説明

ブーム伸縮段数切替制御装置

【課題】各可動ブームが正規の伸長量とは異なる状態のまま、自動切替手段を用いてクレーン作業を行うことを抑制する。
【解決手段】伸縮させる可動ブームを正規のブーム伸縮順序に従って自動的に切り替える自動切替手段S10と、伸縮させる可動ブームを手動で切り替える手動切替手段S20と、を備える。さらに、手動切替手段S20を動作させるとともに、正規のブーム伸縮順序と異なる順序で可動ブームを伸縮させた場合に、自動切替手段S10の動作を禁止する自動切替禁止手段S30を備える。さらに手動切替手段S20を動作させるとともに、伸縮ブーム全体を最短または最長にした場合に前記禁止を解除する自動切替禁止解除手段S40を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮ブームを構成する複数の可動ブームのうち伸縮させる可動ブームを切り替えるためのブーム伸縮段数切替制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばホイールクレーン、ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーン等のように、伸縮ブームを備えるクレーン(機械)がある。伸縮ブームは、基端側の1つの固定ブームと、固定ブームの先端側に設けられる複数の可動ブームとを備える。可動ブームは油圧シリンダ(伸縮シリンダ)で伸縮させる。この種の伸縮ブームでは、伸縮ブームを構成する複数の可動ブームのうち、何段目の可動ブームを伸縮させるかを選択する必要がある(以下、伸縮させる可動ブームの段数を「選択段数」という)。
【0003】
特許文献1には、選択段数を自動的に切り替える装置が記載されている(以下、選択段数を自動的に切り替えるモードを「自動切替手段」という)。この装置では、伸縮ブームを伸長させるときは基端側(太い側)の可動ブームから順次伸長させる。伸縮ブームを縮小させるときは先端側(細い側)の可動ブームから順次縮小させる。このような選択段数の選択及び切り替えの順序を「正規のブーム伸縮順序」という。また、正規のブーム伸縮順序で可動ブームを伸縮させた場合の各可動ブームの伸長量(詳細は後述)を「正規の伸長量」という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9ー2781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の自動切替手段は通常のクレーン作業時に用いられる。一方で、伸縮ブームのメンテナンス時や修理時などには、オペレータが選択段数を手動で選択するモード(以下「手動切替手段」という)を用いる。そして、メンテナンス等終了後は、手動切替手段から自動切替手段へ戻した後、クレーン作業を行う。
【0006】
ここで、手動切替手段では、正規のブーム伸縮順序とは異なる順序(以下「選択ミス状態」ともいう)で選択段数を選択できる。選択ミス状態で任意の可動ブームを伸縮させると、各可動ブームが正規の伸長量とは異なる状態(以下「異伸縮状態」ともいう)になる。この状態のままクレーン作業を行うと、次に述べる問題が生じる。
【0007】
伸縮ブームを備える機械(クレーン)にはモーメントリミッタが設けられる。モーメントリミッタには、各可動ブームが正規の伸長量であることを前提としたクレーン能力が設定されている。よって、各可動ブームが正規の伸長量とは異なる状態(異伸縮状態)では、モーメントリミッタに設定されたクレーン能力と、実際に発揮できるクレーン能力とが一致しない。この状態でクレーン作業を行うと、伸縮ブームの破損等の事故に繋がるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、各可動ブームが正規の伸長量とは異なる状態のまま、クレーン作業を行うことを抑制できる、ブーム伸縮段数切替制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係るブーム伸縮段数切替制御装置は、伸縮ブームを構成する複数の可動ブームのうち伸縮させる当該可動ブームを切り替える制御装置であり、伸縮させる前記可動ブームを正規のブーム伸縮順序に従って自動的に切り替える自動切替手段と、伸縮させる前記可動ブームを手動で切り替える手動切替手段と、を備える。さらに、前記手動切替手段を動作させるとともに、前記正規のブーム伸縮順序と異なる順序で前記可動ブームを伸縮させた場合に、前記自動切替手段の動作を禁止する自動切替禁止手段を備える。さらに、前記手動切替手段を動作させるとともに、前記伸縮ブーム全体を最短または最長にした場合に前記禁止を解除する自動切替禁止解除手段を備える。
【0010】
なお、「正規のブーム伸縮順序」とは次のことをいう。伸縮ブームを伸長させるときは基端側から先端側へ可動ブームを順次伸長させるように選択段数の選択及び切替を行う順序である。伸縮ブームを縮小させるときは先端側から基端側へ可動ブームを順次縮小させるように選択段数の選択及び切替を行う順序である。
【0011】
また下記の「正規の伸長量」とは、正規のブーム伸縮順序で可動ブームを伸縮させた場合の可動ブームそれぞれの伸長量である。「正規の伸長量」には、実際に正規のブーム伸縮順序に従って複数の可動ブームを伸縮させたときの伸長量だけでなく、正規のブーム伸縮順序に従わずに可動ブームを伸縮させた結果、正規のブーム伸縮順序に従って複数の可動ブームを伸縮させたのと同じ伸長量(段数姿勢)になったときの伸長量を含む。
【0012】
このブーム伸縮段数切替制御装置は、上記の自動切替禁止手段を備える。ここで、手動切替手段を動作させるとともに正規のブーム伸縮順序と異なる順序で可動ブームを伸縮させた場合は、上述したように各可動ブームが正規の伸長量と異なる可能性がある。この場合に、自動切替禁止手段により自動切替手段の動作が禁止される。
また、このブーム伸縮段数切替制御装置は、上記の自動切替禁止解除手段を備える。ここで、手動切替手段を動作させるとともに伸縮ブーム全体を最短または最長にした場合は、各可動ブームは必ず正規の伸長量となる。この場合に、自動切替禁止解除手段により自動切替手段の動作の禁止が解除される。
また、オペレータは自動切替手段を動作させてクレーン作業を行うのが通常である。よって、上記のように自動切替手段の動作が禁止される結果、オペレータがクレーン作業を行うことが抑制される。したがって、各可動ブームが正規の伸長量とは異なる可能性がある状態のまま、自動切替手段を用いてクレーン作業を行うことを抑制できる。
【0013】
第2の発明に係るブーム伸縮段数切替制御装置は、複数の前記可動ブームそれぞれの伸長量を記憶する可動ブーム伸長量記憶手段を備える。前記自動切替禁止解除手段は、前記可動ブーム伸長量記憶手段で記憶された前記伸長量と、前記正規のブーム伸縮順序で複数の前記可動ブームを伸縮させた場合の当該可動ブームそれぞれの正規の伸長量と、が全て等しい場合に前記禁止を解除する。
【0014】
このブーム伸縮段数切替制御装置の自動切替禁止解除手段は、伸縮ブームが最短または最長でなくても、各可動ブームが正規の伸長量であれば、前記禁止を解除する。したがって、伸縮ブームを最短または最長にしたときにのみ前記禁止が解除される場合に比べ、短時間で前記禁止を解除できる。
【0015】
第3の発明に係るブーム伸縮段数切替制御装置は、前記自動切替禁止手段により前記自動切替手段の動作が禁止されるときは、モーメントリミッタに設定される吊荷重の許容値を当該動作が可能な場合に対して低下させる許容値低下手段を備える。
【0016】
このブーム伸縮段数切替制御装置は、上記の許容値低下手段を備える。よって、自動切替手段の動作が禁止されるとき、すなわち、各可動ブームが正規の伸長量とは異なる状態(またはその可能性がある状態)のとき、クレーン作業を行うことを抑制できる。
【0017】
第4の発明に係るブーム伸縮段数切替制御装置は、伸縮ブームを構成する複数の可動ブームのうち伸縮させる当該可動ブームを切り替える制御装置であり、伸縮させる前記可動ブームを正規のブーム伸縮順序に従って自動的に切り替える自動切替手段と、伸縮させる前記可動ブームを手動で切り替える手動切替手段と、複数の前記可動ブームそれぞれの伸長量を記憶する可動ブーム伸長量記憶手段と、を備える。さらに、前記可動ブーム伸長量記憶手段で記憶された前記伸長量と、前記正規のブーム伸縮順序で複数の前記可動ブームを伸縮させた場合の当該可動ブームそれぞれの正規の伸長量と、が異なる場合は、これらが全て等しい場合に対してモーメントリミッタに設定される吊荷重の許容値を低下させる許容値低下手段を備える。
【0018】
上記の構成では、手動切替手段から自動切替手段に切り替わっても、各可動ブームが正規の伸長量とは異なる状態であれば、モーメントリミッタに設定される吊荷重の許容値を許容値低下手段が低下させる。したがって、各可動ブームが正規の伸長量とは異なる状態のまま、クレーン作業を行うことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】伸縮ブーム及び油圧回路の模式図である。
【図2】図1に示す油圧回路を制御するための制御装置1等を表す電気ブロック図である。
【図3】図2に示す制御装置1による制御のフローチャートである。
【図4】図3に示す自動切替手段S10のフローチャートである。
【図5】第2実施形態の図3相当図である。
【図6】第3実施形態の図3相当図である。
【図7】第4実施形態の図3相当図である。
【図8】第4実施形態の図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、(1)伸縮ブーム10及びこの伸縮ブーム10を伸縮させる油圧回路20(図1参照)、(2)この油圧回路20を制御するための制御装置1(ブーム伸縮段数切替制御装置)周辺の電気システム(図2参照)、及び(3)制御装置1によるブーム伸縮段数切替制御(図3及び図4参照)について説明する。
【0021】
(伸縮ブーム及び油圧回路)
図1に、制御装置1で制御する伸縮ブーム10および油圧回路20の模式図を示す。
【0022】
伸縮ブーム10は、クレーンに用いる箱型ブームであり、複数のブームが入れ子状に配置される。伸縮ブーム10は、クレーン本体(図示なし)に取り付けられる基端側の1つの固定ブーム11(基本ブーム、1段ブームともいう)と、固定ブーム11の先端側に設けられる複数の可動ブーム12とを備える。複数の可動ブーム12は複数の伸縮シリンダ16及び18により伸縮される。
【0023】
可動ブーム12は、伸縮ブーム10を構成し、伸縮自在に配置されたブームである。可動ブーム12は基端側から先端側へ順に、2段ブーム12b、3段ブーム12c、4段ブーム12d、及び5段ブーム12eを備える。なお、可動ブーム12の段数は変更しても良い。
【0024】
伸縮シリンダ16及び18は、各可動ブーム12を伸縮させる部材である。伸縮シリンダ16及び18はそれぞれ2段伸縮式である。
伸縮シリンダ16は、2段ブーム12bと3段ブーム12cとを固定ブーム11(1段ブーム)に対して伸縮させる。伸縮シリンダ16の先端部16aは固定ブーム11に、中間部16bは2段ブームに、基端部16cは3段ブーム12cにそれぞれ固定される。
伸縮シリンダ18は、4段ブーム12dと5段ブーム12eとを3段ブーム12cに対して伸縮させる。伸縮シリンダ18の先端部18cは3段ブーム12cに、中間部18dは4段ブーム12dに、基端部18eは5段ブーム12eにそれぞれ固定される。
【0025】
油圧回路20は、複数の可動ブーム12のうち所定の段数を伸長または縮小させる。すなわち、伸縮シリンダ16及び18それぞれの各段のうち、所定の伸縮シリンダの所定の段数を伸長または縮小させる。油圧回路20は、この回路に圧油を供給するポンプ20Pと、作動油を貯留するタンク20Tとを備える。また、油圧回路20は、ポンプ20Pの下流側(以下、ポンプ20Pに対する下流側を単に「下流側」という)に接続される伸縮切替弁21と、伸縮切替弁21の下流側に接続されるシリンダ切替弁22と、シリンダ切替弁22の下流側にそれぞれ接続されるシリンダ段数切替弁26及び28とを備える。シリンダ段数切替弁26及び28の下流側には、伸縮シリンダ16及び18が接続される。伸縮シリンダ16及び18から吐出される作動油は、伸縮切替弁21を介してタンク20Tへ戻る。
【0026】
各切替弁21、22、26及び28の機能は以下の通りである。伸縮切替弁21は、伸縮シリンダ16及び18の伸長と縮小とを切り替える弁である。シリンダ切替弁22は伸縮シリンダ16及び18のうち、伸縮させるシリンダを切り替える弁である。シリンダ段数切替弁26及び28は、伸縮シリンダ16及び18の各段数のうち伸縮させる段数を切り替える弁である。
【0027】
(電気システム)
図2に、油圧回路20(図1参照)を制御するための制御装置1周辺の電気ブロック図を示す。
【0028】
制御装置1(ブーム伸縮段数切替制御装置)は、図1に示す伸縮ブーム10を構成する複数の可動ブーム12(2段ブーム12b〜5段ブーム12e)のうち伸縮させる1つの可動ブーム12の段数(選択段数)の切り替えを行う。なお、制御装置1は具体的には上部クレーン系コントローラである。すなわち制御装置1は、伸縮ブーム10の伸縮だけでなく、伸縮ブーム10の起伏、上部旋回体(図示なし)の旋回、巻上げ等様々な動作の制御を行っても良い。図2に示すように、制御装置1には、各切替弁21、22、26及び28、ブーム伸縮操作レバー31、伸縮切替スイッチ32、ブーム段数切替許可スイッチ33、伸縮ブーム長さ検出手段36、負荷検出手段37、及びモーメントリミッタ38が接続される。
【0029】
ブーム伸縮操作レバー31は、伸縮ブーム10(図1参照)の伸縮を指示する。レバーで伸操作をすると、ブーム伸操作信号(PUT)31aが制御装置1へ出力される。レバーで縮操作をすると、ブーム縮操作信号(PDT)31bが制御装置1へ出力される。制御装置1は、ブーム伸縮操作レバー31から入力された信号に基づき、切替信号21sを伸縮切替弁21へ出力する。これにより伸縮切替弁21が切り替わる。
【0030】
伸縮切替スイッチ32は、自動切替手段S10と手動切替手段S20と(図3参照。後述)を切り替えるスイッチであり、クレーンの運転室内(図示なし)に設けられる。自動切替手段S10(図3参照)を選択すると、自動切替信号32aが制御装置1へ出力される。手動切替手段S20(図3参照)を選択する場合は、オペレータは伸縮切替スイッチ32で選択段数を選択する。そして、選択されている段数に応じた手動切替信号32bが制御装置1へ出力される。
【0031】
ブーム段数切替許可スイッチ33は、自動切替手段S10(図3参照)が動作している場合であって、選択段数の切り替えを許可(後述)するときに押すスイッチである。ブーム段数切替許可スイッチ33は、例えばブーム伸縮操作レバー31の先端部(図示なし)に取り付けられ、オペレータがレバー操作を行いながら押すスイッチである。このスイッチを押すと、許可信号33aが制御装置1へ出力される。
【0032】
伸縮ブーム長さ検出手段36は、伸縮ブーム10(図1参照)全体の長さを検出する装置である。伸縮ブーム長さ検出手段36は、検出した長さに応じた伸縮ブーム長さ信号36aを制御装置1へ出力する。
【0033】
負荷検出手段37は、伸縮ブーム10に掛かる負荷(吊荷重)を検出する装置である。負荷検出手段37は、検出した負荷に応じた負荷信号37aを制御装置1へ出力する。
【0034】
モーメントリミッタ38は、伸縮ブーム長さ検出手段36、負荷検出手段37、ブーム角度検出器(図示なし)等で検出された値に基づいてクレーンの転倒や過負荷等を防止する装置である。モーメントリミッタ38には各可動ブーム12(図1参照)が正規の伸長量であることを前提として吊荷重などの許容値が設定されている。この許容値は所定の場合に低下させる(後述)。負荷検出手段37で検出された値が許容値より大きい場合は、モーメントリミッタ38から停止信号38aが制御装置1へ出力され、吊上げ動作を停止させる。なお、伸縮ブーム長さ検出手段36、及び負荷検出手段37は、モーメントリミッタ38を介して制御装置1に接続しても良い。
【0035】
シリンダ切替弁22、シリンダ段数切替弁26及び28は、制御装置1から出力される切替信号22s、26s、及び28sにより切り替えられる。この切り替えは以下のように制御される。
【0036】
(ブーム伸縮段数切替制御)
図3及び図4に、制御装置1での制御のフローチャートを示す。なお、以下のルーチンは所定の短時間ごとに繰り返し実行される。
【0037】
制御装置1でのブーム伸縮段数切替制御の概略は以下の通りである。図3に示すように、選択段数を自動で切り替える自動切替手段S10と、選択段数を手動で切り替える手動切替手段S20とを備える。手動切替手段S20を用いて正規のブーム伸縮順序と異なる順序で可動ブーム12(図1参照)を伸縮させた場合は、自動切替手段S10の動作が禁止される(自動切替禁止手段S30)。伸縮ブーム10全体を最短または最長にすれば上記禁止が解除される(自動切替禁止解除手段S40)。
【0038】
ステップS1は、ブーム伸縮段数切替制御の最初のステップである。ステップS1では、伸縮切替スイッチ32(図2参照)で自動切替手段S10が選択されているか(自動切替信号32aが制御装置1へ入力されているか)否かが判断される。(Y)自動切替手段S10が選択されているときはステップS2へ進む。(N)手動切替手段S20が選択されているときは手動切替手段S20へ進む。なお、上記「(Y)」及び「(N)」の文字は、図3に示すフローチャート中の流れ線に付した文字と対応する(以下同様)。
【0039】
ステップS2では、自動伸縮切替不可フラグF1(後述)が「OFF」か否かが判断される。(Y)フラグF1が「OFF」(初期状態では「OFF」)のときは自動切替手段S10へ進む。(N)フラグF1が「ON」のときは手動切替手段S20へ進む。すなわち、オペレータが伸縮切替スイッチ32(図2参照)で自動切替手段S10を選択したとしても、自動伸縮切替不可フラグF1が「ON」であれば、自動切替手段S10が動作しない。なお、ステップS1とS2とをまとめてステップS0とし、ステップS0から手動切替手段S20へ進む場合をS0a、ステップS0から自動切替手段S10へ進む場合をS0bとする。
【0040】
(自動切替手段)
自動切替手段S10は、正規のブーム伸縮順序に従って選択段数を自動的に切り替えるモード(ルーチン)である。自動切替手段S10は通常のクレーン作業時に用いられる。
【0041】
この自動切替手段S10は、図4に示すように、(1)手動切替手段S20(図3参照)から自動切替手段S10に切り替わった直後等は選択段数の選択のみ行う(ステップS12及びS13)。(2)その後は選択段数の切り替えも行う(ステップS14〜S16)。この(1)と(2)との分岐はステップS11で行われる。
【0042】
ステップS11では、自動伸縮切替制御フラグF2(後述)が「ON」か否かが判断される。(N)フラグF2が「OFF」のときはステップS12へ進む。(Y)フラグF2が「ON」のときはステップS14へ進む。
【0043】
自動伸縮切替制御フラグF2は次のように動作する。初期状態では「OFF」である。図3に示すように、手動切替手段S20が動作すると「OFF」となる(ステップS21)。手動切替手段S20から自動切替手段S10に切り替わった直後は「OFF」のままである。図4に示すように、自動切替手段S10が連続して2回以上動作する場合の2回目以降の動作時はフラグF2は「ON」となる(ステップS13)。自動切替手段S10の動作が継続する間はフラグF2の「ON」状態も継続する。
【0044】
ステップS12では、伸縮ブーム10(図1参照)の長さ(伸縮ブーム長さ信号36a(図2参照))から選択段数が決定される。ステップS12では下記(a)〜(d)の条件を満たすか否かが判断される。判断は、下記(a)〜(d)の順で行われる。いずれかの条件に該当した場合は、「:」の後に記載の選択段数を選択する。
(a)伸縮ブーム長さ<2段長さ+α : 2段ブーム12bを選択
(b)伸縮ブーム長さ<3段長さ+α : 3段ブーム12cを選択
(c)伸縮ブーム長さ<4段長さ+α : 4段ブーム12dを選択
(d)上記以外 : 5段ブーム12eを選択
なお、上記「n段長さ」(n=2〜4)とは、図1に示すn段ブーム及びn段ブームよりも基端側の可動ブーム12を最長にするとともに、n段ブームよりも先端側の可動ブーム12を最短にしたときの伸縮ブーム10全体の長さである。また、上記「α」は例えば0.5mなどである。
【0045】
このステップS12で選択段数を選択した後は、図4に示すように、ステップS13へ進み、自動伸縮切替制御フラグF2を「ON」に設定する。その後、ステップS17へ進む。
【0046】
ステップS14〜S16では次のように動作する。
ブーム段数切替許可スイッチ33(図2参照)が「OFF」から「ON」になったとき(許可信号33aが立ち上がったとき)(ステップS14の(Y))、かつ、伸縮ブーム10(図1参照)の長さが選択段数切替範囲(後述)になったときは、伸縮方向に応じて選択段数を切り替える(ステップS15)。
ブーム段数切替許可スイッチ33(図2参照)が「OFF」から「ON」にならないときは(ステップS14の(N))、選択段数を切り替えない(ステップS16)。
上記いずれの場合も、ステップS17へ進む。
【0047】
このように、ブーム段数切替許可スイッチ33(図2参照)を操作してはじめて選択段数が切替わる(言わば「半自動」で選択段数を切り替える)。よって、オペレータの意図を反映させながら選択段数を切り替えることができる。なお、単に自動的に選択段数が切り替わる場合はオペレータの意図しない動作が生じる場合がある。例えば、選択段数の切り替え時に可動ブーム12(図1参照)の伸縮が減速する、または、可動ブーム12(図1参照)同士が衝突してショックが生じる。
【0048】
また、上述したように、ブーム段数切替許可スイッチ33(図2参照)はブーム伸縮操作レバー31(図2参照)に設けられる。よって、ブーム段数切替許可スイッチ33の操作は、ブーム伸縮操作レバー31の操作とともに行える。したがって、オペレータの操作効率を損なうことがない(操作負荷がかからない)。
【0049】
ステップS15では、伸縮ブーム10(図1参照)の長さ(伸縮ブーム長さ信号36a(図2参照))から選択段数を決定する。伸縮ブーム10(図1参照)の長さが選択段数切替範囲内であれば、選択段数を切り替える。具体的には下記(a)〜(g)の条件を満たすか否かが判断される。判断は、下記(a)〜(g)の順で行われる。いずれかの条件に該当した場合は、「:」の後に記載の選択段数を選択する。
(a)伸縮ブーム長さ<2段長さ−α : 2段ブーム12bを選択
(b)伸縮ブーム長さ<2段長さ+α : 2段と3段とを切替
(c)伸縮ブーム長さ<3段長さ−α : 3段ブーム12cを選択
(d)伸縮ブーム長さ<3段長さ+α : 3段と4段とを切替
(e)伸縮ブーム長さ<4段長さ−α : 4段ブーム12dを選択
(f)伸縮ブーム長さ<4段長さ+α : 4段と5段とを切替
(g)上記以外 : 5段ブーム12eを選択
なお上記(b)(d)(f)については、伸長時は1段先端側の可動ブーム12(図1参照)へ切り替える。縮小時は1段基端側の可動ブーム12(図1参照)へ切り替える。また、上記「α」は例えば0.5mなどである。
【0050】
ステップS17では、上記のように選択した選択段数に応じた切替信号を出力する(出力パターンを決定する)。すなわち図2に示すように、制御装置1から、各切替信号21s、22s、26s、及び28sを、各切替弁21、22、26及び28へ出力する。そして図3に示す「END」へ進み、ブーム伸縮段数切替制御のルーチンを終了する。
【0051】
(手動切替手段)
手動切替手段S20は、図3に示すように、選択段数を手動で切り替えるモードである。すなわちオペレータが選択段数を任意に個別選択するモードである。手動切替手段S20は、伸縮ブーム10のメンテナンス時(または修理時、点検時など)に用いる。
【0052】
この手動切替手段S20では、伸縮切替スイッチ32(図2参照)が手動切替手段S20を選択している場合(1)と、自動切替手段S10を選択している場合(2)とで動作が異なる。
上記(1)の場合は、伸縮切替スイッチ32で選択された段数を選択段数として決定する。すなわち図2に示すように、制御装置1は、入力された手動切替信号32bに応じて、各切替信号21s、22s、26s、及び28sを、各切替弁21、22、26及び28へ出力する。
上記(2)の場合(すなわち、伸縮切替スイッチ32で、図4に示す自動切替手段S10を選択はしているが、自動伸縮切替不可フラグF1が「ON」であるため、自動切替手段S10が動作しない場合)は、各切替信号(図2参照)を出力しない。
そして、上記(1)(2)いずれの場合でもステップS21へ進む。
【0053】
ステップS21では、図3に示すように、自動伸縮切替制御フラグF2を「OFF」にする。そして、自動切替禁止手段S30へ進む。
【0054】
自動切替禁止手段S30は、所定の場合(ステップS31)に自動切替手段S10の動作を禁止する(ステップS32)ステップである。
【0055】
ステップS31では、正規のブーム伸縮順序と異なる順序で(選択ミス状態で)可動ブーム12(図1参照)を伸縮させたか否かが判断される。(Y)選択ミス状態で伸縮操作をしたときはステップS32へ進み、自動伸縮切替不可フラグF1を「ON」にする。すなわち、そのままでは自動切替手段S10が動作しないようにする。その後、自動切替禁止解除手段S40へ進む。(N)選択ミス状態での伸縮操作をしないとき(伸縮操作をしていない場合、または、伸縮操作はしたが正規のブーム伸縮順序に従った場合)は、自動切替禁止解除手段S40へ進む。
【0056】
また、ステップS31での選択ミス状態か否かの判断は、選択段数(手動で選択した段数)と伸縮ブーム10の長さとを比較して行う。すなわち、ステップS12(図4参照)で選択されるべき選択段数と、手動で選択された段数とが異なる場合、選択ミス状態であると判断する。なお、選択ミス状態では原則、モーメントリミッタ38(図2参照)が伸縮操作を自動停止させる(図2に示す停止信号38aが制御装置1へ出力される)。しかし、モーメントリミッタ38に設けられた自動停止解除スイッチ(図示なし)を「解除」とすれば、選択ミス状態でも可動ブーム12(図1参照)の伸縮操作が可能となる。
【0057】
自動切替禁止解除手段S40では、所定の場合(ステップS41)に、上記の禁止を解除する(ステップS42)。
【0058】
ステップS41では、手動切替手段S20を用いて伸縮ブーム10(図1参照)を最短(基本長)または最長のいずれかにしたか否かが判断される。(Y)最短または最長にした場合はステップS42へ進み、自動伸縮切替不可フラグF1を「OFF」にする。すなわち、自動切替手段S10の動作の禁止を解除する。その後「END」へ進む。(N)伸縮ブーム10が最短でも最長でもない場合は「END」へ進む。
【0059】
(本実施形態のブーム伸縮段数切替制御装置の特徴)
この制御装置1は、図3に示すように、自動切替禁止手段S30を備える。ここで、手動切替手段S20を動作させるとともに正規のブーム伸縮順序と異なる順序で(選択ミス状態で)可動ブーム12(図1参照)を伸縮させた場合は、各可動ブーム12が正規の伸長量とは異なる(異伸縮状態である)可能性がある。この場合に、自動切替禁止手段S30により自動切替手段S10の動作が禁止される(ステップS32)。
【0060】
また、この制御装置1は、自動切替禁止解除手段S40を備える。ここで、手動切替手段S20を動作させるとともに伸縮ブーム10全体を最短または最長にした場合は、各可動ブーム12は必ず正規の伸長量となる。この場合に、自動切替禁止解除手段S40により自動切替手段S10の動作の禁止が解除される(ステップS42)。
【0061】
また、オペレータは自動切替手段S10を動作させて(言わば機械任せで)クレーン作業を行うのが通常である。よって、上記のように自動切替手段S10の動作が禁止される(ステップS32)結果、オペレータは異伸縮状態であることに気づき易く、クレーン作業を行うことが抑制される。したがって、各可動ブーム12が正規の伸長量とは異なる可能性がある状態(異伸縮状態の可能性がある状態)のまま、自動切替手段S10を用いてクレーン作業を行うこと(オペレータが勘違いをすること)を抑制できる。
【0062】
(第2実施形態)
図5に第2実施形態のフローチャート(図3相当図)を示す。第1実施形態との相違点は以下の点である。各可動ブーム12(図1参照)の伸長量を記憶する可動ブーム伸長量記憶手段S250、および、この伸長量を補正するステップS245を備える。また、自動切替禁止解除手段S240では、異伸縮状態とは異なる場合は(ステップS246)自動切替手段S10の動作を可能とする(ステップS42)。
【0063】
可動ブーム伸長量記憶手段S250では、複数の可動ブーム12(図1参照)それぞれの伸長量を記憶する。この伸長量は、伸縮ブーム10(図1参照)全体の長さ変化(図2に示す伸縮ブーム長さ信号36aの変化)と選択段数に基づいて求める。可動ブーム伸長量記憶手段S250は、自動切替手段S10を経た場合(すなわち異伸縮状態がない場合)も実行される。この場合は、選択段数よりも基端側の可動ブーム12(図1参照)の長さを伸縮ブーム10全体の長さから引くことで選択段数の伸長量を求めても良い。そして、自動切替禁止解除手段S240へ進む。
【0064】
ステップS245では、伸縮ブーム10(図1参照)の長さが最短または最長の場合(ステップS41)、可動ブーム伸長量記憶手段S250に記憶されている各可動ブーム12(図1参照)の伸長量を補正する。(1)伸縮ブーム10(図1参照)の長さを最長にしたときは、可動ブーム12(図1参照)の全ての段数の伸長量を各可動ブーム12の長さの100%とする。(2)伸縮ブーム10の長さを最短にしたときは、可動ブーム12の全ての段数の伸長量を各可動ブーム12の長さの0%とする。上記(1)、(2)いずれの場合でもステップS246へ進む。
【0065】
ステップS246では、異伸縮状態か否かを判断する。すなわち、可動ブーム伸長量記憶手段S250で記憶された各可動ブーム12(図1参照)それぞれの伸長量と、正規の伸長量と、が全て等しいか否かを判断する。
【0066】
異伸縮状態か否かの判断は具体的には次のように行う。可動ブーム伸長量記憶手段S250で記憶された各可動ブーム12(図1参照)の伸長量を基端側から先端側へ順に調べていく。伸長量が100%(±α(αは例えば0.5m))になっていない段よりも先端側の段で伸び量が所定量(例えば0.5m)を超えていれば異伸縮状態であると判断する。(Y)異伸縮状態がないときはステップS42へ進み、自動伸縮切替不可フラグF1を「OFF」にして自動切替手段S10の動作禁止を解除する(元々「OFF」であった場合、その状態を維持する)。その後「END」へ進む。(N)異伸縮状態があるときはそのまま「END」へ進む。
【0067】
(第2実施形態のブーム伸縮段数切替制御装置の特徴)
この制御装置1の自動切替禁止解除手段S240は、伸縮ブーム10(図1参照)が最短または最長でなくても、各可動ブーム12が正規の伸長量である場合に(ステップS246)、自動切替手段S10の動作の禁止を解除する(ステップS42)。したがって、伸縮ブーム10(図1参照)を最短または最長にしたときにのみ自動切替手段S10の動作の禁止が解除される場合に比べ、短時間で前記禁止を解除できる。
【0068】
(第3実施形態)
図6に第3実施形態のフローチャート(図3相当図)を示す。第2実施形態との相違点は以下の点である。自動切替禁止解除手段S340では、異伸縮状態がある時は(ステップS246)、吊荷重のインタロックをかける(許容値低下手段S351)。また、異伸縮状態がないときは、このインタロックを解除する(ステップS352)。
【0069】
自動切替禁止解除手段S340のステップS246では、(N)異伸縮状態があるときは、許容値低下手段S351へ進む。(Y)異伸縮状態がないときは、ステップS42へ進む。
【0070】
許容値低下手段S351では、異伸縮状態の場合(ステップS246の(N))に吊荷重のインタロックをかける。すなわち、モーメントリミッタ38(図2参照)に設定される吊荷重の許容値を、自動切替手段S10が動作可能な場合(異伸縮状態でない場合)に対して低下させる(図2に示すモーメントリミッタ38から許容値低下指示信号338bを制御装置1へ出力する)。図6に示すように、吊荷重の許容値は具体的には例えば0tに設定する。これにより、吊荷を吊るクレーン作業が確実にできなくなる。可能な作業は伸縮ブーム10(図1参照)の伸縮に限定される。なお、吊荷重の許容値を、伸縮ブーム10(図1参照)の破損を招かないレベルの一定値に設定しても良い。
【0071】
ステップS352では、異伸縮状態でない場合に(ステップS246の(Y))、モーメントリミッタ38(図2参照)に設定される吊荷重の許容値を、通常(異伸縮状態でない場合)に戻す。
【0072】
(第3実施形態のブーム伸縮段数切替制御装置の特徴)
この制御装置1は、許容値低下手段S351を備える。よって、自動切替手段S10の動作が禁止されるとき、すなわち、各可動ブーム12(図1参照)が正規の伸長量とは異なる状態(異伸縮状態)またはその可能性がある状態のとき、吊荷を吊るクレーン作業を行うことを抑制できる。
【0073】
なお、上述したように、自動切替手段S10の動作が禁止されると、その結果としてオペレータは異伸縮状態に気づき、異伸縮状態でのクレーン作業が抑制される。一方で本実施形態の自動切替手段S10では、オペレータの意思にかかわらず、異伸縮状態のまま吊荷を吊るクレーン作業を行うことを抑制できる。
【0074】
(第4実施形態)
図7及び図8に第4実施形態のフローチャート(図3及び図4相当図)を示す。第3実施形態との相違点は以下の点である。図7に示すように、本実施形態は自動切替禁止手段S30(図3参照)を備えない。すなわち、伸縮切替スイッチ32(図2参照)で自動切替手段S410を選択すれば自動切替手段S410が動作する。自動切替手段S410の動作は自動切替手段S10(図4参照)とは異なる。また、自動切替禁止解除手段S440では、異伸縮状態がないときに(ステップS246)自動伸縮切替制御フラグF2を「ON」にする(ステップS442)。
【0075】
自動切替手段S410は次のように動作する。図8に示すように、(1)異伸縮状態のときは(ステップS11の(N))伸縮ブーム10(図1参照)の長さにかかわらず選択段数を決定する(ステップS418、S419a、及びS419b)。(2)異伸縮状態でないときは(ステップS11の(Y))伸縮ブーム10(図1参照)の長さに基づいて選択段数を決定する(ステップS14〜S16)。上記(1)と(2)とはステップS11で分岐する。
【0076】
ステップS11では、自動伸縮切替制御フラグF2が「ON」か否かが判断される。(N)フラグF2が「OFF」のとき、すなわち異伸縮状態のとき(図7に示すステップS442参照)はステップS418へ進む。(N)フラグF2が「ON」のとき、すなわち異伸縮状態でないときは、ステップS14へ進む。
【0077】
ステップS418では、伸縮操作が伸長または縮小のいずれであるか判断される。(N)縮小操作のときはステップS419aへ進む。(Y)伸長操作のときはステップS419bへ進む。
【0078】
ステップS419aでは、伸縮ブーム10(図1参照)の長さにかかわらず、先端側の可動ブーム12(図1参照)から順に選択段数を選択する。そして縮小している可動ブーム12(図1参照)が縮小しなくなった時点で(伸縮ブーム長さ信号36a(図2参照)が変化しなくなったことを検出した時点で)1段基端側の段を選択する。
具体的には以下の通りである。図1に示すように、最も先端側の可動ブーム12である5段ブーム12eをまず縮小させる。5段ブーム12eが完全に縮小することにより長さが所定時間変化しなくなると、次に4段ブーム12dを縮小させる。このような切り替えを先端側から基端側へ向かって順次行う。そして、ステップS17へ進む。
【0079】
ステップS419bでは、伸縮ブーム10(図1参照)の長さにかかわらず、基端側の可動ブーム12(図1参照)から順に選択段数を選択する。そして伸長している可動ブーム12(図1参照)が伸長しなくなった時点で1段先端側の段を選択する。すなわちステップS419aと逆の動作を行う。そして、ステップS17へ進む。
【0080】
(第4実施形態のブーム伸縮段数切替制御装置の特徴)
この制御装置1は、図7に示す手動切替手段S20から自動切替手段S410に切り替わっても、各可動ブーム12(図1参照)が正規の伸長量とは異なる状態であれば(異伸縮状態でなければ)(ステップS246)、モーメントリミッタ38(図2参照)に設定される吊荷重の許容値を許容値低下手段S351が低下させる。したがって、各可動ブーム12(図1参照)が正規の伸長量とは異なる状態のまま(異伸縮状態のまま)、クレーン作業を行うことを抑制できる。
【0081】
(変形例)
制御装置1は、他の装置と組み合わせても良い。例えば、各可動ブーム12(図1参照)が正規の伸長量とは異なる状態(異伸縮状態)である旨や異伸縮状態が解消された旨を運転室内に表示する表示装置(図示なし)を上記の構成に加えても良い。この場合、オペレータが異伸縮状態の有無を知ることができる。よって、異伸縮状態のまま通常のクレーン作業を行うことがより抑制される。
【0082】
図1に示す伸縮ブーム10の段数は様々に変更可能である。また、伸縮シリンダ16及び18で伸縮させる可動ブーム12だけでなく、伸縮ワイヤロープ(図示なし)で伸縮させる可動ブームを備えていても良い。具体的には例えば、5段ブーム12eの先端側に、伸縮ワイヤロープ(図示なし)によりそれぞれ同時に伸縮する6段ブーム及び7段ブームを取り付けても良い。この場合は2段ブーム12b〜5段ブーム12e(図1参照)について上記実施形態の制御を行う。
【符号の説明】
【0083】
1 制御装置(ブーム伸縮段数切替制御装置)
10 伸縮ブーム
12 可動ブーム
38 モーメントリミッタ
S10、S410 自動切替手段
S20 手動切替手段
S30 自動切替禁止手段
S40、S240、S340 自動切替禁止解除手段
S250 可動ブーム伸長量記憶手段
S351 許容値低下手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮ブームを構成する複数の可動ブームのうち伸縮させる当該可動ブームを切り替えるブーム選択段数切替制御装置であって、
伸縮させる前記可動ブームを正規のブーム伸縮順序に従って自動的に切り替える自動切替手段と、
伸縮させる前記可動ブームを手動で切り替える手動切替手段と、
前記手動切替手段を動作させるとともに、前記正規のブーム伸縮順序と異なる順序で前記可動ブームを伸縮させた場合に、前記自動切替手段の動作を禁止する自動切替禁止手段と、
前記手動切替手段を動作させるとともに、前記伸縮ブーム全体を最短または最長にした場合に前記禁止を解除する自動切替禁止解除手段と、を備えるブーム伸縮段数切替制御装置。
【請求項2】
複数の前記可動ブームそれぞれの伸長量を記憶する可動ブーム伸長量記憶手段を備え、
前記自動切替禁止解除手段は、前記可動ブーム伸長量記憶手段で記憶された前記伸長量と、前記正規のブーム伸縮順序で複数の前記可動ブームを伸縮させた場合の当該可動ブームそれぞれの正規の伸長量と、が全て等しい場合に前記禁止を解除する、請求項1に記載のブーム伸縮段数切替制御装置。
【請求項3】
前記自動切替禁止手段により前記自動切替手段の動作が禁止されるときは、モーメントリミッタに設定される吊荷重の許容値を当該動作が可能な場合に対して低下させる許容値低下手段を備える、請求項1または2に記載のブーム伸縮段数切替制御装置。
【請求項4】
伸縮ブームを構成する複数の可動ブームのうち伸縮させる当該可動ブームを切り替えるブーム伸縮段数切替制御装置であって、
伸縮させる前記可動ブームを正規のブーム伸縮順序に従って自動的に切り替える自動切替手段と、
伸縮させる前記可動ブームを手動で切り替える手動切替手段と、
複数の前記可動ブームそれぞれの伸長量を記憶する可動ブーム伸長量記憶手段と、
前記可動ブーム伸長量記憶手段で記憶された前記伸長量と、前記正規のブーム伸縮順序で複数の前記可動ブームを伸縮させた場合の当該可動ブームそれぞれの正規の伸長量と、が異なる場合は、これらが全て等しい場合に対してモーメントリミッタに設定される吊荷重の許容値を低下させる許容値低下手段と、を備えるブーム伸縮段数切替制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−241037(P2011−241037A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113939(P2010−113939)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】