説明

プラスチック容器

【課題】 カード差しを二次加工の必要なく一体に設けたプラスチック容器を提供する。
【解決手段】 プラスチック容器1には、カードを差し込んで保持するカード保持部10が設けられている。カード保持部10は、側板3の長さ方向に交互に配置されたカード差し片20とガイド部30とを有する。カード差し片20は、下部フランジ6の外縁から上方向へ立ち上がる立ち上がり片21と、立ち上がり辺21の上縁から、側板3方向及び上方向に湾曲した湾曲片22とを有する。湾曲片22の先端は側板3の外面とスキマを隔てて対向している。ガイド部30の上面は、下部フランジ6から側板3向けて湾曲したガイド面30aとなっている。カード差し片20が、容器射出成形時の成形姿なりに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品や製品などの物品が収容されて保管・搬送されるプラスチック容器に関する。特には、収容される物品の種類などの情報が記されたカードを保持するカード差し部を備えたプラスチック容器に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の保管や搬送に使用されるプラスチック容器(コンテナ)には、収容される物品の種類や個数、出荷元、納入先等を記したカードを保持するカード差し部が備えられている。カードは収容される物品が変わるごとに変更されるので、カードがしっかりと保持されることに加えて、カードを簡単に差し替えられることが要求される。また、カードの寸法が変わる場合もある。このようなカード差し部として、容器と別物のカード差しを有し、容器の側壁にこのカード差しを取り外し可能に装着する係合部が設けられたものがある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
また、カード押さえ条片部を、薄肉連結部を介して容器の側壁と一体に形成した後、薄肉連結部を曲げ加工により屈曲させて、カード押さえ条片部を容器の側壁にロックするものもある(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】実公平2−31383号公報
【特許文献2】特開2004−91027号公報
【特許文献3】特開2001−134185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カード差しが容器と別物に設けられている場合、容器とカード差しとを別の金型で作製する必要があり、製造コストがアップする。また、カード差しを容器に装着する工程が必要になる。
また、カード押さえを容器と一体に製造し、カード押さえを曲げ加工で屈曲させる場合は金型は一つですむが、ロック機構を有するため、金型の構造が複雑になる。また。曲げ加工やロックさせる工程などの二次工程が必要になる。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、カード差しを二次加工の必要なく一体に設けたプラスチック容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプラスチック容器は、 プラスチック材料で射出成形により一体成形された底板、その周辺上に立ち上がる側板、及び、前記底板と前記側板との接続部の外側に張出した下部フランジ、を備え、内部に収容物を入れる容器であって、 さらに、下記ア)のカード差し片及びイ)のガイド部からなり、前記収容物の種類などを表示するカードの下端部を両者の間に差し込んで保持するカード差し部を有し、 ア)前記下部フランジから上方向へ立ち上がるように形成されており、その先端が前記側板外面とスキマを隔てて対向するカード差し片、 イ)前記下部フランジと前記側板とが交差する隅において、前記底板の辺に沿う方向に対して前記カード差し片とずれた位置に、内側に斜めに盛り上がるように形成されたガイド部、 前記カード差し片が、容器射出成形時の成形姿なりに形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、カード差し片とガイド部とを、容器本体を成形する金型で作製できるので、製造コストアップを招くことなく容器にカード保持部を設けることができる。また、カード差し片が、容器射出成形時の成形姿なりに形成されているので、成形後の曲げ加工等の二次加工が不要である。
【0009】
本発明においては、 前記カード差し片は、前記下部フランジの外縁から上方向へ立ち上がる立ち上がり片と、該立ち上がり辺の上縁から、前記側板方向及び上方向に湾曲した湾曲片とを有し、 前記ガイド部は、前記下部フランジから前記側板向けて湾曲したガイド面を有することが好ましい。
【0010】
さらに、 側面視において、 前記カード差し片の基部と前記下部フランジとの間にはスキマC1が開いており、 前記カード差し片の先端部と前記側板との間にはスキマC2が開いており、 前記カード差し片の湾曲部の中央付近の下面と、前記ガイド部の中央付近のガイド面との間には、ゼロ又はマイナスのスキマC3が生じていることが好ましい。
【0011】
カード差し片の湾曲部の先端部と側板との間にスキマC2(図2参照)が開いているので、カードの下縁(先端縁)を挿入しやすい。カードをそのまま下方に押し込むと、カードの先側縁は、ガイド部のガイド面に沿って湾曲しながら進み、最終的にカード先側縁がカード差し片の立ち上がり部に当接する。ここで、カード差し片の湾曲部の基部と下部フランジとの間には、側面視においてスキマC1が開いているので、カードの先側縁が立ち上がり部に当接するまでカードを挿入することができる。このように下部フランジの上面のほとんどの部分を利用するため、高さの高いカードにも対応できる。
【0012】
なお、カード差し片の湾曲部の下面の中央部と、前記ガイド部のガイド面の中央部との間のスキマC3がゼロより小さいとは、側面から見て、カード差し片とガイド部とが重なって、カード差し片の湾曲部の中央付近の下面が、ガイド部の中央付近のガイド面に対して内方向(隅方向)にはみ出している(オーバーラップしている)ことを表す。カードは、カード差し片とガイド部に挟まれるとともに、カード差し片とガイド部とが重なった部分でカード差し片の弾性力により強く押し付けられるので、外れないように保持される。
【0013】
本発明においては、 前記カード差し片とガイド部とが複数であり、かつ、前記側板の長さ方向に交互に配置されており、 前記カード差し片の両側に前記ガイド部が配置されていることが好ましい。
【0014】
カード差し片とガイド部とが複数であることにより、幅の広いカードにも対応できる。また、カード差し片の両側にガイド片が設けられているので、カードの両側部がガイド部でガイドされ、カードの先端縁の両角が下部フランジに当たって曲がるようなことがなく、カードを差しやすい。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、カード保持部を、容器本体を成形する金型で作製できるので、製造コストをアップすることなく容器にカード保持部を設けることができる。また、カード保持部は、容器射出成形時の成形姿なりに形成されているので、成形後の曲げ加工等の二次加工が不要である。さらに、下部フランジの上のほとんどの部分を利用するため、高さの高いカードにも対応できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るプラスチック容器を説明する図である、図1(A)は全体の斜視図、図1(B)は図1(A)のA部拡大図である。
図2は、図1(B)のB−B断面図である。
プラスチック容器1は、長方形の底板2と、底板2の周辺上に立ち上がる、2枚の長辺側側板3と2枚の短辺側側板4とを有する。底板2と各側板3、4との接続部には、外側に張出した下部フランジ6が形成されている。さらに、各側板3、4の上縁には、外側に張出した天面フランジ7が形成されている。これらの底板2、側板3、4、下部フランジ6及び天面フランジ7は、プラスチック材料で射出成形により一体成形されている。
【0017】
側板(この例では長辺側側板3)の長さ方向の中央部の、同側板3と下部フランジ6との間の隅には、カード差し部10が形成されている。カード差し部10は、複数のカード差し片20と、ガイド部30とからなる。なお、カード差し部10は、短辺側側板4に設けられていてもよい。
【0018】
カード差し片20は、図1(B)に示すように、下部フランジ6の外縁から上方向へ立ち上がる立ち上がり片21と、同立ち上がり辺21の上縁から、側板3方向及び上方向に湾曲した湾曲片22とを有する。図2に示すように、湾曲片22の側面形状は略1/4円弧状である。湾曲片22の基部22aは下部フランジ6とほぼ平行であり、同基部22aと下部フランジ6との間には、図2に示す側面視でスキマC1が開いている。なお、実際は、図1(B)に示すように、下面フランジ6のカード差し片20の下方に当たる部分は成形上空間となっている。したがって、このスキマC1は、側面から見た状態での、カード差し片20の湾曲片22の基部22aと、このカード差し片20の両側に存在する下部フランジ6との間の間隔を示す。
【0019】
また、湾曲片22の先端部22bは側板3とほぼ平行であり、同先端部22bと側板3との間には、スキマC2が開いている。なお、カードの保持性を考慮すると、スキマC2は狭い方が好ましいが、成形上ある程度以上は狭くできない。
【0020】
ガイド部30は、カード差し片20の側方に、側板3と下部フランジ6との隅が斜めに盛り上がるように形成されている。同ガイド部30は、側板から下部フランジへ向けて湾曲したガイド面30aを有する。
【0021】
図2に示すように、側面から見ると、カード差し片20とガイド部30とが重なっており、カード差し片20の湾曲部22の中央付近の下面と、ガイド部30の中央付近のガイド面30aとの間には、図2に示す側面視において、ゼロ又はマイナスのスキマC3が生じている。ゼロ以下のスキマC3とは、側面から見て、カード差し片20の湾曲部22が、ガイド部30のガイド面30aよりも内方向(隅方向)にはみ出していることを示し、カード差し片20とガイド部30とが重なった重なり代Pを形成している。
【0022】
また、図1に示すように、カード差し片20とガイド部30とは、側板3と下部フランジ6との隅に交互に配列されている。この例では、3個のガイド部30と2個のカード差し片20が交互に配列されている。この際、カード差し片20の両側にガイド部30が設けられていることが好ましい。
【0023】
カードを差す場合、まずカードの下縁(先側縁)をカード差し片20の湾曲部22の先端部22bと、側板3とのスキマC2に挿入する。そのまま下方に押し込むと、カードの先側縁は、ガイド部30のガイド面30aに沿って外方向(下部フランジ外縁方向)に湾曲しながら進む。ここで、カード差し片20の両側にガイド部30が設けられており、カードの下角がガイド部30でガイドされるので、カードの角が下部フランジ6に当たって抵抗を受けるようなことがなく、スムーズにカードを挿入できる。
【0024】
そして、最終的にカード先側縁がカード差し片20の立ち上がり部21に当接するまで押し込む。カード差し片20の湾曲部22の基端部22aと下部フランジ6の間にはスキマC1が開いているので、カードの先側縁が立ち上がり部21に当接するまでカードを挿入することができる。このように下部フランジ6の上面のほとんどの部分を利用するため、寸法の大きいカードにも対応できる。カードは、カード差し片20とガイド部30に挟まれるとともに、重なり代Pの部分でカード差し片20の弾性力により強く押し付けられるので、外れないように保持される。
【0025】
この容器においては、カード差し片20が、容器射出成形時の成形姿なりに形成されているので、成形後の加工工程が不要である。
【0026】
さらに、図1に示すように、カード保持部10の上方の、天面フランジ7には、カード上端保持部40が形成されている。カード上端保持部40は、天面フランジ7の外縁から下方に垂下するように形成されている。このカード上端保持部40にカードの上端を挟み込むことにより、カードをさらに外れにくく保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係るプラスチック容器を説明する図である、図1(A)は全体の斜視図、図1(B)は図1(A)のA部拡大図である。
【図2】図1(B)のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 プラスチック容器 2 底板
3 長辺側側板 4 短辺側側板
6 下部フランジ 7 天面フランジ
10 カード保持部 20 カード差し片
21 立ち上がり片 22 湾曲片
30 ガイド部 40 カード上端保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック材料で射出成形により一体成形された底板、その周辺上に立ち上がる側板、及び、前記底板と前記側板との接続部の外側に張出した下部フランジ、を備え、内部に収容物を入れる容器であって、
さらに、下記ア)のカード差し片及びイ)のガイド部からなり、前記収容物の種類などを表示するカードの下端部を両者の間に差し込んで保持するカード差し部を有し、
ア)前記下部フランジから上方向へ立ち上がるように形成されており、その先端が前記側板外面とスキマを隔てて対向するカード差し片、
イ)前記下部フランジと前記側板とが交差する隅において、前記底板の辺に沿う方向に対して前記カード差し片とずれた位置に、内側に斜めに盛り上がるように形成されたガイド部、
前記カード差し片が、容器射出成形時の成形姿なりに形成されていることを特徴とするプラスチック容器。
【請求項2】
前記カード差し片は、前記下部フランジの外縁から上方向へ立ち上がる立ち上がり片と、該立ち上がり辺の上縁から、前記側板方向及び上方向に湾曲した湾曲片とを有し、
前記ガイド部は、前記下部フランジから前記側板向けて湾曲したガイド面を有することを特徴とする請求項1記載のプラスチック容器。
【請求項3】
側面視において、
前記カード差し片の基部と前記下部フランジとの間にはスキマC1が開いており、
前記カード差し片の先端部と前記側板との間にはスキマC2が開いており、
前記カード差し片の湾曲部の中央付近の下面と、前記ガイド部の中央付近のガイド面との間には、ゼロ又はマイナスのスキマC3が生じていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチック容器。
【請求項4】
前記カード差し片とガイド部とが複数であり、かつ、前記側板の長さ方向に交互に配置されており、
前記カード差し片の両側に前記ガイド部が配置されていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のプラスチック容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−292500(P2009−292500A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147632(P2008−147632)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】