説明

ブラシの製造装置及び製造方法

【課題】ヘッド部の植毛面に対して斜めに形成された植毛穴に毛束を適切に植設する。
【解決手段】ブラシのヘッド部4に植毛面4aに対して斜めに形成された植毛穴5が設けられ、この植毛穴5に毛束Bを植設するブラシの製造装置であって、ヘッド部4の植毛面4aに対して接離可能な方向に移動操作されると共に、先端部41aから送り出される毛束Bを二つ折りにして、その間に平線6を挟んで植毛穴5に打ち込む植毛ヘッド41と、植毛ヘッド41が毛束Bを送り出す方向と植毛穴5の軸線方向とが一致する角度でヘッド部4を固定する固定具21とを備え、毛束Bを送り出す方向に対して斜めに形成された突合せ面49を植毛ヘッド41の先端部41aに有し、この突合せ面49を固定具21に固定されたヘッド部4の植毛面4aに平行に突き合わせた状態から毛束Bを植毛穴5の軸線と一致した方向に送り出して植毛穴5に植設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシのヘッド部に植毛面に対して斜めに形成された植毛穴が設けられ、この植毛穴に毛束を植設するブラシの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、歯ブラシは、ブラシハンドルのヘッド部に並んで形成された複数の植毛穴に毛束を順次植毛していくことによって作製される。また、植毛穴に毛束を植設する際には、ブラシハンドルのヘッド部に対して接離可能な方向に移動動作される平線植毛機を用いて、この平線植毛機の先端部から送り出される毛束を二つ折りにして、その間に平線と呼ばれる抜止め具を挟んで、植毛穴に打ち込むことによって植毛が行われる(平線植毛法という。)。
【0003】
ところで、歯ブラシの中には、ヘッド部の植毛面に対して毛束が斜めに植設されたものがある(例えば、特許文献1を参照。)。この場合、植毛穴はヘッド部の植毛面に対して垂直ではなく斜めに形成されることになる。しかしながら、従来の平線植毛機では、このような傾斜した植毛穴に対して毛束を適切に植設することが困難となることがあった。
【0004】
すなわち、従来の平線植毛機は、植毛面に対して垂直な植毛穴に毛束を植設することを前提に設計されている。このため、従来の平線植毛機を用いて傾斜した植毛穴に毛束を植設しようとした場合には、毛束を植設することができる植毛穴の軸線の角度は植毛面の垂線に対して±10゜程度が限界である。それ以上の角度で植毛穴が傾斜している場合には、平線植毛機の先端部がヘッド部の植毛面に斜めに突き合わされてしまうため、平線植毛機の先端部と植毛穴の開口周縁部との間に隙間が生じてしまい、平線を植毛穴に安定して打ち込むことが困難となる。この場合、植毛穴に植設された毛束の一部に、飛び毛や、切れ毛、抜け毛などの植毛不良が発生してしまう。
【0005】
したがって、このような傾斜した植毛穴に毛束を確実に植設するための工夫が必要となる。例えば、特許文献1に記載の発明では、ヘッド部の植毛面に対して植毛穴が斜めに形成されたブラシにおいて、上述した平線植毛機の先端部と植毛穴の開口周縁部との間に形成される隙間を小さくするために、この植毛穴の開口周縁部に平線植毛機の先端部と平行に突き合わされる凹部を設けることが行われている。これにより、凹部の底面に突き合わされる平線植毛機の先端部と、植毛穴の開口周縁部との間に形成される隙間を小さくし、上述した植毛不良の発生を抑えることが可能となっている。
【0006】
しかしながら、このような凹部を植毛穴の開口周縁部に設けた場合には、ヘッド部の植毛面の形状が複雑となり、このような複雑な形状に加工するための金型などが必要となる。また、歯ブラシの場合には、このような凹部に除去された歯垢や食べカスなどが堪り易く、不衛生になり易いといった欠点がある。
【0007】
また、毛束の植毛方法としては、上述した平線植毛法以外にも、毛束の下端をヘッド部となる溶融樹脂中に圧入して固定する熱融着法や、毛束の下端を加熱して溶融塊を形成した後に、金型のキャビティ内に溶融樹脂を充填してヘッド部と一体に成形するインモールド法などがある。しかしながら、何れの方法も一般的な平線植毛法に比べて高価な設備が必要となり、生産性も劣るため、製造コストが嵩むことになる。
【特許文献1】実開昭60−189218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、ヘッド部の植毛面に対して斜めに形成された植毛穴に毛束を適切に植設することを可能としたブラシの製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、ブラシのヘッド部に植毛面に対して斜めに形成された植毛穴が設けられ、この植毛穴に毛束を植設するブラシの製造装置であって、ヘッド部の植毛面に対して接離可能な方向に移動操作されると共に、先端部から送り出される毛束を二つ折りにして、その間に平線を挟んで植毛穴に打ち込む平線植毛機と、平線植毛機が毛束を送り出す方向と植毛穴の軸線方向とが一致する角度でブラシのヘッド部を固定する固定具とを備え、平線植毛機が、毛束を送り出す方向に対して斜めに形成された突合せ面を先端部に有し、この突合せ面を固定具に固定されたヘッド部の植毛面に平行に突き合わせた状態から毛束を植毛穴の軸線と一致した方向に送り出して植毛穴に植設することを特徴とするブラシの製造装置である。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、ブラシのヘッド部に植毛面に対して斜めに形成された植毛穴が設けられ、この植毛穴に毛束を植設するブラシの製造方法であって、ヘッド部の植毛面に対して接離可能な方向に平線植毛機を移動操作し、この平線植毛機の先端部から送り出される毛束を二つ折りにして、その間に平線を挟んで植毛穴に打ち込む際に、毛束を送り出す方向に対して斜めに形成された突合せ面を先端部に有する平線植毛機を用いて、この平線植毛機が毛束を送り出す方向と植毛穴の軸線方向とが一致する角度でブラシのヘッド部を固定具に固定した後に、平線植毛機の突合せ面をヘッド部の植毛面に平行に突き合わせた状態から毛束を植毛穴の軸線と一致した方向に送り出して植毛穴に植設することを特徴とするブラシの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明では、ヘッド部の植毛面に対して斜めに形成された植毛穴に平線植毛機を用いて毛束を植設する際に、平線植毛機の先端部に毛束を送り出す方向に対して斜めに形成された突合せ面を設けると共に、平線植毛機が毛束を送り出す方向と植毛穴の軸線方向とが一致する角度でブラシのヘッド部を固定具に固定する。
これにより、平線植毛機の突合せ面をヘッド部の植毛面に平行に突き合わせた状態から毛束を植毛穴の軸線と一致した方向に送り出して植毛穴に植設することができる。この場合、ヘッド部の植毛面に突き合わされる平線植毛機の先端部と、植毛穴の開口周縁部との間に隙間が生じることがないため、ヘッド部の植毛面に対して斜めに形成された植毛穴に毛束を適切に植設することが可能である。
したがって、本発明によれば、植毛不良の発生を防ぎつつ、ヘッド部の植毛面に対して毛束が斜めに植設されたブラシを安価に製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用したブラシの製造装置及び製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面の中には、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を模式的に示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0013】
(歯ブラシ)
先ず、本発明を適用したブラシの製造装置及び製造方法を用いて製造されるブラシの一例として、図1に示す歯ブラシ1について説明する。
【0014】
歯ブラシ1は、図1に示すように、長尺状のハンドル部2と、このハンドル部2の一端から延長されたネック部3と、このネック部3の先端に設けられたヘッド部4とを備え、これらが硬質樹脂材料により一体成形されたブラシハンドル1Aを構成している。
【0015】
ブラシハンドル1Aに使用される硬質樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、飽和ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、プロピオン酸セルロース、ポリウレタン、ポリアミド、ABS(アクロル二トリル・ブタジエン・スチレン)などの熱可塑性樹脂材料を挙げることができるが、これらの材料に必ずしも限定されるものではない。
【0016】
また、ハンドル部2は、使用者が把持する部分であるため、このハンドル部2にエラストマーなどの柔軟な樹脂を部分的あるいは全体に被覆形成することによって、把持性を向上させてもよい。ネック部3は、ハンドル部2とヘッド部4との間を連結する部分であるが、ハンドル部2及びヘッド部4は必ずしも明確に区別される部分ではない。このため、場合によってはハンドル部2とネック部3との区別がないものであってもよい。このように、ハンドル部2及びネック部3の形状や、大きさ、デザイン等は、特に限定されるものではなく、任意に変更して実施することができる。
【0017】
そして、ヘッド部4の一面(植毛面という。)4aには、複数の毛束Bが植設されており、これら複数の毛束Bの一部がハンドル部2側に向かって傾斜している。なお、図1においては、傾斜した毛束Bのみを図示し、以下の説明では、この傾斜した毛束Bを植設する場合について説明するものとする。
【0018】
ヘッド部4の植毛面4aには、毛束Bが植設される複数の植毛穴5が設けられ、これら植毛穴5は、ハンドル部2側に向かって傾斜して設けられている。すなわち、植毛穴5は、植毛面4aに対して所定の角度で斜めに形成されており、さらに、この植毛穴5の軸線が植毛面4aの垂線に対してなす角度(植毛穴5の傾斜角という。)は、上述した従来の平線植毛機では毛束Bを植設することが困難な10゜以上となっている。
【0019】
毛束Bは、このような傾斜した植毛穴5に対して、複数本の刷毛(フィラメント)を束ねて二つ折りにして、その間に平線6と呼ばれる金属製の抜止め具を挟んで打ち込むことによって植設されている。
【0020】
刷毛は、その材質について特に限定されないものの、例えば、ポリアミド(例:6−12ナイロン、6−10ナイロン)、ポリエステル(例:ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート)、ポリオレフィン(例:ポリプロピレン)、エラストマー(例:オレフィン系、スチレン系)などの合成樹脂材料を挙げることができる。また、これらの樹脂材料を複数組み合わせて用いてもよく、例えば芯鞘構造などのように、芯部と鞘部で異なる樹脂材料を用いることもできる。
刷毛の縦断面形状は、通常は円形であるが、そのような形状に限定されるものではなく、例えば、楕円形、三角形、四角形、六角形、星形、三つ葉のクローバー形、四つ葉のクローバー形など歯ブラシ1の目的用途に応じて任意の形状とすることができる。
また、刷毛の毛先形状については、毛先を丸めたもの、毛先に向かうに従って徐々に外径が細くなるテーパー状のもの、さらに、ヘラ状、球状、先割れ状など歯ブラシ1の目的用途に応じて任意の形状とすることができる。
刷毛の毛丈は、ヘッド部4の植毛面4aから、大人用で8mm〜13mm、子供用で6mm〜9mmとすることが好ましい。刷毛の太さ(最大径)は、口腔内の使用性や使用感の点から、0.12mm〜0.26mmであることが好ましい。また、使用感や、刷掃感、清掃効果、耐久性など考慮して、太さの異なる複数本の刷毛を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0021】
ヘッド部4の植毛面4aには、通常はヘッド部4の長さ方向や幅方向において、円形の植毛穴5が格子状や千鳥状に所定の間隔で複数並んで配置されるが、植毛穴5の形状や、配置、間隔、それらの組み合わせ等については、特に限定されるものではなく、任意に設定することができる。
【0022】
(ブラシの製造装置及び製造方法)
次に、本発明を適用したブラシの製造装置及び製造方法を用いて、上記歯ブラシ1を製造する場合について説明する。
【0023】
上記歯ブラシ1は、例えば図2に示す製造装置を用いて、ヘッド部4の植毛面4aに並んで形成された複数の植毛穴5に毛束Bを順次植毛していくことによって作製される。
【0024】
具体的に、この歯ブラシ1の製造装置は、図2に示すように、ブラシハンドル1Aを保持するブラシ保持機構20と、このブラシ保持機構20に保持されたブラシハンドル1Aのヘッド部2の植毛穴5に毛束Bを植設する平線植毛機40とを備えている。
【0025】
ブラシ保持機構20は、ブラシハンドル1Aのヘッド部4を固定する固定具21と、ブラシハンドル1Aのネック部3を把持するチャック機構22とを有し、ヘッド部4の植毛穴5に平線植毛機40が毛束Bを植設している間、固定具21に固定されたヘッド部4の位置がずれないように、チャック機構22がネック部3を把持する構造となっている。
【0026】
ここで、固定具21は、平線植毛機40の先端部に対向して配置されており、その対向面には、ヘッド部4を位置決めするための位置決め凹部23が設けられている。この位置決め凹部23は、図3に示すように、ヘッド部4の植毛面4aとは反対側の面が当接される第1の面23aと、チャック機構22とは反対側に位置してヘッド部4の先端部が当接される第2の面23bとを有している。
【0027】
このうち、第1の面23aは、平線植毛機40が毛束Bを送り出す方向Xと植毛穴5の軸線方向とが一致する角度でヘッド部4を固定するために、平線植毛機40が毛束Bを送り出す方向と直交する線に対してヘッド部4の植毛面4aが植毛穴5の傾斜角θと同じ角度θ(θ=θ)で斜めに配置されるように、その傾きが調整されている。一方、第2の面23bは、植毛面4aに対してほぼ直角であり、ヘッド部4の先端部が当接されることによって、ヘッド部4の移動を規制している。
【0028】
したがって、この固定具21に固定されたヘッド部4は、平線植毛機40が毛束Bを送り出す方向Xと植毛穴5の軸線方向とが一致することになる。一方、植毛面4aは、平線植毛機40が毛束Bを送り出す方向Xと直交する線に対して植毛穴5の傾斜角θと同じ角度θ(θ=θ)で傾斜することになる。
【0029】
また、固定具21は、図示を省略する移動テーブルに取り付けられており、この移動テーブルが固定具21を平線植毛機40が毛束Bを送り出す方向とは直交する方向に移動操作する。これにより、平線植毛機40に対するヘッド部4の位置を替えながら、複数の植毛穴5のうち植毛対象となる任意の植毛穴5に毛束Bを植設することが可能となっている。なお、本発明では、上述した固定具21を移動操作する構成に限らず、毛束Bを送り出す方向とは直交する方向に平線植毛機40を移動操作することによって、固定具21に固定されたヘッド部4に対する平線植毛機40の位置を変更する構成としてもよい。
【0030】
平線植毛機40は、ヘッド部4の植毛面4aに対して接離可能な方向Xに移動操作されると共に、先端部41aから送り出される毛束Bを二つ折りにして、その間に平線6を挟んで植毛穴5に打ち込む植毛ヘッド41と、植毛ヘッド41に毛束Bを供給する毛束供給機構42と、植毛ヘッド41に平線6を供給する平線供給機構43とを備えている。
【0031】
植毛ヘッド41は、ヘッド部4の植毛面4aに対して接離可能な方向Xにスライド可能に支持された長尺部材からなり、その先端部41aが漸次細くなる形状を有している。また、植毛ヘッド41の上面部には、線状の植毛針44をスライド可能に支持するガイド溝45が軸線方向に亘って設けられている。さらに、植毛ヘッド41の中途部には、側面を貫通するスリット46が設けられている。
【0032】
植毛ヘッド41の先端部41aには、図3に示すように、毛束供給機構42から供給された毛束Bを案内する毛束ガイド溝47と、平線供給機構43から供給される平線を案内する平線ガイド溝48とが設けられている。これらガイド溝47,48は、上述した植毛針44がスライドされるガイド溝45の延長線上に位置している。
【0033】
また、植毛ヘッド41の先端部41aには、毛束Bを送り出す方向Xに対して斜めに形成された突合せ面49が設けられている。この突合せ面49は、固定具21に固定されたヘッド部4の植毛面4aに平行に突き合わされるように、毛束Bを送り出す方向Xと直交する線に対して植毛穴5の傾斜角θと同じ角度θ(θ=θ)で傾斜している。
【0034】
毛束供給機構42は、図2中に示すY方向に揺動しながら植毛ヘッド41の一方の側面からスリット46内に進入可能とされたピッカー50を有している。このピッカー50の外周縁部には、毛皿(図示せず。)に乗せて供給される毛束群B’から所定本数の毛束Bを掻き取るための掻き取り溝51が形成されている。また、この掻き取り溝51によって掻き取られた毛束Bが掻き取り溝51から脱落しないように、毛皿と植毛ヘッド41との間には、ピッカー50の外周縁部に沿ったガイド部材52が設けられている。そして、毛束供給機構42は、植毛ヘッド41の一方の側面からスリット46内にピッカー50を進入させて、掻き取り溝51によって掻き取られた毛束Bを毛束ガイド溝47に供給する。
【0035】
平線供給機構43は、リール53に巻かれた帯状の平線7’を植毛ヘッド41の他方の側面から供給すると共に、供給された平線7’の先端をカッター(図示せず。)によって所定の長さに切断し、この切断された平線7を平線ガイド溝48に供給する。
【0036】
この平線植毛機40では、植毛針44がガイド溝45内を植毛ヘッド41の先端部41aに向かって前進することによって、この植毛針44が平線ガイド溝48に供給された平線7を押圧しながら、毛束ガイド溝47に供給された毛束Bと共に、植毛ヘッド41の先端部41aへと送り出す。そして、この植毛ヘッド41の先端部41aから送り出される毛束Bは、平線6により二つ折りされて、その間に挟み込まれた平線6を植毛穴5に打ち込むことによって植毛穴5に植設される。
【0037】
以上のような構造を有するブラシの製造装置では、図2及び図3に示すように、ブラシハンドル1Aのヘッド部4を固定具21に固定した後に、平線植毛機40が植毛ヘッド41をヘッド部4に接近する方向に前進させる。そして、平線植毛機40は、植毛ヘッド41の突合せ面49をヘッド部4の植毛面4aに平行に突き合わせた状態から、毛束Bを植毛穴5の軸線と一致した方向に送り出して所望の植毛穴5に植設する。
【0038】
植毛後は、植毛ヘッド41がヘッド部4から離間する方向に後退する。これにより、植毛ヘッド41の先端部41aから毛束Bが抜き取られて、再び植毛前の位置へと戻ることになる。そして、このブラシの製造装置では、以上のような平線植毛機40による植毛動作をヘッド部4の位置を替えながら行うことによって、ヘッド部4に設けられた複数の植毛穴5に対して毛束Bを順次植毛していくことが可能となっている。
【0039】
上述したように、本発明を適用したブラシの製造装置では、植毛ヘッド41の先端部41aに毛束Bを送り出す方向に対して斜めに形成された突合せ面49を設けると共に、平線植毛機40が毛束Bを送り出す方向と植毛穴5の軸線方向とが一致する角度でブラシハンドル1Aのヘッド部4を固定具21に固定する。
【0040】
これにより、植毛ヘッド41の突合せ面49をヘッド部4の植毛面4aに平行に突き合わせた状態から毛束Bを植毛穴5の軸線と一致した方向に送り出して植毛穴5に植設することができる。この場合、ヘッド部4の植毛面4aに突き合わされる植毛ヘッド41の先端部41aと、植毛穴5の開口周縁部との間に隙間が生じることがないため、ヘッド部4の植毛面4aに対して斜めに形成された植毛穴5に毛束Bを適切に植設することが可能である。
【0041】
したがって、本発明によれば、ヘッド部4の植毛面4aに対して斜めに形成された植毛穴5に平線6を用いて毛束Bを植設する場合でも、植毛不良の発生を防ぐことが可能である。また、このようなヘッド部4の植毛面4aに対して毛束Bが斜めに植設された歯ブラシ1を安価に製造することが可能である。
【0042】
なお、本発明は、上述した歯ブラシ1を製造する場合に限らず、ヘッド部の植毛面に対して植毛穴が斜めに形成されたブラシの製造する場合において幅広く適用することが可能である。また、従来の平線植毛機を用いて傾斜した植毛穴に毛束を植設しようとした場合には、毛束を植設することができる植毛穴の軸線の角度は植毛面の垂線に対して±10゜程度が限界であるが、本発明を用いた場合には、それ以上の角度であっても毛束を植毛穴に適切に植設することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、毛束が斜めに植設されたブラシの一例を示す側面図である。
【図2】図2は、本発明を適用したブラシの製造装置の要部を示す斜視図である。
【図3】図3は、図2に示す平線植毛機が固定具に固定されたヘッド部の植毛穴に毛束を植設する状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1…歯ブラシ(ブラシ) 1A…ブラシハンドル 2…ハンドル部 3…ネック部 4…ヘッド部 4a…植毛面 5…植毛穴 6…平線 B…毛束 20…ブラシ保持機構 21…固定具 22…チャック機構 23…位置決め凹部 40…平線植毛機 41…植毛ヘッド 41a…先端部 42…毛束供給機構 43…平線供給機構 44…植毛針 49…突合せ面 50…ピッカー 52…ガイド部材 53…リール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシのヘッド部に植毛面に対して斜めに形成された植毛穴が設けられ、この植毛穴に毛束を植設するブラシの製造装置であって、
前記ヘッド部の植毛面に対して接離可能な方向に移動操作されると共に、先端部から送り出される毛束を二つ折りにして、その間に平線を挟んで前記植毛穴に打ち込む平線植毛機と、
前記平線植毛機が前記毛束を送り出す方向と前記植毛穴の軸線方向とが一致する角度で前記ブラシのヘッド部を固定する固定具とを備え、
前記平線植毛機は、前記毛束を送り出す方向に対して斜めに形成された突合せ面を先端部に有し、この突合せ面を前記固定具に固定されたヘッド部の植毛面に平行に突き合わせた状態から前記毛束を前記植毛穴の軸線と一致した方向に送り出して前記植毛穴に植設することを特徴とするブラシの製造装置。
【請求項2】
ブラシのヘッド部に植毛面に対して斜めに形成された植毛穴が設けられ、この植毛穴に毛束を植設するブラシの製造方法であって、
前記ヘッド部の植毛面に対して接離可能な方向に平線植毛機を移動操作し、この平線植毛機の先端部から送り出される毛束を二つ折りにして、その間に平線を挟んで前記植毛穴に打ち込む際に、
前記毛束を送り出す方向に対して斜めに形成された突合せ面を先端部に有する平線植毛機を用いて、この平線植毛機が前記毛束を送り出す方向と前記植毛穴の軸線方向とが一致する角度で前記ブラシのヘッド部を固定具に固定した後に、前記平線植毛機の突合せ面を前記ヘッド部の植毛面に平行に突き合わせた状態から前記毛束を前記植毛穴の軸線と一致した方向に送り出して前記植毛穴に植設することを特徴とするブラシの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−72293(P2009−72293A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242613(P2007−242613)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】