ブースターアンテナ
【課題】小型のケースに設けられ、送受信アンテナが小径のものであっても、異なる方向で通信距離と通信可能範囲の拡大が可能なブースターアンテナを提供する。
【解決手段】ケース20内部に非接触RFIDカードとの情報の送受信アンテナ12と、送受信アンテナ12を介して送受信される情報を処理する制御用IC14等と、送受信アンテナ12及び制御用IC14等を収容したケース20とを有する。ケース20には、送受信アンテナ12よりも大径の共振アンテナコイル23が設けられている。送受信アンテナ12と共振アンテナコイル23との間には、磁性部材22が配置されている。
【解決手段】ケース20内部に非接触RFIDカードとの情報の送受信アンテナ12と、送受信アンテナ12を介して送受信される情報を処理する制御用IC14等と、送受信アンテナ12及び制御用IC14等を収容したケース20とを有する。ケース20には、送受信アンテナ12よりも大径の共振アンテナコイル23が設けられている。送受信アンテナ12と共振アンテナコイル23との間には、磁性部材22が配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、パソコン等の外部機器に着脱することにより、RFIDカードに対して非接触で情報の読み書きを行うことができるRFIDリーダライタに設けられ、共振アンテナを利用することにより通信距離を犠牲にすることなく小型化を可能としたブースターアンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報を電子的に記憶することができるICチップと、このICチップと外部との間で情報をやり取りするインタフェースを備えたカードやタグを利用したシステムが、その多様な可能性から注目を集めている。かかるシステムは、一般的には、RFID(Radio Frequency Identifcation)システムと呼ばれ、小型の記録媒体(カードやタグ)とこれに読み書きを行うリーダライタとの組み合わせによって、様々な場面での固体認証やデータの送受信に利用することができる。
【0003】
小型の記録媒体については、RFIDカード、ICカード、ワイヤレスカード、RFIDタグ、ICタグ等、種々の称呼がある。本発明では、RFIDカードと呼ぶが、特定の種類のものに限定する意図ではなく、上記のようなカードやタグ等を全て含む広い概念である。このようなRFIDカードは、従来のカードに用いられていた磁気記録方式のものに比べて、ICチップのメモリに大量の情報を記憶しておくことができ、偽造の防止も可能となるため、クレジットカード、電子マネー、電子乗車券、テレフォンカード、IDカード、貨物管理用タグ等として、広く利用されている。
【0004】
また、リーダライタとの間で情報を送受信するための方式としては、RFIDカードの表面に設けられた電極接点とリーダライタに設けられた接触端子とを接触させる接触型、RFIDカードとリーダライタに設けられたアンテナ(コイル)を介して無線により行う非接触型がある。特に、非接触型のRFIDカードは、接触による磨耗がないこと、リーダライタ側にRFIDカードを移動させる機構が必要ないこと、送受信の際の方向性の自由度が高いことなどから、高い耐久性と利便性を有するものとして、普及が期待されている。
【0005】
更に、このような読み書きを行うリーダライタとしては、商店のレジや駅の改札等に設置された固定式のものから、手に持って使用できる小型のハンディタイプのもの(特許文献1参照)など、様々なものが利用されている。
【0006】
ところで、上記のようなRFIDシステムを導入する際には、既存の管理システムのアプリケーション、データベース、ハードウェア等を有効に活用できるようにすることが望ましい。また、RFIDカードに対する読み書きを行うリーダライタは、今後、港湾、空港、工場、商店等の様々な拠点等において、自由に移動して使用できるように、安価で小型のものが好ましい。
【0007】
しかしながら、従来のRFIDカード用のリーダライタは、専用の装置として構成されていたために、装置を新たに導入する場合のコストが高くなる。また、リーダライタを小型化しても、用途に汎用性を持たせて通信距離を確保するためには、アンテナのサイズを大きくする必要がある(特許文献1参照)。ノートパソコン等に接続して利用する形態も考えられるが、ノートパソコンにリーダライタと大型のアンテナとを接続した場合には、持ち運びがしにくく、移動しながら利用することは、必ずしも容易ではない。
【0008】
このような観点から、本出願人は、特許文献2に示すように、外部機器との接続用のコネクタと、非接触RFIDカードとの情報の送受信用のアンテナと、前記アンテナを介して送受信される情報を処理する制御部とを有するRFIDリーダライタにおいて、コネクタをリーダライタ本体の一方の端部側に配設し、アンテナをコネクタと反対側の端部の近傍に配設したものを提案した。
【0009】
以上のような特許文献2の発明では、アンテナがコネクタと反対端にあるため、外部機器にコネクタを接続した際に、外部機器とアンテナとの間の距離を長く確保することができ、RFIDカードをアンテナに近づける際に、外部機器が邪魔にならず、十分な受信感度を得ることができる。
【特許文献1】特開2004−180039号公報
【特許文献2】特開2006−85288号公報
【特許文献3】特開2005−323019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献2の発明は、コネクタを一体としてRFIDリーダライタの小型化を可能とするものではある。しかし、その送受信アンテナの寸法は、RFIDリーダライタの寸法、特にRFIDリーダライタをスティック状とした場合にはその幅寸法に制限されることから、大径のアンテナを用意することができず、その通信距離は短い。
【0011】
特に、特許文献2のRFIDリーダライタは、コネクタとしてUSB端子を設けることで、パソコンのUSB端子に直接挿入して使用されることが多く、その場合、前記のような通信距離が短いという理由から、パソコンをテーブルなどに置いた状態で、RFIDカードをRFIDリーダライタにほとんど接触するまで近づけて、データの授受を行う必要がある。
【0012】
これに対処するため、特許文献3に示すように、RFIDカード側に近接してブースターアンテナを設けることも提案されている。しかし、商品に付されたRFIDカード側にブースターアンテナを設けることは、商品自体が大きなものや商品の収納庫にブースターアンテナを設けることができる場合はいざ知らず、商品のタグに組み込まれるような小型のRFIDカードについては、適用不可能であった。
【0013】
さらに、ブースターアンテナとしての共振アンテナコイルをRFIDリーダライタ側に内蔵することも可能である。例えば、図10に示すように、送受信アンテナ12の上部におけるケース20の内面に、共振アンテナコイル23を貼り付けたり、図11に示すように、ケース20に共振アンテナコイル23を埋め込むことが考えられる。かかる場合には、共振アンテナコイル23の径を可能な限り大きくすることにより、通信距離の延長を図ることが可能となる。
【0014】
しかし、図10及び図11に示すように、RFIDリーダライタの内部には、基板10の回路パターン、基板10上に配置されている金属を使用している部品(制御用IC14のリード、発振子13、コネクタ11など)が存在する。かかる金属部品が共振アンテナコイル23の下部に存在すると、金属部品の影響で通信距離が十分に延長できない。
【0015】
また、パソコンのUSB端子の方向は、機種によって縦であったり、横であったりする。このため、RFIDリーダライタのコネクタを、パソコンのUSB端子に直接挿入した場合、RFIDリーダライタのケースがどのような向きになるかは、必ずしも一定の方向に定まらない。従って、ケースの上面に限らず、側面においても長い通信距離が確保できることが望ましい。
【0016】
しかし、例えば、図12に示すように、RFIDカード40を共振アンテナコイル23に対して垂直に置いた場合、RFIDカード40のアンテナコイル41に入る方向の磁界と、出る方向の磁界が相殺され、コイルに発生する誘起電圧が減少する。このため、RFIDカードにはICが動作する為の十分な電力が供給されず、かかる方向での通信が困難になる。
【0017】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであって、その目的は、小型のケースに設けられ、送受信アンテナが小径のものであっても、異なる方向での通信距離と通信可能範囲の拡大が可能なブースターアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するため、本発明は、外部と情報を送受信するための送受信アンテナと、前記送受信アンテナを介して送受信される情報を処理する制御部と、前記送受信アンテナ及び前記制御部を収容したケースとを有し、前記ケースに、前記送受信アンテナよりも大径の共振アンテナが設けられ、前記送受信アンテナと前記共振アンテナとの間には、磁性部材が配置されていることを特徴とする。
【0019】
以上のような発明では、ケースに共振アンテナを設けて小型化を図った場合であっても、送受信アンテナと共振アンテナとの間に磁性部材を配置することにより、制御部等に用いられている金属部品の影響を低減することができ、通信距離の延長が可能となる。また、磁性部材により、共振アンテナから発生した磁界が磁性部材の中を通り、共振アンテナと平行方向に指向性を持たせることができるため、通信方向が増えて、通信可能範囲が拡大する。
【0020】
また、他の態様では、前記共振アンテナは、前記磁性部材上に配置され、前記ケース内面に貼り付けられたループコイルであることを特徴とする。
以上のような態様では、共振アンテナ及び磁性部材を薄く形成することができるので、小型化しやすい。
【0021】
また、他の態様では、前記共振アンテナは、前記ケースに埋設されていることを特徴とする。
以上のような態様では、ケース内に共振アンテナのためのスペースが不要となるので、さらに小型化できる。
【0022】
また、他の態様では、前記磁性部材は、アモルファス合金、パーマロイ、珪素鋼、センダスト合金及び軟磁性フェライトのうち、少なくとも一種の軟磁性材料を含むことを特徴とする。
以上のような態様では、磁性部材として、最適なものを選択することにより、金属部品の影響を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のような本発明によれば、小型のケースに設けられ、送受信アンテナが小径のものであっても、異なる方向での通信距離と通信可能範囲の拡大が可能なブースターアンテナを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を、図1及び図2を参照して具体的に説明する。すなわち、図1に示すように、本実施形態のブースターアンテナは、RFIDリーダライタに適用されるものである。このRFIDリーダライタは、基板10にリーダライタに必要な部品を配設し、ケース20に収容することによって構成されている。基板10は、略直方体形状のプリント配線板であり、長手方向の一端にコネクタ11が設けられている。
【0025】
このコネクタ11は、例えば、パーソナルコンピュータ等のコネクタに挿入することにより、プラグ&プレイ等を実現できるUSB(Universal Serial Bus)のインタフェースである。但し、本発明は、現在又は将来において利用可能なあらゆるインタフェースを適用できる。
【0026】
なお、一般的には、雄側と雌側を合わせて「コネクタ」と呼び、雄側を「プラグ」と呼ぶが、請求項及び以下の説明では、便宜的に「プラグ」についても「コネクタ」と呼ぶ。また、コネクタ11は、ケース20の一端から露出しており、ケース20に着脱自在なキャップ(図示せず)によって保護される構成となっている。
【0027】
基板10の上面(パソコンとの接続時に上側となる面)には、送受信アンテナ12が、コイル状のパターンにより形成されている。この送受信アンテナ12は、基板10のコネクタ11とは反対側の端部の近傍に配設されている。
【0028】
また、基板10には、発振子13、制御用IC14等を含む制御回路及び電波インタフェースが構成されている。発振子13は、搬送波となる高周波を発生させ、増幅器による増幅後、送受信アンテナ12に供給するための水晶発振子であり、これらは基板10の上面側におけるコネクタ11と送受信アンテナ12との間に配設されている。
【0029】
制御用IC14は、モールド封止されたICチップであり、USB接続及びリーダライタに必要な処理を行うCPU、メモリ等を構成している。この制御用IC14は、基板10の下面側におけるコネクタ11と送受信アンテナ12との間に配設されている。
【0030】
そして、ケース20の内面には、RFIDリーダライタの回路とは電気的に独立した回路である共振アンテナ21が設けられている。本実施形態では、この共振アンテナ21は、基板10上の送受信アンテナ12に対向した内面に配設されている。これにより、共振アンテナ21は、RFIDカード40を近づけた場合に、送受信アンテナ12とRFIDカード40との間に来る。
【0031】
共振アンテナ21は、図2に示すように、磁性部材22上にループ状に巻回された共振アンテナコイル23と、この共振アンテナコイル23に接続されたキャパシタ24とから構成され、磁性部材22をケース20の内面に貼り付けることにより、ケース20に固定されている。
【0032】
これにより、磁性部材22は、共振アンテナコイル23と送受信アンテナ12との間に配置される。また、シート状の磁性部材22に共振アンテナコイル23を配設してケース20内に貼り付けることにより、所要スペースを極力小さくして、小型化を実現できる。なお、共振アンテナコイル23とキャパシタ24とは、RFIDリーダライタの搬送周波数で共振するように、そのコイル長及び静電容量が決定されている。
【0033】
[実施形態の作用効果]
以上のような本実施形態の作用効果を、実際に作製した複数の実施例と比較例に基づいて説明する。
【0034】
[金属部品の影響の改善…実施例1〜3]
まず、比較例1〜5と、本実施形態を適用した実施例1〜3について、通信距離の測定を行った結果のデータを、表1及び図3のグラフに示す。表1は、共振アンテナコイル23の作成条件と通信距離、図3は面積比と通信距離の関係を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1において、比較例1〜5(項目A〜E)は、磁性部材22が無く、面積が異なる5種類の共振アンテナコイル23を用いたものである。実施例1〜3(項目F〜H)は、共振アンテナコイル23の面積と、磁性部材22の大きさを変えたものである。図3において、面積比は、以下のように求めた。
面積比=(共振アンテナコイルの面積)/(送受信アンテナコイル面積)
【0037】
その他の条件は、次の通りである。
(共振アンテナコイル)
・共振周波数…13.56MHz
・送受信アンテナコイルとの結合係数…0.086
(送受信アンテナコイル)
・インダクタンスL…0.72μH
・巻き数…7T(7巻き)
・アンテナ半径…3.5mmの円形
(磁性部材)
・軟磁性フェライトゴムシート・・・厚み500μm
【0038】
この表1及び図3から明らかな通り、磁性部材22の有無以外は条件が同じ比較例3と実施例1、比較例4と実施例2、比較例5と実施例3をそれぞれ比較すると、いずれも実施例の方が通信距離が伸びている。したがって、共振アンテナ21を設けることによる通信距離の延長の効果は、磁性部材22を介在させることによって、より一層高まることがわかる。
【0039】
また、比較例1〜5から明らかな通り、共振アンテナコイル23の面積を大きくすると、通信距離は延長できるが、面積比10以上で、飽和状態となる(比較例4,5参照)。これは、共振アンテナコイル23の直下に、基板10の回路パターン、基板10に配置されている金属を使用している部品(制御用IC14のリード、発振子13、コネクタ11など)が存在し、これらの金属の影響によって、通信距離が十分に延長できていないと考えられる。
【0040】
一方、磁性部材22の有無以外は比較例4,5と条件が同じ実施例2,3では、通信距離が大きく伸びている。これは、磁性部材22が介在することによって、金属の影響を低減できているためと考えられる。
【0041】
[アンテナコイルの指向性の改善…実施例3]
上記の比較例5と実施例3について、異なる位置で通信距離の測定を行った結果のデータを、表2及び図4のグラフに示す。ここで、異なる位置とは、以下の位置A及び位置Bであり、図5〜7に図示する。
・位置A(図5及び図6参照)…RFIDカードと共振アンテナコイルが同軸上に位置(ケース上面20aからの通信)
・位置B(図5及び図7参照)…RFIDカードと共振アンテナコイルが垂直に位置(ケース側面20bからの通信)
【0042】
【表2】
【0043】
表2及び図4から明らかな通り、磁性部材22が存在しない比較例5では、位置Bでの通信距離が著しく低下している。しかし、実施例3では、磁性部材22が介在することによって、位置Bでの通信距離は、比較例5と比べて著しく伸びており、位置Aとの差も小さくなっている。
【0044】
このような効果が得られるのは、以下のような原理によると考えられる。すなわち、実施例3では、図8に示すように、共振アンテナコイル23下に、磁性部材22を配置すると、共振アンテナコイル23から発生した磁界が、磁性部材22の中を通ることで、共振アンテナコイル23と平行方向(コイルの面内方向)に指向性を持たせることができる。
【0045】
このため、RFIDカード40を共振アンテナ21に対して垂直方向に置いたときでも、RFIDカード40のアンテナコイル41を貫く磁界を増やすことができて、共振アンテナコイル23とアンテナコイル41の結合係数を大きくすることが可能となり、通信距離も延長できる。
【0046】
[他の実施形態]
本発明は、前記の実施の形態に限定されるものではなく、次のような他の実施形態も包含するものである。
【0047】
(a) 共振アンテナ21の共振点波、共振周波数をf、インダクタンスをL、キャパシタンスをCとすると、
【数1】
となる。この場合、インダクタンスLとキャパシタンスCの値の調整で、共振周波数を変更できるが、搬送周波数に対して多少高い周波数にした方が値のばらつきに対して余裕がでる。
【0048】
なお、各実施形態における具体的な数値は例示であり、本発明は上記の数値には限定されない。また、搬送周波数の具体例としては、13.56MHzが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0049】
(b) 共振アンテナ21の効果を高くするためには、基板上に形成されている送受信アンテナ12の共振回路のインピーダンスをRF部出力インピーダンスにマッチングさせるため調整を行うが、このときに容量性となるようにLCRメータ等で調整することにより、共振周波数のピークを搬送周波数より下になるようにする。
【0050】
(c) 基板上面から見たときに、基板上の送受信アンテナ12が共振アンテナコイル23のループ内に収まるようにしないと、本発明の効果がない。しかし、その点に配慮すれば、送受信アンテナ12と共振アンテナ21との位置関係は図示のものに限定されない。例えば、両アンテナコイルは必ずしも互いに平行である必要はなく、軸が一致している必要もない。また、両アンテナコイルの形状も円形、楕円形、方形、その他の形状であってもよい。
【0051】
(d) 共振アンテナ21側の回路は、印刷技術を利用して粘着シート上に形成したり、フレキシブル基板上に印刷などで形成することも可能であり、薄くしかも安価に製造することができる。
【0052】
(e) 図9に示すように、共振アンテナコイル23をケース20を構成する樹脂内に埋設することも可能である。かかる構成とすれば、ケース20内部における共振アンテナコイル23の厚みのスペースを節約することができるので、さらなる小型化が可能となる。
【0053】
(f) 基板上の送受信アンテナ12と共振アンテナ21との距離は、基板上のアンテナの半径と同じ距離が最も通信距離が大きくなるが、この距離以内であれば、共振アンテナ21を使用しない場合に比べ効果が確認できる。ただし、半径の距離より離れて共振アンテナ21を使用した場合には、効果は必ずしも十分とはいえない。
【0054】
(g) 共振アンテナ21をケース20に設ける位置は、前記のような送受信アンテナ12との位置関係に配慮すれば、ケース20の上面側、下面側のいずれでも良い。また、共振アンテナ21の面積は、ケース20に収まる限り、最大になるようにした方がより効果が大きくなる。
【0055】
(h) 磁性部材22の材料は、アモルファス合金、パーマロイ、珪素鋼、センダスト合金、軟磁性フェライト等の軟磁性材料を用いることが望ましいが、これに限定されない。磁性材料を一種とするか複数種とするかも自由であり、非磁性材料を含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示す断面図である。
【図2】図1の実施形態における共振アンテナを示す平面図である。
【図3】図1の実施形態における共振アンテナコイル面積と通信距離の関係を示す説明図である。
【図4】図1の実施形態における実施例3と比較例5の通信距離の比較を示す説明図である。
【図5】図1の実施形態における異なる位置A,BでのRFIDカードとの通信を示す説明図である。
【図6】図5の位置Aの状態を示す斜視図である。
【図7】図5の位置Bの状態を示す斜視図である。
【図8】図1の実施形態の位置Bでの磁界を示す説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態を示す断面図である。
【図10】従来の共振アンテナをケース内に設けたRFIDリーダライタを示す断面図である。
【図11】従来の共振アンテナをケースに埋設したRFIDリーダライタを示す断面図である。
【図12】従来のRFIDリーダライタとRFIDカードとの通信における磁界を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
10…基板
11…コネクタ
12…送受信アンテナ
13…発振子
20…ケース
21…共振アンテナ
22…磁性部材
23…共振アンテナコイル
24…キャパシタ
40…カード
41…アンテナコイル
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、パソコン等の外部機器に着脱することにより、RFIDカードに対して非接触で情報の読み書きを行うことができるRFIDリーダライタに設けられ、共振アンテナを利用することにより通信距離を犠牲にすることなく小型化を可能としたブースターアンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報を電子的に記憶することができるICチップと、このICチップと外部との間で情報をやり取りするインタフェースを備えたカードやタグを利用したシステムが、その多様な可能性から注目を集めている。かかるシステムは、一般的には、RFID(Radio Frequency Identifcation)システムと呼ばれ、小型の記録媒体(カードやタグ)とこれに読み書きを行うリーダライタとの組み合わせによって、様々な場面での固体認証やデータの送受信に利用することができる。
【0003】
小型の記録媒体については、RFIDカード、ICカード、ワイヤレスカード、RFIDタグ、ICタグ等、種々の称呼がある。本発明では、RFIDカードと呼ぶが、特定の種類のものに限定する意図ではなく、上記のようなカードやタグ等を全て含む広い概念である。このようなRFIDカードは、従来のカードに用いられていた磁気記録方式のものに比べて、ICチップのメモリに大量の情報を記憶しておくことができ、偽造の防止も可能となるため、クレジットカード、電子マネー、電子乗車券、テレフォンカード、IDカード、貨物管理用タグ等として、広く利用されている。
【0004】
また、リーダライタとの間で情報を送受信するための方式としては、RFIDカードの表面に設けられた電極接点とリーダライタに設けられた接触端子とを接触させる接触型、RFIDカードとリーダライタに設けられたアンテナ(コイル)を介して無線により行う非接触型がある。特に、非接触型のRFIDカードは、接触による磨耗がないこと、リーダライタ側にRFIDカードを移動させる機構が必要ないこと、送受信の際の方向性の自由度が高いことなどから、高い耐久性と利便性を有するものとして、普及が期待されている。
【0005】
更に、このような読み書きを行うリーダライタとしては、商店のレジや駅の改札等に設置された固定式のものから、手に持って使用できる小型のハンディタイプのもの(特許文献1参照)など、様々なものが利用されている。
【0006】
ところで、上記のようなRFIDシステムを導入する際には、既存の管理システムのアプリケーション、データベース、ハードウェア等を有効に活用できるようにすることが望ましい。また、RFIDカードに対する読み書きを行うリーダライタは、今後、港湾、空港、工場、商店等の様々な拠点等において、自由に移動して使用できるように、安価で小型のものが好ましい。
【0007】
しかしながら、従来のRFIDカード用のリーダライタは、専用の装置として構成されていたために、装置を新たに導入する場合のコストが高くなる。また、リーダライタを小型化しても、用途に汎用性を持たせて通信距離を確保するためには、アンテナのサイズを大きくする必要がある(特許文献1参照)。ノートパソコン等に接続して利用する形態も考えられるが、ノートパソコンにリーダライタと大型のアンテナとを接続した場合には、持ち運びがしにくく、移動しながら利用することは、必ずしも容易ではない。
【0008】
このような観点から、本出願人は、特許文献2に示すように、外部機器との接続用のコネクタと、非接触RFIDカードとの情報の送受信用のアンテナと、前記アンテナを介して送受信される情報を処理する制御部とを有するRFIDリーダライタにおいて、コネクタをリーダライタ本体の一方の端部側に配設し、アンテナをコネクタと反対側の端部の近傍に配設したものを提案した。
【0009】
以上のような特許文献2の発明では、アンテナがコネクタと反対端にあるため、外部機器にコネクタを接続した際に、外部機器とアンテナとの間の距離を長く確保することができ、RFIDカードをアンテナに近づける際に、外部機器が邪魔にならず、十分な受信感度を得ることができる。
【特許文献1】特開2004−180039号公報
【特許文献2】特開2006−85288号公報
【特許文献3】特開2005−323019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献2の発明は、コネクタを一体としてRFIDリーダライタの小型化を可能とするものではある。しかし、その送受信アンテナの寸法は、RFIDリーダライタの寸法、特にRFIDリーダライタをスティック状とした場合にはその幅寸法に制限されることから、大径のアンテナを用意することができず、その通信距離は短い。
【0011】
特に、特許文献2のRFIDリーダライタは、コネクタとしてUSB端子を設けることで、パソコンのUSB端子に直接挿入して使用されることが多く、その場合、前記のような通信距離が短いという理由から、パソコンをテーブルなどに置いた状態で、RFIDカードをRFIDリーダライタにほとんど接触するまで近づけて、データの授受を行う必要がある。
【0012】
これに対処するため、特許文献3に示すように、RFIDカード側に近接してブースターアンテナを設けることも提案されている。しかし、商品に付されたRFIDカード側にブースターアンテナを設けることは、商品自体が大きなものや商品の収納庫にブースターアンテナを設けることができる場合はいざ知らず、商品のタグに組み込まれるような小型のRFIDカードについては、適用不可能であった。
【0013】
さらに、ブースターアンテナとしての共振アンテナコイルをRFIDリーダライタ側に内蔵することも可能である。例えば、図10に示すように、送受信アンテナ12の上部におけるケース20の内面に、共振アンテナコイル23を貼り付けたり、図11に示すように、ケース20に共振アンテナコイル23を埋め込むことが考えられる。かかる場合には、共振アンテナコイル23の径を可能な限り大きくすることにより、通信距離の延長を図ることが可能となる。
【0014】
しかし、図10及び図11に示すように、RFIDリーダライタの内部には、基板10の回路パターン、基板10上に配置されている金属を使用している部品(制御用IC14のリード、発振子13、コネクタ11など)が存在する。かかる金属部品が共振アンテナコイル23の下部に存在すると、金属部品の影響で通信距離が十分に延長できない。
【0015】
また、パソコンのUSB端子の方向は、機種によって縦であったり、横であったりする。このため、RFIDリーダライタのコネクタを、パソコンのUSB端子に直接挿入した場合、RFIDリーダライタのケースがどのような向きになるかは、必ずしも一定の方向に定まらない。従って、ケースの上面に限らず、側面においても長い通信距離が確保できることが望ましい。
【0016】
しかし、例えば、図12に示すように、RFIDカード40を共振アンテナコイル23に対して垂直に置いた場合、RFIDカード40のアンテナコイル41に入る方向の磁界と、出る方向の磁界が相殺され、コイルに発生する誘起電圧が減少する。このため、RFIDカードにはICが動作する為の十分な電力が供給されず、かかる方向での通信が困難になる。
【0017】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであって、その目的は、小型のケースに設けられ、送受信アンテナが小径のものであっても、異なる方向での通信距離と通信可能範囲の拡大が可能なブースターアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するため、本発明は、外部と情報を送受信するための送受信アンテナと、前記送受信アンテナを介して送受信される情報を処理する制御部と、前記送受信アンテナ及び前記制御部を収容したケースとを有し、前記ケースに、前記送受信アンテナよりも大径の共振アンテナが設けられ、前記送受信アンテナと前記共振アンテナとの間には、磁性部材が配置されていることを特徴とする。
【0019】
以上のような発明では、ケースに共振アンテナを設けて小型化を図った場合であっても、送受信アンテナと共振アンテナとの間に磁性部材を配置することにより、制御部等に用いられている金属部品の影響を低減することができ、通信距離の延長が可能となる。また、磁性部材により、共振アンテナから発生した磁界が磁性部材の中を通り、共振アンテナと平行方向に指向性を持たせることができるため、通信方向が増えて、通信可能範囲が拡大する。
【0020】
また、他の態様では、前記共振アンテナは、前記磁性部材上に配置され、前記ケース内面に貼り付けられたループコイルであることを特徴とする。
以上のような態様では、共振アンテナ及び磁性部材を薄く形成することができるので、小型化しやすい。
【0021】
また、他の態様では、前記共振アンテナは、前記ケースに埋設されていることを特徴とする。
以上のような態様では、ケース内に共振アンテナのためのスペースが不要となるので、さらに小型化できる。
【0022】
また、他の態様では、前記磁性部材は、アモルファス合金、パーマロイ、珪素鋼、センダスト合金及び軟磁性フェライトのうち、少なくとも一種の軟磁性材料を含むことを特徴とする。
以上のような態様では、磁性部材として、最適なものを選択することにより、金属部品の影響を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のような本発明によれば、小型のケースに設けられ、送受信アンテナが小径のものであっても、異なる方向での通信距離と通信可能範囲の拡大が可能なブースターアンテナを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を、図1及び図2を参照して具体的に説明する。すなわち、図1に示すように、本実施形態のブースターアンテナは、RFIDリーダライタに適用されるものである。このRFIDリーダライタは、基板10にリーダライタに必要な部品を配設し、ケース20に収容することによって構成されている。基板10は、略直方体形状のプリント配線板であり、長手方向の一端にコネクタ11が設けられている。
【0025】
このコネクタ11は、例えば、パーソナルコンピュータ等のコネクタに挿入することにより、プラグ&プレイ等を実現できるUSB(Universal Serial Bus)のインタフェースである。但し、本発明は、現在又は将来において利用可能なあらゆるインタフェースを適用できる。
【0026】
なお、一般的には、雄側と雌側を合わせて「コネクタ」と呼び、雄側を「プラグ」と呼ぶが、請求項及び以下の説明では、便宜的に「プラグ」についても「コネクタ」と呼ぶ。また、コネクタ11は、ケース20の一端から露出しており、ケース20に着脱自在なキャップ(図示せず)によって保護される構成となっている。
【0027】
基板10の上面(パソコンとの接続時に上側となる面)には、送受信アンテナ12が、コイル状のパターンにより形成されている。この送受信アンテナ12は、基板10のコネクタ11とは反対側の端部の近傍に配設されている。
【0028】
また、基板10には、発振子13、制御用IC14等を含む制御回路及び電波インタフェースが構成されている。発振子13は、搬送波となる高周波を発生させ、増幅器による増幅後、送受信アンテナ12に供給するための水晶発振子であり、これらは基板10の上面側におけるコネクタ11と送受信アンテナ12との間に配設されている。
【0029】
制御用IC14は、モールド封止されたICチップであり、USB接続及びリーダライタに必要な処理を行うCPU、メモリ等を構成している。この制御用IC14は、基板10の下面側におけるコネクタ11と送受信アンテナ12との間に配設されている。
【0030】
そして、ケース20の内面には、RFIDリーダライタの回路とは電気的に独立した回路である共振アンテナ21が設けられている。本実施形態では、この共振アンテナ21は、基板10上の送受信アンテナ12に対向した内面に配設されている。これにより、共振アンテナ21は、RFIDカード40を近づけた場合に、送受信アンテナ12とRFIDカード40との間に来る。
【0031】
共振アンテナ21は、図2に示すように、磁性部材22上にループ状に巻回された共振アンテナコイル23と、この共振アンテナコイル23に接続されたキャパシタ24とから構成され、磁性部材22をケース20の内面に貼り付けることにより、ケース20に固定されている。
【0032】
これにより、磁性部材22は、共振アンテナコイル23と送受信アンテナ12との間に配置される。また、シート状の磁性部材22に共振アンテナコイル23を配設してケース20内に貼り付けることにより、所要スペースを極力小さくして、小型化を実現できる。なお、共振アンテナコイル23とキャパシタ24とは、RFIDリーダライタの搬送周波数で共振するように、そのコイル長及び静電容量が決定されている。
【0033】
[実施形態の作用効果]
以上のような本実施形態の作用効果を、実際に作製した複数の実施例と比較例に基づいて説明する。
【0034】
[金属部品の影響の改善…実施例1〜3]
まず、比較例1〜5と、本実施形態を適用した実施例1〜3について、通信距離の測定を行った結果のデータを、表1及び図3のグラフに示す。表1は、共振アンテナコイル23の作成条件と通信距離、図3は面積比と通信距離の関係を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1において、比較例1〜5(項目A〜E)は、磁性部材22が無く、面積が異なる5種類の共振アンテナコイル23を用いたものである。実施例1〜3(項目F〜H)は、共振アンテナコイル23の面積と、磁性部材22の大きさを変えたものである。図3において、面積比は、以下のように求めた。
面積比=(共振アンテナコイルの面積)/(送受信アンテナコイル面積)
【0037】
その他の条件は、次の通りである。
(共振アンテナコイル)
・共振周波数…13.56MHz
・送受信アンテナコイルとの結合係数…0.086
(送受信アンテナコイル)
・インダクタンスL…0.72μH
・巻き数…7T(7巻き)
・アンテナ半径…3.5mmの円形
(磁性部材)
・軟磁性フェライトゴムシート・・・厚み500μm
【0038】
この表1及び図3から明らかな通り、磁性部材22の有無以外は条件が同じ比較例3と実施例1、比較例4と実施例2、比較例5と実施例3をそれぞれ比較すると、いずれも実施例の方が通信距離が伸びている。したがって、共振アンテナ21を設けることによる通信距離の延長の効果は、磁性部材22を介在させることによって、より一層高まることがわかる。
【0039】
また、比較例1〜5から明らかな通り、共振アンテナコイル23の面積を大きくすると、通信距離は延長できるが、面積比10以上で、飽和状態となる(比較例4,5参照)。これは、共振アンテナコイル23の直下に、基板10の回路パターン、基板10に配置されている金属を使用している部品(制御用IC14のリード、発振子13、コネクタ11など)が存在し、これらの金属の影響によって、通信距離が十分に延長できていないと考えられる。
【0040】
一方、磁性部材22の有無以外は比較例4,5と条件が同じ実施例2,3では、通信距離が大きく伸びている。これは、磁性部材22が介在することによって、金属の影響を低減できているためと考えられる。
【0041】
[アンテナコイルの指向性の改善…実施例3]
上記の比較例5と実施例3について、異なる位置で通信距離の測定を行った結果のデータを、表2及び図4のグラフに示す。ここで、異なる位置とは、以下の位置A及び位置Bであり、図5〜7に図示する。
・位置A(図5及び図6参照)…RFIDカードと共振アンテナコイルが同軸上に位置(ケース上面20aからの通信)
・位置B(図5及び図7参照)…RFIDカードと共振アンテナコイルが垂直に位置(ケース側面20bからの通信)
【0042】
【表2】
【0043】
表2及び図4から明らかな通り、磁性部材22が存在しない比較例5では、位置Bでの通信距離が著しく低下している。しかし、実施例3では、磁性部材22が介在することによって、位置Bでの通信距離は、比較例5と比べて著しく伸びており、位置Aとの差も小さくなっている。
【0044】
このような効果が得られるのは、以下のような原理によると考えられる。すなわち、実施例3では、図8に示すように、共振アンテナコイル23下に、磁性部材22を配置すると、共振アンテナコイル23から発生した磁界が、磁性部材22の中を通ることで、共振アンテナコイル23と平行方向(コイルの面内方向)に指向性を持たせることができる。
【0045】
このため、RFIDカード40を共振アンテナ21に対して垂直方向に置いたときでも、RFIDカード40のアンテナコイル41を貫く磁界を増やすことができて、共振アンテナコイル23とアンテナコイル41の結合係数を大きくすることが可能となり、通信距離も延長できる。
【0046】
[他の実施形態]
本発明は、前記の実施の形態に限定されるものではなく、次のような他の実施形態も包含するものである。
【0047】
(a) 共振アンテナ21の共振点波、共振周波数をf、インダクタンスをL、キャパシタンスをCとすると、
【数1】
となる。この場合、インダクタンスLとキャパシタンスCの値の調整で、共振周波数を変更できるが、搬送周波数に対して多少高い周波数にした方が値のばらつきに対して余裕がでる。
【0048】
なお、各実施形態における具体的な数値は例示であり、本発明は上記の数値には限定されない。また、搬送周波数の具体例としては、13.56MHzが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0049】
(b) 共振アンテナ21の効果を高くするためには、基板上に形成されている送受信アンテナ12の共振回路のインピーダンスをRF部出力インピーダンスにマッチングさせるため調整を行うが、このときに容量性となるようにLCRメータ等で調整することにより、共振周波数のピークを搬送周波数より下になるようにする。
【0050】
(c) 基板上面から見たときに、基板上の送受信アンテナ12が共振アンテナコイル23のループ内に収まるようにしないと、本発明の効果がない。しかし、その点に配慮すれば、送受信アンテナ12と共振アンテナ21との位置関係は図示のものに限定されない。例えば、両アンテナコイルは必ずしも互いに平行である必要はなく、軸が一致している必要もない。また、両アンテナコイルの形状も円形、楕円形、方形、その他の形状であってもよい。
【0051】
(d) 共振アンテナ21側の回路は、印刷技術を利用して粘着シート上に形成したり、フレキシブル基板上に印刷などで形成することも可能であり、薄くしかも安価に製造することができる。
【0052】
(e) 図9に示すように、共振アンテナコイル23をケース20を構成する樹脂内に埋設することも可能である。かかる構成とすれば、ケース20内部における共振アンテナコイル23の厚みのスペースを節約することができるので、さらなる小型化が可能となる。
【0053】
(f) 基板上の送受信アンテナ12と共振アンテナ21との距離は、基板上のアンテナの半径と同じ距離が最も通信距離が大きくなるが、この距離以内であれば、共振アンテナ21を使用しない場合に比べ効果が確認できる。ただし、半径の距離より離れて共振アンテナ21を使用した場合には、効果は必ずしも十分とはいえない。
【0054】
(g) 共振アンテナ21をケース20に設ける位置は、前記のような送受信アンテナ12との位置関係に配慮すれば、ケース20の上面側、下面側のいずれでも良い。また、共振アンテナ21の面積は、ケース20に収まる限り、最大になるようにした方がより効果が大きくなる。
【0055】
(h) 磁性部材22の材料は、アモルファス合金、パーマロイ、珪素鋼、センダスト合金、軟磁性フェライト等の軟磁性材料を用いることが望ましいが、これに限定されない。磁性材料を一種とするか複数種とするかも自由であり、非磁性材料を含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示す断面図である。
【図2】図1の実施形態における共振アンテナを示す平面図である。
【図3】図1の実施形態における共振アンテナコイル面積と通信距離の関係を示す説明図である。
【図4】図1の実施形態における実施例3と比較例5の通信距離の比較を示す説明図である。
【図5】図1の実施形態における異なる位置A,BでのRFIDカードとの通信を示す説明図である。
【図6】図5の位置Aの状態を示す斜視図である。
【図7】図5の位置Bの状態を示す斜視図である。
【図8】図1の実施形態の位置Bでの磁界を示す説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態を示す断面図である。
【図10】従来の共振アンテナをケース内に設けたRFIDリーダライタを示す断面図である。
【図11】従来の共振アンテナをケースに埋設したRFIDリーダライタを示す断面図である。
【図12】従来のRFIDリーダライタとRFIDカードとの通信における磁界を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
10…基板
11…コネクタ
12…送受信アンテナ
13…発振子
20…ケース
21…共振アンテナ
22…磁性部材
23…共振アンテナコイル
24…キャパシタ
40…カード
41…アンテナコイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と情報を送受信するための送受信アンテナと、前記送受信アンテナを介して送受信される情報を処理する制御部と、前記送受信アンテナ及び前記制御部を収容したケースとを有し、
前記ケースに、前記送受信アンテナよりも大径の共振アンテナが設けられ、
前記送受信アンテナと前記共振アンテナとの間には、磁性部材が配置されていることを特徴とするブースターアンテナ。
【請求項2】
前記共振アンテナは、前記磁性部材上に配置され、前記ケース内面に貼り付けられたループコイルであることを特徴とする請求項1記載のブースターアンテナ。
【請求項3】
前記共振アンテナは、前記ケースに埋設されていることを特徴とする請求項1記載のブースターアンテナ。
【請求項4】
前記磁性部材は、アモルファス合金、パーマロイ、珪素鋼、センダスト合金及び軟磁性フェライトのうち、少なくとも一種の軟磁性材料を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のブースターアンテナ。
【請求項1】
外部と情報を送受信するための送受信アンテナと、前記送受信アンテナを介して送受信される情報を処理する制御部と、前記送受信アンテナ及び前記制御部を収容したケースとを有し、
前記ケースに、前記送受信アンテナよりも大径の共振アンテナが設けられ、
前記送受信アンテナと前記共振アンテナとの間には、磁性部材が配置されていることを特徴とするブースターアンテナ。
【請求項2】
前記共振アンテナは、前記磁性部材上に配置され、前記ケース内面に貼り付けられたループコイルであることを特徴とする請求項1記載のブースターアンテナ。
【請求項3】
前記共振アンテナは、前記ケースに埋設されていることを特徴とする請求項1記載のブースターアンテナ。
【請求項4】
前記磁性部材は、アモルファス合金、パーマロイ、珪素鋼、センダスト合金及び軟磁性フェライトのうち、少なくとも一種の軟磁性材料を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のブースターアンテナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−306689(P2008−306689A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154575(P2007−154575)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】
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