説明

プッシュ式水門ゲート

【課題】 良好な水密性を有するとともに、容易な水位調整作業を実現するプッシュ式水門ゲートを提供することである。
【解決手段】 水門の両側縁に沿って配置されたL形横断面のアングル材又はコ形横断面のチャンネル材製の一対のガイドレールの溝内に両縁部が収容された扉体(12)と、扉体を昇降させる際に用いられるレバー(16)とを備え、扉体の一方の面(12a)に、パッキンとなるゴム材(14)が取り付けられており、レバーが、押し出すと扉体の一方の面(12a)を水門の縁部に押しつけて扉体を固定し、引き上げると扉体の一方の面(12a)への押しつけが解除されて扉体を自由に昇降できるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、水路に設けられる水門ゲートに関する。より詳細には、本発明は、水位の調整の容易なプッシュ式水門ゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
水路の水位を調整するため、水路の所要箇所に水門ゲートが設置されている。従来、水門ゲートとしては、横長の板を上方から1枚ずつガイドレールに差し込み、ゲートの高さを調整することによって水位を調整する、いわゆる角落とし方式の水門ゲート、スピンドルを回転させることによって昇降するように構成されたスピンドル式水門ゲート等が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、角落とし方式の水門ゲートは、水密性が良くないという課題がある。一方、スピンドル式水門ゲートは、良好な水密性を有するものの、ゲートの下端の高さで水位を調整するため、水位調整時に目視することができず、水位調整作業が容易ではないという課題がある。
【0004】
したがって、本発明は、従来の角落とし方式の水門ゲートやスピンドル式水門ゲートの課題を解決すべく案出されたものであって、良好な水密性を有するとともに、容易な水位調整作業を実現するプッシュ式水門ゲートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載のプッシュ式水門ゲートは、水門の両側縁に沿って配置されたL形横断面のアングル材又はコ形横断面のチャンネル材製の一対のガイドレールの溝内に両縁部が収容された扉体と、前記扉体を昇降させる際に用いられるレバーとを備え、前記扉体の一方の面に、パッキンとなるゴム材が取り付けられており、前記レバーが、押し出すと前記扉体の前記一方の面を前記水門の縁部に押しつけて前記扉体を固定し、引き上げると前記扉体の前記一方の面への押しつけが解除されて前記扉体を自由に昇降できるように構成されていることを特徴とするものである。
【0006】
本願請求項2に記載のプッシュ式水門ゲートは、前記請求項1の水門ゲートにおいて、前記レバーが、細長いプレートで形成され、両端に開口部がそれぞれ設けられた第1部分と、多角形又は楕円形のプレートで形成され、中央に開口部が設けられた第2部分と、前記第1部分の一方の開口部及び前記第2部分の開口部を貫通して延び前記第1部分及び前記第2部分に固定されたシャフト部分と、前記第1部分の他方の開口部にボルトで固定された細長いハンドル部分と、前記シャフト部分の前記第1部分と前記第2部分との間に配置され、前記扉体の他方の面に固定された接続板とを有し、前記シャフト部分が、前記接続板の中央に設けられた開口部を回転可能に貫通しており、前記レバーが、押し出すと、前記レバーの前記第2部分の1つの頂点部又は辺部がガイドレールの溝の内端部に当たり且つ前記レバーの前記第2部分の別の頂点部又は辺部が前記扉体の前記他方の面に当たって前記扉体を前記水門の縁部に押しつけて前記扉体を固定し、引き上げると、前記レバーの前記第2部分の前記1つの頂点部又は辺部がガイドレールの溝の内端部から離れ且つ前記レバーの前記第2部分の前記別の頂点部及び辺部が前記扉体の前記他方の面から離れて前記扉体を自由に昇降できるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のプッシュ式水門ゲートによれば、良好な水密性を保持しつつ、レバーの押し出し/引き上げという簡単な操作で、水位調整を目視した状態で容易に行うことができる。また、本発明のプッシュ式水門ゲートは、構造が簡単であるため、製造コスト、維持コストが安価であり、故障した場合にも容易に修理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係るプッシュ式水門ゲートについて詳細に説明する。図1は、本発明の好ましい実施の形態に係るプッシュ式水門ゲートの正面図、図2は、図1の部分2の拡大斜視図である。図1において全体として参照符号10で示される本発明の好ましい実施の形態に係るプッシュ式水門ゲートは、扉体12を備えている。扉体12は、矩形の全体形状を有しており、好ましくはステンレス鋼板で形成されている。扉体12の一方の面12aの縁部に沿って、パッキンの役目を果たすゴム材14が取り付けられている。
【0009】
プッシュ式水門ゲート10は又、扉体12を昇降させる際に用いられるレバー16を備えている。レバー16は、細長いプレートで形成され、両端に2つの開口部18a、18bが設けられた第1部分18と、六角形のプレートで形成され、中央に開口部20aが設けられた第2部分20と、第1部分18の開口部18a及び第2部分20の開口部20aを貫通して延びたシャフト部分22と、第1部分18の開口部18bにボルト26で固定された細長いハンドル部分24とを有している。なお、第1部分18とシャフト部分22及び第2部分20とシャフト部分22は、それぞれ開口部18a、20aのところで溶接によって堅固に固定されている。
【0010】
シャフト部分22の第1部分18と第2部分20との間には、レバー16と扉体12とを接続するための接続板28が配置されている。接続板28は、中央に開口部28aが設けられた矩形のプレートで形成されており、シャフト部分22が開口部28aを回転可能に貫通している(すなわち、開口部28aの径がシャフト部分22の径よりも大きくなるように形成されている)。接続板28は、扉体12の他方の面12b(ゴム材14が取り付けられている面と反対側の面)に溶接で堅固に固定されている。
【0011】
図3は、プッシュ式水門ゲート10が水門に取り付けられている状態を示した正面図、図4は、図3の線4−4に沿って見た断面図である。プッシュ式水門ゲート10が取り付けられる水門には、両側縁に沿って、L形横断面のアングル材で形成された一対のガイドレールが配置されており、プッシュ式水門ゲート10の扉体12の両縁部並びにレバー16のうち第2部分20が、ガイドレールの溝内に収容されている。
【0012】
次に図5及び図6を参照して、以上のように構成されたプッシュ式水門ゲート10の使用について説明する。プッシュ式水門ゲート10は通常、図5(b)に示されるように、レバー16の第2部分20の1つの頂点部がガイドレールの溝の内端部(一点鎖線で図示)に当たり且つレバー16の第2部分20の別の頂点部が扉体12の面12bに当たって扉体12を水門縁部のコンクリート体の方へ押しつけ(その結果、扉体12の面12aに設けられたゴム材14が水門に押しつけられ)ているため、水門ゲート10が一定の高さのところに位置決めされ固定された状態になっている。一方、水位を調整しようとするときには、図6(a)の矢印で示されるように、レバー16のハンドル部分24を手前(図6(a)において右方)に引き上げる。すると、レバー16の第2部分20の前記1つの頂点部がガイドレールの溝の内端部から離れ且つレバー16の第2部分20の前記別の頂点部が扉体12の面12bから離れるため(図6(b)参照)、扉体12を自由に昇降させることができるようになる。そして、その状態で扉体12を所望の高さに昇降させて水位を調整すると、図5(a)の矢印で示されるように、レバー16のハンドル部分24を押し出して、レバー16の第2部分20の1つの頂点部がガイドレールの溝の内端部に当たり且つレバー16の第2部分20の別の頂点部が扉体12の面12bに当たって扉体12を水門縁部のコンクリート体の方へ押しつけるようにする。すると、扉体12が当該高さのところに位置決めされ固定される。
【0013】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0014】
例えば、前記実施の形態において扉体12が固定されている状態では、レバー16の第2部分20の頂点部がガイドレールの溝の内端部及び扉体12の面12bに当たっているが、第2部分20の辺部がガイドレールの溝の内端部及び扉体12の面12bに当たっていてもよい。また、前記実施の形態では、第2部分20が六角形のプレートで形成されているが、第2部分20を六角形以外の多角形のプレートや楕円形のプレートで形成してもよく、開口部20aが中央以外の箇所に設けられた円形プレートで形成してもよい。さらに、前記実施の形態では、ガイドレールがL形横断面のアングル材で形成されているが、コ形横断面のチャンネル材を用いてガイドレールを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好ましい実施の形態に係るプッシュ式水門ゲートを示した正面図である。
【図2】図1の部分2の拡大斜視図である。
【図3】図1のプッシュ式水門ゲートを水門に取り付けた状態を示した正面図である。
【図4】図3の線4−4に沿って見た断面図である。
【図5】図5(a)は扉体が或る高さのところに位置決めされ固定されている状態を示した図、図5(b)は図5(a)の部分5bの拡大図である。
【図6】図6(a)は扉体が昇降できるようにされている状態を示した図、図6(b)は図6(a)の部分6bの拡大図である。
【符号の説明】
【0016】
10 プッシュ式水門ゲート
12 扉体
14 ゴム材
16 レバー
18 第1部分
20 第2部分
22 シャフト部分
24 ハンドル部分
28 接続板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プッシュ式水門ゲートであって、
水門の両側縁に沿って配置されたL形横断面のアングル材又はコ形横断面のチャンネル材製の一対のガイドレールの溝内に両縁部が収容された扉体と、
前記扉体を昇降させる際に用いられるレバーとを備え、
前記扉体の一方の面に、パッキンとなるゴム材が取り付けられており、
前記レバーが、押し出すと前記扉体の前記一方の面を前記水門の縁部に押しつけて前記扉体を固定し、引き上げると前記扉体の前記一方の面への押しつけが解除されて前記扉体を自由に昇降できるように構成されていることを特徴とする水門ゲート。
【請求項2】
前記レバーが、細長いプレートで形成され、両端に開口部がそれぞれ設けられた第1部分と、多角形又は楕円形のプレートで形成され、中央に開口部が設けられた第2部分と、前記第1部分の一方の開口部及び前記第2部分の開口部を貫通して延び前記第1部分及び前記第2部分に固定されたシャフト部分と、前記第1部分の他方の開口部にボルトで固定された細長いハンドル部分と、前記シャフト部分の前記第1部分と前記第2部分との間に配置され、前記扉体の他方の面に固定された接続板とを有し、前記シャフト部分が、前記接続板の中央に設けられた開口部を回転可能に貫通しており、
前記レバーが、押し出すと、前記レバーの前記第2部分の1つの頂点部又は辺部がガイドレールの溝の内端部に当たり且つ前記レバーの前記第2部分の別の頂点部又は辺部が前記扉体の前記他方の面に当たって前記扉体を前記水門の縁部に押しつけて前記扉体を固定し、引き上げると、前記レバーの前記第2部分の前記1つの頂点部又は辺部がガイドレールの溝の内端部から離れ且つ前記レバーの前記第2部分の前記別の頂点部及び辺部が前記扉体の前記他方の面から離れて前記扉体を自由に昇降できるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の水門ゲート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−37374(P2006−37374A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215104(P2004−215104)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(500174328)中大実業株式会社 (10)