説明

プライマー組成物

【解決手段】 (I)オルガノアルコキシシラン又はシロキサン 100質量部、(II)アルコキシシリル基含有オルガノハイドロジェンシラン又はシロキサン 1〜500質量部、及び(III)ジアルコキシチタンポリマー 0.1〜500質量部を含有してなるプライマー組成物。
【効果】 本発明のプライマー組成物は、優れた接着性を有し、加熱硬化性シリコーンゴム、特に高熱伝導性の加熱硬化性シリコーンゴムを鉄、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、亜鉛、錫メッキ鋼板などの金属や各種プラスチックなどの被着体に接着させるのに好適に使用でき、例えば複写機のロール部分やエンジン周り部品などに使用される金属又はその他各種基材と加熱硬化性シリコーンゴムとの接着におけるプライマーとして特に有効に使用できる。また、フッ素樹脂に対しても効果が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた接着性を有し、加熱硬化型シリコーンゴム組成物、特に熱伝導性の高い加熱硬化型シリコーンゴム組成物を硬化させたシリコーンゴムを各種の被着体に接着させることができるプライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコーンゴムを各種の被着体に接着させるために、各種のプライマー組成物を塗布する方法が一般的に採用されている。このプライマー組成物として、例えば特公昭61−2107号公報(特許文献1)には、アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、SiH基を有する有機ケイ素化合物からなるプライマー組成物が、また、特開平6−25615号公報(特許文献2)には、一般式−CR23(CH2nCOOR1で示される基を有する有機ケイ素化合物からなるプライマー組成物が提案されている。
【0003】
一方、近年、乾式複写機(PPC)やレーザービームプリンター(LBP)の高速化に伴い、高熱伝導性のシリコーンゴムの要求が増えている。また、自動車部品、コンピューター部品にも熱伝導性の高いシリコーンゴムが使用され、シリコーンゴムの高熱伝導化は必要な条件となっている。しかし、高熱伝導性のシリコーンゴムは、上記のような従来のプライマー組成物では各種の被着体に接着しないことが多く、このため、上記したような高熱伝導性のシリコーンゴムを被着体に接着させ得るプライマー組成物の開発が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】特公昭61−2107号公報
【特許文献2】特開平6−25615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、接着性に優れ、高熱伝導性の加熱硬化性シリコーンゴム組成物の硬化物(シリコーンゴム)を各種被着体に接着させることができるプライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、高熱伝導性の加熱硬化性シリコーンゴム組成物を硬化させて得られるシリコーンゴムは、熱伝導性フィラーを多く含有するため、通常、架橋密度が小さく、従来のプライマー組成物と十分な相互作用が働かないことがプライマーとシリコーンゴムとの間で剥離が生じる原因と考えた。そこで、上記目的を達成するため、シリコーンゴムとの相互作用を高めることができる化合物を種々検討した結果、下記平均組成式(1)のオルガノアルコキシシラン又はシロキサン、下記平均組成式(2)のアルコキシシリル基含有オルガノハイドロジェンシラン又はシロキサン、及びジアルコキシチタンポリマーを配合することにより、適度な応力緩和作用を与え、プライマー組成物の接着性改善に極めて有効であり、それ故、得られる皮膜は、高熱伝導性のシリコーンゴムとプライマーとの接着性を飛躍的に向上させ得る上、適度な応力緩和効果が得られ、高熱伝導性のシリコーンゴムとの接着性にも優れていることを見出した。
【0007】
特に、下記平均組成式(2)のアルコキシシリル基含有オルガノハイドロジェンシロキサンとして、下記一般式(3)又は(4)で示される分子鎖末端にSiH基を有し、かつ分子中にアルコキシシリル基を有するオルガノハイドロジェンシロキサンが、そのSiH基がプライマーのマトリックスに効果的に取り込まれて高熱伝導性のシリコーンゴムとプライマー組成物との相互作用を高め、かつ応力緩和作用を与え、プライマー組成物の接着性改善に極めて有効であり、高熱伝導性のシリコーンゴムとプライマーとの接着性を飛躍的に向上させ得る上、適度な応力緩和効果が得られ、それ故、高熱伝導性のシリコーンゴムとの接着性に特に優れていることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
即ち、本発明は、(I)下記平均組成式(1)
1a2b(OR3cSiO(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は非置換又は置換の1価炭化水素基、R2は官能基を有する1価有機基、R3は非置換又はアルコキシ置換のアルキル基であり、a、b、cはそれぞれ0≦a≦3、0≦b≦3、0<c≦4、かつ0<a+b+c≦4を満たす数である。)
で示されるオルガノアルコキシシラン又はシロキサン 100質量部
(II)下記平均組成式(2)
d4e(XSiR5g(OR6hfSiO(4-d-e-f)/2 (2)
(式中、R4、R5はそれぞれ非置換又は置換の1価炭化水素基、R6は非置換又はアルコキシ置換のアルキル基、Xは非置換又は置換の2価有機基又は酸素原子であり、d、e、fはそれぞれ0<d≦2、0≦e≦3、0<f≦3、かつ0<d+e+f≦4を満たす数であり、gは0、1又は2、hは1、2又は3であり、かつg+h=3である。)
で示されるアルコキシシリル基含有オルガノハイドロジェンシラン又はシロキサン 1〜500質量部
(III)ジアルコキシチタンポリマー 0.1〜500質量部を含有してなることを特徴とするプライマー組成物を提供する。
【0009】
この場合、(II)成分のアルコキシシリル基含有オルガノハイドロジェンシロキサンとしては、下記一般式(3)又は(4)で示されるものが好適である。
【化1】

(式中、R7、R8、R9、R10、R11はそれぞれ非置換又は置換の1価炭化水素基、Yは非置換又は置換の2価有機基、R12は非置換又はアルコキシ置換のアルキル基であり、k、m、m’、rはそれぞれ0<k≦20、0≦m≦20、1≦m’≦20、1≦r≦20を満たす整数であり、pは0、1又は2、qは1、2又は3であり、かつp+q=3である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明のプライマー組成物は、優れた接着性を有し、加熱硬化性シリコーンゴム組成物、特に高熱伝導性の加熱硬化性シリコーンゴム組成物を硬化させたシリコーンゴムを各種被着体に強固に接着させることができる。
【0011】
本発明のプライマー組成物は、各種被着体のなかでも、シリコーンゴム、特に高熱伝導性のシリコーンゴムを鉄、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、亜鉛、錫メッキ鋼板などの金属や各種プラスチックなどの被着体に接着させるのに好適に使用でき、例えば複写機のロール部分やエンジン周り部品などに使用される金属又はその他各種基材とシリコーンゴムとの接着におけるプライマーとして特に有効に使用できる。また、フッ素樹脂に対しても効果が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のプライマー組成物は、
(I)下記平均組成式(1)で示されるオルガノアルコキシシラン又はシロキサン100質量部と、(II)下記平均組成式(2)で示されるアルコキシシリル基含有オルガノハイドロジェンシロキサン1〜500質量部と、(III)ジアルコキシチタンポリマー0.1〜500質量部とを含有してなるものである。
【0013】
本発明のプライマー組成物において、(I)成分としてのオルガノアルコキシシラン又はシロキサンは、下記平均組成式(1)で示されるものである。
1a2b(OR3cSiO(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は非置換又は置換の1価炭化水素基、R2は官能基を有する1価有機基、R3は非置換又はアルコキシ置換のアルキル基であり、a、b、cはそれぞれ0≦a≦3、0≦b≦3、0<c≦4、かつ0<a+b+c≦4を満たす数である。)
【0014】
上記式(1)において、R1の非置換又は置換の1価炭化水素基は、好ましくは脂肪族不飽和結合を含まない炭素数1〜10、特に1〜6のものであり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子をハロゲン原子、シアノ基等で置換したクロロメチル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などが挙げられる。
【0015】
2は官能基を有する1価有機基であり、その官能基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、アミノ基、アミノアルキル置換アミノ基、メルカプト基、α−アルコキシカルボニル基などの付加反応性、縮合反応性又はラジカル反応性の官能基が挙げられる。また、このような官能基を有する1価有機基としては、下記一般式(5)
R’−(Z)x− (5)
(式中、R’はビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、アミノ基、アミノアルキル置換アミノ基、メルカプト基、α−アルコキシカルボニル基などの付加反応性、縮合反応性又はラジカル反応性の官能基、Zはエーテル結合性酸素原子が介在してもよい炭素数1〜10、特に1〜3のアルキレン基、xは0又は1である。)
で示されるものを例示することもできる。
【0016】
3の非置換又はアルコキシ置換のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等の好ましくは炭素数1〜4の基が挙げられる。a、b、cはそれぞれ0≦a≦3、0≦b≦3、0<c≦4、かつ0<a+b+c≦4を満たす数であり、より好ましくは0≦a≦1、0≦b≦1、2≦c≦4、かつ2≦a+b+c≦4を満たす数である。
【0017】
このようなオルガノアルコキシシランとして具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、メチルビニルジエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、α−(エトキシカルボニル)エチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが例示されるが、これらはその部分加水分解によって得られる、1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上のアルコキシ基が残存するアルコキシシロキサンであってもよい。このようなオルガノアルコキシシラン又はシロキサンは、2種以上を使用することも可能である。なお、オルガノアルコキシシロキサンの場合、ケイ素原子数は2〜150、特に2〜100のものが好ましい。
【0018】
次に、(II)成分としてのアルコキシシリル基含有オルガノハイドロジェンシラン又はシロキサンは、本発明のプライマー組成物の接着性を飛躍的に向上させるための必須成分であり、下記平均組成式(2)で示され、分子中に下記式(2a)で示される1価の基、及びケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を有するオルガノハイドロジェンシロキサンである。
d4e(XSiR5g(OR6hfSiO(4-d-e-f)/2 (2)
【化2】

(式中、R4、R5はそれぞれ非置換又は置換の1価炭化水素基、R6は非置換又はアルコキシ置換のアルキル基、Xは非置換又は置換の2価有機基又は酸素原子であり、d、e、fはそれぞれ0<d≦2、0≦e≦3、0<f≦3、かつ0<d+e+f≦4を満たす数であり、gは0、1又は2、hは1、2又は3であり、かつg+h=3である。なお、式(2a)の基を1分子中に1〜20個、SiH基は1〜50個含有することが好ましく、またケイ素原子数は1〜150、特に1〜100であることが好ましい。)
【0019】
上記式(2)中、R4、R5はそれぞれ、好ましくは脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、炭素数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、上記R1と同様の基が挙げられる。R6の非置換又はアルコキシ置換のアルキル基としては、炭素数1〜4のものが好ましく、上記R3と同様の基が挙げられる。Xは非置換又は置換の2価有機基又は酸素原子であり、非置換もしくは置換の2価有機基としては、好ましくは炭素数1〜10、特に1〜3のものであり、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基やアルキレン基とアリーレン基とが結合した基、これらの基の水素原子をハロゲン原子、シアノ基等で置換した基などが挙げられる。
【0020】
d、e、fはそれぞれ0<d≦2、0≦e≦3、0<f≦3、かつ0<d+e+f≦4であり、好ましくは0<d≦1、1≦e≦2、0<f≦1、かつ2≦d+e+f≦3を満たす数である。なお、g、hは、それぞれgが0、1又は2、hが1、2又は3、かつg+h=3を満たす数であり、好ましくはgが0又は1、hが2又は3であり、かつg+h=3を満たす数である。
【0021】
上記式(2a)で表される1価の基は、下記シロキサン構造
【化3】

を形成するケイ素原子に結合するものであることが好ましいが、この式(2a)の基としてはアルコキシシリルアルキル基が好ましい。このアルコキシシリルアルキル基としては、下記のトリアルコキシシリルアルキル基、アルキルジアルコキシシリルアルキル基等が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0022】
−(CH22−Si(OCH33,−(CH22−Si(OC253,−(CH22−Si(OC373,−(CH23−Si(OCH33,−(CH23−Si(OC253,−(CH23−Si(OC373などのトリアルコキシシリルアルキル基、
【化4】

などのアルキルジアルコキシシリルアルキル基。
【0023】
なお、上記式(2)で示されるアルコキシシリル基含有オルガノハイドロジェンシロキサンは、その形状に特に制限はなく、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状のいずれでもよい。
【0024】
上述した式(2)のアルコキシシリル基含有オルガノハイドロジェンシロキサンとしては、特に下記一般式(3)又は(4)で示されるものが好ましい。
【化5】

(式中、R7、R8、R9、R10、R11はそれぞれ非置換又は置換の1価炭化水素基、Yは非置換又は置換の2価有機基、R12は非置換又はアルコキシ置換のアルキル基であり、k、m、m’、rはそれぞれ0<k≦20、0≦m≦20、1≦m’≦20、1≦r≦20を満たす整数であり、pは0、1又は2、qは1、2又は3であり、かつp+q=3である。)
【0025】
上記式(3)、(4)中、R7、R8、R9、R10、R11はそれぞれ非置換又は置換の1価炭化水素基、好ましくは脂肪族不飽和結合を含まない炭素数1〜10、特に1〜6のものであり、具体的には上記R1と同様の基が挙げられる。また、R12の非置換又はアルコキシ置換のアルキル基としては、炭素数1〜4のものが好ましく、上記R3と同様の基が挙げられる。Yは非置換又は置換の2価有機基であり、好ましくは炭素数1〜10、特に炭素数1〜4のものであり、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基やアルキレン基とアリーレン基とが結合した基、これらの基の水素原子をハロゲン原子、シアノ基等で置換した基などが挙げられる。
【0026】
k、m、m’、rはそれぞれ0<k≦20、0≦m≦20、1≦m’≦20、1≦r≦20を満たす整数、特に5≦k≦15、2≦m≦10、2≦m’≦10、1≦r≦10を満たす整数であり、p、qは、それぞれpは0、1又は2、qは1、2又は3、かつp+q=3、好ましくはpは0又は1、qは2又は3、かつp+q=3を満たす数である。
【0027】
なお、上記式(3)及び(4)中、上記式(2)で示されるアルコキシシリル基含有オルガノハイドロジェンシロキサンの式(2a)で示される基に相当する下記式(2b)で示される基
【化6】

の好適な例としては、上記式(2a)で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0028】
上記アルコキシシリル基を有するオルガノハイドロジェンシロキサンは、相当する各種のオルガノハイドロジェンシロキサンとビニル基、アリル基などのアルケニル基を有するオルガノアルコキシシランとを白金系触媒存在下で付加反応させるか、あるいは相当する各種のオルガノハイドロジェンシロキサンとオルガノアルコキシシランとを酸触媒存在下で平衡化することによって得ることができる。
【0029】
本発明では、上記オルガノハイドロジェンシロキサンの1種を単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよいが、この(II)成分の配合量は、(I)成分100質量部に対して1〜500質量部、好ましくは2〜200質量部であり、(II)成分の配合量が1質量部未満では組成物の皮膜の強度が不足し、十分な接着強度が得られなくなり、500質量部を超えると組成物の皮膜が脆く、十分な接着強度が得られなくなる。
【0030】
本発明において、(III)成分としてのジアルコキシチタンポリマーは、このプライマー組成物を縮合硬化して風乾性を与え、皮膜と被着体との接着性を向上させるために必要なものである。
【0031】
上記(III)成分のジアルコキシチタンポリマーは、下記組成式(6)
13O−[Ti(OR132−O]n−R13 (6)
で表され、nは重合度を表し、nは2以上の整数、好ましくは7以上の整数である。なお、nの上限は特に限定されるものではないが、通常100以下、好ましくは50以下の整数である。
【0032】
13は1価炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜10のものであり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基が挙げられる。この1価炭化水素基の形状に制約はなく、直鎖状、分岐状のものであってもよい。
【0033】
このような(III)成分のジアルコキシチタンポリマーの配合量は、(I)成分100質量部に対して0.1〜500質量部、好ましくは0.3〜100質量部であり、(III)成分の配合量が0.1質量部未満では風乾が進行せず、組成物の皮膜の強度が不足し、十分な接着強度が得られなくなり、500質量部を超えると組成物の皮膜が脆く、十分な接着強度が得られなくなる。
【0034】
本発明のプライマー組成物は、上記した(I)〜(III)成分の所定量を均一に混合することによって得ることができるが、必要に応じてヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、塩化メチレン、トリクロロエチレン等から選択される1種又は2種以上の溶剤を添加して希釈してもよい。
【0035】
また、本発明の組成物には、その他の任意成分としてこの組成物が塗布されたことを確認するために各種の顔料、例えばカーボン、ベンガラ、酸化チタンなどの無機系顔料又は各種の有機系顔料を添加してもよい。また、得られる皮膜の強度や耐熱性を向上させるために各種の無機質充填剤、例えばヒュームドシリカ、ベンガラ、酸化セリウム、酸化チタン等を添加してもよい。なお、上記任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で目的に応じた任意量とすることができる。
【0036】
本発明のプライマー組成物は、使用にあたってこれを被着体の表面に塗布し、この塗布面にシリコーンゴムなどを接着させるが、特に溶剤で希釈して使用する場合には塗布後10〜60分間程度風乾させてからシリコーンゴムなどと接着させることがよく、このシリコーンゴムの加工時にプライマー層に流れが生じる場合には、この塗布面を100〜200℃程度に加熱して5〜60分間程度焼付処理をして、この皮膜の強度を調節してもよい。
【0037】
この場合、本発明のプライマー組成物は、高熱伝導性の加熱硬化性シリコーンゴム組成物、特に熱伝導性フィラーを含む高熱伝導性の加熱硬化性シリコーンゴム組成物の硬化物(シリコーンゴム)を各種被着体に接着させるのに有効に使用でき、特に、熱伝導性フィラーの含有率が熱伝導性フィラーを除く組成物100質量部に対して100質量部以上、好ましくは100〜1,000質量部のシリコーンゴムを接着させるのに有効である。また、被着体としては、例えば鉄、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、亜鉛、錫メッキ鋼板などの金属や各種プラスチックなどが使用可能である。更に、フッ素樹脂に対しても効果が高く、被着体がフッ素樹脂の場合も好適に使用可能である。
【0038】
ここで、特に本発明のプライマー組成物が有効に適用される高熱伝導性シリコーンゴムを与える加熱硬化性シリコーンゴム組成物としては、有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物、付加硬化型シリコーンゴム組成物、縮合硬化型シリコーンゴム組成物などが挙げられるが、付加硬化型シリコーンゴム組成物が好ましい。このような高熱伝導性シリコーンゴムを与えるシリコーンゴム組成物には、充填剤として熱伝導性を有する各種充填剤を使用することができる。具体的には、石英粉、珪藻土、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などが挙げられ、特に石英粉、アルミナと酸化亜鉛が好適に用いられる。
【0039】
上記シリコーンゴム組成物には、更に、必要に応じてシリカヒドロゲル(含水ケイ酸)、シリカエアロゲル(無水ケイ酸−煙霧質シリカ)などの補強性シリカ充填剤、クレイ、炭酸カルシウム、二酸化チタンなどの充填剤、酸化鉄、酸化セリウム、オクチル酸鉄などの耐熱性向上剤、接着性や成形加工性を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン、難燃性を付与させる窒素化合物、ハロゲン化合物を添加混合してもよい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において、粘度は23℃における測定値を示す。
【0041】
高熱伝導性液状シリコーンゴム組成物の調製(1):
両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され側鎖にビニル基を有し、粘度が約15Pa・sであるジメチルシロキサンポリマー100質量部、比表面積が110cm2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(R−972、日本アエロジル社製)0.7質量部、平均粒子径が12μmの石英粉(商品名クリスタライトA−1、龍森(株)製)200質量部をプラネタリーミキサーに入れ、室温(23℃)で2時間撹拌を行った。この混合物を3本ロールにかけて充填剤の分散を行った後、再び、プラネタリーミキサーに戻し、下記式(i)で表される粘度が0.01Pa・sであるハイドロジェンメチルポリシロキサン3質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1質量部、白金触媒(Pt濃度1%)0.1質量部を添加し、15分間撹拌し、できあがった組成物を液状ゴム組成物1とした。この液状ゴム組成物1を120℃にて10分間プレス硬化し、200℃にて4時間ポストキュアーした。得られた硬化物の熱伝導率を測定した。熱伝導率は0.7W/m・℃であった。
【0042】
【化7】

【0043】
高熱伝導性液状シリコーンゴム組成物の調製(2):
石英粉200質量部を平均粒子径18μmの酸化アルミニウム(アルミナAS−30、昭和電工(株)製)300質量部に変更した以外、上記高熱伝導性液状シリコーンゴム組成物の調製(1)と同様にして組成物を調製し、これを液状ゴム組成物2とした。液状ゴム組成物2を120℃にて10分間プレス硬化し、200℃にて4時間ポストキュアーした。得られた硬化物の熱伝導率を測定した。熱伝導率は0.75W/m・℃であった。
【0044】
高熱伝導性液状シリコーンゴム組成物の調製(3):
石英粉200質量部を平均粒子径10μmの焼成酸化亜鉛(ハクスイテック(株)製)300質量部に変更した以外、上記高熱伝導性液状シリコーンゴム組成物の調製(1)と同様にして組成物を調製し、これを液状ゴム組成物3とした。液状ゴム組成物3を120℃にて10分間プレス硬化し、200℃にて4時間ポストキュアーした。得られた硬化物の熱伝導率を測定した。熱伝導率は0.72W/m・℃であった。
【0045】
〔実施例1〕
テトラエトキシシラン100質量部、下記式(ii)で示される粘度0.015Pa・sのトリメトキシシリル基を有するメチルハイドロジェンシロキサン50質量部及び下記式(iii)で示されるテトラ−n−ブトキシチタン重合体B−10(日本曹達(株)製)50質量部を混合し、これにヘプタン1,000質量部を加えてよく混合してプライマー組成物1を調製した。
【0046】
【化8】

【0047】
〔比較例1〕
比較のため、上記式(iii)のテトラ−n−ブトキシチタン重合体B−10(日本曹達(株)製)50質量部をテトラブチルチタネートに変更した以外は上記実施例1と同様にしてプライマー組成物2を調製した。
【0048】
上記プライマー組成物1,2をそれぞれ液体アンモニアで表面処理された面を上面にして置かれたPFA樹脂フィルムに塗布後、上記液状ゴム組成物1を流し、厚み2mmで均一に塗布した。この未硬化一体化物を100℃×15分間加熱硬化させ、更に、200℃×4時間加熱し、PFA樹脂フィルムと強固に一体化したものが得られた。得られた一体成形物を短冊状(縦50mm×横5mm×厚さ2mm)に切り出し、試験片を作製した。この一体成形物の試験片のシリコーンゴム層側からの中心部(端から25mm)にナイフで切れ目を入れて、両側に引っ張り、一体成形体の密着性を調べた。その結果を表1に示した。
【0049】
〔実施例2〕
テトラエトキシシラン100質量部、ビニルトリエトキシシラン50質量部、下記式(iv)で示される粘度0.015Pa・sのトリメトキシシリル基を有するメチルハイドロジェンシロキサン50質量部及び上記式(iii)のテトラ−n−ブトキシチタン重合体B−10(日本曹達(株)製)50質量部を混合し、これにヘプタン1,000質量部を加えてよく混合してプライマー組成物3を調製した。
【0050】
【化9】

【0051】
〔比較例2〕
比較のため、上記式(iii)のテトラ−n−ブトキシチタン重合体B−10(日本曹達(株)製)50質量部をテトラブチルチタネートに変更した以外は上記実施例2と同様にしてプライマー組成物4を調製した。
【0052】
上記プライマー組成物3,4をそれぞれ液体アンモニアで表面処理された面を上面にして置かれたPFA樹脂フィルムに塗布後、上記液状ゴム組成物2を流し、厚み2mmで均一に塗布した。この未硬化一体化物を100℃×15分間加熱硬化させ、更に、200℃×4時間加熱し、PFA樹脂フィルムと強固に一体化したものが得られた。得られた一体成形物を短冊状(縦50mm×横5mm×厚さ2mm)に切り出し、試験片を作製した。この一体成形物の試験片のシリコーンゴム層側からの中心部(端から25mm)にナイフで切れ目を入れて、両側に引っ張り、一体成形体の密着性を調べた。その結果を表1に示した。
【0053】
〔実施例3〕
テトラエトキシシラン100質量部、ビニルトリエトキシシラン50質量部、下記式(v)で示される0.015Pa・sのトリメトキシシリル基を有するメチルハイドロジェンシロキサン50質量部及び上記式(iii)のテトラ−n−ブトキシチタン重合体B−10(日本曹達(株)製)50質量部を混合し、これにヘプタン1,000質量部を加えてよく混合してプライマー組成物5を調製した。
【0054】
【化10】

【0055】
〔比較例3〕
比較のため、上記式(iii)のテトラ−n−ブトキシチタン重合体B−10(日本曹達(株)製)50質量部をテトラブチルチタネートに変更した以外は上記実施例3と同様にしてプライマー組成物6を調製した。
【0056】
上記プライマー組成物5,6をそれぞれ液体アンモニアで表面処理された面を上面にして置かれたPFA樹脂フィルムに塗布後、上記液状ゴム組成物3を流し、厚み2mmで均一に塗布した。この未硬化一体化物を100℃×15分間加熱硬化させ、更に、200℃×4時間加熱し、PFA樹脂フィルムと強固に一体化したものが得られた。得られた一体成形物を短冊状(縦50mm×横5mm×厚さ2mm)に切り出し、試験片を作製した。この一体成形物の試験片のシリコーンゴム層側からの中心部(端から25mm)にナイフで切れ目を入れて、両側に引っ張り、一体成形体の密着性を調べた。その結果を表1に示した。
【0057】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)下記平均組成式(1)
1a2b(OR3cSiO(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は非置換又は置換の1価炭化水素基、R2は官能基を有する1価有機基、R3は非置換又はアルコキシ置換のアルキル基であり、a、b、cはそれぞれ0≦a≦3、0≦b≦3、0<c≦4、かつ0<a+b+c≦4を満たす数である。)
で示されるオルガノアルコキシシラン又はシロキサン 100質量部
(II)下記平均組成式(2)
d4e(XSiR5g(OR6hfSiO(4-d-e-f)/2 (2)
(式中、R4、R5はそれぞれ非置換又は置換の1価炭化水素基、R6は非置換又はアルコキシ置換のアルキル基、Xは非置換又は置換の2価有機基又は酸素原子であり、d、e、fはそれぞれ0<d≦2、0≦e≦3、0<f≦3、かつ0<d+e+f≦4を満たす数であり、gは0、1又は2、hは1、2又は3であり、かつg+h=3である。)
で示されるアルコキシシリル基含有オルガノハイドロジェンシラン又はシロキサン 1〜500質量部
(III)ジアルコキシチタンポリマー 0.1〜500質量部
を含有してなることを特徴とするプライマー組成物。
【請求項2】
(II)成分のアルコキシシリル基含有オルガノハイドロジェンシロキサンが、下記一般式(3)又は(4)
【化1】

(式中、R7、R8、R9、R10、R11はそれぞれ非置換又は置換の1価炭化水素基、Yは非置換又は置換の2価有機基、R12は非置換又はアルコキシ置換のアルキル基であり、k、m、m’、rはそれぞれ0<k≦20、0≦m≦20、1≦m’≦20、1≦r≦20を満たす整数であり、pは0、1又は2、qは1、2又は3であり、かつp+q=3である。)
で示されるものである請求項1記載のプライマー組成物。

【公開番号】特開2006−131830(P2006−131830A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325198(P2004−325198)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】