説明

ブレンド米およびそれを用いたレトルト食品及び無菌パック入り食品

【課題】摂食後の血糖値上昇も抑えることのできるブレンド米を提供。
【解決手段】ブレンド米を、通常の精白米である米と、短粒品種でアミロース含量が30%以上かつGI値が70以下の高アミロース米と、アミロース含量が30%以上の食用大麦とを配合して構成した。それにより、配合したときの血糖値上昇抑制効果が安定するとともに、通常の米飯と同様に見た目良く食することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米と、高アミロース米、食用大麦とで構成し、摂取後の急激な血糖値上昇を抑制できるブレンド米及びそれをレトルトパウチに封入したレトルト食品やパックに無菌充填した無菌パック入り食品に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国は世界有数の長寿国となっている反面、急速な高齢化にともなう生活習慣病、なかでも糖尿病は、患者数が約820万人と日本人における主要な疾患である。さらにその数は今後も急激な増加が予測されており、早急な予防対策が必須である。
【0003】
糖尿病を発症すると、網膜症、腎症、神経障害の3大合併症だけでなく、血管障害、感染症、白内障等を併発する場合がある。したがって、糖尿病の発症を予防・制御することは、人が健康的な生活を送る上で重要な課題である。
【0004】
糖尿病の治療は、食事療法と運動療法が基本であるが、血糖値が下がりにくい場合は、薬物が用いられる。しかしながら、各種薬剤には下痢、低血糖症状、肝障害等の副作用が見られる。それゆえ、日常の食品を用いて糖尿病を予防・制御することは、きわめて有効な手段である。
【0005】
近年では、糖尿病予防用や糖尿病患者用の食材としてエネルギーコントロール(カロリーコントロール)に配慮した数多くの食品が流通しており、なかでも主食においては、雑穀や蒟蒻を配合させ、摂取エネルギー、すなわち摂取カロリーを低減することのできる炊飯米も見かけるようになってきた(特許文献1参照)。
【0006】
しかし、高カロリー食品が血糖値が上がりやすい、低カロリー食品が血糖値が上がりにくいという考え方は正しくない。すなわち、単に摂取カロリーをコントロールするだけでは、食後の血糖値上昇をコントロールすることは難しい。
【0007】
一般的に、最も血糖値上昇に影響するのは、食品中の炭水化物(糖質)であり、近年では、その摂取量だけではなく、糖の質が非常に大事であることが明らかになってきた。すなわち、糖尿病を予防・制御することを目的とした食事には、食後過血糖値の急激な上昇を抑える、いわゆるグリセミックインデックス(GI)の低い食材の利用が適切である。GI値とは、糖質が消化され、吸収されて血糖値が上昇する度合いを数値化したもので、低GI食品では、食後血糖値上昇が緩やかになる。
【0008】
殊に、糖尿病患者の場合、正常者に比べ、食事による血糖値の上昇は急激であるとともに、インスリンの分泌量低下やインスリン抵抗性によって、血糖値低下が遅く、血糖値が高い状態が続くこととなり、低GI食品の重要性は非常に高い。
【0009】
事実、国際糖尿病連合から発表された食後血糖値管理に関するガイドラインにおいて、糖尿病患者における低GI食品を利用した食後血糖値コントロールの重要性が指摘されている。
【0010】
しかし、日本人の主食である米は、急激な食後血糖上昇を招く、いわゆる高GI食品である。
【0011】
上述したような特許文献1に記載の雑穀や蒟蒻を配合した炊飯米の場合、摂取カロリーを低減することはできる。しかし、主食としての食感(触覚)、見た目(視覚)及び旨味を得るためには所定量以上の白米の利用は避けられず、この所定量の白米を摂取することで血糖値が上昇するため、効果的な血糖値上昇抑制作用は得られなかった。
【0012】
また、特許文献2では、アミロース含量が25%以上の高アミロース米の血糖値上昇抑制効果について記載されている。これは、米粒の形状が細長い長粒品種の高アミロース米である「夢十色」を用いているものであるが、長粒品種の高アミロース米単独では、見た目、食感ともに満足することは難しく、また血糖値上昇抑制効果は大きくないため、低GIの条件(ブドウ糖を100としたときのGI値が55以下)を満たすことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】 特開平7−79719号公報
【特許文献2】 特開2005−328776号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、通常の米や雑穀米などと比べて血糖値上昇が緩やかなブレンド米を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、通常の米と比べ、血糖値上昇が緩やかとされる高アミロース品種の米および大麦において、食後血糖値上昇度合いに品種間差が顕著に存在することを見出し本発明の完成に至った。
【0016】
すなわち、本発明は、より血糖値上昇抑制効果が高い高アミロース米および食用大麦と、米とで構成するブレンド米であることを特徴とする。
これにより、通常の米と比べて摂取後の血糖値上昇を大幅に抑制することができる。
【0017】
上記高アミロース米はアミロース含量が30重量%以上である。
これにより、血糖値上昇抑制因子であるレジスタントスターチ含有量の増加が期待できる。
【0018】
上記高アミロース米はGI値が70以下であり、かつ短粒品種である。
これにより、配合したときの血糖値上昇抑制効果が安定するとともに、通常の米飯と同様に見た目(視覚)良く食することができる。
【0019】
上記高アミロース米が「越のかおり」、またはその類縁品種とすることができる。
このように、品種を限定することで、血糖値上昇効果、見た目(視覚)、食感(触覚)を安定して得ることができる。
【0020】
上記短粒品種とは、いわゆるタイ米のような米粒の形状が細長い長粒品種ではなく、ジャポニカ種に多く見られる米粒の形状が丸い品種のことを指す。
【0021】
上記高アミロース米は、玄米、5分づきあるいは精白米のようにあらゆる精米状態とすることができる。
【0022】
上記米は、うるち米、低アミロース米又は餅米であることを含み、さらに、玄米、5分づきあるいは精白米のようにあらゆる精米状態とすることができる。
【0023】
上記うるち米はアミロース量が約20%、低アミロース米はアミロース量が約10%、餅米はアミロースをほとんど含まない米を指す。
【0024】
上記食用大麦がポリフェノール含有量の低い低ポリフェノール品種とすることができる。
【0025】
上記低ポリフェノール品種の大麦は、ポリフェノールの含有量が低いため、炊飯白度が高く、通常の米飯と同様の見た目(視覚)を得ることができる。見た目(視覚)は味覚とともに食味に影響するため、食する際の見た目に違和感なく、おいしく食することができる。殊に、食事制限等により様々な制約が課せられた糖尿病患者においては、見た目(視覚)よく食せるため、満足度を向上することができる。
【0026】
さらにまた、炊飯後の時間経過に伴って褐色化する要因であるポリフェノールの含有量が低いため、炊飯後の時間経過した場合であっても褐色化しにくい炊飯米を得ることができ、利用者の満足度をさらに向上することができる。
【0027】
上記食用大麦が、「ファイバースノー」、またはその類縁品種の高アミロース、かつ低ポリフェノール品種とすることができる。
これにより、血糖値上昇抑制効果と、見た目、食感を安定して得ることができる。
【0028】
この発明の態様として、上記食用大麦の外形を、前記米の外形に合わせることができる。外形に合わせるは、形状及びサイズのうち少なくとも一方を合わせることをいう。
【0029】
またこの発明の態様として、前記米と、高アミロース米と、食用大麦の配合比を、糖質比として1:1:1.6〜1:1:2とすることにより、十分な血糖値上昇抑制効果と、通常の炊飯米と同様の見た目(視覚)、食感を得ることができる。
【0030】
また、この発明の態様として、食用形態を米飯、炊き込みご飯、赤飯、雑炊あるいはお粥とすることができる。
これにより、利用者の好みに応じた食用形態で本ブレンド米を食することができる。
【0031】
また、この発明は、上記ブレンド米をレトルトパウチに封入したレトルト食品であることを特徴とする。
これにより、利用者は、レトルトパウチごと加熱することで、温かく、均一な品質で摂取できるため、利用者にとっての利便性を向上することができる。
【0032】
また、この発明は、上記ブレンド米を、パックに無菌充填した無菌パック入り食品であることを特徴とする。
これにより、利用者は、パックごと加熱することで、温かく、均一な品質で摂取できるため、利用者にとっての利便性を向上することができる。
【発明の効果】
この発明によれば、見た目、食感ともに通常の米飯と同等の食後血糖値上昇が緩やかなブレンド米を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、米と、高アミロース米と、食用大麦とで構成するブレンド米である。
【0034】
上記米は、うるち米、低アミロース米又は餅米であることを含み、さらに、玄米、5分づきあるいは精白米のようにあらゆる精米状態とすることができる。
【0035】
前記高アミロース米は、アミロース含量が30重量%以上で、GI値が70以下かつ短粒品種の高アミロース米、例えば「越のかおり」、またはその類縁品種とすることができ、さらに、玄米、5分づきあるいは精白米のようにあらゆる精米状態とすることができる。
【0036】
上記食用大麦は、アミロース含量が30%以上で、低ポリフェノール品種の食用大麦、例えば「ファイバースノー」、またその類縁品種の食用大麦とすることができる。
【0037】
米と、高アミロース米と、食用大麦の配合比を、糖質比として1:1:1.6〜1:1:2とすることにより、十分な血糖値上昇抑制効果と、通常の炊飯米と同様の見た目(視覚)、食感を得ることができる。なお、上記比率範囲において、米と高アミロース米が同量である、かつ米と高アミロース米の合計と食用大麦が同等量であることが好ましいが、いずれかが少し程度多くても同様の血糖値上昇抑制効果を得ることができる。
【0038】
米と、高アミロース米と、食用大麦の上記比率範囲において、米に対する高アミロース米と、大麦のいずれかの比率が大幅に減少すると、十分な血糖値上昇抑制効果を得ることができない。
【0039】
また、米と、高アミロース米と、食用大麦の上記比率範囲において、米と高アミロース米が同量である、かつ米と高アミロース米の合計と食用大麦が同等量であることが好ましいが、1:1:2以上に食用大麦の比率が多くなると通常の米飯と同様の見た目(視覚)、食感(触覚)を得ることができない。
【0040】
また、前記ブレンド米の食用形態を米飯、炊き込みご飯、赤飯、雑炊あるいはお粥とすることで、利用者の好みに応じた食用形態で本ブレンド米を食することができる。
【0041】
このように、前記ブレンド米を、レトルトパウチに封入したレトルト食品とすることで、利用者は、レトルトパウチごと加熱することで、温かく、均一な品質で摂取できるため、利用者にとっての利便性を向上することができる。
【0042】
また、前記ブレンド米を、パックに無菌充填した無菌パック入り食品とすることで、利用者は、パックごと加熱することで、温かく、均一な品質で摂取できるため、利用者にとっての利便性を向上することができる。
【0043】
次に、前記ブレンド米の構成および効果について詳細に説明する。
まずは、14種類の大麦品種(A〜N)と3品種の高アミロース米(夢十色、越のかおり、ホシニシキ)およびその他雑穀における血糖値上昇抑制因子(アミロース含量、βグルカン量、RS:レジスタントスターチ)の分析値について表1に示す。
【表1】

上記RSは、消化酵素で分解されにくい澱粉成分のことで、βグルカン同様に血糖値上昇抑制効果が報告されている。
【0044】
図1−4で、米、高アミロース米、大麦およびそれらをブレンドした試験食の食後血糖値に及ぼす影響について説明する。本試験では、米として一般的に食されているコシヒカリを用いた。なお、これらの試験食は、加水量を一定(炊飯前重量の1.5倍量)に統一し、鍋で炊飯したものである。また試験には糖質量53.6g分の各種試験食および53.6gのブドウ糖を含むブドウ糖溶液(OGTT)を用いた。図1−4は、それぞれ健常被験者5名に摂食させた後、2時間後まで15分おきに血糖値測定を行い、その上昇度を折れ線グラフにしたものである。
【0045】
図1はOGTT、コシヒカリ、2品種の高アミロース米の食後血糖値応答について示している。2種類の高アミロース米はどちらもコシヒカリよりも食後血糖値上昇が緩やかであったが、表1に示すようにアミロース含量がほぼ同等であるにもかかわらず、「夢十色」より「越のかおり」のほうがその効果が高いことが判明した。
【0046】
図2は高アミロース米とコシヒカリを1:1で配合したときの同様の試験である。上記図1の試験と同様に「越のかおり」を配合したほうがより効果的であることが確認できた。また、「夢十色」が長粒種であるのに対し、「越のかおり」は短粒品種であるため、見た目も通常の米と遜色ないことがわかった。
【0047】
図3は、異なる大麦3品種とコシヒカリに血糖値上昇抑制効果が報告されているβグルカンを添加した試験食の食後血糖値応答について示した。大麦3品種は、最もアミロース含量が高いD、最もアミロース含量が低く、βグルカンを多く含むG、中程度のアミロース含量を示すJを用い、それぞれコシヒカリと1:1(糖質量として)に配合したものを試験食とした。なお、大麦Dは、高アミロースかつ低ポリフェノール品種である「ファイバースノー」である。
【0048】
コシヒカリにβグルカンを添加した試験食においては、血糖値上昇抑制効果は得られなかった。大麦3品種においては、アミロース含量が最も高いDで血糖値上昇抑制効果が最も高く、次いで中アミロースであったJ、最も低アミロースで高βグルカン品種であったGで効果が最も低かった。すなわち、血糖値上昇抑制効果が多く報告されているβグルカンよりも、アミロース含量のほうが、血糖値上昇抑制効果に及ぼす影響が大きいことが判明した。
【0049】
表2に上記図1−3の試験食のGI値を示す。GI値は上記図1−3の血糖上昇曲線下面積から、ブドウ糖溶液のGI値を100として算出した。
【表2】

【0050】
「越のかおり」のGI値は68で、コシヒカリより有意に低い値を示したが、高アミロース米や大麦を食するには、通常の米飯の食感を維持するため、ある程度の米を配合する必要がある。しかしながら、高アミロース米とコシヒカリ、大麦とコシヒカリを配合した試験食では、低GIの基準であるGI値55以下を満足することはできなかった。
【0051】
そこで、最もGI値が低かった、コシヒカリと大麦Dの組み合わせに、高アミロース米(越のかおり、夢十色)を、コシヒカリ:高アミロース米:大麦Dが、1:1:1または1:1:2(糖質比)となるように配合し、上記試験と同様に食後血糖値応答を調べた。
【0052】
上記試験結果を図4に示す。高アミロース米として「夢十色」を用い、上記コシヒカリ:高アミロース米:大麦Dの配合比が、1:1:1、1:1:2で配合した試験食では十分な血糖値上昇抑制効果は得られなかった。一方、高アミロース米として「越のかおり」を配合した試験食では、1:1:1の配合でも血糖値上昇抑制効果が見られ、1:1:2では予想以上に顕著な血糖値上昇抑制効果が得られた。
【0053】
表3に上記試験食のGI値を示す。
【表3】

上述のように、米と、越のかおりと、大麦Dを1:1:1、1:1:2で配合することで、GI値を有意に低下させることが確認できた。
【0054】
しかしながら、米と、越のかおりと、大麦Dの配合比が1:1:1であった場合、低GIの基準となるGI値55以下は達成できなかった。
【0055】
米と、越のかおりと、大麦Dの配合比が、1:1:1の時のGI値が89、1:1:2の時のGI値が35で、これらが比例関係にあると考えると、米と、越のかおりと、大麦Dの配合比が、1:1:1.6で、GI値が55となり、低GIの条件を満たすことがわかった。
【0056】
すなわち、米と、GI値が70以下の高アミロース米と、大麦Dの配合比が、1:1:1.6〜1:1:2であれば、非常に顕著な血糖値上昇抑制効果を示すと同時に低GIの基準を満たし、かつ通常の炊飯米と同様の見た目、食感が得られることが確認できた。
なお、米:高アミロース米:大麦の比率が1:1:0.5や1:1:3であった場合、十分な血糖値上昇抑制効果、通常の米飯と同等の見た目(視覚)、食感(触覚)は得られなかった。
【0057】
上述のブレンド米に、短粒品種の高アミロース米、低ポリフェノール品種の大麦を用いることにより、通常の白米と遜色ない見た目を得ることができる。
【0058】
さらにまた、低ポリフェノール大麦は炊飯後の時間経過に伴い褐変する原因となるポリフェノール含量が低いため、炊飯後に褐変しにくい。
【0059】
また、米:高アミロース米:大麦の上記比率範囲において、米と高アミロース米が同量である、かつ米と高アミロース米の合計と食用大麦が同等量であることが好ましいが、いずれかが少し程度多くても同様の血糖値上昇抑制効果を得ることができる。
【0060】
次に、上述したようなブレンド米の血糖値上昇抑制効果について、市販の炊飯器を用いて調理を行った場合の効果確認試験について説明する。
【0061】
まず、コシヒカリ:越のかおり:大麦Dを1:1:2で配合したブレンド米の重量に対して1.5〜2.5倍量の水で炊飯した。
【0062】
官能試験の結果、ブレンド米重量に対して、2.0〜2.5倍量の水で炊飯することで、通常の米と同等の食感が得られることが判明した。
【0063】
GI値は、調理方法などによっても影響を受けるため、加水量を増やすことにより、上記ブレンド米のGI値も変化することが予想される。
【0064】
そこで、上記ブレンド米を食感よく食することができるブレンド米重量に対して2.5倍量の水で、一般的な市販の炊飯器で調理した試験食を用いて健常被験者8名で食後血糖値応答を調べた。なお、比較としての米はコシヒカリを用い、米重量に対して1.5倍量の水で同様に調理したもので試験した。また、両試験食は糖質として53.6g分を摂取してもらい、同量のブドウ糖を含むブドウ糖溶液も同様に試験した。
【0065】
上記試験結果を図5に示す。上記ブレンド米は、加水量を増やして市販炊飯器で調理した場合でも有意な食後血糖値上昇の抑制が認められた。
【0066】
表4に上記試験食のGI値を示す。
【表4】

【0067】
このように、コシヒカリと越のかおりと大麦Dで構成したブレンド米は、加水量を増やし、一般的に市販されている炊飯器で調理した場合においても、顕著な血糖値上昇抑制効果が見られ、そのGI値は低GIの基準であるGI値55以下を満たしていることが確認できた。
【0068】
さらに、ブレンド米炊飯時の加水量を増やして炊飯することで、炊き上がりの重量が大幅に増加するため、炊飯後の重量で通常の炊飯米と同重量摂取すると、摂取カロリーが低減できることがわかった。
【0069】
例えば、通常のうるち米160g(569.6キロカロリー)に対して1.5倍量の水で炊飯した場合の炊き上がり重量は約380gで、炊飯後重量で1食約160gあたりでは240キロカロリーとなる。
【0070】
一方、上記ブレンド米では160g(559.2キロカロリー)に対して2.5倍量の水で炊飯すると、炊き上がり重量は約480gで、炊飯後重量160gあたり186キロカロリーとなるため、1食あたりの摂取カロリーは22.5%カロリー低減することができる。
【0071】
次に、効果確認試験に用いたブレンド米と長粒品種の高アミロース米である「夢十色」と見た目、食感の比較を行った。被験者6名にそれぞれの見た目、食感を5段階評価し、平均3以上を合格とした。
評価基準を示す。
5:非常に良い
4:良い
3:許容範囲内
2:悪い
1:非常に悪い
結果を表5に示す。
【表5】

【0072】
「夢十色」は、見た目も細長く、食感ともに不合格であった。食味もパサパサしており米飯としてはおいしさに欠ける結果となった。一方、ブレンド米は見た目、食感ともに良好で、通常の米飯と遜色なく食することができることがわかった。
【0073】
このように、上記ブレンド米は、米と、GI値が70以下で短粒品種の高アミロース米と、米と同じ形に加工した低ポリフェノール大麦とを配合して構成したため、通常の米飯と同様の見た目(視覚)と食感(触覚)を得ることができた。
【0074】
さらに、加水量を増やした場合、炊き上がり重量が増加するため、食した際の違和感がなくおいしく食することができ、食後血糖値のみならず、摂取カロリーを低減できるため、利用者の満足度を向上することができる。
【0075】
また、このように、違和感がなくおいしく食することができ、食後血糖値のみならず、摂取カロリーを低減できる上記ブレンド米を炊飯状態でパックに無菌充填し、無菌パック入り食品を構成した場合、電子レンジ等の加熱調理器で暖めるだけで、血糖値上昇抑制効果のあるブレンド米を容易に食することができるため、利用者の満足度を向上することができる。
【0076】
なお、上記ブレンド米は、上述したように米飯状だけではなく、お粥や、雑炊、その他の具材を入れて炊き込みご飯としてもよく、さらには、米を餅米で構成し、小豆と一緒に炊き上げて赤飯としてもよい。この場合、大麦の白さは問題とならないため、低ポリフェノール品種でない高アミロース品種の食用米や食用大麦を用いてもよい。
【0077】
さらに、上記ブレンド米をレトルトパウチに封入したレトルト食品とした場合、レトルトパウチごと加熱することで、温かく、均一な品質で摂取できるため、利用者にとっての利便性を向上することができる。なお、この場合、上述したように米飯状だけではなく、お粥や、雑炊、その他の具材を入れて炊き込みご飯としてもよく、さらには、米を餅米で構成し、小豆と一緒に炊き上げて赤飯としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】高アミロース米の食後血糖値試験結果のグラフ。
【図2】高アミロース米と米の食後血糖値試験結果のグラフ。
【図3】大麦と米の食後血糖値試験結果のグラフ。
【図4】米、高アミロース米、大麦Dの食後血糖値試験結果のグラフ。
【図5】炊飯器で調理したブレンド米の食後血糖値試験結果のグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米と、高アミロース米と、食用大麦とで構成するブレンド米。
【請求項2】
前記高アミロース米はアミロース含量が30重量%以上である
請求項1記載のブレンド米。
【請求項3】
高アミロース米はGI値が70以下であり、かつ短粒品種である
請求項2記載のブレンド米。
【請求項4】
高アミロース米が「越のかおり」、またはその類縁品種である
請求項2又は3記載のブレンド米。
【請求項5】
食用大麦がポリフェノール含有量の低い低ポリフェノール品種である
請求項1乃至4のうちいずれかに記載のブレンド米。
【請求項6】
前記食用大麦が、
「ファイバースノー」、またはその類縁品種の高アミロース、かつ低ポリフェノール品種である
請求項1乃至5のうちいずれかに記載のブレンド米。
【請求項7】
前記米と、前記高アミロース米と、前記食用大麦の配合比が、
糖質比として1:1:1.6〜1:1:2である
請求項1乃至6のうちいずれかに記載のブレンド米。
【請求項8】
食用形態が、炊飯、雑炊、あるいは炊き込み御飯である
請求項1乃至7のうちいずれかに記載のブレンド米。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちいずれかに記載のブレンド米を、レトルトパウチに封入した
レトルトパウチ食品。
【請求項10】
請求項1乃至8のうちいずれかに記載のブレンド米を、パックに無菌充填した
無菌パック入り食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−135849(P2011−135849A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299590(P2009−299590)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000106106)サラヤ株式会社 (44)
【Fターム(参考)】