説明

プラスチックレンズのハーフ染色方法及び染色装置

【課題】 染色するプラスチックレンズの染色したい部分だけの最小限の上下移動により、効率よく、しかも目的とする所定の色調に染色することができるプラスチックレンズのハーフ染色方法、及び染色装置を提供する。
【解決手段】 染色装置1の染浴槽4に貯留する染色液S中に、レンズL表面に濃度勾配をつけたい部分まで浸漬し、シーケンス制御部31は、染色するレンズLの基本濃度勾配曲線と、入力されるレンズLの染色情報に基づいて、モーター21が上下移動する移動速度およびパルス列を計算し、計算されたパルス列をモーター21に出力することにより、レンズLが染色液S中から徐々に引き上げる上下移動を、一往復することにより、レンズLに濃度勾配を有する染色を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックレンズに濃度勾配を有する染色を施すハーフ染色方法、及び染色装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼鏡用レンズはプラスチックレンズが主流であり、プラスチックレンズはその優れた染色性から色彩変化に富むファッション性豊かなレンズを作ることができる。特に濃度勾配が連続的に形成され、染色されたハーフ染色レンズ(ぼかしレンズ、またはグラデーションレンズとも呼ばれている)は、高いファッション性を有し、高い付加価値を有している。こうした背景から、多種多様なプラスチックレンズを安定的に着色する技術が求められている。
【0003】
ところで、ハーフ染色レンズを作製するぼかし染色法の原理は、染浴槽へ浸漬する時間を変化させると共にその浸漬位置を変化させることにより、レンズ表面に連続的な染色濃度勾配を付与するものである。このようなプラスチックレンズの染色方法は、染浴槽と、この染浴槽内の染色液の温度調節をする装置と、染色されるレンズを保持しながら染色液に浸漬させる装置から構成される染色装置が用いられる。
【0004】
こうした染色装置として、大、小2種類の振幅の上下移動を同一周期で繰り返すことにより濃度勾配のついた染色ができる染色装置が開示されている(特許文献1、参照)。
また、小周期の上下移動と大周期の上下移動を繰り返すことにより濃度勾配のついた染色ができる染色装置が開示されている(特許文献2、参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭58−43427号公報
【特許文献2】特開昭63−36220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の染色装置は、いずれもレンズの上下移動を繰り返すことにより濃度勾配を付与する染色装置であり、上下移動を繰り返すことから、純粋に染色している時間以外に無駄な時間が生じている。具体的には、上昇から下降、または下降から上昇する際に、各々の方向に切り替える為に待機時間が必要になり、上下移動を繰り返す毎に無駄な待機時間が累積される。また、レンズ径の異なる全てのレンズに対して同一の上下移動が行われるため、レンズ径が小さなレンズの場合には、レンズがない部分の間も上下移動し続けるので、無駄な距離を移動する不効率が生じている。
【0007】
また、いずれの染色装置の場合も上下移動を繰り返すので、時間が経過することでレンズ表面の温度が変動する等により、レンズを目的とする所定の色調に染色するのが困難であった。こうした現象は、ハーフ染色(グラデーション染色)において特に顕著に現れる。
【0008】
そこで本発明は、こうした事情に鑑みなされたもので、染色するプラスチックレンズの染色したい部分だけの最小限の上下移動により、効率よく、しかも目的とする所定の色調に染色することができるプラスチックレンズのハーフ染色方法、及び染色装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記問題を解決するために、ハーフ染色の基本濃度勾配曲線に沿うようにアクチュエータを微細に制御すれば、目的の濃度勾配曲線のハーフ染色が得られるという知見に基づいて完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明のプラスチックレンズのハーフ染色方法は、プラスチックレンズのハーフ染色において、染色液中に前記プラスチックレンズの表面に濃度勾配を付与したい部分まで浸漬し、前記染色液中から引き上げる、一往復の上下移動をすることにより、前記プラスチックレンズに濃度勾配を有する染色を行うことを特徴とする。
【0011】
これによれば、染色液中にプラスチックレンズの表面に濃度勾配を付与する部分まで浸漬し、染色液中から引き上げる、一往復の最小限の上下移動をすることにより、染色装置の無駄な移動を省いた効率よいハーフ染色をすることができると共に、レンズ表面の温度変動も少なく、レンズを目的とする所定の色調にハーフ染色することができる。
【0012】
また、本発明のプラスチックレンズの染色装置は、プラスチックレンズの染色装置であって、染色液中にプラスチックレンズの表面に濃度勾配を付与する部分まで浸漬し、前記染色液中から引き上げる上下移動手段を備え、前記上下移動手段は、プログラマブルシーケンサにより制御されたアクチュエータを備えたことを特徴とする。
【0013】
これによれば、染色装置が、染色液中にプラスチックレンズの表面に濃度勾配を付与する部分まで浸漬し、染色液中から引き上げる上下移動手段を備え、その上下移動手段がプログラマブルシーケンサにより制御されることにより、プログラマブルシーケンサに格納された制御プログラムを変更することにより、各種プラスチックレンズのハーフ染色に対応することができる。
【0014】
また、本発明のプラスチックレンズの染色装置は、前記プログラマブルシーケンサは、染色する前記プラスチックレンズの基本濃度勾配曲線と、入力される前記プラスチックレンズの染色情報に基づいて、前記アクチュエータが上下移動する移動速度を計算し、前記アクチュエータが上下移動するパルス列を、前記アクチュエータに出力することを特徴とする。
【0015】
これによれば、染色装置のプログラマブルシーケンサは、染色するプラスチックレンズの基本濃度勾配曲線と、入力されるプラスチックレンズの染色情報に基づいて、アクチュエータが上下移動する移動速度を計算し、アクチュエータが上下移動するパルス列をアクチュエータに出力することにより、染色の基本濃度勾配曲線に沿う目的の濃度勾配曲線のハーフ染色が得られると共に、プログラマブルシーケンサにプラスチックレンズの染色情報を入力することで、各種プラスチックレンズのハーフ染色に容易に対応することができる。
【0016】
また、本発明のプラスチックレンズの染色装置は、前記アクチュエータは、サーボモーターまたはステッピングモーターであることを特徴とする。
これによれば、上下移動手段のアクチュエータが、サーボモーターまたはステッピングモーターであることにより、染色されるプラスチックレンズを微細に上下移動することができる。したがって、染色の基本濃度勾配曲線に沿う目的の濃度勾配曲線のハーフ染色を得ることができると共に、染色面にアクチュエータの移動した軌跡のない濃度勾配のハーフ染色が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の染色装置の概念図であり、図2はハーフ染色されるレンズの基本濃度勾配曲線の一例を示すグラフであり、図3はハーフ染色されるレンズの基本濃度勾配曲線、およびモーターの移動遷移図の一例を示すグラフである。なお、図2および図3の基本濃度勾配曲線は、ハーフ染色されるレンズの染色方向にレンズ中心を通過する染色面における染色濃度をグラフ化したものである。
【0018】
先ず、図1に基づいて染色装置の構成について説明する。
染色装置1は、プラスチックレンズ(以降、レンズと表示する)の染色を行う動作部2と、動作部2の動作を制御する制御部3と、染色液Sを収容する染浴槽4を備えている。
動作部2は、筐体20に、アクチュエータとしてのモーター21、タイミングプーリ22、スライドガイドレール23が配設されている。
【0019】
モーター21は、例えばステッピングモーターであり、筐体20に回動可能に固定され、後述する制御部3から出力される制御信号により回動する。モーター21の回転軸にはタイミングプーリ24が固着されている。なお、モーター21の回動は、制御部3から入力される制御信号により正逆回転することができる。
タイミングプーリ22は、筐体20に配設されたモーター21の回転軸の垂直方向に所定距離はなれた下方位置の筐体20に、軸着されている。このタイミングプーリ22とタイミングプーリ24間には、タイミングベルト25がベルト掛けされ、タイミングベルト25は、モーター21の回動でタイミングプーリ22,24上を往復動する。
【0020】
スライドガイドレール23は、筐体20上に配設されたタイミングベルト25(タイミングプーリ22、およびタイミングプーリ24)と、略平行に並置した位置に固定されている。また、スライドガイドレール23のレール上には、スライドガイド26がスライド可能に載置されている。
【0021】
スライドガイド26は、染色するレンズLを保持する支持具28を取付け固定する取付け具27を備え、前記タイミングベルト25に固着されている。スライドガイド26は、モーター21の回動により、タイミングベルト25の上下移動に同期してスライドガイドレール23を上下移動する。なお、スライドガイドレール23の両端部には、スライドガイド26の移動範囲を規制するストッパーST1,ST2を備えている。このストッパーST1,ST2は、タイミングプーリ22と24の回転軸間の内側の所定の位置にそれぞれ取り付けられ、スライドガイド26の上下移動の範囲を制限することにより、モーター21の暴走、および後述するレンズ保持具5(レンズL)の落下を防止する。
【0022】
スライドガイド26に備えられた取付け具27は、スライドガイド26の本体から、スライドガイドレール23(タイミングベルト25)に対して直角方向に延伸するアームの先端に、棒状の支持具28の一端が取り付けられ、他端を垂直方向にして、スライドガイドレール23(すなわち、タイミングベルト25)と略平行に取り付けられている。
【0023】
支持具28は、棒状の他端の先端にフックを備え、そのフックにレンズLを垂直に保持するレンズ保持具5が、垂直方向に取外し可能に取り付けられている。
なお、以上のように構成された動作部2が、上下移動手段である。
【0024】
制御部3は、シーケンス制御部31と操作部32を備えている。
シーケンス制御部31は、いわゆるプログラマブルシーケンサ(すなわち、PLC(Programmable Logic Controller))であり、モーター21を駆動するパルス数及び移動速度の演算および制御指示を行うCPU(Central Processing Unit)、染色の基本濃度勾配曲線や各種制御プログラムを格納するROM、および染色するレンズの染色データ等を一時的に格納するRAM等のメモリ、入力部、出力部等で構成されている。
【0025】
操作部32は、例えばデジタルスイッチで構成され、デジタルスイッチを操作して、染色するレンズLの染色情報(染色時間、レンズ外径、製品の種類)の入力、あるいは動作部2の入力操作(スタート、ストップ、あるいは上下移動)を行う。なお、シーケンス制御部31(出力部)と動作部2(モーター21)、シーケンス制御部31(入力部)と操作部32とは接続ケーブルを介して電気的に接続され、相互に制御信号等の入出力が行われる。
【0026】
染色液Sを収容した染浴槽4は、動作部2の支持具28の下方方向に配備され、動作部2が動作することにより、支持具28に取り付けられたレンズ保持具5に保持されたレンズLが、染色液Sの液中に水没する位置と液面から離れた位置との間を移動することができる。
【0027】
次に、染色装置1を用いたハーフ染色方法について説明する。
本実施形態のハーフ染色方法は、染色するレンズLを、目的の基本濃度勾配曲線に沿うようにアクチュエータとしてのモーター21の回動を微細に制御して、染色液S中を上下移動することにより、染色面に目的の基本濃度勾配曲線に沿ったハーフ染色が得られる。すなわち、レンズLを染浴槽4に収容された染色液Sに浸漬する時間に対する染色されたレンズLの濃度の関係を計量把握したデータ(すなわち、基本濃度勾配曲線)に沿うように、モーター21の速度を制御してハーフ染色を行う。
【0028】
しかしながら濃度勾配曲線は、図2に示すレンズの基本濃度勾配曲線αのように、直線でないので、基本濃度勾配曲線αをほぼ直線になる区間、例えば区間a〜jの10区間に分割し、その各分割区間を等速でモーター21を制御することにより、ほぼ狙いとする所定の濃度勾配曲線が得られる。直線になる区間の分割は、細かく分割すれば基本濃度勾配曲線に対する復元性はよくなるが、制御が複雑になるため、実用的な分割としては10〜15区間に分割するのが好ましい。また、モーター21(染色されるレンズL)が移動する量(距離)の分解能については、レンズLの染色面にモーター21の移動した軌跡が目視で判別できないレベルとして、0.05mm程度に設定するのが好ましい。
【0029】
次に、レンズLにハーフ染色を施す染色装置1の動作について説明する。
まず、染色するレンズLを染色する所定の方向にしてレンズ保持具5に取り付ける。そして、レンズLが取り付けられたレンズ保持具5を、支持具28の先端のフックに掛着する。
【0030】
そして、染色するレンズLの染色データ(染色濃度、レンズ外径、製品の種類)を操作部32のデジタルスイッチを操作して入力する。そして、操作部32のデジタルスイッチ(上下移動スイッチ)を操作して、レンズLをスタート位置から染浴槽4に収容された染色液Sの液面まで移動(下降)させる。レンズLの下降位置は、染色するレンズ部分が染色液Sの液中になる位置まで移動する。そして、操作部32のデジタルスイッチ(スタートスイッチ)を操作する。なお、染色データとして入力する染色濃度は、レンズの幾何学センターからハーフ染色の濃度変化の濃い側に10mm離れた位置の濃度を示す。
【0031】
そして、スタートスイッチが操作されると、スタートスイッチが操作されたことを、シーケンス制御部31が検知する。そして、シーケンス制御部31のCPUにおいて、先に操作部32から入力されたレンズの染色データ(染色濃度、レンズ外径、製品の種類)と、予めROMに格納された該当製品の基本濃度勾配曲線αから、基本濃度勾配曲線αをほぼ直線になる区間に、例えば10分割し、分割された区間毎にモーター21に出力するパルス数(すなわち、移動量)、及びその移動(上昇)速度を演算する。
【0032】
レンズの直径が60mmのレンズLに、染色部分47mm(染色しない部分13mm)のハーフ染色を行う場合、ある染色データ(濃度10%、外径φ80mm、製品の種類)、および製品の種類に対応した基本濃度勾配曲線α(図2に示した基本濃度勾配曲線と同じ)を基に計算され、シーケンス制御部31からモーター21に入力されるパルス数(すなわち、移動量)、および移動速度の演算結果を表1に示す。また、モーター21の移動遷移図およびレンズの基本濃度勾配曲線αを示すグラフを図3に示す。なお、表1中の移動速度は、1秒あたりのパルス数で示す。
【0033】
図3に示す移動遷移図において、基本濃度勾配曲線αを区間a〜jの10区間に分割し、横軸に区間毎の移動量、縦軸に区間毎の移動速度を示す。なお、区間aの移動量については、染色するレンズLの外径が最大レンズLL(一般的な眼鏡レンズの最大外径は、φ80mmが多用される。)の外形より小さい場合は、レンズLの外径に応じて移動量が短くなるように外径寸法を考慮した演算が、シーケンス制御部31においてなされる。
【0034】
図3に示すレンズLの外径は、最大レンズLLの外径より小さいので、染色するレンズLの外径から最大レンズLLの外径の差分の距離間(すなわち、区間a)は、一定の濃度でよいので、モーター21は等速で制御される。また、基本濃度勾配曲線αは、予め製品毎に設定され、シーケンス制御部31のROMに格納されている。なお、モーター21に入力されるパルス数(パルス列)、および移動速度は、異なるレンズLの染色の都度、入力される染色データを基に演算される。
【0035】
【表1】

そして、シーケンス制御部31のCPUにおいて演算されたパルス列の制御信号は、出力部を介して動作部2(モーター21)に出力される。そして、モーター21は、シーケンス制御部31から入力されたパルス列に従って回動する。そして、モーター21の回動と共に、動作部2の上下移動により、レンズ保持具5に取り付けられたレンズLが上下移動(上昇)して、レンズLに所定のハーフ染色が行われる。
【0036】
レンズLの所定の染色移動が終了すると、モーター21はスタート位置(染浴槽4から離れた位置)へ移動(上昇)する。そして、ブザー(図示せず)から染色終了を知らせる警報(ブザー音)を発して、レンズLのハーフ染色を終了する。
【0037】
次に、モーター21が回動(正逆回転)して、レンズ保持具5に保持されたレンズLに伝達する機構の動作について説明する。
モーター21が回動すると、モーター21に固着されたタイミングプーリ24が、モーター21と同期して回動し、このタイミングプーリ24とタイミングプーリ22にベルト掛けされたタイミングベルト25が、タイミングプーリ22,24上を往復動する。
【0038】
そして、タイミングベルト25が往復動すると、タイミングベルト25に固着されたスライドガイド26が、タイミングベルト25と略平行に並置して固定されたスライドガイドレール23上を、タイミングベルト25の往復動と同期して、上下移動(上昇、および下降)する。同時に、このスライドガイド26と一体に構成される取付け具27、この取付け具27に取り付けられた支持具28が、タイミングベルト25の往復動と同期して上下移動する。したがって、支持具28の先端のフックに掛着されたレンズ保持具5、およびレンズ保持具5に保持されたレンズLが、上下移動する。
【0039】
このように、モーター21の回動が円滑にレンズLに伝達され、レンズLは染浴槽4内を上下移動することができる。なお、モーター21が移動する距離(つまり、1パルスに対する移動量)と最終のレンズLが移動する距離の比は、計算し易いようにタイミングプーリ24,22のプーリ径を考慮する必要がある。なお、本実施の形態においては、制御部3(シーケンス制御部31)からモーター21に入力する1パルスに対してレンズLが移動する距離は、例えば0.05mmに設定されている。
【0040】
以上のように、本発明のプラスチックレンズのハーフ染色方法、および染色装置によれば、レンズLの染色したい部分を一往復の最小限の上下移動をすることにより、染色装置の無駄な移動を省いた効率よいハーフ染色をすることができる。また、シーケンス制御部31に染色するプラスチックレンズの染色情報を入力することで、染色装置1の上下移動の制御が行われ、プラスチックレンズの基本濃度勾配曲線に沿う目的の濃度勾配曲線のハーフ染色が得られる。また、シーケンス制御部31に格納されたプログラムを変更することにより、製品の種類を追加する等の仕様の変更に柔軟に対応し、各種プラスチックレンズのハーフ染色に容易に対応することができる。
【0041】
なお、本実施の形態において、アクチュエータとしてステッピングモーターからなるモーター21を用いた場合で説明したが、サーボモーターで構成した場合であっても同様なモーター動作が得られ、ハーフ染色されるレンズLの染色性能も同様の性能を得ることができる。
【0042】
また、本実施の形態の染色装置1の染色動作において、操作部32のデジタルスイッチ(上下移動スイッチ)を操作して、レンズLがスタート位置から染色するレンズ部分が染色液Sの液中になる位置まで移動した後に、操作部32のデジタルスイッチ(スタートスイッチ)が操作されて、動作部2が徐々に上昇することにより、レンズLがハーフ染色される場合で説明したが、以下の染色方法であっても同様なハーフ染色が得られる。
【0043】
操作部32のデジタルスイッチ(上下移動スイッチ)を操作して、レンズLをスタート位置から染浴槽4に収容された染色液Sの液面まで移動(下降)させ、そして操作部32のデジタルスイッチ(スタートスイッチ)を操作することにより、シーケンス制御部31からの制御信号に基づき、動作部2が作動して、レンズLの染色するレンズ部分が染色液Sの液中になる位置まで徐々に下降し、そして、スタート位置まで急速に上昇してハーフ染色される。この動作部2の動作は、シーケンス制御部31(ROM)の制御プログラムを変更、あるいは追加することにより行われる。
なお、こうした2つの異なるレンズLの上下移動方法は、染色するレンズLの種類(素材)、あるいは染色液に添加される染色剤によって使い分けがされる。
【0044】
また、レンズLをハーフ染色する際に、染色装置1の操作部32のデジタルスイッチを操作して、レンズLをスタート位置から、染色を開始する位置まで、いわゆる手動操作して移動(下降)させ、そして、操作部32のデジタルスイッチ(スタートスイッチ)を操作してハーフ染色する場合で説明したが、以下のようにすることができる。
【0045】
染色するレンズLの染色データとして、染色しない部分のレンズ距離(寸法)を設定項目に追加したプログラムを設定し、操作部32のデジタルスイッチ(スタートスイッチ)を操作することにより、レンズLがスタート位置から、染色を開始する位置まで自動的に移動(下降)した後に、レンズLが移動(上昇、あるいは下降)して所定のハーフ染色が行われるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の染色装置の概念図。
【図2】染色されるレンズの基本濃度勾配曲線を示すグラフ。
【図3】染色されるレンズの基本濃度勾配曲線、およびモーターの移動遷移図を示すグラフ。
【符号の説明】
【0047】
1…染色装置、2…上下移動手段としての動作部、3…制御部、4…染浴槽、5…レンズ保持具、20…筐体、21…アクチュエータとしてのモーター、22,24…タイミングプーリ、23…スライドガイドレール、25…タイミングベルト、26…スライドガイド、27…取付け具、28…支持具、31…シーケンス制御部、32…操作部、L…レンズ、S…染色液、ST1,ST2…ストッパー、α…基本濃度勾配曲線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックレンズのハーフ染色において、
染色液中に前記プラスチックレンズの表面に濃度勾配を付与する部分まで浸漬し、前記染色液中から引き上げる、一往復の上下移動をすることにより、
前記プラスチックレンズに濃度勾配を有する染色を行うことを特徴とするプラスチックレンズのハーフ染色方法。
【請求項2】
プラスチックレンズの染色装置であって、
染色液中にプラスチックレンズの表面に濃度勾配を付与する部分まで浸漬し、前記染色液中から引き上げる上下移動手段を備え、
前記上下移動手段は、プログラマブルシーケンサにより制御されたアクチュエータを備えたことを特徴とするプラスチックレンズの染色装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプラスチックレンズの染色装置において、
前記プログラマブルシーケンサは、染色する前記プラスチックレンズの基本濃度勾配曲線と、入力される前記プラスチックレンズの染色情報に基づいて、前記アクチュエータが上下移動する移動速度を計算し、前記アクチュエータが上下移動するパルス列を、前記アクチュエータに出力することを特徴とするプラスチックレンズの染色装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のプラスチックレンズの染色装置において、
前記アクチュエータは、サーボモーターまたはステッピングモーターであることを特徴とするプラスチックレンズの染色装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−145929(P2006−145929A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336997(P2004−336997)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】