説明

プラスチックフィルムの印刷方法およびプラスチックフィルムと一体に成形された電子機器筐体

【課題】プラスチックフィルムをインモールド成形された電子機器筐体のプラスチックフィルムの表面に安定性よく印刷できる印刷方法を提供する。
【解決手段】プラスチックフィルム表面にインクを塗布する第1のステップと、第1のステップで塗布されたインクを覆うようにクリアインクを塗布する第2のステップとを有するように、インモールド成形によって電子機器筐体と一体に成形されたプラスチックフィルムの印刷方法を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールド成形された筐体のプラスチックフィルム表面に印刷する印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器のコモディティ化が進展している昨今、機器自体の機能や性能に加えて、機器筐体のデザインが電子機器選択にあたって重要度を増している。この観点からは、デザインに対する購入者の好みは多種多様であるため、同一機器について多種多様なデザインを有する筐体を用意するのが好ましい。
【0003】
しかし、筐体自体の形状を多様なものとして用意するとなると、内部構造まで変更が必要となる場合があるため、変更は容易でない。また、筐体成形のための金型を形状パターンの数だけ作成する必要があるため、費用面でも好ましくない。
【0004】
そこで、同一形状の筐体を採用しつつ、表面の色や模様を変更することで、デザインに対する多種多様な購入者の好みに対応することが、試みられている。具体的には、立体的な筐体に多種多様な色や模様を直接印刷するのは困難なので、一旦平面的なプラスチックフィルムを多種多様に印刷してから、そのプラスチックフィルムとともに筐体をインモールド成形することで、多種多様なデザインを有する筐体が作成されている。
【0005】
一方、購入者の機能に対する多種多様な要求に対応すべく、同一筐体の電子機器の内部構成を購入者の指示に従って作成する、BTO(Build to order)形式の生産が行われている。BTOで指示される内容によっては、筐体表面のデザインを変更する必要が生じる。例えば、非接触型カードリーダライタを搭載する場合、筐体表面にカードを読み書きするための場所を表示しておくのが好ましい。
【0006】
このようなデザイン変更に対応するために、筐体に貼付するプラスチックフィルムへの印刷内容を変更するのは、複数の印刷内容のプラスチックフィルムとともにインモールド成形された筐体を事前に準備して使い分ける必要があり、管理が煩雑となって、好ましくない。
【0007】
インモールド成形された筐体表面のプラスチックフィルム上に、BTO内容に応じて印刷をすれば、かかる問題を解決することができる。プラスチックフィルムをインモールド成形すると、表面平滑度が大きく、表面にインクを塗布しても浸透しない。よって、単純にインクをプラスチックフィルム表面に配置しただけでははがれやすく、安定性に欠ける。特許文献1には、プラスチックフィルム上に安定性よく印刷する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−3176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の方法は、プラスチックフィルムの表面を粗面加工などによって紙としての性質を持たせ、顔料を分散させた熱硬化性樹脂をプラスチックフィルムの表面に印刷塗布し、熱硬化性樹脂の硬化温度以上かつプラスチックフィルムの溶融温度以下で加熱することを特徴としている。
【0010】
この方法では、印刷内容をプラスチックフィルムからはがれにくくするためにプラスチックフィルムの表面を粗面加工している。そのため、印刷工程が複雑となるとともに、高精細な印刷に対応することが困難である。例えば、印刷対象よりも大きな範囲に粗面加工を行うと、デザインの外観を損ない、逆に小さな範囲に行うと印刷された熱硬化性樹脂がプラスチックフィルム表面からはがれやすくなる。
【0011】
そこで、本発明は、プラスチックフィルムをインモールド成形された筐体のプラスチックフィルム表面に安定性よく印刷する印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のインモールド成形によって電子機器筐体と一体に成形されたプラスチックフィルムの印刷方法は、プラスチックフィルム表面にインクを塗布する第1のステップと、第1のステップで塗布されたインクを覆うようにクリアインクを塗布する第2のステップとを有することを特徴とする。
【0013】
本発明のインモールド成形によってプラスチックフィルムと一体に成形された電子機器筐体は、プラスチックフィルムの表面に、インクが、クリアインクに覆われて塗布されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プラスチックフィルムをインモールド成形された筐体のプラスチックフィルム表面に安定性よく印刷する印刷方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】インモールド成形によって電子機器筐体と一体に成形されたプラスチックフィルムに印刷を行う工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について詳細に説明する。図1は、インモールド成形によって電子機器筐体と一体に成形されたプラスチックフィルムに印刷を行う工程を示している。(a)は、インモールド成形によって電子機器筐体1と一体に成形されたプラスチックフィルム2の断面を示している。電子機器筐体1は、ポリカーボネートやABS樹脂などのプラスチックによって構成可能である。プラスチックフィルム2は、ポリエステルなどで構成可能である。インモールド成形されたプラスチックフィルム2の表面は、一般的に平滑であり、インクが浸透しない。
【0017】
(b)は、インモールド成形によって電子機器筐体1と一体に成形されたプラスチックフィルム2上にインク3が塗布された状態を示している。インク3は、塗布後硬化する所定のインクで構成可能であるが、粘度の小さいインク、例えば2液混合型インクを使用するとフィルム2との接触面積が大きくなるため、好適である。
【0018】
(c)は、インモールド成形によって電子機器筐体1と一体に成形されたプラスチックフィルム2上に塗布されたインク3を覆うようにクリアインク4が塗布された状態を示している。クリアインク4は、所定の透過性を有してインク3を視認可能なインクで構成可能であるが、粘度の小さいインク、例えば2液混合インクを使用するとフィルム2との接触面積が大きくなるため、好適である。
【0019】
以上のように構成することで、クリアインクがはがれるまでインクがはがれることがなくなるため、インモールド成形によって電子機器筐体と一体に成形されたプラスチックフィルム表面に安定度よく印刷することができる。また、インクと同様の工程で塗布可能なクリアインクをインクの上に塗布するので、安定性のよい印刷のために特別な設備を設ける必要がない。
【符号の説明】
【0020】
1 筐体
2 プラスチックフィルム
3 インク
4 クリアインク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム表面に所定の模様を形成するためにインクを塗布する第1のステップと、
前記第1のステップで塗布された前記インクを覆うようにクリアインクを塗布する第2のステップとを有する、インモールド成形によって電子機器筐体と一体に成形されたプラスチックフィルムの印刷方法。
【請求項2】
前記クリアインクが、塗布された面の模様を透過可能なインクであることを特徴とする、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記インクが、2液を混合することによって硬化する2液混合型インクであることを特徴とする、請求項1または2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記クリアインクが、2液を混合することによって硬化する2液混合型クリアインクであることを特徴とする、請求項1ないし3に記載の印刷方法。
【請求項5】
インモールド成形によってプラスチックフィルムと一体に成形された電子機器筐体であって、
前記プラスチックフィルムの表面に、インクが、クリアインクに覆われて塗布されていることを特徴とする、プラスチックフィルムと一体に成形された電子機器筐体。

【図1】
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