説明

ブロッキング防止パウダー及び印刷方法

【課題】 耐刷性に優れ、汚れ故障を起こさないブロッキング防止パウダー、及びそれを用いた印刷方法を提供する。
【解決手段】 印刷版を印刷する時に用いるブロッキング防止パウダーであって、パウダーがアルファ化された澱粉であることを特徴とするブロッキング防止パウダー。該ブロッキングパウダー100mgを水1リットルに溶解させた時の濁度が50度以下であることが好ましい。
上記ブロッキング防止パウダーを用いて印刷することを特徴とする印刷方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル支持体を有する印刷版及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフセット印刷用印刷版の作製技術において、画像のデジタルデータをレーザー光源で直接印刷版材料に記録するCTP(コンピュータ・トゥー・プレート)システムが普及して来た。CTPシステムに使用される印刷版材料には、従来のPS版と同様にアルミニウム基材を使用するタイプとフィルム基材上に印刷版としての機能層を設けたフレキシブルタイプがある。近年、商業印刷においては印刷の多品種少部数化傾向が進み、市場では高品質で低価格な印刷版材料への要望が強く、フレキシブルタイプの印刷版材料が多く用いられている。
【0003】
フレキシブルタイプの印刷版材料としては、例えば特開平5−66564号に開示されるようなフィルム基材上に銀塩拡散転写方式の感光層を設けたもの、あるいは特開平8−507727号、同6−186750号、同6−199064号、同7−314934号、同10−58636号、同10−244773号等に開示されるようなフィルム基材上に親水性層と親油性層とを何れかの層を表層として積層し、表層をレーザー露光でアブレーションさせて印刷版を形成するように構成されたもの、あるいはフィルム基材上に親水性層と熱溶融性画像形成層を設け、レーザー露光により親水性層あるいは画像形成層を画像様に発熱させることで画像形成層を親水性層上に溶融固着させるもの等が挙げられる(例えば特許文献1参照)。
【0004】
他方、印刷用の画像形成方法として、環境適性等の観点より、画像データ書込み(画像様露光)後の印刷版を直接オフセット印刷機で印刷することにより、湿し水で非画像部の画像形成層のみ膨潤、溶解して印刷初期の印刷紙(損紙)上に転写除去する、いわゆる印刷機上で現像を行う方法が知られている(特許文献2及び特許文献3参照)。
【0005】
そして、上記のレーザー光を熱に変換し画像形成層を親水性層上に溶融固着させる方式のフレキシブルタイプの印刷版材料が、このプロセスに有利に用いられる。
【0006】
このような印刷版材料は、鮮鋭なドット形状、高精細な画像が得られ、又、露光後の現像プロセスを必要とせず、品質安定性、環境適性にも優れている。
【0007】
しかしながら、このような印刷版材料においては、従来のPS版等に比べ、その特性のために画像形成層が柔らかいことが多く、画像形成層に傷が付き易いなどの問題が指摘されていた。又、印刷に用いる湿し水にパウダーが混ざることにより、湿し水装置のフィルターの目詰まり、印刷物の非画線部に汚れが発生することも判っている。
【0008】
又、枚葉印刷機においては、表面を印刷後に裏面を印刷するが、この時に噴霧したブロッキング防止パウダーがブランケット胴に堆積したり、印刷版を傷付けたりして印刷故障を起こし、耐水性を劣化させることがあった。
【0009】
これらの点を改善するために、例えば湿し水装置に澱粉分解酵素を添加する技術が知られている(特許文献4及び5参照)。しかしながら、このような技術を用いても、効果が十分に発揮されているとは言えず更なる改良が望まれていた。
【特許文献1】特開2001−96710号公報
【特許文献2】特開平9−123387号公報
【特許文献3】特開平9−123388号公報
【特許文献4】特開平7−88468号公報
【特許文献5】特開平8−132754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、耐刷性に優れ、汚れ故障を起こさないブロッキング防止パウダー、及びそれを用いた印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は下記の構成により達成される。
【0012】
(請求項1)
印刷版を印刷する時に用いるブロッキング防止パウダーであって、パウダーがアルファ化された澱粉であることを特徴とするブロッキング防止パウダー。
【0013】
(請求項2)
ブロッキングパウダー100mgを水1リットルに溶解させた時の濁度が50度以下であることを特徴とする請求項1記載のブロッキング防止パウダー。
【0014】
(請求項3)
請求項1又は請求項2記載のブロッキング防止パウダーを用いて印刷することを特徴とする印刷方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のブロッキング防止パウダーの使用により、印刷版の耐久性に優れ、湿し水の汚れが少なく、かつ印刷品質が向上した印刷物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、ポリエステル支持体の一方の面に機上現像性を有する画像形成機能層を塗設した印刷版の印刷において、該印刷版を印刷する時に用いるブロッキング防止パウダーであって、ブロッキング防止パウダーがアルファ化された澱粉を用いることを特徴とし、このパウダーは機上現像性を有する印刷版の印刷で最大の効果を発揮する。
【0017】
(ブロッキング防止パウダー)
従来のブロッキング防止パウダーは主に澱粉を主成分とし、表面にシリコン樹脂をコーティングして撥水性を持たせたものが主流である。この種のパウダーは湿し水の影響を受けず、ブロッキング防止には優れたものがあった。しかしながら、水に不溶なためパウダーが何時までも残り、印刷装置や印刷版に悪影響を与えている。
【0018】
本発明に用いられるブロッキング防止パウダーも澱粉を主成分としているが、該澱粉がアルファ化されていることを特徴とする。
【0019】
澱粉の種類と構造に関して、澱粉は原料となる植物の種類に分けられ、又、地上で取れる澱粉と地下に生ずる澱粉とに分けられる。地上澱粉としては、穀類澱粉(米、小麦、玉蜀黍)、茎幹澱粉、種子澱粉が挙げられる。又、地下澱粉としては、根茎澱粉(馬鈴薯)、塊根澱粉(甘藷、タピオカ、葛)が挙げられる。澱粉は、それぞれ性質が異なるもので、澱粉粒の形状や大きさや、澱粉粒を構成している成分、その含有量などによって、それぞれ特徴ある性質を示している。
【0020】
澱粉には前述のように各種が存在するが、本発明では、これらの中でも極めて純度が高く、品質を均一に保てるコーンスターチを用いることが好ましい。澱粉は葡萄糖が結合したアミロースとアミロペクチンという高分子化合物により構成され、アミロースは、葡萄糖の分子が長い鎖状(あるいは螺旋状)に結合した単純な構造をしており、アミロペクチンは、葡萄糖の鎖状結合が網の目のような構造となっており、更に枝分かれをしている複雑な構造となっている。
【0021】
結合している葡萄糖の数は、アミロースが数十〜数百個、アミロペクチンでは数百〜数十万個にも及ぶ。アミロースとアミロペクチンの含有量は澱粉の種類によって異なり、これが糊化状態での粘り強弱等に現れるなど、それぞれの澱粉の性質の違いとなっている。
【0022】
(アルファ化澱粉とその製造方法)
通常の澱粉は水に溶けず、ベータ澱粉と呼ばれる構造をしている。このベータ澱粉に水を加えて熱すると、全体が一様にコロイド状態となる。これをアルファ化(糊化)と言うが、アルファ化した澱粉は、元の澱粉と著しく性質を異にする。これは、澱粉を構成しているアミロースとアミロペクチンの強固な結合が、水と熱によって崩れるために起きる現象で、これがアルファ化であり、アルファ化した澱粉をアルファ澱粉と言い、元の澱粉をベータ澱粉と言う。炊飯や餅を作ったり、パンを焼いたり、クッキーに仕上げるのは、原料中の澱粉をアルファ化して美味しく食べられるようにするためで、古くなったパンや冷飯がボソボソして不味いのは元のベータ澱粉に戻ったからである。
【0023】
澱粉はアルファ化(糊化)に伴なって粘性を生ずるが、粘度の変化は、澱粉の種類・澱粉粒の大きさ・水の量・撹伴の仕方・加熱温度・加熱時間によって異なり、更に糊化終了後の温度変化・経過時間などが大きな影響を及ぼす。アルファ化と共に考えなくてはならないのは澱粉の老化(ベータ化)である。熱せられアルファ化したものは流動性を持っているが、冷却されると次第にアミロース分子が、或る程度、元の配列に戻り始める(澱粉の老化=ベータ化)。結果的には、アミロース含量の高い澱粉ほど、澱粉のベータ化は進むことになる。
【0024】
アルファ化澱粉とは、アルファ化した澱粉を、そのままの性質が維持できるように急速に乾燥した加工澱粉のことを言う。例えば即席餅、即席しるこ、煎餅、最中の皮、ウエハース、微塵粉、寒梅粉、オブラート等は、この原理によって製造されたものである。アルファ化澱粉は各種の澱粉から製造されるが、何れの場合も加熱糊化した澱粉を高温のまま急速に乾燥、あるいは瞬間冷凍後の真空中(昇華現象を利用)で乾燥し、0〜10%の水分にすることでベータ化への進行を抑えた澱粉である。アルファ化澱粉が再びベータ化する条件には、温度と水分が関係する。ベータ化の速度は、澱粉に対して水分が30〜60%の時が最大で、温度は0℃に近づくほどベータ化し易い性質を持つ。本発明における澱粉のアルファ化度は90%以上が好ましいが、より好ましくは95%以上である。
【0025】
本発明における澱粉のアルファ化方法には特に制限はない。下記に一例を示す。
【0026】
まず、原料の玉蜀黍を送風精選機、石分離機等でゴミを取り除き、0.25〜0.30%の亜硫酸水に浸漬する。50〜60時間経過すると、硬い玉蜀黍は膨潤して軟らかくなる。この軟かくなった玉蜀黍をグラインダーで磨砕し、大きな水槽中に流し込み、攪拌し液面に浮かんだ胚芽を取り除き、澱粉液をシフトして澱粉を沈澱させ、これを脱水機にかけて乾燥する。
【0027】
精製した澱粉を水中に懸濁し加熱すると、澱粉粒は吸水して次第に膨張する。加熱を続けると最終的には粒子が崩壊して溶解する。条件としては、コーンスターチでは、65〜76℃の範囲で全体が透明になるまで加熱する。その後、乾燥を行い、10%以下にまで水分を飛ばす。加熱糊化した澱粉を高温のまま急速に乾燥、あるいは瞬間冷凍後の真空中(昇華現象を利用)で乾燥し、0〜10%の水分にする乾燥方法が好ましい。粉砕に用いる装置としては特に制限なく、各種の粉砕機を使用することが出来る。代表的なものにジェットミル、ハンマーミル、ボールミル、ホモジナイザー等が挙げられるが、好ましくはジェットミルである。その後、分級処理を行い、均一な粒径のアルファ化澱粉のブロッキング防止パウダーを得る。
【0028】
(濁度)
本発明では、ブロッキング防止パウダー100mgを水1リットルに溶解させた時の濁度が50度以下であることを特徴とする。濁度が高いということは、即ち溶解性が低いことを意味する。溶解性が低い場合は、パウダーがブランケットに残ってしまい、印刷版の耐刷性を劣化させてしまう。濁度が1度の状態とは、日本では、水1リットル中に標準カオリン1mgを含む時の濁りに相当するものを1度として表す。即ち、濁度が10度とは、水1リットル中に標準カオリン10mgを含有する時の濁りと同じである。濁度は市販の濁度計(例えばオルガノ社製:2100P型)で測定することができる。
【0029】
(ブロッキング防止パウダーの使用形態)
ブロッキング防止パウダーの使用形態としては、ブロワー式、電子噴霧式の何れでもよい。好ましい平均粒径としては、印刷する紙によっても変わって来るが、通常使用される連量70kg程度の上質紙、90kg程度のコート紙等においては3〜50μmが好ましく、より好ましくは5〜30μmである。
【0030】
(印刷版材料)
通常知られている機上現像性を有する印刷版材料と組み合わせるのが好ましい。機上現像性を有する印刷版材料の構成としては、例えば特開2000−238451のものを用いることが出来る。
【0031】
(印刷方法)
印刷版材料は、画像形成機能層を有する面から画像データに応じてレーザー光で画像露光され、その後印刷機上で現像され印刷版が得られる。即ち、本発明の印刷版は印刷版材料をレーザー光により画像露光後、印刷機上で現像して得られるものである。
【0032】
上記露光は、より具体的には赤外及び/又は近赤外領域で発光する、即ち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用して、走査露光を行うことが特に好ましい。
【0033】
本発明に用いることができる走査露光に好適な装置としては、半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。一般的には、以下の3方式が挙げられる。
【0034】
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に1本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式。
【0035】
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から1本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式。
【0036】
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から1本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式。
【0037】
このようにして画像形成が為された印刷版材料は、特に湿式の現像処理を行うことなく印刷工程に適用できる。即ち、画像露光後の印刷版材料を、そのまま印刷機の版胴に取り付けるか、あるいは印刷版材料を印刷機の版胴に取り付けた後に、版胴を回転させながら水供給ローラー及び/又はインク供給ローラーを印刷版材料に接触させることで画像形成機能層の非画像部を除去することが可能である。
【0038】
印刷機上での画像形成機能層の非画像部(未露光部)の除去は、版胴を回転させながら水付けローラーやインクローラーを接触させて行うことができるが、下記に挙げる例のような、もしくは、それ以外の種々のシークエンスによって行うことができる。又、その際には、印刷時に必要な湿し水水量に対して、水量を増加させたり、減少させたりといった水量調整を行ってもよく、水量調整を多段階に分けて、もしくは、無段階に変化させて行ってもよい。
【0039】
(1)印刷開始のシークエンスとして、水付けローラーを接触させて版胴を1〜数十回転させ、次いでインクローラーを接触させて版胴を1〜数十回転させ、次いで印刷を開始する。
【0040】
(2)印刷開始のシークエンスとして、インクローラーを接触させて版胴を1〜数十回転させ、次いで水付けローラーを接触させて版胴を1〜数十回転させ、次いで印刷を開始する。
【0041】
(3)印刷開始のシークエンスとして、水付けローラーとインクローラーとを実質的に同時に接触させて版胴を1〜数十回転させ、次いで印刷を開始する。
【0042】
(印刷)
本発明の印刷に用いられる印刷機としては、一般に公知の、湿し水及び平版印刷インキを用いる平版オフセット印刷機が使用できる。
【0043】
本発明では、平版印刷版材料を、上記のように画像様露光した後に、平版印刷機上で湿し水又は湿し水と印刷インキにより現像を行い、印刷版とした後、印刷する。
【0044】
印刷は、まず片面を印刷し、その時にブロッキング防止パウダーを適量噴霧する。その後、裏面の印刷を行う。その印刷方法の詳細を図面により説明する。
【0045】
本発明に用いた印刷機は、図1に示すように、給紙装置部、印刷ユニット、排紙装置部から成るが、図2に印刷ユニットから排紙装置部に至る工程にブロッキング防止パウダー噴霧ノズル(以下、パウダー噴霧ノズルと称す)を設けることを示す概略図を示す。印刷ユニット1は版胴2、ブランケット胴3、圧胴4を主体とし、印刷用紙7(図示せず)が排紙装置に至る迄にパウダー噴霧ノズルからブロッキング防止パウダーを噴霧される。
【0046】
図3は印刷用紙の表面印刷時の、図4は引き続き印刷用紙の裏面を印刷する時の印刷用紙の状態を示すための拡大図である。
【0047】
図3aにおいて、版胴2で湿し水、インキが施された印刷版は、ブランケット胴3と圧胴4の間を通過する印刷用紙7の表面に印刷された後、排紙装置に達する迄に、パウダー噴霧ノズル8からブロッキング防止パウダー9aを噴霧され、排紙装置中に印刷後の用紙10として積み重ねられる。この時、当然、印刷用紙の裏面(次に印刷される面)にもブロッキング防止パウダーが転写される。
【0048】
図3bにおいて、転写されたブロッキング防止パウダー9bを印刷面に有する印刷後の用紙10は、ブランケット胴3と圧胴4の間を通過する際に印刷されるが、この時、ブロッキング防止パウダー9bはブランケット胴3を介して版胴2にも転写し、印刷版を損傷する懼れがある。しかし、本発明で用いるアルファ化澱粉は水溶性なので、湿し水によって溶解し、その心配は全くない。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
【0050】
〈ブロッキング防止パウダーの作製〉
以下のように4種類のパウダーを作製した。
(パウダーA)
原料の玉蜀黍10kgを送風精選機、石分離機でゴミを取り除き、0.30%の亜硫酸水50リットルに浸漬した。50時間後、軟かくなった玉蜀黍をグラインダーで磨砕し、次に水槽に流し込み、攪拌して液面に浮かんだ胚芽を取り除き、澱粉液をシフトして澱粉を沈澱させ、これを脱水機にかけて水分が10%になるまで乾燥させた。
【0051】
その後、クロスジェットミル(栗本鐵工所社製)で粉砕した。レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製:SALD−2200)を用いて測定し、中心粒径20μmの澱粉パウダーを得た。
(パウダーB)
原料の玉蜀黍10kgを送風精選機、石分離機でゴミを取り除き、0.30%の亜硫酸水50リットルに浸漬した。50時間後、軟かくなった玉蜀黍をグラインダーで磨砕し、次に水槽に流し込み、攪拌して液面に浮かんだ胚芽を取り除き、澱粉液をシフトして澱粉を沈澱させ、これを脱水機にかけて水分が10%になるまで乾燥させた。
【0052】
乾燥させた澱粉1kgを水10リットルに懸濁し加熱した。加熱を続け最終的に粒子を溶解した。加熱条件は60℃であった。その後乾燥を行い、10%以下まで水分を飛ばした。そして加熱糊化した澱粉を高温のまま急速に乾燥し、含水量5%とした。
【0053】
その後、クロスジェットミル(前出)で粉砕した。レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2200:前出)を用いて測定し、平均粒径20μmのアルファ化澱粉パウダーを得た。
(パウダーC)
パウダーB作製での加熱条件を75℃とした以外はパウダーBと同一手順で行い、平均粒径20μmのアルファ化澱粉パウダーを得た。
(パウダーD)
原料を馬鈴薯とした以外は、パウダーCの作製方法と同一手順で行った。平均粒径60μmのアルファ化澱粉を得た。
【0054】
〈評価〉
パウダーA〜Dの濁度、これらパウダーを印刷時に用いた時のブロッキング防止性及び耐刷性を下記評価基準に従って評価した。
【0055】
《濁度》
濁度計(オルガノ社製:2100P型)を用いて、25℃の水1リットルに各パウダーを100mg溶解し、30秒撹拌後に測定した。濁度が50度以下のものを合格とした。
【0056】
《ブロッキング防止性》
ベタ部分が紙面の50%以上を占める画像3,000枚を印刷して棒積みにし、24時間放置した。その後、一番下側に積まれていた100枚の貼付きをチェックした。少しも貼付きの無いものをA、貼り付くが、簡単に紙を捌ける状態のものをB、捌けないものをCとした。B以上のものを合格とした。
【0057】
《耐刷性》
まず、表面全体に適当な模様(テストバターン)のある画像を印刷する。その後、裏面を全面50%網点画像で印刷する。裏面の50%網点画像が一部でも欠け始めた時点の印刷枚数を耐刷性の指標とした。20,000枚以上になるものを合格とした。
(印刷版材料)
特開2005−14409に記載の構成で作製したもの(PET支持体上に親水性層、画像形成層を設けた印刷版材料)を使用した。
(印刷条件)
印刷機:三菱重工工業社製DAIYA F−1
印刷用紙:OKトップコート
湿し水:アストロマーク3(日研化学研究所製)を2%
インク:トーヨーキングハイエコーM紅(東洋インキ社製)
パウダー噴霧量:(少量)6±2個/mm2、(多量)15±2個/mm2
結果を纏めて表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1より、本発明のブロッキング防止パウダーは、耐刷性に優れ、ブロッキング防止効果も劣化せず、優れた印刷適性を有していることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に用いた印刷機の一例を示す全体概略図である。
【図2】印刷ユニットから排紙装置部に至る工程を示す拡大概略図である。
【図3】印刷用紙の表面印刷時の印刷用紙の状態を示すための拡大図である。
【図4】印刷用紙の裏面印刷時の印刷用紙の状態を示すための拡大図である。
【符号の説明】
【0061】
1 印刷ユニット
2 版胴
3 ブランケット胴
4 圧胴
5 インキローラー
6 水付けローラー
7 印刷用紙
8 パウダー噴霧ノズル
9a ブロッキング防止パウダー
9b 転写したブロッキング防止パウダー
10 印刷後の用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷版を印刷する時に用いるブロッキング防止パウダーであって、パウダーがアルファ化された澱粉であることを特徴とするブロッキング防止パウダー。
【請求項2】
ブロッキングパウダー100mgを水1リットルに溶解させた時の濁度が50度以下であることを特徴とする請求項1記載のブロッキング防止パウダー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のブロッキング防止パウダーを用いて印刷することを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−231565(P2006−231565A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−45837(P2005−45837)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】