説明

ブロック付きのトレッド

複数個のゴムブロック(3)を有するタイヤトレッド(1)であって、各ゴムブロック(3)は、深さ(H)及び閉じられた輪郭の切込み(2)によって画定され、このトレッドは、切込み(2)の深さ(H)のせいぜい60%に等しい深さ(P1)の第1の部分上に、側壁(31)のこの側壁に対向した壁(31′)に対する運動を制限するよう設計された不動化手段を有し、不動化手段は、壁に設けられた第1の振幅のものであって、壁に対向した壁に設けられている幾何学的形状と相互に関連し又は幾何学的形状に嵌まり込む幾何学的形状から成り、更に、切込みの深さ(H)のせいぜい60%に等しい深さ(P2)を有すると共に深さ(P1)の第1の部分の延長部として設けられた切込みの第2の部分上に、第2の振幅の又は直線状の(即ち、ゼロ振幅の)幾何学的形状を有するようなものであり、第2の振幅は、第1の振幅よりも小さく、切込みの第1の部分は、ブロックの第1の部分(301)を画定し、切込みの第2の部分は、ブロックの第2の部分(302)を画定し、ブロックの第2の部分(302)の最大断面積は、ブロックの第1の部分(301)の最大断面積よりも大きい、トレッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド、特に、摩耗に起因した有効寿命を減少させないで水で覆われた路面に対するグリップ性能の向上をトレッドに与える新規な切込み幾何学的形状を有するかかるトレッドのパターンに関する。
【0002】
本発明は、新規なタイヤの製造又はタイヤの更生(山掛け)向きに設計されたトレッド、特に、溝及び/又は切込みの形態を取る多数の切れ目を有するトレッド用パターンに関する。本明細書における「切込み」という用語は、幅が事実上ゼロであり、どのような場合であっても、幅が2mm以下の切れ目を意味し、溝は、幅が2mmを超える切れ目である。
【背景技術】
【0003】
日本国特開2003‐3104012(A1)号公報から、濡れた路面に対する良好なグリップを得るために、走行面上における経路が正方形の形のものであり、トレッドのゴムのブロック内で閉じられ、これらブロックを画定する溝と同一の幅を持つ切込みを形成することが知られている。
【0004】
また、例えば、米国特許第2100084号明細書及び同第2339558号明細書から、走行面上における経路が全て走行面に対して接線方向に向いた効果的な突条を設けることができるようにする一定直径の閉じられた円形のものである切込みを形成することが公知のやり方である。これら切込みの各々は、トレッドのベース、即ち、転動から見て最も遠くに位置するパッドの部分にのみ連結されたゴムパッド(このゴムパッドの断面は、トレッドの幅と比較して、比較的小さな寸法を有する)を画定すると共にこれを隔離している。このゴムパッドは、路面との接触中、圧縮され、このゴムパッドは又、転動中、路面との接触表面に対して接線方向に作用する力を受け、かかる力は、ゴムパッドを剪断の際と曲げの際の両方において変形させる傾向がある。このゴムパッドは、転動面の垂線に対して僅かに傾けられており、それにより、パッドの曲げに鑑みて、パッドを画定している切込みが開くようになる。
【0005】
独国特許第4107547(C2)号明細書は、転動面上における経路が円形であり且つ閉じられている切込みを有するトレッドを記載しており、この切込みは、深さ中において一定直径のものであり、しかも転動面の垂線に対して、その高さの一部分にわたり、20°〜60°の角度で傾けられ、次に、転動面から見て最も遠くに位置する部分では、20°までの小さな角度をなして傾けられている。この切込みは、材料のパッドを画定する。円形切込みの勾配又は傾斜度の変化は、トレッドに設けられている溝の深さの約1/3のところで起こる。
【0006】
独国特許出願公開第4426950(A1)号明細書は、形状が閉じられた円形のものであり且つ直径が一定の切込みを有するトレッドを記載しており、これら切込みの各々は、表面が転動面の垂線に対して傾けられたパッドを画定すると共にこれを隔離しており、この表面は、パッドがかかるトレッドを備えたタイヤの有効寿命中に引き剥がされるのを阻止するために転動面の半径方向内側寄りにオフセットされている。
【0007】
欧州特許第0664230(B1)号明細書は、転動面上における経路が、例えば閉じられた円形のものである切込みを有するトレッドを記載しており、これら切込みの各々は、周囲が転動面に平行な表面全体にわたって測定して、その高さの少なくとも一部分にわたって連続的に増大し、次に減少するが、転動面のところの周長よりも大きいままであるゴムパッドを画定すると共にこれを隔離しており、その目的は、剥取りの際の問題を軽減すると共にゴムパッドの表面が転動面に対して突き出る恐れを減少させることにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本国特開2003‐3104012(A1)号公報
【特許文献2】米国特許第2100084号明細書
【特許文献3】米国特許第2339558号明細書
【特許文献4】独国特許第4107547(C2)号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第4426950(A1)号明細書
【特許文献6】欧州特許第0664230(B1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の先行技術の解決策は全て、閉塞することのない切込みに関するものであり、即ち、切込みを画定する壁が一方の壁のこの壁に対向した壁に対する相対運動を減少させ又はなくす手段を備えていない切込みに関する。この結果、パッドの変形が生じ、その結果ヒステリシス損失が生じ、かかるヒステリシス損失により、転がり抵抗が増大すると共に特にパッドの回りでの不規則な摩耗が生じる。「不規則な摩耗」という用語は、この場合、転動面全体にわたって一様ではなく、即ち、トレッドの全体と比較してこれよりも局所的に大きい摩耗を意味している。
【0010】
タイヤトレッドの「有効寿命」という用語は、摩耗が交換又は更生のためにタイヤの取り外しを必要とする摩耗限度に達する前におけるトレッドの使用期間であると理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的のうちの1つは、閉塞可能な又は閉塞性の切込みにより画定された複数個のゴムパッドを備え、転がり抵抗及び不均一な摩耗に対する抵抗が先行技術のトレッドに対して向上しているが、摩耗に関連した有効寿命を減少させず、剥取りが容易であり且つパッドを新品状態の転動面に対して突き出させないようにするトレッドを提案することにある。
【0012】
この目的は、厚さEを有すると共に走行中、路面に接触するよう設計された転動面を備えるタイヤトレッドであって、トレッドは、トレッドの転動面を切断する中央軸線XX′を備えた複数個のゴムパッドを有するタイヤトレッドによって達成される。各ゴムパッドは、せいぜいトレッドの厚さEに等しい高さHを備え、各ゴムパッドは、中央軸線XX′を中心としてゴムパッド周りに延びる側壁を有し、側壁は、転動面を突条に沿って切断し、転動面上における突条の幾何学的経路は、閉じられ、突条は、路面とのゴムパッドの接触フェースを画定している。各パッドは、路面とのこのパッドの接触フェースから距離Hのところに位置したベースを有する。
【0013】
各ゴムパッドの側壁は、そのベースのところで、側壁に対向した側壁に連結可能に連結部分によって連結され、ゴムパッドの側壁及びこの側壁に対向した側壁は、平均幅e及び高さHの切込み(2)を画定している。
【0014】
さらに、各パッドの側壁及び該側壁に対向した側壁は、切込みの深さHのせいぜい60%に等しい深さP1の切込みの第1の部分上に、側壁の側壁に対向した壁に対する運動を制限するよう設計された閉塞手段を有し、閉塞手段は、壁に設けられた第1の振幅のものであって、壁に対向した壁に設けられている幾何学的形状と相互に関連し又は幾何学的形状に嵌まり込む幾何学的形状から成り、各パッドの側壁及び該側壁に対向した側壁は、切込みの深さHのせいぜい60%に等しい深さP2のものであって、深さP1の第1の部分の延長部として設けられた切込みの第2の部分上に、第2の振幅の又は直線状の(即ち、ゼロ振幅の)幾何学的形状を更に有し、第2の振幅は、第1の振幅よりも小さい。
【0015】
さらに、切込みの第1の部分は、パッドの第1の部分を画定し、切込みの第2の部分は、パッドの第2の部分を画定し、パッドの第2の部分の最大断面積は、パッドの第1の部分の最大断面積よりも大きい。「断面」という用語は、パッドをパッドの中央軸線XX′に垂直な平面上で切断する切断平面で得られたパッドの経路を意味している。「最大断面」という用語は、パッドの問題の部分に関して最大の面積を有するパッドの経路を意味している。
【0016】
中央軸線XX′は、トレッドの転動面をこの表面に垂直であり又はこの表面に対して斜めの(即ち、垂直ではない)方向に切断している。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、各パッドの側壁及びこの側壁に対向したトレッドの側壁により画定された切込みの幾何学的形状は、断面で見て、パッドの高さのせいぜい60%に等しい深さの第1の部分にわたって大きな振幅の破線又はジグザグの経路を有し、第2の部分の幾何学的形状は、振幅が小さく且つ波の長さが大きく、パッドの高さのせいぜい60%に等しい深さにわたって直線状である波状に起伏した経路を有する。転動面に垂直な任意の断面平面に関し、新品状態の転動面上における切込みの端部とトレッドの最も内側の箇所を結ぶ線分は、パッドのベースの表面積がトレッドの接触表面のところに位置したパッドの接触表面積よりも大きいような勾配又は傾斜度を有する。
【0018】
各切込みは、主として互いに向かい合った2つの主要壁相互間に画定された空間によって構成され、側壁は、転動面に垂直であり又はこれに対して斜めである。有利には、重量物運搬車両用に設計されたトレッドの場合、ゴムパッドを画定する切込みの幅は、2mm未満であり、好ましくは0.05mm〜2mmである。
【0019】
「閉じられた切込みにより画定されたゴムパッドの中央軸線XX′」という表現は、パッドのベースの幾何学的重心、即ち、トレッド中に最も遠くのところに位置するパッドの部分と路面とのパッドの接触表面の幾何学的重心を結ぶ線分を意味しており、この方向は、ゴムパッドが転動面に垂直である場合、転動面と90°の角度をなす。
【0020】
本発明に従ってゴムパッドを画定する切込みを有するトレッドパターンは、路面と接触状態にある能動突条の長さが大きいという利点に加えて、不均一な摩耗が切込みの周りでトレッドの表面上に現れる時期を著しく遅くするという利点を有する。本発明により、トレッドは、硬化後、ゴムを引き裂くことなく、モールドから効果的且つ容易に剥取り可能であり、その理由は、パッドを剥取り時点でトレッドから引き抜く傾向のある力が著しく制限されるからである。
【0021】
先行技術において知られているように、成形要素は、切込みをトレッドに成形するために用いられる。本発明の場合、この種の切込みを成形するために用いられる成形要素は、トレッドから取り出されると、パッドの第1の部分がトレッド内のその位置を再び取ることができるようにする広幅部分(パッドの第2の部分を成形する)を有し、従って、パッドの接触フェースは、転動面とせいぜいほぼ同じ高さ位置にあるようになる(即ち、パッドのこの接触フェースは、転動面に対して突き出ることがない)。
【0022】
切込みの第1の部分は、トレッドの有効寿命の第1の部分中、トレッドのゴムに対向した壁に対するパッドの側壁の深さ方向の運動を嵌合により制限することができるようにする手段(大きな第1の振幅の破線又はジグザグ又は波状起伏)を有する。
これらの特徴の全てを組み合わせて採用することにより、パッドがトレッドの表面に対して突き出たままにするのを阻止することができ、かくして、パッドがタイヤの有効寿命中、トレッドから引き剥がされるのを阻止することができる。
【0023】
また、本発明のパターンにより、トレッドのパッドの周期的変形と関連したヒステリシス損失が制限されるので転がり抵抗における利点を得ることができる。
【0024】
好ましい変形実施形態によれば、パッドの第1の部分の破線の経路の振幅は、深さ方向に減少する。
【0025】
別の変形実施形態によれば、パッドの接触フェースの面積は、パッドの第1の部分とパッド第2の部分との間の接合部の表面から連続的に増大する。かくして、最大断面の表面積は、接合部の表面の下に位置し、切込みの第2の部分の最小断面の表面積よりも小さい。
【0026】
別の変形実施形態によれば、パッドの第1の部分の断面で見て、パッドの最大接触表面積は、路面との接触表面積よりも大きく、有利には、最大接触表面積は、パッドの第1の部分と第2の部分の接合箇所のところに存在する。
【0027】
別の変形実施形態によれば、パッドの第2の部分の壁は、パッドの接触表面からパッドの高さの75%〜100%の距離のところに位置し、即ち、パッドのベースの近くに位置する深さにわたりこの壁に対向した壁と機械的に相互作用する手段を備えていない。
【0028】
別の変形実施形態によれば、パッドの第2の部分は、必要ならば、この第2の部分に対向した壁と機械的に相互作用する手段を有しても良い。この場合、これら手段は、剥取り時点において、パッドが転動面から突き出るようにする場合のある閉塞を生じさせないよう第1の部分に設けられた手段の振幅よりも小さな振幅を有するよう選択される。
【0029】
好ましい実施形態によれば、各切込みは、トレッドのその半径方向最も内側の部分で、即ち、パッドのベースを画定する端部のところで、パッドを包囲したチャネルを形成する広幅部分によって終端され、このチャネルは、切込みの幅eよりも大きな最大幅を有する。パッドのベースは、この場合、このチャネルにより制限されるトレッド中に最も遠くに位置する部分に相当している。このコードの存在は、トレッドの良好な剥取りを可能にするうえで都合の良い作用を有する。
【0030】
別の実施形態によれば、パッドの中央軸線XX′は、転動面の垂線に対して僅かに傾けられており、即ち、この垂線とせいぜい10°に等しい角度をなし、好ましくは、5°の角度をなして傾けられている。
【0031】
本発明及びその利点に関する良好な理解を可能にするため、次に、以下の図によって本発明の幾つかの実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1A】トレッドの一要素及び先行技術のゴムパッドを成形するためのモールドの一部分を示す図である。
【図1B】図1のトレッドの要素を示す図であり、ゴムパッドが剥取り後、転動面で突き出ている状態を示す図である。
【図2A】本発明の第1の形態としてのパッドを有するトレッドの一部分の断面図である。
【図2B】図1Aに示されたトレッドの転動面を示す図である。
【図3】パッドの全体的形状が切頭円錐形である本発明のパッドの第2の形態を示す図である。
【図4】パッドの第2の部分が2重切頭円錐形である本発明のパッドの第3の形態を示す図である。
【図5】パッドを画定している切込みの端部がパッドを包囲しているチャネルにより形成された第4の形態を示す図である。
【図6】パッドの第1の部分が断面図で見てその壁のジグザグの減少変化を示す第5の形態を示す図である。
【図7】パッドを画定する切込みが楕円形の第6の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図及び説明を読み易くするために、図中、同一の機能的及び/又は構造的要素を示す参照符号が用いられている。
【0034】
図1Aは、先行技術のトレッドの要素1を示しており、この要素1は、ゴムパッド3を画定する閉じられた切込み2を有している。成形面52上で突き出た成形要素51を有するモールド50の一部分が図示されており、この成形要素は、中央軸線XX′が転動面に垂直なパッド3を画定する閉塞性切込み2を成形するためにトレッド有する材料中に定位置に存在している。この切込みは、閉塞性と呼ばれており、その理由は、切込みを画定する壁31,31′が一方の壁の他方の壁に対する相対運動を制限するよう互いに相互作用するよう設計された制止又は閉塞手段を構成するからである。閉塞手段は、この場合、パッドの側壁31に設けられた凸部61及びこの側壁に対向した壁31′に設けられた中空部60である。
【0035】
この形態は、剥取り後にトレッドに保持されず、図1Bに示された形態を得ることができるということが判明した。この形態では、切込み並びにかくしてパッドの壁及びこれに対向した壁を成形するために用いられる成形要素は、剥取り中、パッド3を切込みと共にトレッドの転動面10の外側に引き出した。ゴムの弾性に鑑みて、戻り力Fがパッドを図1Aの位置に相当する位置に至らせる傾向がある。しかしながら、戻り力と閉塞手段61,60自体により生じる閉塞力の平衡状態では、パッドは、この図1Bで理解できるようにトレッドの外側に部分的に突き出たままである場合がある。これは、見栄え及び摩耗に関する性能の面において望ましくない。というのは、より顕著な摩耗が突き出たパッドで生じ、それどころかゴムが或る特定の走行条件下において引き剥がされるからである。
【0036】
図2Aは、サイズ315/70R22.5のタイヤ用のトレッド1の一部分の断面図であり、トレッド1は、走行中、路面に接触するよう設計された転動面10とタイヤブランクの半径方向外側の表面に張り付けられるよう設計された内面10′を隔てる距離として新品状態で測定された厚さE(この場合、17.5mmに等しい)を有する。この断面は、タイヤの回転軸線を含む平面に作られる。
【0037】
本発明のトレッド1は、溝11及び切込みにより形成されたパターンを備えている。これら切込みのうちの少なくとも何割かは、転動面上の経路が閉じられた輪郭を有する切込み2である。これら切込みの各々は、トレッド中において、パッド3の周りに延びる側壁31を有するゴムパッド3を画定している。切込み2は、トレッドの厚さEにせいぜい等しい、この場合、17.5mmに等しい深さHを有している。側壁31と転動面の交差部は、パッドの接触フェース33を画定する突条32を形成している。各ゴムパッド3は、ベース30(トレッドの最も遠くの内側に位置すると共に切込み2の深さに等しい距離のところに位置する部分)を有し、このパッド3は、ベース30のところでトレッド1に連結されており、このパッドは、トレッドの転動面10を切断する中央軸線XX′を有している。この中央軸線XX′は、パッド3の接触フェース33及びパッドのベース30の幾何学的重心G1,G2を通る想像上の直線である。
【0038】
各パッド3の側壁31は、パッド30のベースのところで連結部分20により対向した壁31′に連結されている。パッド3の側壁31及びこれに対向した壁31′は、平均幅eがこの場合0.5mmに等しい切込み2を画定している。パッド3は、軸線XX′を中心として回転幾何学的形状を有し、この場合、軸線XX′を含む任意他の断面平面で取った幾何学的形状は、この図2Aに示されている幾何学的形状と実質的に同一である。
【0039】
図示の状態では、パッド3は、新品状態のトレッドの転動面から始まって、パッド301の第1の部分を有し、この延長部としてパッド301の第2の部分が設けられている。パッド301の第1の部分は、軸線XX′に関して円筒形の形のものであり、この第1の部分は、この図1で理解できるように、第1の部分に対向した壁に設けられているジグザグ経路と対応関係をなして相互作用するよう設計されたジグザグ経路を有している。切込み2の第1の部分に設けられた閉塞手段は、ゼロではない振幅Aを有している。
【0040】
パッドのこの第1の部分は、直径D0の最大断面(この場合、D0は、6mmに等しい)及び直径D1の最小面積の断面を有している。最大直径D0は、転動面上で測定され、最小直径D1(この場合、D1は、5.4mmに等しい)は、トレッドの最も内側の箇所に相当する深さP1のところで測定される(この場合、P1は、Hの60%に等しく又は10.5mmに等しい)。
【0041】
この第1の部分の延長部として、パッド302の第2の部分が設けられ、この第2の部分は、形状が全体として切頭円錐形であり、この第2の部分は、これに対向した壁との機械的閉塞又は相互作用手段を備えていない。パッド302のこの第2の部分は、深さP1から深さHまで延びている(即ち、Hの40%に等しい、この場合、7mmに等しい深さP2にわたって)。
【0042】
パッド3のベース30は、円形であり、このベースは、パッドの第1の部分301の任意の断面の最大直径D0よりも大きな直径D2を有している(この場合、D2は、10mmに等しい)。パッドの第2の部分302が内側に向かって幅が広がる切頭円錐形の形をしているので、ゴム状材料の弾性戻り力は、このパッドが転動面上で突き出ることなく、このパッドが所望の位置でトレッド内のその定位置に戻すのに十分である。
【0043】
有用な形態では、パッドのベース30の直径D2は、直径D0の少なくとも1.3倍に等しく且つせいぜいこの直径D0の2.5倍に等しい。
【0044】
図2Bは、図2Aに断面で示されたゴムパッド3の転動面の図である。図2Bは、直径D0の円形パッドの接触面33及び全体的に円形であり且つ平均幅eの切込み2を示している。パッドの第1の部分とパッドの第2の部分との間の接合部Jの平面上におけるパッド3の断面の直径D1は、直径D0よりも小さい。
【0045】
図3は、切込み2が最も内側の箇所及び最も外側の箇所を通る母線YY′を備えた全体として切頭円錐形の形によって支持されたパッド3の第2の形態を示している。パッドの第1の部分301は、この第1の部分に対向した壁と機械的に相互作用する手段を有し、この第1の部分は、新品状態の転動面上における直径D0及びパッドの第2の部分302との接合部Jのところの最大直径D1を有している。この母線YY′とパッドの中央軸線XX′のなす角度は、この場合、20°である。第1の部分に対向した壁と機械的に相互作用するかかる手段は、この場合、パッドの第1の部分の周りに螺旋状に形成されたジグザグである。
【0046】
図4は、パッドの第1の部分が全体として円筒形のものであり、その延長部として2重切頭円錐形のパッドの第2の部分が設けられている本発明のパッドの別の形態を示している。パッドの第1の部分と第2の部分との間の接合部Aの平面から、第2の部分は、切頭円錐形の形を取り、その断面直径は、これが最大値D2(パッドの第1の部分の最大直径よりも大きい)を取るまで増大しており、その目的は、その後、直径がパッドのベースに向かって減少する切頭円錐形の形を取ることにある。この形態では、2重切頭円錐形の形状は、パッドのベースの近くに位置するその場所を通って転動面上に突き出るパッドの閉塞を生じさせない。というのは、ゴム材料の弾性戻り力がパッドを所望の位置に戻すのに十分であるように定められているからである。
【0047】
図5の形態は、この場合も又、図1に示されているパッドを用いており、パッドのベースを包囲したチャネルがこのパッドに追加的に設けられている。切込み2の幅eよりも大きな最大断面直径を有するこのチャネル20′は又、特にパッドの良好な剥取りを助ける。というのは、このチャネルは、パッドのベースの直径を実質的に拡大するからである。切込み2の第1の部分に設けられた閉塞手段は、ゼロではない振幅Aを有し、切込みの第2の部分は、閉塞手段を備えていない(この部分は、断面図で見て直線状である)。
【0048】
図示されていない他の形態では、規定されたパッドの中央軸線XX′は、転動面の垂線と0°以外の角度をなすことができる。
【0049】
図6に示されている別の形態では、本発明は、特に、パッドの第1の部分とパッドの第2の部分との間の移行部を保証するようになっている。この形態では、パッドの第1の部分のパッド壁とこれに対向した壁を互いに閉塞する閉塞手段は、軸線XX′を含む断面平面内において、振幅がパッドの第2の部分との接合部又は連結部の表面に向かって進むにつれて(即ち、パッドのベースに向かって進むにつれて)減少した破線を形成する凹凸部によって形成されている。この場合、破線の最大振幅の箇所に接した2本の直線相互間のなす角度Bの頂点は、トレッドの内側に位置している。
【0050】
上述の形態では、ゴムパッド3を画定した切込み2の新品のタイヤの転動面10上における幾何学的経路は、円形の形をしており、当然のことながら、記載した内容は、異なる形状、即ち、長円形、楕円形、長方形又は他の形状に当て嵌まる。図7に一例として示されているように、少なくとも2本の対称軸線を有する形状に関し、これら軸線の無機がパッドの第1の部分の外面からパッドの第2の部分のベースに向かって変化することが有利な場合がある。
【0051】
この図7は、新品状態の転動面上におけるゴムパッド3の図であり、ゴムパッド3は、切込み2により画定されており、ゴムパッドの接触面33は、主軸線T1,T2(それぞれ、主軸及び副軸)を有する楕円形の形をしている。点線は、これ又楕円形であり、主要軸線T1′、T2′を備えたパッドのベースの幾何学的形状を示しており、この場合、パッドのベースの形状は、パッドの形状を転動面上で回転させることによって得られることが注目される。軸線T1に対する主軸線T1′の回転角度は、この場合、45°よりも大きい。パッドの軸線は、この場合、転動面に垂直である。この形態は、切込み及びかくして路面上の能動突条の向きがトレッドの摩耗レベルにつれて変化可能であるという利点を有する。
【0052】
図示していない別の形態では、第1の形状を有すると共にベースのところに第1の形状とは異なる別の形状を有する切込みによって新品状態の転動面上に画定されたパッドを設けることが可能である。例えば、円形の形を楕円形の形に替えることが可能である。
【0053】
本発明は、説明すると共に図示した例には限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、かかる例の種々の改造例を想到できる。例えば、提供した例の全ては、新品状態における接触面がトレッドの転動面と同一の高さ位置にあるゴムパッドを示しているが、同一の開示内容を接触面がトレッドの表面に対してトレッドの内側に向かってオフセットしたゴムパッドに適用することは容易である。別の形態では、パッドを画定する切込みの幅は、パッドの2つの部分相互間で異なっていても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ(E)を有すると共に走行中、路面に接触するよう設計された転動面(10)を備えるタイヤトレッド(1)であって、前記トレッドは、前記トレッドの前記転動面(10)を切断する中央軸線XX′を備えた複数個のゴムパッド(3)を有し、各ゴムパッド(3)は、せいぜい前記トレッドの前記厚さ(E)に等しい高さ(H)を有し、各ゴムパッドは、前記中央軸線XX′を中心として前記ゴムパッド周りに延びる側壁(31)を有し、前記側壁(31)は、前記転動面(10)を突条(32)に沿って切断し、前記転動面(10)上における前記突条の幾何学的経路は、閉じられており、前記突条(32)は、前記路面との前記ゴムパッドの接触フェース(33)を画定し、各ゴムパッドの前記側壁(31)は、そのベース(30)のところで、前記側壁に対向した側壁(31′)に連結可能に連結部分(20)によって連結され、前記ゴムパッドの前記側壁(31)及び前記側壁(31)に対向した前記側壁(31′)は、平均幅(e)及び高さ(H)の切込み(2)を画定している、トレッドにおいて、
各パッドの前記側壁(31)及び該側壁(31)に対向した前記側壁(31′)は、
・前記切込み(2)の前記深さ(H)のせいぜい60%に等しい深さ(P1)の前記切込みの第1の部分上に、前記側壁(31)の前記側壁(31)に対向した前記壁(31′)に対する運動を制限するよう設計された閉塞手段を有し、前記閉塞手段は、壁に設けられた第1の振幅の幾何学的形状であって、前記壁に対向した壁に設けられている幾何学的形状と相互に関連し又は該幾何学的形状に嵌まり込む幾何学的形状から成り、
・前記切込みの前記深さ(H)のせいぜい60%に等しい深さ(P2)を有すると共に前記深さ(P1)の第1の部分の延長部として設けられた前記切込みの第2の部分上に、第2の振幅の又は直線状の(即ち、ゼロ振幅の)幾何学的形状を有し、前記第2の振幅は、前記第1の振幅よりも小さく、
前記切込みの前記第1の部分は、パッドの第1の部分(301)を画定し、前記切込みの前記第2の部分は、パッドの第2の部分(302)を画定し、前記パッドの前記第2の部分(302)の最大断面積は、前記パッドの前記第1の部分(301)の最大断面積よりも大きい、トレッド。
【請求項2】
前記パッドの前記ベースのところの断面積は、前記パッドの前記第1の部分と前記パッドの前記第2の部分との間の連結部のところの前記パッドの断面積よりも大きく、前記パッドの前記第2の部分の断面は、前記連結部と前記パッドの前記ベースとの間で直線的に増大している、請求項1記載のトレッド。
【請求項3】
前記パッドの前記第1の部分(301)は、全体として円筒形の形状のものであり、前記パッドの前記第2の部分(302)は、全体として切頭円錐形のものであり、前記パッドの前記第2の部分は、前記パッドの前記ベース(3)に向かって幅が広がっている、請求項2記載のトレッド。
【請求項4】
前記パッドの前記第1の部分の前記パッドの前記壁を前記壁に対向した前記壁にロックする手段は、前記軸線XX′を含む断面平面で見て、振幅が前記パッドの前記ベースに向かって減少している破線を形成する凹凸部により形成されている、請求項1〜3のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項5】
前記パッドの前記第2の部分(302)を画定する前記壁(31)には、前記壁(31)に対向した前記壁との閉塞手段が設けられていない、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項6】
前記パッドの前記ベース(3)の直径(D2)と新品状態での前記転動面上における前記パッドの直径(D0)の比は、少なくとも1.3に等しく且つせいぜい2.5に等しい、請求項3〜5のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項7】
前記トレッドの最も内側の部分に設けられている前記切込み(2)の端部は、前記パッド(3)を包囲していて、前記切込みの幅eよりも大きい幅のチャネル(20′)を形成する部分を有する、請求項1〜6のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項8】
前記表面のパッドを画定する前記切込みの形状は、主軸線T1,T2を備えた楕円形であり、該パッドのベースは、主軸線T1′,T2′を備えた楕円形の形をしており、前記主軸線T1′は、前記主軸線T1と0°以外の角度をなしている、請求項1又は2記載のトレッド。
【請求項9】
前記パッドの前記軸線XX′は、前記転動面の垂線と90°以外の角度をなして傾けられている、請求項1〜8のうちいずれか一に記載のトレッド。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−510922(P2012−510922A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539014(P2011−539014)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066216
【国際公開番号】WO2010/063753
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)