プラグ/ジャック接続内および隣接するプラグ/ジャックの組み合わせ間でのクロストーク減衰を改善するための方法およびシステム
【課題】近端および遠端クロストーク、ならびにエイリアン近端およびエイリアン遠端クロストークにおいて、通信チャネルのマージンをより多く取得したいという継続的なニーズがある。
【解決手段】本出願は、クロストーク減衰を改善するジャックについて説明する。このジャックは筐体、少なくとも部分的にこの筐体を覆うホイル、プリント回路基板、および少なくとも1対の圧接接点およびビアを備えている。圧接接点とビアの対はそれぞれ、差動信号に関連付けられている。導電性トレーススタブは、圧接接点およびビアの対のうちの1つから圧接接点およびビアの該対のもう一方を持つホイルとのカップリングを少なくとも部分的に平衡するようにプリント回路基板上の基板端近くにルーティングされる。
【解決手段】本出願は、クロストーク減衰を改善するジャックについて説明する。このジャックは筐体、少なくとも部分的にこの筐体を覆うホイル、プリント回路基板、および少なくとも1対の圧接接点およびビアを備えている。圧接接点とビアの対はそれぞれ、差動信号に関連付けられている。導電性トレーススタブは、圧接接点およびビアの対のうちの1つから圧接接点およびビアの該対のもう一方を持つホイルとのカップリングを少なくとも部分的に平衡するようにプリント回路基板上の基板端近くにルーティングされる。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
近端および遠端クロストーク(NEXTおよびFEXT)、ならびにエイリアン近端およびエイリアン遠端クロストーク(ANEXTおよびAFEXT)において、通信チャネルのマージンをより多く取得したいという継続的なニーズがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
NEXTおよびFEXTの主な原因は、プラグ/ジャックの組み合わせのプラグ内にあり、一般にジャック内で相殺される。エイリアンクロストークの主な原因は、チャネル間、特に隣接したジャック間をカップリングする同相雑音であり、差動エイリアンクロストークに変換される(モード変換)。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【図1A】本発明のホイルシールド付きジャックの一実施形態の斜視図である。
【図1B】同じく、本発明のホイルシールド付きジャックの一実施形態の斜視図である。
【図2A】本発明のホイルシールド付きジャックの別の実施形態の斜視図である。
【図2B】同じく、本発明のホイルシールド付きジャックの別の実施形態の斜視図である。
【図3】図1A及び図1Bの線3−3での断面の断面図で、本発明の接着ホイル素材の積み重ねを示した図である。
【図4】ジャックの差動クロストークに変換して戻す近くのジャックのジャックホイルシールドに沿ったコモンモード伝播により生じるエイリアンクロストークを示す概略図である。
【図5】本発明の通信システムの一実施形態の部分斜視図である。
【図6A】本発明のモジュラージャックの一実施形態の分解斜視図である。
【図6B】同じく、本発明のモジュラージャックの一実施形態の分解斜視図である。
【図7A】図6A及び図6Bのジャックのいくつかの態様の斜視図である。
【図7B】同じく、図6A及び図6Bのジャックのいくつかの態様の斜視図である。
【図8】図6A及び図6Bのジャックのプラグ接続接点の斜視図である。
【図9】図6A及び図6Bのジャックの複数層柔軟回路基板の透視斜視図である。
【図10】図9の柔軟回路基板の回路図である。
【図11】図6A及び図6Bのジャックの複数層硬質回路基板についての透視斜視図である。
【図12】図11の硬質回路基板の回路図である。
【図13】分割ホイルの使用を通じたジャックホイルシールドに沿ったコモンモード伝播を防ぐことによる本発明に従ったエイリアンクロストークの減少方法についての概略図である。
【図14】本発明のホイルシールド付きジャックで、ホイルシールドがつながっているが金属化層に隙間がある別の実施形態の分解斜視図である。
【図15】本発明のホイルシールド付きジャックで、ホイルシールドがつながっているが金属化層が下部および片側のみにある別の実施形態の分解斜視図である。
【図16】本発明のホイルシールド付きジャックで、ホイルシールドがつながっているが金属層があるホイルの選択的領域がある別の実施形態の分解斜視図である。
【図17】本発明のホイルシールド付きジャックで、ホイルシールドが連続した金属化部分でつながっているがホイルには片側と上部分のみが含まれる別の実施形態の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
対応する参照文字は、複数の図にわたって対応する部品を示す。本明細書で説明する例は本発明の好ましい実施形態の一部であり、このような例は本発明の範囲をいかなる方法においても制限するものと解釈されるものではない。
【0005】
補償方法および機器は、参照により本明細書ですべて説明するように組み込まれる、米国仮特許出願第61/090403号、「High-Speed Connector with Multi-Stage Compensation」(2008年8月20日出願)の改良されたカテゴリ6A(CAT6A)RJ45ジャック設計の新規設計で示されており、これは500MHzでのTIAカテゴリ6A規格を超える。このジャックは、要求の厳しい顧客に応じるため近端クロストーク(NEXT)、遠端クロストーク(FEXT)、リターンロスに対してよりマージンを取得したいという産業界のニーズに対応するものである。さらに、このジャックは、ジャック内で発生する差動からコモン、コモンから差動モード変換(本明細書では「モード変換」と呼ぶ)を減らし、システムのエイリアンクロストーク性能を改善する。
【0006】
これも参照により本明細書ですべて説明するように組み込まれる、米国特許出願公開第2006/0134995号では、ジャックが互いに隣に設置されている場合の圧接接点(IDC)でのコネクタ間のANEXTの量を減らす導電性カバー層を備えた通信ジャックを開示している。これらの導電性層またはホイルは、上記で引用した米国仮特許出願第61/090403号の一部でもある。
【0007】
他の進歩としては、本発明は高周波数でのジャックリターンロスのマージンに関するチャネルおよびパーマネントリンクの性能の現在の限界の一部に対応する。本発明の一実施形態では、ジャックの伝送回線コンポーネントに、プラグに嵌合し、スレッドおよび接続を硬質回路基板で覆うプラグ接続接点(PIC)と、スレッドをPICと接触するコンポーネントで覆った柔軟回路基板と、硬質回路基板の回路要素と、硬質回路基板に結合し、配線内の金属線をIDCに接続できるIDCとを含めることができる。プラグ/PIC、柔軟基板、硬質基板のPIC領域、および硬質基板の補正領域は、第1のインピーダンス領域であると考えられる。また、硬質基板のIDCビア領域およびIDCは、第1のインピーダンス領域に続く第2のインピーダンス領域だと考えられる。ジャックコネクタが相対的に低インピーダンス領域(第1のインピーダンス領域において)で、その後に比較的高インピーダンス領域(第2のインピーダンス領域において)が続く領域を有する場合、低周波数でのリターンロスのマージンがより大きいが、高周波数でのリターンロスのマージンがより少なくなる。ジャックに第1の低インピーダンス領域のみがあり、相対的に高インピーダンスの第2の領域がない場合、低周波数ではマージンが少なく、周波数が高くなると相対的なマージンはより大きくなる(低インピーダンス領域の次に相対的に高インピーダンス領域が続くジャックの場合と比べて)。同様の関係が、振幅値がこの説明と反対の場合に当てはまる。例えば、高インピーダンス領域の後に低インピーダンス領域が続くジャックの場合で、このとき低インピーダンス領域のインピーダンスの増加がリターンロスを改善する。
【0008】
対4−5は、一般に、今日のジャック設計で高周波数におけるリターンロスマージンが最低の対である。一般的に言うと、対4−5はプラグ/PIC、柔軟基板、硬質基板のPIC領域、および硬質基板の補正領域によって生じる低インピーダンス領域と、それに続くIDCとワイヤーキャップのそれぞれに生じる高インピーダンス領域とを有する。本発明の特徴は、高インピーダンス領域のインピーダンスを、リターンロスが低周波数で相対的に悪くなるが、高周波数におけるマージンを改善するよう減らし、結果CAT6A仕様に関するリターンロスマージンを全体的に改善することである。インピーダンスとキャパシタンスの関係は、一般にZ=√(L/C)から得られるため、キャパシタンスを高インピーダンス領域に追加して高インピーダンス領域のインピーダンスを減らす。
【0009】
1つの領域内にたくさんのジャックが集まっている配線盤やコンセントでは、隣り合うジャック間のエイリアンクロストークが高レベルで起こる可能性がある。以前のこの概念に関する理解は、このカップリングは主に、隣り合う金属線や近接するプラグとジャックのブレードが近いこと、および特に互いに近接して走る平行部分により生じる誘導差動カップリングによるものであるとされていた。図1および図2のホイルラベルの設計はこの問題に対処する。図1では、ジャックアセンブリ20にはジャック22と接着により取り付けられたホイルラベルまたはシールド24とを含む。例えば、ジャック22はCAR6Aジャック設計にすることができる。または、CAT6、CAT7、またはその他のジャックも使用できる。図2はジャック22と接着により取り付けられたホイルラベル28と、そこから伸張する側面29を含むジャックアセンブリ26の図解である。これらのホイルラベル24、28は主に隣り合うジャック間で生じるエイリアンクロストークの量を減らすために使用される。隣り合わないジャックからのカップリングレベルは、相対的に離れているため既に非常に低くなっているためである。図1および図2には示されていないが、ジャック20、26は一般に図6に示すワイヤーキャップや図6の他の要素を含むことができる。ホイルラベルは金属製裏張り14、次に塗装層12と保護コーティング10付きの接着剤18を図3に示すように含む。
【0010】
しかしながら、高レベルの同相雑音を伴うチャネル環境では、ホイルシールドによりコモンモード電流が、図4の矢印Aで示すように隣り合うジャック27へ、および近接ジャックを超えて流れるように、電気的接続(近接ジャックへの容量性カップリングを伴うジャック周囲に導電経路を備えた)がもたらされることが観察された。これは、隣り合わないジャック間に著しいエイリアンクロストークを生じさせ、隣り合うジャック間のエイリアンクロストークの量をさらに増加させる。一部のジャックが、それぞれに図1および図2に従ってホイルシールドを含んでおり、互いに隣り合っている場合、隣り合う導電性ホイル29間の非常に大きな容量性カップリングによりコモンモード電流がジャック間を伝わる損失経路は非常に低くなり、本発明の少なくとも1つの実施形態はこの問題に対処する。図4の例において、容量性カップリング31は、隣り合うホイルが近接して接近しており、重なり合う表面積が大きいことに起因して、隣り合うホイル29間で発生する。これは、約100MHzから500MHzの間の周波数に対する減衰が低いコモンモード伝送を可能とする。コモンモード電流Iは、矢印Bで示すように形成される。図4に示すように、ジャック27間の空間は、明確性のために拡大されており、ホイル29は、図示の目的でジャック筐体から離間して示されている。ジャック内のコモンモード信号は、ANEXTおよび/またはAFEXTとなる。
【0011】
本発明に従う別の態様では、モード変換を最低限にするため、プラグ/ジャック連結内のすべての差動対の組み合わせ間で容量性および誘導負荷を平衡させることが望ましい。
また、さらにモード変換を減らすため、ジャックのパーツを覆うホイルラベル設計に対して各差動対を平衡させることも望ましい。
【0012】
本明細書で説明しているのはホイルラベルが付いたジャックの新しい設計とホイルラベルに対するジャックの差動対ごとの平衡を改良した改良した硬質回路基板、さらに上記で説明した問題への対処の改善方法である。本発明は、ジャックのモード変換を減らし、エイリアンクロストークを改善する。
【0013】
図面、特に図5を参照すると、通信システム30が示されているが、これはパッチケーブル32や水平ケーブル33といった装置34に接続される通信ケーブルを含むことができる。装置34は図5で配線盤として描かれているが、装置は受信型装置または能動型装置でもよい。受動型装置の例はモジュラー配線盤、パンチダウン配線盤、カプラ配線盤、壁付コンセントなどを挙げることができるがこれらに限定されない。能動型装置の例はイーサネット(登録商標)スイッチ、ルータ、サーバ、物理層管理システム、データセンター/遠隔通信室に見られるパワー・オーバー・イーサネット装置、セキュリティ装置(カメラやその他センサーなど)およびドアアクセス装置、ならびにワークステーション領域に見られる電話、コンピュータ、ファクス機、プリンタおよびその他機器などが上げられるがこれらに限定されない。通信システム30はさらに、キャビネット、ラック、ケーブル管理およびオーバーヘッドルーティングシステム、ならびにその他同様の装置を含むことができる。
【0014】
通信ケーブル32と33は、非シールドより対線(UTP)ケーブルの形式で示されているが、より具体的には10Gb/秒で動作するCAT6Aケーブルである。しかし、本発明は、さまざまな通信ケーブルとの接続で適用または実装あるいはその両方を行うことができる。ケーブル33は装置34内に直接終端処理することができる。あるいは、さまざまなパンチダウン、もしくはRJ45タイプのようなジャックモジュール40、ジャックモジュールカセット、その他いろいろなコネクタタイプ、またはそれらを組み合わせたもので終端処理することができる。パッチケーブル32は一般にプラグ36で終端処理する。
【0015】
図6は、一般的にRJ45プラグに合う筐体42、プラグに嵌合する8つのPIC56があり、スレッド60の周りを覆い、硬質基板46と接合する突出部44を含む、ジャック40のより詳細な分解図を示す。硬質基板46はIDS48とIDCを保持する後部スレッド50に接続する。ワイヤーキャップ52で、配線内の金属線をIDCに接続できる。これはまた、図1および図2のジャックの一部でもあるが、この図には示していない。突出部44は、柔軟回路基板54、プラグ接続接点56、前面下部スレッド58および前面上部スレッド60を含む。図1および図2と図6は、それぞれに2つのホイルラベル設計24と28を示しているが、図6は、第1の側面72と左右対称の第2の側面74とを有し、その間に隙間76を備える改良されたホイルラベル70を図示している(図7も参照)という点で異なる。ここで示した硬質基板46の設計は、ホイル24、28、70の3つすべてで使用される。ホイル28のように、ホイルラベル70はジャックと近接するPICとプラグとの間のカップリングを減らす効果がある伸張部78を含む。
【0016】
クロストーク補正コンポーネントは、PIC56と柔軟基板54の両方に、図8、および図9〜図10で示すようにそれぞれ含むことができる。図8は、第1から第8接点の順にあるPIC56を示す。図8に示す領域は、(a)突出部において導体4および6間に容量性かつ誘導性カップリングを形成する領域81(対3−6と対7−8との間の補償)、(b)突出部において導体6および8間に容量性かつ誘導性カップリングを形成する領域83(対3−6と対7−8との間の補償)、(c)突出部において導体3および5間に容量性カップリングを形成する領域85(対4−5と対3−6との間の補償)、および、(d)突出部において導体1および3間に容量性および誘導性カップリングを形成する領域87(対3−6と対1−2との間の補償)、を有する。突出部のうちプラグと接合する領域89は、明確性のために削除されている。図9には、キャパシタを有する柔軟回路基板54が示される。柔軟回路基板のうち突出部においてPICと接触する部分を符号91で示し、接触領域1”〜8”は、図8に示すように、プラグ接続接点56と接触する。特に図11と図12を参照すると、硬質基板46もクロストーク補正コンポーネント(同じまたは反対の極性のプラグのクロストークコンポーネントのいずれか)を含む。これは特に図12にC45を除いて示されている。C45は、前述のように対4−5のより高い周波数でのリターンロスマージンを、第2インピーダンス領域の相対的に高いインピーダンスを減らすことで改善する。この修正の結果、リターンロスはより低い周波数で相対的に悪くなるが、対象の周波数帯域での全体的なマージンは改善する。硬質基板46には、やはり米国仮特許出願整理番号61/090,403で説明する格子型の補償を含む。
【0017】
本発明の新しい態様の1つは、すべての対とジャックのホイルラベル間に存在する本来不平衡なカップリングへの対処である。この不平衡の主な理由を図6に示す。ジャックの端の近くにあるIDC48(ピン5、2、6、7)のホイルに対する容量性カップリングはジャックの端の近くにないIDC48(ピン4、1、3、8)よりも強くなる。これは特に、IDC5および2がホイルの近くにある対4−5と対1−2で、1と4はそこから遠くに離れているため実際に発生する。
【0018】
ホイルシールドに対する対を平衡させるための硬質基板での解決策の一実施形態を図11に示す。図11は、ホイルカバー70の位置を符号Dで示す(図において符号D(70)を付す)。この実施形態では、硬質基板46には導電トレースの4つの層がある。IDCビアはIDCを受け入れて保持する。IDCビアは図11の基板上部に5’−4’−1’−2’、基板の下端に7’−8’−3’−6’の符号が付いており、各種層のトレースの一部に相互接続するめっきされたスルーホールもある。信号または雑音は、ホイルラベル70に、特にIDCビアおよびIDC5’、2’、6’、7’を通って比較的強くカップリングすることができる。対4−5では、例えば、IDCビア5’およびIDC5’はIDCビア4’およびIDC4’よりも大幅にホイルラベル70に近い。この対を平衡させるには、導電性トレーススタブ90がホイル70の近くの基板46の端に近づけてルーティングされ、PICビア4へ接続することによって、トレース4(PICビア4とIDCビア4’に相互接続する導電性トレース)に電気的に接続する。これによりスタブ90は導体5およびホイルに対して導体4を平衡する。追加的に、および/または代替的に、トレース4は硬質基板46の端に比較的近づけてルーティングし、ホイル70へのカップリングを増加させることができる。示されている実施形態では、スタブ90は幅0.008インチ、長さ0.220インチで、2分の1オンスの銅(約0.0007インチ厚)だが、他の厚さ、幅、および長さでもよい。図11は、対応するプラグ接触接点を硬質基板48に取り付けるビアを符号1〜8で示す。
【0019】
対1−2と同様、例えばIDCビア2’およびIDC2’は、IDCビア1’およびIDC1’よりも大幅にホイル70に近い。この対を平衡させるには、導電性トレーススタブ92をホイル70の近くの基板46の端に近づけてルーティングし、トレース1(PICビア1およびIDCビア1’に相互接続する導電性トレース)にめっきされたスルーホールを通して接続する。スタブ92はスタブ90と同様である。ただし、硬質基板46の広さに限界があることから、スタブ92は幅0.005インチ、長さ0.075インチ、1オンスの銅(約0.0014インチ厚に0.002〜0.0035の厚さになるようめっきを追加して施す)であるが、他の厚さ、幅、長さでもよい。この比較的短い長さを補償するため、トレース1を基板の端に極めて近づけて(ホイル70に一層近づけて)、さらに対1−2を平衡させ、めっきされたスルーホール94で、ホイル70に容量的にカップリングした大きな表面積を第3方向(基板の厚さ方向)に実現し、より強力なカップリングを導体1とホイル70の間に与える。これにより、ホイル70に対して対1−2が平衡となる。通常96にあるめっきされていないスルーホールはNEXT補償領域により近いトレース4とトレース5との間のキャパシタンスを減らし、よりよいインピーダンス整合によりリターンロスでの補正要素の効果を抑える。
【0020】
ホイルに対する対平衡の結果と、分割したホイルの使用方法を図13に示す。隣り合うホイル72および74間の容量性カップリング101は、隙間76により十分に減衰される。本発明は、ホイルに対する対平衡により、ホイル上の矢印C方向のコモンモード電流I’を低くし、分割したホイルが近接ジャックから近接ジャックへのコモンモード電流の伝播に対する低ロス経路をなくす。エイリアンクロストークマージンの全体的な改善は、本発明の改良により少なくとも4dBとなることが示された。さらに、本発明は図1、2、6、および14の対称的なホイル設計のそれぞれで有利に使うことができるが、図1および図2の設計はこの特性および分割したシールドの利点を持たない。図14は、金属化部分に隙間105がある、連続した単一のホイル103を含む。
【0021】
本発明の他の態様では、スルーホール100(図11に示す)がC45と反対の効果を持ち、スルーホール98は不要なため除外することができる。コンデンサC24の追加およびC15の除外により、対45−12の組み合わせのNEXTは、米国の仮特許出願第61/090403号と比べ改善する。その他の、米国仮特許出願第61/090403号との比較については次の通りである。誘導トレースL3を使用して、新しい誘導管L3Lに沿ってトレース3をC38に接続し、格子型補正を使用して36−38NEXTを改善する。L6の配向を変更して硬質基板の端からさらに遠くに動かすと、ホイルへのカップリングが減少する。C58とC16の位置を動かすと、本発明の新しいアートワークにより良く適合する。
【0022】
図15〜図17の非対称ホイル設計は一般に図11で示す平衡回路の、硬質基板46の端に導電性シールドが少ないかまたは無い、より小さい平衡コンポーネントを置くなどの修正が必要である。つまり、より小さな平衡コンポーネントをいかなる導電性ホイルやシールドにも近接していない硬質基板の特定の部分に配置するということである。概念的に、各差動対は複数のホイル部分が、ホイルの各部分がジャックに対して平衡しているように、ホイルの各部分と平衡を達成する必要がある。図15は、1つの側109にいかなる金属もない(ここで示す一実施形態は反対の側が金属化されるよう反転することができることに留意されたい)ホイルラベル107の一実施形態を示している。図15の実施形態において、金属を有さない側109は、接着剤層、塗装層および保護層のみで構成されており、他側111には、金属製裏張りが設けられている。図16は、金属化する領域115が部分的に選択されたホイルラベル113の一実施形態を示す。また、図17はジャックの片側と上部または下部がホイルで覆われ、1つの側に何も覆いがないままの、L字型の金属化されたホイルであるホイルラベル117の一実施形態を示す。図17で示した実施形態は反対側をホイルにし、図17に示す側を取り除くよう修正することができることに留意されたい。
【0023】
本発明の他の実施形態は、図11の回路基板を備えているがIDCビア1と5との間にコンデンサC15を備えたジャック、または図11の回路基板を備えているが接続されているトレースを含めて完全に基板からコンデンサC24を除去したジャックを含む。本発明の別の実施形態は柔軟基板を除去している。
【0024】
この発明は好ましい設計を持つよう示されているが、本発明はさらに本開示の精神および範囲内で修正することができる。本出願は従って、その一般的な原理を使用した本発明のいかなるバリエーション、使用方法、または適用も包含することを意図する。
【符号の説明】
【0025】
1,2,3,4,5,6,7,8 ピン、20 ジャックアセンブリ、22 ジャック、24 シールド、26 ジャックアセンブリ、28 ホイルラベル、29 側面、30 通信システム、32 パッチケーブル、33 水平ケーブル、34 装置、36 プラグ、40 ジャックモジュール、42 筐体、44 突出部、46 硬質基板、48 IDS、50 後部スレッド、52 ワイヤーキャップ、54 柔軟回路基板、56 プラグ接続接点、58 前面下部スレッド、60 前面上部スレッド、70 ホイルラベル、72 第1の側面、74 第2の側面、76 隙間、78 伸張部、90,92 導電性トレーススタブ、94,98,100 スルーホール
【背景技術】
【0001】
近端および遠端クロストーク(NEXTおよびFEXT)、ならびにエイリアン近端およびエイリアン遠端クロストーク(ANEXTおよびAFEXT)において、通信チャネルのマージンをより多く取得したいという継続的なニーズがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
NEXTおよびFEXTの主な原因は、プラグ/ジャックの組み合わせのプラグ内にあり、一般にジャック内で相殺される。エイリアンクロストークの主な原因は、チャネル間、特に隣接したジャック間をカップリングする同相雑音であり、差動エイリアンクロストークに変換される(モード変換)。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【図1A】本発明のホイルシールド付きジャックの一実施形態の斜視図である。
【図1B】同じく、本発明のホイルシールド付きジャックの一実施形態の斜視図である。
【図2A】本発明のホイルシールド付きジャックの別の実施形態の斜視図である。
【図2B】同じく、本発明のホイルシールド付きジャックの別の実施形態の斜視図である。
【図3】図1A及び図1Bの線3−3での断面の断面図で、本発明の接着ホイル素材の積み重ねを示した図である。
【図4】ジャックの差動クロストークに変換して戻す近くのジャックのジャックホイルシールドに沿ったコモンモード伝播により生じるエイリアンクロストークを示す概略図である。
【図5】本発明の通信システムの一実施形態の部分斜視図である。
【図6A】本発明のモジュラージャックの一実施形態の分解斜視図である。
【図6B】同じく、本発明のモジュラージャックの一実施形態の分解斜視図である。
【図7A】図6A及び図6Bのジャックのいくつかの態様の斜視図である。
【図7B】同じく、図6A及び図6Bのジャックのいくつかの態様の斜視図である。
【図8】図6A及び図6Bのジャックのプラグ接続接点の斜視図である。
【図9】図6A及び図6Bのジャックの複数層柔軟回路基板の透視斜視図である。
【図10】図9の柔軟回路基板の回路図である。
【図11】図6A及び図6Bのジャックの複数層硬質回路基板についての透視斜視図である。
【図12】図11の硬質回路基板の回路図である。
【図13】分割ホイルの使用を通じたジャックホイルシールドに沿ったコモンモード伝播を防ぐことによる本発明に従ったエイリアンクロストークの減少方法についての概略図である。
【図14】本発明のホイルシールド付きジャックで、ホイルシールドがつながっているが金属化層に隙間がある別の実施形態の分解斜視図である。
【図15】本発明のホイルシールド付きジャックで、ホイルシールドがつながっているが金属化層が下部および片側のみにある別の実施形態の分解斜視図である。
【図16】本発明のホイルシールド付きジャックで、ホイルシールドがつながっているが金属層があるホイルの選択的領域がある別の実施形態の分解斜視図である。
【図17】本発明のホイルシールド付きジャックで、ホイルシールドが連続した金属化部分でつながっているがホイルには片側と上部分のみが含まれる別の実施形態の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
対応する参照文字は、複数の図にわたって対応する部品を示す。本明細書で説明する例は本発明の好ましい実施形態の一部であり、このような例は本発明の範囲をいかなる方法においても制限するものと解釈されるものではない。
【0005】
補償方法および機器は、参照により本明細書ですべて説明するように組み込まれる、米国仮特許出願第61/090403号、「High-Speed Connector with Multi-Stage Compensation」(2008年8月20日出願)の改良されたカテゴリ6A(CAT6A)RJ45ジャック設計の新規設計で示されており、これは500MHzでのTIAカテゴリ6A規格を超える。このジャックは、要求の厳しい顧客に応じるため近端クロストーク(NEXT)、遠端クロストーク(FEXT)、リターンロスに対してよりマージンを取得したいという産業界のニーズに対応するものである。さらに、このジャックは、ジャック内で発生する差動からコモン、コモンから差動モード変換(本明細書では「モード変換」と呼ぶ)を減らし、システムのエイリアンクロストーク性能を改善する。
【0006】
これも参照により本明細書ですべて説明するように組み込まれる、米国特許出願公開第2006/0134995号では、ジャックが互いに隣に設置されている場合の圧接接点(IDC)でのコネクタ間のANEXTの量を減らす導電性カバー層を備えた通信ジャックを開示している。これらの導電性層またはホイルは、上記で引用した米国仮特許出願第61/090403号の一部でもある。
【0007】
他の進歩としては、本発明は高周波数でのジャックリターンロスのマージンに関するチャネルおよびパーマネントリンクの性能の現在の限界の一部に対応する。本発明の一実施形態では、ジャックの伝送回線コンポーネントに、プラグに嵌合し、スレッドおよび接続を硬質回路基板で覆うプラグ接続接点(PIC)と、スレッドをPICと接触するコンポーネントで覆った柔軟回路基板と、硬質回路基板の回路要素と、硬質回路基板に結合し、配線内の金属線をIDCに接続できるIDCとを含めることができる。プラグ/PIC、柔軟基板、硬質基板のPIC領域、および硬質基板の補正領域は、第1のインピーダンス領域であると考えられる。また、硬質基板のIDCビア領域およびIDCは、第1のインピーダンス領域に続く第2のインピーダンス領域だと考えられる。ジャックコネクタが相対的に低インピーダンス領域(第1のインピーダンス領域において)で、その後に比較的高インピーダンス領域(第2のインピーダンス領域において)が続く領域を有する場合、低周波数でのリターンロスのマージンがより大きいが、高周波数でのリターンロスのマージンがより少なくなる。ジャックに第1の低インピーダンス領域のみがあり、相対的に高インピーダンスの第2の領域がない場合、低周波数ではマージンが少なく、周波数が高くなると相対的なマージンはより大きくなる(低インピーダンス領域の次に相対的に高インピーダンス領域が続くジャックの場合と比べて)。同様の関係が、振幅値がこの説明と反対の場合に当てはまる。例えば、高インピーダンス領域の後に低インピーダンス領域が続くジャックの場合で、このとき低インピーダンス領域のインピーダンスの増加がリターンロスを改善する。
【0008】
対4−5は、一般に、今日のジャック設計で高周波数におけるリターンロスマージンが最低の対である。一般的に言うと、対4−5はプラグ/PIC、柔軟基板、硬質基板のPIC領域、および硬質基板の補正領域によって生じる低インピーダンス領域と、それに続くIDCとワイヤーキャップのそれぞれに生じる高インピーダンス領域とを有する。本発明の特徴は、高インピーダンス領域のインピーダンスを、リターンロスが低周波数で相対的に悪くなるが、高周波数におけるマージンを改善するよう減らし、結果CAT6A仕様に関するリターンロスマージンを全体的に改善することである。インピーダンスとキャパシタンスの関係は、一般にZ=√(L/C)から得られるため、キャパシタンスを高インピーダンス領域に追加して高インピーダンス領域のインピーダンスを減らす。
【0009】
1つの領域内にたくさんのジャックが集まっている配線盤やコンセントでは、隣り合うジャック間のエイリアンクロストークが高レベルで起こる可能性がある。以前のこの概念に関する理解は、このカップリングは主に、隣り合う金属線や近接するプラグとジャックのブレードが近いこと、および特に互いに近接して走る平行部分により生じる誘導差動カップリングによるものであるとされていた。図1および図2のホイルラベルの設計はこの問題に対処する。図1では、ジャックアセンブリ20にはジャック22と接着により取り付けられたホイルラベルまたはシールド24とを含む。例えば、ジャック22はCAR6Aジャック設計にすることができる。または、CAT6、CAT7、またはその他のジャックも使用できる。図2はジャック22と接着により取り付けられたホイルラベル28と、そこから伸張する側面29を含むジャックアセンブリ26の図解である。これらのホイルラベル24、28は主に隣り合うジャック間で生じるエイリアンクロストークの量を減らすために使用される。隣り合わないジャックからのカップリングレベルは、相対的に離れているため既に非常に低くなっているためである。図1および図2には示されていないが、ジャック20、26は一般に図6に示すワイヤーキャップや図6の他の要素を含むことができる。ホイルラベルは金属製裏張り14、次に塗装層12と保護コーティング10付きの接着剤18を図3に示すように含む。
【0010】
しかしながら、高レベルの同相雑音を伴うチャネル環境では、ホイルシールドによりコモンモード電流が、図4の矢印Aで示すように隣り合うジャック27へ、および近接ジャックを超えて流れるように、電気的接続(近接ジャックへの容量性カップリングを伴うジャック周囲に導電経路を備えた)がもたらされることが観察された。これは、隣り合わないジャック間に著しいエイリアンクロストークを生じさせ、隣り合うジャック間のエイリアンクロストークの量をさらに増加させる。一部のジャックが、それぞれに図1および図2に従ってホイルシールドを含んでおり、互いに隣り合っている場合、隣り合う導電性ホイル29間の非常に大きな容量性カップリングによりコモンモード電流がジャック間を伝わる損失経路は非常に低くなり、本発明の少なくとも1つの実施形態はこの問題に対処する。図4の例において、容量性カップリング31は、隣り合うホイルが近接して接近しており、重なり合う表面積が大きいことに起因して、隣り合うホイル29間で発生する。これは、約100MHzから500MHzの間の周波数に対する減衰が低いコモンモード伝送を可能とする。コモンモード電流Iは、矢印Bで示すように形成される。図4に示すように、ジャック27間の空間は、明確性のために拡大されており、ホイル29は、図示の目的でジャック筐体から離間して示されている。ジャック内のコモンモード信号は、ANEXTおよび/またはAFEXTとなる。
【0011】
本発明に従う別の態様では、モード変換を最低限にするため、プラグ/ジャック連結内のすべての差動対の組み合わせ間で容量性および誘導負荷を平衡させることが望ましい。
また、さらにモード変換を減らすため、ジャックのパーツを覆うホイルラベル設計に対して各差動対を平衡させることも望ましい。
【0012】
本明細書で説明しているのはホイルラベルが付いたジャックの新しい設計とホイルラベルに対するジャックの差動対ごとの平衡を改良した改良した硬質回路基板、さらに上記で説明した問題への対処の改善方法である。本発明は、ジャックのモード変換を減らし、エイリアンクロストークを改善する。
【0013】
図面、特に図5を参照すると、通信システム30が示されているが、これはパッチケーブル32や水平ケーブル33といった装置34に接続される通信ケーブルを含むことができる。装置34は図5で配線盤として描かれているが、装置は受信型装置または能動型装置でもよい。受動型装置の例はモジュラー配線盤、パンチダウン配線盤、カプラ配線盤、壁付コンセントなどを挙げることができるがこれらに限定されない。能動型装置の例はイーサネット(登録商標)スイッチ、ルータ、サーバ、物理層管理システム、データセンター/遠隔通信室に見られるパワー・オーバー・イーサネット装置、セキュリティ装置(カメラやその他センサーなど)およびドアアクセス装置、ならびにワークステーション領域に見られる電話、コンピュータ、ファクス機、プリンタおよびその他機器などが上げられるがこれらに限定されない。通信システム30はさらに、キャビネット、ラック、ケーブル管理およびオーバーヘッドルーティングシステム、ならびにその他同様の装置を含むことができる。
【0014】
通信ケーブル32と33は、非シールドより対線(UTP)ケーブルの形式で示されているが、より具体的には10Gb/秒で動作するCAT6Aケーブルである。しかし、本発明は、さまざまな通信ケーブルとの接続で適用または実装あるいはその両方を行うことができる。ケーブル33は装置34内に直接終端処理することができる。あるいは、さまざまなパンチダウン、もしくはRJ45タイプのようなジャックモジュール40、ジャックモジュールカセット、その他いろいろなコネクタタイプ、またはそれらを組み合わせたもので終端処理することができる。パッチケーブル32は一般にプラグ36で終端処理する。
【0015】
図6は、一般的にRJ45プラグに合う筐体42、プラグに嵌合する8つのPIC56があり、スレッド60の周りを覆い、硬質基板46と接合する突出部44を含む、ジャック40のより詳細な分解図を示す。硬質基板46はIDS48とIDCを保持する後部スレッド50に接続する。ワイヤーキャップ52で、配線内の金属線をIDCに接続できる。これはまた、図1および図2のジャックの一部でもあるが、この図には示していない。突出部44は、柔軟回路基板54、プラグ接続接点56、前面下部スレッド58および前面上部スレッド60を含む。図1および図2と図6は、それぞれに2つのホイルラベル設計24と28を示しているが、図6は、第1の側面72と左右対称の第2の側面74とを有し、その間に隙間76を備える改良されたホイルラベル70を図示している(図7も参照)という点で異なる。ここで示した硬質基板46の設計は、ホイル24、28、70の3つすべてで使用される。ホイル28のように、ホイルラベル70はジャックと近接するPICとプラグとの間のカップリングを減らす効果がある伸張部78を含む。
【0016】
クロストーク補正コンポーネントは、PIC56と柔軟基板54の両方に、図8、および図9〜図10で示すようにそれぞれ含むことができる。図8は、第1から第8接点の順にあるPIC56を示す。図8に示す領域は、(a)突出部において導体4および6間に容量性かつ誘導性カップリングを形成する領域81(対3−6と対7−8との間の補償)、(b)突出部において導体6および8間に容量性かつ誘導性カップリングを形成する領域83(対3−6と対7−8との間の補償)、(c)突出部において導体3および5間に容量性カップリングを形成する領域85(対4−5と対3−6との間の補償)、および、(d)突出部において導体1および3間に容量性および誘導性カップリングを形成する領域87(対3−6と対1−2との間の補償)、を有する。突出部のうちプラグと接合する領域89は、明確性のために削除されている。図9には、キャパシタを有する柔軟回路基板54が示される。柔軟回路基板のうち突出部においてPICと接触する部分を符号91で示し、接触領域1”〜8”は、図8に示すように、プラグ接続接点56と接触する。特に図11と図12を参照すると、硬質基板46もクロストーク補正コンポーネント(同じまたは反対の極性のプラグのクロストークコンポーネントのいずれか)を含む。これは特に図12にC45を除いて示されている。C45は、前述のように対4−5のより高い周波数でのリターンロスマージンを、第2インピーダンス領域の相対的に高いインピーダンスを減らすことで改善する。この修正の結果、リターンロスはより低い周波数で相対的に悪くなるが、対象の周波数帯域での全体的なマージンは改善する。硬質基板46には、やはり米国仮特許出願整理番号61/090,403で説明する格子型の補償を含む。
【0017】
本発明の新しい態様の1つは、すべての対とジャックのホイルラベル間に存在する本来不平衡なカップリングへの対処である。この不平衡の主な理由を図6に示す。ジャックの端の近くにあるIDC48(ピン5、2、6、7)のホイルに対する容量性カップリングはジャックの端の近くにないIDC48(ピン4、1、3、8)よりも強くなる。これは特に、IDC5および2がホイルの近くにある対4−5と対1−2で、1と4はそこから遠くに離れているため実際に発生する。
【0018】
ホイルシールドに対する対を平衡させるための硬質基板での解決策の一実施形態を図11に示す。図11は、ホイルカバー70の位置を符号Dで示す(図において符号D(70)を付す)。この実施形態では、硬質基板46には導電トレースの4つの層がある。IDCビアはIDCを受け入れて保持する。IDCビアは図11の基板上部に5’−4’−1’−2’、基板の下端に7’−8’−3’−6’の符号が付いており、各種層のトレースの一部に相互接続するめっきされたスルーホールもある。信号または雑音は、ホイルラベル70に、特にIDCビアおよびIDC5’、2’、6’、7’を通って比較的強くカップリングすることができる。対4−5では、例えば、IDCビア5’およびIDC5’はIDCビア4’およびIDC4’よりも大幅にホイルラベル70に近い。この対を平衡させるには、導電性トレーススタブ90がホイル70の近くの基板46の端に近づけてルーティングされ、PICビア4へ接続することによって、トレース4(PICビア4とIDCビア4’に相互接続する導電性トレース)に電気的に接続する。これによりスタブ90は導体5およびホイルに対して導体4を平衡する。追加的に、および/または代替的に、トレース4は硬質基板46の端に比較的近づけてルーティングし、ホイル70へのカップリングを増加させることができる。示されている実施形態では、スタブ90は幅0.008インチ、長さ0.220インチで、2分の1オンスの銅(約0.0007インチ厚)だが、他の厚さ、幅、および長さでもよい。図11は、対応するプラグ接触接点を硬質基板48に取り付けるビアを符号1〜8で示す。
【0019】
対1−2と同様、例えばIDCビア2’およびIDC2’は、IDCビア1’およびIDC1’よりも大幅にホイル70に近い。この対を平衡させるには、導電性トレーススタブ92をホイル70の近くの基板46の端に近づけてルーティングし、トレース1(PICビア1およびIDCビア1’に相互接続する導電性トレース)にめっきされたスルーホールを通して接続する。スタブ92はスタブ90と同様である。ただし、硬質基板46の広さに限界があることから、スタブ92は幅0.005インチ、長さ0.075インチ、1オンスの銅(約0.0014インチ厚に0.002〜0.0035の厚さになるようめっきを追加して施す)であるが、他の厚さ、幅、長さでもよい。この比較的短い長さを補償するため、トレース1を基板の端に極めて近づけて(ホイル70に一層近づけて)、さらに対1−2を平衡させ、めっきされたスルーホール94で、ホイル70に容量的にカップリングした大きな表面積を第3方向(基板の厚さ方向)に実現し、より強力なカップリングを導体1とホイル70の間に与える。これにより、ホイル70に対して対1−2が平衡となる。通常96にあるめっきされていないスルーホールはNEXT補償領域により近いトレース4とトレース5との間のキャパシタンスを減らし、よりよいインピーダンス整合によりリターンロスでの補正要素の効果を抑える。
【0020】
ホイルに対する対平衡の結果と、分割したホイルの使用方法を図13に示す。隣り合うホイル72および74間の容量性カップリング101は、隙間76により十分に減衰される。本発明は、ホイルに対する対平衡により、ホイル上の矢印C方向のコモンモード電流I’を低くし、分割したホイルが近接ジャックから近接ジャックへのコモンモード電流の伝播に対する低ロス経路をなくす。エイリアンクロストークマージンの全体的な改善は、本発明の改良により少なくとも4dBとなることが示された。さらに、本発明は図1、2、6、および14の対称的なホイル設計のそれぞれで有利に使うことができるが、図1および図2の設計はこの特性および分割したシールドの利点を持たない。図14は、金属化部分に隙間105がある、連続した単一のホイル103を含む。
【0021】
本発明の他の態様では、スルーホール100(図11に示す)がC45と反対の効果を持ち、スルーホール98は不要なため除外することができる。コンデンサC24の追加およびC15の除外により、対45−12の組み合わせのNEXTは、米国の仮特許出願第61/090403号と比べ改善する。その他の、米国仮特許出願第61/090403号との比較については次の通りである。誘導トレースL3を使用して、新しい誘導管L3Lに沿ってトレース3をC38に接続し、格子型補正を使用して36−38NEXTを改善する。L6の配向を変更して硬質基板の端からさらに遠くに動かすと、ホイルへのカップリングが減少する。C58とC16の位置を動かすと、本発明の新しいアートワークにより良く適合する。
【0022】
図15〜図17の非対称ホイル設計は一般に図11で示す平衡回路の、硬質基板46の端に導電性シールドが少ないかまたは無い、より小さい平衡コンポーネントを置くなどの修正が必要である。つまり、より小さな平衡コンポーネントをいかなる導電性ホイルやシールドにも近接していない硬質基板の特定の部分に配置するということである。概念的に、各差動対は複数のホイル部分が、ホイルの各部分がジャックに対して平衡しているように、ホイルの各部分と平衡を達成する必要がある。図15は、1つの側109にいかなる金属もない(ここで示す一実施形態は反対の側が金属化されるよう反転することができることに留意されたい)ホイルラベル107の一実施形態を示している。図15の実施形態において、金属を有さない側109は、接着剤層、塗装層および保護層のみで構成されており、他側111には、金属製裏張りが設けられている。図16は、金属化する領域115が部分的に選択されたホイルラベル113の一実施形態を示す。また、図17はジャックの片側と上部または下部がホイルで覆われ、1つの側に何も覆いがないままの、L字型の金属化されたホイルであるホイルラベル117の一実施形態を示す。図17で示した実施形態は反対側をホイルにし、図17に示す側を取り除くよう修正することができることに留意されたい。
【0023】
本発明の他の実施形態は、図11の回路基板を備えているがIDCビア1と5との間にコンデンサC15を備えたジャック、または図11の回路基板を備えているが接続されているトレースを含めて完全に基板からコンデンサC24を除去したジャックを含む。本発明の別の実施形態は柔軟基板を除去している。
【0024】
この発明は好ましい設計を持つよう示されているが、本発明はさらに本開示の精神および範囲内で修正することができる。本出願は従って、その一般的な原理を使用した本発明のいかなるバリエーション、使用方法、または適用も包含することを意図する。
【符号の説明】
【0025】
1,2,3,4,5,6,7,8 ピン、20 ジャックアセンブリ、22 ジャック、24 シールド、26 ジャックアセンブリ、28 ホイルラベル、29 側面、30 通信システム、32 パッチケーブル、33 水平ケーブル、34 装置、36 プラグ、40 ジャックモジュール、42 筐体、44 突出部、46 硬質基板、48 IDS、50 後部スレッド、52 ワイヤーキャップ、54 柔軟回路基板、56 プラグ接続接点、58 前面下部スレッド、60 前面上部スレッド、70 ホイルラベル、72 第1の側面、74 第2の側面、76 隙間、78 伸張部、90,92 導電性トレーススタブ、94,98,100 スルーホール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体を少なくとも部分的に覆うホイルと、
を備え、
前記ホイルが、第1の部分及び第2の部分を有し、隙間が、前記第1の部分を前記第2の部分から離間させることを特徴とする通信コネクタ。
【請求項2】
前記ホイルの前記第1の部分が、前記筐体の第1の側面を少なくとも部分的に覆い、
前記ホイルの前記第2の部分が、前記筐体の第2の側面を少なくとも部分的に覆い、
前記筐体の前記第1の側面が、前記筐体の前記第2の側面の反対側にあることを特徴とする請求項1に記載の通信コネクタ。
【請求項3】
前記ホイルの前記第1の部分が、前記ホイルの前記第2の部分とは左右対称であることを特徴とする請求項2に記載の通信コネクタ。
【請求項4】
前記ホイルの前記第1の部分と前記ホイルの前記第2の部分とが、前記筐体の上部及び下部のうちの少なくとも一方を少なくとも部分的に覆うことを特徴とする請求項3に記載の通信コネクタ。
【請求項5】
筐体と、
前記筐体を少なくとも部分的に覆うホイルと、
を備え、
前記ホイルが、第1の金属化部分及び第2の金属化部分を有し、金属化しない部分が、前記第1の金属化部分を前記第2の金属化部分から離間させることを特徴とする通信コネクタ。
【請求項6】
前記第1の金属化部分が、前記筐体の第1の側面を少なくとも部分的に覆い、
前記第2の金属化部分が、前記筐体の第2の側面を少なくとも部分的に覆い、
前記筐体の前記第1の側面が、前記筐体の前記第2の側面の反対側にあることを特徴とする請求項5に記載の通信コネクタ。
【請求項7】
前記第1の金属化部分が、前記第2の金属化部分とは左右対称であることを特徴とする請求項6に記載の通信コネクタ。
【請求項8】
前記第1の金属化部分と前記第2の金属化部分とが、前記筐体の上部及び下部のうちの少なくとも一方を部分的に覆うことを特徴とする請求項7に記載の通信コネクタ。
【請求項1】
筐体と、
前記筐体を少なくとも部分的に覆うホイルと、
を備え、
前記ホイルが、第1の部分及び第2の部分を有し、隙間が、前記第1の部分を前記第2の部分から離間させることを特徴とする通信コネクタ。
【請求項2】
前記ホイルの前記第1の部分が、前記筐体の第1の側面を少なくとも部分的に覆い、
前記ホイルの前記第2の部分が、前記筐体の第2の側面を少なくとも部分的に覆い、
前記筐体の前記第1の側面が、前記筐体の前記第2の側面の反対側にあることを特徴とする請求項1に記載の通信コネクタ。
【請求項3】
前記ホイルの前記第1の部分が、前記ホイルの前記第2の部分とは左右対称であることを特徴とする請求項2に記載の通信コネクタ。
【請求項4】
前記ホイルの前記第1の部分と前記ホイルの前記第2の部分とが、前記筐体の上部及び下部のうちの少なくとも一方を少なくとも部分的に覆うことを特徴とする請求項3に記載の通信コネクタ。
【請求項5】
筐体と、
前記筐体を少なくとも部分的に覆うホイルと、
を備え、
前記ホイルが、第1の金属化部分及び第2の金属化部分を有し、金属化しない部分が、前記第1の金属化部分を前記第2の金属化部分から離間させることを特徴とする通信コネクタ。
【請求項6】
前記第1の金属化部分が、前記筐体の第1の側面を少なくとも部分的に覆い、
前記第2の金属化部分が、前記筐体の第2の側面を少なくとも部分的に覆い、
前記筐体の前記第1の側面が、前記筐体の前記第2の側面の反対側にあることを特徴とする請求項5に記載の通信コネクタ。
【請求項7】
前記第1の金属化部分が、前記第2の金属化部分とは左右対称であることを特徴とする請求項6に記載の通信コネクタ。
【請求項8】
前記第1の金属化部分と前記第2の金属化部分とが、前記筐体の上部及び下部のうちの少なくとも一方を部分的に覆うことを特徴とする請求項7に記載の通信コネクタ。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−93335(P2013−93335A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−31799(P2013−31799)
【出願日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【分割の表示】特願2011−538733(P2011−538733)の分割
【原出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(507202736)パンドウィット・コーポレーション (70)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【分割の表示】特願2011−538733(P2011−538733)の分割
【原出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(507202736)パンドウィット・コーポレーション (70)
【Fターム(参考)】
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