説明

ブロック連結構造

【課題】傾斜面での施工に適し、水中施工も可能であり、工期の短縮、省力化を図ることができるブロック連結構造を提供する。
【解決手段】ブロック連結構造10は、河川Rの堤防Raの傾斜面11に沿って複数のブロック21〜24を隣接して配置することによって構築された隔壁12において、隣接するブロック22,23,24同士を連結するものであり、傾斜面11に沿って載置された先のブロック22(23)に対し後のブロック23(24)を鉛直方向Vのみに下降させて隣接させることによって互いに係合する係合手段として、鈎形状のフック部22a,22b,23a,23b,24aを各ブロック22,23,24に設けている。また、ブロック22,23の溝部22e,23eにそれぞれ嵌入する突条部23d,24cがブロック23,24に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や海岸の護岸工事、法面の保護工事などにおいて複数のブロックを連結して隔壁を構築する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
河川や海岸の護岸工事や法面の保護工事などにおいて傾斜方向に延びる隔壁を構築する場合、施工現場にて組み立てられた型枠内にコンクリートを打設し、固化後、型枠を取り外すという工法が実施されていたが、天候に左右され易く、施工に多大な手間を要し、工期の短縮が困難であるなどの問題があった。
【0003】
そこで、予め工場で製作した所定形状のコンクリートブロックを現場に搬入し、現場にて複数のコンクリートブロック同士を順次連結していくことによって隔壁を構築する技術が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0004】
一方、複数のコンクリート製ブロック小片を着脱自在に連結することによって所定のコンクリート構造体を構築する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−67622号公報
【特許文献2】特開平9−310363号公報
【特許文献3】特開2007−170119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2記載のブロック連結技術は、型枠組み立て工事が不要である点において優れているが、施工現場でのコンクリート打設を必要とするため、水中での施工が極めて困難である。
【0007】
一方、特許文献3記載のブロック連結技術は、施工現場でのコンクリート打設が不要であるが、ブロック小片同士の連結構造として、ブロック小片の面方向と直交する方向に沿って互いに相対移動させたときに凹部と凸部とが嵌合する構造が採用されているため、傾斜面上に載置されたブロック小片に他のブロック小片を連結する作業が困難である。即ち、傾斜面上に載置されたブロック小片に他のブロック小片を連結する場合、他のブロック小片を傾斜状態に保ち、且つ、斜め方向に下降させる必要があるため、作業性が悪いという問題がある。この問題は、ブロック小片のサイズや重量が増大するほど顕著となる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、傾斜面での施工に適し、水中施工も可能であり、工期の短縮、省力化を図ることができるブロック連結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のブロック連結構造は、隣接して配置されたブロック同士を連結するブロック連結構造であって、傾斜面に沿って載置された先のブロックに対して、後のブロックを鉛直方向のみに下降させて隣接させることによって傾斜方向に分離不能に係合する係合手段を備えたことを特徴とする。ここで、「傾斜方向に分離不能に係合する」とは、隣接するブロックに対し、これら引き離すような傾斜方向の引っ張り力が加わったときに分離しない状態に係合することをいう。
【0010】
ここで、前記係合手段として、鈎形状のフック部を設けることが望ましい。
【0011】
また、隣接する前記ブロック同士の相対位置の変化を阻止する拘束手段を設けることが望ましい。
【0012】
前記拘束手段として、傾斜面上に載置されたときに鉛直方向に連続する溝部(若しくは突条)を前記先のブロックに設け、前記後のブロックに前記溝部(若しくは前記突条)と嵌合する突条(若しくは溝部)を設けることが望ましい。
【0013】
前記拘束手段として、傾斜面上に載置されたときに鉛直方向と平行をなし且つ前記傾斜面の傾斜方向と交差する先端接合面を前記先のブロックの先端側に設け、前記先端接合面と接触する基端接合面を前記後のブロックの基端側に設けることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、傾斜面での施工に適し、水中施工も可能であり、工期の短縮、省力化を図ることができるブロック連結構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態であるブロック連結構造を使用した隔壁を示す側面図である。
【図2】図1に示す隔壁の平面図である。
【図3】図1に示す隔壁の基端部を構成するブロックを示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は基端面図である。
【図4】図1に示す隔壁の法肩部を構成するブロックを示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は基端面図である。
【図5】図1に示す隔壁の法面部を構成するブロックを示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図6】図1に示す隔壁の先端部を構成するブロックを示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は先端面図である。
【図7】図1に示す隔壁の施工手順を示す図である。
【図8】図1に示す隔壁の施工例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1,図2に示すように、本実施形態のブロック連結構造10は、河川Rの堤防Raの傾斜面11に沿って複数のブロック21〜24を隣接して配置することによって構築された隔壁12において、隣接するブロック22,23,24同士を連結するものであり、後述する図7に示すように、傾斜面11に沿って載置された先のブロック22(23)に対し後のブロック23(24)を鉛直方向Vのみに下降させて隣接させることによって互いに係合する係合手段として、鈎形状のフック部22a,22b,23a,23b,24aを各ブロック22,23,24に設けている。
【0017】
ここで、図3〜図6に基づいてブロック21〜24について説明する。なお、以下の説明において、図1に示す河川Rに近づく方向を先端側といい、河川Rから離れる方向を基端側という。
【0018】
図3に示すように、ブロック21においては、横断面が凸形状をした本体部21bの先端側に、上向きに突出した鈎形状のフック部21aが形成され、フック部21aより基端側の本体部21bに溝部21cが形成され、基端面21fは平面をなしている、また、本体部21bの底面側に左右に張り出すように拡幅部21dが形成され、その先端側に左右一対の先端接合面21eが形成されている。図1に示すように、ブロック21が堤防Raの水平面13上に載置されたとき、溝部21cは鉛直方向に連続した状態となり、先端接合面21eは鉛直方向と平行をなし且つ傾斜面11の傾斜方向と交差した状態となる。
【0019】
図4に示すように、ブロック22においては、横断面が凸形状をした本体部22cの基端側に下向きに突出した鈎形状のフック部22aが形成され、本体部22cの先端側に上向きに突出した鈎形状のフック部22bが形成されている。フック部22aの基端側に突条部22dが形成され、フック部22bより基端側の本体部22cに溝部22eが形成されている。図1に示すように、ブロック22が傾斜面11に載置されたとき、突条部22d及び溝部22eはいすれも鉛直方向に連続した状態になる。
【0020】
また、本体部22cの底面側に左右に張り出すように拡幅部22fが形成され、拡幅部22fの先端側に左右一対の先端接合面22gが形成され、拡幅部22fの基端側に左右一対の基端接合面22hが形成されている。ブロック22が堤防Raの傾斜面11上に載置されたとき、先端接合面22g及び基端接合面22hは鉛直方向と平行をなし且つ傾斜面11の傾斜方向と交差した状態となるように形成されている。
【0021】
図5に示すように、ブロック23においては、横断面が凸形状をした本体部23cの基端側に下向きに突出した鈎形状のフック部23aが形成され、本体部23cの先端側に上向きに突出した鈎形状のフック部23bが形成されている。フック部23aの基端側に突条部23dが形成され、フック部23bより基端側の本体部23cに溝部23eが形成されている。図1に示すように、ブロック23が傾斜面11に載置されたとき、突条部23d及び溝部23eはいずれも鉛直方向に連続した状態になる。
【0022】
また、本体部23cの底面側に左右に張り出すように拡幅部23fが形成され、拡幅部23fの先端側に左右一対の先端接合面23gが形成され、拡幅部23fの基端側に左右一対の基端接合面23hが形成されている。図1に示すように、ブロック23が堤防Raの傾斜面11上に載置されたとき、先端接合面23g及び基端接合面23hは鉛直方向と平行をなし且つ傾斜面11の傾斜方向と交差した状態となる。
【0023】
図6に示すように、ブロック24においては、横断面が凸形状をした本体部24bの基端側に下向きに突出した鈎形状のフック部24aが形成され、フック部24aの基端側に突条部24cが形成され、先端面24dは平面をなしている。また、本体部24bの底面側に左右に張り出すように拡幅部24eが形成され、その基端側に左右一対の基端接合面24fが形成されている。図1に示すように、ブロック24が堤防Raの傾斜面11上に載置されたとき、突条部24cは鉛直方向に連続した状態となり、基端接合面24fは鉛直方向と平行をなし且つ傾斜面11の傾斜方向と交差した状態となる。
【0024】
ここで、図1,図2,図7に基づいて隔壁12の施工手順について説明する。図7(a)に示すように、堤防Raの水平面13に載置されたブロック21に対し、ブロック22を鉛直方向Vに下降させることによって隣接させ、ブロック21のフック部21aにブロック22のフック部22aを重ね合わせて係合させる。このとき、先に載置されたブロック21の溝部21cは鉛直方向Vに直線的に連続した状態にあるので、突条部22dが鉛直方向Vに連続する状態にブロック22の姿勢を保ちながら、ブロック22全体を鉛直方向Vに沿って下降させれば、溝部21cに沿って突条部22dがスライドしながら嵌入される。
【0025】
ブロック22の底面が傾斜面11上に接地すると、フック部21a,22a同士が互いに離れないように係合し、突条部22dが溝部21c内に嵌り込むとともに、ブロック21の先端接合面21eとブロック22の基端接合面22h(図4参照)とが互いに面接触した状態となり、ブロック21とブロック22との連結が完了する。
【0026】
次に、図7(b)に示すように、堤防Raの傾斜面11に載置されたブロック22に対し、ブロック23を鉛直方向Vに下降させることによって隣接させ、ブロック22のフック部22bにブロック23のフック部23aを重ね合わせて係合させる。このとき、先に載置されたブロック22の溝部22eは鉛直方向Vに直線的に連続した状態にあるので、突条部23dが鉛直方向Vに連続する状態にブロック23の姿勢を保ちながら、ブロック23全体を鉛直方向Vに沿って下降させれば、溝部22eに沿って突条部23dがスライドしながら嵌入される。
【0027】
ブロック23の底面が傾斜面11上に接地すると、フック部22b,23a同士が互いに離れないように係合し、突条部23dが溝部22e内に嵌り込むとともに、ブロック22の先端接合面22gとブロック23の基端接合面23h(図5参照)とが互いに面接触した状態となり、ブロック22とブロック23との連結が完了する。
【0028】
次に、図7(c)に示すように、堤防Raの傾斜面11に載置されたブロック23に対し、ブロック24を鉛直方向Vに下降させることによって隣接させ、ブロック23のフック部23bにブロック24のフック部24aを重ね合わせて係合させる。このとき、先に載置されたブロック23の溝部23eは鉛直方向Vに直線的に連続した状態にあるので、突条部24cが鉛直方向Vに連続する状態にブロック24の姿勢を保ちながら、ブロック24全体を鉛直方向Vに沿って下降させれば、溝部23eに沿って突条部24cがスライドしながら嵌入される。
【0029】
ブロック24の底面が傾斜面11上に接地すると、フック部23b,24a同士が互いに離れないように係合し、突条部24cが溝部23e内に嵌り込むとともに、ブロック23の先端接合面23gとブロック24の基端接合面24f(図6参照)とが互いに面接触した状態となり、ブロック23とブロック24との連結が完了し、図1,2に示す隔壁12が構築される。
【0030】
図1,図2に示すブロック連結構造10は、傾斜面11に沿って載置された先のブロック22(23)に対して、後のブロック23(24)を鉛直方向のみに直線的に下降させて隣接させるだけで係合する係合手段として、フック部22b,23a,23b,24aを備えている。従って、施工現場でコンクリートを打設したり、専用の連結具で締結したりすることなく隔壁12を構築することができる。このため、天候に左右されず、傾斜面での施工に適し、水中施工も可能であり、工期の短縮、省力化を図ることができる。
【0031】
また、係合手段として、互いに重なり合って係合する鈎形状のフック部22b,23a,23b,24aを設けたことにより、連結作業を簡易化することができる。また、隔壁12を構築した後、元のブロック21〜24ごとに分離することも可能であるため、分離したブロック21〜24を再利用することもできる。
【0032】
さらに、フック部22b,23a(23b,24a)が係合することによりブロック22,23(23,24)が傾斜方向に分離しないように拘束され、溝部22e,23eと突条部23d,24cとがそれぞれ嵌合することにより、ブロック22,23(23,24)が傾斜方向と交差する方向に移動しないように拘束されている。また、先端接合面22g,23gと基端接合面23h,24fとがそれぞれ面接触することにより、ブロック22,23(23,24)が傾斜方向と交差する方向に移動しないように拘束される。
【0033】
このように、隣接するブロック21〜24同士の相対位置の変化を阻止する拘束手段を設けたことにより、河川Rの水流や地震などによって隔壁12が変形したり、崩壊したりするのを防止することができる。
【0034】
次に、図8に基づいて隔壁12の施工例について説明する。図8に示す施工例においては、河川堤防の法面に、河川の流下方向に沿って距離を隔てて複数の隔壁12を構築し、これらの隔壁12の間の法面に沿って、平面視形状がT字状をしたコンクリートブロック30などを複数連結して配置し、護岸構造物31を形成している。コンクリートブロック30は、本出願人が特願2008−193990にて提案しているものであるが、これに限定するものではない。
【0035】
図8に示すような構成とすれば、河川の水流や地震などによって護岸構造物31が崩壊したり、流出したりすることを防止することができる。なお、図1,図2に示す隔壁12や図8に示す護岸構造物31は例示であって、本発明のブロック連結構造がこれらに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のブロック連結構造は、河川や海岸の護岸工事、法面の保護工事などにおいて複数のブロックを連結して隔壁を構築する手段として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 ブロック連結構造
11 傾斜面
12 隔壁
13 水平面
21,22,23,24 ブロック
21a,22a,22b,23a,23b,24a フック部
21b,22c,23c,24b 本体部
21c,22e,23e 溝部
21d,22f,23f,24e 拡幅部
21e,22g,23g 先端接合面
21f 基端面
22d,23d,24c 突条部
22h,23h,24f 基端接合面
24d 先端面
30 コンクリートブロック
31 護岸構造物
R 河川
Ra 堤防
V 鉛直方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接して配置されたブロック同士を連結するブロック連結構造であって、傾斜面に沿って載置された先のブロックに対して、後のブロックを鉛直方向のみに下降させて隣接させることによって傾斜方向に分離不能に係合する係合手段を備えたことを特徴とするブロック連結構造。
【請求項2】
前記係合手段として、鈎形状のフック部を設けた請求項1記載のブロック連結構造。
【請求項3】
隣接する前記ブロック同士の相対位置の変化を阻止する拘束手段を設けた請求項1または2記載のブロック連結構造。
【請求項4】
前記拘束手段として、傾斜面上に載置されたときに鉛直方向に連続する溝部(若しくは突条)を前記先のブロックに設け、前記後のブロックに前記溝部(若しくは前記突条)と嵌合する突条(若しくは溝部)を設けた請求項3記載のブロック連結構造。
【請求項5】
前記拘束手段として、傾斜面上に載置されたときに鉛直方向と平行をなし且つ前記傾斜面の傾斜方向と交差する先端接合面を前記先のブロックの先端側に設け、前記先端接合面と接触する基端接合面を前記後のブロックの基端側に設けた請求項3記載のブロック連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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