説明

ブロック共重合体の製造方法及びブロック共重合体

【課題】高い熱分解温度を有する生分解性のポリカーボネートおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の製造方法では、ポルフィリン系金属錯体の存在下で、第一の反応工程と第二の反応工程とにより、ポリカーボネートの共重合体ブロックとポリエステルの共重合体ブロックとを有する共重合体を製造する。第一の反応工程では、二酸化炭素と下記一般式(1)で表されるアルキレンオキシドとを共重合反応させる。第二の反応工程では、下記一般式(1)で表されるアルキレンオキシドと下記一般式(2)で表される酸無水物とを共重合反応させる。一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。一般式(2)中、Zは五員環又は六員環を形成する基を表す。但し、第二の反応工程で用いる一般式(1)で表されるアルキレンオキシドは、第一の反応工程で用いる一般式(1)で表されるアルキレンオキシドと同一であっても異なっていてもよい。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体の製造方法、及びポリカーボネートとポリエステルとを有するブロック共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキレンオキシドと二酸化炭素の共重合反応によりポリカーボネートを得る方法は、二酸化炭素を合成樹脂の原料に利用する点で意義深い技術である。
【0003】
アルキレンオキシドと二酸化炭素の共重合方法では、触媒を用いる方法が多く提案されている。触媒としては、例えば、無機亜鉛化合物(例えば、非特許文献1参照。)、アルミニウム系触媒、コバルト錯体などが開示されている。
【0004】
また、この共重合反応により得られる脂肪族ポリカーボネートは、透明性を有し、かつ加熱により完全に分解するという特徴を有している。そのため、用途としては、脂肪族ポリカーボネートを、一般成形物、フィルム、ファイバー等に適用するほかに、光ファイバー、光ディスク、セラミックバインダー、ロストフォームキャスティングなどの材料に利用することも可能である。
【0005】
さらに、脂肪族ポリカーボネートの一部については、生分解性という特徴も有しているため、徐放性の薬剤カプセル等の医用材料、生分解性樹脂への添加剤、あるいは生分解性樹脂の主成分としても応用可能である。このような生分解性を有する脂肪族ポリカーボネートとしては、エチレンオキシドやプロピレンオキシドを原料とした脂肪族ポリカーボネートを挙げることができる。
【0006】
2種類のアルキレンオキシドと二酸化炭素を用いて共重合させたポリカーボネートについては、例えば、プロピレンオキシドとシクロヘキセンオキシドの組み合わせ(例えば、非特許文献2〜4および特許文献1参照。)や、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの組み合わせ(例えば、非特許文献5参照。)、スチレンオキサイドとシクロヘキセンオキサイドの組み合わせ(例えば、非特許文献6参照。)が開示されている。また、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、シクロヘキシルエチレンオキサイド、フェニルエチレンオキサイドのうち2種のアルキレンオキシドと二酸化炭素からなる共重合体が開示されている(特許文献2参照。)
【特許文献1】中国特許出願公開第1887934号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第1408440号明細書
【非特許文献1】ACS Symp. Ser. 921 (Feed stocks for the Future), 2006, 116-129
【非特許文献2】Lei Shi et al., Macromolecules, 2006, 39, 5679-5685
【非特許文献3】Koji Nakano et al., Angrew. Chem. Int. Ed, 2006, 45, 7274-7277
【非特許文献4】Sudhir D. Thorat, J. Appl. Polym. Sci. 2003, 89, 1663-1176
【非特許文献5】Zhilog Quan et al., Macromol. Symp. 2003, 195, 281-286
【非特許文献6】Donald j. Darensbourg and Marc S. Zimmer, Macromolecules 1999, 32(7), 2137-2140
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、生分解性を有する脂肪族ポリカーボネートの熱分解温度は低く、射出成形機に適用する場合など実用化するにあたって使い勝手の悪いものであった。例えば、ポリプロピレンポリカーボネートの熱分解温度は240℃程度であり、ポリエチレンカーボネートの場合には、220℃程度である。
そこで、本発明の課題は、高い熱分解温度を有する生分解性のポリカーボネートおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
生分解性を有する脂肪族ポリカーボネートの熱分解温度を高める方法を検討したところ、酸無水物とアルキレンオキシドとの共重合体である生分解性のポリエステルを生分解性の脂肪族ポリカーボネートに結合させることが有益であることが明らかとなった。なお、分子量分布が広い共重合体では熱分解温度の分布も広がり、射出成形などの用途に適用しにくくなる。しかし、特定の製造方法によれば、分子量分布の狭い生分解性のブロック共重合体が得られることが分かった。
【0009】
一方で、アルキレンオキシドに対して、二酸化炭素と酸無水物とでは反応性が大きく異なる。しかしながら、熱分解温度に関しては、ランダム共重合体とブロック共重合体とで実用化に不具合を与えるほどの差異はない。
【0010】
更に、このようなブロック共重合体の製造方法について鋭意研究を行ったところ、温度条件、ルイス塩基の使用量などが収率などに影響を与えていることが明らかとなった。
すなわち、下記本発明により課題を解決するに至った。
【0011】
<1> ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体の存在下で、二酸化炭素と、下記一般式(1)で表されるアルキレンオキシドとを共重合反応させる第一の反応工程と、
ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体の存在下で、下記一般式(1)で表されるアルキレンオキシドと下記一般式(2)で表される酸無水物とを共重合反応させる第二の反応工程と、
を有することを特徴とするブロック共重合体の製造方法である。
【0012】
【化1】



【0013】
一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。一般式(2)中、Zは、五員環又は六員環を形成する基を表す。但し、第二の反応工程で用いる一般式(1)で表されるアルキレンオキシドは、第一の反応工程で用いる一般式(1)で表されるアルキレンオキシドと、同一であっても異なっていてもよい。
【0014】
<2> 前記一般式(1)で表されるアルキレンオキシドが、プロピレンオキシド又はエチレンオキシドであり、前記一般式(2)で表される酸無水物が、無水コハク酸であることを特徴とする前記<1>に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0015】
<3> 前記ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体が、下記一般式(3)で表される金属錯体であることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0016】
【化2】



【0017】
一般式(3)中、におけるRは、各々独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、トリフルオロメチル基、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子を表し、nは、0〜5のいずれかの整数を表す。
【0018】
<4> 前記第一の反応工程および前記第二の反応工程において、ルイス塩基を用いることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0019】
<5> 前記第一の反応工程および前記第二の反応工程では、前記ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体1モルに対し、前記ルイス塩基を0.1〜5モル用いることを特徴とする前記<4>に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0020】
<6> 前記第一の反応工程および前記第二の反応工程では、前記ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体1モルに対し、前記ルイス塩基を0.5〜0.75モル用いることを特徴とする前記<4>に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0021】
<7> 前記ルイス塩基が、電子共有性の高い構造を有し、且つ不対電子を有する化合物であることを特徴とする前記<4>〜<6>のいずれか1項に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0022】
<8> 前記ルイス塩基が、ピリジン系化合物又はイミダゾール系化合物であることを特徴とする前記<7>に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0023】
<9> 前記ピリジン系化合物が、下記一般式(4)で表されることを特徴とする前記<8>に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0024】
【化3】



【0025】
一般式(4)中、Rは、メチル基、ホルミル基、置換アミノ基を表し、mは、0〜5の整数を表す。
【0026】
<10> 前記ピリジン系化合物が、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンであることを特徴とする前記<9>に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0027】
<11> 前記イミダゾール系化合物が、下記一般式(5)で表されることを特徴とする前記<8>に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0028】
【化4】



【0029】
一般式(5)中、Rは、置換又は無置換のアルキル基を表す。
【0030】
<12> 前記イミダゾール系化合物が、N−メチルイミダゾールであることを特徴とする前記<11>に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0031】
<13> 前記第一の反応工程における二酸化炭素分圧が、0.1〜25MPaであることを特徴とする前記<1>〜<12>のいずれか1項に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0032】
<14> 前記第一の反応工程では、0℃以上100℃以下の温度範囲で共重合反応を行なうことを特徴とする前記<1>〜<13>のいずれか1項に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0033】
<15> 前記第二の反応工程では、20℃以上120℃以下の温度範囲で共重合反応を行なうことを特徴とする前記<1>〜<14>のいずれか1項に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0034】
<16> 前記第一の反応工程および前記第二の反応工程の少なくとも一方の反応工程において、活性水素を有する連鎖移動剤を用いることを特徴とする前記<1>〜<15>のいずれか1項に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0035】
<17> 前記ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体に対して5モル以上の前記活性水素を含むように前記連鎖移動剤を用いることを特徴とする前記<16>に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0036】
<18> 前記活性水素を有する連鎖移動剤が、1分子中に1個以上の活性水素基を含有することを特徴とする前記<16>又は<17>に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0037】
<19> 前記活性水素を有する連鎖移動剤が、1分子中に1個以上のOH基又はCOOH基を有することを特徴とする前記<18>に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0038】
<20> 前記活性水素を有する連鎖移動剤が、1分子中に2個以上の活性水素基を含有することを特徴とする前記<16>〜<19>のいずれか1項に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0039】
<21> 前記活性水素を有する連鎖移動剤が、水であることを特徴とする前記<20>に記載のブロック共重合体の製造方法である。
【0040】
<22> 前記<1>〜<21>のいずれか1項に記載の製造方法により得られたブロック共重合体である。
【0041】
<23> 二酸化炭素と、下記一般式(1)で表されるアルキレンオキシドとの共重合反応によるポリカーボネートブロックと、下記一般式(1)で表されるアルキレンオキシドと下記一般式(2)で表される酸無水物との共重合反応によるポリエステルブロックとを有するブロック共重合体である。
【0042】
【化5】



【0043】
一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。一般式(2)中、Zは、五員環又は六員環を形成する基を表す。但し、ポリカーボネートブロックにおける一般式(1)で表されるアルキレンオキシドのRは、ポリエステルブロックにおける一般式(1)で表されるアルキレンオキシドのRと、同一であっても異なっていてもよい。
【0044】
<24> 両末端が水酸基であることを特徴とする前記<22>又は<23>に記載のブロック共重合体である。
【0045】
<25> 前記ポリカーボネートブロック及び前記ポリエステルブロックの交互共重合比率が、いずれも95%以上であることを特徴とする前記<22>〜<24>のいずれか1項に記載のブロック共重合体である。
【0046】
<26> 数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比率Mw/Mnが、1.01以上1.20以下であることを特徴とする前記<22>〜<25>のいずれか1項に記載のブロック共重合体である。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、生分解性を有しつつ、熱分解温度を高めた共重合体およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明の共重合体の製造方法は、第一の反応工程と第二の反応工程を有する。第一の反応工程では、ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体の存在下で、二酸化炭素と一般式(1)で表されるアルキレンオキシドとを共重合反応させる。第二の反応工程では、ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体の存在下で、一般式(1)で表されるアルキレンオキシドと一般式(2)で表される酸無水物とを共重合反応させる。
【0049】
以下では、まず始めに本発明の製造方法に用いることのできる材料を説明し、次に、本発明の製造方法を説明し、その後、本発明の製造方法によって得られる共重合体について説明する。
【0050】
<金属錯体>
本発明では、触媒として、ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体を用いる。特に好ましくは、下記一般式(3)で表されるコバルト錯体である。
【0051】
【化6】



【0052】
一般式(3)中、におけるRは、各々独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、トリフルオロメチル基、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子を表し、nは、0〜5のいずれかの整数を表す。
【0053】
一般式(3)で表される金属錯体としては、共重合反応速度が速く、交互共重合比率が高く、更には狭い分子量分布を有する共重合体が得られる観点からは、下記構造式(1)で表される金属錯体であることが好ましい。
【0054】
【化7】



【0055】
一方で、触媒としての活性の高さや、超臨界二酸化炭素に対する溶解性の観点からは、一般式(3)におけるnが2以上の多置換ポルフィリン系化合物の金属錯体であることが好適である。なお、nが2以上の場合には、複数のRは、それぞれ異なる置換基であっても、同じ置換基であってもよいが、製造のし易さからは、同じ置換基であることが好ましい。
nが2のときは、Rの置換位置はメタ位であることが好ましく、nが3のときは、Rの置換位置はオルト位及びパラ位であることが好ましく、nが5の全置換であってもよい。したがって、好適な多置換ポルフィリン系化合物の金属錯体は、一般式(6)〜(8)で表される金属錯体である。
【0056】
【化8】



【0057】
一般式(6)〜(8)におけるRは、各々独立に、前記一般式(3)におけるRと同義である。更に、一般式(6)のRは、メトキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子であることがより好ましく、一般式(7)のRは、tert−ブチル基であることがより好ましく、一般式(8)のRは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子であることがより好ましい。
【0058】
多置換のフェニル基を有するポルフィリン系化合物が配位した金属錯体の具体例を下記に示すが、これらの金属錯体に限定されない。
【0059】
【化9】



本発明にかかる金属錯体は、1種類のみを用いて、あるいは2種類以上を併用してもよいが、単一種を用いることが、反応に好適な溶媒、触媒濃度、ルイス塩基、温度、圧力を調節しやすい観点から好ましい。
【0060】
<アルキレンオキシド>
本発明で使用するアルキレンオキシドは、下記一般式(1)で表されるアルキレンオキシドである。
【化10】



【0061】
一般式(1)中、Rは、生分解性の観点からは、水素原子、メチル基である。
【0062】
一般式(1)で表される化合物の具体例を下記に示す。
【0063】
【化11】

【0064】
<酸無水物>
本発明で使用する酸無水物は、下記一般式(2)で表されるアルキレンオキシドである。
【化12】



【0065】
一般式(2)中、Zは、五員環または六員環を形成する基を表し、より好ましくは、五員環を形成する基である。具体的には、炭素数2〜3のアルキレン基、アリーレン基、炭素数2〜3のアルケニレン基を表し、生分解性の観点からは、炭素数2〜3のアルキレン基であることが好ましい。
【0066】
一般式(2)で表される化合物において、Zがアルキレン基である具体例としては、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水ピメリン酸、無水スベリン酸、無水アゼライン酸、無水セバシン酸を挙げることができる。一般式(2)で表される化合物において、Zがアリーレン基である具体例としては、無水フタル酸を挙げることができ、Zがアルケニレン基の具体例としては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸を挙げることができる。
【0067】
これら化合物のなかでも、一般式(2)で表される化合物としては、無水コハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸であることがこのましく、無水コハク酸であることが反応性や生分解性の観点からより好ましい。
【0068】
<ルイス塩基>
本発明では、ルイス塩基を、触媒としての上記金属錯体と共存させることができる。ルイス塩基は、金属錯体の金属部分に配位して、より触媒としての機能を高めるものと推測される。
ルイス塩基としては、金属錯体の金属部分に配位しやすいよう、電子共有性の高い構造を有し、且つ不対電子を有する化合物であることが好ましい。
【0069】
ルイス塩基としては、ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体として、前記構造式(1)で表される金属錯体を用いたときには、ピリジン系化合物又はイミダゾール系化合物を用いることがこのましい。
ピリジン系化合物としては特に制限されないが、下記一般式(4)で表される化合物である。
【0070】
【化13】



【0071】
一般式(4)中、Rは、置換又は無置換のメチル基、ホルミル基、置換アミノ基を表し、より好ましくは、ジメチルアミノ基、メチル基、ホルミル基であり、更に好ましくは、ジメチルアミノ基である。
【0072】
の置換位置は、好ましくは4−位、3−位であり、より好ましくは、4−位である。
mは、0〜5の整数を表し、好ましくは、0〜1の整数である。
【0073】
本発明で使用するピリジン系化合物のうち、好ましくは、ピリジン、4−メチルピリジン、4−ホルミルピリジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンであり、より好ましくは、ピリジン、4−メチルピリジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンであり、特に好ましくは、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)である。
【0074】
ルイス塩基としてのイミダゾール系化合物は特に制限されないが、下記一般式(5)で表される化合物である。
【0075】
【化14】



【0076】
一般式(5)中、Rは、置換又は無置換のアルキル基を表し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基を表す。より好ましくは、メチル基である。すなわち、一般式(5)中、特に好ましい化合物は、N−メチルイミダゾールである。
【0077】
<連鎖移動剤>
本発明の製造方法では、活性水素を有する連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤を用いる場合には、前記金属錯体に対して等モル以上の前記活性水素を含むように連鎖移動剤を用いる。
【0078】
活性水素を有する連鎖移動剤は、1分子中に1個以上の活性水素基を有する。
このような連鎖移動剤として、具体的には、水、水酸基を有する有機化合物、SH基を有する有機化合物、カルボキシル基を有する有機化合物、アルカノールアミン類などを挙げることができる。更に、これらの化合物にアルキレンオキシドを付加重合したものも適用することができる。また、これら連鎖移動剤の複数種の反応生成物を適用することができる。
【0079】
水酸基を有する有機化合物としては、例えば、1級、2級、3級の1価アルコール、2価アルコール、多価アルコール、フェノール類、ポリビニルアルコール、一部又は実質的に完全加水分解のポリビニルアセテート、及びこれら水酸基を有する有機化合物に由来する反応生成物を挙げることできる。
【0080】
1価アルコールとしては、脂肪族、芳香族、脂環式アルコール、セロソルブ化合物、エーテル結合、または、およびエステル結合を有するモノアルコールを好ましく用いることができる。具体的には、例えば、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、セチルアルコール、イソプロパノール、2−メチル2−プロパノール、ベンジルアルコール、シクロヘキシルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができる。
【0081】
2価アルコール以上の多価アルコールとしては、具体的には、例えば、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオ1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ピナコール、カテコール、トリエチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリト−ル、トリペンタエリトリト−ル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、ヘキサントリオール、グリコール類、糖類を挙げることができる。
【0082】
グリコール類としては、具体的には、グリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−、1,3−、および1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどを挙げることができる。
【0083】
糖類としては、例えば、α−メチルグルコシド、ヒドロキシメチルグルコシド、ヒドロキシエチルグルコシド、ヒドロキシプロピルグルコシド、ブルコース、フルクトース、スクロース、ラフィノース、ソルビトール、マンニトールなどを挙げることができる。
【0084】
フェノール類としては、例えば、フェノール、p−モノクロロフェノール、p−クレゾール、チモール、キシレノール、ハイドロキノン、レゾルシノール、レゾルシノール残油、フロログルシノール、o−,m−,p−ヒドロキシスチレン、サリゲニン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジハイドロキシジフェニルスルホン、4,6,4−トリハイドロキシジフェニルジメチルメタン、長鎖ビスフェノールを挙げることができる。
【0085】
ポリビニルアルコール及びポリビニルアセテートは、コポリマーであってもホモポリマーであってもよい。ビニルアルコールのコポリマー(共重合体)は、下記ビニルアセテートの共重合体を加水分解して得られたものを挙げることができる。
ビニルアセテートの共重合体としては、例えば、ビニルアセテート−ブタジエン共重合体、ビニルアセテート−スチレン共重合体、ビニルアセテート−アクリロニトリル又はメタクリロニトリル共重合体、ビニルアセテート−ビニルクロライド共重合体、ビニルアセテート−ビニリデンクロライド共重合体、ビニルアセテートとその他モノマー(ジクロロスチレン、ビニルエチルエーテル、エチレン、プロピレン、イソブチレン、イソプレンなど)との共重合体)などを挙げることができる。
【0086】
SH基を有する有機化合物としては、例えば、メルカプタン、チオール、ポリチオール等をあげることができる。
メルカプタンやチオールの具体例としては、1−ペンタンチオール、2−メチル−1−ブタンチオール、3−メチル−1−ブタンチオール、チオフェノール、o−,m−,p−チオクレゾール、1,2−エタンジチオール、エタンチオール、フルフリルメルカプタン、1−ヘキサンチオール、チオ−1−ナフトール、2−プロパンチオール、ジチオレゾルシノール、チオグリセロール、プロパントリチオール、1,4−ベンゼンジチオール、モノチオハイドロキノン、チオジグリコール、及びチオモノグリコール等を挙げることができる。
【0087】
アルカノールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等を挙げることができる。
【0088】
活性水素を有する連鎖移動剤は、1分子に2つ以上の同一または及び異なる官能基種を持つことが可能である。異なる種類の官能基を含有する化合物としては、具体的には、ヒドロキシカルボン酸類、アミノ酸類でカルボン酸含有物などが挙げられる。さらに、これらの活性水素を有する連鎖移動剤は、2種以上を併用することも可能である。
【0089】
<ブレンシュテッド酸化合物>
本発明の製造方法では、ブレンシュテッド酸化合物を添加して、末端を水酸基に変換し、反応を停止させることができる。このようなブレンシュテッド酸化合物としては、メタノールや塩酸を含むメタノール等を挙げることができる。
【0090】
<製造方法>
本発明の製造方法では、上述したポルフィリン系金属錯体の存在下で、第一の反応工程と第二の反応工程とを経て、ポリカーボネートの共重合体ブロックとポリエステルの共重合体ブロックとを有する共重合体を製造する。
第一の反応工程と第二の反応工程において用いる金属錯体は、同一であっても異なっていてもよいが、作業操作の簡易性の観点からは、同一の金属錯体を用いることが好ましい。このとき、収率や交互共重合体の生成率の観点からは、前記一般式(3)で表されるコバルト錯体であることが好適であり、特に、構造式(1)で表されるコバルト錯体が好適である。以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。
【0091】
(第一の反応工程)
第一の反応工程では、二酸化炭素と、前記一般式(1)で表されるアルキレンオキシドとを共重合反応させる。
【0092】
第一の反応工程では、本発明にかかる金属錯体は、アルキレンオキシドに対し、0.1モル%〜1モル%で存在させれば充分である。より好ましくは、0.2モル%〜0.5モル%で存在させる場合である。
【0093】
反応時の圧力は、2〜26MPaが好ましく、0.1〜2MPaでも反応は進行する。
また、二酸化炭素分圧は、0.1〜25MPaであることが好ましく、2〜25MPaがより好ましく、0.1〜2MPaでも反応は進行する。二酸化炭素分圧は、二酸化炭素のみを充填して調整してもよいし、窒素との共存下で二酸化炭素分圧が上記範囲内となるように調整してもよい。好ましくは、窒素との共存下により二酸化炭素圧を調整する場合である。二酸化炭素と窒素とを共存させる場合、窒素を1気圧とし、残りが二酸化炭素圧となるように調整することがより好ましい。
【0094】
なお、7.38MPa以上の圧力下では二酸化炭素は超臨界状態となっており、本発明ではこのような超臨界の状態でも反応させることができる。超臨界二酸化炭素の場合には、後述の反応溶媒を用いなくとも共重合反応できるので、反応溶媒の除去という後処理の工程を省くことができ、また不要な溶媒が共重合体中に残存しない。
【0095】
第一の反応工程における共重合反応時の温度は、100℃以下となるように制御することが好ましく、より好ましくは0℃以上100℃以下であり、更に好ましくは0℃以上60℃以下であり、特に好ましくは20℃以上40℃以下である。
【0096】
アルキレンオキシドと二酸化炭素との共重合反応は、溶媒中で行ってもよいし、無溶媒で行ってもよい。
溶媒を用いる場合には、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン等のエーテル類のうち、1種類または2種類以上を用いることができる。
【0097】
溶媒として、好ましくは、ジクロロメタン、トルエン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランであり、より好ましくは、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランであり、更に好ましくは、ジクロロメタン、テトラヒドロフランである。
【0098】
本発明においては、ジクロロメタンを溶媒として用いるか、無溶媒で行うことが好ましいが、前記構造式(1)の金属錯体を用いてシクロヘキセンオキシドと二酸化炭素を共重合する場合には、ジクロロメタンを溶媒として用いることが好適である。
【0099】
ジクロロメタンを溶媒として用いる場合、アルキレンオキシドに対して、容積比(溶媒:アルキレンオキシド)で0:100〜90:10であることが好ましく、より好ましくは0:100〜70:30の範囲である(溶媒が0のときは、無溶媒の場合を示す。)。
【0100】
上述のように、本発明では、ルイス塩基を用いることができる。ルイス酸は、金属錯体の金属部分に配位しているものと推測される。そのときの反応しキームを下記スキーム1に示す。
【0101】
【化15】



【0102】
上記反応スキーム1において、BASEはルイス塩基を表し、Rは一般式(1)におけるRを表す。
【0103】
ルイス塩基の使用量は、前記ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体1モルに対して、0.1〜5モル用いることが好ましく、0.5〜0.75モルであることがより好ましい。当該範囲での使用であれば、収率を低下させず、環状カーボナート(アルキレンオキシドと二酸化炭素が1モルずつ反応した化合物)を生成させ難く交互共重合体を生成する。また、反応速度の観点や、二酸化炭素を取り込みやすいので、アルキレンオキシドのみが反応したポリエーテルを生成し難い。
【0104】
また、上述のように、本発明では、活性水素を有する連鎖移動剤を用いることができる。
これまでに本発明者らは、活性水素を有する連鎖移動剤が、共重合体の分子量や分子量分布に多大な影響を与えることを明らかにしている。この原因は、連鎖移動剤の活性水素が金属錯体と交換反応するためであると推測されるが、本発明はこのようなメカニズムに限定されない。
【0105】
以下では、上記推測のメカニズムについて、活性水素を有する連鎖移動剤として水酸基を有する化合物(ROH)を用い、金属錯体としてテトラフェニルポルフィナトコバルトクロリド[(TPP)CoCl]を用いて、アルキレンオキシドと二酸化炭素を共重合させる場合を例に説明する。
なお、この反応系では、二酸化炭素とアルキレンオキシドの共重合体を高収率で得ることができ、また、カルボナート結合の含有率が極めて高いため、二酸化炭素とアルキレンオキシドとが交互に反応した交互共重合体であることが確認されている。
【0106】
【化16】



【0107】
上記スキーム2に示すように、共重合反応が進むと、片末端に金属錯体由来のClを有し、他方の末端にコバルト触媒を有する共重合体(1)が生成する。ここで、ROHが存在すると、金属錯体とROHの活性水素とが交換し、コバルトにORが結合した金属錯体〔(TPP)CoOR〕と、片末端がClで他方の末端がOHの共重合体(2)を生成する。
(TPP)CoORは、(TPP)CoClと同様に共重合反応を進め、片末端がORで他方の末端がコバルト触媒を有する共重合体(3)を生成させる。このときROHが存在すると、ROHの活性水素と金属錯体とが交換反応し、(TPP)CoORと、片末端がORで他方の末端がOHの共重合体(4)を生成する。
このように、ROHが存在する限り、金属錯体は巡回されて共重合反応に関与できることになる。
【0108】
なお、活性水素を有する連鎖移動剤を用いない場合には、上記共重合体(1)のみが得られるので、生成した共重合体の分子数は、金属錯体の分子数と同等である。
これに対し、活性水素を有する連鎖移動剤を用いると、得られる共重合体は、上記共重合体(2)、共重合体(3)及び共重合体(4)となり、結果、ROHの分子数から派生した共重合体の分だけ共重合体分子は多く生成し、得られる共重合体の総分子数は、金属錯体の分子数と活性水素の分子数とを合算した値となる。
また、(TPP)CoORと、(TPP)CoClとは、同等の反応性を示すため、これらに起因した共重合体の分子量はいずれも同等であり、得られた共重合体の分子量分布をGPCで測定すると、クロマトグラムは1つのピークを示す。したがって、共重合体の重合度は、仕込んだ金属錯体と活性水素の総分子数に対する、反応したモノマー(アルキレンオキシド及び二酸化炭素)の分子数となる。
【0109】
その結果、活性水素を有する連鎖移動剤を用いた反応系では、(1)金属錯体よりも分子数の多い共重合体を生成することができる、(2)分子量分布の狭い共重合体を得ることができる、(3)原料の配合比を調整することで、所望の分子量を有する共重合体を得ることができる、(4)連鎖移動剤として水を用いた場合には両末端で水酸基を有する共重合体を得ることができる、(5)上記(1)の結果より、高価な金属錯体の使用量を低減することもできる。
【0110】
ここで、1分子中に2個以上の活性水素基を有する連鎖移動剤を用いたときの反応スキームを考察する。下記スキーム3では、1分子中に2個以上の活性水素基を有する連鎖移動剤として、HO−R−OHを例に説明する。
【0111】
【化17】



【0112】
HO−R−OHが存在すると、金属錯体とHO−R−OHの活性水素とが交換し、コバルトに−O−R−OHが結合した金属錯体〔(TPP)CoOROH〕と、片末端がClで他方の末端がOHの共重合体(5)を生成する。
生成した(TPP)CoOROHによって、共重合反応が進行すると、片末端がOROHで他方の末端がコバルト触媒を有する共重合体(6)を生成させる。この片末端には、OROHの活性水素が存在するので、この活性水素と金属錯体とは交換反応し得る。これにより、両末端に金属錯体を有する共重合体(7)が発生し、その結果、両末端から分子が成長する。
したがって、一分子内に2個の活性水素を有する連鎖移動剤を用いると、得られる共重合体は、一分子内に1個の活性水素を有する連鎖移動剤を用いた場合の約2倍の分子量を有する。
【0113】
両末端に金属錯体を有する共重合体(7)は、HO−R−OHと交換反応すると、コバルトに−O−R−OHが結合した金属錯体〔(TPP)CoOROH〕が発生するので、金属錯体は巡回されて共重合反応に関与できることになる。
【0114】
なお、片末端がClで他方の末端がOHの共重合体(5)は、金属錯体の分子数と同量生成するが、金属錯体の量を連鎖移動剤の量に比べて著しく少なくなるように仕込めば、得られる共重合体の多くが共重合体(8)となり、共重合体(5)の占める割合は極めて少なくなる。よって、金属錯体と連鎖移動剤との配合比を調整することで、得られた共重合体の分子量分布を、共重合体(8)の分子量分布に近似させることができ、分子量分布を狭めることができる。
【0115】
スキーム3では、一分子内に2個の活性水素を有する連鎖移動剤(2官能連鎖移動剤)として、HO−R−OHを例に説明したが、HOOC−R−COOH等その他の2官能連鎖移動剤であっても、同様に反応が進行すると推測される。
【0116】
一分子内に2個の活性水素を有する連鎖移動剤の具体的一例として、水を適用した場合のスキームを下記に示す。
【0117】
【化18】



【0118】
一分子内に3個の活性水素を有する連鎖移動剤を用いた場合には、下記スキーム5の共重合体(9)に示すように、一分子内に1個の活性水素を有する連鎖移動剤を用いた場合の約3倍の分子量となるものと推測される。
【0119】
【化19】



【0120】
上述のように、一分子内に少なくとも1個の活性水素を有する連鎖移動剤を使用すると、(1)金属錯体よりも分子数の多い共重合体を生成することができる(つまり触媒量を減らすことができる)、(2)分子量分布の狭い共重合体を得ることができる、(3)原料の配合比を調整することで、所望の分子量を有する共重合体を得ることができる、(4)末端基を変性できる、などの効果がある。
一分子内に2個以上の活性水素を有する多官能連鎖移動剤を使用すれば、上記効果に加え、上記スキーム3又は4に示すように、連鎖移動剤による連結や架橋を行なうことができるので、物理的物性を変えた共重合体を得ることができる。
【0121】
また、一分子内に少なくとも1個の活性水素を有し、且つ高分子量である連鎖移動剤を用いると、その高分子連鎖移動剤の特性によって、様々な物理的物性を有する共重合体を得ることができる。
一方で、一分子内に少なくとも1個の活性水素を有し、且つ低分子量である連鎖移動剤、例えば、水、エチレングリコール、グリセリンなど、を用いれば、カーボネート結合の含有率の高いポリマー骨格を有する共重合体となる。カーボネート結合はエーテル結合に比べ結合エネルギーが高いため、得られる共重合体は耐候性や耐酸性に優れる。
【0122】
特に、活性水素を有する連鎖移動剤として水を適用する場合、前記構造式(1)で表される金属錯体を合成する際に使用した水が残存していてもよく、水の除去工程が簡略化でき、製造工程上の作業の煩雑さが解消されるという更なる利点を有する。また、このような状態で、連鎖移動剤としての水を更に添加しても、1種類の連鎖移動剤を用いたのと同様の効果を得ることができる。
なお、共重合反応に用いる金属錯体に付着した水の残存量は、共重合反応によって得られた共重合体のGPCチャートを確認することで、仕込みの水の量と金属錯体の量とから、概算することができる。この結果を基に、所望の分子量を有する共重合体を作製することが可能である。
【0123】
高価な金属錯体の使用量を低減しつつ所望の分子数及び分子量を得る観点から、活性水素を有する連鎖移動剤は、1モルの前記金属錯体に対して1モル以上の活性水素が存在するように用い、好ましくは、5モル以上の活性水素が存在する場合であり、より好ましくは、10モル以上の活性水素が存在する場合である。
【0124】
なお、連鎖移動剤を適用する場合には、ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体の中でも、一般式(3)で表されるコバルト錯体が特に好適である。コバルト錯体は連鎖移動剤を用いてもμ−オキソダイマーを生成させ難いため、活性が低下するようなことが少ない。そのため大気雰囲気で調製できる。また一般式(3)で表されるコバルト錯体を適用する場合には、水の添加量を触媒に対して5モル倍以上としても、反応速度を低下させないので、共重合反応に用いる触媒量を低減させることができる。更に、一般式(3)で表されるコバルト錯体の仕込み量から算出する分子量は、実際に生成した分子量に近い値となる。
【0125】
<第二の反応工程>
第二の反応工程では、前記一般式(1)で表されるアルキレンオキシドと、前記一般式(2)で表される酸無水物とを共重合反応させる。
【0126】
第二の反応工程では、本発明にかかる金属錯体は、アルキレンオキシドに対し、0.1モル%〜1モル%で存在させれば充分である。より好ましくは、0.2モル%〜0.5モル%で存在させる場合である。
【0127】
第二の反応工程における共重合反応時の温度は、120℃以下となるように制御することが好ましく、より好ましくは20℃以上120℃以下であり、更に好ましくは20℃以上100℃以下であり、特に好ましくは40℃以上80℃以下である。
【0128】
第二の反応工程は、溶媒中で行ってもよいし、無溶媒で行ってもよい。
溶媒を用いる場合には、第二の反応工程で説明したものと同様の溶媒を用いることができ、好適な溶媒や好適な溶媒の使用量も同様である。
【0129】
第二の反応工程においても、ルイス塩基を用いることができる。ルイス酸を用いたときの反応スキームを下記スキーム6に示す。
【0130】
【化20】



【0131】
上記反応スキーム6において、Rは一般式(1)におけるRと同義であり、Zは一般式(2)におけるZと同義であり、BASEはルイス塩基を表す。なお、第一の反応工程と第二の反応工程において、一般式(1)で表される化合物は、同一であっても異なるものであってもよい。
【0132】
第二の反応工程におけるルイス塩基の使用量は、前記ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体1モルに対して、0.1〜5モル用いることが好ましく、0.5〜0.75モルであることがより好ましい。当該範囲での使用であれば、収率を低下させず、環状カーボナート(アルキレンオキシドと酸無水物が1モルずつ反応した化合物)を生成させ難く、交互共重合体を生成する。また、反応速度の観点や、二酸化炭素を取り込みやすいという点から、アルキレンオキシドのみが反応したポリエーテルを生成し難い。
【0133】
第二の反応工程においても、活性水素を有する連鎖移動剤を用いることができる。
第二の反応工程における連鎖移動剤の使用量は、高価な金属錯体の使用量を低減しつつ所望の分子数及び分子量を得る観点からは、1モルの前記金属錯体に対して1モル以上の活性水素が存在するように用いることが好ましく、より好ましくは、5モル以上の活性水素が存在する場合であり、更に好ましくは、10モル以上の活性水素が存在する場合である。
【0134】
第二の反応工程において、用いることのできる連鎖移動剤の種類は、前記第一の反応工程で説明したものと同様のものを適用することができる。また、連鎖移動剤を適用した場合に好適な金属触媒は、一般式(3)で表されるコバルト錯体である。
【0135】
<ブロック共重合体の製造方法>
本発明のブロック共重合体の製造方法では、前記第一の反応工程と前記第二の反応工程のいずれを先に行ってもよく、また、第一の反応工程と第二の反応工程を繰り返し行ってもよい。
第一の反応工程と第二の反応工程とを切り替える際に、触媒としての前記ポルフィリン系金属錯体や、溶媒、ルイス塩基、などを入れ替えてもよいが、製造工程の簡略化の観点からは、同じものを使用することが好ましい。
【0136】
例えば、まず初めに第一の反応工程を行い、次に第二の反応工程を行った場合の反応スキームを以下に示す。
【0137】
【化21】



【0138】
第一の反応工程と第二の反応工程において、一般式(1)で表される化合物は、同一であっても異なるものであってもよい。つまり、一般式(1)中のRは、第一の反応工程及び第二の反応工程で、同一であっても異なっていてもよい。
【0139】
上記反応を組み合わせることで、以下のような種々の共重合体を得ることができる。なお、下記重合体において、第一の反応工程によって得られるポリカーボネートの共重合体ブロックをAとして表し、第二の反応工程によって得られるポリエステルの共重合体ブロックをBとして表す。
【0140】
【化22】



【0141】
また、1分子内に2個以上の活性水素を有する連鎖移動剤を用いると、ポリマーの成長点が2箇所以上となるため、製造工程の簡略化を図ることができる。
つまり、例えば、上記ブロック共重合体(2)を製造する場合、連鎖移動剤を用いない場合には、共重合体ブロックAを作製した後、共重合体ブロックBを作製し、その後さらに共重合体ブロックAを作製する、という三段階の工程を必要とする。これに対し、1分子内に2個以上の活性水素を有する連鎖移動剤を用いれば、両末端に成長点を有する共重合体ブロックBを作製することができ、これに共重合体ブロックAを作製すれば、A−B−Aのブロック共重合体(2)を二段階の工程で得ることができる。
【0142】
得られたブロック共重合体に、ブレンシュテッド酸化合物を添加して、末端を水酸基に変換し、反応を停止させることができる。その様子を下記スキーム8に示す。なお、下記スキーム8では、連鎖移動剤を用いない場合で説明を行っているが、連鎖移動剤を用いる場合であっても、金属錯体(触媒)を水素原子で交換する点は同様である。
【0143】
【化23】



【0144】
本発明の方法に用いる金属錯体、アルキレンオキシド、ルイス塩基、更には溶媒について、添加の順は特に制限が無いが、溶媒を用いる場合には、予め該溶媒に金属錯体を溶かした溶液を調製しておくことが好ましい。
【0145】
また、共重合反応終了の後、共重合体中に取り込まれた金属錯体は、金属錯体および共重合体が溶解している液から一方のみを析出させる方法、金属錯体および共重合体の固体状混合物から一方のみを抽出する方法のいずれの方法で、金属錯体を取り除くことができる。
【0146】
この場合、金属錯体を溶解可能な共重合体の貧溶媒、共重合体を溶解可能な金属錯体の貧溶媒、あるいは金属錯体の塩基性部位と反応して塩を形成する酸性物質、のいずれかを用いることができる。例えばこのような貧溶媒としては、メタノール、ヘキサン等を用いることができる。
【0147】
<共重合体>
上記本発明の製造方法によって、二酸化炭素と、前記一般式(1)で表されるアルキレンオキシドとの共重合反応によるポリカーボネートの共重合体ブロックと、前記一般式(1)で表されるアルキレンオキシドと前記一般式(2)で表される酸無水物とのブロック共重合反応による共重合体ブロックとを有するポリエステルのブロック共重合体を得ることができる。
【0148】
本発明の製造方法を適用しない場合には、不要な副生成物の生成比率が高くなる。例えば、一般式(1)で表されるアルキレンオキシドをA、一般式(2)で表される酸無水物をB、二酸化炭素をCとして、得られる生成物を示すと、従来の製造方法では、下記構造(1)〜(3)に示すような副生成物が生成しやすくなる。
【0149】
【化24】



【0150】
構造(1)は、いわゆる環状カルボネートまたは環状エステルである。環状カルボネートとは、アルキレンオキシドと二酸化炭素が1分子ずつのみ結合しただけの低分子化合物であり、環状エステルとは、アルキレンオキシドと酸無水物が1分子ずつのみ結合しただけの低分子化合物である。構造(1)のような低分子化合物を含む共重合体の熱分解温度は、構造(1)で表される化合物の存在によって著しく低下する。
【0151】
構造(2)は、一般式(1)のアルキレンオキシドAのみが開環重合したポリマーであり、二酸化炭素や酸無水物と反応していないため、ポリカーボネートやポリエステルの構造を有しない。二酸化炭素を有効に活用するという観点からは、構造(2)のポリマーは目的に沿わない。
【0152】
構造(3)では、(A−C)を繰り返し単位とするポリカーボネート共重合体ブロックと、(A−B)を繰り返し単位とするポリエステル共重合体ブロックのブロック共重合体の中に、アルキレンオキシドのみが開環重合したポリエーテル部分が存在する。このポリマーはポリエーテル部分を有するため、生分解性に劣り、熱分解温度が低下する。
【0153】
これに対し本発明の製造方法では、前記構造(1)〜(3)のような副生物を生成しにくい。
【0154】
また、本発明の製造方法で得られたブロック共重合体は、ポリカーボネート共重合体ブロックと、ポリエステル共重合体ブロックのいずれにおいても、交互共重合比率を90%以上とすることができ、更に、95%以上とすることもでき、99%以上とすることも可能である。
ここで、交互共重合比率とは、共重合体中の主鎖の全結合数のうち、二酸化炭素とアルキレンオキシドの反応によるカーボネート結合数および酸無水物とアルキレンオキシドの反応によるエステル結合数の占める割合をいう。つまり、交互共重合比率が高い共重合体は、アルキレンオキシドのみが開環重合したポリエーテル結合の含有率が低い。
【0155】
したがって、交互共重合比率はカーボネート結合率およびエステル結合率として表されることができる。カーボネート結合率およびエステル結合率は、1H−NMR(CDCl)において、δ5.0ppm付近に現れるカーボネート結合に隣接するメチン水素由来のシグナルと、δ5.2ppm付近に現れるエステル結合に隣接するメチン水素由来のシグナルと、δ3.4ppm付近に現れるエーテル結合に隣接するメチン水素由来のシグナルの強度比から算出することができる。
【0156】
また、本発明の製造方法では、本発明に係る金属錯体を用いるので、得られる共重合体は、狭い分子量分布を有する。GPC測定により得られた数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比Mw/Mnが、1.01〜1.20の共重合体とすることができ、更には、Mw/Mnを1.01〜1.15とすることも可能であり、製造条件によっては、Mw/Mnを1.01〜1.10とすることもできる。
【0157】
また、本発明に係る金属触媒の一部は超臨界二酸化炭素にも溶解するので、反応時の二酸化炭素分圧を高くして超臨界二酸化炭素とすることで、溶剤を使用せずに反応させることができる。その結果、不要な溶剤の含有量が少ない共重合体となる。
【0158】
上記共重合体の製造方法で、活性水素を有する連鎖移動剤として水を適用したとき、両末端が水酸基の共重合体となる。なお、連鎖移動剤を用いない場合には、上記スキーム3に示すように、片末端に塩素原子などの金属触媒の金属塩に起因した置換基を有する。
【0159】
両末端が水酸基であるブロック共重合体は、接着性に優れかつ生分解性を示すので、接着用途のフィルムに好適に用いることができる。
【実施例】
【0160】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0161】
[実施例1]
(第一の反応工程)
内部を窒素で満たしたステンレス性耐圧容器に、金属錯体としてテトラフェニルポルフィナトコバルトクロリド[(TPP)CoCl](前記構造式(1))の0.1mmolと、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシド(PO)の50mmolを用いた。これらを、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)の0.075mmolを含むジクロロメタン3.5mlに添加し、圧力をかけて二酸化炭素を注入し、反応初期の圧力が5MPaとなるように調整した。
【0162】
40℃で48時間加熱反応させた後、これを室温まで冷却してから、過剰の二酸化炭素を解放した。
【0163】
(第二の反応工程)
第一の反応工程で得られた反応液に、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシド(PO)の50mmolと、酸無水物としてコハク酸(SA)の50mmolを添加した。
【0164】
80℃で7日間加熱反応させた後、これを室温まで冷却し、3.5mLの塩化メチレンを加え、生成物を得た。
【0165】
[実施例2〜4、参照例1〜2]
実施例1におけるプロピレンオキシド(PO)とコハク酸(SA)の添加量を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様にして、共重合体を作製した。なお、参照例2で作製した共重合体を、実施例3の第一反応工程に適用した。
【0166】
(平均分子量)
第一の反応工程の後に得られた生成物の平均分子量、及び第二の反応工程後に得られた生成物の平均分子量をGPCで分析した。その結果を表1に示す。
【0167】
(転化率)
第一の反応工程の後に得られた生成物の転換率、及び第二の反応工程後に得られた生成物の転換率を、1H−NMRにより求めた。その結果を表1に示す。
【0168】
【表1】

表1中の「−」は、該当していないことを意味する。
【0169】
<分析>
(ポリカーボネートおよびポリエステルの含有比率(PC+PEs:CC))
PC(ポリカーボネート)とPEs(ポリエステル)とCC(環状カーボネート)の生成比率は、予め作成しておいた検量線を用い、IRから求めた。その結果を表2に示す。なお、環状エステルは殆ど生成していないことが、生成物のGPCクロマトグラムを観察したときに、触媒残渣を除き低分子量領域にはほとんど何も観測されないことから確認されている。
【0170】
(カーボネート結合率およびエステル結合率)
カーボネート結合率およびエステル結合率は、1H−NMR(CDCl)において、δ5.0ppm付近に現れるカーボネート結合に隣接するメチン水素由来のシグナルと、δ5.2ppm付近に現れるエステル結合に隣接するメチン水素由来のシグナルと、δ3.4ppm付近に現れるエーテル結合に隣接するメチン水素由来のシグナルの強度比から算出することができる。
【0171】
【表2】

【0172】
分析結果から、得られたポリマーは、二酸化炭素とアルキレンオキシドとが交互に反応したポリカーボネートと、酸無水物とアルキレンオキシドとが交互に反応したポリエステルとのブロック共重合体であり、環状カーボネートの生成率は1%未満であった。
さらに、1H−NMRによる詳細な測定によって得られた結果から、実施例1〜4はいずれもカーボネート結合の割合が、仕込みのアルキレンオキサイドと二酸化炭素の量から推定される量と略一致していた。
【0173】
<精製>
実施例1と実施例2で得られた共重合体の熱分解温度(Td)の測定の正確性を期すため、得られた生成物の精製を下記の方法で行ない、精製後の共重合体についてTdの測定を行なった。
まず、生成物をクロロホルムとメタノールで再沈殿させ、ポリマーを単離した。単離したポリマーから、カラムクロマトグラフィーによって触媒を除去した。このとき酢酸エチルを展開溶媒として用いた。
触媒を除去したポリマーを、再度、クロロホルムとメタノールで再沈殿させた。その後、減圧乾燥を行なった。
【0174】
(精製後のポリマーの分解温度)
精製後のポリマーの分解温度(Td)は、METTLER TOLEDO STAR システム(メトラー・トレド社製)を用いて、25℃から550℃まで10℃/分の速度で昇温して求めた。その結果を表3に示す。
【0175】
【表3】

【0176】
実施例1〜4の共重合体の熱分解温度は、いずれも250℃を超えていた。一般的な射出成形機での加熱温度が250℃であり、これよりも高い熱分解温度を有する共重合体は、実用的に優れている。
【0177】
[実施例5]
実施例1では、酸無水物としてコハク酸(SA)を用いたが、実施例5では、無水マレイン酸(MA)に変更し、配合比を表4に示すように変えてポリマーを合成した。
【0178】
得られたポリマーを、実施例1と同様の方法で分析した。結果を表5に示す。
【0179】
【表4】

【0180】
【表5】

【0181】
[実施例6]
実施例6では、連鎖移動剤を適用した。
内部を窒素で満たしたステンレス性耐圧容器に、金属錯体としてテトラフェニルポルフィナトコバルトクロリド[(TPP)CoCl](前記構造式(1))と、連鎖移動剤として2−プロパノールと、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシド(PO)を用い、これらの配合モル比が、1/49/1000となるようにして、(TPP)CoClと等モル量の4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を含むジクロロメタンに添加し、圧力をかけて二酸化炭素を注入し、反応初期の圧力が5MPaとなるように調整した。
【0182】
40℃で96時間加熱反応させた後、これを室温まで冷却してから、過剰の二酸化炭素を解放した。
【0183】
この後、実施例1と同様にして第二の反応工程を行ない、反応物を得た。得られた反応生成物の外観は、粘着物であった。
【0184】
[実施例7]
実施例6における2−プロパノールをベンジルアルコールに変更し、コバルト錯体と、ベンジルアルコールと、プロピレンオキシドの配合モル比を表6に示すように変更した以外は実施例6と同様にして、ポリマーを合成した。得られた反応生成物の外観は、粘着物であった。
【0185】
実施例6〜7で得られた反応物の分析評価を実施例1と同様にして行なった。その結果を表7に示す。
【0186】
【表6】

【0187】
【表7】

【0188】
実施例6〜7においては、金属錯体と連鎖移動剤の分子の総和から計算される、分子量と実際の数平均分子量とが略一致していた。また、その分子量分布M/Mは、いずれも狭いものであった。
なお、実施例では、全末端数に対するハロゲン末端の数の割合を確認していないが、ハロゲン末端の数が低減していることが推測できる。本発明では、理論上、全末端数に対するハロゲン末端の数の割合は0.25以下とすることが可能であり、実施例で得られた共重合体もこの数値範囲に該当するものが存在していると考える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体の存在下で、二酸化炭素と、下記一般式(1)で表されるアルキレンオキシドとを共重合反応させる第一の反応工程と、
ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体の存在下で、下記一般式(1)で表されるアルキレンオキシドと下記一般式(2)で表される酸無水物とを共重合反応させる第二の反応工程と、
を有することを特徴とするブロック共重合体の製造方法。
【化1】



〔一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。一般式(2)中、Zは五員環又は六員環を形成する基を表す。但し、第二の反応工程で用いる一般式(1)で表されるアルキレンオキシドは、第一の反応工程で用いる一般式(1)で表されるアルキレンオキシドと、同一であっても異なっていてもよい。〕
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるアルキレンオキシドが、プロピレンオキシド又はエチレンオキシドであり、前記一般式(2)で表される酸無水物が、無水コハク酸であることを特徴とする請求項1に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体が、下記一般式(3)で表される金属錯体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブロック共重合体の製造方法。
【化2】



〔一般式(3)中、におけるRは、各々独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、トリフルオロメチル基、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子を表し、nは、0〜5のいずれかの整数を表す。〕
【請求項4】
前記第一の反応工程および前記第二の反応工程において、ルイス塩基を用いることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記第一の反応工程および前記第二の反応工程では、前記ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体1モルに対し、前記ルイス塩基を0.1〜5モル用いることを特徴とする請求項4に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記第一の反応工程および前記第二の反応工程では、前記ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体1モルに対し、前記ルイス塩基を0.5〜0.75モル用いることを特徴とする請求項4に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記ルイス塩基が、電子共有性の高い構造を有し、且つ不対電子を有する化合物であることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記ルイス塩基が、ピリジン系化合物又はイミダゾール系化合物であることを特徴とする請求項7に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項9】
前記ピリジン系化合物が、下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項8に記載のブロック共重合体の製造方法。
【化3】



〔一般式(4)中、Rは、メチル基、ホルミル基、置換アミノ基を表し、mは、0〜5の整数を表す。〕
【請求項10】
前記ピリジン系化合物が、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンであることを特徴とする請求項9に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項11】
前記イミダゾール系化合物が、下記一般式(5)で表されることを特徴とする請求項8に記載のブロック共重合体の製造方法。
【化4】



〔一般式(5)中、Rは、置換又は無置換のアルキル基を表す。〕
【請求項12】
前記イミダゾール系化合物が、N−メチルイミダゾールであることを特徴とする請求項11に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項13】
前記第一の反応工程における二酸化炭素分圧が、0.1〜25MPaであることを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項14】
前記第一の反応工程では、0℃以上100℃以下の温度範囲で共重合反応を行なうことを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項15】
前記第二の反応工程では、20℃以上120℃以下の温度範囲で共重合反応を行なうことを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項16】
前記第一の反応工程および前記第二の反応工程の少なくとも一方の反応工程において、活性水素を有する連鎖移動剤を用いることを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項17】
前記ポルフィリン系化合物が配位した金属錯体に対して5モル以上の前記活性水素を含むように前記連鎖移動剤を用いることを特徴とする請求項16に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項18】
前記活性水素を有する連鎖移動剤が、1分子中に1個以上の活性水素基を含有することを特徴とする請求項16又は請求項17に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項19】
前記活性水素を有する連鎖移動剤が、1分子中に1個以上のOH基又はCOOH基を有することを特徴とする請求項18に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項20】
前記活性水素を有する連鎖移動剤が、1分子中に2個以上の活性水素基を含有することを特徴とする請求項16〜請求項19のいずれか1項に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項21】
前記活性水素を有する連鎖移動剤が、水であることを特徴とする請求項20に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項22】
請求項1〜請求項21のいずれか1項に記載の製造方法により得られたブロック共重合体。
【請求項23】
二酸化炭素と、下記一般式(1)で表されるアルキレンオキシドとの共重合反応によるポリカーボネートブロックと、下記一般式(1)で表されるアルキレンオキシドと下記一般式(2)で表される酸無水物との共重合反応によるポリエステルブロックとを有するブロック共重合体。
【化5】



〔一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。一般式(2)中、Zは、五員環又は六員環を形成する基を表す。但し、ポリカーボネートブロックにおける一般式(1)で表されるアルキレンオキシドのRは、ポリエステルブロックにおける一般式(1)で表されるアルキレンオキシドのRと、同一であっても異なっていてもよい。〕
【請求項24】
両末端が水酸基であることを特徴とする請求項22又は請求項23に記載のブロック共重合体。
【請求項25】
前記ポリカーボネートブロック及び前記ポリエステルブロックの交互共重合比率が、いずれも95%以上であることを特徴とする請求項23〜請求項24のいずれか1項に記載のブロック共重合体。
【請求項26】
数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比率Mw/Mnが、1.01以上1.20以下であることを特徴とする請求項22〜請求項25のいずれか1項に記載のブロック共重合体。

【公開番号】特開2008−280399(P2008−280399A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124384(P2007−124384)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】