説明

プッシュスイッチ

【課題】 異なる操作力の要望に容易に対応することができるプッシュスイッチを提供する。
【解決手段】 スイッチケース5内に配置されたスイッチ4を押圧操作するための弾性材からなる押圧キャップ2を備えるプッシュスイッチにおいて、押圧キャップ2は、押圧頭部2aと、該押圧頭部の周囲に延出された弾性可動部2bを有し、押圧頭部2aと弾性可動部2bがスイッチケース5の開口から露出した状態でスイッチケース5に固定され、弾性可動部2bに、押圧操作力を調整するための調整部材8が付加されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチケース内に配置されたスイッチを、ゴムなどの弾性材からなる押圧キャップの上部を押すことにより操作するプッシュスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プッシュスイッチ(押釦スイッチ)として、押圧操作されることでタクトスイッチをオン・オフさせる押圧キャップをケースの開口から露出させ、この押圧キャップの下縁から延出されたスカート部(薄肉弾性部)の周縁をケース開口内面に固定して成るものが知られている。
【0003】
このようなプッシュスイッチにおいては、スイッチの種類や用途に応じて操作感の異なるものが求められており、所定の操作感を得るために様々な工夫が施されている。
例えば特許文献1には、押圧操作部と離間して対向配置される基体部に、弾性変形可能なドーム部を備え、ドーム部の中央部に対応した位置に押圧操作部側に突出する押し子を備え、押圧操作部を押すことにより、押し子を介してドーム部が弾性変形可能に構成されたプッシュスイッチにおいて、押し子の表面に適宜の硬質処理部を設けることによって操作力を補強したものが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、上方に突出したプッシュ部を有するスイッチ本体の上面を弾性カバーで覆い、この弾性カバーの上部を押圧することによりプッシュ部を作動させるようにした押釦スイッチにおいて、プッシュ部を囲み、且つプッシュ部周囲のスイッチ本体上面に先端が当接する凸部を弾性カバーの内面に突設し、弾性カバーの上部を押圧することにより、上記凸部を圧縮しながらプッシュ部を作動させるように構成しているものが開示されている。
このような構成によれば、上記凸部の形状や大きさを変えることによって操作力を調整できるので、スイッチの種類や用途などに応じた操作力を得ることが容易になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−177155号公報
【特許文献2】特開平11−134965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のプッシュスイッチでは、プッシュスイッチの内部に設けられる押し子の表面に、紫外線硬化樹脂等の被膜からなる硬質処理部を設けることによって操作力を補強するものであるため、プッシュスイッチを組立後はもはや操作力を調整することができない。
また、特許文献2に記載のプッシュスイッチでは、弾性カバーの内面に設けられる凸部の形状や大きさを変えることによって操作力を調整するものであるため、これもまた、プッシュスイッチを組立後はもはや操作力を調整することができない。
【0007】
また、特許文献1および特許文献2に記載のプッシュスイッチでは、求められる操作力によって異なる押し子や弾性カバーを使用することになるため、操作力が異なるプッシュスイッチにはこれらの部材を共用することができない。
【0008】
そこで本発明は、本体部品を共用しつつ、異なる操作力の要望に容易に対応することができるプッシュスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成すべく為された本発明は、スイッチケース内に配置されたスイッチを押圧操作するための弾性材からなる押圧キャップを備えるプッシュスイッチにおいて、
前記押圧キャップは、押圧頭部と、該押圧頭部の周囲に延出された弾性可動部を有し、前記押圧頭部と前記弾性可動部が前記スイッチケースの開口から露出した状態で前記スイッチケースに固定され、
前記弾性可動部に、押圧操作力を調整するための調整部材が付加されていることを特徴としているものである。
本発明のプッシュスイッチでは、前記調整部材として、リング状の軟質部材を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プッシュスイッチ本体を組み立てた後に、プッシュスイッチの外部に押圧操作力を調整するための調整部材を付加できるため、プッシュスイッチ本体を共用しつつ、異なる操作力の要望に容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態例に係るプッシュスイッチを示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。
【図2】図1のプッシュスイッチに用いられる調整部材を示す断面図である。
【図3】本発明の変形例に係るプッシュスイッチの側面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態例に係るプッシュスイッチを示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)におけるB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明のプッシュスイッチの実施形態例を説明する。
【0013】
(第1の実施形態例)
図1は本例に係るプッシュスイッチを示しており、図1(a)はプッシュスイッチの側面図、図1(b)は図1(a)におけるA−A断面図である。
図1において、1はプッシュスイッチ、2は押圧キャップ、3はスイッチ基板、4はスイッチ、5はスイッチケース、6はストッパ、7は充填材、8は調整部材である。
【0014】
本例のプッシュスイッチ1は、押圧キャップ2を指等により図面下方に押すことにより、スイッチケース5内に配置されているスイッチ4を操作するものであり、例えば図示しない車両用のドアハンドル装置等の開口に取り付けることにより、ドアの施錠もしくは解錠ができるものである。
【0015】
押圧キャップ2は、ゴム等の弾性を有する軟質樹脂で一体成形され、押圧される部位である押圧頭部2aと、押圧頭部2aの周囲に延出された弾性可動部2bと、押圧頭部2aの下方に突出する略円柱状の押圧突起部2cと、弾性可動部2bから延出された固定部2dからなり、固定部2dの下面は開口されている。固定部2dには段差部2eが形成されている。
【0016】
スイッチ基板3は、押圧キャップ2の段差部2eの内側に装着されている。
スイッチ基板3の上には、スイッチ4が配置されている。このスイッチ4は、本体部4aと、押圧突起部2cに対面する操作部4bを有する。操作部4bは、本体部4aから突出し図面上下方向に移動可能に構成され、本体部4a内の図示しない弾性部材により図面上向きに付勢されている。
押圧突起部2cによって操作部4bが下方に押圧されると、スイッチがオンされスイッチ基板3に固定された不図示の接続端子を介して不図示のリード線により外部に信号が伝わる。
【0017】
スイッチケース5は硬質樹脂により筒状に成形され、内側全周に突出する鍔部5aと複数の係止突起5bを有している。
押圧キャップ2は、固定部2dの段差部2eが鍔部5aの下側に係合し、押圧頭部2aと弾性可動部2bがスイッチケース5の開口から露出した状態でスイッチケース5に固定されている。
【0018】
ストッパ6は、硬質樹脂で形成され、スイッチ基板3を押圧キャップ2内に固定するためのものである。
このストッパ6は、押圧キャップ2内にスイッチ基板3の下面から圧入され、スイッチケース5の係止突起5bに係止されている。
ストッパ6を装着した後には、ストッパ6の下面から充填材7を充填して防水性を高めている。
【0019】
調整部材8は、スイッチ4をオンする際に必要とされる押圧頭部2aに掛ける押圧操作力を調整するための部材である。
本例の調整部材8は、押圧キャップ2と同様にゴム等の弾性を有する軟質樹脂でリング状に成形されたものであり、スイッチケース5の開口から突出している弾性可動部2bの周囲に接着や圧入等によって固定されている。
【0020】
次に、本例のプッシュスイッチ1の組み立て手順を簡単に説明する。
まず、不図示のリード線が、スイッチ4を取り付けたスイッチ基板3に半田付けされ、スイッチ基板アッシーが形成される。
一方、押圧キャップ2の固定部2dをスイッチケース5内に挿入し、スイッチケースの鍔部5aと段差部2eを係合させ、ケースアッシーが形成される。
スイッチ基板アッシーは、ケースアッシーの固定部2dの開口に装着される。
ストッパ6は、スイッチケース5の下面開口から挿入され、係止突起5bにて係止される。充填材7がディスペンサによりスイッチケース5の下面開口内に塗布され、充填材が硬化するとプッシュスイッチ本体が完成する。
最後に、適宜の調整部材8を接着して押圧操作力を調整する。
【0021】
以上のような構成を有する本例のプッシュスイッチ1では、押圧キャップ2の押圧頭部2aを指等で押すと、スイッチケース5から突出している弾性可動部2bが、弾性変形する。これにより、押圧突起部2cが操作部4bを押し下げ、スイッチ4がオンされる。
また、スイッチオン状態から操作力を除くと、弾性可動部2bが弾性復元して、押圧突起部2cと操作部4bが初期位置へ戻り、スイッチはオフになり、以後、繰り返し操作が可能となる。
【0022】
スイッチをオンする際に必要とされる押圧頭部2aに掛ける押圧操作力は、例えば押圧キャップ2の弾性可動部2bの形状やスイッチ4の仕様などを変えることによっても変化させることができる。
しかしながら、押圧キャップ2の形状やスイッチ4の仕様などによって押圧操作力を調整した場合には、前述のように、プッシュスイッチを組み立てた後はもはや押圧操作力を調整することができず、また、押圧操作力が異なるプッシュスイッチにはこれらの押圧キャップやスイッチを共用することができない。
【0023】
一方、本例のような調整部材8によって押圧操作力を調整する場合には、プッシュスイッチ本体を組み立てた後に調整部材8を付加することができるため、簡単に押圧操作力を調整することができると共に、プッシュスイッチ本体(調整部材8以外の全ての部品)を共用することもできる。
【0024】
調整部材8による押圧操作力の調整は、弾性係数が異なる材質のものを用いる他にも、例えば図2に示す調整部材8の高さHや厚みTを変化させることによっても簡単に行うことができる。
具体的には、例えば調整部材の無い状態では僅かに押圧操作力が足りない場合には、薄くて背が低い調整部材を用いればよい。また、調整部材の無い状態では押圧操作力がかなり足りない場合には、比較的厚くて背が高い調整部材を用いればよい。
【0025】
なお、本例では調整部材8としてリング状のものを説明したが、例えば平板状のものを用いることもできる。
平板状の調整部材を用いる場合には、押圧操作力が押す方向で大きく変化しない様、例えば図3に示すように、複数の調整部材9を弾性可動部2bの周囲に対称配置するのが好ましい。
【0026】
(第2の実施形態例)
図4は本例に係るプッシュスイッチを示しており、図4(a)はプッシュスイッチの側面図、図4(b)は図4(a)におけるB−B断面図である。
図4において、図1のプッシュスイッチの各部材に対応する部材には、図1と同じ符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0027】
本例と第1の実施形態例との主な違いは、
(1)第1の実施形態例では角筒型のスイッチケースを用いているのに対し、本例では円筒型のスイッチケースを用いている点、
(2)第1の実施形態例の押圧キャップ2は、弾性可動部2bが押圧頭部2aの下縁から下方に延出されているのに対し、本例の押圧キャップ2は、弾性可動部2bが押圧頭部2aから水平方向に延出されている点、
(3)第1の実施形態例の調整部材8は筒状であるのに対し、本例の調整部材8は平板リング状である点、である。
【0028】
本例の調整部材8は、スイッチケース5の開口から露出している弾性可動部2bの上面に接着によって固定されている。
本例においても、第1の実施形態例と同様に、プッシュスイッチ本体を組み立てた後に調整部材8を付加することができるため、簡単に押圧操作力を調整することができると共に、プッシュスイッチ本体(調整部材8以外の全ての部品)を共用することもできる。
【0029】
本例の調整部材8による押圧操作力の調整は、弾性係数が異なる材質のものを用いる他にも、例えば調整部材8の内径と外径及び厚みを変化させることによっても簡単に行うことができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態例を説明したが、本発明はこれらの実施形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜の変更や部品の追加・削除等ができることは言うまでもない。
【0031】
例えば、スイッチケース5がスイッチ基板3を固定できる構造を有する場合には、ストッパ6は必ずしも必要ではない。また、スイッチの防水等が別の手段で確保されるならば、充填材7は必ずしも必要ではない。また、スイッチ4においても任意の構造のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 プッシュスイッチ
2 押圧キャップ
2a 押圧頭部
2b 弾性可動部
2c 押圧突起部
2d 固定部
2e 段差部
3 スイッチ基板
4 スイッチ
4a 本体部
4b 操作部
5 スイッチケース
5a 鍔部
5b 係止突起
6 ストッパ
7 充填材
8、9 調整部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチケース内に配置されたスイッチを押圧操作するための弾性材からなる押圧キャップを備えるプッシュスイッチにおいて、
前記押圧キャップは、押圧頭部と、該押圧頭部の周囲に延出された弾性可動部を有し、前記押圧頭部と前記弾性可動部が前記スイッチケースの開口から露出した状態で前記スイッチケースに固定され、
前記弾性可動部に、押圧操作力を調整するための調整部材が付加されていることを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項2】
前記調整部材は、リング状の軟質部材であることを特徴とする請求項1に記載のプッシュスイッチ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−243479(P2011−243479A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116053(P2010−116053)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000220125)東京パーツ工業株式会社 (122)
【Fターム(参考)】