説明

プライマー層付き光拡散板の製造方法及び積層光学部材の製造方法

【課題】他の光学フィルム等との間に空気層を十分に確保できると共に十分な貼合強度を確保できるプライマー層付き光拡散板の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも片面に凹凸面31aが形成された光拡散板31の凹凸面31aを下側に向けて配置せしめ、該下側を向いた凹凸面31aに対して下方側からプライマー液を塗布することによって、プライマー層付き光拡散板を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光学フィルム等を十分な接合力でもって積層することのできるプライマー層付き光拡散板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置としては、例えば液晶セルを備えた液晶パネル(画像表示部)の背面側に面光源装置がバックライトとして配置された構成のものが公知である。前記バックライト用の面光源装置としては、ランプボックス(筐体)内に複数の光源が配置されると共にこれら光源の前面側に光拡散板が配置された構成の面光源装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このようなバックライト用面光源装置では、光拡散板の前面側に(光拡散板と液晶パネルの間に)拡散フィルム、プリズムシート、反射型偏光分離フィルム等の各種光学フィルムが積載配置されることが多いが、近年の液晶表示装置の大型化に伴って面光源装置の組み立て時のハンドリング性が低下してきており、これら光拡散板、光学フィルムを組み付ける際のハンドリング性を向上させることが求められていた。
【0004】
このようなハンドリング性を向上させるために、各種光学フィルム同士を予め一体化した構成とすることが提案されている。例えば、特許文献2では、第1の光偏向シートと第2の光偏向シートとを積層一体化した構成とし、第1の光偏向シートからスペーサ突起を形成しておくことによってこれら光偏向シート同士の間に空気層を存在せしめた構成とすれば、この空気層の存在によって良好な光学性能を確保できることが記載されている。
【特許文献1】特開2004−170937号公報
【特許文献2】特開2006−337753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記後者の従来技術のように一方の光学シートの突起形成面(凹凸面)に他方の光学シートを接着した場合、十分な接着面積を確保できないので、十分な貼合強度が得られ難く剥がれやすいという問題があった。
【0006】
そこで、本発明者は鋭意研究した結果、光拡散板の凹凸面にプライマー層を積層するものとし、該プライマー層に接着剤層を介して光学フィルムを積層一体化することにより、貼合強度に優れた積層光学部材が得られることを見出した。
【0007】
しかるに、光拡散板の凹凸面を上に向けた状態で該凹凸面に上方側からプライマー液を塗布するという一般的な塗布手法でプライマー層を形成すると、プライマー液が光拡散板の凹凸面の底部(凹部)に溜まりやすく、光拡散板と光学フィルム等との間に空気層(空気部)を十分に形成できないという問題、さらには貼合強度向上に貢献する凹凸面の凸部(突起先端部)に十分な量のプライマー液を付与できないという問題があることがわかった。
【0008】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、他の光学フィルム等との間に空気層を十分に確保できると共に十分な貼合強度を確保できるプライマー層付き光拡散板の製造方法及び積層光学部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
[1]少なくとも片面が凹凸面に形成された光拡散板をその凹凸面を下側に向けて配置せしめ、この光拡散板の下側を向いた凹凸面に対して下方側からプライマー液を塗布することを特徴とするプライマー層付き光拡散板の製造方法。
【0011】
[2]前記プライマー液をロール塗布法により塗布する前項1に記載のプライマー層付き光拡散板の製造方法。
【0012】
[3]前記プライマー液をスプレー塗布法により塗布する前項1に記載のプライマー層付き光拡散板の製造方法。
【0013】
[4]光学フィルムの片面に接着剤層が積層されてなる積層フィルムを製作する工程と、
少なくとも片面が凹凸面に形成された光拡散板をその凹凸面を下側に向けて配置せしめ、この光拡散板の下側を向いた凹凸面に対して下方側からプライマー液を塗布する塗布工程と、
前記光拡散板のプライマー液が塗布された凹凸面と前記積層フィルムの接着剤層とが当接するように重ね合わせることによって光拡散板と積層フィルムとを貼合一体化する貼合工程と、を含むことを特徴とする積層光学部材の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
[1]の発明では、光拡散板の下側を向いた凹凸面に対して下方側からプライマー液を塗布するから、プライマー液が光拡散板の凹凸面の底部(凹部)に溜まることを防止できて例えば他の光学フィルム等との間に空気層を十分に確保できると共に、光拡散板の凹凸面の凸部にプライマー液を十分に付与できて例えば他の光学フィルム等との間で十分な貼合強度を確保できる。
【0015】
[2]の発明では、プライマー液をロール塗布法により塗布するから、光拡散板の凹凸面の凸部に選択的にプライマー液を塗布することが可能であり、これによりプライマー液が光拡散板の凹凸面の底部(凹部)に溜まることを十分に防止できて例えば他の光学フィルム等との間に空気層をより十分に確保できると共に十分な貼合強度を確保できるプライマー層付き光拡散板を効率良く製造することができる。
【0016】
[3]の発明では、プライマー液をスプレー塗布法により塗布するから、他の光学フィルム等との間に空気層を十分に確保できると共に十分な貼合強度を確保できるプライマー層付き光拡散板を効率良く製造することができる。
【0017】
[4]の発明では、光拡散板の下側を向いた凹凸面に対して下方側からプライマー液を塗布するから、プライマー液が光拡散板の凹凸面の底部(凹部)に溜まることを防止できて光学フィルムとの間に空気層を十分に確保できると共に、光拡散板の凹凸面の凸部にプライマー液を十分に付与できて光学フィルムとの間で十分な貼合強度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明に係るプライマー層付き光拡散板(33)の製造方法は、少なくとも片面が凹凸面(31a)に形成された光拡散板(31)をその凹凸面(31a)を下側に向けて配置せしめ、この光拡散板(31)の下側を向いた凹凸面(31a)に対して下方側からプライマー液を塗布することを特徴とする。
【0019】
本製造方法の一例を図1を参照しつつ説明する。図1において、(31)は、片面が凹凸面(31a)に形成された光拡散板、(50)は押出機、(51)は塗布ロール、(52)は塗布液槽である。前記塗布ロール(51)は、その一部が、前記塗布液槽(52)内のプライマー液に浸漬されていて、前記押出機(50)から押し出されて移送されてくる光拡散板(31)の下側を向いた凹凸面(31a)に前記塗布ロール(51)の外周面が接触するように配置されており、この塗布ロール(51)は、光拡散板(31)の凹凸面(31a)が塗布ロール(51)の外周面に接触しつつ移送されるのに従動して回転するように構成されている。このように光拡散板(31)の下側を向いた凹凸面(31a)に塗布ロール(51)の外周面が接触することによって光拡散板(31)の下側を向いた凹凸面(31a)に対して下方側からプライマー液を塗布し得るものとなされている。なお、前記押出機(50)の押出前方位置には凹凸付与のためのマットロール(図示省略)が配置されている。
【0020】
しかして、図1に示すように、前記押出機(50)から光拡散板(31)を押出すと、マットロール(図示省略)により溶融押出転写成形が施されて片面が凹凸面(31a)に形成され、該光拡散板(31)は、その凹凸面(31a)を下側に向けた略水平状態で移送され、該光拡散板(31)の下側を向いた凹凸面(31a)に塗布ロール(51)の外周面が接触することによって、該下側を向いた凹凸面(31a)に対して下方側からプライマー液を塗布できるので、このようなプライマー液を塗布した凹凸面(31a)を下側にした状態で乾燥させれば、プライマー液が光拡散板の凹凸面(31a)の底部(凹部)に溜まることを防止できると共に、光拡散板の凹凸面(31a)の凸部にプライマー液を十分に付与することができる(図3参照)。即ち、図3に示すようなプライマー層付き光拡散板(33)を製造することができる。
【0021】
なお、前記図1に示した実施形態では、プライマー液の塗布をロール塗布法により行ったが、特にこのような手法に限定されるものではなく、プライマー液の塗布は、例えば図2に示すようなスプレー塗布装置(53)を用いてスプレー塗布法により行っても良いし、或いはバーコート法、ダイコート法、インクジェット法、サーマルインクジェット法等の他の塗布手法により行っても良い。
【0022】
また、上記実施形態(図1、図2)では、押出機(50)の製造ライン途中に塗布設備(51)(53)を配置せしめて光拡散板(31)の押出に続けてプライマー液の塗布を連続的に行っているが、特にこのような連続的な製造手法に限定されるものではなく、例えば押出機(50)から押し出された光拡散板(31)を所定の大きさに順次カットし、これらカットされた光拡散板(31)に対して1枚づつプライマー液を塗布する(枚葉毎に塗布する)ようにしても良い。
【0023】
また、上記製造方法では、プライマー液の塗布後に乾燥処理を行うのが望ましい。乾燥手法としては、特に限定されるものではないが、例えば自然乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。また、前記乾燥処理は、光拡散板(33)のプライマー液が塗布された凹凸面(31a)を下側にした状態で行うのが好ましい。
【0024】
次に、この発明に係る積層光学部材(3)の製造方法について説明する。光学フィルム(41)の片面に粘着剤を例えばグラビアコート法等により塗布することにより光学フィルム(41)の片面に接着剤層(40)を積層し、積層フィルム(42)を得る(図4参照)。しかして、図4に示すように、上述した製造方法により得られたプライマー層付き光拡散板(33)をプライマー液が塗布された凹凸面(31a)を上に向けて配置せしめ、この光拡散板(33)のプライマー液塗布凹凸面(31a)に、即ちプライマー層(32)積層凹凸面(31a)に前記接着剤層(40)が接触するように光拡散板(33)と積層フィルム(42)とを重ね合わせて挟圧する(プレスする)。これにより光拡散板(33)と光学フィルム(41)とが接着剤層(40)により接着されて、図5に示すような構成の積層光学部材(3)が得られる。
【0025】
即ち、得られた積層光学部材(3)は、上述したプライマー層付き光拡散板(33)のプライマー層(32)に接着剤層(40)を介して光学フィルム(41)が積層一体化されてなる構成であり、図5に示すように、前記光拡散板(31)の凹凸面(31a)の表面の凹凸形状に沿って不規則な略波状に積層されたプライマー層(32)と、光学フィルム(41)に積層された接着剤層(40)との間に空気層(43)が形成されている。即ち、上述した製造方法により得られたプライマー層付き光拡散板(33)を用いているから、プライマー液が光拡散板(31)の凹凸面(31a)の底部(凹部)に溜まることを防止できて光拡散板(31)と光学フィルム(41)との間に空気層(43)が十分に確保されている(図5参照)。また、上述した製造方法により得られたプライマー層付き光拡散板(33)を用いているから、光拡散板(31)の凹凸面(31a)の凸部にプライマー液が十分に付与されており、光拡散板(31)と光学フィルム(41)との間で十分な貼合強度が確保されたものとなる。
【0026】
なお、上記実施形態では、前記接着剤層(40)は、前記光学フィルム(41)の貼合面の略全面に隙間なく積層されている。また、上記実施形態では、前記プライマー層(32)は、前記光拡散板(31)の凹凸面(31a)に対し隙間なく積層されている。
【0027】
上記積層光学部材(3)では、光拡散板(31)の凹凸面(31a)の表面の凹凸形状に沿って積層されたプライマー層(32)と、接着剤層(40)との間に空気層(43)が十分に形成されているから、即ち光拡散板(31)と光学フィルム(41)の間に空気層(43)が十分に形成されているから、この積層光学部材(3)を用いて面光源装置(1)や液晶表示装置(30)を構成すれば、十分な輝度を確保することができる。
【0028】
なお、上記実施形態(図4)では、プライマー層付き光拡散板(33)をプライマー層(32)塗布面を上に向けて配置せしめた状態で挟圧しているが、特にこのような形態に限定されるものではなく、例えば図7に示すように、前記プライマー層付き光拡散板(33)をプライマー層(32)を下側に向けて配置せしめる一方、その下側に、積層フィルム(42)を接着剤層(40)を上側に向けて配置せしめて、光拡散板(33)の凹凸面(31a)に積層されたプライマー層(32)の一部に前記接着剤層(40)が接触するように光拡散板(33)と積層フィルム(42)とを重ね合わせて挟圧するようにしても良い。
【0029】
この発明において、前記光拡散板(31)としては、光拡散機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば透明材料中に光拡散剤が分散されてなる板状体等が用いられる。
【0030】
前記透明材料としては、特に限定されるものではないが、例えば無機ガラス、透明樹脂等が用いられる。前記透明樹脂としては、成形が容易である点で、透明な熱可塑性樹脂が好ましい。前記透明な熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリカーボネート樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
【0031】
前記光拡散剤は、前記透明材料に対して非相溶性で、該透明材料とは異なる屈折率を示し、光拡散板(31)を透過する透過光を拡散させる機能を有する粒子(粉末を含む)であれば特に限定されず、例えば無機材料からなる無機粒子であっても良いし、有機材料からなる有機粒子であっても良い。
【0032】
前記無機粒子を構成する無機材料としては、特に限定されるものではないが、例えばシリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、無機ガラス、マイカ、タルク、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0033】
前記有機粒子を構成する有機材料としては、特に限定されるものではないが、例えばメタクリル系架橋樹脂、メタクリル系高分子量樹脂、スチレン系架橋樹脂、スチレン系高分子量樹脂、シロキサン系重合体等が挙げられる。
【0034】
前記光拡散剤として使用される無機粒子、有機粒子の粒子径は、通常0.1〜50μmである。
【0035】
前記光拡散剤の使用量は、目的とする透過光の拡散の程度により異なるが、透明樹脂100質量部に対して、通常は0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部である。
【0036】
前記光拡散板(31)は、少なくとも片面が凹凸面(31a)に形成されているが、この凹凸面(31a)は、a)不規則な断面形状を備えた十点平均粗さ(Rz)が20〜100μmの凹凸面(31a)に形成されているか(図3参照)、又はb)規則的な断面形状を備えた凹凸面(31a)に形成されている(図7参照)のが、好ましい。このような構成を採用した場合には、光拡散板(31)と光学フィルム(41)との間に空気層(43)を十分に形成することができて、積層光学部材(3)として十分な輝度を確保できる。
【0037】
なお、前者の不規則な断面形状を備えた凹凸面(31a)に形成された構成において、Rzが20μm未満では光拡散板(31)の凹凸面(31a)の底部(凹部)に接着剤層(40)が入り込みやすくなり、空気層(43)の空隙量を十分に確保し難くなるので、好ましくない。また、Rzが100μmを超えると、光拡散板(31)と光学フィルム(41)の貼合強度が低下するので、好ましくない。
【0038】
前記不規則な断面形状を備えた凹凸面(31a)は、例えば次のようにして形成できる。即ち、例えば光拡散板(31)を多層共押出によって製造するに際し、その表層に粒径の大きい粒子(マット化剤)を添加せしめておくことで、少なくとも片面に前記不規則な断面形状の凹凸面(31a)を備えた光拡散板(31)を製造できる。或いは、光拡散板(31)の押出成形時にマットロールを用いて溶融押出転写成形を行うことによって前記不規則な断面形状の凹凸面(31a)を付与することができる。
【0039】
また、後者の規則的な断面形状としては、特に限定されるものではないが、例えばレンチキュラーレンズ形状、波形形状、プリズム形状(図7参照)等が挙げられる。後者の規則的な断面形状を備えた凹凸面(31a)に形成された場合において、凹凸面(31a)の凸部の高さ(凹部の深さ)(H)は、通常、5μm〜1mmであり、隣り合う凸部のピッチ間隔(P)は、通常、3μm〜3.5mmである(図7参照)。また、プリズム形状の場合、頂角(α)は、40〜120°であるのが好ましい(図7参照)。
【0040】
前記光拡散板(31)の厚さ(S)は、通常、0.1〜10mmに設定される。
【0041】
前記プライマー層(32)は、前記光拡散板(31)に対する、他の光学フィルム(41)等の各種部材の接着強度を高めるためのものである。このプライマー層(32)は、光拡散板(31)の下側を向いた凹凸面(31a)に対して下方側からプライマー液が塗布されることによって形成される。
【0042】
前記プライマー液としては、例えば合成樹脂、カップリング剤、高活性化合物、溶剤等を任意に組み合わせて含有してなる液等を例示できるが、特にこれに限定されるものではない。
【0043】
前記プライマー液を構成する合成樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、合成ゴム系樹脂、レゾルシノール系樹脂等が挙げられる。この合成樹脂は、プライマー層(32)としてある程度の厚さを保持し、接着界面の応力緩衝の役割をするものである。中でも、接着強度を十分に向上できる点で、ウレタン系樹脂が好適である。
【0044】
前記プライマー液を構成するカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えばシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等が挙げられる。
【0045】
前記プライマー液を構成する高活性化合物としては、特に限定されるものではないが、例えばイソシアネート、アクリル誘導体等が挙げられる。
【0046】
前記プライマー液を構成する溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えばトルエン、キシレン、酢酸エチル、メチルセルソロブ、メチルエチルケトン等の有機溶剤の他、エマルジョンタイプ、水性タイプのもの等が挙げられる。
【0047】
前記プライマー層(32)の厚さは、乾燥状態で1〜20μmに設定されるのが好ましい。厚さが1μm以上であることで十分な貼合強度を確保できると共に、厚さが20μm以下であることで光拡散板(31)の凹凸面(31a)の凹部がこのプライマー層(32)で埋めつくされることを十分に防止し得て空気層(43)の空隙量を十分に確保できる。
【0048】
なお、上記実施形態では、プライマー層(32)は、前記光拡散板(31)の凹凸面(31a)の全面に形成されていたが、特にこのような形態に限定されるものではなく、例えば光拡散板(31)の凹凸面(31a)に部分的に積層形成された構成であっても良く、この場合には、凹凸面(31a)の少なくとも凸部(突起先端部)にプライマー層(32)が積層されているのが好ましい。
【0049】
前記接着剤層(40)の素材としては、特に限定されるものではないが、例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤のほか、該粘着剤以外のその他の接着剤等が挙げられる。これらの中でも、無色透明の粘着剤を用いるのが、より高品質の表示画像を形成できる点で、好ましい。前記接着剤層(40)としては感圧型接着剤が好適に用いられる。
【0050】
前記接着剤層(40)の厚さ(M)は、1〜30μmの範囲に設定されるのが好ましい。1μm以上であることで十分な貼合強度を確保することができると共に、30μm以下であることで光拡散板(33)の凹凸面の底部(凹部)にこの接着剤層(40)が接触することを十分に防止できて空気層(43)の空隙量を十分に確保できる。中でも、前記接着剤層(40)の厚さ(M)は1〜25μmの範囲に設定されるのが特に好ましい。
【0051】
前記光学フィルム(41)としては、特に限定されるものではないが、例えば拡散フィルム、プリズムフィルム、反射型偏光分離フィルム、位相差フィルム、偏光フィルム等が挙げられる。
【0052】
前記拡散フィルム(41)としては、特に限定されないが、例えば透明樹脂フィルムの片面にビーズをバインダーで固定せしめたフィルム等が挙げられる。前記透明樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、セルロースアシレート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースダイアセテート等が挙げられる。前記ビーズの径は、通常、100μm以下である。
【0053】
前記プリズムフィルム(41)は、通常、透明樹脂材料からなるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、プライマー層付き光拡散板(33)と貼合される側の面とは反対側の面に、例えば微細なプリズムレンズや、微細な凸レンズ、レンチキュラーレンズ等の微細な集光性レンズが全面にわたって設けられたシート等を例示できる。このプリズムフィルムは、光拡散板(31)を拡散しながら透過した透過光を法線方向に集光することにより、前面側を高い輝度で照明するものである。
【0054】
前記プリズムフィルム(41)としては、例えばポリカーボネート樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂を基材とするものが用いられる。前記プリズムフィルム(41)の市販品としては、特に限定されるものではないが、例えば住友スリーエム社製「BEF(Brightness Enhancement Film)」(商品名)(厚さ125μmのポリエステルフィルム上に厚さ30μmのアクリル系樹脂層が形成され、このアクリル系樹脂層の表面に、深さが25μm、溝底部の開き角度が90度のV溝がピッチ間隔50μmで形成されたもの)、積水フィルム社製「エスティナ」(商品名)、GEプラスチックス社製「イルミネックスADFフィルム」(商品名)等が挙げられる。
【0055】
前記反射型偏光分離フィルム(41)は、ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を有する偏光光を反射する性質を有するものである。具体的には、特定振動方向の直線偏光光を透過し、それと直交する振動方向の直線偏光光を反射する反射型直線偏光分離フィルムや、ある回転方向の円偏光を透過し、それと逆の方向に回転する円偏光を反射する反射型円偏光分離フィルムがある。前記反射型直線偏光分離フィルムの市販品としては、例えばスリーエム社製の「DBEF(Dual Brightness Enhancement Film)」(商品名)、日東電工社製の「NIPOX」(商品名)等が挙げられる。
【0056】
前記位相差フィルム(41)は、樹脂フィルムの延伸によって位相差(レターデーション)を持たせたものであり、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ノルボルネン系樹脂等が主に使用される。延伸には公知の方法が採用でき、ロール間延伸のような縦延伸や、テンター延伸のような横延伸が多く用いられる。また、延伸方向は一軸延伸でも良いが、液晶表示装置に使用する際の視野角調整のため、厚み方向の配向を施したものもある。位相差フィルムの位相差値は、所望の特性に合わせて適宜決定されるが、一般には、100〜1000nm の範囲のものが多く用いられる。1/4波長フィルム又は1/2波長フィルムを使用することは、好ましい形態の一つである。前記位相差フィルム(41)の市販品としては、例えば鐘淵化学社製の「エルメック」(商品名)、住友化学社製の「スミカライト」(商品名)等が挙げられる。
【0057】
前記偏光フィルム(41)は、例えば、ポリビニルアルコールに延伸及びヨウ素又は二色性染料による染色を施して該ヨウ素又は二色性染料を吸着配向させたものであり、その配向方向と直交する振動方向の直線偏光光を透過し、配向方向と同じ振動方向の直線偏光光を吸収する。なお、ポリビニルアルコールは、耐水性に劣るため、保護フィルムで被覆されているのが好ましく、このような保護フィルムとしては通常、三酢酸セルロースが使用される。前記偏光フィルム(41)の市販品としては、例えば日東電工社製の「NPF」(商品名)、住友化学社製の「スミカラン」(商品名)等が挙げられる。
【0058】
前記光学フィルム(41)の厚さ(T)は、通常、0.02〜5mmであり、好ましくは0.02〜2mmである。
【0059】
なお、前記積層光学部材(3)の厚さ(Z)は、特に限定されないが、通常、1〜3mmに設定される。
【0060】
なお、上記実施形態の積層光学部材(3)では、光拡散板(33)の片面のみに接着剤層(40)を介して光学フィルム(41)が積層された構成が採用されていたが、特にこのような形態に限定されるものではなく、例えば光拡散板(33)の両面にそれぞれ接着剤層(40)を介して光学フィルム(41)が積層された構成を採用することもできる。この場合、光拡散板(33)の両面は、いずれもプライマー層(32)が設けられているのが好ましく、光拡散板(33)の少なくとも一方の面は、プライマー層(32)が積層されている必要がある。
【0061】
次に、この発明の製造方法で製造された積層光学部材(3)の使用例について説明する。即ち、図6は、前記積層光学部材(3)を用いて構成された液晶表示装置(30)の一実施形態を示したものである。この図6において、(30)は液晶表示装置、(11)は液晶セル、(12)(13)は偏光板、(1)は面光源装置(バックライト)である。前記液晶セル(11)の上下両側にそれぞれ偏光板(12)(13)が配置され、これら構成部材(11)(12)(13)によって画像表示部としての液晶パネル(20)が構成されている。なお、前記液晶セル(11)としては、カラー画像を表示可能なものが好ましく用いられる。
【0062】
前記面光源装置(1)は、前記液晶パネル(20)の下側の偏光板(13)の下面側(背面側)に配置されている。即ち、この液晶表示装置(30)は、直下型液晶表示(ディスプレイ)装置である。
【0063】
前記面光源装置(1)は、平面視矩形状で上面側(前面側)が開放された薄箱型形状のランプボックス(5)と、該ランプボックス(5)内に相互に離間して配置された複数の光源(2)と、これら複数の光源(2)の上方側(前面側)に配置された積層光学部材(3)とを備えている。この積層光学部材(3)として上述した製造方法で製造されたものが用いられている。前記積層光学部材(3)は、前記ランプボックス(5)に対してその開放面を塞ぐように載置されて固定されている。また、前記ランプボックス(5)の内面には光反射層(図示しない)が設けられている。本実施形態では、前記光源(2)として、冷陰極線管等の線状光源が用いられている。
【0064】
前記液晶表示装置(30)において、前記積層光学部材(3)は、その光学フィルム(41)が前面側(液晶パネル(20)側)になるように配置されている(図6参照)。即ち、換言すれば、前記液晶表示装置(30)において、前記積層光学部材(3)は、その光拡散板(33)が背面側(光源(2)側)になるように配置されている(図6参照)。
【0065】
前記面光源装置(1)や液晶表示装置(30)は、光拡散板(33)と光学フィルム(41)が積層された積層光学部材(3)を用いて構成されているからハンドリング性が十分に向上して生産性に優れ、また光拡散板(33)と光学フィルム(41)の貼合強度が十分に得られて高耐久、高品質であり、さらに光拡散板(33)と光学フィルム(41)の間に空気層(43)が十分に形成されているので高い輝度が得られる。
【0066】
前記面光源装置(1)及び液晶表示装置(30)において、前記光源(2)としては、特に限定されるものではないが、例えば蛍光管、ハロゲンランプ、タングステンランプ、EEFL(外部電極蛍光ランプ)等の線状光源の他、発光ダイオード(LED)等の点状光源などが用いられる。
【0067】
前記プライマー層付き光拡散板(33)及び前記積層光学部材(3)の大きさ(面積)は、特に限定されるものではなく、例えば目的とする面光源装置(1)や液晶表示装置(30)の大きさに応じて適宜設定されるものであるが、通常は、20cm×30cm〜150cm×200cmの大きさに設計される。
【0068】
この発明に係るプライマー層付き光拡散板の製造方法及び積層光学部材の製造方法は、上記実施形態のものに特に限定されるものではなく、請求の範囲内であれば、その精神を逸脱するものでない限りいかなる設計的変更をも許容するものである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
この発明の製造方法で製造されたプライマー層付き光拡散板は、面光源装置用の光拡散板として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。また、この発明の製造方法で製造された積層光学部材は、面光源装置用の光学部材として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明のプライマー層付き光拡散板の製造方法の一例を示す概略側面図である。
【図2】この発明のプライマー層付き光拡散板の製造方法の他の例を示す概略側面図である。
【図3】この発明の製造方法で得られたプライマー層付き光拡散板の一実施形態を示す断面図である。
【図4】この発明の積層光学部材の製造方法における貼合工程の一例を示す断面図である。
【図5】この発明の製造方法で得られた積層光学部材の一実施形態を示す断面図である。
【図6】同積層光学部材を用いて構成された液晶表示装置の一実施形態を示す模式図である。
【図7】この発明の積層光学部材の製造方法における貼合工程の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0071】
3…積層光学部材
31…光拡散板
31a…凹凸面
32…プライマー層
33…プライマー層付き光拡散板
40…接着剤層
41…光学フィルム
42…積層フィルム
43…空気層
51…塗布ロール
53…スプレー塗布装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面が凹凸面に形成された光拡散板をその凹凸面を下側に向けて配置せしめ、この光拡散板の下側を向いた凹凸面に対して下方側からプライマー液を塗布することを特徴とするプライマー層付き光拡散板の製造方法。
【請求項2】
前記プライマー液をロール塗布法により塗布する請求項1に記載のプライマー層付き光拡散板の製造方法。
【請求項3】
前記プライマー液をスプレー塗布法により塗布する請求項1に記載のプライマー層付き光拡散板の製造方法。
【請求項4】
光学フィルムの片面に接着剤層が積層されてなる積層フィルムを製作する工程と、
少なくとも片面が凹凸面に形成された光拡散板をその凹凸面を下側に向けて配置せしめ、この光拡散板の下側を向いた凹凸面に対して下方側からプライマー液を塗布する塗布工程と、
前記光拡散板のプライマー液が塗布された凹凸面と前記積層フィルムの接着剤層とが当接するように重ね合わせることによって光拡散板と積層フィルムとを貼合一体化する貼合工程と、を含むことを特徴とする積層光学部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−237208(P2009−237208A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82528(P2008−82528)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】