説明

ブローフィルシール用成形金型

【課題】多種類の容器を製造するために対応する複数の金型を準備しなければならない経済的負担を軽減し、生産性を低下させないようなブローフィルシールシステムに適した金型を提案することを目的とする。
【解決手段】樹脂製容器をブロー成形し、容器開口部より液剤等を充填したのち、該開口部を密封して製品を製造するブローフィルシールシステムにおいて用いられる成形金型であって、金型内に容器外形の一部を形成する複数の入れ子を交換可能に有することを特徴とするブローフィルシール用成形金型。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器を装置内で成形し、液剤等を直ちに充填して密封するまでを一連の作業で行うブローフィルシールシステムにおいて用いられる成形金型に係り、特に液剤が充填される容器胴部の形状・体積などの調整を簡易に可能としたブローフィルシール用成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のようにブローフィルシールシステムは、(1)熱可塑性樹脂からなるパリソンと呼ばれる筒状の予備成形体を容器首部を除いて一組の金型で挟み、パリソン内にマンドレルユニットが下降して、空気などを圧入して膨らませ容器胴部を形成したのち、(2)同ユニットまたは別のマンドレルユニットから所定量の液剤等を容器内に充填し、(3)マンドレルユニットが元の位置に戻って、首部の金型が閉じて密封し、金型が開いた時には液剤等が無菌状態で密封された容器が得られる、というものである。非常に低い製造コストで高い無菌レベルの製品が得られるので、コンタクトレンズ用液剤や、ユニットドーズ、マルチドーズの点眼剤などの製造に適している。製造された容器は、使用時に附属のキャップを螺進させたり、容器首部をねじ切ることによって、破断開封し、内容液を所望量注出することができる。このような容器の製造には各種の提案がされており、具体的には以下の文献がある。
【0003】
例えば、開封容易な密閉容器の製造にあたり、容器本体をブロー成形する際に、容器蓋部と容器本体との境界部分が薄肉を形成するようにしておく方法(特許文献1)、容器本体を成形し充填した容器首部を所要の形状に正確に成形した後密封する成形装置(特許文献2)、ブロー成形時に開封取手を成形する開封取手付きボトルパックの成形方法(特許文献3)、開封部を成形する際に、ネック部を形成するパリソンの樹脂を、ネック部からその先端方向へ押圧して成形することにより、開封後のネック部開口縁の形状を均一に制御するというボトルパックの成形方法(特許文献4)がある。これらの文献には開封し易さや、開封後の状態を考慮した容器が成形できるというものであって、液剤が充填される容器胴部の形状・体積などを任意に調整可能にする技術ではない。
【0004】
また、ブローフィルシールシステムではないが、容器胴部の金型内周に、水平方向のスリットを形成し、このスリットに沿って成形される容器の入目量を表示する彫刻を入れるとともに、膨張するプリフォーム(上記のパリソンと同義)の外部の空気をスリットから排出することを特徴とした飽和ポリエステル容器の製造方法(特許文献5)がある。この提案には、金型内に嵌合された入れ子が示されているが、これは入目量の刻印とプリフォームの外側の空気を排出するためのスリットを形成するものであって、入れ子を相互に交換等することにより容器胴部の形状・体積を調整することを意図したものではない。
【0005】
このように、ブローフィルシールシステムにおいては主として使用する際の破断容易性、破断均一性を追求した提案が多いものの、容器胴部の大きさが異なる場合にどのような解決方法があるのかを考慮したものは知られていなかった。すなわち、大きさの異なる容器を成形しようとすれば、基本的にはそれぞれの大きさのキャビティを有する金型が必要であって、各大きさに応じて多数組の金型が用意されていたのである。そのような場合には、目的とする大きさの金型を準備するコストだけでなく、製造時に金型を交換しなければならないため、仕掛かり時間が長い等の問題があった。特に、容器が連接した金型においては、個々のマンドレルと金型との位置合わせには精密さが要求され、大変困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭47−17865号公報
【特許文献2】特開昭60−83822号公報
【特許文献3】特開昭61−273928号公報
【特許文献4】特開平10−151664号公報
【特許文献5】特開昭62−196119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、多種類の容器を製造するために対応する複数の金型を準備しなければならない経済的負担を軽減し、生産性を低下させないようなブローフィルシールシステムに適した金型を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するために鋭意検討を行った結果、本発明においては金型内に容器外形の一部を形成する複数の入れ子を交換可能に嵌装することにより、該入れ子の組み合わせによって多種類の容器に対応可能であることを見いだした。
【0009】
すなわち、本発明は、樹脂製容器をブロー成形し、容器開口部より液剤等を充填したのち、該開口部を密封して製品を製造するブローフィルシールシステムにおいて用いられる成形金型であって、金型内に容器外形の一部を形成する複数の入れ子を交換可能に有することを特徴とする。入れ子であれば、異なる容量・形状の製品を製造する場合には、入れ子を取り替えるだけですむので取り扱いが容易である。特に容器が連接した金型においては、個々のマンドレルと金型との位置合わせに精密さが要求され大変困難であったが、入れ子では、ベースプレートが成形機に固定されており、所定の位置に入れ子を固定するのみで容易である。また、複数個の入れ子の組み合わせによって異種製品を同時に成形できるというメリットもある。
【0010】
また、前記入れ子が、得られる樹脂製容器の幅方向に分割されており、2種以上の入れ子を積み重ねて組み合わせることにより、高さを調整することが可能であることが好ましい。このときの入れ子は、水平に分割されている方が組み合わせの自由度が高くなるのでより好ましい。
【0011】
その他、本発明では、前記入れ子が容器の高さ方向に分割され、2種以上の入れ子を並列させて組み合わせることにより、樹脂製容器の幅を調整することが可能であることが好ましい。このときの入れ子は、垂直に分割されている方が並び順などを考慮する必要がないのでより好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のブローフィルシール用成形金型によれば、入れ子の交換が極めて高い自由度をもって実施することができるので、例えば、一部の入れ子に損耗などがあっても容易に他の入れ子を代用し或いは交換することで、迅速に復旧することが可能である。また、販売戦略或いは市場ニーズに合わせて適宜容器形状を変更したり、多種類容器への要望に際し、数多くの高価な金型を用意することなく対応することが容易となる。従って、生産性の面でも、経済性においても優れたブローフィルシールシステムの確立ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は一実施例に係るブローフィルシール用成形金型の構造を示した断面図である。
【図2】図2は前記実施例の胴体部金型を開いた状態を示す図である。
【図3】図3は入れ子の分割数が左右の金型で異なる例を示す図である。
【図4】図4は一部の入れ子に模様を形成する為の凸部を設けた例を示す図である。
【図5】図5は入れ子の高さを変更した例を示す図である。
【図6】図6は入れ子を水平分割の連接した例を示す図である。
【図7】図7は入れ子を斜めに分割した例を示す図である。
【図8】図8は入れ子を垂直分割した例を示す図である。
【図9】図9は入れ子の配置を変更して容器容量を変更した例を示す図である。
【図10】図10は容器胴部がブロー成形される状態を示す断面図である。
【図11】図11は容器胴部に液剤が充填(フィル)される状態を示す断面図である。
【図12】図12は容器首部が溶融(シール)され、密封容器が成形される状態を示す断面図である。
【図13】図13は金型が開いて、製品が取り出される状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のブローフィルシール用成形金型について図面を参照しつつ説明する。
本発明例においては、容器の材料としてポリプロピレン(以下PPと略す)が使用されるが、他の樹脂として、例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネイト等を用いることができる。
【0015】
図1は、本発明の一実施例の配置状態(金型断面)を示しており、ブロー成形工程において、パリソン2は、容器の形状を決定する胴部金型1内の入れ子にて成形され、パリソンヘッドの下で切り離される。図2は、図1の胴体金型1を開いた状態の図面である。必要な形状及び個数の入れ子がベースプレート5の前面に後面から螺子で固定される。最も下側の入れ子の直ぐ下には、所定形状のブロック6が固定され、容器成型部のさらに下まで流出した余分なパリソンが容易に除去される構造となっている。この例では、胴部金型1は左右対称で、かつ同一の構成となっている。つまり、図右側の入れ子4aと図左側の入れ子4bとは各パーツが、胴部金型1の型締め状態における各合わせ面7を包含する仮想平面を対称面として面対称の関係にある。本発明では、面対称の関係にあることは必ずしも必須の要件ではない。例えば、右側の入れ子は半円筒状、左側の入れ子は四角柱状の側壁を呈するような形状であってもよく、右側の入れ子が2つ、左側の入れ子が四つに水平分割された各パーツから構成(図3)されていても良いのである。また、右側(または左側のいずれか一方もしくは双方)の入れ子の表面に容器胴部を形成した際に図・模様などを浮き上がらせる(または陥凹させる)ことができるような凹部8(または凸部)を設けても良い(図4)のである。
【0016】
その他各種の相違点を持って左右の入れ子を構成することができるが、胴部金型1を型締めしたときの左右入れ子の合わせ面の形状は同一であることが好ましい。両入れ子で合わせ面の形状にずれがあると、その部分が容器外形の表面に段差を生じさせ、それが激しい場合には把持する際の感触が悪く、また樹脂の偏肉となって、容器の強度が低下するからである。
【0017】
また、図1に示すように、合わせ面7を包含する仮想平面を対称面として面対称の関係にある方が、各入れ子を製造するにあたりコストを低減し、それぞれがそれぞれを補完する関係になるので、在庫数を削減する効果もある。
【0018】
図5には、水平分割された入れ子の配置を変更することにより高さが低い容器を成形することができる例を示している。この図に示すように同じ胴部金型1を用い、また使用する入れ子も一部を除いて図1と共通のものを組み合わせることができるので、対応する金型を個別に製造するよりはるかにコストを下げることができ、使用しない場合の金型を保管管理する手間などが省けるのである。この図では個別の容器について示した例であるが、これを図6のように複数個の分離可能に連接した容器に適用することも可能である。このような連接容器は、各容器内の液量が少量の場合などに好適である。複数個を纏めて包装し、購入後の使用期間を調整することができるからである。そして、容器がいくつ連接できるかは、胴部金型の大きさと、配置できるパリソン数などの諸条件を考慮して決定される。
【0019】
図7には、成形される容器の幅方向に対して水平ではない場合の例について示す。入れ子は水平分割だけでなくこのような分割方式により、入れ子同士の合わせ面9に生ずるバリを模様として利用することもできる。従って波状の合わせ面とするなどの変形例も可能である。
【0020】
図8には、入れ子が成形される容器の高さ方向に垂直分割された場合の例について示す。成形される容器は高さ方向に一定であるものの幅方向に種々変更可能であるため、容器の容量変更(例えば図9のような「お徳用サイズ」など)に都合が良い。
【0021】
頭部金型についても、胴部金型と同様に、入れ子にすることにより、多種類の形状に低コストで対応できる。相手先ブランドのマーク表示、特徴ある形状、ロット、開封後の液が真っ直ぐに噴出する、または、蓋がリクローズできる等の特殊な構造などにも容易に応じることができる。
【0022】
さらに、胴部と頭部の両方の金型を入れ子にすれば、生産可能な容器の種類は相乗的に増加することとなる。
【0023】
次に、上記図1例示の本発明の金型を用いて、ブローフィルシールシステムによって製品を製造するまでの工程について示す。図10には、胴部金型が型締めされて容器の底部21がシールされ、マンドレルユニット10が下降し、圧搾空気・窒素などにより容器の胴部22がブロー成形されるまでの状態を示している。図ではマンドレルユニットの先端部との間で容器首部が形成されているが、該先端部がより下方に挿入されても良い。また、この時の入れ子を前記図6で示すような容器連接タイプのものを用いることも可能であり、その際にはパリソン及び用いられるマンドレルユニットも連接数と同数または相当単位数のものが採用される。相当単位数とは、例えば、容器が24個連接され、パリソンが容器6個分を1単位でカバーする場合には、4単位必要となることである。
【0024】
そして、容器胴部が成形されたのちに、同マンドレルユニットもしくは別のマンドレルユニットが降下して、コンタクトレンズ用液剤、点眼剤などの液剤30を容器胴部に充填する(図11に示す)。
【0025】
液剤の充填が完了したのちは、マンドレルユニットが元の位置に戻って、首部金型1’が閉じ容器頭部の成形が行われる(図12に示す)。
【0026】
最後に金型が開いて、液剤を充填した容器3が密閉された状態で分離されてくる(図13に示す)。この一連のサイクルを繰り返すことによって、無菌的に内容液の充填された密封容器の状態で、連続的に製品が製造されるのである。
【0027】
入れ子の固定方法としては、一般的には前記したように螺子によってベースプレート(本発明では、ベースプレート、入れ子及びブロックを合わせて一般用語である「金型」と定義する)に固定される。その他の固定方法には、例えばベースプレートに入れ子が嵌挿できるような凹みを穿設した所謂カセット式や、前記凹みにテーパ面を形成して型締め力によって入れ子を締め付けて固定する方法、入れ子の側面から押圧しつつベースプレートに設けられた枠との間で挟着する方法、ベースプレートと入れ子とを磁力によって固定する方法などがある。
【0028】
本発明の入れ子に用いられる主材質としては、熱伝度率がよく、さびが生じにくい材質がよく、ステンレスや銅合金などが使用される。金型の保全の面ではさびにくいステンレスが好適であり、成形のサイクルタイムを短くして効率を上げる場合は、熱伝導率がよい(短時間の加熱と冷却が可能)銅合金が用いられる。また、必要に応じてステンレス型の一部分に銅合金を貼り付けたものも使用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のブローフィルシール用成形金型は、多くの金型を準備することなく形状・容量の異なる多種類の容器が成形できるので、医薬用品、飲料用品、あるいは洗浄剤などの簡易開封型容器の製造に好適である。また無菌性、生産性、経済性に優れたブローフィルシールシステムを構築することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 金型
2 パリソン
3 容器
4a、4b 入れ子
5 ベースプレート
6 ブロック
7 合わせ面
10 マンドレルユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製容器をブロー成形し、容器開口部より液剤等を充填したのち、該開口部を密封して製品を製造するブローフィルシールシステムにおいて用いられる成形金型であって、
金型内に容器外形の一部を形成する複数の入れ子を交換可能に有することを特徴とするブローフィルシール用成形金型。
【請求項2】
前記入れ子が容器の幅方向に分割され、2種以上の入れ子を組み合わせることにより、樹脂製容器の高さを調整することが可能であることを特徴とする請求項1記載の金型。
【請求項3】
前記入れ子が容器の高さ方向に分割され、2種以上の入れ子を組み合わせることにより、樹脂製容器の幅を調整することが可能であることを特徴とする請求項1記載の金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−37038(P2011−37038A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183909(P2009−183909)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000222473)株式会社メニコンネクト (20)
【Fターム(参考)】