説明

ブラケット

【課題】アース接続作業が容易で、しかも、ワイヤハーネスの配策環境が悪い場所でもワイヤハーネスの固定を確実に行うことができるブラケットを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネスWHを面に沿って配策するワイヤハーネス配策プレート部2と、ワイヤハーネスWHをワイヤハーネス配策プレート部2に固定するハーネス固定部3と、ワイヤハーネス配策プレート部2に一体に設けられ、ワイヤハーネスWHのアース用電線Wを加締めて電気的に接続する電線加締め部10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に搭載され、ワイヤハーネスの固定とアース接続に用いられるブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のブラケットとして、特許文献1に開示されたものがある。このブラケット50は、図5に示すように、導電金属材より形成されている。ブラケット50は、ボルト締結部51とこれに直交配置されたハーネス係止部52とからL字状に形成されている。
【0003】
ボルト締結部51には、ボルト穴51aが設けられている。このボルト穴51aに通されたボルト60の締結力によってブラケット50が車体61に固定されている。ボルト締結部51には、電線加締め部53が付設されている。電線加締め部53には、ワイヤハーネスWHより分岐したアース用電線Wが接続されている。アース用電線Wは、ブラケット50を介して車体61側にアースされている。
【0004】
ハーネス係止部52には、ワイヤハーネスWHのクランプ部62が係止されている。
【0005】
このようにして、ブラケット50は、ワイヤハーネスWHを所望の配策経路に沿って配策するべく適所でワイヤハーネスWHを車体61に固定している。
【0006】
前記従来例のブラケット50では、アース用電線Wをボルト締結ではなく、加締め接続によってアース接続を行うことができるため、アース接続作業が容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−296051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来のブラケット50は、L字形状であるため、ワイヤハーネスWHの自重や外力によって形状変化を引き起こし易い。特に、エンジン付近、変速機内等の振動が発生する場所、高温の場所、オイルが飛散する場所等のような悪い配策環境で配策される場合、L字形状が形状変化するのみならず最悪の場合ブラケット50が折れてしまう場合も考えられる。従って、ブラケット50がワイヤハーネスWHの固定を確実に行うことができない恐れがある。
【0009】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、アース接続作業が容易で、しかも、ワイヤハーネスの配策環境が悪い場所でもワイヤハーネスの固定を確実に行うことができるブラケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ワイヤハーネスを面に沿って配策するワイヤハーネス配策プレート部と、前記ワイヤハーネスを前記ワイヤハーネス配策プレート部に固定するハーネス固定部と、前記ワイヤハーネス配策プレート部に一体に設けられ、前記ワイヤハーネスのアース用電線を加締めて電気的に接続する電線加締め部とを備えたことを特徴とするブラケットである。
【0011】
ブラケットは、車両搭載状態で台座に載置された状態で固定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワイヤハーネスをブラケットの面に沿って配策するため、ハーネス係止部はワイヤハーネスのクリップ部を単に係止できるような構造とすれば良く、形状変化し難い構造にできる。又、アース用電線を加締め接続によってアース接続を行うことができる。以上より、アース接続作業が容易で、しかも、ワイヤハーネスの配策環境が悪い場所でもワイヤハーネスの固定を確実に行うことができる。
【0013】
又、ブラケットは、ワイヤハーネスを配策するワイヤハーネス配策プレート部を有するので、車両に搭載される際には台座に組み付けられるため、車両の振動によってブラケットが破損され難い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示し、ワイヤハーネスをブラケットに組み付けた状態を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、ブラケットの平面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、電線加締め部にアース用電線をセットした状態を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、図1のA矢視方向から見たブラケットの車両設置状態の側面図である。
【図5】従来例のブラケットを用いたワイヤハーネスの固定とアース接続状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1〜図4は本発明の一実施形態を示す。図1及び図2に示すように、ブラケット1は、例えば、自動車の自動変速機ユニット内に配置されている。ブラケット1は、導電金属製であり、厚さ0.8mm程度の板材より形成されている。ブラケット1は、ワイヤハーネスWHを配策するワイヤハーネス配策プレート部2と、ワイヤハーネスWHのアース用電線Wを加締めて電気的に接続する電線加締め部10とを備えている。
【0017】
ワイヤハーネス配策プレート部2は、ワイヤハーネスWHの所望の配策経路に沿う面形状に形成されている。ワイヤハーネス配策プレート部2の表面に沿ってワイヤハーネスWHが配策されている。ワイヤハーネスWHは、所定位置で一部電線が分岐・集合された電線束である。電線束の内の複数のアース用電線Wは、一箇所に集められている。電線束は、分岐・集合箇所以外ではほぼチューブ30内に収容されている。
【0018】
ワイヤハーネス配策プレート部2には、貫通孔若しくは切欠溝より形成されたハーネス固定部3とブラケット固定用のボルト穴4が複数箇所に設けられている。各ハーネス固定部3には、ワイヤハーネスWHのクリップ部20が係止されている。これにより、ワイヤハーネスWHは、所望の配策経路に沿ってブラケット1に固定されている。各ボルト穴4に通したボルト24(図4に示す)は、自動変速機ユニットのユニット本体22のボス部22a(図示せず)に締結されている。これにより、ブラケット1は、図4に示すように、車両搭載状態である自動変速機ユニット内の固定位置では、台座であるユニット本体22に載置された状態で固定されている。
【0019】
電線加締め部10は、ワイヤハーネス配策プレート部2の一側端より外側に一体に形成されている。電線加締め部10は、図3に詳しく示すように、底面部11と、この底面部11の両側より延設された一対の外皮加締め部12と、同じく底面部11の両側より延設された一対の芯線加締め部13とから構成されている。底面部11にワイヤハーネスWHのアース用電線Wを載置し、その後、一対の外皮加締め部12と一対の芯線加締め部13を加締める。電線加締め部10は、ブラケット1の厚みが0.8mm程度であるため、加締め加工ができる。アース用電線Wは、電線加締め部10に加締め接続でブラケット1を介してアース接続される。
【0020】
以上説明したように、ブラケット1は、ワイヤハーネスWHを面に沿って配策するワイヤハーネス配策プレート部2と、ワイヤハーネスWHのクリップ部20をワイヤハーネス配策プレート部2に固定するハーネス固定部3と、ワイヤハーネス配策プレート部2に一体に設けられ、ワイヤハーネスWHのアース用電線Wを加締めて電気的に接続する電線加締め部10とを備えている。従って、ワイヤハーネスWHをブラケット1の面に沿って配策するため、ハーネス固定部3はワイヤハーネスWHのクリップ部20を単に係止できるような構造、つまり、この実施形態のような貫通孔若しくは切欠溝形状とすれば良く、形状変化し難い構造にできる。又、アース用電線Wを加締め接続によってアース接続を行うことができる。以上より、アース接続作業が容易で、しかも、ワイヤハーネスWHの配策環境が悪い場所でもワイヤハーネスWHの固定を確実に行うことができる。
【0021】
ブラケット1は、ワイヤハーネスWHを配策するワイヤハーネス配策プレート部2を有するので、この実施形態のように、車両搭載状態では台座であるユニット本体22に載置された状態で固定される。従って、構造的に強固であり、車両の振動等によって破損することがない。
【0022】
また、従来例のブラケットは、L字形状をしているため、車両の振動時にアース用電線やワイヤハーネスの各固定箇所に応力がかかり、固定箇所が破損する恐れがあるが、本発明のブラケット1は、その面上に沿ってアース用電線WやワイヤハーネスWHを配策可能で、且つ、その面上にアース用電線WやワイヤハーネスWHを押さえ付けるようにして固定するため、車両が振動してもブラケット1が破損し難い。
【0023】
この実施形態では、電線加締め部10は、ブラケットの1箇所にのみ設けられているが、複数箇所に設けても良い。
【0024】
従来例のように、アース用電線Wをブラケット1にボルト締結する場合には、ブラケット1にボルト締結用の大きなスペースを確保する必要があるため、ブラケット1が大型化する。又、ボルト締結箇所には大きなスペースが必要であることからボルト締結箇所を1箇所に集中させるため、アース用電線Wが長寸法化する。更に、各アース用電線W毎に丸形端子(LA端子)が必要である。
【0025】
これに対し、この実施形態では、電線加締め部10は、ボルト締結に較べて小スペースで形成できるため、ブラケット1を小型化できる。又、電線加締め部10は、ブラケット1のプレス加工時に容易に複数箇所に容易に設けることができるため、アース用電線Wを短寸法化できる。更に、電線加締め部10の場合には、丸形端子(LA端子)が不要になる。また更に、ブラケット1のボルト締結箇所を少なくできる。
【符号の説明】
【0026】
1 ブラケット
2 ハーネス配策プレート部
3 ハーネス固定部
10 電線加締め部
22 ユニット本体(台座)
WH ワイヤハーネス
W アース用電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスを面に沿って配策するワイヤハーネス配策プレート部と、
前記ワイヤハーネスを前記ワイヤハーネス配策プレート部に固定するハーネス固定部と、
前記ワイヤハーネス配策プレート部に一体に設けられ、前記ワイヤハーネスのアース用電線を加締めて電気的に接続する電線加締め部とを備えたことを特徴とするブラケット。
【請求項2】
請求項1記載のブラケットであって、
車両搭載状態で台座に載置された状態で固定されていることを特徴とするブラケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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