説明

ブリード弁からの高炉排ガスを燃焼する装置及び対応ブリード弁

発明は、ブリード弁からの高炉排ガスを燃焼するための装置を提供する。それは排気口(26)を画成する固定中空弁体(22)及び弁座を有するブリード弁(20)と、弁座と協同してブリード弁を閉じ、排気口を通して高炉排ガスを解放する可動閉塞子(24)とを含む。この装置は更に、ブリード弁(20)によって放出される高炉排ガスの燃焼用装置を含む。この燃焼用装置は、ブリード弁(20)の弁体、又は可動閉塞子に、又はそれに近接して、配置される点火手段(32、38、40、42、44)を特徴とする。点火手段(32、38、40、42、44)は、閉塞子が開位置にあるとき排気口を通して放出される高炉排ガスが周囲空気と混合する排気口下流の領域にその空間点火作用範囲が位置するように配置され、ブリード弁の位置で周囲空気に解放される高炉排ガスの開空気燃焼を生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に高炉ブリード弁、詳しくはブリード弁を通して解放される高炉排ガスの有害な成分の燃焼を可能にする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近代的高炉は大気圧を1〜3バール越える範囲の正規炉圧で動作するように設計されている。炉及びその補助設備を全ての急激ガス圧サージから守るため、ブリード弁が一般に高炉の上部に設けられている。かかる圧力サージは例えば、負荷のスリップ又はハンギングにより、或いは送風機動作又は圧力調整における問題のため生じる。従って、ブリード弁は過剰圧力軽減のため所定閾値で開く安全リリーフ弁として働く。
【0003】
典型的高炉設備では、2つのブリード弁が炉頂に配置され各々が、一対の煙路の最上位置に連結し、それから上方に伸びる夫々の抽気管の端部に配置されている。煙路は、そこから高炉ガスが回収され炉頂コーンから、更に用いられるようにするダクトである。煙路は通常、炉装填設備の上方で一緒になり、各々が下降管と呼ばれるダクトに連結され、それを通して高炉ガスが処理設備まで下降するようになっている。付加的ブリード弁が、二次高炉ガス清浄装置、即ちスクラバに接合されるようにしても良い。
【0004】
設計によっては、ブリード弁は自動及び手動動作可能なものとされる。ブリード弁によっては、過剰圧力の場合、圧力路を通して弁を開く油圧又は空気圧動作のものもある。通常、例えば炉停止の場合、後者のものでは、弁の手動開きができる。他の種のブリード弁は通常カンタウェイト式又はスプリングバイアス式となっており、圧力が有意に通常動作圧力を超えると、外部電力なしに開くようになっている。改良されたブリード弁はPAUL WURTHにより設計され、一般には「コーヒーポット」ブリーダと呼ばれ、両機能を備える、即ち全動作が外部電源の使用により制御され、且つ弾性バイアスに抗して炉圧力の作用により独立的に緊急動作する設計のものである。この種のブリード弁の例はUS3601357B及び4158367Bに開示されている。改良された閉塞子の設計をもつ「コーヒーポット」ブリーダはWO2007/090747に開示されている。ブリーダの設計によらず、ブリード弁は通常、大気に対して高炉排ガスを解放するようになっている。
【0005】
通常の方式では、高炉ガスは一般にN約45〜55%と、CO約15〜25%と、CO約15〜25%と、H約1〜10%とを含む。所定の状況下では、方式に応じて、一酸化炭素の体積含有率は25%より多くなり、水素の体積含有率は10%より多くなり、例えば天然ガス注入高炉だとHが15%に達することがある。COは極めて毒性が高く、CO及びHは両者共可燃性であるので、高炉排ガスの大気への解放は有害である。事実、ブリード弁を通して解放された排ガスはブリード弁を通して排出された負荷の白熱部のため点火し、何メートルにも達する火炎を結果として生じる。まれには、爆発性雲が炉の上方に起こり、爆発を惹き起す。制御不能の燃焼及び中毒に関する脅威は別としても、ブリード弁を通って解放される排ガスは汚染を起こすことは明らかである。
【0006】
ブリード弁は炉の通常の動作状態では閉じられているものの、ブリード弁が開く度に有毒な高炉排ガスの相当量は大気中に放出される。更に、異常な炉運転の場合には、ブリード弁は一日に何度も開くことがある。安定したプロセスにおいて、ガスは一年に何度も放出されることがある。従って、ブリード弁からの高炉排ガス放出によって生じる危険を除くか又は少なくとも低める必要がある。
【0007】
図1に、通気管から放出される高炉排ガスを、排ガスを燃焼することによって無害にすることを目指した特開昭54−107806号公報による装置を示す。図1で分かるように、数個のブリード弁2の排気口が排ガスを燃焼室4に導く共通接続管3に連結される。炭素含有ガスがライン5によって、室4内の高炉排ガスをそれが大気に解放される前に完全燃焼するため燃焼室4に送られる。この装置には、燃焼室4からの火の炉内への逆火を回避する消火手段を含む安全設備が含まれている。このため、圧力センサ7が集合管3に設けられている。集合管3の感知圧力が「負」になると、制御装置8は炭素ガスフィードライン内の弁10を閉じ、弁11を開いて消火水蒸気を集合管3に注入する。「正」の圧力が感知されると、即ち排ガスがブリード弁2を通して解放されると、上記弁11は開いて燃焼室4内の排ガスの燃焼が燃焼室4に設けられた点火装置によって点火可能となる。
理解されるように、特開昭54−107806号公報による装置はかなり複雑であり、特に最新の高圧高炉ガス施設に適用としようするとき、かなりの設備費用がかかる。実際、特開昭54−107806号公報に提案のようにブリード弁からの排ガスを収集するための図る集合管は最新の炉では超音速に達するであろう流出によって生じる相当な力、高温及びダスト量による摩擦に耐えるため極めて頑健な構成及び支持構造の両者を有しなければならない。従って、そのような装置が最新の高炉施設で実際上実現可能かは疑問の余地さえある。
【0008】
高炉における排ガスを燃焼するためのもう一つの装置はUS3907261Bに開示されている。上記先行技術と違い、この装置はブリード弁に関するものではなく、高炉の下降管に取り付けられるブローオフ放出弁に関するものである。シャットダウン放出ハットとも呼ばれる斯かる弁類はシャットダウン中に生成される比較的低量の上部ガスを解放するため炉のシャットダウン中にのみに用いられる。US3907261Bの弁は弁ハウジングの内側に向かって開く弁フラップと、弁フラップが開くとき弁ハウジング内に軸方向に挿入される管状部材を含む。管状部材は弁フラップと弁座を、高炉ガスに対して直接露出することから保護する。管状部材は、管状部材上の管状延長部と同軸外側ジャケットを含むフレア装置を備えることができる。延長部及びジャケットは、その下端が開いて燃焼を支持する十分な空気が進入できるようにする燃焼室を画成する。フレア装置は更に、外側ジャケットに固定され、燃焼室に延長する点火器と、管状延長部の内側に同軸上に配置され液体又は気体燃料を注入する注入ノズルを含む。理解されるように、US3907261Bによるフレア装置を有するシャットダウン放出ハットは爆発防止のためのブリード弁としての使用には適していない。就中、その内側に向かって開く形状は、炉動作中の急激な圧力過剰に対しての信頼性のある救済策にはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US3601357B
【特許文献2】US4158367B
【特許文献3】WO2007/090747
【特許文献4】特開昭54−107806号公報
【特許文献5】US3907261B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記に鑑み、本発明の第1の目的はブリード弁及び対応ブリード弁からの高炉排ガスを燃焼するための、簡略化した、且つ低コスト強調の装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は請求項1に請求の装置及び請求項16の請求のブリード弁によって達成される。
【0012】
従って、本発明はブリード弁と、ブリード弁によって解放される高炉排ガスの燃焼を生じるよう構成された装置を含む装置を提案する。典型的には、ブリード弁は固定中空弁体と可動閉塞子を含む。弁体は吸気口と排気口を画成し、弁座を提供する。閉塞子は弁坐と協働してブリード弁を封止する。閉塞子は任意の適宜手段により高炉排ガスを、排気口を通して放出するための開き位置に移動可能である。開き位置がアクチュエータの手段によって設定される制御位置か、過剰圧力の作用によって達せられる非制御解除位置かには拘わりなく、本発明によるブリード弁は一般に及び好ましくは、閉塞子が外側に開くように、即ち炉圧が開き方向の力を閉塞子に及ぼすように構成される。
【0013】
本発明によれば、燃焼を生じさせる装置は点火装置を含み、該点火装置は弁体又は可動閉塞子に、又は弁体又は閉塞子の何れかに近接して、配置される。重要な特徴によれば、点火装置はその空間点火作用範囲が、排気口を通して放出される高炉排ガスが周囲空気と混合する領域に永続的又は一時的に位置するように配置される。典型的成分の高炉排ガスはそのカロリー値が十分高く、適当量の酸素存在下で適宜手段により点火されると燃焼する。
【0014】
従って、上記のような適宜選ばれた領域での点火によって排気口下流及び近傍で排ガスは点火ができる。本発明の更なる特徴によれば、各ブリード弁の位置及びその上方位置で解放排ガスの開空気燃焼(大気燃焼)が生じるように排気口の直下流で排ガスを周囲空気に放出するように装置は構成される。動作中にアクセスが一般に禁じられる非閉鎖且つ保安空間も、抽気プラットフォーム上及びそこに配置される高炉ブリーダの上方は好ましく利用可能なのである。
【発明の効果】
【0015】
従って、高炉排ガスを燃焼するための先行技術により解決策と対比して、本発明は専用燃焼室を設けるための高コストな構造的対策を回避するメリットがある。その代わり、本発明は排ガスの開空気燃焼を提案している。理解されるように、ブリード弁の構成部品は元来高炉排ガスの高温に耐えるように設計されており、更に適宜の点火装置を設けても、ブリード弁の直上の自由開空間での開空気燃焼による排ガスの加熱には付加的対策は全く又は殆ど要しない。
【0016】
理解されるように、本発明は従って、CO及びHを十分完全、且つ制御燃焼してこれ等成分の放出に関する上記危険を除去するようにしたコスト有効な、然も信頼性のある解決策を提供するものである。
【0017】
本発明はまた、添付独立請求項17に記載のような対応構成のブリード弁に関わる。
【0018】
本発明の更なる好適な実施態様は添付従属請求項2〜16及び18〜19に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の更なる詳細及び利点は添付図面を参照する非限定実施態様の詳細な説明から明らかになろう。
【図1】ブリード弁からの高炉排ガスを燃焼するための従来技術による装置の部分破断立面図である。
【図2】本発明によりブリード弁からの高炉排ガスを燃焼するための第1の装置を示す側面及び一部切断図である。
【図3】本発明によりブリード弁からの高炉排ガスを燃焼するための第2の装置を示す側面及び一部切断図である。
【図4A】本発明によりブリード弁からの高炉排ガスを燃焼するための第3の装置を示す側面図である。
【図4B】本発明によりブリード弁からの高炉排ガスを燃焼するための平面図である。
【図5A】本発明によりブリード弁からの高炉排ガスを燃焼するための第4の装置を示す側面図である。
【図5B】本発明によりブリード弁からの高炉排ガスを燃焼するための平面図である。
【図6A】本発明によりブリード弁からの高炉排ガスを燃焼するための第5の装置を示す側面図である。
【図6B】本発明によりブリード弁からの高炉排ガスを燃焼するための平面図である。
【0020】
図2〜図6を通して、類似又は同一構造部材は同一参照番号で識別されている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図2〜図6Bに、中空弁体22及び可動フラップ型閉塞子24を含む高炉ブリード弁20を示す。弁体22は排気口26を画成し、閉塞子24と協同してブリード弁20を密封する弁座(図示せず)を有する。典型的構成において、弁体22は管状形状を有し、その下端に、ブリード弁20をブリーダ管(図示せず)の上端輪縁に固定締結する取付けフランジが設けられている。理解されるように、ブリード弁20を担持するブリーダ管は一般には、1つ以上の煙路、例えば接合する一対の高炉煙路の上端部に連結される。或いはまた、それは高炉排ガススクラバ塔に連結される圧力リリーフダクトと導通するようにしても良い。典型的高炉施設には数個のブリード弁20が、抽気管が導かれる炉の上方のブリードプラットフォームに設けられていて、これが過剰圧力の場合に高炉排ガスを放出する。
【0022】
特許文献3に開示のような公知の仕方で、閉塞子24は流体操作器が設けられた駆動機構28に連結され、閉塞子を弁座上の閉位置から、図2〜3及び図4A,5A及び6Aに破線で示す、弁座から離間した制御された第1の開位置に移動する。ブローイン又はブローアウト等の例えば長時間処理手順の場合に駆動機構28が動作すると、高炉排ガスは排気口26を通して制御された仕方で放出される。更に、ブリード弁20は、閉塞子24を弁座に対して閉位置に付勢する偏倚ディスクばねを有する安全装置30を含む。安全装置30によって及ぼされる偏倚力を調整することにより、抽気管、即ち中空弁体22内の圧力がセットされた許容値を超えると、閉塞子24が第2の緊急開位置に緊急開きが可能になる。緊急開きは通常急速、且つ高圧ピークの場合に、安全装置30の偏倚力を超える力を及ぼす圧力のため、閉塞子24が排気口26の数10mm上方のその第2開位置に平行移動して起こる。図2〜3で分かるように、その緊急開き機能を確実にするため、ブリード弁20は閉塞子24が外側に開くように、即ち炉圧が開き力を閉塞子24に及ぼし、それをその弁座から押し離すように構成される。駆動機構28の更なる詳細は本発明の目的とするものではないが、特許文献3に見出され、その開示がここに参考として挙げられる。だが、理解されるように、閉塞子24は、過剰圧力の制御リリーフ及び/又は緊急リリーフを可能にするその他どんな種類の駆動機構に接続されても良い。
【0023】
本発明により、図2〜図6Bのブリード弁20は、ブリード弁20により放出される高炉排ガスを燃焼する装置の一部を成す。
【0024】
図2の実施態様では、ブリード弁20は、閉塞子24に同軸的に沈下、即ち埋め込まれた点火火炎ノズル32を有する点火装置を含む。点火火炎ノズル32の形状は、閉塞子24の中心から弁体22の軸に向かって突出する点火火炎を提供するようにするものである。点火火炎ノズル32は、高炭素ガス、例えば天然ガス、塩基性酸素炉ガス又はコークス炉ガス、と遠隔源からノズル32への高圧空気又は酸素との混合物を送るガスフィード導管34に連結される。理解されるように、点火火炎ノズル32の空間点火作用範囲は、閉塞子24が閉位置から第1の制御開位置に移動した(破線参照)とき高炉排ガスが周囲空気と混合して点火可能な混合物を形成する領域を通る。更に又は或いはまた、点火火炎ノズル32の形状は、閉塞子が第1の開位置にあるとき、排気口26の上方の排ガスの主流路の円筒状包絡線に達する程に十分長い点火火炎を創る、つまりは閉塞子が第1の開位置、即ち制御位置に達した後、排気口を通って放出された高炉排ガスが周囲空気と混合する領域を通るような形状のものである。従って、点火火炎ノズル32は、ブリード弁20によって周囲空気に放出された高炉排ガスに対して火炎で開始された開空気燃焼をもたらす。云い換えれば、高炉排ガスは専用燃焼室で燃焼される代わりに、自由空間で燃焼される。図で更に分かるように、ガスフィード導管32はかかる燃焼の効果から保護されるため、機構28の支持アームの内側及び閉塞子24の内側を通るように設けられている。
【0025】
図3に、点火火炎ノズル数個38を閉塞子24の周囲に、半径方向及び下方傾斜方向に規則的間隔で沈下せしめるようにした、本発明による第2の装置を示す。点火火炎ノズル38の形状は、半径方向に離間し、閉塞子24の閉じ方向下方に傾く方向に向いた点火火炎を創るようにしてある。図2におけると同様、ノズル38用ガスフィード導管34はまた、機構28の内側及び閉塞子24の内側を通るように配置されている。だが、図2の実施態様と違って、図3の装置はブリード弁20の緊急開きの場合の、即ち閉塞子24が排気口26の上方微小距離の自由緊急位置に位置付けられるときの排ガスの燃焼を可能にしている。実際、閉塞子24が図3の実施態様におけるこのような第2の開位置にあるとき、点火火炎ノズル38の点火作用範囲は、放出高炉排ガスが周囲空気と混合するような排気口26の下流領域に位置付けられる。だが、理解されるように、本発明によるブリード弁20には図3による点火火炎ノズル38と図2又は図3による点火火炎ノズル32、38の組み合わせを設けることもでき、閉塞子24の制御及び自由開き位置の両者における点火をできるようにしても良い。尚、図2〜3の実施態様における点火装置は更に、これも好ましくは閉塞子24に沈下せしめられる、各点火火炎ノズル32、32、38の点火火炎を点火するための適宜の構成要素が備わる。好ましくは、かかる構成要素は例えば、スパークプラグ式の超高速電気点火器である。
【0026】
図4A及び図4Bに、ブリード弁22の周囲側方に取り付けリブにより取り付けられた点火火炎ランス40数個を点火装置が含むようにした第3の装置を示す。点火火炎ランス40は規則的間隔で、それ等の上端が排気口26の下になるように取り付けられる。前記実施態様と同様に各点火火炎ランス40は適宜の燃焼ガスフィードライン(図示せず)に連結され、オンデマンドで点火火炎を点火する付設、好ましくは高速作動の、点火構成部品が設けられる。図4Aで分かるように、点火火炎ランス40は、排ガスの流出流の方向、即ち流出流方向上方及びブリード弁22の中心軸に向かって半径方向内側に向き、放出高炉排ガスが周囲空気と混合する乱流域内に達するように向いた点火火炎を提供する形状のもとする。放出排ガスの衝撃力からの保護のため、点火火炎ランス40は放出排ガスの「風影(wind-shadow)」に配置される、即ち閉塞子24が第1又は第2の開位置の何れかにあるとき周囲空気に放出される排ガス流出流から保護されるように配置される。
【0027】
図5A及び図5Bに、前述の実施態様とは主として点火装置が点火火炎ランスの代わりに電気スパーク点火器42、例えば高電圧コイル点火器がブリード弁22の周囲に取り付けられるものを含むことで異なる第4の装置を示す。各電気スパーク点火器42の形状はその点火スパークを排ガス流出流に向け、排ガスが周囲空気と混合する点火可能領域内に点火スパークがあるようにする。理解されるように、図5A及び図5Bの点火装置は高炉排ガスの燃焼を生じるための、なんら付加的ガスフィードラインを要しない。
【0028】
図6A及び図6Bに、図5A〜Bの前述の装置とは主として点火装置が電気スパーク点火器の代わりに、上記のように排気口26の下に位置付けられ、適宜の供給ラインに連結されたプラズマトーチ数個44を含む点で異なる第5実施態様を示す。従って、プラズマトーチ44もまた「風影」に配置され、そして排ガス流に指向し、かつ排ガスが周囲空気と混合する乱流域を貫通するようにプラズマジェットを指向させる。
【0029】
図4A〜B、図5A〜B又は図6A〜Bにおいて、夫々点火火炎ランス40、スパーク点火器42又はプラズマトーチ44を配置する位置は排ガス流出流からの保護のため、実際の弁形状に依存するが、当業者により容易に決定されるべきことである。理解されるように、炉ガスから保護される領域(「風影」)は絶対的無風を意味しないものの、夫々の点火装置の突出部の損傷を安全に回避するため十分低い低流速の領域を意味すべきである。この趣旨で、コンピュータ援用計算流体力学を用いて、制御及び/又は緊急開きのための排ガス速度場を決定したり、衝撃インパルス及び摩擦が十分低い領域を選ぶことができる。
【0030】
図面には示されていないが、点火装置は好ましくは閉塞子24の移動を検出する1つ以上のセンサに接続される制御装置を含むことが理解されるであろう。実施態様に応じて、制御装置は点火火炎ノズル32、32、38に付設される点火構成部品又は点火火炎ランス40に付設される点火構成部品の何れかを起動、又は閉塞子24の移動が検出される場合、スパーク点火器42又はプラズマトーチを起動させるように構成される。特許文献3による機構を用いるとき、この機構には好ましくは第1及び第2の開位置への移動を夫々検出する2つのセンサが備えられる。この目的のため、機構28は閉塞子24が取り付けられる支持アームの枢動を感知するように配置される第1のエンコーダーと、安全装置30内部の偏倚ばねに対する変位を測定するように配置される第2のエンコーダーを備えることができる。点火装置をオンデマンドで起動させるとき、高速点火可能構成部品、例えばスパーク点火器が好ましくは用いられ、未燃焼ガスの放出を最小にする。或いはまた又は更に、パイロット火炎式の点火装置、即ち点火源を永続化する装置も用いることができる。
【0031】
上記実施態様の各々は、点火装置が弁体20に配置されるか又は可動閉塞子24上に配置されるかに拘わらず、閉塞子24が第1及び/又は第2の開位置にあるとき、排気口を通して放出される高炉排ガスが周囲空気と混合して点火可能な混合物を形成する、排気口下流の乱流域に少なくとも一時的に点火作用範囲があるように構成される。かかる領域は当業者により、ブリード弁近傍の点火可能領域の決定を目的とするコンピュータ援用計算流体力学に基づいて容易に特定できる。
【0032】
理解されるように、図1に示す従来技術装置とは違って、図2〜6の装置はブリード弁20直上の周囲空気、即ち抽気プラットフォーム上に一般に利用可能な自由、且つ未制限空間に放出される高炉排ガスの開空気燃焼を生じさせるように構成される。換言すれば、本発明による装置では、就中、図1の先行解決策に用いられる費用集約的集合ダクトや付加的燃焼室の必要が無い。更に、図2〜6の装置はブリード弁20毎に別個に燃焼を生じさせ、1つの点火装置の故障が全ブリード弁からの管理されない有害ガスの放出に導くことはない。理解されるように、点火装置をブリード弁22又は閉塞子24に設けることはコンパクトなブリード弁装置を提供することであるけれども、点火作用範囲が排ガス及び酸素混合物の上記領域に合うなら、点火装置はそれらに近接して設けても良い。
【0033】
最後に、図2〜6の装置の何れかによる点火装置の組み合わせが設けられるブリード弁も本発明の範囲内にあることが留意されるべきである。特に好適な実施態様では、閉塞子24の緊急開位置における点火を行う図5A〜Bによるスパーク点火器と、閉塞子24の制御開位置における点火を行う図2又は図4A〜Bの何れかによる火炎ノズル又は火炎ランスが含まれる。
【符号の説明】
【0034】
20 ブリード弁
22 弁体
24 閉塞子
26 排気口
28 駆動機構
30 安全装置
32、38 点火火炎ノズル
34 ガスフィードライン
40 点火火炎ランス
42 電気スパーク点火器
44 プラズマトーチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリード弁からの高炉排ガスを燃焼する装置であって、該装置がブリード弁を含み、該ブリード弁が
排気口を画成し、弁座を有する固定中空弁体と
前記弁座と協同して前記ブリード弁を閉じ、前記排気口を通して高炉排ガスを解放するため開位置に移動可能、特に外向きに移動可能、な可動閉塞子とを有し、装置がまた
前記ブリード弁によって放出される高炉排ガスの燃焼を生じさせるように構成される装置を含むものにおいて、
該燃焼を生じさせる装置が前記弁体又は前記可動閉塞子上に、又はこれに近接して、配置される点火手段を含み、該点火手段は前記閉塞子が開き位置にあるとき前記排気口を通して放出される高炉排ガスが周囲空気と混合するところの前記排気口の下流の領域にその点火作用範囲が位置するように配置されること、及び
該燃焼を生じさせる装置が前記ブリード弁によって周囲空気に放出される高炉排ガスの開空気燃焼を生じさせるように構成されて成ることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記点火手段を前記弁体又は閉塞子に沈下させて、又は
前記閉塞子が開位置にあるとき周囲空気に放出される排ガスの流出流から前記点火手段を保護されるよう
前記点火手段を前記又は前記可動閉塞子に取り付けることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記点火手段が前記閉塞子の動きを検出するように配置される少なくとも1つのセンサに連結された制御装置を含み、該制御装置が前記閉塞子の開き位置への移動時に前記点火手段を起動させるように構成されて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記点火手段が前記可動閉塞子に取り付けられた少なくとも1つの点火火炎ノズルを含み、前記閉塞子が開き位置にあるとき該点火火炎ノズルが周囲空気に放出される排ガスの流出流に向けて点火火炎を生じるようにして成ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの点火火炎ノズルが前記可動閉塞子に沈下されて成ることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記点火手段が前記弁体の周囲に取り付けられる少なくとも1つの点火火炎ランスを含み、前記閉塞子が開き位置にあるとき該点火火炎ランスが周囲空気に放出される排ガスの流出流に向けて点火火炎を生じるようにして成ることを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の装置。
【請求項7】
前記閉塞子が開き位置にあるとき、周囲空気に放出される排ガスの流出流から保護されるように前記点火火炎ランスが取り付けられて成ることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記点火手段が前記弁体の周囲に取り付けられる数個の電気スパーク点火器を含み、前記閉塞子が開き位置にあるとき該電気スパーク点火器が周囲空気に放出される排ガスの流出流に向けて点火スパークを生じるようにして成ることを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の装置。
【請求項9】
前記閉塞子が開き位置にあるとき、周囲空気に放出される排ガスの流出流から保護されるように前記スパーク点火器が取り付けられて成ることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記点火手段が前記弁体の周囲に取り付けられる数個のプラズマトーチを含み、前記閉塞子が開き位置にあるとき該該プラズマトーチが周囲空気に放出される排ガスの流出流に向けてプラズマジェットを生じるようにして成ることを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の装置。
【請求項11】
前記閉塞子が開き位置にあるとき、周囲空気に放出される排ガスの流出流から保護されるように前記プラズマトーチが取り付けられて成ることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記閉塞子に連結され、該閉塞子を前記弁座上の閉じ位置と前記弁座から離れた第1の開き位置の間で移動させる駆動機構と、
偏倚手段を有して、前記閉じ位置にある前記閉塞子を前記弁座に対して付勢し、前記中空弁体内の圧力が許容値を超えるとき前記閉塞子の緊急開きを第2の開き位置に許容する安全装置とを前記ブリード弁が更に含み、
前記閉塞子が前記第1の開き位置と前記第2の開き位置の何れかにあるとき、前記排気口を通して放出される高炉排ガスが周囲空気と混合する前記排気口下流の領域にその点火作用範囲が位置するように前記点火手段を配置して成ることを特徴とする請求項1〜11の何れか1つに記載の装置。
【請求項13】
前記排気口を通して放出される高炉排ガスが周囲空気と混合する領域に 点火火炎を向けるように、
前記可動閉塞子上に取り付けられる少なくとも1つの点火火炎ノズル
又は前記弁体の周囲に取り付けられる少なくとも1つの点火火炎ランスと、
前記閉塞子が前記第2の開き位置あるとき前記排気口を通して放出される高炉排ガスが周囲空気と混合する領域に点火スパークを向けるように、
前記弁体の周囲に取り付けられる数個の電気スパーク点火器と
を前記点火手段が含んで成ることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記ブリード弁がブリーダ管の頂部に設けられ、該ブリーダ管が特に1つ以上の通気ダクトを介して立炉、特に高炉のトップコーンに連結されて成ることを特徴とする請求項1〜13の何れか1つに記載の装置。
【請求項15】
前記ブリード弁がブリーダ管の頂部に設けられ、該ブリーダ管が特に圧力解放ダクトを介して高炉排ガス清浄化設備のスクラバ塔に連結されて成ることを特徴とする請求項1〜13の何れか1つに記載の装置。
【請求項16】
請求項14による少なくとも2つの装置及び又は請求項15による1つの装置を含んで成る高炉施設。
【請求項17】
高炉施設における高炉排ガスを解放するブリード弁であって、該ブリード弁が
排気口を画成し、弁座を有する固定中空弁体と
前記弁座と協同して前記ブリード弁を閉じ、前記排気口を通して高炉排ガスを解放するための開位置に移動可能、特に外側に移動可能、な可動閉塞子とを
含むものにおいて、
前記弁体又は前記可動閉塞子に点火手段が配置され、前記閉塞子が開位置にあるとき前記排気口を通して放出される炉排ガスが周囲空気を混合する前記排気口下流の領域に、その点火作用範囲が位置するようにし、
前記ブリード弁が前記ブリード弁によって周囲空気に放出された高炉排ガスの開空気燃焼を生ぜしるように構成されることを特徴とするブリード弁。
【請求項18】
前記ブリード弁が更に、
前記閉塞子に連結され、該閉塞子を前記弁座上の閉じ位置と前記弁座から離れた第1の開き位置の間で移動させる駆動機構と、
偏倚手段を有して、前記閉じ位置にある前記閉塞子を前記弁座に対して付勢し、前記中空弁体内の圧力が許容値を超えるとき前記閉塞子の緊急開きを第2の開き位置に許容する安全装置を含むものにおいて、
前記閉塞子が前記第1の開き位置又は前記第2の開き位置にあるとき前記排気口を通して放出される高炉排ガスが周囲空気と混合する前記排気口下流の領域にその点火作用範囲が位置するように前記点火手段を配置して成ることを特徴とする請求項17に記載のブリード弁。
【請求項19】
請求項2〜12の何れか1つに記載の点火手段を有することを特徴とする請求項17又は18に記載のブリード弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2012−527532(P2012−527532A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511274(P2012−511274)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056867
【国際公開番号】WO2010/133623
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(500173376)ポール ヴルス エス.エイ. (44)
【氏名又は名称原語表記】PAUL WURTH S.A.
【Fターム(参考)】