説明

プライボンディング用凸エンボス加工ロール

【課題】 プライに接着強度の高いエンボス加工を施すとともに、エンボス加工により生じる紙粉の排出を容易にしてエンボス凸部間の目詰まりを防止できるプライボンディング用凸エンボス加工ロールを得る。
【解決手段】 ロール本体2の外周面に、ロール本体回転方向Rに対し斜めに横切る直線状のエンボス凸部3とエンボス溝部4とをロール本体回転方向Rに沿って交互に設け、複数枚重ねた衛生用紙にエンボス加工を施して一体化するプライボンディング用凸エンボス加工ロールであって、エンボス凸部3のロール本体回転方向Rに直交する方向のエンボス幅L1を1.5〜4.5mm、ロール本体回転方向Rのエンボス長さL2を2〜5mm、隣接するエンボス凸部3の間隔L3を2〜5mmとし、ロール本体回転方向Rに直交する仮想線K1とエンボス凸部3におけるロール本体回転方向Rを横切る交叉辺3a,3bとのなす角度θ1を25〜70度とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェイシャルティッシュ、トイレットペーパー、紙タオル等の衛生用紙を複数枚重ねたプライの剥がれを防止するために、その縁部にエンボス加工を施すために用いるプライボンディング用凸エンボス加工ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェイシャルティッシュ、トイレットペーパー、紙タオル等の衛生用紙においては、複数枚重ねた積層構造(プライ構造)が多く採用されている。複数枚重ねた衛生用紙(以下プライという。)のプライ剥がれを防止するために、プライにエンボス加工を施し接着して一体化するといったことが多く行われている。
プライにエンボス加工を施す手段として、一般に、ロール本体外周面にエンボス凸部を設けた硬質素材からなる凸エンボス加工ロールと、外面が平滑な硬質素材からなる受けロールが使用され、凸エンボス加工ロールと受けロールとの間にプライを通し、凸エンボス加工ロールを受けロールに押し付け回転させることによりプライにエンボス加工を施している。
【0003】
従来、プライにエンボス加工を施す凸エンボス加工ロールとして、ロール本体外周面に、ロール幅方向にロール本体回転方向に沿ってエンボス凸部を千鳥状に複数列に設けた凸エンボス加工ロール(例えば、特許文献1参照。)や、ロール本体外周面に1列に、ロール本体回転方向に対し斜めに横切る直線状のエンボス凸部とエンボス溝部とがロール本体回転方向に沿って交互に設けた凸エンボス加工ロール(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−173267号公報
【特許文献2】特許第4450421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記凸エンボス加工ロールにおけるエンボス凸部にあって、その形状、配置パターン、間隔等は、プライの接着に非常に重要な役割を有する。例えば、エンボス凸部の間隔が狭いと、プライの接着頻度が高くなりプライ剥がれが防止できるが、反面、エンボス加工により生じる紙粉がエンボス凸部間に堆積し易く、エンボス凸部間の目詰まりによりプライ接着不良が生じるおそれがある。また、エンボス凸部の間隔が広いと、紙粉がエンボス凸部間から外部に排出し易く、エンボス凸部間の目詰まりによりプライ接着不良が防止できるが、反面、接着頻度が低くなりプライ剥がれが起こるおそれがある。
【0006】
上記、特許文献1に記載された凸エンボス加工ロールでは、ロール本体外周面に、ロール幅方向にロール本体回転方向に沿ってエンボス凸部を千鳥状に複数列に設けたので、エンボス加工時にロール本体幅方向やロール本体回転方向に隣り合うエンボス凸部間から紙粉が排出し難く、エンボス凸部間に堆積して目詰まりを起こし、プライ接着不良が生じてプライ剥がれが起きる恐れがある。
【0007】
また、特許文献2に記載された凸エンボス加工ロールでは、ロール本体外周面にV字状、ハの字状または1列に、ロール本体回転方向に対し斜めに横切る直線状のエンボス凸部とエンボス溝部とをロール本体回転方向に沿って交互に設けることでエッジ部での押圧による接着強化を図っているが、エンボス凸部の形状等とエンボス凸部間への紙粉の堆積目詰まりについて解明されておらず、必ずしも紙粉によるエンボス凸部間の目詰まりを解決できるものとはなっていない。特にローションティッシュペーパー用の原紙は柔軟成分の添加等により紙粉が生じ易く、紙厚の低下及びローション成分によりエンボス効果が発現し難い傾向がある。
【0008】
本発明の目的は、プライに接着強度の高いエンボス加工を施すとともに、エンボス加工により生じる紙粉の排出を容易にしてエンボス凸部間の目詰まりを防止できるプライボンディング用凸エンボス加工ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ロール本体外周面に、ロール本体回転方向に対し斜めに横切る直線状のエンボス凸部とエンボス溝部とがロール本体回転方向に沿って交互に設けられ、複数枚重ねた衛生用紙にエンボス加工を施して一体化するプライボンディング用凸エンボス加工ロールであって、前記エンボス凸部の前記ロール本体回転方向に直交する方向のエンボス幅は1.5〜4.5mm、前記ロール本体回転方向のエンボス長さは2〜5mm、隣接する前記エンボス凸部の間隔は2〜5mmであり、前記ロール本体回転方向に直交する仮想線と前記エンボス凸部における前記ロール本体回転方向を横切る交叉辺とのなす角度は25〜70度であることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記エンボス凸部の頂面は平坦で、ロール本体回転方向に直交する方向の一側に、仮想水平線に対して0〜5度の傾斜を有し、前記エンボス凸部の頂面の傾斜は、ロール本体回転方向と直交する方向にある前記エンボス凸部の両側辺のうち、ロール本体回転方向前方位置にある側辺側が上がり傾斜となっていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の、前記エンボス溝部の底面は平坦で、ロール本体回転方向に直交する方向の一側に、仮想水平線に対して0〜5度の傾斜を有し、前記エンボス溝部の底面の傾斜は、ロール本体回転方向と直交する方向にある前記エンボス溝部の両側辺のうち、ロール本体回転方向前方位置にある側辺側が上がり傾斜となっていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の、前記エンボス溝部の底面は、仮想水平線に対してロール本体回転方向前方側を上り傾斜とする傾斜面となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載のプライボンディング用凸エンボス加工ロールによれば、前記エンボス凸部の前記ロール本体回転方向に直交する方向のエンボス幅が1.5〜4.5mm、前記ロール本体回転方向のエンボス長さが2〜5mm、隣接する前記エンボス凸部の間隔が2〜5mmであり、前記ロール本体回転方向に直交する仮想線と前記エンボス凸部における前記ロール本体回転方向を横切る交叉辺とのなす角度が25〜70度であるので、プライにエンボス加工したとき、プライにエンボス跡がくっきり且つしっかりと付き、プライに接着強度の高いエンボス加工を施すことができる。
また、前記エンボス凸部のパターンによりプライボンディング用凸エンボス加工ロールが回転すると、空気がエンボス凸部間、即ち、エンボス溝部に効果的に誘導されて回転方向前方側から後方側へ流れ、前記エンボス凸部間を流れる空気によりエンボス加工により生じる紙粉をエンボス凸部間から容易に排出させることができ、エンボス凸部間の目詰まりによるプライ接着不良の発生を効果的に防止することができる。
【0014】
請求項2に記載のプライボンディング用凸エンボス加工ロールによれば、請求項1に記載の、前記エンボス凸部の頂面は平坦で、ロール本体回転方向に直交する方向の一側に、仮想水平線に対して0〜5度の傾斜を有し、前記エンボス凸部の頂面の傾斜は、ロール本体回転方向と直交する方向にある前記エンボス凸部の両側辺のうち、ロール本体回転方向前方位置にある側辺側が上がり傾斜となっているので、プライのエンボス加工の際、前記各エンボス凸部の頂面で一気にプライを押圧するのではなく、前記各エンボス凸部の頂面の前方側から徐々に押圧することになり、プライに無理な圧力が加わらず、プライが裂けたり孔が開くといった事態を防止することができる。
【0015】
請求項3に記載のプライボンディング用凸エンボス加工ロールによれば、請求項1又は2に記載の、前記エンボス溝部の底面は平坦で、ロール本体回転方向に直交する方向の一側に、仮想水平線に対して0〜5度の傾斜を有し、前記エンボス溝部の底面の傾斜は、ロール本体回転方向と直交する方向にある前記エンボス溝部の両側辺のうち、ロール本体回転方向前方位置にある側辺側が上がり傾斜となっているので、プライボンディング用凸エンボス加工ロールの回転により、エンボス凸部間に誘導されてロール本体回転方向後方側へ流れる空気は、エンボス凸部間の、即ちエンボス溝部の前方位置にある上がり傾斜側に開口する一側開口部から後方位置にある下り傾斜側に開口する他側開口部へ流れることになり、エンボス凸部間に堆積した紙粉をより確実に排出させることができる。
【0016】
請求項4に記載のプライボンディング用凸エンボス加工ロールによれば、請求項3に記載の、前記エンボス溝部の底面は、仮想水平線に対してロール本体回転方向前方側を上り傾斜とする傾斜面となっているので、エンボス凸部間に誘導されて回転方向後方側へ流れる空気により、エンボス凸部間に堆積した紙粉をより一層確実に排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るプライボンディング用凸エンボス加工ロールの実施の形態の一例を示す正面説明図である。
【図2】図1のエンボス凸部のパターンを展開して示す一部拡大説明図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図2のB−B線断面図である。
【図5】図2のC−C線断面図である。
【図6】本例のプライボンディング用凸エンボス加工ロールを使用したプライのエンボス加工を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るプライボンディング用凸エンボス加工ロールを実施するための形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るプライボンディング用凸エンボス加工ロールの実施の形態の一例を示す正面説明図、図2は図1のエンボス凸部のパターンを展開して示す一部拡大説明図、図3は図2のA−A線断面図、図4は図2のB−B線断面図、図5は図2のC−C線断面図、図6は本例のプライボンディング用凸エンボス加工ロールを使用したプライのエンボス加工を示す説明図である。
【0019】
本実施例のプライボンディング用凸エンボス加工ロール1は、外周側が少なくとも鉄、ステンレスなどの硬質素材で構成されているロール本体2の外周面に、ロール本体2の回転方向Rに対し斜めに横切る直線状のエンボス凸部3とエンボス溝部4とがロール本体2の回転方向Rに沿って交互に且つ一列に設けられている。
【0020】
前記エンボス凸部3にあって、回転方向Rに直交する方向のエンボス幅L1は1.5〜4.5mmであり、回転方向Rのエンボス長さL2は2〜5mmであり、隣接するエンボス凸部3,3の間隔L3は2〜5mmであり、さらに、回転方向Rに直交する仮想線K1とエンボス凸部3における回転方向Rを横切る交叉辺3a,3bとのなす角度θ1は25〜70度、より好ましくは30〜60度である(図2参照。)。
【0021】
前記した回転方向Rに直交する方向のエンボス幅L1が1.5mm未満であると、エンボス加工時に集中した圧力がプライに加わり、プライが裂けたり孔が開くことがあり、また、4.5mmを超えるとプライに加わる圧力が分散してプライの接着強度が低くなりプライ剥がれることがあり、また、エンボス凸部3,3間、即ち、エンボス溝部4から紙粉を排出し難くなり、紙粉の堆積が多くなる。
【0022】
また、回転方向Rのエンボス長さL2が2mm未満であると、エンボス加工時に集中した圧力がプライに加わり、プライが裂けたり孔が開くことがあり、また、5mmを超えるとプライに加わる圧力が分散してプライの接着強度が低くなりプライ剥がれが起こることがある。
【0023】
また、隣接するエンボス凸部3,3の間隔L3が2mm未満であると、エンボス溝部4から紙粉を排出し難く紙粉の堆積が多くなり、また、5mmを超えるとプライの接着強度が低くなりプライ剥がれが起こることがある。
【0024】
また、回転方向Rに直交する仮想線K1とエンボス凸部3における回転方向Rを横切る交叉辺3a,3bとのなす角度θ1が25度未満であると、ロール本体2を回転させたとき、空気がエンボス凸部3,3間、即ち、エンボス溝部4に入り難く、エンボス溝部4から紙粉を排出し難く紙粉の堆積が多くなり、また、70度を超えると、エンボス溝部4の溝幅L4が狭くなりエンボス溝部4から紙粉を排出し難く紙粉の堆積が多くなることがある。
【0025】
また、本例では、エンボス凸部3の頂面3cは平坦で、回転方向Rに直交する方向の一側に、仮想水平線K2に対して、仮想水平線K2とエンボス凸部3の頂面3cとのなす角度θ2が0〜5度の傾斜を有し、エンボス凸部3の頂面3cの傾斜は、回転方向Rと直交する方向にあるエンボス凸部3の両側辺3d,3eのうち、回転方向R前方位置にある側辺3d側が上がり傾斜となっている(図3参照。)。
仮想水平線K2とエンボス凸部3の頂面3cとのなす角度θ2が5度を超えると、エンボス加工時に集中した圧力がプライに加わり、プライが裂けたり孔が開くことがあり、また、5mmを超えるとプライに加わる圧力が分散してプライの接着強度が低くなりプライ剥がれることがある。
【0026】
また、本例では、エンボス溝部4の底面4aは平坦で、回転方向Rに直交する方向の一側に、仮想水平線K3に対して、仮想水平線K3とエンボス溝部4の底面4aとのなす角度θ3が0〜5度の傾斜を有し、エンボス溝部4の底面4aの傾斜は、回転方向Rと直交する方向にあるエンボス溝部4の両側辺4b,4cのうち、回転方向R前方位置にある側辺4b側が上がり傾斜となっている(図4参照。)。
仮想水平線K3とエンボス溝部4の底面4aとのなす角度θ3が5度を超えると、エンボス溝部4内、即ち、エンボス凸部3,3間から紙粉を排出し難く紙粉の堆積が多くなることがある。
また、本例では、エンボス溝部4の底面4aは、仮想水平線K4に対して回転方向R前方側を上り傾斜とする傾斜面となっている(図5参照。)。
【0027】
このように構成されたプライボンディング用凸エンボス加工ロール1を使用したプライのエンボス加工は、図6に示すように、プライボンディング用凸エンボス加工ロール1と公知の硬質素材からなる受けロール5を対向させ、プライボンディング用凸エンボス加工ロール1と受けロール5との間にプライ6を送り出し、プライボンディング用凸エンボス加工ロール1と受けロール5とで挟み込んで加圧することによって、プライ6にエンボス加工する。
【0028】
以上のように、本発明に係るプライボンディング用凸エンボス加工ロールによれば、エンボス凸部3の回転方向Rに直交する方向のエンボス幅L1が1.5〜4.5mmであり、回転方向Rのエンボス長さL2が2〜5mmであり、隣接するエンボス凸部3,3の間隔L3が2〜5mmであり、回転方向Rに直交する仮想線K1とエンボス凸部3における回転方向Rを横切る交叉辺3a,3bとのなす角度が30〜60度であるので、プライ6にエンボス加工したとき、プライにエンボス跡がくっきり且つしっかりと付き、プライ6に接着強度の高いエンボス加工を施すことができる。
【0029】
また、エンボス凸部3のパターンによりプライボンディング用凸エンボス加工ロール1が回転すると、空気がエンボス凸部3,3間、即ち、エンボス溝部4に効果的に誘導されて回転方向Rの前方側から後方側へ流れ、エンボス凸部3,3間を流れる空気によりエンボス加工により生じる紙粉をエンボス凸部3,3間から容易に排出させることができる。
【0030】
また、エンボス凸部3の頂面3cは平坦で、回転方向Rに直交する方向の一側に、仮想水平線K2に対して0〜5度の傾斜を有し、エンボス凸部3の頂面3cの傾斜は、回転方向Rと直交する方向にあるエンボス凸部3の両側辺3d,3eのうち、回転方向Rの前方位置にある側辺3d側が上がり傾斜となっているので、プライ6のエンボス加工の際、各エンボス凸部3の頂面3cで一気にプライ6を押圧するのではなく、各エンボス凸部3の頂面3cの前方側から徐々に押圧することになり、プライ6に無理な圧力が加わらず、プライ6が裂けたり孔が開くといった事態を防止することができる。
【0031】
また、エンボス溝部4の底面4aは平坦で、回転方向Rに直交する方向の一側に、仮想水平線K3に対して0〜5度の傾斜を有し、エンボス溝部4の底面4aの傾斜は、回転方向Rと直交する方向にあるエンボス溝部4の両側辺4b,4cのうち、回転方向Rの前方位置にある側辺4b側が上がり傾斜となっているので、プライボンディング用凸エンボス加工ロール1の回転により、エンボス凸部3,3間に誘導されて回転方向Rの後方側へ流れる空気は、エンボス凸部3,3間の、即ちエンボス溝部4の前方位置にある上がり傾斜側に開口する一側開口部7から後方位置にある下り傾斜側に開口する他側開口部8へ流れることになり、エンボス凸部3,3間に堆積した紙粉をより確実に排出させることができる。
【0032】
また、エンボス溝部4の底面4aは、仮想水平線K4に対して回転方向Rの前方側を上り傾斜とする傾斜面となっているので、エンボス凸部3,3間に誘導されて回転方向Rの後方側へ流れる空気により、エンボス凸部3,3間に堆積した紙粉をより一層確実に排出させることができる。
【0033】
つぎに、本発明に係るプライボンディング用凸エンボス加工ロールの実施例及び比較例を挙げ、本発明に係るプライボンディング用凸エンボス加工ロールの特徴について例証する。なお、本発明はこれらの実施例及び比較例によって何等制限されるものではない。
試験は、表1に示す実施例1〜5及び比較例1〜3について、それぞれエンボス跡、紙粉堆積、プライ剥がれについて試験を行った。
実施例1〜4の原紙は、日本製紙クレシア株式会社のカシミヤ(登録商標)製品用原紙を使用した。実施例5の原紙は、日本製紙クレシア株式会社のクリネックス(登録商標)ローション製品用原紙を使用した。比較例1〜3の原紙は、日本製紙クレシア株式会社のカシミヤ(登録商標)製品用原紙を使用した。
試験結果は、表1に示す通りである。
【0034】
【表1】

【0035】
この表1にあって、エンボス跡、紙粉堆積、プライ剥がれの評価は以下のとおりとした。
エンボス跡の評価は、くっきりしっかりしているは◎、形がほぼ明瞭は○、形状が50%以上不明瞭、裂けているは×で示している。
紙粉の発生の評価は、8時間操業で紙粉が殆ど堆積しない◎、4時間操業で紙粉が殆ど堆積しない○、2時間操業で紙粉の堆積が見られない△、2時間未満の操業で紙粉が堆積する×で示している。
プライ剥がれの評価は、200組中剥がれが5組以下◎、10組以下○、20組未満△、20組以上×で示している。
表1の結果から理解できるように、実施例1でエンボスがほぼ明瞭かつ4時間以内での紙粉の堆積がなく、またプライ剥がれが10組以下の結果が得られるが、実施例2に示すとおり、エンボス間隔L3を4mmまで広げると、紙粉の発生が少なくなる。実施例3、4に示すとおり、θ2、θ3に傾斜を設けると、よりエンボスがしっかりと入り、プライ剥がれ防止効果も大きく改善され、紙粉の堆積防止効果も大きい。実施例5では、ローション製品用原紙により紙粉が若干の水分を含むことから、やや紙粉同士が凝集しやすくなり、実施例4に比べて、やや紙粉の堆積がみられるが防止効果は大きい。
比較例1は、エンボス長さL2が短すぎて、プライの結合力が足りない。2時間程度で紙粉の堆積も見られる。
比較例2では、θ1の角度が大きすぎて、紙粉の排出が低下している。
比較例3では、エンボス間隔L3が大きいので紙粉の堆積は見られないがエンボス頻度が少ないのでプライが剥がれやすい。
本発明に係るプライボンディング用凸エンボス加工ロールは、プライに接着強度の高いエンボス加工を施すとともに、エンボス加工により生じる紙粉の排出を容易にしてエンボス凸部間の目詰まりを防止できることが確認できる。
【符号の説明】
【0036】
1 プライボンディング用凸エンボス加工ロール
2 ロール本体
3 エンボス凸部
3a,3b 交叉辺
3c 頂面
3d,3e 側辺
4 エンボス溝部
4a 底面
4b,4c 側辺
5 受けロール
6 プライ
7 一側開口部
8 他側開口部
R ロール本体の回転方向
L1 エンボス幅
L2 エンボス長さ
L3 エンボス凸部の間隔
L4 エンボス溝部の溝幅
K1 仮想線
K2、K3、K4 仮想水平線
θ1 仮想線K1とエンボス凸部の交叉辺とのなす角度
θ2 仮想水平線K2とエンボス凸部の頂面とのなす角度
θ3 仮想水平線K3とエンボス溝部の底面とのなす角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール本体外周面に、ロール本体回転方向に対し斜めに横切る直線状のエンボス凸部とエンボス溝部とがロール本体回転方向に沿って交互に設けられ、複数枚重ねた衛生用紙にエンボス加工を施して一体化するプライボンディング用凸エンボス加工ロールであって、
前記エンボス凸部の前記ロール本体回転方向に直交する方向のエンボス幅は1.5〜4.5mm、前記ロール本体回転方向のエンボス長さは2〜5mm、隣接する前記エンボス凸部の間隔は2〜5mmであり、前記ロール本体回転方向に直交する仮想線と前記エンボス凸部における前記ロール本体回転方向を横切る交叉辺とのなす角度は25〜70度であることを特徴とするプライボンディング用凸エンボス加工ロール。
【請求項2】
前記エンボス凸部の頂面は平坦で、ロール本体回転方向に直交する方向の一側に、仮想水平線に対して0〜5度の傾斜を有し、前記エンボス凸部の頂面の傾斜は、ロール本体回転方向と直交する方向にある前記エンボス凸部の両側辺のうち、ロール本体回転方向前方位置にある側辺側が上がり傾斜となっていることを特徴とする請求項1に記載のプライボンディング用凸エンボス加工ロール。
【請求項3】
前記エンボス溝部の底面は平坦で、ロール本体回転方向に直交する方向の一側に、仮想水平線に対して0〜5度の傾斜を有し、前記エンボス溝部の底面の傾斜は、ロール本体回転方向と直交する方向にある前記エンボス溝部の両側辺のうち、ロール本体回転方向前方位置にある側辺側が上がり傾斜となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプライボンディング用凸エンボス加工ロール。
【請求項4】
前記エンボス溝部の底面は、仮想水平線に対してロール本体回転方向前方側を上り傾斜とする傾斜面となっていることを特徴とする請求項3に記載のプライボンディング用凸エンボス加工ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−14024(P2013−14024A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146544(P2011−146544)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000183462)日本製紙クレシア株式会社 (112)
【Fターム(参考)】