説明

ブレード材、クリーナー及び画像形成装置

【課題】感光体の表面の接触部分に磨耗が発生することを抑制できるブレード材、クリーナー及び画像形成装置を提供することである。
【解決手段】ブレード材34は、感光体ドラムの表面に接触する接触層34aと、接触層34a上に重なっている支持層34bと、を備えている。接触層34aの損失正接及び温度の関係を示す曲線と、支持層34bの損失正接及び温度の関係を示す曲線とが、25℃以上45℃以下の範囲において、交差している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレード材、クリーナー及び画像形成装置に関し、特に、感光体の表面に接触するブレード材、クリーナー及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に用いられる従来のブレード材としては、例えば、特許文献1に記載のクリーニングブレードが知られている。該クリーニングブレードは、バックアップ層及びエッジ部分を備えている。バックアップ層及びエッジ部分は、ポリウレタン製弾性部材により構成されている。エッジ部分は、感光体に接触し、感光体の表面を清掃し、バックアップ層の先端に設けられている。
【0003】
また、特許文献1に記載のクリーニングブレードでは、バックアップ層のJIS−A硬度は、エッジ部分のJIS−A硬度よりも低く設定されている。このように、エッジ部分の硬度を相対的に高い硬度に設定することにより、エッジ部分の耐摩耗性及びクリーニング性の向上を図っている。また、バックアップ層の硬度を相対的に低い硬度に設定することにより、バックアップ層に永久ひずみが発生することを抑制している。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のクリーニングブレードは、以下に説明するように、エッジ部分に発生する磨耗を十分に抑制できていない。エッジ部分とバックアップ層とは、異なる損失正接(tanδ)を有している。エッジ部分の損失正接とバックアップ層の損失正接が異なっていると、エッジ部分が感光体の表面に接触することによって発生する振動が、エッジ部分とバックアップ層との境界において反射する。そのため、エッジ部分と感光体の表面との間で発生した振動とエッジ部分とバックアップ層との境界で反射した振動とにより、エッジ部分において定常波が発生する。これにより、エッジ部分には、エッジ部分が感光体の表面をすべることにより通常発生しているスティックスリップ振動に加えて、定常波による微小振動が発生し、接触層の磨耗が大きく進行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−66333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、感光体の表面の接触部分に磨耗が発生することを抑制できるブレード材、クリーナー及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係るブレード材は、像担持体の表面に接触する接触層と、前記接触層上に重なっている支持層と、を備えており、前記接触層の損失正接及び温度の関係を示す第1の曲線と、前記支持層の損失正接及び温度の関係を示す第2の曲線とが、25℃以上45℃以下の範囲において、交差していること、を特徴とする。
【0008】
本発明の一形態に係るクリーナーは、前記像担持体の表面を清掃するクリーナーであって、前記ブレード材を備えていること、を特徴とする。
【0009】
本発明の一形態に係る画像形成装置は、前記クリーナーを備えていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、感光体の表面の接触部分に磨耗が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像形成装置の印刷部を示した図である。
【図2】図1の作像ユニットの拡大図である。
【図3】図2の清掃部及び均し部の拡大図である。
【図4】従来の画像形成装置における接触層及び支持層の温度と損失正接(tanδ)との関係を示したグラフである。
【図5】画像形成装置における接触層及び支持層の温度と損失正接(tanδ)との関係を示したグラフである。
【図6】従来の画像形成装置において、接触層から入力した振動の伝播の様子を示した図である。
【図7】画像形成装置において、接触層から入力した振動の伝播の様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態に係るブレード材、クリーナー及び画像形成装置について説明する。
【0013】
(画像形成装置の概要)
図1は、画像形成装置10の印刷部3を示した図である。なお、本実施形態に係る画像形成装置10の印刷部3以外の構成は、一般的な画像形成装置の印刷部以外の構成と同じである。そこで、以下では、画像形成装置10の印刷部3の説明を行い、それ以外の構成については説明を省略する。
【0014】
画像形成装置10は、電子写真方式によるカラープリンタであって、いわゆるタンデム式で4色(Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:ブラック)の画像を合成するように構成されている。
【0015】
画像形成装置10の印刷部3は、図示しないカセットから供給されてくる用紙にトナー画像を形成し、図1に示すように、光走査装置(図示せず)、転写部8(8Y,8M,8C,8K)、中間転写ベルト(像担持体)11、駆動ローラ12、従動ローラ13、2次転写ローラ14、クリーナー17及び作像ユニット22(22Y,22M,22C,22K)を含んでいる。また、作像ユニット22(22Y,22M,22C,22K)は、図1に示すように、感光体ドラム(像担持体)4(4Y,4M,4C,4K)、帯電器5(5Y,5M,5C,5K)、現像装置7(7Y,7M,7C,7K)及びクリーナー9(9Y,9M,9C,9K)を含んでいる。
【0016】
感光体ドラム4(4Y,4M,4C,4K)は、円筒形状をなしており、図1において時計回りに回転させられる。感光体ドラム4は、電荷発生層及び電荷輸送層を有する積層型有機感光体である。感光体ドラム4の最表面には、5μmの厚さを有するオーバーコート層が設けられている。オーバーコート層には、50μmの粒径を有するSiO2微粒子が分散されている。これにより、オーバーコート層には、凹凸が形成されている。
【0017】
帯電器5(5Y,5M,5C,5K)は、感光体ドラム4(4Y,4M,4C,4K)の周面を帯電させる。光走査装置(図示せず)は、制御部(図示せず)の制御により、感光体ドラム4(4Y,4M,4C,4K)の周面に対してビームB(BY,BM,BC,BK)を走査する。これにより、感光体ドラム4(4Y,4M,4C,4K)の周面には静電潜像が形成される。
【0018】
現像装置7(7Y,7M,7C,7K)はそれぞれ、感光体ドラム4(4Y,4M,4C,4K)に静電潜像に基づくY,M,C,Kのトナー画像を現像する。
【0019】
中間転写ベルト11は、駆動ローラ12と従動ローラ13との間に張り渡されている。転写部8は、中間転写ベルト11の内周面に対向するように配置されており、感光体ドラム4に形成されたトナー画像を中間転写ベルト11に1次転写する役割を果たす。クリーナー9は、1次転写後に感光体ドラム4の周面に残存しているトナーを回収する。クリーナー9が回収したトナーは、廃トナーとして、スクリューによって図示しない回収ボックスに搬送される。なお、クリーナー9の詳細については後述する。駆動ローラ12は、中間転写ベルト駆動部(図1には記載せず)により回転させられることにより、中間転写ベルト11を矢印αの方向に駆動させる。これにより、中間転写ベルト11は、トナー画像を2次転写ローラ14まで搬送する。
【0020】
2次転写ローラ14は、中間転写ベルト11と対向し、ドラム形状をなしている。そして、2次転写ローラ14は、転写電圧が印加されることにより、中間転写ベルト11との間を通過する用紙に対して、中間転写ベルト11が担持しているトナー画像を2次転写する。クリーナー17は、中間転写ベルト11の表面に残存しているトナーを回収する。
【0021】
トナー画像が2次転写された用紙には、定着装置によって加熱処理及び加圧処理が施される。そして、印刷済みの用紙が、画像形成装置10外へ出力される。
【0022】
(クリーナーの構成)
次に、クリーナー9の構成について図面を参照しながら説明する。図2は、図1の作像ユニット22Kの拡大図である。以下では、図2における上下方向を単に上下方向、図2における左右方向を単に左右方向、図2における紙面手前方向及び紙面奥方向を単に手前方向及び奥方向と呼ぶ。図3は、図2の清掃部32及び均し部46の拡大図である。以下では、クリーナー9Kを例にとって説明をする。なお、クリーナー9Y,9M,9Cの構成は、クリーナー9Kと同じであるので、説明を省略する。
【0023】
クリーナー9Kは、図2に示すように、本体30、清掃部32、塗布ブラシ38、固形潤滑剤40、押圧部材44、均し部46及びスクリュー52を備えている。
【0024】
本体30は、内部が空洞となっている筐体であり、清掃部32、塗布ブラシ38、固形潤滑剤40、押圧部材44、均し部46及びスクリュー52を収容している。また、本体30は、感光体ドラム4から回収したトナーを収容する。
【0025】
清掃部32は、感光体ドラム4Kの表面を清掃するクリーナーであり、ブレード材34及び支持部材36を備えている。支持部材36は、例えば、金属板がL字状に折り曲げられてなり、本体30内に固定されている。
【0026】
ブレード材34は、支持部材36に取り付けられており、感光体ドラム4Kの表面に接触することによって、感光体ドラム4Kの表面に付着しているトナーを掻き落とす。より詳細には、ブレード材34は、図3に示すように、接触層34a及び支持層34bを備えている。
【0027】
接触層34aは、ポリウレタンゴム製のシートであり、図2の左端において感光体ドラム4Kの表面に接触している。接触層34aは、感光体ドラム4Kに対してカウンター方向に配置されている。カウンター方向に配置されているとは、接触層34aと該接触層34aが感光体ドラム4Kに接触している部分の進行方向を示すベクトルβとが鋭角θ1をなしていることを意味する。
【0028】
支持層34bは、ポリウレタンゴム製のシートであり、接触層34a上に重なっている。支持層34bの硬度は、接触層34aの硬度よりも低い。支持層34bの厚みは、接触層34aの厚みよりも大きい。これにより、支持層34bは、接触層34aが容易に変形しないように該接触層34aを支持している。また、支持層34bは、図2及び図3に示すように、支持部材36の下面に対してホットメルト接着剤により接着されている。これにより、ブレード材34は、支持部材36を介して本体30内に固定されている。
【0029】
固形潤滑剤40は、ステアリン酸亜鉛の粉体が溶融成形されてなり、板金からなる保持部材に両面テープにより固定されている。押圧部材44は、圧縮ばねであり、固形潤滑剤40を塗布ブラシ38に押し付けている。
【0030】
塗布ブラシ38は、図2に示すように、清掃部32よりも感光体ドラム4Kの回転方向の下流側において、該感光体ドラム4Kの表面に接触しているロール状のブラシ部材である。塗布ブラシ38の軸は、6mmの直径を有する鉄心である。塗布ブラシ38の繊維は、厚さ0.5mmの基布に織られている。そして、繊維が織られた基布が鉄心に巻きつけられることにより、塗布ブラシ38が構成されている。繊維の長さは、2.5mmであるので、塗布ブラシ38は、12mmの直径を有している。塗布ブラシ38の繊維の材料は、106Ω〜108Ωの抵抗値を有する導電性のポリエステルである。また、塗布ブラシ38の繊維の太さは、4d(デニール)であり、繊維密度は、150kF/inch2である。
【0031】
塗布ブラシ38は、感光体ドラム4Kと同方向に回転しており、固形潤滑剤40を感光体ドラム4Kに供給する。具体的には、塗布ブラシ38は、固形潤滑剤40を削ることによって粉体状に砕いた後、粉体状の固形潤滑剤40を感光体ドラム4Kに塗布する。感光体ドラム4Kのオーバーコート層には、凹凸が形成されているので、ステアリン酸亜鉛の粉体は、効率よく感光体ドラム4の表面に付着する。
【0032】
均し部46は、塗布ブラシ38により感光体ドラム4Kの表面に塗布された潤滑剤を均一な厚さに均し、ブレード材48及び支持部材50を備えている。支持部材50は、例えば、金属板がL字状に折り曲げられてなり、本体30内に固定されている。
【0033】
ブレード材48は、支持部材50に取り付けられており、感光体ドラム4Kの表面に接触することによって、塗布ブラシ38により感光体ドラム4Kの表面に塗布された潤滑剤を均一な厚さに均す。より詳細には、ブレード材48は、図3に示すように、接触層48a及び支持層48bを備えている。
【0034】
接触層48aは、ポリウレタンゴム製のシートであり、図2の左端において感光体ドラム4Kの表面に接触している。接触層48aは、感光体ドラム4Kに対してトレーリング方向に配置されている。トレーリング方向に配置されているとは、接触層48aと該接触層48aが感光体ドラム4Kに接触している部分の進行方向を示すベクトルγとが鈍角θ2をなしていることを意味する。
【0035】
支持層48bは、ポリウレタンゴム製のシートであり、接触層48a下に重なっている。支持層48bの硬度は、接触層48aの硬度よりも低い。支持層48bの厚みは、接触層48aの厚みよりも大きい。これにより、支持層48bは、接触層48aが容易に変形しないように該接触層48aを支持している。また、支持層48bは、図2及び図3に示すように、支持部材50の上面に対してホットメルト接着剤により接着されている。これにより、ブレード材48は、支持部材50を介して本体30内に固定されている。
【0036】
スクリュー52は、本体30内を奥側から手前側へと伸びており、清掃部32により回収されたトナーを廃トナーとして図示しない回収ボックスへと搬送する。
【0037】
(接触層及び支持層の特性について)
以下に、本実施形態に係る画像形成装置10の接触層34a,48a及び支持層34b,48bの特性についてより詳細に説明する。図4は、従来の画像形成装置における接触層及び支持層の温度と損失正接(tanδ)との関係を示したグラフである。図5は、画像形成装置10における接触層34a,48a及び支持層34b,48bの温度と損失正接(tanδ)との関係を示したグラフである。横軸は温度を示し、縦軸は損失正接(tanδ)を示す。図6は、従来の画像形成装置において、接触層から入力した振動の伝播の様子を示した図である。図7は、画像形成装置10において、接触層34a,48aから入力した振動の伝播の様子を示した図である。損失正接の測定は、JIS K6394に示された方法で行う。
【0038】
曲線C1は、接触層34a,48aの損失正接と温度との関係を示した曲線である。曲線C2は、支持層34b,48bの損失正接と温度との関係を示した曲線である。曲線C11は、従来の画像形性装置における接触層の損失正接と温度との関係を示した曲線である。曲線C12は、支持層の損失正接と温度との関係を示した曲線である。
【0039】
図4及び図5に示すように、損失正接と温度との関係を示した曲線C1,C2,C11,C12は、温度が上昇するに伴って増加した後、温度が上昇するに伴って減少する山形の形状をなしている。そして、材料によって、損失正接及び損失正接が最大となるときの温度が変化する。
【0040】
ここで、従来の画像形成装置では、図4に示すように、接触層の損失正接と温度との関係を示した曲線C11と、支持層の損失正接と温度との関係を示した曲線C12とは、25℃以上45℃以下の範囲(画像形成装置の実使用時の温度範囲)において交差していない。そのため、25℃以上45℃以下の範囲において、接触層の損失正接と支持層の損失正接との差は比較的に大きい。このように、接触層の損失正接と支持層の損失正接が異なっていると、接触層が感光体ドラムの表面に接触することによって発生する振動が、図6に示すように、接触層と支持層との境界において反射する。そのため、接触層と感光体ドラムの表面との間で発生した振動と接触層と支持層との境界で反射した振動とにより、接触層において定常波が発生する。これにより、接触層には、接触層が感光体ドラムの表面をすべることにより通常発生しているスティックスリップ振動に加えて、定常波による微小振動が発生し、接触層の磨耗が大きく進行する。
【0041】
一方、画像形成装置10では、接触層34a,48aの損失正接と温度との関係を示した曲線C1と、支持層34b,48bの損失正接と温度との関係を示した曲線C2とは、25℃以上45℃以下の範囲(画像形成装置の実使用時の温度範囲)において交差している。また、曲線C1における損失正接の最大値は、曲線C2における損失正接の最大値よりも小さい。更に、曲線C1の損失正接が最大となる温度T1は、曲線C2の損失正接が最大となる温度T2よりも低い。そして、25℃以上T0以下の範囲では、曲線C2における損失正接の方が曲線C1における損失正接よりも大きく、T0以上45℃以下の範囲では、曲線C1における損失正接の方が曲線C2における損失正接よりも大きい。以上のような曲線C1と曲線C2とは、曲線C1において損失正接が最大となる温度T1及び曲線C2において損失正接が最大となる温度T2よりも高い温度T0にて交差している。
【0042】
以上のように、曲線C1と曲線C2とが25℃以上45℃以下の範囲において交差していると、25℃以上45以下の範囲において、曲線C1の損失正接と曲線C2の損失正接との差が小さくなる。これにより、接触層34a,48aが感光体ドラム4Kの表面に接触することによって発生する振動が、図7に示すように、接触層34a,48aと支持層34b,48bとの境界において大きな反射を生じることなく、支持層34b,48bに進入する。支持層34b,48bは、接触層34a,48aに比べて低い硬度を有しているので、振動は、支持層34b,48bにおいて減衰し消滅する。その結果、接触層34a,48aに微小振動が発生することが抑制され、接触層34a,48aの磨耗が大きく進行することが抑制される。
【0043】
(実験結果)
本願発明者は、ブレード材34、クリーナー9及び画像形成装置10が奏する効果をより明確にするために、以下に説明する実験を行った。
【0044】
本願発明者は、第1の実施例ないし第7の実施例に係るブレード材34及び第1の比較例ないし第3の比較例に係るブレード材を作製した。そして、これらのクリーニング用のブレード材として感光体ドラムに接触させ、ブレード材の磨耗及び感光体ドラムのクリーニング不良の発生の有無を調べた。表1は、第1の実施例ないし第7の実施例に係るブレード材34及び第1の比較例ないし第3の比較例に係るブレード材の条件を示した表である。なお、本実験では、接触層のポリウレタンゴムとして、表1に示す品番のシンジーテック社製のポリウレタンゴムブレードを用いた。また、支持層の硬度を変更するために、プレポリマーと硬化剤を構成する材料種と部数を変えて支持層を成形した。
【0045】
【表1】

【0046】
表1では、接触層の損失正接と温度との関係の曲線と支持層の損失正接と温度との関係の曲線とが交差する温度を、曲線の交差温度と呼んでいる。
【0047】
以下に、詳細な実験条件を列挙する。
【0048】
画像形成装置:コニカミノルタビジネステクノロジーズ製bizhub C650(A4Y65枚/分、600dpi)を改造した画像形成装置
押圧部材が固形潤滑剤を塗布ブラシに押し付ける力:4N/m
クリーニング用のブレード材が感光体ドラムに及ぼす圧力:25N/m2
クリーニング用のブレード材と感光体ドラムとのなす角度(図2の角度θ1):15度
均し用のブレード材が感光体ドラムに及ぼす圧力:25N/m2
均し用のブレード材と感光体ドラムとのなす角度(図2の角度θ2):135度
現像剤:トナー及びキャリアからなる2成分現像剤
トナー:負帯電
温度:23℃
湿度:65%
【0049】
以上の条件下で、画像形成装置に画像濃度5%のチャートを連続で印刷させた。ブレード材の磨耗の判定については、感光体ドラムを600000回転させた後に、クリーニング用のブレード材の磨耗幅を顕微鏡観察により測定することによって行った。磨耗幅が20μm以下の場合には、磨耗が発生しなかったとして、○と評価した。磨耗幅が20μmより大きく30μm以下の場合には、問題のない程度の磨耗が発生したとして、△と評価した。磨耗幅が30μmより大きい場合には、問題のある磨耗が発生したとして、×と評価した。
【0050】
また、クリーニング不良の判定については、磨耗の判定を行った後のクリーニング用のブレード材を用いて、画像濃度100%で100mmの長さの帯画像を印刷した際に、クリーニング不良が発生したか否かを判定した。そして、クリーニング不良が発生しなかった場合には、○と評価した。問題のない程度のクリーニング不良が発生した場合には、△と評価した。問題となる程度のクリーニング不良が発生した場合には、×と評価した。表2は、実験結果を示した表である。
【0051】
【表2】

【0052】
表2によれば、第1の実施例ないし第7の実施例に係るブレード材34では、曲線の交差温度が25℃以上45℃以下の範囲に収まっているので、ブレード材に問題となる程度の磨耗が発生していない。
【0053】
一方、第1の比較例ないし第3の比較例に係るブレード材では、曲線の交差温度が25℃以上45℃以下の範囲に収まっていないので、ブレード材に問題となる程度の磨耗が発生している。よって、曲線の交差温度を25℃以上45℃以下とすることにより、ブレード材に問題となる程度の磨耗が発生することを抑制できることが分かる。
【0054】
また、第1の実施例ないし第5の実施例に係るブレード材34では、問題となる程度のクリーニング不良が発生していない。これは、接触層の硬度が支持層の硬度よりも高いためである。そして、表1及び表2によれば、曲線の交差温度が25℃以上45℃以下であって、接触層の硬度が75°以上80°以下であり、かつ、支持層の硬度が67°以上72°以下であり、かつ、接触層の硬度と支持層の硬度との差が6以上である場合に、問題となる程度のクリーニング不良の発生を抑制できることが分かる。硬度は、JIS A タイプ硬度計による測定値である。
【0055】
以下に、接触層の硬度が支持層の硬度よりも高い場合に、クリーニング不良の発生を抑制できる理由について考察する。接触層は、硬度が高い方がブレード材のニップ幅が小さくなるので、ブレードニップ内の圧力ピーク値が高くなる。これにより、ブレードのトナー阻止力が大きくなってクリーニング不良が抑制される。よって、接触層の硬度は、支持層の硬度よりも高いことが望ましい。
【0056】
(その他の実施形態)
本発明に係るブレード材、クリーナー及び画像形成装置は、前記実施形態に示したものに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。よって、ブレード材48の構成をブレード材34と同じ構成にしてもよい。これにより、ブレード材48の磨耗を低減できる。
【0057】
また、ブレード材34は、クリーナー17のブレード材に用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ブレード材、クリーナー及び画像形成装置に有用であり、特に、感光体の表面の接触部分に磨耗が発生することを抑制できる点において優れている。
【符号の説明】
【0059】
4Y,4M,4C,4K 感光体ドラム
9Y,9M,9C,9K クリーナー
10 画像形成装置
32 清掃部
34,48 ブレード材
34a,48a 接触層
34b,48b 支持層
36 支持部材
46 均し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体の表面に接触する接触層と、
前記接触層上に重なっている支持層と、
を備えており、
前記接触層の損失正接及び温度の関係を示す第1の曲線と、前記支持層の損失正接及び温度の関係を示す第2の曲線とが、25℃以上45℃以下の範囲において、交差していること、
を特徴とするブレード材。
【請求項2】
前記第1の曲線及び前記第2の曲線は、該第1の曲線において損失正接が最大をとなる温度及び該第2の曲線において損失正接が最大となる温度よりも高い温度にて交差していること、
を特徴とする請求項1に記載のブレード材。
【請求項3】
前記支持層の硬度は、前記接触層の硬度よりも低いこと、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のブレード材。
【請求項4】
前記接触層の硬度は、75°以上80°以下であり、
前記支持層の硬度は、67°以上72°以下であり、
前記接触層の硬度と前記支持層の硬度との差は、6以上であること、
を特徴とする請求項3に記載のブレード材。
【請求項5】
前記第1の曲線における損失正接の最大値は、前記第2の曲線における損失正接の最大値よりも小さいこと、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のブレード材。
【請求項6】
前記接触層は、前記像担持体の表面に付着したトナーを除去すること、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のブレード材。
【請求項7】
前記接触層は、前記像担持体の表面に塗布された潤滑材を均すこと、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のブレード材。
【請求項8】
前記像担持体の表面を清掃するクリーナーであって、
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のブレード材を備えていること、
を特徴とするクリーナー。
【請求項9】
請求項8に記載のクリーナーを備えていること、
を特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−203017(P2012−203017A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64479(P2011−64479)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】