説明

ブラディオン遺伝子発現抑制キメラマウス

本発明は、発現抑制させた内在性ブラディオン遺伝子を有するキメラマウス及び該キメラマウスから採取されるマウス胚性幹細胞由来の細胞に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、遺伝子改変により発現抑制させた内在性ブラディオン遺伝子を有するキメラマウスに関する。
【背景技術】
21世紀における分子医療革命は、ポストゲノム計画として、疾病の遺伝子・物質基盤を捉えて、個人特性に合わせた制御モニターシステムを構築していくことを目指している。具体的には、“Quality of Life”の概念に基づいて、遺伝子病・癌・神経退行性疾患などの社会生活を脅かす疾患群のリスクグループの検出(診断及び遺伝子モニタリング)、さらにはリスク遺伝子の発見、並びに治療(例えば薬剤、遺伝子治療)に対する感受性検索など、個人の遺伝タイプに合った医療対応体制を確立するというものである。ここで、癌のみならず多くの疾病は、multi−gene effectによるものであり、かつ、環境要因が大きく左右することから、何をコントロールしたら疾病にならないということは断言できない。しかしながら、疾病になってしまったものをコントロールする、いわゆる制御技術開発を通じて疾病制御対策をこうじることは可能なのである。
この概念に基づき、現在特に細胞の癌化・不死化制御技術開発が、脳神経系の分裂抑制物質解析等を通じて研究されることも多い。このような研究を通じて、様々な細胞増殖・分裂・癌化に関わる分子基盤が明らかにされてきた。そのような研究の結果として、既に、産業技術総合研究所(旧工業技術院)から、脳神経細胞の発生・分化後の長期生存に関わる細胞寿命制御因子であるヒトブラディオンタンパク質に関する発明の特許出願がなされている(特開2000−139470号公報、特開2001−161384号公報、米国特許第09/440,936号)。これらの研究から、ブラディオンタンパク質は、成人脳神経系細胞、あるいは大腸癌・前立腺癌細胞、皮膚癌で特異的に発現することが判明しており、したがってこのブラディオンは、細胞変異等の早期診断のターゲットとしてはもちろんのこと、特異的阻害剤及び遺伝子治療のターゲットとして必要な諸条件を満たすことが明らかになった(上記特許群;Tanaka,M.ら,Biochem.Biophys.Res.Commun.(2001)286,547−553を参照のこと)。
【発明の開示】
ターゲットとなりうる情報伝達物質を発見しても、それを利用して本来の目的である疾病制御もしくは遺伝子機能制御技術の開発へと発展させるためには、培養細胞レベルの解析だけでは不十分であり、さらに生物個体モデルでの解析を行う必要がある。そのためには、適切な生物個体モデル動物を確立することが必要になってくる。この目的に対しては、現在のところ、特定の遺伝子に対する各種ノックアウトマウスを含む遺伝子改変動物が作製され、用いられている。
しかしながら、特定の遺伝子を発生時から発現抑制させる場合、発生過程においてその影響が形態形成及び生体機能にどのように及ぶがという点については、実質的に予測することは困難であるのが現状である。
本発明は、生物個体モデル動物及び遺伝育種用動物として有用な、新規ノックアウトキメラマウスを提供することを目的とする。
そこで、本発明者らはまず、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、遺伝子工学的手法により発現抑制させた内在性ブラディオン遺伝子を少なくとも1つ有するマウス胚性幹細胞を作製することに成功した。この胚性幹細胞を導入することによりキメラマウスを作製したところ、該キメラマウスは脳神経系全般の発育不全、並びに全身の発育不良、頭蓋骨形成不良、及び視力障害などの形態異常を示すことが判明し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)発現が抑制されている内在性ブラディオン遺伝子を含むゲノムDNAを有するマウス胚性幹細胞が導入されたマウス胚を発生させたキメラマウス。
そのような発現が抑制されている内在性ブラディオン遺伝子は、生物学的活性が低下しているブラディオンタンパク質、又は生物学的活性を喪失したブラディオンタンパク質をコードするように遺伝子改変されているものであり得る。さらに、発現が抑制されている内在性ブラディオン遺伝子は、そのコード領域全体を欠失するように遺伝子改変されているものであり得る。
(2)マウス胚性幹細胞がPJ1−5株由来であり、マウス胚がC57BL/6系マウス由来である、上記(1)のキメラマウス。
(3)マウス胚が8細胞期胚、桑実胚及び胚盤胞からなる群より選択されるものである、上記(1)又は(2)のキメラマウス。
(4)形態異常を示す、上記(1)〜(3)のキメラマウス。
この形態異常としては、頭蓋骨形成不良、視力障害、及び全身の発育不良が挙げられる。
(5)キメラ率が90%以上98%未満である、上記(1)〜(4)のキメラマウス。
(6)上記(1)〜(5)のキメラマウスから採取される、マウス胚性幹細胞由来の細胞。
以下、本発明を詳細に説明する。
ブラディオン遺伝子は脳神経細胞の長期生存に関わる遺伝子であることが報告されている。さらに、例えば該遺伝子はヒトでは成人脳等に特異的に発現が認められ、ヒト胎児では発現が認められないことから、ブラディオン遺伝子の発生過程における機能は未知であった。この点に関して、本発明で初めて、内在性ブラディオン遺伝子を発現抑制させたキメラマウスが上記のような脳神経系の発育不全及び形態異常を示すことが明らかになったものである。この知見に基づき、本発明のキメラマウスは、上記のような脳神経系の発育不全及び形態異常が生ずる分子的機構を解明し、さらにはそのような脳神経系の発育不全及び形態異常と関連する障害及び疾患の治療又は制御方法を開発する上で、好適な生物個体モデル動物として提供され得ることが判明した。
したがって本発明は、発生時から発現抑制させた内在性ブラディオン遺伝子を少なくとも1つ有するマウス胚性幹細胞を導入し作製したキメラマウスが、生物個体モデル動物及び遺伝育種用動物として有用であることを見出し、完成されたものである。
本発明は、少なくとも1つの内在性ブラディオン遺伝子を発現抑制させたゲノムDNAを有するマウス胚性幹細胞を作製し、その胚性幹細胞をマウス初期胚に導入して発生させることにより作製した、ブラディオン遺伝子発現抑制キメラマウスに関するものである。本発明のキメラマウスは、発生時よりブラディオン遺伝子を発現抑制させることにより、脳神経系の発育不全及び各種形態異常を生じていることを特徴とする。
1.ブラディオン遺伝子
ブラディオンは、ヒト成人の脳などに特異的に存在することが知られている脳神経細胞の長期生存に関わるタンパク質である。このタンパク質は、細胞分裂及び増殖制御に関わる物質(セプチンファミリー)と類似した構造を有するものであり、また同時に細胞寿命の決定因子(プログラム細胞死を引き起こす)の構造を有するものでもある。既に予備実験などにより、その機能解明が進んでおり、ブラディオンは、癌細胞に特異的発現を示すセプチンファミリーとよばれる細胞分裂制御因子であること、細胞分裂の最終の時点でMAPキナーゼシグナル伝達カスケード、細胞増殖装置のモーターポンプとしての役割を果たすことも示されている。ヒトにおいて、ブラディオンタンパク質は、同じブラディオン遺伝子によってコードされる2種類の転写翻訳産物、すなわちα型とβ型とが存在することが知られている。またブラディオンタンパク質のヒトにおける組織特異的発現は、大腸癌組織及び皮膚癌組織においても認められている(Tanakaら、Biochemic al and Biophysical Research Communications 286,547−553(2001))。さらに、マウスにおいては、ブラディオンタンパク質β型の相同体が存在することが報告されている(特開2000−139470号公報)。
本発明は、このような知見から、発現抑制させた内在性ブラディオン遺伝子を有するキメラマウスを作製することができれば、脳神経細胞に関連する障害・疾患、及び細胞の癌化に関するモデル動物として有用であろうという着想に基づいて完成されたものである。
発現を抑制させる対象となる内在性ブラディオン遺伝子は、マウスゲノムDNA中に内在するブラディオン遺伝子の対立遺伝子の片方または両方である。本明細書において、「発現抑制」又は「発現を抑制」させた遺伝子とは、該遺伝子にコードされるタンパク質の生物学的活性が天然形態よりも低下するように遺伝的に改変された遺伝子を意味する。さらに、「発現抑制」又は「発現を抑制」させた遺伝子とは、該遺伝子にコードされるタンパク質が生物学的活性を喪失するように遺伝的に改変された遺伝子をも意味する。さらにまた、「発現抑制」又は「発現を抑制」させた遺伝子とは、該遺伝子にコードされるタンパク質が産生されないように遺伝的に改変された遺伝子をも意味する。内在性ブラディオン遺伝子を発現抑制させたゲノムDNAとは、構造的には、該遺伝子の全体を欠失しているゲノムDNAでもよいし、該遺伝子の一部を欠失しているゲノムDNAでもよい。あるいは、該遺伝子の内部に外来性のDNA断片が挿入されているゲノムDNAでもよい。
本発明では、以下の工程にしたがって、ブラディオン遺伝子を発現抑制させたゲノムDNAを有するマウス胚性幹細胞を作製することができる。
特定の遺伝子を発現抑制させるためには、公知のジーンターゲティング法が広く用いられている。公知のジーンターゲティング法は、ターゲティングベクターを導入して相同組換えを起こさせることにより、所望の遺伝子に特定の変異を導入する方法である。このようなジーンターゲティング法の詳細については、すでに様々な文献に記載されており、以下の2〜5の工程はそれらの文献に従って行うことができる(相澤慎一:ジーンターゲティング−ES細胞を用いた変異マウスの作製,バイオマニュアルシリーズ8,羊土社(1995);Hogan,B.,Beddington,R.,Constantini,F.,Lacy,E.:Manipulating the Mouse Embryo,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1994);Joyner,A.L.:Gene Targeting,A Practical Approach Series,IRL Press(1993)等を参照されたい)。
2.ターゲティングベクターの作製
本発明において、マウス胚性幹細胞のゲノムDNA中のブラディオン遺伝子を発現抑制させるために用いるターゲティングベクターとしては、例えば以下の通りにして構築することができる。
まず、マウスブラディオン遺伝子において変異を導入する領域に対し5’側に位置する領域、及び3’側に位置する領域を相同領域として選択し、その領域に相当するDNA断片を調製する。そのために、例えば、マウスゲノムライブラリーからのマウスブラディオンcDNAによるスクリーニングによって、マウスブラディオン遺伝子を含むプラスミドクローンを取得する。次に、プラスミドクローンの制限酵素地図を作製し、サブクローニングを行い、該遺伝子の構造を決定する。そして、所望の相同組換え体を得る上で好適に相同組換えを起こさせ得る領域を選択することにより、上記相同領域に相同なDNA断片を設計することができる。この際、組換え頻度を向上させるためにはマウスゲノムライブラリーと使用するES細胞とが同じ系統に由来するものであることが好ましいが、別の系統に由来するものであってもよい。特にブラディオン遺伝子全体を欠失させる場合には、ブラディオン遺伝子よりも上流(5’側)及び下流(3’側)の領域を相同領域として選択することが好ましい。ブラディオン遺伝子の一部のエキソンを含む領域を欠失させる場合には、ブラディオン遺伝子中の目的領域の両側に位置するエキソンを相同領域として選択することが好ましい。ブラディオン遺伝子中に外来遺伝子を挿入する場合には、エキソン中に存在する挿入部位の両側の領域を相同領域として選択することが好ましい。これらの領域に相当するDNA断片は、前記マウスブラディオン遺伝子を含むプラスミドクローンから、目的の領域を制限酵素によりそれぞれ切り出したDNA断片として調製することができる。あるいはこれらのDNA断片は、目的とする領域をPCR法により増幅した増幅断片であってもよいし、化学合成により合成したものであってもよい。
次いで、これらのDNA断片をセレクション用マーカー遺伝子と連結させる。限定するものではないが、通常は、上記5’側DNA断片、ポジティブセレクション用マーカー遺伝子、上記3’側DNA断片、ネガティブセレクション用マーカー遺伝子の順に連結させる。ネガティブセレクション用マーカー遺伝子は、場合により使用しなくてもよく、また場合により上記以外のDNA断片又は他の化合物等を付加してもよい。変異を導入する部位に組み込まれるポジティブセレクション用マーカー遺伝子としては、ネオマイシン耐性遺伝子(Neo遺伝子)、ピューロマイシン耐性遺伝子、又はハイグロマイシンB耐性遺伝子が挙げられるが、これらに限定されるわけではなく、ポジティブセレクション用マーカーとして好適に用いられるならばどのようなものを用いてもよい。ネオマイシン耐性遺伝子は、プラスミドクローンとして市販されている(Stratagene社、New England BioLabs社等)。このようなターゲティングベクターを用いることにより変異導入部位に組み込まれるネオマイシン耐性遺伝子等のポジティブセレクション用マーカー遺伝子は、その前後にloxP配列を挿入しておけば、ポジティブセレクション後に制限酵素Creを用いてゲノムDNA中から除去することも可能である。また、胚性幹細胞に導入する際にベクターを直鎖状化するために、ユニークな制限酵素部位を相同領域の外側に組み込んでおくことが好ましい。また、相同組換え体を相同領域の外側のプローブを用いてサザンハイブリダイゼーションによりスクリーニングする場合には、組換え遺伝子検出用の制限酵素切断部位を組み込んでおくことが好ましい。これらのDNA断片の連結は、当業者に公知の通常の方法に従って行うことができる。またこれらのDNA断片の連結は、例えばプラスミドベクター(例えばStratagene社のpBluescript II SK+等)又はファージベクター上等で行うと都合がよい。
上記のようにして設計・構築されたターゲティングベクターは、通常の分子生物学的手法により、例えば大腸菌の形質転換及び培養によるクローニングによって、増幅して使用することができる(例えば、J.Sambrookら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)を参照されたい)。
3.内在性ブラディオン遺伝子を発現抑制させるマウス胚性幹細胞とそれを導入するマウス胚の選択
キメラマウスを作製する上では、胚性幹細胞株とそれを導入する胚(特に初期胚)のマウス系統との好適な組み合わせを選択する必要がある。この組み合わせによってキメラ形成率(キメラ率)が変化することから、好適なキメラ率を達成できる組み合わせを選択するべきである。また作製したキメラマウスを、その後、野生型マウス等と交配させてヘテロ接合体、ホモ接合体を作製するために用いることを意図する場合には、導入した胚性幹細胞がキメラマウスの生殖細胞系列に寄与するものであることが必要である。このため、本発明で用いる胚性幹細胞と初期胚のマウス系統との組み合わせは、相同組換え前の胚性幹細胞を初期胚に導入した場合、胚性幹細胞が生殖細胞系列に寄与することが確認されるものであることが好ましい。また、作製したキメラマウスの胚性幹細胞の寄与率(キメラ率)を容易に確認するためには、適切な遺伝的マーカーを利用できるような胚性幹細胞と初期胚のマウス系統との組み合わせを用いるのがよい。このような遺伝的マーカーとしては、体毛色が好適である。体毛色を用いれば、マウスの外観から、容易にキメラ率を判定することができる。
本発明のキメラマウス作製に用いることができる、胚性幹細胞株とそれを導入する初期胚のマウス系統との好適な組み合わせとしては、例えば、129系胚性幹細胞株(例えばPJ1−5株)とC57BL/6J系マウス初期胚、D3系胚性幹細胞株とC57BL/6系マウス初期胚等が挙げられる。キメラマウス作製において好適に使用可能な胚性幹細胞および初期胚のマウス系統については、例えば「Gene Targeting」(A.L.Joyner著、野田哲夫訳、メディカル・サイエンス・インターナショナル社;特に101頁表1および103頁)や「実験医学別冊 バイオマニュアルシリーズ8 ジーンターゲッティング」(相沢慎一著、羊土社(1995);特に第2章IV ES細胞の培養 31頁の表1、および33頁表2A)等の一般的な実験マニュアル書にも記載されている。但し、目的とするキメラマウスを作製可能であれば、これらの組み合わせに限定されるものではない。
4.発現抑制させた内在性ブラディオン遺伝子を有するマウス胚性幹細胞の作製
マウス胚性幹細胞中に、「2.ターゲティングベクターの作製」で調製したターゲティングベクターを導入する方法としては、リン酸カルシウムトランスフェクション法、DEAEデキストラン法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、ウイルスベクターを用いる方法等、当業者に公知の任意の方法を用いることができる。
ターゲティングベクターを導入する方法としては、このうちエレクトロポレーション法が広く用いられており、その方法は以下のようにして行うことができる。
まずマウス胚性幹細胞としては、飼育細胞(フィーダー細胞)上で培養し、その後トリプシン処理により培養皿から剥離させた細胞浮遊液を用いる。細胞浮遊液は所定の濃度に調製しておくことが好ましい。上記の通り調製したターゲティングベクターは、相同領域の外側に組み込むように設定したユニークな制限酵素切断部位を利用して直鎖状化する。これを上記の細胞浮遊液と混合し、エレクトロポレーターによりパルスを加える。パルス印加後の胚性幹細胞は、培養液中で36〜48時間程度培養する。その後該培養液にポジティブセレクション用添加薬剤を添加して、ポジティブセレクションを行う。ターゲティングベクター構築に用いたポジティブセレクションマーカー用遺伝子がネオマイシン耐性遺伝子である場合には、ポジティブセレクション用添加薬剤としてG418を用いることができる。
上記のような添加薬剤を含有した培養液を毎日交換しながら胚性幹細胞の培養を継続し、7〜9日経過後、出現した薬剤耐性コロニーを採取する。
得られた薬剤耐性コロニーは、相同組換え体の候補と考えられる。そこでそれらのコロニーから抽出されるゲノムDNAについて、サザンハイブリダイゼーション又はPCRにより所望の相同組換えを起こしたゲノムDNAを有する胚性幹細胞株をスクリーニングする。
前記スクリーニングには、ターゲティングベクターの構築に用いた相同領域の外側に設定したプローブを利用したサザンハイブリダイゼーションを用いることができる。また前記スクリーニングには、ターゲティングベクターの構築に用いた相同領域の外側に設定したプライマーと、neo遺伝子内に設定したプライマーとを利用するPCRを用いることもできる。
5.発現抑制されたブラディオン遺伝子を有するマウス胚性幹細胞を導入したキメラマウスの作製
次に、相同組換えにより所望の遺伝子変異を導入したマウス胚性幹細胞を、マウス初期胚に導入して、キメラマウスを作製する。このようなキメラマウスの作製方法としては、マウス初期胚として胚盤胞を利用してこれに胚性幹細胞を注入する方法(胚盤胞注入法)、マウス初期胚として8細胞期胚又は桑実胚を利用しこれと胚性幹細胞塊を接着させる方法(アグリゲーション法;Andra,Nら:Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:8424−8428,1993、Stephan.A.W.ら:Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:4582−4585等を参照のこと)等の、当業者に公知の方法を用いることができる。
胚性幹細胞を導入したマウス初期胚は、偽妊娠マウスの子宮又は卵管内に胚移植し、キメラマウス個体へと発生させ、産出させる。この工程は当業者には公知であり、様々な文献及び実験プロトコールにしたがって実施することができる(Hogan,B.ら:「マウス胚の操作(Manipulating the Mouse Embryo)」Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988、村松正實ら編:新遺伝子工学ハンドブック 第3版,羊土社(1999)、等を参照されたい)。
6.発現抑制されたブラディオン遺伝子を有するキメラマウスの特徴
上記のようにして作製され産出された本発明のキメラマウスは、その体細胞及び生殖細胞が、オリジナル系統由来のものと導入した胚性幹細胞由来のものとのキメラとなっている。このキメリズムの遺伝的マーカーとして、例えば、容易に観察することができる体毛色を用いることができる。この場合、キメラマウスを、初期胚の由来するオリジナル系統と異なる色の体毛を有するマウス系統に由来する胚性幹細胞を導入して作製すれば、その胚性幹細胞由来系統の毛色を示す体毛の割合から、胚性幹細胞の組織への寄与率(キメラ率)を算出することができる。このキメラ率は、例えば、外観から測定したそれぞれの体毛の面積に基づいて、胚性幹細胞の由来するマウス系統の体毛色の面積の割合を算出すればよい。
また、本発明のキメラマウスは、固有の性質として、脳神経系全般の発育不良を示す。さらに本発明のキメラマウスは、外観上、全身の発育不良、頭蓋骨形成不良及び/又は視力障害という顕著な形態異常を示す。本明細書において、全身の発育不良とは、正常マウスの同週齢の個体と比較して、体重及び体長が大幅に劣っている状態を意味する。また頭蓋骨形成不良とは、正常マウスの面長な頭蓋骨と比較して丸顔(ハムスター様)となる頭蓋骨を有しており、かつ正常マウスと比較すると眼球が顔面の大きさに比して大きいことを意味する。さらに視力障害とは、視神経の発育不良に起因するものであり、外観上はその視点が合っていない状態を意味する。
上記のように、脳神経系全般の発育不良、及び外観上顕著な形態異常を示すことから、本発明のキメラマウスは、先天的な脳神経系の発育不良と関連する障害及び疾患、並びに全身の発育不良、頭蓋骨形成不良、及び視神経系の発育不良に基づく視力障害と関連する障害及び疾患に関して、好適な生物個体モデル動物として用いることができる。さらに本発明のキメラマウスは、ブラディオンタンパク質が関与することが知られている、後天的な脳神経系の退行状態と関連する障害及び疾患、また細胞の癌化と関連する障害及び疾患、並びに細胞死と関連する障害及び疾患に関して、好適な生物個体モデル動物として用いることができる。これらの疾患及び障害に関する生物個体モデル動物としての本発明のキメラマウスは、ブラディオン遺伝子の詳細な機能の解明に有用であるだけでなく、脳神経系の形成・維持機構、細胞寿命制御機能の解明にも有用であり、さらには前記障害及び疾患の治療又は制御法の開発の上でも有用である。
また、本発明のキメラマウスが視神経の発育不良に基づく視力障害を示すことは、本発明のキメラマウスの大きな特徴である。本発明のキメラマウスにおいて、脳神経細胞で部位特異的・細胞特異的に働くことが報告されているブラディオン遺伝子を発現抑制させることにより、中枢神経系に先駆けて発生・分化が開始される視神経までが発生異常を引き起こすことが初めて明らかにされた。このことは、これまで解明されていない視神経発生異常の分子基盤を明らかにするための糸口となるものであり、さらに、発生段階における中枢神経系の分化以前の形態形成、及びそれに関連する障害及び疾患に関しても、本発明のキメラマウスを生物個体モデルとして用いることができる可能性を示すものである。
さらに本発明のキメラマウスは、内在性ブラディオン遺伝子を発現抑制させた生殖細胞を有するため、交配により、ヘテロ接合体及びホモ接合体の作製に用いることができる。また、他の遺伝子変異を有するマウスとの交配により、遺伝子同士の相互作用を解析することも可能である。その際、本発明のキメラマウスが顕著な形態異常を示すという特徴を、遺伝子の機能及び相互作用の変化を容易に観察できるマーカーとして、有利に利用することができる。したがって、本発明のキメラマウスは、遺伝育種用動物として有用である。
なお、本発明のキメラマウスから採取した、内在性ブラディオン遺伝子を発現抑制させた細胞を含む器官、組織、細胞集団も、本発明に含まれるものとする。これらの生体材料は、発育不全等の形態異常を示しているものであり得る。これらの生体材料も、上述したような遺伝子機能の解析、並びに障害及び疾患の治療・制御方法の開発において用いることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、ターゲティングベクター構築に用いたサブクローンの制限酵素切断地図、並びに該サブクローンに含まれるマウスブラディオン遺伝子断片、マウスゲノムDNAに含まれるブラディオン遺伝子、及び該遺伝子の相同組換えにより得られた組換え遺伝子を、それぞれ対応させて示した図である。
図2は、ターゲティングベクターの構造図である。
図3は、本発明において胚性幹細胞株281を用いて得たキメラマウスの外観上の形態異常を示す写真である。図3A〜図3Dのマウスは実施例3で作製したキメラマウスであり、図3Aは識別番号581mのキメラ個体、図3Bは識別番号582mのキメラ個体、図3Cは識別番号584fのキメラ個体、図3Dは識別番号580mのキメラ個体を示している。
図4は、本発明において胚性幹細胞株344を用いて得たキメラマウスの外観上の形態異常を示す写真である。図4A〜図4Dのマウスは実施例3で作製したキメラマウスであり、図4Aは識別番号589mのキメラ個体、図4Bは識別番号587mのキメラ個体、図4Cは識別番号585fのキメラ個体、図4Dは識別番号588mのキメラ個体を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1] ターゲティングベクターの作製
ブラディオン遺伝子をコードするマウスcDNA(配列番号1)をプローブとして、マウス・ゲノムの細菌人工染色体(BAC;Bacterila artificial chromosome)ライブラリー(Incyte Genomics社製)を常法によりスクリーニングし、BAC94R−Cクローンを得た。そのBACクローンを、制限酵素BamHI又はHindIIIで消化し、ベクターpZEr0−1(Invitrogen社製)中へサブクローニングを行った。そのサブクローン・ライブラリーより、3つのサブクローン、A1(17.7kb)、E2(5.1kb)、F11(14.1kb)をそれぞれ組み込んだプラスミド・クローンを得た(図1)。それらのサブクローンを各種制限酵素により消化し、アガロースゲル電気泳動による解析を行って、制限酵素マップを作成した(図1)。その結果、この3種のサブクローンは、マウスゲノム上で、5’側からF11 A1、E2の順に配列していることが判明した(図1)。次に、これらのサブクローンにおけるマウスブラディオン遺伝子の局在を確認するために、F11、A1、E2の各サブクローンを各種制限酵素によりそれぞれ消化し、アガロースゲル電気泳動を行った後、サザンハイブリダイゼーション解析を行った。そのためのプローブとしては、マウスブラディオン遺伝子の5’側非翻訳領域(5’UTR)相当配列(97UTRF/94R)(配列番号2)、読み枠内領域相当配列(223F/356R)(配列番号3)、及び3’側領域相当配列(749F/919R)(配列番号4)の3種のDNA断片をPCR法により調製して用いた。なお、この3’側領域相当配列(749F/919R)は、マウスブラディオン遺伝子中の、ヒトブラディオンαのmDNA配列(配列番号5)の3’側非翻訳領域(3’URF)に対応する領域に含まれている。この解析の結果、サブクローンA1は、5’側非翻訳領域相当配列(97UTRF/94R)、読み枠内領域相当配列(223F/356R)、及び3’側領域相当配列(749F/919R)の各プローブにより検出され、またサブクローンE2は、3’側領域相当配列(749F/919R)のプローブにより検出された。サブクローンF11は、上記3つのプローブのいずれを用いても検出されなかった。すなわち、サブクローンA1にはマウスブラディオン遺伝子が、E2には該遺伝子の後半の一部が含まれるが、サブクローンF11には該遺伝子は含まれないことが判明した。
上記の解析に基づき、該遺伝子全体をノックアウトするためのターゲティングベクターを構築した。相同組換えに利用するマウスブラディオン遺伝子の外側の配列としては、サブクローンF11の制限酵素XbaIによる切り出し断片(4.1kb)と、サブクローンA1の制限酵素EcoRI及びXhoIによる切り出し断片(3.3kb)とを選択し、これらのDNA断片を制限酵素によって切り出して、通常法により調製した。また、ポジティブセレクションマーカーとして用いるネオマイシン耐性遺伝子を、プラスミド・クローンpGT−N38(New England BioLabs社製)からの制限酵素KpnI及びEcoRIによる切り出し断片として同様に調製した。次いで、ベクター38loxPに、F11のXbaI断片、loxP、ネオマイシン耐性遺伝子、loxP、A1のEcoRI/XhoI断片の順に連結して、ターゲティングベクターを構築した。
[実施例2] ブラディオン遺伝子を完全欠失した対立遺伝子を有する胚性幹細胞の作製
(1)ターゲティングベクターの胚性幹細胞への導入及び相同組換え体の選択
胚性幹細胞(ES細胞)PJ1−5株を継代後、培養液中で37℃、5%COで36時間培養した。この胚性幹細胞を、100mm培養皿当たり3mlのトリプシン(Invitrogen社製,15050−065)を用いて処理することにより培養皿から剥がし、これをピペッティングして、単細胞として浮遊させた。これに10%ウシ胎児血清含有DMEM培地を7ml加え、さらにピペッティングした。
次いで、飼育細胞(フィーダー細胞)だけを培養皿に付着させて胚性幹細胞と分けるために、前記細胞浮遊液を別の100mm培養皿に播き、COインキュベーター(37℃、5%CO)に15〜30分間入れた。その後、上清を採取し、2〜5培養皿分を1本の50mlチューブにまとめ、270gで5分間遠心分離した。上清を吸引除去し、ペレットを、細胞を剥がす前の培養皿1枚あたり1mlの氷冷リン酸緩衝液に再懸濁して浮遊させた。溶液中の細胞数を数え、7×10細胞/mlに濃度を調整した。
このようにして得た細胞浮遊液(7×10細胞/ml)0.8mlと、制限酵素NotIで処理して直鎖状にしたベクターDNA40μgとを混合した後、エレクトロポレーション用キュベット(BioRad社製、Cat.No.165−2088)に移した。これに、エレクトロポレーター(BioRad社製、genepulser)で240V、500μFのパルスを加えた。次いでキュベットをキュベットホルダーから取り出し、氷上に20分間静置した。その後、キュベット中の細胞浮遊液を、マウス白血病阻害因子(LIF)を含む上記培養液10〜20ml中に移した。
次に、このLIF含有培養液中に懸濁した細胞浮遊液を、ゼラチンコーティングした培養皿に1枚あたり10mlずつ播いた。翌日、培養液を交換し(LIFを含んだ培養液を使用)、さらに2日後、LIFを含んだ培養液に、選択性薬剤である150〜250μg/ml G418を加えて培養した。培養液を毎日交換しながらコロニーの観察を続け、選択後8日頃から出現した薬剤耐性コロニーを複数個採取し、各々クローン化し、株化した。
(2)サザンハイブリダイゼーションによる相同組換え体の同定
上記のようにして得た薬剤耐性コロニー(G418による選択の約8日後に出現)を、サザンハイブリダイゼーション解析によってスクリーニングし、ブラディオン遺伝子全体が欠失した相同組換え体を同定した。
そのためにまず、ブラディオン遺伝子全体が欠失した相同組換え体の候補である薬剤耐性コロニー由来の胚性幹細胞株279、281、313、344のそれぞれのゲノムDNA抽出用培養細胞から、通常法に従ってゲノムDNAを抽出した。そのゲノムDNAについて、制限酵素BamHI又はHindIIIで各々消化したサンプルを作製した。両サンプルはアガロース・ゲル電気泳動に供し、その後ナイロン・メンブレンにブロッティングした。
サザンハイブリダイゼーションは、以下の手順で3回、プローブ毎に行った。まず、プレハイブリダイゼーション溶液を用いて、65℃で30分間のプレハイブリダイゼーションを行い、次いでハイブリダイゼーション溶液及び下記のプローブを1種づつ用いて、65℃で一晩のハイブリダイゼーションを行った。その後、0.1×SSC−0.1×SDS溶液により65℃で15分間洗浄を行い、さらに同様の洗浄を再度行い、さらにメンブレンをイメージアナライザー(BAS2000)を用いてシグナルの解析を行った。
プローブとしては、ブラディオン遺伝子の上流のゲノム配列を認識する5’プローブ、ネオマイシン耐性遺伝子を認識するNeoプローブ、ブラディオン遺伝子の下流のゲノム配列を認識する3’プローブをそれぞれ別々に用いた。5’プローブは、実施例1のサブクローンF11のKpnI及びHindIII切り出し断片として調製した0.9kbのDNA断片であり、相同組換えが起こった遺伝子又は野生型遺伝子において、図1に示す通りブラディオン遺伝子の上流の配列を認識する。3’プローブは、実施例1のサブクローンA1のBamHI及びXhoI切り出し断片として調製した0.6kbのDNA断片であり、相同組換えが起こった遺伝子又は野生型遺伝子において、図1に示す通りブラディオン遺伝子のすぐ下流の配列を認識する。Neoプローブは、Final vector(Incyte Genomics社製)のBamHI及びEcoRI切り出し断片として調製した1.8kbのDNA断片であり、図1に示す通り、ターゲティングベクターとの相同組換えによりゲノムに組み込まれたネオマイシン耐性遺伝子(Neo)を認識する。これらのプローブは、alpha−CTP32を用いてRediprime II DN Labelling System(Amersham Phramacia Biotech社)によりラベリングして用いた。
これらのプローブを用いて解析を行ったところ、BamHIで消化したサンプルでは、相同組換えの起こっている胚性幹細胞由来DNAサンプルでは5.7キロベースのシグナルが、相同組換えの起こっていない胚性幹細胞由来の野生型対立遺伝子のみを含むDNAサンプルでは17.7キロベースのシグナルが認められた。HindIIIで消化したサンプルでは、相同組換えの起こっている胚性幹細胞由来DNAサンプルでは12.2キロベースのシグナルが、相同組換えの起こっていない胚性幹細胞由来の野生型対立遺伝子のみを含むDNAサンプルでは14.1キロベースのシグナルが検出された。
このようなサザンハイブリダイゼーションの結果より、内在性ブラディオン遺伝子を発現抑制されたゲノムDNAを有する胚性幹細胞株として281株及び344株が同定された。したがって、胚盤胞への胚性幹細胞の注入のために、胚性幹細胞株281及び344を選定した。
[実施例3] ブラディオン遺伝子を欠失したゲノムを有するマウス胚性幹細胞を用いたキメラマウスの作製及び該キメラマウスの形態観察
胚性幹細胞株281及び344のそれぞれを、C57BL/6系マウスの胚盤胞へマイクロインジェクション法により注入した。その後常法に従って、該胚盤胞を偽妊娠雌マウスの卵管内に移植し、個体へと発生させた。
その結果、以下のキメラマウスが得られた。
▲1▼胚性幹細胞株281を用いて得たキメラマウス(2001年5月6日誕生)
キメラ個体(識別番号580m)・・・キメラ率90%、雄
キメラ個体(識別番号581m)・・・キメラ率90%、雄
キメラ個体(識別番号582m)・・・キメラ率90%、雄
キメラ個体(識別番号583m)・・・キメラ率90%、雄
キメラ個体(識別番号584f)・・・キメラ率95%、雌
▲2▼胚性幹細胞株344を用いて得たキメラマウス(2001年5月8日誕生)
キメラ個体(識別番号585f)・・・キメラ率90%、雌
キメラ個体(識別番号587m)・・・キメラ率98%、雄
キメラ個体(識別番号588m)・・・キメラ率98%、雄
キメラ個体(識別番号589m)・・・キメラ率90%、雄
図3及び4は、上記で得られたキメラマウスの外観を示す写真である。図3には、胚性幹細胞株281を用いて得たキメラマウスを示した。図4には、胚性幹細胞株344を用いて得たキメラマウスを示した。いずれのキメラマウスにおいても、全身の発育不良、ハムスター様の顔、比較的大きな眼球、及び視点の定まらない様子が観察される。
本明細書に引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全文を参照により本明細書に組み入れるものとする。
【産業上の利用可能性】
本発明により、脳神経系の発育不全及び各種形態異常を示す、発生時より内在性ブラディオン遺伝子を発現抑制させたキメラマウスが提供される。このキメラマウスは、脳神経系の異常に関連した生物個体モデル動物及び遺伝育種用動物として有用に利用できる。
【配列表】










【図1】

【図2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
発現が抑制されている内在性ブラディオン遺伝子を含むゲノムDNAを有するマウス胚性幹細胞が導入されたマウス胚を発生させたキメラマウス。
【請求項2】
発現が抑制されている内在性ブラディオン遺伝子が、生物学的活性を喪失したブラディオンタンパク質をコードするように遺伝子改変されていることを特徴とする、請求項1記載のキメラマウス。
【請求項3】
発現が抑制されている内在性ブラディオン遺伝子が、そのコード領域全体を欠失するように遺伝子改変されていることを特徴とする、請求項1記載のキメラマウス。
【請求項4】
マウス胚性幹細胞がPJ1−5株由来であり、マウス胚がC57BL/6系マウス由来である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキメラマウス。
【請求項5】
マウス胚が8細胞期胚、桑実胚及び胚盤胞からなる群より選択されるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキメラマウス。
【請求項6】
形態異常を示す、請求項1〜5のいずれか1項に記載のキメラマウス。
【請求項7】
形態異常が、頭蓋骨形成不良、視力障害、及び全身の発育不良からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項6記載のキメラマウス。
【請求項8】
キメラ率が90%以上98%未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のキメラマウス。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載のキメラマウスから採取される、マウス胚性幹細胞由来の細胞。

【国際公開番号】WO2004/032615
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【発行日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542796(P2004−542796)
【国際出願番号】PCT/JP2002/010599
【国際出願日】平成14年10月11日(2002.10.11)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】