説明

ブロック型複合電子部品

【課題】製造過程でセラミックチップの欠けや割れを発生させることがなく、使用時に周囲温度の変化や部品本体の発熱の変化に追従できる構造のブロック型電子部品を提供する。
【解決手段】セラミックの層2と内部電極3の層が交互に積層されている複数個のチップ型積層電子部品1を準備する。それらのチップ型積層電子部品を厚み方向及び/又は幅方向に複数個、接着材Bを介して、束ねる。そして束ねられたチップ型積層電子部品からなる少なくとも一つの電子部品集束群Aの外部電極において同じ側の端面に金属板6a,6bを接合する。金属板として、前記セラミックの熱膨張係数とほぼ同じ熱膨張係数を有するものが使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数個のチップ型電子部品を束ねて得た電子部品集束群の外部端子に共通の金属板を接合してなるブロック型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、従来から一つの誘電体ブロック51の中に、所定間隔をおいて面状に埋設した複数個の内部電極群52を、それらの一端部が交互に誘電体ブロック51の両端面に露出させるとともに、露出したそれらの内部電極群52の端部に一対の外部電極板53a、53bを共通に接合した構造のブロック型電子部品54が知られている(特開2003−124059号公報)。
【0003】
この公知技術に係るブロック型電子部品54は、直列等価抵抗(ESR)及び直列等価インダクタンス(ESL)を小さくでき、かつ高静電容量化を図ることができるのみならず、それが実装される電子回路基板に対して内部電極群当たりの実装面積を小さくできるという効果を発揮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−124059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ハイブリッド自動車や電気自動車の電源装置用平滑回路に組み込まれるブロック型電子部品54では、充放電電流容量をより向上させる要求があり、また、携帯電話やデジタルカメラに使用される積層コンデンサでは、前記の要求に加えて小型化が要求されている。
【0006】
しかしながら、前記公知のブロック型電子部品54を前記用途に適用しようと試みてみると、次のような問題がある。まず、前記公知技術に係るブロック型電子部品54を製造してみると、その製造過程におけるハンドリング時に前記誘電体ブロック51の欠けや割れが発生し易くなるという問題がある。次に、前記ブロック型電子部品を電子回路基板に実装して使用するときに、内部電極52の反復発熱により前記誘電体ブロック51が熱膨張して変形し、ひいては破壊し、外部電極板53a、53bが誘電体ブロック51の変形に追従できないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明者は、前記の問題を解消し得るブロック型電子部品を提案すべく、鋭意、検討したところ、小型のチップ型積層電子部品を多数個束ねた電子部品集束群を使用するとともに、それを構成するチップ型積層電子部品を特定の接着材で接合し、さらに前記金属板をチップ型積層電子部品の構成要素であるセラミックの熱膨張と特定の物理的関係を有する金属板を外部電極に接合して外部端子にすればよいという事実を見いだし、本発明を完成した。
【0008】
従って、本発明の課題は、ブロック型電子部品の製造過程でその構成要素であるセラミックチップの欠けや割れが発生させることないとともに、例えば、電気自動車などの電子回路基板に実装後、周囲温度の変化や部品本体の発熱による温度変化においても前記電子部品集束群の変形を増大させることがなく、仮に電子部品集束群が変形しても、前記外部端子が電子部品集束群の変形に追従できる構造のブロック型電子部品を取得することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記の課題を解決するために、セラミックの層と内部電極の層が交互に積層されている複数個のチップ型積層電子部品を厚み方向及び/又は幅方向に束ねるとともに、束ねられたチップ型積層電子部品からなる少なくとも一つの電子部品集束群の外部電極における同じ側の端面に金属板を接合するという手段を採用する。この手段を採用することにより、本発明に係るブロック型電子部品は、独立した比較的小型のセラミックの中に、内部電極が交互にその端部をずらして積層されたチップ型積層電子部品が複数個束ねられた少なくとも一つの電子部品集束群から構成される。
【0010】
その結果、従来技術において一つの大型のセラミックブロックと異なり、ブロック型電子部品の製造過程でその構成要素であるセラミックチップが小型であるため、それに外部負荷がかかっても、欠けや割れが発生にくくなる。なお、本発明において、チップ型積層電子部品とは、セラミックの層と内部電極の層が交互に積層されているチップ単位の電子部品を意味し、ブロック型電子部品とは、複数個の前記チップ型積層電子部品が煉瓦ブロックのように束ねられて一つの大きなブロックを構成している電子部品の集束体を意味である。
【0011】
本発明は、さらに前記の課題をより効果的に解決するため、複数個のチップ型積層電子部品を機械的に変形及び/又は熱的に変形可能な接着材、好ましくは、シリコン系樹脂で接合するという手段を採用する。この手段を採用することにより、ブロック型電子部品を構成するチップ型積層電子部品のそれぞれに熱的負荷がかかって熱変形しても、又はチップ型積層電子部品が機械的に変位しても、前記接着材がそれらを吸収するという作用が発揮される。
【0012】
本発明においては、ブロック型電子部品における多数個の内部電極が接合する金属板が従来技術と同様に使用されるが、本発明においては、その金属板をチップ型積層電子部品がそれぞれ有する外部電極を介して接合するという手段を採用するとともに、その金属導体としてその熱膨張が前記セラミックの熱膨張係数とほぼ同じ金属を使用する。この手段を採用することにより、チップ型積層電子部品の外部電極は、金属接合体を介して前記金属導体と誘電体に接着し、かつそれらに挟まれる。その結果、外部電極が熱負荷を受けて膨張しようとしても、その膨張は前記金属導体と誘電体に抑制される。
【0013】
なお、本発明においては、前記金属導体として、常温から400℃の温度範囲で3〜10ppm/℃の熱膨張係数を有している金属、好ましくは、鉄を主成分として含むニッケルとの合金、さらに好ましくは約58重量%の鉄と約42重量%のニッケルを含む合金を使用する。また、他の金属導体として、鉄を主成分として含むニッケル及びコバルトとの合金、好ましくは、約54重量%の鉄、約29重量%の ニッケル及び約19重量%のコバルトを含む合金を使用する。
【0014】
また、本発明においては、ブロック型電子部品を複数種のチップ型積層電子部品の集束体から構成することもできる。この場合、チップ型積層電子部品を構成するセラミックとして誘電体と半導体のそれぞれからなる電子部品を使用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ブロック型電子部品の製造過程でその構成要素であるセラミックチップの欠けや割れが発生させることがないとともに、周囲温度の変化や部品本体の発熱による温度変化においても前記電子部品集束群の変形を増大させることがなく、仮に電子部品集束群が変形しても、前記外部端子が電子部品集束群の変形に追従できる構造のブロック型電子部品を提供できるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】チップ型積層電子部品の部分破断斜視図である。
【図2】本発明に係るブロック型電子部品の第一態様を示す部分破断斜視図である。
【図3】同じくブロック型電子部品の一部を示す部分断面図である。
【図4】同じく第二態様を示す部分破断斜視図である。
【図5】第三態様を示す斜視図である。
【図6】第四態様を示す斜視図である。
【図7】従来技術を示す部分破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1に示すように、本発明に係るブロック型電子部品を構成するチップ型積層電子部品1は、誘電体又は半導体からなるセラミックの層2と内部電極3の層が交互に積層されているチップ体4からなり、そのチップ体4の両端部に内部電極3の端部が交互に外方に露出しているとともに、外方に露出している内部電極3の端部に対して、チップ体4の両端部にそれぞれ形成した外部電極5a、5bに通電可能になっている。
【0018】
次にこのような構造のチップ型積層電子部品1を使用して、本発明の第一実施態様に係るブロック型電子部品11の製造方法について説明すると、図2及び図3に示すように、複数個のチップ型積層電子部品1を、接着材Bを介して、矢印Xに示す長さ方向及びYに示す幅方向に煉瓦ブロックの壁のように束ねて、隣接するチップ型積層電子部品1同士を接合する。すると、束ねられたチップ型積層電子部品1のそれぞれから外部電子5a、5bが露出した構造の一つの電子部品集束群Aが形成される。なお、接着材Bとしては、ブロック型電子部品11が電子回路基板に実装され、熱負荷、ひいては機械的負荷を受けたとき、ブロック型電子部品11の変形に追従可能なシリコン系樹脂からなるものが選択される。
【0019】
続いて、前記電子部品集束群Aの両側面に露出した外部電子5a、5bのそれぞれに1枚の金属板6a,6bを接合する。金属板6a,6bとしては、前記同様にブロック型電子部品11が電子回路基板に実装され、熱負荷を受けたとき、チップ型積層電子部品1を構成するセラミックの熱膨張係数とほぼ同じ程度の熱膨張係数を有する金属板、好ましくは、常温から400℃の温度範囲で3〜10ppm/℃の熱膨張係数を有している金属板が使用される。具体的にはこのような金属として、鉄を主成分として含むニッケルとの合金、好ましくは、約58重量%の鉄と約42重量%のニッケルを含む合金、又は鉄を主成分として含むニッケル及びコバルトとの合金、好ましくは、約54重量%の鉄、約29重量%のニッケル及び約19重量%のコバルトを含む合金が使用される。
【0020】
また、前記金属板6a,6bとしては、前記外部電極5a,5bと電気回路基板に設置可能かつ電子回路とを通電可能な形状・構造を有していればいかなるものも使用できるが、好ましくは、電子回路基板に立設可能な立脚7、又は図4に示すように座脚8を有するものが使用される。
【0021】
このような工程を経ると、本発明に係るブロック型電子部品11は、セラミックの層2と内部電極3の層が交互に積層されている複数個のチップ型積層電子部品1からなり、それらの電子部品1がその厚み方向及び幅方向に束ねられた構造を有している。そして、束ねられたチップ型積層電子部品1からなる一つの電子部品集束群Aの外部電極5a,5bにおける同じ側の端面に金属板6a,6bを接合された構造を有するに至る。
【0022】
このブロック型電子部品11が図示していない電子回路基板に実装され、その周囲温度の変化や電子回路基板の発熱に伴い、ブロック型電子部品11自体が温度変化を起こした場合、それを構成する各チップ型積層電子部品1が熱的に及び/又は機械的に変形又は変位すると、それらの間にある接着材Bがそれらの変形又は変位を吸収する。このとき外部電極5a,5bも変形しようとするが、それらが接合されている金属板6a,6bの熱膨張係数がチップ型積層電子部品1を構成しているセラミックのそれとほぼ同じであるから、それらに拘束されて外部電極5a,5b、ひいてはブロック型電子部品11の破損も抑制される。
【0023】
本発明は、その根本的技術思想を踏襲し発明の効果を著しく損なわない限度において、前記実施形態の一部分を変更して、例えば、次のように実施できる。
(1)図5に示すように、ブロック型電子部品11を縦向きに束ねて得た電子部品収束群AをX,Y,Zの三次元方向に重ねることができる。この態様において、上下面に金属板6a,6bを屈曲形成できる。
(2)図6に示すように、ブロック型電子部品11を縦向きに束ねて得た電子部品収束群AをX,Zの二次元方向に重ねることができる。
【0024】
(3)さらに図示していないが、前記セラミックとして、誘電体と半導体の2種を選択して、2種のチップ型積層電子部品を形成し、それらを束ねてブロック型電子部品を形成することができる。この場合、半導体として酸化亜鉛系バリスタ材料を使用することにより、一つのブロック型電子部品の中にチップ型積層コンデンサとチップ型積層バリスタの複数種のチップ型積層電子部品を組み込むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、電子回路基板に実装したとき発熱を伴う、大型のセラミック体の中に複数種の電子部品を構成する要素群を埋設したブロック型電子部品又は小型のセラミック体の中に複数種の電子部品を構成する要素群を集積して埋設したブロック型電子部品の分野に広く利用できる。
【符号の説明】
【0026】
1:チップ型積層電子部品
2:層
3:内部電極
4:チップ体
5a,5b:外部電極、
6a,6b:金属板
7:立脚
8:座脚
11:ブロック型電子部品
A:電子部品集束群
B:接着材
X,Y,Z:矢印。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックの層(2)と内部電極(3)の層が交互に積層されている複数個のチップ型積層電子部品(1)を厚み方向及び/又は幅方向に束ねるとともに、束ねられたチップ型積層電子部品からなる少なくとも一つの電子部品集束群(A)の外部電極における同じ側の端面に金属板(6a,6b)を接合したことを特徴とするブロック型電子部品。
【請求項2】
複数個のチップ型積層電子部品は、機械的変形および/又は熱変形可能な接着材(B)で接合されている請求項1記載のブロック型電子部品。
【請求項3】
前記接着材(B)は、シリコン系樹脂からなる請求項2記載のブロック型電子部品。
【請求項4】
前記金属板(6a,6b)がチップ型積層電子部品(1)の外部電極における同じ側の二つの端面のそれぞれに接合されている請求項1記載のブロック型電子部品。
【請求項5】
前記金属板(6a,6b)は、前記セラミックの熱膨張係数とほぼ同じ熱膨張係数を有している請求項1記載のブロック型電子部品。
【請求項6】
前記金属板(6a,6b)は、常温から400℃の温度範囲で3〜10ppm/℃の熱膨張係数を有している請求項4記載のブロック型電子部品。
【請求項7】
前記金属板(6a,6b)は、鉄を主成分として含むニッケルとの合金である請求項5記載のブロック型電子部品。
【請求項8】
前記金属板(6a,6b)は、約58重量%の鉄と約42重量%のニッケルを含む合金である請求項7記載のブロック型電子部品。
【請求項9】
前記金属板(6a,6b)は、鉄を主成分として含むニッケル及びコバルトとの合金である請求項5記載のブロック型電子部品。
【請求項10】
前記金属板(6a,6b)は、約54重量%の鉄、約29重量%のニッケル及び約19重量%のコバルトを含む合金である請求項9記載のブロック型電子部品。
【請求項11】
前記セラミックが誘電体又は半導体である請求項1記載のブロック型電子部品。
【請求項12】
前記チップ型積層電子部品(1)が複数種からなり、そのうちの一つが前記セラミックとして誘電体を使用し、他の一つが前記セラミックとして半導体を使用するものである請求項1記載のブロック型電子部品。
【請求項13】
前記半導体が酸化亜鉛系バリスタ材料である請求項11又は請求項12に記載のブロック型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−245381(P2010−245381A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93949(P2009−93949)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(591149089)株式会社MARUWA (35)
【Fターム(参考)】