説明

ブリッジ及び雌ねじ部形成方法並びに金型

【課題】板状のワークの端縁付近に突出方向の異なる複数のブリッジを形成すると同時に雌ねじ部を形成する方法及び金型を提供する。
【解決手段】板状のワークの端縁付近にブリッジ及び雌ねじ部を形成する方法であって、パンチ3、ダイ5によって前記ワークWの端縁付近に突出方向の異なる複数のブリッジ27U,27Lを交互に形成するとき、前記パンチ3、ダイ5に備えたブリッジ形成部29,45の先端面29L,45Uの転写雌ねじ部を前記ブリッジに転写する。金型1はパンチ金型3とダイ金型5を備えており、前記パンチ金型3とダイ金型5との協働によって前記ワークWの端縁付近に突出方向の異なる複数のブリッジ27U,27Lを形成するために前記パンチ金型3及びダイ金型5にそれぞれに備えたブリッジ形成部29,45の先端面29L,45Uに、前記ブリッジ27U,27Lへ転写するための転写雌ねじ部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状のワークの端縁付近に突出方向の異なる複数のブリッジを交互に形成すると同時に、上記ブリッジに雌ねじ部を形成する方法及びその方法に使用する金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図6に示すように、板状の一方のワークWAの接合面に、板状の他方のワークWBを直交する形態に着脱可能に取付ける(接続する)場合、一方のワークWAにはネジ部材Sを貫通するための貫通穴Hを加工する。他方のワークWBには、フランジ部Fの折曲げ加工を行うと共に前記ネジ部材Sを螺入するためのバーリングBを形成し、このバーリングBの内周面にタッピング加工を行っている。
【0003】
すなわち、従来は、他方のワークWBを一方のワークWAに取付けるには、バーリング加工、タッピング加工及び折曲げ加工が必要であり、複数の加工機械を必要とするものである。
【0004】
そこで、本発明の実施形態においては、図5に示すように、他方のワークWBの端縁付近に突出方向の異なる複数のブリッジBRを交互に形成し、この各ブリッジBRの内面にブリッジBRの形成と同時に雌ねじ部を形成することにより、前述したバーリングBを形成する加工、フランジ部Fを折曲げするための折曲げ加工及びタッピング加工を省略することができる接続方法を提供しようとするものである。
【0005】
なお、板状のワークに、突出方向の異なる複数のブリッジを形成する金型などに係る先行例として特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−113323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1には、突出方向の異なる複数のブリッジを板状のワークに交互に三角形状に形成する金型が記載されているものの、前記ブリッジの形成と同時に雌ねじ部を形成することに関しては何等の記載もない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述したごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、板状のワークの端縁付近にブリッジ及び雌ねじ部を形成する方法であって、パンチ、ダイによって前記ワークの端縁付近に突出方向の異なる複数のブリッジを交互に形成するとき、前記パンチ、ダイに備えたブリッジ形成部の先端面の転写雌ねじ部を前記ブリッジに転写することを特徴とするものである。
【0009】
また、前記ブリッジ及び雌ねじ部形成方法において、前記ブリッジの形状は台形状又は突出形成した頂部に円弧状部を備えた形状に形成することを特徴とするものである。
【0010】
また、板状のワークの端縁付近にブリッジ及び雌ねじ部を形成するための金型であって、上記金型はパンチ金型とダイ金型を備えており、前記パンチ金型とダイ金型との協働によって前記ワークの端縁付近に突出方向の異なる複数のブリッジを形成するために前記パンチ金型及びダイ金型にそれぞれに備えたブリッジ形成部の先端面に、前記ブリッジへ転写するための転写雌ねじ部を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、板状のワークの端縁付近に突出方向の異なる複数のブリッジを交互に形成するとき、ブリッジの形成と同時に各ブリッジに雌ねじ部を形成するものであるから、ワークの端縁付近への雌ねじ部の形成を容易にかつ能率よく行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る金型の全体的構成を示す正面図で一部断面してある。
【図2】パンチ金型におけるブリッジ成形部の構成を示す説明図である。
【図3】ダイ金型におけるブリッジ成形部の構成を示す説明図である。
【図4】ワークに形成したブリッジの構成を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係るワークの接続方法の説明図である。
【図6】従来のワークの接続方法接続方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明するに、本発明の実施形態の金型1は、パンチ金型3とダイ金型5を備えている。前記パンチ金型3は、パンチプレス(図示省略)における上部タレットなどのパンチホルダ7に上下動自在にかつ着脱可能に装着してあり、前記ダイ金型5は、パンチプレスにおける下部タレットなどのダイホルダ9に、前記パンチ金型3と上下に対向して着脱可能に装着してある。
【0014】
前記パンチ金型3は、前記パンチホルダ7に上下動自在に支持される円筒形状のパンチガイド11を備えており、このパンチガイド11内にはパンチボディ13が上下動自在に内装されている。そして、このパンチボディ13には、前記パンチガイド11の上部に備えたリテーナ15を上下動自在に貫通したパンチドライバ17が上方向へ長く設けられている。このパンチドライバ17の上端部には、前記パンチプレスに上下動自在に備えられたストライカ(ラム)19によって打圧されるパンチヘッド21が上下に調節可能に螺合してある。そして、前記リテーナ15とパンチヘッド21との間にはストリッパスプリング23が弾装してある。
【0015】
前記パンチボディ13は前記ストリッパスプリング23の付勢力によってパンチガイド11に対して常に上方向へ付勢されており、当該パンチボディ13の下端部は、常態においては、前記パンチガイド11の下部に備えられた内側フランジ部(板押え部)11F内に没入された状態にある。なお、図1においては、ストライカ19の作用によって、パンチボディ13は前記ストリッパスプリング23の付勢力に抗して下降された状態にある。
【0016】
前記パンチボディ13の下端面には、前述したブリッジを形成するためのブリッジ形成部25が備えている。より詳細には、図2に示すように、板状のワークW(図1参照)の下面に下方向へ突出した下側ブリッジ27Lを形成するための下側ブリッジ形成部29が下方向へ突出して備えられている。そして、当該下側ブリッジ形成部29の両側には、ダイ金型5によって上方向へ突出して形成される上側ブリッジ27U(図1参照)が入り込む凹部31が形成してある。さらに、前記下側ブリッジ形成部29の下面(先端面)29Lには、下側ブリッジ27Lを突出形成すると同時に、当該下側ブリッジ27Lにおける内面の奥壁面(底部の面)に雌ねじ部を転写するための転写雌ねじ部が形成してある。
【0017】
前記ダイ金型5は、前記ダイホルダ9に形成したダイ装着穴9H内に着脱可能に装着される円盤状のダイ本体33を備えており、このダイ本体33の上面中央には上方向へ突出した上方突出部35が備えられている。また、前記ダイ本体33の上面には、前記上方突出部35を囲繞した環状のエジェクタプレート37が上下動自在に備えられており、このエジェクタプレート37と前記ダイ本体33との間の複数箇所には、コイルスプリングなどのごとき弾性部材39が弾装してある。さらに、前記ダイ本体33に形成した穴33H内には、前記弾性部材39による前記エジェクタプレート37の上昇を規制するために、エジェクタプレート37に上端部を螺着したストッパボルト41が上下動自在に嵌入してある。
【0018】
前記ダイ金型5における前記ダイ本体33の前記上方突出部35の上面には、前記パンチボディ13の下面に備えた前記ブリッジ形成部25に対応するブリッジ形成部43(図3参照)が備えられている。より詳細には、前記ブリッジ形成部43には、前記上側ブリッジ27Uを形成するための複数の上側ブリッジ形成部45が上方向へ突出して備えられている。
【0019】
前記上側ブリッジ形成部45は、前記パンチボディ13における前記凹部31内へワークWの一部を押し込み成形することによって、前記上側ブリッジ27Uを上方向へ突出形成する作用をなすものである。そして、この上側ブリッジ形成部45の上面(先端面)45Uには、前記上側ブリッジ27Uを上方向へ突出形成すると同時に、当該上側ブリッジ27Uにおける内面の奥壁面(天井の面)に雌ねじ部を転写するための転写雌ねじ部が形成してある。
【0020】
さらに、前記ブリッジ形成部43であって前記複数の上側ブリッジ形成部45の間には、前記パンチボディ13における前記下側ブリッジ形成部29と協働して前記下側ブリッジ27Lを形成するための凹部47が形成してある。すなわち、前記下側ブリッジ形成部29によってワークWの一部を前記凹部47内へ押し込み成形することによって前記下側ブリッジ27Lを下方向へ突出形成することができるものである。
【0021】
以上のごとき構成において、パンチプレスにおけるストライカ19を上昇すると、ストリッパスプリング23の作用によってパンチボディ13はパンチガイド11に対して上昇される。また、パンチ金型3は、リフタースプリングLSの作用によって初期状態位置に上昇された状態となり、パンチ金型3とダイ金型5が上下方向に離れた状態となる。そして、ダイ金型5におけるエジェクタプレート37は弾性部材39の作用によって初期の上昇位置へ上昇されて、エジェクタプレート37の上面は、ダイ金型5におけるブリッジ形成部43よりも高位置となる。
【0022】
前述のように、パンチ金型3及びダイ金型5が初期状態にあるときに、ダイ金型5におけるエジェクタプレート37上に板状のワークWを載置し、上下のブリッジ27U,27Lを形成すべき端縁部を、パンチ金型3、ダイ金型5におけるブリッジ形成部25,43に対応した位置に位置決めする。その後、パンチプレスにおけるストライカ19を下降してパンチ金型3のパンチヘッド21を打圧すると、リフタースプリングLSの付勢力に抗してパンチ金型3が下降される。
【0023】
そして、パンチ金型3におけるパンチガイド11の板押え部11FがワークWの上面に当接すると、ワークWは、パンチ金型3の前記板押え部11Fとダイ金型5におけるエジェクタプレート37によって挟圧されることになる。その後、前記ストライカ19をさらに下降すると、弾性部材39の付勢力に抗して前記エジェクタプレート37が下降限まで下降されて下降を停止すると共に、パンチ金型3におけるパンチガイド11に対してパンチボディ13が下降されて、パンチボディ13のブリッジ形成部25とダイ金型5における上方突出部35のブリッジ形成部43とが上下に対向してワークWを挟圧することになる(図1に示す状態)。
【0024】
前述のように、パンチ金型3に備えたブリッジ形成部25とダイ金型5に備えたブリッジ形成部43によってワークWを挟圧すると、パンチ金型3における下側ブリッジ形成部29がワークWの一部を剪断してダイ金型5における凹部47内へ押し込み成形することとなり、ワークWの一部に、図4に示すように、下側ブリッジ27Lを形成すると共に、下側ブリッジ形成部29における下面29Lの転写ネジ部を、下側ブリッジ27Lの底面(奥壁面)に転写することになる。
【0025】
また、ダイ金型5における上側ブリッジ形成部45がワークWの一部を剪断し、パンチ金型3における凹部31内へワークの一部を押し込み成形して、図4に示すように、ワークWの一部に上側ブリッジ27Uを形成すると共に、上側ブリッジ27Uの内側上面(奥壁面)に、上側ブリッジ形成部45の上面に備えた転写雌ねじ部を転写することになる。
【0026】
すなわち、ワークWの端縁付近に突出方向の異なる上側ブリッジ27U及び下側ブリッジ27Lを交互に形成するとき、ダイ金型5及びパンチ金型3におけるそれぞれのブリッジ形成部25,43の先端面に予め形成してある転写雌ねじ部を前記ブリッジ27U,27Lの内面に同時に転写するものである。したがって、上下のブリッジ27U,27Lを成形加工すると同時に上記ブリッジ27U,27Lの内面に雌ねじ部が形成されるものである。よって、ワークの端縁付近への雌ねじ部の形成を容易にかつ能率よく行うことができるものであり、前述したごとき従来の問題を解消し得るものである。
【0027】
ところで、本発明は前述したごとき実施形態に限ることなく、適宜の変更を行うことにより、その他の形態でも実施可能である。すなわち、突出方向の異なるブリッジの数は、図4には3つの場合が例示してあるが、3つ以上であれば幾つでもよいものである。また、上下のブリッジ27U,27Lは、図4においては台形状にて例示してあるが、台形状に限ることなく多角形状又は少なくとも頂部に円弧状部を備えた形状とすることも可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 金型
3 パンチ金型
5 ダイ金型
13 パンチボディ
25 ブリッジ形成部
27L 下側ブリッジ
27U 上側ブリッジ
29 下側ブリッジ形成部
29L 下面(先端面)
31 凹部
33 ダイ本体
35 上方突出部
43 ブリッジ形成部
45 上側ブリッジ形成部
45U 上面(先端面)
47 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークの端縁付近にブリッジ及び雌ねじ部を形成する方法であって、パンチ、ダイによって前記ワークの端縁付近に突出方向の異なる複数のブリッジを交互に形成するとき、前記パンチ、ダイに備えたブリッジ形成部の先端面の転写雌ねじ部を前記ブリッジに転写することを特徴とするブリッジ及び雌ねじ部形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のブリッジ及び雌ねじ部形成方法において、前記ブリッジの形状は台形状又は突出形成した頂部に円弧状部を備えた形状に形成することを特徴とするブリッジ及び雌ねじ部形成方法。
【請求項3】
板状のワークの端縁付近にブリッジ及び雌ねじ部を形成するための金型であって、上記金型はパンチ金型とダイ金型を備えており、前記パンチ金型とダイ金型との協働によって前記ワークの端縁付近に突出方向の異なる複数のブリッジを形成するために前記パンチ金型及びダイ金型にそれぞれに備えたブリッジ形成部の先端面に、前記ブリッジへ転写するための転写雌ねじ部を備えていることを特徴とする金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−254474(P2012−254474A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129822(P2011−129822)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【Fターム(参考)】