説明

ブームおよびブームシリンダの組付け方法とその組付け装置

【課題】ブームおよびブームシリンダの組付けの際に、ブームシリンダの伸びが防止されて迅速な組付けが可能となるブームおよびブームシリンダの組付け方法とその装置を提供する。
【解決手段】ブーム8を吊上装置で吊って旋回フレーム2に取付ける際に、ブームシリンダ9のボトム側端部をブーム8にピン13付けした状態で、チューブ支持部材14を介して支持する。ブームシリンダ9のピストンロッドのボス9cの外周面をロッド固定部材14で囲むとともに、ロッド固定部材14をブームシリンダ9のチューブ9aに固定してピストンロッド9bの伸長を防止しておく。吊上装置によりブーム8のボス8aおよびピストンロッド9bのボス9cをそれぞれ旋回フレーム2の対応するボス8a,8bに位置合わせしてピン付けする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的大型の建設機械のブームおよびブームシリンダを旋回フレームに組付ける方法と組付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
解体機等の大型の建設機械は、重量制限等の制約からブームを旋回フレームから分離して輸送する必要がある。このようにブームを旋回フレームから分離して輸送する場合、輸送後の組立をなるべく迅速に行なう必要から、ブームにブームシリンダを付けたままで輸送することが行なわれる。さらに、ブームにブームシリンダを付けたままで輸送する場合、旋回フレームに対する組付けをより迅速に行なえるようにするため、図16に示すように、旋回フレームに設けたフロント取付け部70のブーム71取付け用ボス70aおよびブームシリンダ72取付け用ボス70bに間隔、サイズが合致するボス73a、73bを有するアダプタ73を備え、このアダプタ73をピン74,75によりブーム71の根本部とブームシリンダ72の先端に取付けたまま輸送し、現地において、このアダプタ73を旋回フレームのフロント取付け部70に組付けることが行なわれていた(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このようなアダプタ73を組込んだフロントアタッチメントは、アダプタ73の分だけ重量が増加するため、輸送制限重量を超えてしまったり、建設機械の重量増加により、作業時における走行能力を低下させるという問題点があった。
【0004】
このような問題点を解決するため、図17に示すように、ブーム71にブームシリンダ72のボトム側端部をピン76により取付け、ブームシリンダ72のチューブ72aを、ブーム71によりチェーンやワイヤ等のチューブ支持部材77を介して支持し、輸送時には、ブーム71やブームシリンダ72を輸送トラックの台上に載せ、現地で旋回フレームに組付ける際にはブームシリンダ72のチューブ72aをチェーンブロックやワイヤ等のチューブ支持部材77で支持した状態でブーム71をクレーンにより吊り上げて組付けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−156168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図17に示すブームシリンダ72の支持構造を採用する場合、クレーンによりブーム71をほぼ水平に吊ってブーム71およびブームシリンダ72を旋回フレームに組付けるため、ブームシリンダ72はピストンロッド72b側が下になる斜めの姿勢となるので、ピストンロッド72bが自重により矢印Aに示す方向に伸びてしまい、旋回フレームのフロント取付け部70への連結が困難になるという問題点があった。なお、このブーム71およびブームシリンダ72の連結時にはブームシリンダ72は旋回フレームに搭載した油圧源と接続されていないため、ブームシリンダ72を縮める操作はできない。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、ブームおよびブームシリンダの組付けの際に、ブームシリンダの伸びが防止されて迅速な組付けが可能となるブームおよびブームシリンダの組付け方法とその組付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のブームおよびブームシリンダの組付け方法は、
ブームにブームシリンダのボトム側端部をピン付けし、旋回フレームのフロント取付け部に設けたブーム取付け用ボスとブームシリンダ取付け用ボスに前記ブームの根本部のボスおよび前記ブームシリンダのピストンロッドのボスの位置をそれぞれ合わせてピン付けするブームおよびブームシリンダの組付け方法において、
前記ブームを吊上装置で吊って前記旋回フレームに取付ける際に、前記ブームシリンダのチューブを前記ブームによりチューブ支持部材を介して支持し、
前記ブームシリンダのピストンロッドのボスの外周面をロッド固定部材で囲むとともに、前記ロッド固定部材を前記ブームシリンダのチューブに固定して前記ピストンロッドの伸長を防止しておき、
吊上装置により前記ブームのボスおよび前記ピストンロッドのボスをそれぞれ前記旋回フレームの対応するボスに位置合わせしてピン付けすることを特徴とする。
【0009】
請求項2のブームおよびブームシリンダの組付け方法は、請求項1に記載のブームおよびブームシリンダの組付け方法において、
前記ロッド固定部材として、前記ピストンロッドのボスの外周面を囲む帯状部材を用いると共に、前記帯状部材を前記ブームシリンダのチューブに固定する手段として、前記チューブに設けられかつ前記帯状部材を着脱可能に取付ける取付部材を用い、
前記ブームおよび前記ブームシリンダを対応する前記旋回フレームのボスにピン付けする際には、前記帯状部材で前記ピストンロッドのボスの外周面を囲み、前記帯状部材を前記取付部材により前記ブームシリンダのチューブに固定して前記ピストンロッドの伸長を防止しておき、
吊上装置により前記ブームのボスを前記ブーム取付け用ボスに位置合わせしてピンにより連結した後、前記ピストンロッドのボスを前記ブームシリンダ取付け用ボスに近接させ、前記帯状部材を前記取付部材から取外して前記ピストンロッドのボスを前記ブームシリンダ取付け用ボスに位置合わせしてピンにより連結することを特徴とする。
【0010】
請求項3のブームおよびブームシリンダの組付け方法は、請求項1に記載のブームおよびブームシリンダの組付け方法において、
前記ロッド固定部材として、前記ブームシリンダのピストンロッドのボスの幅以下の幅を有し、前記ボスの外周面を覆って前記ピストンロッドに取付けられるヘッドカバーを用いると共に、前記ヘッドカバーを前記ブームシリンダのチューブに固定する手段として、前記ヘッドカバーに一端が固定され、かつ前記ブームシリンダのチューブに取付けたガイドに摺動可能に装着されたロッドガードを用い、
前記ブームおよび前記ブームシリンダを対応する旋回フレームのボスにピン付けする際には、前記ロッドガードを前記ガイドに固定してピストンロッドの伸長を防止しておき、
前記ヘッドカバーを前記ピストンロッドのボスに付けたままで前記ブームのボスおよび前記ピストンロッドのボスをそれぞれ前記旋回フレームの対応するボスに位置合わせしてピンにより連結し、
ピンによる連結後は前記ロッドガードの前記ガイドに対する固定を解くことを特徴とする。
【0011】
請求項4のブームおよびブームシリンダの組付け装置は、
ブームにブームシリンダのボトム側端部をピン付けし、旋回フレームのフロント取付け部に設けたブーム取付け用ボスとブームシリンダ取付け用ボスに前記ブームの根本部のボスおよび前記ブームシリンダのピストンロッドのボスの位置をそれぞれ合わせてピン付けするブームおよびブームシリンダの組付け装置において、
前記ブームシリンダのピストンロッドのボスの外周面を囲む帯状部材と、
前記ブームシリンダのチューブに取付けられ、前記帯状部材を前記ピストンロッドのボスに着脱可能に固定する取付部材とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項5のブームおよびブームシリンダの組付け装置は、
ブームにブームシリンダのボトム側端部をピン付けし、旋回フレームのフロント取付け部に設けたブーム取付け用ボスとブームシリンダ取付け用ボスに前記ブームの根本部のボスおよび前記ブームシリンダのピストンロッドのボスの位置をそれぞれ合わせてピン付けするブームおよびブームシリンダの組付け装置において、
前記ブームシリンダのピストンロッドのボスの幅以下の幅を有すると共に、前記ボスの外周を覆って前記ピストンロッドに取付けられるヘッドカバーと、
前記ヘッドカバーに一端が固定され、かつ前記ブームシリンダのチューブに取付けたガイドに摺動可能に装着されたロッドガードと
前記ロッドガードを前記ガイドに着脱可能に固定する固定具とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ブームおよびブームシリンダを吊って旋回フレームに組付ける際に、ブームシリンダのピストンロッドがロッド固定部材によりチューブに固定されるため、ピストンロッドの伸長が防止される。このため、ブームシリンダのボスを本体フレームのボスに組付ける際に位置あわせが容易になり、ブームシリンダの組付けを迅速に行なうことができる。
【0014】
請求項3および請求項5の発明によれば、既存のブームシリンダのロッドガードとヘッドカバーに、ヘッドカバーをガイドに固定する固定手段を付加するだけで実施することができ、ピストンロッドの伸長防止を安価に行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の組付装置の一実施の形態を適用した建設機械の一例を示す側面図である。
【図2】本発明によるブームおよびブームシリンダの組付け方法の一実施の形態を、ブームおよびブームシリンダの旋回フレームへの組付け前の状態で示す側面図である。
【図3】この実施の形態のブームシリンダの底面図であり、ロッド固定部材をピストンロッドのボスに取付けた状態を示す。
【図4】図2のE−E拡大断面図である。
【図5】この実施の形態において、ブームを旋回フレームのボスにピン付けした状態を示す側面図である。
【図6】この実施の形態において、ブームとブームシリンダを旋回フレームに組付けた状態を示す側面図である。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る組付け装置を示す建設機械の側面図である。
【図8】図7の実施の形態において、ブームとブームシリンダの旋回フレームへの組付け前の状態を示す側面図である。
【図9】図8に示すブームシリンダの底面図である。
【図10】図8に示すブームシリンダの先端部を示す拡大側面図である。
【図11】図10のG−G断面図である。
【図12】図8のF−F拡大断面図である。
【図13】本発明の他の実施の形態を示すブームシリンダの底面図である。
【図14】図13の実施の形態における図12相当断面図である。
【図15】(A)、(B)は図13の実施の形態におけるロッドガードの固定構造を示す分解断面図および組立断面図、(C)は固定ピンの抜け止め構造を示す底面図である。
【図16】従来のアダプタを用いたブームおよびブームシリンダの組付け装置を示す側面図である。
【図17】従来のチューブ支持部材を用いたブームおよびブームシリンダの組付け装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の組付装置を一実施の形態を適用した建設機械の一例を示す側面図である。図1において、1は下部走行体、2は旋回装置3を介して旋回可能に取付けられた旋回フレームであり、この旋回フレーム2にエンジンや油圧ポンプなどからなるパワーユニット4、運転室5およびカウンタウエイト6を搭載して上部旋回体7を構成する。
【0017】
旋回フレーム2の前部にはブーム8およびブームシリンダ9を取付けるフロント取付け部10が一体に設けられる。この実施の形態のブーム8は、その先端に別のブームを継ぎ足す分割ブームである例を示しているが、この分割ブームの代わりに汎用のブームを用いる場合も本発明が適用可能である。また、この実施の形態においては、ブーム8の両側にそれぞれブームシリンダ9が取付けられた例を示しているが、ブーム8の下側に1本のブームを取付ける構造のものにも本発明は適用可能である。10a、10bはそれぞれブーム8、ブームシリンダ9をピン11,12により連結するためのフロント取付け部10に設けたボスである。
【0018】
図2は本発明によるブームおよびブームシリンダの組付け方法の一実施の形態を、ブームおよびブームシリンダの旋回フレーム2への組付け前の状態で示す側面図である。図2に示すように、輸送時およびブーム8およびブームシリンダ9を前記旋回フレーム2のフロント取付け部10に組付ける前の状態においては、ブームシリンダ9は、ピン13によりボトム側端部をブーム8に取付け、かつブーム8とブームシリンダ9のチューブ9aとを、チェーンブロックやワイヤ等のチューブ支持部材14により接続した状態でブームシリンダ9が支持される。14a,14bはそれぞれブーム8とチューブ9aに取付けたチューブ支持部材14連結用の金具である。
【0019】
この実施の形態においては、ブームシリンダ9のピストンロッド9bの伸長を防止するためのロッド固定部材として、前記ピストンロッド9bの先端のボス9cの外周面を囲む帯状部材15を用い、この帯状部材15をブームシリンダ9のチューブ9aに固定する手段として、この帯状部材を着脱可能に取付ける取付部材16を用いる。9dはブームシリンダ9のロッド室に作動油を供給するための油圧配管である。
【0020】
図3はこの実施の形態において、ブームシリンダ9にロッド固定部材を取付けた状態を示す底面図、図4は図2のE−E拡大断面図である。図3に示すように、帯状部材15はピストンロッド9bのボス9cと同じ幅またはボス9cの幅より狭い幅を有する。この帯状部材15にはポリアミド樹脂等の樹脂製や布製等の可撓性材料を用いることが好ましい。
【0021】
図4に示すように、取付部材16は、2個の半円弧状の金具16a,16bでチューブ9aを挟み、ボルト17、ナット18によってチューブ9aに締結して取付けられる。各金具16a,16bにはそれぞれ帯状部材15の締結座16c,16dを有し、各締結座16c,16dに帯状部材15の両端を当て、帯状部材15をボルト19により締結座16c、16dに着脱可能に取付ける構造を有する。すなわち帯状部材15の両端にはボルト19を通す孔(図示せず)を有し、締結座16c,16dにはボルト19を螺合するねじ孔(図示せず)を有する。なお、16e,16fは油圧配管9dを通すために各締結座16c,16dに設けた開口部である。
【0022】
この実施の形態において、ブーム8およびブームシリンダ9を対応する旋回フレーム2のフロント取付け用フロント取付け部10のボス10a,10bにピン付けする際には、図2、図3に示すように、帯状部材15でピストンロッド9bのボス9cの外周面を囲み、図4に示すように、帯状部材15の両端を取付部材16の締結座16c,16dにボルト19より締結する。これにより、ピストンロッド9bがブームシリンダ9のチューブ9aに固定され、ピストンロッド9bの伸長が防止された状態となる。この状態でブーム8およびブームシリンダ9をクレーン等の吊上装置により吊り上げてブーム8の根本部およびピストンロッド9bの先端のボス9cを旋回フレーム2のフロント取付け部10のブームおよびブームシリンダ取付け用ボス10a,10b側へ移動させる。なお、建設機械の本体側を走行、旋回によりブーム8およびブームシリンダ9側に移動させてもよい。
【0023】
その後、図5に示すように、旋回フレーム2のブーム取付け用ボス10aにブーム8の根本部のボス8a(図2参照)を合わせてピン11により連結した後、図6に示すように、前記ピストンロッド9bのボス9cから帯状部材15を取外してピストンロッド9bのボス9cを旋回フレーム2のブームシリンダ取付け用ボス10bにピン12により連結する。
【0024】
ここで、ブームシリンダ9のピストンロッド9bのボス9cをフロント取付け部10のボス10bに位置合わせする際には、クレーンなどの吊上装置の主巻ロープ(図示せず)でブーム8を支持すると共に、補助ロープ(図示せず)またはチェーンブロック(図示せず)によりチューブ9aを吊り、ブーム8をボス10aにピン11によって連結した後、ブームシリンダ9のボス9cの位置がボス10bの位置にある程度合うように近接させる。そして、帯状部材15を取外してボス9cの位置をボス10bに合わせてピン12により連結する。
【0025】
このように、この実施の形態においては、ブーム8およびブームシリンダ9を吊って旋回フレーム2のフロント取付け部10に組付ける際に、ブームシリンダ9のピストンロッド9bを帯状部材15と取付部材16によりチューブ9aに固定しておくため、ピストンロッド9bの伸長が防止される。このため、ブームシリンダ9のピストンロッド9bのボス9cを旋回フレーム2のボス10a,10bに組付ける際に位置合わせが容易になり、ブームシリンダ9の組付けを迅速に行なうことができる。
【0026】
また、このような組付け方法によれば、図16に示した従来のアダプタ73が不要となるので、運搬する重量が少なくてすむととともに、アダプタ73の重量だけ建設機械全体の重量が増加することを回避することができ、建設機械の作業時の走行能力を低下させることもない。
【0027】
図7は本発明の他の実施の形態を示す建設機械の側面図である。図8はそのブーム8とブームシリンダ9を旋回フレーム2に組付ける前の状態を示す側面図である。図7、図8において、図1、図2に示した実施の形態と同様の部分については、同じ符号を付している。図7、図8の本実施の形態においては、ピストンロッド9bをチューブ9aに固定する固定部材として、ブームシリンダ9のピストンロッド9bに固定するヘッドカバー22を用い、このヘッドカバー22をチューブ9aに固定する手段として、このヘッドカバー22に一端を固定したロッドガード23と、ブームシリンダ9のチューブ9aに固定され、ロッドガード23を摺動可能に係合させるガイド24と、このガイド24にロッドガード23を着脱可能に固定するボルト25とを用いる。
【0028】
ロッドガード23は、例えば解体機として用いられる建設機械において、解体作業により落下した破砕ブロックが地面等から跳ね上がってピストンロッド9bに衝突してピストンロッド9bを損傷することを防止するものである。特に旋回フレーム2側にピストンロッド9bを連結する構造においては、ピストンロッド9bの位置が低くなるため、このような破砕ブロック等が衝突しやすくなり、ロッドガード23の役目が重要になる。
【0029】
図9は図8に示すブームシリンダ9の底面図、図10は図8に示すブームシリンダの先端部を示す拡大側面図、図11は図10のG−G断面図である。図8〜図11に示すように、ヘッドカバー22は、ピストンロッド9bのボス9cの外周面に装着する帯状部材からなる外周装着部22aと、この外周装着部22aをピストンロッド9bの先端に取付ける取付部材22bと、ロッドガード23との連結部22cとを備える。この連結部22cは筒状をなし、ブームシリンダ9のチューブ9aの先端部に対して移動可能に外嵌される。なお、ヘッドカバー22やロッドガード23は鋼板からなる。
【0030】
図9、図11に示すように、外周装着部22aはピストンロッド9bのボス9cの幅以下の幅を有する。この外周装着部22aをピストンロッド9bに取付ける取付部材22bは、ピストンロッド9bを両側から挟んでボルト27、ナット28によりピストンロッド9bに固定される半円弧状金具29,30と、これらの半円弧状金具29,30のうちの一方の金具29に溶接され、上下端がそれぞれ前記外周装着部22aの上板部、下板部にボルト31,32により固定された連結板33とを備える。図9、図10に示すように、ロッドガード23の一端はボルト35によりヘッドカバー22の連結部22cに連結する。
【0031】
図12はブームシリンダ9のチューブ9aに取付けるガイド24の取付け構造を示す図8のF−F拡大断面図である。図12において、37,38はチューブ9aを両側から挟んでボルト39、ナット40によって締結することによりチューブ9aに固定される半円弧状金具である。41はこれらの半円弧状金具37,38のうちの一方の金具37に溶接されたガイド用取付け座である。ガイド24は、左右の縦板部24aと、その下端に溶接された横板部24bと、この横板24bの両端に溶接されたガイドレール24cとを有し、縦板部24aの上部の曲成部を前記取付け座41にボルト42によって固定することにより、チューブ9aに取付けられる。ブームシリンダ9の油圧配管9dは、前記左右の縦板部24a,24a間に挿通される。
【0032】
前記ロッドガード23は、両端を上方に曲成した曲成部23aを有し、上面に前記ガイド24のガイドレール24cに摺動可能に嵌合されるL字形の摺動部材23bを溶接してなる。このロッドガード23は、前記ガイド24の横板部24bに対し、ボルト25,ナット45により着脱可能に取付けられる。
【0033】
この実施の形態において、ブーム8およびブームシリンダ9を対応する旋回フレーム2のフロント取付け部10のボス10a,10bにピン付けする際には、図8、図9に示すように、ヘッドカバー22にボルト35により連結されたロッドガード23を、ボルト25、ナット45(図12参照)によりガイド24に固定しておく。これにより、ピストンロッド9bがブームシリンダ9のチューブ9aに固定され、ピストンロッド9bの伸長が防止された状態となる。
【0034】
この状態でブーム8およびブームシリンダ9をクレーン等の吊上装置により吊り上げてブーム8の根本部およびピストンロッド9bの先端のボス9cを旋回フレーム2のフロント取付け部10のブームおよびブームシリンダ取付け用ボス10a,10b側へ移動させるか、あるいは建設機械本体側の走行、旋回によりフロント取付け部10をブーム8およびブームシリンダ9に近接させる。その後、ブーム8のボス8aをフロント取付け部10のボス10aに先行して位置合わせを行なってピン11による連結を行ない、その後、ブームシリンダ9のボス9cをボス10bに位置合わせてしてピン12による連結を行なう。この場合、ヘッドカバー22はピストンロッド9bに取付けたままとする。
【0035】
このように、この実施の形態においては、ブーム8およびブームシリンダ9を吊って旋回フレーム2に組付ける際に、ブームシリンダ9のピストンロッド9bが、ヘッドカバー22に連結されたロッドガードがガイド24に固定されることよりチューブ9aに固定されるため、ピストンロッド9bの伸長が防止される。このため、ブームシリンダ9のピストンロッド9bのボス9cを旋回フレーム2のボス10a、10bに組付ける際に位置合わせが容易になり、ブームシリンダ9の組付けを迅速に行なうことができる。
【0036】
また、この実施の形態によれば、既存のブームシリンダ9のヘッドカバー22とロッドガード23に、ヘッドカバー22をガイド24に固定する固定手段であるボルト25、ナット45を付加するだけで実施することができ、ピストンロッド9bの伸長防止を安価に行なうことが可能となる。
【0037】
図14は前記ロッドガード23をガイド24に固定するためにピン47を用いた本発明の他の実施の形態を示す図12相当図である。図15(A)はこのピン47による固定構造を示す分解断面図である。図15(A)に示すように、ガイド24の横板部24bにはピン孔24dを設ける。また、ロッドガード23にはピン孔24dに対応する箇所にピン孔23cを設けると共に、ロッドガード23の下面に、このピン孔23cを囲むように円筒体23dを溶接し、この円筒体23dに図15(B)、(C)に示す抜け止めピン48を挿着するピン孔23eを設ける。
【0038】
この実施の形態においては、ロッドガード23をガイド24に固定する際には、図15(B)に示すように、ピン47をロッドガード23のピン孔23cとガイド24の横板部24bのピン孔24dに挿着すると共に、ピン47に設けたピン孔47aと円筒体23dに設けたピン孔23eに抜け止めピン48を挿着し、この抜け止めピンに取付けたリング48aを円筒体23cに掛け回すことによりピン47を抜け止めする。このようなピン47をロッドガード23の固定に用いれば、ロッドガード23の固定が比較的簡単に行なえるという利点がある。
【0039】
以上本発明を実施の形態により説明したが、本発明は解体機以外の各種大型建設機械に適用できる。また、本発明を実施する場合、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1:下部走行体、2:旋回フレーム、3:旋回装置、4:パワーユニット、5:運転室、6:カウンタウエイト、7:上部旋回体、8:ブーム、9:ブームシリンダ、9a:チューブ、9b:ピストンロッド、9c:ボス、9d:油圧配管、10:フロント取付け部、10a,10b:ボス、11,12,13:ピン、14:チューブ支持部材、15:帯状部材(ロッド固定部材)、16:取付部材、22:ヘッドカバー、22a:外周装着部、22b:取付部材、22c:連結部、23:ロッドガード(ロッド固定部材)、24:ガイド、24c:ガイドレール、25:ボルト、27:ボルト、28:ナット、29,30:半円弧状金具、33:連結板、35:ボルト、37,38:半円弧状金具、39:ボルト、40:ナット、41:ガイド用取付け座、44:ボルト、45:ナット、47:ピン、48:抜け止めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームにブームシリンダのボトム側端部をピン付けし、旋回フレームのフロント取付け部に設けたブーム取付け用ボスとブームシリンダ取付け用ボスに前記ブームの根本部のボスおよび前記ブームシリンダのピストンロッドのボスの位置をそれぞれ合わせてピン付けするブームおよびブームシリンダの組付け方法において、
前記ブームを吊上装置で吊って前記旋回フレームに取付ける際に、前記ブームシリンダのチューブを前記ブームによりチューブ支持部材を介して支持し、
前記ブームシリンダのピストンロッドのボスの外周面をロッド固定部材で囲むとともに、前記ロッド固定部材を前記ブームシリンダのチューブに固定して前記ピストンロッドの伸長を防止しておき、
吊上装置により前記ブームのボスおよび前記ピストンロッドのボスをそれぞれ前記旋回フレームの対応するボスに位置合わせしてピン付けすることを特徴とするブームおよびブームシリンダの組付け方法。
【請求項2】
請求項1に記載のブームおよびブームシリンダの組付け方法において、
前記ロッド固定部材として、前記ピストンロッドのボスの外周面を囲む帯状部材を用いると共に、前記帯状部材を前記ブームシリンダのチューブに固定する手段として、前記チューブに設けられかつ前記帯状部材を着脱可能に取付ける取付部材を用い、
前記ブームおよび前記ブームシリンダを対応する前記旋回フレームのボスにピン付けする際には、前記帯状部材で前記ピストンロッドのボスの外周面を囲み、前記帯状部材を前記取付部材により前記ブームシリンダのチューブに固定して前記ピストンロッドの伸長を防止しておき、
吊上装置により前記ブームのボスを前記ブーム取付け用ボスに位置合わせしてピンにより連結した後、前記ピストンロッドのボスを前記ブームシリンダ取付け用ボスに近接させ、前記帯状部材を前記取付部材から取外して前記ピストンロッドのボスを前記ブームシリンダ取付け用ボスに位置合わせしてピンにより連結することを特徴とするブームおよびブームシリンダの組付け方法。
【請求項3】
請求項1に記載のブームおよびブームシリンダの組付け方法において、
前記ロッド固定部材として、前記ブームシリンダのピストンロッドのボスの幅以下の幅を有し、前記ボスの外周面を覆って前記ピストンロッドに取付けられるヘッドカバーを用いると共に、前記ヘッドカバーを前記ブームシリンダのチューブに固定する手段として、前記ヘッドカバーに一端が固定され、かつ前記ブームシリンダのチューブに取付けたガイドに摺動可能に装着されたロッドガードを用い、
前記ブームおよび前記ブームシリンダを対応する旋回フレームのボスにピン付けする際には、前記ロッドガードを前記ガイドに固定してピストンロッドの伸長を防止しておき、
前記ヘッドカバーを前記ピストンロッドのボスに付けたままで前記ブームのボスおよび前記ピストンロッドのボスをそれぞれ前記旋回フレームの対応するボスに位置合わせしてピンにより連結し、
ピンによる連結後は前記ロッドガードの前記ガイドに対する固定を解くことを特徴とするブームおよびブームシリンダの組付け方法。
【請求項4】
ブームにブームシリンダのボトム側端部をピン付けし、旋回フレームのフロント取付け部に設けたブーム取付け用ボスとブームシリンダ取付け用ボスに前記ブームの根本部のボスおよび前記ブームシリンダのピストンロッドのボスの位置をそれぞれ合わせてピン付けするブームおよびブームシリンダの組付け装置において、
前記ブームシリンダのピストンロッドのボスの外周面を囲む帯状部材と、
前記ブームシリンダのチューブに取付けられ、前記帯状部材を前記ピストンロッドのボスに着脱可能に固定する取付部材とを備えたことを特徴とするブームおよびブームシリンダの組付け装置。
【請求項5】
ブームにブームシリンダのボトム側端部をピン付けし、旋回フレームのフロント取付け部に設けたブーム取付け用ボスとブームシリンダ取付け用ボスに前記ブームの根本部のボスおよび前記ブームシリンダのピストンロッドのボスの位置をそれぞれ合わせてピン付けするブームおよびブームシリンダの組付け装置において、
前記ブームシリンダのピストンロッドのボスの幅以下の幅を有すると共に、前記ボスの外周を覆って前記ピストンロッドに取付けられるヘッドカバーと、
前記ヘッドカバーに一端が固定され、かつ前記ブームシリンダのチューブに取付けたガイドに摺動可能に装着されたロッドガードと
前記ロッドガードを前記ガイドに着脱可能に固定する固定具とを備えたことを特徴とするブームおよびブームシリンダの組付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−23969(P2013−23969A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161702(P2011−161702)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】