説明

ブロック共重合体およびその製造方法

【課題】カルバゾール基を有するビニルモノマーと共役ビニルモノマーとを含むブロック共重合体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】カルバゾール基を有するビニルモノマーの重合体ブロックと共役ビニルモノマーの重合体ブロックを含むブロック共重合体、及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体およびその製造方法に関する。詳しくは、カルバゾール基を有するビニルモノマーの重合体ブロックと共役ビニルモノマーの重合体ブロックを含むブロック共重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる種類の重合体ブロックが結合したブロック共重合体は、一般に異なるモノマーを連続して重合することにより製造される。これまでに様々な重合方法が開発され、それらを利用したブロック共重合体の製造が行われている。
リビングラジカル重合の手法のひとつであるReversible Addition-Fragmentation Chain Transfer(RAFT)重合によるブロック共重合体の合成では、チオカルボニルチオ基を有する連鎖移動剤を用い一段階目のモノマーを単独重合させることにより末端にチオカルボニルチオ基を有する高分子連鎖移動剤(マクロ連鎖移動剤:macro-chain transfer agent)を合成し、単離、精製後、二段階目で次のモノマーを重合させる手法が用いられる。
【0003】
また、2種類のモノマーのブロック効率を考慮することも重要である。例えば、モノマーAから合成されたマクロ連鎖移動剤〔A−S−C(=S)−Z〕からモノマーBへの付加が、モノマーBから合成されたマクロ連鎖移動剤〔B−S−C(=S)−Z〕からモノマーAへの付加よりも効率が高い場合がある。実際、マクロ連鎖移動剤〔A−S−C(=S)−Z〕存在下でモノマーBを重合してpoly(A)−b−poly(B)といったブロック共重合体を合成する場合、マクロ連鎖移動剤〔A−S−C(=S)−Z〕は高い連鎖移動定数、つまり生長鎖ラジカル(A・)の脱離能がB・ラジカルより高いか、少なくても同程度である必要がある(非特許文献1)。そうでない場合は、共役モノマーと非共役モノマーのブロック共重合体は一般的に重合できないといわれている。
【非特許文献1】G. Moad et al. / Polymer 49 (2008) 1079-1131
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、カルバゾール基を有するビニルモノマーの重合体ブロックと共役ビニルモノマーの重合体ブロックを含むブロック共重合体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の発明に係る。
1.カルバゾール基を有するビニルモノマーの繰返し単位を含むブロック(A)と共役ビニルモノマーの繰返し単位を含むブロック(B)を含むブロック共重合体。
【0006】
2.カルバゾール基を有するビニルモノマーの繰返し単位を含むブロック(A)とQ−eスキームにおけるQ値が0.2以上のビニルモノマーの繰返し単位を含むブロック(B)を含むブロック共重合体であって、その重量平均分子量が2,000〜40,000である上記に記載のブロック共重合体。
【0007】
3.(a)式(1)で表される有機テルル化合物、
(b)式(1)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤の混合物、
(c)式(1)で表される有機テルル化合物と式(2)で表される有機ジテルル化合物の混合物、又は
(d)式(1)で表される有機テルル化合物、アゾ系重合開始剤及び式(2)で表される有機ジテルル化合物の混合物から選ばれる有機テルル化合物系重合開始剤を用いて、
カルバゾール基を有するビニルモノマーと共役ビニルモノマーを重合するカルバゾール基を有するビニルモノマーの繰返し単位を含むブロック(A)と共役ビニルモノマーの繰返し単位を含むブロック(B)を含むブロック共重合体の製造方法。
【0008】
【化1】

(式中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。R及びRは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。)
(RTe) (2)
(Rは上記に同じ)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カルバゾール基を有するビニルモノマーの重合体ブロックと共役ビニルモノマーの重合体ブロックを含むブロック共重合体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
カルバゾール基を有するビニルモノマーとしては、例えば、N−ビニルカルバゾール、N−エチル−3−ビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0011】
本発明に用いられる共役ビニルモノマーとしては特に制限なく使用することができるが、例えば、1949年にAlfreyとPriceにより提唱されたQ−eスキームにおけるQ値が0.2以上のモノマーが挙げられる。モノマーのQ値については種々の刊行物に記載がある。例えば、POLYMER HANDBOOK fourth editionII/309〜II/319ページのQ and e Values for Free Radical Copolymerization of Vinyl Monomers and Telogensの項に記載されている。具体的にはスチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン等のスチレン類モノマーおよびその誘導体、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類モノマーおよびその誘導体、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類モノマー、アクリルアミドなどの不飽和アミド類モノマー、ブタジエン、クロロプレンなどのジエン類モノマーを例示しうる。本発明において共役ビニルモノマーは1種単独で又は2種以上で使用できる。
【0012】
本発明のカルバゾール基を有するビニルモノマーと共役ビニルモノマーを含むブロック共重合体の製造方法は、有機テルル化合物系重合開始剤を用いた重合により得ることができる。具体的には、
(a)式(1)で表される有機テルル化合物、
(b)式(1)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤の混合物、
(c)式(1)で表される有機テルル化合物と式(2)で表される有機ジテルル化合物の混合物、又は
(d)式(1)で表される有機テルル化合物、アゾ系重合開始剤及び式(2)で表される有機ジテルル化合物の混合物
から選ばれる有機テルル化合物系重合開始剤を用いて重合する。
【0013】
本発明で使用する有機テルル化合物は、式(1)で表される。
【0014】
【化2】

(式中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。R及びRは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。)
【0015】
で示される基は、具体的には次の通りである。
炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の炭素数1〜8の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を挙げることができる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が良い。より好ましくは、メチル基、エチル基又はn−ブチル基が良い。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。好ましいアリール基としては、フェニル基が良い。置換アリールの置換基としては、例えば炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、−CORで示されるカルボニル含有基(R=炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリーロキシ基)、スルホニル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。
【0016】
好ましい置換アリール基としては、トリフルオロメチル置換フェニル基が良い。
また、これら置換基は、1個又は2個置換しているのが良く、パラ位若しくはオルト位が好ましい。
芳香族へテロ環基としては、ピリジル基、ピロール基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
【0017】
及びRで示される各基は、具体的には次の通りである。
炭素数1〜8のアルキル基としては、上記Rで示したアルキル基と同様のものを挙げることができる。
【0018】
で示される各基は、具体的には次の通りである。
アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基としては上記Rで示した基と同様のものを挙げることができる。
アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等を挙げることができる。
アミド基としては、アセトアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、ベンズアミド、2−フルアミド等のカルボン酸アミド、チオアセトアミド、ヘキサンジチオアミド、チオベンズアミド、メタンチオスルホンアミド等のチオアミド、セレノアセトアミド、ヘキサンジセレノアミド、セレノベンズアミド、メタンセレノスルホンアミド等のセレノアミド、N−メチルアセトアミド、ベンズアニリド、シクロヘキサンカルボキサニリド、2,4'−ジクロロアセトアニリド等のN−置換アミド等を挙げることができる。
オキシカルボニル基としては、−COOR(R=H、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基)で示される基を挙げることができる。
具体的には、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0019】
好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が良い。
好ましいRで示される各基としては、アリール基、置換アリール基、オキシカルボニル基又はシアノ基が良い。
好ましいアリール基としては、フェニル基が良い。
好ましい置換アリール基としては、ハロゲン原子置換フェニル基、トリフルオロメチル置換フェニル基が良い。
また、これらの置換基は、ハロゲン原子の場合は、1〜5個置換しているのが良い。
アルコキシ基やトリフルオロメチル基の場合は、1個又は2個置換しているのが良く、1個置換の場合は、パラ位若しくはオルト位が好ましく、2個置換の場合は、メタ位が好ましい。
好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が良い。
【0020】
好ましい(1)で示される有機テルル化合物としては、Rが炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を示し、R及びRが、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rが、アリール基、置換アリール基、オキシカルボニル基で示される化合物が良い。
特に好ましくは、Rが、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を示し、R及びRが、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rが、フェニル基、置換フェニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が良い。
【0021】
式(1)で示される有機テルル化合物は、具体的には次の通りである。
(メチルテラニルメチル)ベンゼン、(メチルテラニルメチル)ナフタレン、エチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネート、エチル−2−メチル−2−ブチルテラニル−プロピオネートや、特許文献1及び2等に記載された有機テルル化合物の全てを例示することができる。
【0022】
式(1)で示される有機テルル化合物の製造方法は特に限定されず、特許文献1及び2等に記載された公知の方法等により製造することができる。
【特許文献1】WO 2004/14848
【特許文献2】WO 2004/14962
【0023】
例えば、式(1)の化合物は、式(3)の化合物、式(4)の化合物および金属テルルを反応させることにより製造することができる。
上記、式(3)の化合物としては、具体的には次の通りである。
【0024】
【化3】

〔式中、R、R及びRは、上記と同じ。Xは、ハロゲン原子を示す。〕
Xで示される基としては、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素等のハロゲン原子を挙げることができる。好ましくは、塩素、臭素が良い。
M(R)m (4)
〔Rは、上記と同じ。Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は銅原子を示す。Mがアルカリ金属の時、mは1、Mがアルカリ土類金属の時、mは2、Mが銅原子の時、mは1または2を示す。〕
【0025】
Mで示されるものとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、銅を挙げることができる。好ましくは、リチウムが良い。
なお、Mがマグネシウムの時、化合物(4)はMg(Rでも、或いはRMgX(Xは、ハロゲン原子)で表される化合物(グリニャール試薬)でもよい。Xは、好ましくは、塩素、臭素が良い。
【0026】
本発明で使用する有機ジテルル化合物は、式(2)で表される。
(RTe) (2)
(Rは、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。)
で示される基は、式(1)において示した通りである。
好ましい式(2)で示される化合物としては、Rが炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基の化合物である。
【0027】
式(2)で示される化合物は、具体的には、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジ−sec−ブチルジテルリド、ジ−tert−ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス−(p−メトキシフェニル)ジテルリド、ビス−(p−アミノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−ニトロフェニル)ジテルリド、ビス−(p−シアノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリド、ジピリジルジテルリド等が挙げられる。好ましくは、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジフェニルジテルリドが良い。
【0028】
また本発明では重合速度の促進を目的にアゾ系重合開始剤を使用してもよい。アゾ系重合開始剤は、通常のラジカル重合で使用するアゾ系重合開始剤であれば特に制限なく使用することができる。
【0029】
例えば2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1'−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1'−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。
【0030】
これらのアゾ開始剤は反応条件に応じて適宜選択するのが好ましい。例えば低温重合(40℃以下)の場合は2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、中温重合(40〜80℃)の場合は2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート(MAIB)、1,1'−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)(ACVA)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2'−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、高温重合(80℃以上)の場合は1,1'−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]を用いるのがよい。
【0031】
ビニルモノマーと式(1)の化合物の使用割合としては、得られる共重合体の分子量或いは分子量分布により適宜調節すればよいが、通常、式(1)の化合物1molに対して、ビニルモノマーを20〜4,000mol、好ましくは40〜400molとするのが良い。
【0032】
式(1)の化合物とアゾ系重合開始剤の使用割合は、通常、式(1)の化合物1molに対して、アゾ系重合開始剤0.01〜100mol、好ましくは0.1〜10mol、特に好ましくは0.1〜5molとするのが良い。
【0033】
式(1)の化合物と式(2)の化合物を併用する場合、その使用量としては、通常、式(1)の化合物1molに対して、式(2)の化合物0.01〜100mol、好ましくは0.05〜10mol、特に好ましくは0.1〜5molとするのが良い。
【0034】
式(1)の化合物、式(2)の化合物及びアゾ系重合開始剤を併用する場合、その使用量としては、通常、式(1)の化合物と式(2)の化合物の合計1molに対して、アゾ系重合開始剤0.01〜100mol、好ましくは0.1〜10mol、特に好ましくは0.1〜5molとするのが良い。
【0035】
反応は、通常、無溶媒で行うが、ラジカル重合で一般に使用される有機溶媒或いは水性溶媒を使用しても構わない。使用できる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、2−ブタノン(メチルエチルケトン)、ジオキサン、ヘキサフルオロイソプロパノール、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、トリフルオロメチルベンゼン等が挙げられる。また、水性溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。溶媒の使用量としては適宜調節すればよいが、例えば、ビニルモノマー1gに対して、溶媒を0.01〜50ml、好ましくは、0.05〜10mlが、特に好ましくは、0.1〜1mlが良い。
【0036】
次に、上記混合物を攪拌する。反応温度、反応時間は、得られる共重合体の分子量或いは分子量分布により適宜調節すればよいが、通常、0〜150℃で、1分〜100時間撹拌する。好ましくは、20〜100℃で、0.1〜30時間撹拌するのが良い。更に好ましくは、20〜80℃で、0.1〜15時間撹拌するのが良い。このように低い重合温度及び短い重合時間であっても高い収率と精密な分子量分布を得ることができるのが、本発明の特徴である。この時、圧力は、通常、常圧で行われるが、加圧或いは減圧しても構わない。
【0037】
反応終了後、常法により使用溶媒や残存モノマーを減圧下除去して目的ポリマーを取り出したり、目的ポリマー不溶溶媒を使用して再沈澱処理により目的物を単離する。反応処理については、目的物に支障がなければどのような処理方法でも行う事ができる。
【0038】
また本発明で開始剤として用いる有機テルル化合物は水に対して安定であるため、本発明の共重合体は下記に示す特許文献3等に記載された水系での重合方法により合成できる。
即ち、エマルション重合法は界面活性剤を使用し、主にミセル中で重合する。必要に応じてポリビニルアルコール類等の水溶性高分子などの分散剤を用いても良い。これらの界面活性剤は1種類、又は2種類以上で組み合わせて使用することができる。かかる界面活性剤の使用量は、全モノマー100重量部に対して、0.3〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜50重量部である。又、水の使用量は、全モノマー100重量部に対して、50〜2000重量部であることが好ましく、より好ましくは70〜1500重量部である。重合温度は特に限定されないが、0〜100℃の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは40〜90℃である。反応時間は、反応温度または用いるモノマー組成物の組成、界面活性剤や重合開始剤の種類等に応じ、重合反応が完結するように適宜設定すればよい。好ましくは24時間以内である。
【0039】
懸濁重合法は分散剤を使用し、主にミセルを介さないで重合する。必要に応じてこれらの分散剤と共に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マンガン等の分散助剤を併用してもよい。かかる水分散安定剤の使用量は、全モノマー100重量部に対して、0.01〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜10重量部、特に好ましくは0.1〜5重量部である。又、水の使用量は、全モノマー100重量部に対して、50〜2000重量部であることが好ましく、より好ましくは70〜1500重量部である。重合温度は特に限定されないが、0〜100℃の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは40〜90℃である。反応時間は、反応温度または用いるモノマー組成物の組成、水分散安定剤や重合開始剤の種類等に応じ、重合反応が完結するように適宜設定すればよい。好ましくは24時間以内である。
【0040】
ミニエマルション重合法は界面活性剤及び共界面活性剤を使用し、ホモジナイザーや超音波装置を用いてモノマーを強制分散した後、主にミセルを介さないで重合する。かかる界面活性剤や共界面活性剤の使用量は、全モノマーに対して、0.3〜50重量部、特に好ましくは0.5〜50部である。超音波照射時間は、0.1〜10分、特に好ましくは0.2〜5分である。
【特許文献3】特開2006−225524
【0041】
該共重合体の分子量は、反応時間、式(1)の化合物の量および式(2)の化合物の量により調整可能であるが、重量平均分子量2,000〜40,000のリビングラジカルポリマーを得ることができる。
本発明において、ブロック(A)の割合が10〜90重量%、より好ましくは20〜80重量%、ブロック(B)の割合が90〜10重量%、より好ましくは80〜20重量%であるのが良い。
【0042】
該共重合体の分子量分布(PD=Mw/Mn)は、1.0〜2.0の間で制御される。更に、分子量分布1.05〜1.90、更には1.05〜1.80のより狭い分子量分布を持った共重合体を得ることができる。
【0043】
本発明のブロック共重合体の製造方法としては、ビニルカルバゾールを有するビニルモノマー(a)を重合し、次いで共役モノマー(b)を重合する。反応させる順番を逆にするとセグメント(b)−セグメント(a)のものも得ることができる。
上記で、各セグメントを製造後、そのまま次のブロックの反応を開始しても良いし、一度反応を終了後、精製してから次のセグメントの反応を開始しても良い。ブロック共重合体の単離は通常の方法により行うことができる。
【0044】
本発明のブロックポリマーは、カルバゾール骨格特有の光電導性、正孔輸送性、高屈折率および、ブロックポリマーの自己組織化によるナノサイズの相分離構造構築特性等を利用し、ホール注入材料、ホール輸送材料、発光層材料、電子輸送材料等の有機EL材料、有機トランジスタ材料、ホログラム記録材料、電子写真感光体、光学フィルム材料等での利用ができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが何らこれらに限定されるものではない。また、実施例および比較例において、各種物性測定は以下の機器により測定を行った。
H NMR:JNM−ECX400(400 MHz)
分子量および分子量分布:東ソー製ポンプDP−8020、Viscotek製トリプル検出器(屈折検出器、粘度検出器、光散乱検出器:630nm)TDA model−301(カラム:TSK−GEL ガードカラムHXL−HとTSK−GEL GMHXL+G4000HXL+G3000HXL+G2500HXL、ポリスチレンスタンダード:TOSOH TSK Standard)THF溶媒
元素分析:Perkin−Elmer 2400II CHNS/O analyzer
【0046】
実施例1
ポリN−ビニルカルバゾール―スチレンジブロックポリマーの合成
試験管に開始剤であるAIBN 3.0mg(0.018mmol)とN−ビニルカルバゾール0.350g(1.8mmol)、1,4−ジオキサン0.53mlを入れ、窒素置換した後にエチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート11mg(0.036mmol)を加え、60℃で5時間反応させた。反応後、少量を取り出しH NMRとSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)分析を行い、転化率は98%、M=6700、Mn,RALLS=10800、PD=1.08であることを確認した。続けてこの反応溶液にスチレン0.17g(1.7mmol)を加え60℃で24時間反応させた。反応終了後、少量のクロロホルムで希釈した後、その溶液を攪拌しているメタノール中に滴下した。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリN−ビニルカルバゾール―スチレンジブロックポリマー0.44g(収率86%)を得た。SEC分析よりM=9700、Mn,RALLS=13900、PD=1.18であった。また、プレポリマーであるpoly(NVC)の絶対分子量(Mn,RALLS)およびブロック共重合体の元素分析から組成比を算出したところpoly(NVC):poly(St)=59:41であった。
【0047】
実施例2
ポリN−ビニルカルバゾール―スチレンジブロックポリマーの合成
試験管に開始剤であるAIBN 3.0mg(0.018mmol)とN−ビニルカルバゾール0.350g(1.8mmol)、1,4−ジオキサン0.53mlを入れ、窒素置換した後にエチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート11mg(0.036mmol)を加え、60℃で5時間反応させた。反応後、少量を取り出しH NMRとSEC分析を行い、転化率は97%、M=7100、Mn,RALLS=9500、PD=1.09であることを確認した。続けてこの反応溶液にスチレン0.37g(3.5mmol)を加え60℃で24時間反応させた。反応終了後、少量のクロロホルムで希釈した後、その溶液を攪拌しているメタノール中に滴下した。沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することによりポリN−ビニルカルバゾール―スチレンジブロックポリマー0.57g(収率79%)を得た。SEC分析よりM=14400、Mn,RALLS=17800、PD=1.26であった。また、プレポリマーであるpoly(NVC)の絶対分子量(Mn,RALLS)およびブロック共重合体の元素分析から組成比を算出したところpoly(NVC):poly(St)=40:60であった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1のSECチャートである。右側のチャートが1段目のポリN−ビニルカルバゾールを、左側のチャートがポリN−ビニルカルバゾール―スチレンジブロックポリマーを示している。
【図2】実施例2のSECチャートである。右側のチャートが1段目のポリN−ビニルカルバゾールを、左側のチャートがポリN−ビニルカルバゾール―スチレンジブロックポリマーを示している。
【図3】実施例1で得られたポリN−ビニルカルバゾール―スチレンジブロックポリマーのH NMRチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバゾール基を有するビニルモノマーの繰返し単位を含むブロック(A)と共役ビニルモノマーの繰返し単位を含むブロック(B)を含むブロック共重合体。
【請求項2】
カルバゾール基を有するビニルモノマーの繰返し単位を含むブロック(A)とQ−eスキームにおけるQ値が0.2以上のビニルモノマーの繰返し単位を含むブロック(B)を含むブロック共重合体であって、その重量平均分子量が2,000〜40,000である請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項3】
ブロック(A)の割合が10〜90重量%、ブロック(B)の割合が90〜10重量%である請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項4】
分子量分布(PD=Mw/Mn)が1.0〜2.0である請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項5】
(a)式(1)で表される有機テルル化合物、
(b)式(1)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤の混合物、
(c)式(1)で表される有機テルル化合物と式(2)で表される有機ジテルル化合物の混合物、又は
(d)式(1)で表される有機テルル化合物、アゾ系重合開始剤及び式(2)で表される有機ジテルル化合物の混合物から選ばれる有機テルル化合物系重合開始剤を用いて、
カルバゾール基を有するビニルモノマーと共役ビニルモノマーを重合するカルバゾール基を有するビニルモノマーの繰返し単位を含むブロック(A)と共役ビニルモノマーの繰返し単位を含むブロック(B)を含むブロック共重合体の製造方法。
【化1】

(式中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。R及びRは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。)
(RTe) (2)
(Rは上記に同じ)
【請求項6】
共役ビニルモノマーがQ−eスキームにおけるQ値が0.2以上のビニルモノマーである請求項5に記載のブロック共重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−126583(P2010−126583A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301066(P2008−301066)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000206901)大塚化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】