説明

ブロワー付マスク装置

【課題】装置の大型化やコストアップを抑止しつつ、着用者にブロワーからの送風状態の低下を認識させて、着用者の安全を確保できるブロワー付マスク装置を提供する。
【解決手段】ブロワー付マスク装置1Aは、着用者の顔の少なくとも一部を覆うマスクと、マスクの一部に設けられた、吸気口6を開閉する吸気弁8及び排気口4を開閉する排気弁7と、モータ11の駆動により吸気口6から外気をマスクの内側に送風させるブロワー10と、ブロワー10の送風を制御する回転制御装置とを備えたブロワー付マスク装置1Aにおいて、回転制御装置は、モータ11に電力を供給する電源の電圧を検出する電圧検出器を備え、回転制御装置は、電源の電圧が任意の値よりも高い時は、ブロワー10を任意の状態で送風させる送風制御としての第一の制御を行うと共に、電源の電圧が任意の値以下に低下した時は、第一の制御とは異なる送風制御としての第二の制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防塵・防毒などを目的として利用される全面形マスク、半面形マスク等に好適なブロワー付マスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のブロワー付マスク装置は、通気通路上において、ろ過材の前側又は後側にブロワーを取り付け、その送気力(吸引力)を利用して呼吸の補助としている。 ブロワー付マスク装置は、着用者の呼吸に関係なく送気を定常流で流すタイプ(一定流量型ブロワーという)と、着用者の呼吸に追随して送気するタイプ(呼吸追随型ブロワーという)とに分けられる。
【0003】
呼吸追随型ブロワーとしては、面体の前部に、排気時に開くと共に吸気時に閉じる排気弁と、排気時に閉じると共に吸気時に開く吸気弁とを設け、モータで駆動され、その通常作動時に吸気弁を通して外気を面体内に送り込むブロワーを設置し、排気弁又は吸気弁の近傍に、排気弁又は吸気弁の位置を感知して、排気時又は吸気時に信号を発するフォトインタラプタよりなるセンサを設置し、該センサからの信号により、吸気時にはモータへ通常作動するよう電力供給されると共に、排気時にはモータへの電力供給が停止或いは減少されるようにした呼吸装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ブロワー付マスク装置の長所は、まず、着用者の吸気が楽になること。次に、面体内圧が外気圧より陽圧になるため、マスクと顔面の隙間からの有害粉塵、有害ガスの侵入を抑えられることが挙げられる。特に、後者は重要であり、極少量でも人体に侵入すると健康に悪影響を及ぼすアスベスト除去作業や放射性粉塵内(原子力発電所内など)での作業にはブロワー付マスク装置が多用される。
【0005】
ブロワー付マスク装置の短所は、フィルタが新品時には十分な送気を行なえるが、ろ過材の粉塵目詰まりや電池電圧低下により送気量が低下することである。つまり、使用を続けると、いずれ送気量の低下が起こり、面体内圧を陽圧に維持できなくなる結果、マスクと顔面の隙間からの有害物の侵入を防ぐことができなくなってしまう。
【0006】
そのため、従来、ブロワーに供給される電力状態を検知し、電圧が任意の値以下になった場合、LED等の照明装置を点灯させたりブザー等を鳴動させる警報装置が設けられたブロワー付マスク装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、従来、マスクの面体内の圧力状態を検知すると共に、フィルタの目詰まり等により送風量が低下して圧力が任意の値以下になった場合、LED等の照明装置を点灯させたりブザー等を鳴動させる警報装置が設けられたブロワー付マスク装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−86644号公報
【特許文献2】特開2009−136521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1、及び特許文献2に記載の発明においては、電池電圧の低下やフィルタの目詰まり等に基づいて警報を発するために、LED等の照明装置やブザー等の音響装置を設ける必要がある。そのため、マスクとしての構成やブロワーとしての構成に加え、照明装置、音響装置、及びそれらを点灯、鳴動させるための制御装置等が必要になる。
【0009】
ここで、ブロワー付きマスクは非常に劣悪な環境下、例えば、高濃度の粉じんが飛散する室内での作業や、極少量でも人体に侵入すると健康に悪影響を及ぼすアスベスト除去作業や放射性粉塵内(原子力発電所内など)での作業等に用いられることが多い。そのため、マスクだけでなく、警報装置まで防塵、防水対策を施す必要があり、警報装置の防塵、防水対策を行えばそれだけ警報装置の構造が複雑化することは避けられない。そして、上記特許文献1及び特許文献2に記載の発明においては、警報装置が照明装置、音響装置、それらの制御装置等を備えた構成となるため、警報装置の構造の複雑化は顕著なものとなり、当該発明に係るブロワー付マスク装置の大型化やコストアップは避けられないという問題がある。
【0010】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、装置の大型化やコストアップを抑止しつつ、着用者にブロワーからの送風状態の低下を認識させて、着用者の安全を確保できるブロワー付マスク装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、着用者の顔の少なくとも一部を覆うマスクと、該マスクの一部に設けられた、吸気口を開閉する吸気弁及び排気口を開閉する排気弁と、モータの駆動により前記吸気口から外気をマスクの内側に送風させるブロワーと、前記ブロワーの送風を制御する制御装置とを備えたブロワー付マスク装置において、前記モータに電力を供給する電源の電圧を検出する電圧検出手段を備え、前記制御装置は、前記電源の電圧が任意の値よりも高い時は、前記ブロワーを任意の状態で送風させる送風制御としての第一の制御を行うと共に、前記電源の電圧が任意の値以下に低下した時は、前記第一の制御とは異なる送風制御としての第二の制御を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、着用者の顔の少なくとも一部を覆うマスクと、該マスクの一部に設けられた、吸気口を開閉する吸気弁及び排気口を開閉する排気弁と、モータの駆動により前記吸気口から外気をマスクの内側に送風させるブロワーと、前記ブロワーの送風を制御する制御装置とを備えたブロワー付マスク装置において、前記マスクの面体内圧を検出する手段を備え、前記制御装置は、前記面体内圧が任意の値よりも高い時は、前記ブロワーを任意の状態で送風させる送風制御としての第一の制御を行うと共に、前記面体内圧が任意の値以下に低下した時は、前記第一の制御とは異なる送風制御としての第二の制御を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記第一の制御は、着用者が吸気するタイミングに合わせて前記ブロワーを送風させる制御であることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記第一の制御は、任意の一定の風量で前記ブロワーを送風させる制御であることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記制御装置は、前記第二の制御において、前記ブロワーを一定のリズムで断続的に送風させることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記制御装置は、前記第二の制御において、前記第一の制御とは異なる風量で前記ブロワーを連続的に送風させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、モータに電力を供給する電源の電圧を検出する電圧検出手段を備え、制御装置は、電源の電圧が任意の値よりも高い時は、ブロワーを任意の状態で送風させる送風制御としての第一の制御を行うと共に、電源の電圧が任意の値以下に低下した時は、第一の制御とは異なる送風制御としての第二の制御を行うことにより、電圧低下を、マスク内側への送風状態の変化として、着用者に感知させることができる。しかも、電圧低下を感知させるための構成として、通常の送風を行うための構成以外の照明装置、音響装置、それらの制御装置等を有していないため、少ない部品点数で、簡素な構造として装置を形成構成できる。これにより、装置の大型化やコストアップを抑止しつつ、着用者にブロワーからの送風状態の低下を認識させて、着用者の安全を確保することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、マスクの面体内圧を検出する手段を備え、制御装置は、面体内圧が任意の値よりも高い時は、ブロワーを任意の状態で送風させる送風制御としての第一の制御を行うと共に、面体内圧が任意の値以下に低下した時は、前記第一の制御とは異なる送風制御としての第二の制御を行うことにより、面体内圧の低下を、マスク内側への送風状態の変化として、着用者に感知させることができる。しかも、面体内圧の低下を感知させるための構成として、通常の送風を行うための構成以外の照明装置、音響装置、それらの制御装置等を有していないため、少ない部品点数で、簡素な構造として装置を形成構成できる。これにより、装置の大型化やコストアップを抑止しつつ、着用者にブロワーからの送風状態の低下を認識させて、着用者の安全を確保することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、呼吸追随型ブロワーにおいて、装置の大型化やコストアップを抑止しつつ、着用者にブロワーからの送風状態の低下を認識させて、着用者の安全を確保することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、一定流量型ブロワーにおいて、装置の大型化やコストアップを抑止しつつ、着用者にブロワーからの送風状態の低下を認識させて、着用者の安全を確保することができる。
【0021】
請求項5、請求項6に記載の発明によれば、第二の制御の送風状態を、第一の制御とは異なる送風状態として着用者に感知させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施の形態1及び2に係るブロワー付マスク装置の断面図である。
【図2】同上実施の形態に係るブロワー付マスク装置における制御回路の一部を示す機能ブロック図である。
【図3】同上実施の形態に係るブロワー付マスク装置における動作状態のフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態3及び4に係るブロワー付マスク装置の断面図である。
【図5】同上実施の形態に係るブロワー付マスク装置における制御回路の一部を示す機能ブロック図である。
【図6】同上実施の形態に係るブロワー付マスク装置における動作状態のフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態5及び6に係るブロワー付マスク装置の断面図である。
【図8】同上実施の形態に係るブロワー付マスク装置における制御回路の一部を示す機能ブロック図である。
【図9】同上実施の形態に係るブロワー付マスク装置における動作状態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[発明の実施の形態1]
図1乃至図3に、この発明の実施の形態を示す。
【0024】
まず構成を説明すると、図1に示す、この実施の形態のブロワー付マスク装置1Aは、着用者の顔の少なくとも一部を覆うマスク2の前部に、外面を排気弁カバー3で被覆された排気口4と、同じく外面をろ過材カバー5で被覆された吸気口6とを備えている。また、排気口4には、着用者の呼吸に伴って排気時に開く方向に移動する一方、吸気時に閉じる方向に移動する排気弁7が設けられ、吸気口6には、排気時に閉じる一方吸気時に開く吸気弁8が設けられている。ろ過材カバー5の内部には、吸気弁8の外方であってろ過材カバー5の先端部にろ過材9(所謂、フィルタ)が配設され、ろ過材9と吸気口6との間にブロワー10が配設されている。ブロワー10は、駆動用のモータ11とその出力軸に連結された羽根車12とを備え、モータ11が作動している時にはろ過材9及び吸気弁8を通してマスク2の内側へ外気を送り込むようになっている。
【0025】
排気弁7の近傍外側には、排気弁7の移動位置を検知する位置検出センサ14が配設されている。図2に示す通り、位置検出センサ14は、レギュレータ22を介して電源21に接続され、電源21から電力の供給を受ける。位置検出センサ14は、反射型フォトインタラプタのような無接点方式で、図1に示す通り、排気弁7の位置(即ち、位置検出センサ14と排気弁7との距離のこと。本明細書において同じ)を検知する。また、位置検出センサ14は、排気弁7の位置に追従した出力信号を発する。
【0026】
図2は、この実施の形態1に係るブロワー付マスク装置1における制御回路の一部を示す機能ブロック図である。図2に示すように、ブロワー10を駆動するモータ11への電力供給を制御するブロワー制御回路18は、位置検出センサ14の出力(図2に示す、回路中の任意のポイントPで検出した電圧)の信号データを元に、ブロワー10が任意の送風量になるようにモータ11の回転をコントロールする。
【0027】
さらに、ブロワー制御回路18は、「電圧検出手段」としての電圧検出装置19からの信号によっても、任意にモータ11をコントロールできるようにする。具体的には、図2に示す通り、電圧検出装置19には任意の信号値であって「しきい値」として機能する第1基準値が記録されている。この第1基準値は、モータ11が通常状態(ブロワー10が、着用者が呼吸に支障を生じない送風量となる状態のこと。本明細書において同じ)で回転できる電圧の下限値として、任意の電圧値に設定されている。電圧検出装置19は、電源21の両端の電位差を検出する。そして、電圧検出装置19は、検出した電位差と第1基準値とを比較し、電位差が第1基準値より小さくなった時にブロワー制御回路18に任意の信号を送る。ブロワー制御回路18はこの任意の信号を受けるとモータ11の回転制御を変化させる。
【0028】
次に、この実施の形態1のブロワー付マスク装置1Aの作用について説明する。
【0029】
図3は、この実施の形態のブロワー付マスク装置1Aの動作手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す通り、着用者がブロワー付マスク装置1Aを装着して使用を開始する。ブロワー制御回路18は、電圧検出装置19の出力により、電源21の両端の電位差と第1基準値とを比較する(ステップS1)。電源21の両端の電位差が第1基準値以上の場合には(ステップS2の“Yes”)、ブロワー制御回路18は第一の制御を行う(ステップS3)。
【0030】
第一の制御においては、ブロワー制御回路18は検出対象である排気弁7の位置に追従して位置検出センサ14が出力する信号を基に着用者が吸気するタイミングに合わせてブロワー10を送風させる制御を行う。
【0031】
一方、電源21の両端の電位差が第1基準値よりも小さい場合には(ステップS2の“No”)、ブロワー制御回路18は第二の制御を行う(ステップS4)。具体的には、ブロワー制御回路18は、ブロワー10を一定のリズムで断続的に送風させる制御を行う。即ち、ブロワー制御回路18は、着用者の呼吸タイミングとは無関係に、所定の間隔でブロワー10を断続的に回転させる制御(例えばブロワーを2秒間回転させた後、2秒間停止させる制御)を行う。第二の制御においては、位置検出センサ14の出力した信号は、ブロワー10を送風させる制御に用いられない。
【0032】
以上、この実施の形態1においては、モータ11に電力を供給する電源21の電圧を検出する電圧検出装置19を備え、ブロワー制御回路18は、電源21の電圧が任意の値よりも高い時は、ブロワー10を任意の状態で送風させる送風制御としての第一の制御を行うと共に、電源21の電圧が任意の値以下に低下した時は、第一の制御とは異なる送風制御としての第二の制御を行うことにより、電圧低下を、マスク内側への送風状態の変化として、着用者に感知させることができる。しかも、電圧低下を感知させるための構成として、通常の送風を行うための構成以外の照明装置、音響装置、それらの制御装置等を有していないため、少ない部品点数で、簡素な構造として装置を形成構成できる。これにより、装置の大型化やコストアップを抑止しつつ、着用者に送風状態の低下を認識させて、着用者の安全を確保することができる。
【0033】
なお、上述の実施の形態1においては、位置検出センサ14は排気弁7の移動方向の前方に(排気弁座13から離隔して開く向き)配置しているが、位置検出センサ14の配置位置は排気弁7の移動方向の前方に限らず、例えば、排気弁7の側端面を感知するように、排気弁7の移動方向に対して側方に配置してもよい。また、位置検出センサ14は、フォトインタラプタだけでなく、非接触で排気弁7の位置を検知できる無接点センサであれば同様の効果が期待できる。
【0034】
[発明の実施の形態2]
この実施の形態2においては、ブロワー付マスク装置1Aの構成や、基本的な動作手順は実施の形態1の場合同じである。ただし、第二の制御におけるブロワー10の動作が実施の形態1と異なる。即ち、発明の実施の形態2では、ブロワー付マスク装置1Aの第二の制御(ステップS4)において、ブロワー制御回路18はブロワー10を第一の制御時とは異なる風量で連続的に送風するように制御する。それ以外は実施の形態1と同じである。
【0035】
[発明の実施の形態3]
図4ないし図6にこの発明の実施の形態3を示す。
【0036】
図4に示す通り、この実施の形態3のブロワー付マスク装置1Bは、実施の形態1及び2の位置検出センサ14に代えて、マスク2の一部に面体内圧検出センサ23が配設されている。この面体内圧検出センサ23は例えばダイアフラムであり、及びホールセンサを例に挙げると、マスク2に貫通して設けられている。このダイアフラムの一部には永久磁石が設けられている。この永久磁石の磁気が圧力検出装置20で検出される。
【0037】
図5に示す通り、この実施の形態のブロワー付マスク装置1Bは、実施の形態1及び2の電圧検出装置19に代えて、「面体内圧を検出する手段」としての圧力検出装置20を備えている。圧力検出装置20は例えばマスク2に設けられたホールセンサであり、圧力検出センサ23の磁気を受けてマスク2の面体内圧の圧力変化を直接的に検出する。
【0038】
ブロワー制御回路18は、圧力検出装置20からの信号によって任意にモータ11をコントロールできる。具体的には、図2に示す通り、圧力検出装置20には任意の信号値(主に電圧値)であって「しきい値」として機能する第2基準値が記録されている。この第2基準値は、着用者が呼吸に支障を生じない面体内圧(例えば陰圧よりも高い面体内圧)の下限値として、任意の圧力値に設定されている。圧力検出装置20は圧力検出センサ23から発せられる磁気を変換して得た信号を受けて、マスク2の面体内圧を検出する。そして、圧力検出装置20は、検出した面体内圧と第2基準値とを比較し、面体内圧が第2基準値より低くなった時にブロワー制御回路18に任意の信号を送る。ブロワー制御回路18はこの任意の信号を受けるとモータ11の回転制御を変化させる。その他の構成は実施の形態1及び2と同じである。
【0039】
図5は、この発明の実施の形態3の動作手順を示すフローチャートである。この実施の形態3においては、着用者がブロワー付マスク装置1Bを装着して使用を開始すると、圧力検出装置20は、圧力検出センサ23から発せられる磁気を変換して得た信号と第2基準値とを比較する(ステップS11)。マスク2の面体内圧が第2基準値以上である場合(ステップS12の“Yes”)、ブロワー制御回路18は第一の制御を行う(ステップS13)。
【0040】
一方、ろ過材9の目詰まり等が起こるとブロワー10の送風量が減少する。この状態で吸気すると、ブロワー10の送風量は着用者の吸気量に満たなくなるため、面体内圧は陰圧(外気圧よりもマスク2の面体内圧が低下した状態)になる。そして、マスク2の面体内圧が第2基準値より低くなった場合(ステップS12の“No”)、ブロワー制御回路18は第一の制御から第二の制御に制御状態を変化させる(ステップS14)。これにより、モータ11への電力供給状態も変化し、モータ11の回転も変化する。
【0041】
第二の制御において、ブロワー制御回路18は、着用者の呼吸タイミングとは無関係に、所定の間隔でブロワー10を断続的に回転させる制御を行う。
【0042】
以上、この実施の形態3においては、マスク2の面体内圧を検出する圧力検出装置20を備え、ブロワー制御回路18は、面体内圧が任意の値よりも高い時は、ブロワー10を任意の状態で送風させる送風制御としての第一の制御を行うと共に、面体内圧が任意の値以下に低下した時は、第一の制御とは異なる送風制御としての第二の制御を行うことにより、面体内圧低下を、マスク内側への送風状態の変化として、着用者に感知させることができる。しかも、面体内圧低下を感知させるための構成として、通常の送風を行うための構成以外の照明装置、音響装置、それらの制御装置等を有していないため、少ない部品点数で、簡素な構造として装置を形成構成できる。これにより、装置の大型化やコストアップを抑止しつつ、着用者にブロワーからの送風状態の低下を認識させて、着用者の安全を確保することができる。
【0043】
なお、この実施の形態3においては、圧力検出装置20は圧力検出センサ23からの信号に基づいて面体内圧を検出したが、面体内圧を検出できる構成であればこれ以外の構成であってもよい。例えば、実施の形態1及び2と同様に、位置検出センサ(図示せず)を設け、この位置検出センサ(図示せず)から出力された信号を元に推定算出した間接的に圧力を検出する構成であってもよい。
【0044】
[発明の実施の形態4]
この発明の実施の形態4は、ブロワー付マスク装置1Bの構成や、基本的な動作手順は実施の形態3の場合同じである。ただし、第二の制御(ステップS14)におけるブロワー10の動作が実施の形態3と異なる。即ち、発明の実施の形態4では、第二の制御(ステップS14)において、ブロワー制御回路18は、第一の制御時とは異なる風量で連続的にブロワー10を送風させるように制御させる。それ以外は実施の形態3と同じである。
【0045】
[発明の実施の形態5]
図7乃至図9にこの発明の実施の形態5を示す。
【0046】
図7及び図8に示す通り、この発明の実施の形態5のブロワー付マスク装置1Cは、実施の形態1及び2と同様の位置検出センサ14及び電圧検出装置19、実施の形態3及び4の圧力検出センサ23及び圧力検出装置20を併有する。即ち、電圧検出用の構成と面体内圧検出用の構成を併有する。ブロワー制御回路18は、電圧検出装置19及び圧力検出装置20のうち一方又は双方からの信号によって任意にモータ11をコントロールできる。それ以外の構成は実施の形態1乃至4と同じである。
【0047】
図9は、この発明の実施の形態第5の動作手順を示すフローチャートである。この実施の形態5において、ステップS1〜S3は実施の形態1と同様で、ステップS11〜S13は実施の形態3と同様である。ブロワー付マスク装置1Cのブロワー制御回路18は、電圧検出装置19の検出した電位差が第1基準値よりも小さい場合には(ステップS2の“No”)、ブロワー制御回路18は第一の制御から第二の制御に制御状態を変化させる(ステップS4)。また、電圧検出装置19の検出した電位差が第1基準値以上であって(ステップS2の“Yes”)、ブロワー制御回路18が第一の制御を行う(ステップS3)のちに、面体内圧が第2基準値より低いことが検出された場合(ステップS12の“No”)、ブロワー制御回路18は第一の制御から第二の制御に制御状態を変化させる(ステップS14)。これらにより、モータ11への電力供給状態も変化し、モータ11の回転も変化する。
【0048】
この実施の形態5において、ブロワー制御回路18は、ステップS4の第二の制御と、ステップS14の第二の制御とで、ブロワー10の送風状態が相違するように制御する。例えば、ステップS4の第二の制御ではブロワー10を2秒間回転させた後2秒間停止させる制御を行い、ステップS14の第二の制御ではブロワー10を1秒間回転させた後3秒間停止させる制御を行う。これにより、着用者は体感する送風状態で電圧低下なのか面体内圧低下なのかを認識できる。
【0049】
この実施の形態5において、ブロワー制御回路18は、ステップS4の第二の制御とステップS14の第二の制御とが重なった場合、ステップS4の第二の制御を優先させる。即ち、電圧が基準値1よりも低下し、面体内圧が基準値2よりも低下した場合、ブロワー制御回路18はステップS4の第二の制御の送風状態でブロワー10を送風させる。これにより、着用者に対し、継続使用による危険の高い電源21の電圧低下を迅速に感知させることができる。
【0050】
[発明の実施の形態6]
この発明の実施の形態6は、ブロワー付マスク装置1Cの構成や、基本的な動作手順は実施の形態5の場合と同じである。ただし、ステップS4、及びステップS14における第二の制御のブロワー10の動作が実施の形態5と異なる。即ち、発明の実施の形態6では、第二の制御(ステップS4,S14)において、ブロワー制御回路18は、第一の制御時とは異なる風量で連続的にブロワー10を送風させるように制御させる。それ以外は実施の形態5と同じである。
【0051】
なお、上記各実施の形態においては、第一の制御において、ブロワー制御回路18はブロワー10を呼吸追随型ブロワーとして送風させる制御を行うものとしたが、これに限らず、ブロワー10を一定流量型ブロワーとして送風させる制御を行うものとすることもできる。
【0052】
上記各実施の形態においては、マスク2の面体内圧は、直接面体内圧を検出する圧力検出センサ23及び圧力検出装置20を用いて検出したが、これに限らず、マスク2の面体内圧を検出できるものであればどのようなものであってもよい。例えば、位置検出センサ14が出力した信号を下に、排気弁7の位置(位置検出センサ14と排気弁7との距離)と圧力の相関関係を前もって調べておけば、面体内圧を推定算出する事は可能であるため、位置検出センサ14を利用して面体内圧を推定算出する圧力検知方式であってもよい。
【0053】
なお、排気弁7の位置の検出によってマスク2の面体内圧を検出する場合、フォトインタラプタで構成された位置検出センサ14に代えて、排気弁7の一部に永久磁石を設置し、位置検出センサ14を、磁気検出用のホール素子で形成されたホールセンサとして形成するものでもよい。また、排気弁7の位置の検出によって面体内圧を検出する場合、排気弁7の位置による面体内圧の検出に代えて、例えば、排気弁7の一部に永久磁石を設置し、位置検出センサ14を、磁気検出用のホール素子で形成されたホールセンサとして形成するものでもよい。
【0054】
上記各実施の形態においては、ブロワー付マスク装置1A,1Bを防塵マスクとして構成したが、これに限らず、例えばガスマスク、防煙マスクなど、さまざまなマスクに適用することができる。
【0055】
上記各実施の形態は本発明の例示であり、本発明が上記各実施の形態に限定されることを意味するものではないことは、いうまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1A,1B,1C・・・ブロワー付マスク装置
2・・・マスク
4・・・排気口
6・・・吸気口
7・・・排気弁
8・・・吸気弁
10・・・ブロワー
11・・・モータ
18・・・ブロワー制御回路(制御装置)
19・・・電圧検出装置(電圧検出手段)
20・・・圧力検出装置(面体内圧を検出する手段)
21・・・電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の顔の少なくとも一部を覆うマスクと、
該マスクの一部に設けられた、吸気口を開閉する吸気弁及び排気口を開閉する排気弁と、
モータの駆動により前記吸気口から外気をマスクの内側に送風させるブロワーと、
前記ブロワーの送風を制御する制御装置とを備えたブロワー付マスク装置において、
前記モータに電力を供給する電源の電圧を検出する電圧検出手段を備え、
前記制御装置は、前記電源の電圧が任意の値よりも高い時は、前記ブロワーを任意の状態で送風させる送風制御としての第一の制御を行うと共に、前記電源の電圧が任意の値以下に低下した時は、前記第一の制御とは異なる送風制御としての第二の制御を行うことを特徴とするブロワー付マスク装置。
【請求項2】
着用者の顔の少なくとも一部を覆うマスクと、
該マスクの一部に設けられた、吸気口を開閉する吸気弁及び排気口を開閉する排気弁と、
モータの駆動により前記吸気口から外気をマスクの内側に送風させるブロワーと、
前記ブロワーの送風を制御する制御装置とを備えたブロワー付マスク装置において、
前記マスクの面体内圧を検出する手段を備え、
前記制御装置は、前記面体内圧が任意の値よりも高い時は、前記ブロワーを任意の状態で送風させる送風制御としての第一の制御を行うと共に、前記面体内圧が任意の値以下に低下した時は、前記第一の制御とは異なる送風制御としての第二の制御を行うことを特徴とするブロワー付マスク装置。
【請求項3】
前記第一の制御は、着用者が吸気するタイミングに合わせて前記ブロワーを送風させる制御であることを特徴とする請求項1又は2に記載のブロワー付マスク装置。
【請求項4】
前記第一の制御は、任意の一定の風量で前記ブロワーを送風させる制御であることを特徴とする請求項1又は2に記載のブロワー付マスク装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第二の制御において、前記ブロワーを一定のリズムで断続的に送風させることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載のブロワー付マスク装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第二の制御において、前記第一の制御とは異なる風量で前記ブロワーを連続的に送風させることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載のブロワー付マスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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