実装状態の図8A−A面での側断面図。
【図10】従来例に係るブラケットの斜視図及び脚部拡大図。
【図11】従来例に係るブラケットの脚部を半田ディップ面から見た説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について、図1ないし図9を用いて、説明する。
本発明のブラケットの固定構造は、図1ないし図2に示すように、ブラケット20の脚部21をプリント基板などの基板10の取付穴11に挿入し、該基板10裏側から半田をディップすることにより、ブラケット20を該基板10上に固定するものである。
そして、そのように固定されたブラケット20に形成される保持面20aには、各種IC素子30あるいは図示しないコネクタ等の部品が係合して保持される。
【0016】
ブラケット20は、図3の展開図に示すような板金を打ち抜き加工したものを、図2の斜視図に示すように折り曲げ加工して得られるものであり、保持面20aよりも下部(基板1側)には3つの脚部21(21a〜21c)がブラケット本体20bと一体に形成されている。このうち、脚部21a,21cは保持面20aの両端部に形成された該保持面20aと垂直な側面22の下部に設けられ、脚部21bは保持面20aの下部に設けられる。
【0017】
該脚部21a,21cの形状を、図2の部分拡大図に示す。なお、図2では図示右側の脚部21cの部分拡大図のみ示しているが、図示左側の脚部21aもこれと同様の構成となっている。
該脚部21a,21cは、その内側に略T字状の割り溝22Rが形成されるように、側面22の下部から下方に突出する一対の脚基部23a,23bと、それぞれの脚基部23a,23bの下端から互いに接近する方向に延びる一対の脚先部24,24と、各脚先部24,24の内側端部からそれぞれ屈曲部24b,24bを介して下方に延びる脚先端部24a,24aとが一体形成されて構成されており、該脚先端部24a,24aが基板1に穿設された長穴形状の取付穴11に挿入されるようになっている。脚先端部24a,24aが基板1の取付穴11に挿入された状態で、一対の脚基部23a,23bは、取付穴11の長手方向両側の位置で上下方向に延びるものである。
各脚先端部24aには、該脚先端部24aを取付穴11に挿入したときに該取付穴11の長手方向内側面と対接する外側の端面に、外方に凸状(鎌首状)となる膨出部24cが形成されている。この膨出部24cの形状は、半円形状、三角形状など適宜選択可能である。
屈曲部24bは、脚先部24,24の内側端部と脚先端部24aの上端部とを繋ぐ円弧形状部である。そして、屈曲部24b,24bから下方へ延びた各脚先端部24a,24aは線Lを中心に所定の間隙tを介して対称に背中合わせとなるように形成されている。また、略T字状の割り溝22Rが存在することにより脚先端部24a,24aが互いに接近する方向および上方向に弾性力を持って撓むが、屈曲部24bを脚部21a,21cの他の部分より細幅に形成することで、脚先端部24a,24aをより撓み易くしている。なお、屈曲部24bの形状は円弧形状に限らず、L字形状等でも良い。
略T字状の割り溝22Rの間隙tは、ブラケット本体20bと一体に板金で形成されている脚部21の脚先端部24aが、基板10の取付穴11に押し込まれて挿入される場合に、該取付穴11を損傷することなく互いに内方に撓むことができる距離に設定されている。
また、脚先部24,24の下部側には、脚先端部24aが取付穴11に挿入された状態において、基板10と接する肩部23a’,23b’が設けられている。該肩部23a’,23b’は、脚先端部24aが取付穴11に挿入された状態において、基板11の表面と面接触することができるように平坦な端面で形成される。但し、肩部23a’,23b’の表面は、例えば波形形状など、基板11の表面に対して複数の点で接触するような形状であっても良い。
【0018】
ここで、前記脚先端部24a,24aの膨出部24c,24cの頂部間の幅寸法Tは、基板の取付穴11の長手方向の幅寸法よりも若干大きな寸法となっており、該脚先端部24a,24aを基板10の取付穴11上に位置させて基板10の上方から押し込むと、脚先端部24a,24aが撓むことで前記基板10を損傷することなく取付穴11に押し込むことができる。また、脚先端部24a,24aが取付穴11に挿入された状態では、脚先端部24a,24aの弾性復元力により取付穴11の長手方向の内縁の下面に膨出部24c,24cの外面が圧接され、且つ、肩部23a’,23b’が取付穴11周囲の基板10の表面と面接触或いは複数の点で点接触し、基板10は、該肩部23a’,23b’と膨出部24c,24cとにより挟持される。これによってブラケット20が基板10上で仮固定される。
【0019】
さらに、この実施例では、一対の脚基部23a,23bのうちの一方(図2では、23a)が、側面22よりも外側(図示右側)に外れた位置に配置されており、この一方の脚基部23aの上端には、前記保持面20aに向かって前記基板10と略平行に延び側面22に接続される延長部23a’’が一体形成されている。なお、他方の脚基部23bは側面22の下端から直接下方に延びており、上記延長部は形成されていない。
【0020】
次に、以上のように形成された脚部21を有するブラケット20を基板10に固定する工程についてより詳細に説明する。
ブラケット20を基板10に仮固定するのに先立ち、図1に示すように各種IC素子30の端子を基板10の端子挿入穴に挿入してIC素子30を所定位置に装填する。本実施例では、IC素子30として発熱素子であるパワーICが使用される。
次に、脚先端部24a,24aを基板10の取付穴11上に位置させてブラケット20全体を基板10の上方から押し込むと、その脚先端部24aが取付穴11にしだいに挿入されるのに従って、取付穴11の長手方向両端の内側面に膨出部24cの外側面が沿うように各脚先端部24a,24aが弾性的に撓み、それに伴い間隙tが狭められていく。
このとき、略T字状の割り溝22Rの存在により、両脚先端部24a,24aは互いに接近する方向だけでなく屈曲部24b,24bと共にそれぞれ線Lに向かって斜め上方向にも弾性的に撓むようになっている。したがって、上下方向に長い割り溝を形成しなくても両脚先端部24a,24aの撓み量を充分に確保できるので、脚部21の基板10表面からの高さ寸法に制限がある場合でも、脚先端部24a,24aの取付穴11への挿入作業性が悪化することがない。
両脚先端部24aが更に挿入され、膨出部24cの円弧状頂部が取付穴11を通過すると、両脚先端部24の弾性復元力により、該両脚先端部24は互いに離れる方向へ広がっていき、脚先部24,24の肩部23a’,23b’が基板10の表面に接した時点でスナップイン作業が終了する。このとき、IC素子30の基板10に対して垂直な平面がブラケット20の保持面20aに対して僅かな隙間を介して対向し、また、IC素子30の上端部がブラケット20の上端縁に折曲形成された保持片20e(図2参照)に把持され、よって、後述する半田付け工程においてIC素子30の基板10からの浮き、或いは倒れ等が規制されるようになっている。
この時点では、脚先端部24の弾性復元力が残されている状態(両脚先端部24a,24aが開ききっていない状態)とされており、取付穴11の長手方向の内縁の下面に膨出部24c,24cの外面が圧接し、且つ、肩部23a’,23b’が取付穴11周囲の基板10の表面と面接触或いは複数個所で点接触して、これら肩部23a’,23b’と膨出部24c,24cとにより基板10を弾性的に挟持した状態となる。これにより、基板10に対するブラケット20の倒れや傾きが生じ難くなり、謂わば座りの良い状態でブラケット20が基板10に仮固定されることとなる。
【0021】
この仮固定された状態で、ブラケット20の脚部21cを基板10の裏面側、つまり脚先端部24aが基板10からはみ出している側から見た図を図5に示す。
本件発明の固定構造では、上記したように基板10に対してブラケット20を倒れや傾きの無い状態(座りの良い状態)で仮固定した後にディップ半田付け作業を行うことができるので、各脚先端部24aの突出量にバラツキが無く、安定した半田付け作業を行うことができる。
また、取付穴11周囲のランド5’に対し、脚先端部24aの外側角部(図5中、符号Pで示す部位)が4箇所で対向することになるので、図11に示す従来例とは異なり、半田が入り込む部分は線L、L’を中心にそれぞれ線対称となり均等になる。このため、半田が部分的に偏在することが無く、半田凝固時の収縮量の差からクラックが発生することがない。
また、脚先端部24aの破断面(打ち抜き加工時の切断面)には半田が良く付着することとなるが、本件発明の脚先端部24aは膨出部24cを有して円弧状或いは三角形状に形成されているため半田の付着面積が大きく、しかも上記したように4点でランド5’に対向するため、半田によって脚先端部24aを取付穴11周囲の下面に保持するアンカー効果に優れている。
さらに、脚先端部24aの上端部には幅細の屈曲部24bが接続されているため、半田付け時に脚先端部24aに加わる熱がブラケット本体20b側に逃げるのを抑制して脚先端部24aの半田の濡れ性を向上させることができ、この点でも安定した半田付け作業が可能となる。
上述したようなブラケット20の仮固定状態から、基板10の裏面にディップ半田付けが行われ、脚先端部24aおよびランド5’が半田により接続されることで基板10に対するブラケット20の固定作業が終了する。これと同時に、IC素子30の端子も基板10のランド(図示せず)に半田付けされ、IC素子30が基板10に対して電気的および機械的に接続される。
【0022】
脚先端部24aに形成される半田フィレットは、上記のとおり脚先端部24aの濡れ性がよいことと対称性が良いこと等により、金属光沢を有する良好な富士山型を形成し、クラックなどの問題が生じない形状となる。
【0023】
また、この実施例では、上記したように、一対の脚基部23a、23bのうちの一方が側面22よりも外側に外れた位置に配置され、この一方の脚基部23aの上端に、保持面20aに向かって基板10と略平行に延びて側面22に一体に接続される延長部23a’’が設けられている。このため、半田付け後のブラケット20に対して、脚部21a,21cが設けられている下端側を支点に保持面20aが傾けられるような応力が加わった場合、略T字状の割り溝22Rの存在により延長部23a’’が僅かに撓んで応力を吸収するので、その応力が脚先端部24aまで伝わって半田割れやランド5’の剥がれが発生するのを防止できる。
【0024】
次に、図3,4を用いて、ブラケット20のもう一つの脚部21bについて説明する。
上述した側面22の下部に設けられた脚部21a,21cでは、一対の脚基部23a,23bのうちの一方の上端部に延長部23a’’を設けているが、保持面20aの下部に設けられた脚部21bには延長部23a’’が形成されておらず、図4に示すように両脚基部23,23が線Lを中心に対称な形状となっている。この脚部21bは、脚基部23,23だけでなく、脚先部24,24、屈曲部24b,24b、脚先端部24a,24aがいずれも線Lに対して線対称となり、保持面20aに平行な略T字状の割り溝22R’が形成される。
この脚部21bの構造でも、上記脚部21a,21cと同様に、上下方向に長い割り溝を形成しなくても両脚先端部24a,24aの撓み量を充分に確保できるので、脚部21bの基板10表面からの高さ寸法に制限がある場合でも、脚先端部24a,24aの取付穴11への挿入作業性が悪化することがない。また、座りの良い状態でブラケット20が基板10に仮固定されるため、各脚先端部24aの突出量にバラツキが無く、安定した半田付け作業を行うことができる。さらに、半田が部分的に偏在することが無く、半田凝固時の収縮量の差からクラックが発生することがない。
但し、この脚部21bは、側面22の下部に設けられた脚部21a,21cのように一対の脚基部23,23のうちの一方の上端部に延長部を設けていないため、半田付け後のブラケット20に対して保持面20aが傾けられるような応力が加わった場合に、この応力を吸収する能力は小さい。一方、脚基部23,23の弾性変形が少ない分、基板10に対する固定を強固にすることができる。したがって、図2,3に示すように、該脚部21bは保持面20aと平行な面に用いると好適である。
【0025】
次に、基板10上に固定されたブラケット20に対しヒートシンク等の別部品を組み付ける態様について説明する。
前記ブラケット20が固定された基板10は、図6,7に示すように、先ず、上方が開放されたシャシ40内の底部に配置される。
ブラケット20にはその保持面20aにIC素子30等が保持されているが、該IC素子30等が稼働して発熱する場合は、該IC素子30の側面にヒートシンク50を密着させて該熱を放散することが必要になる。
このため、本実施例では、図6〜9に示すように、ブラケット20を、その保持面20a側、つまりIC素子30の側面がシャシ40の立側面40aに対向するように基板10上に固定し、ヒートシンク50を、該シャシ40の該立側面40aを介してブラケット20と対向させる。そして、該ヒートシンク50は、ネジ51aによりシャシ40の立側面40aにネジ止めされると共に、同じくネジ51bによりブラケット20の両側に保持面20aと平行に設けた取付片20cにネジ止めされ、IC素子30をブラケット20の保持面20aとヒートシンク50の内面とで挟み込むようにしている。これにより、IC素子30の側面にヒートシンク50の内面が密着する。
その後、シャシ40の上方が図示しないカバーで覆われ、例えば電子機器として完成されることになる。
このように構成されているので、ヒートシンク50の組み付け時、ネジ51bをブラケット20の取付片20cにねじ込むことにより、ブラケット20には、脚部21a,21cが設けられている下端側を支点に保持面20aがヒートシンク50側に傾けられる方向の応力が加わる。しかしながら、上述したように延長部23a’’が僅かに撓んでこの応力を吸収するので、脚先端部24aまで応力が伝わって半田割れやランド5’の剥がれが発生するのを回避できる。
【0026】
以上説明したとおり、本発明のブラケット固定構造は、脚部21に略T字状の割り溝22R,22R’が形成されることにより、基板10表面からのブラケット20(脚部21)の高さに制限があったとしても両脚先端部24a,24aの撓み量を充分に確保できるので、脚先端部24a,24aの取付穴11への挿入作業性が悪化することがない。また、略T字状の割り溝22Rには、半田付け後のブラケット20に対する応力を吸収する機能もあるため、脚先端部24aの半田割れやランド剥がれに強い固定構造となっている。
【符号の説明】
【0027】
5’ ランド
10 基板
11 取付穴
20 ブラケット
20a 保持面
21a,21b,21c 脚部
22 側面
23,23a,23b 脚基部
23a’,23b’ 肩部
23a’’延長部
24 脚先部
24a 脚先端部
24b 屈曲部
24c 膨出部
30 IC素子
40 シャシ
50 ヒートシンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して略垂直に形成され該基板に取付けられた部品を保持する保持面と、該保持面よりも下部に設けられた脚部とを備えた板金製のブラケットを、前記脚部の先端を基板に穿設された長穴形状の取付穴に挿入して該基板の裏面に半田付けすることで固定するようにしたブラケットの固定構造であって、
前記脚部は、前記基板の取付穴の長手方向両側に位置しそれぞれ上下方向に延びる一対の脚基部と、各脚基部の下端から互いに接近する方向に延びる一対の脚先部と、各脚先部の内側端部から屈曲部を介して下方に延び前記基板の取付穴に挿入されて半田付けされる一対の脚先端部とからなり、各脚基部と各脚先部および各脚先端部の内側に略T字状の割り溝が形成されており、
前記各脚先端部の前記取付穴の長手方向外側に向く端面には、外方に突出する膨出部が設けられているとともに、前記各脚先部の下端には前記脚先端部が前記取付穴に挿入された際に前記基板と接する肩部が形成されており、
前記各脚先端部の膨出部間の幅寸法は前記取付穴の長手方向の寸法よりも大きく、前記各脚先端部を前記割り溝により互いに接近する方向へ撓ませて前記取付穴に挿入した状態で、前記脚先端部の弾性復元力により前記膨出部と前記肩部とで前記基板が挟持されることを特徴とするブラケットの固定構造。
【請求項2】
請求項1記載のブラケットの固定構造において、前記脚部は、前記保持面と垂直な側面の下部に形成されており、前記一対の脚基部は前記取付穴の長手方向において前記保持面を挟んで両側に位置しており、そのうち一方の前記脚基部の上端には、前記保持面に向かって前記基板と略平行に延び前記側面に接続される延長部が設けられていることを特徴とするブラケットの固定構造。
【請求項3】
請求項1記載のブラケットの固定構造において、前記脚部は、前記保持面の下部と、前記保持面の両側にそれぞれ設けられた該保持面と垂直な一対の側面の下部とにそれぞれ形成されており、前記各側面に設けられた前記脚部の前記一対の脚基部は、前記取付穴の長手方向において前記保持面を挟んで両側に位置しており、そのうち一方の前記脚基部の上端には、前記保持面に向かって前記基板と略平行に延び前記側面に接続される延長部が設けられていることを特徴とするブラケットの固定構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−176230(P2011−176230A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40644(P2010−40644)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】