説明

プラスチック容器

【課題】高温充填時に白化しない低温耐衝撃性に優れた容器を提供する。
【解決手段】ポリプロピレンと、直鎖状低密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンと、の混合樹脂組成物を用いて容器を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック容器に関し、例えば食品用の内容物など高温で熱間充填される透明性の高いプラスチック容器に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する技術が記載された文献として、特許文献1ないし3を挙げる。
特許文献1、2、3は、プラスチック容器の先行例であり、ポリプロピレンと直鎖状低密度ポリエチレンをブレンドさせた樹脂組成物により、低温耐衝撃性を向上させることについて記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2691494号公報
【特許文献2】特開昭61−98756号公報
【特許文献3】特公平5−88264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
落下時等における低温耐衝撃性に優れたプラスチック容器を構成する樹脂組成物としては、特許文献1、2、3に開示されるようなポリプロピレンと直鎖状低密度ポリエチレンからなる樹脂組成物が知られている。しかしながら、この樹脂組成物による層は、例えば70℃以上の高温域においては白化するという問題が生じる。
【0005】
ところで、プラスチック容器への内容物の充填は、常温にて行われる場合だけでなく、殺菌や粘度調整も兼ねて、70℃以上の温度で熱充填する場合がある(例えば、食品のソース等)。したがって、プラスチック容器の技術分野において、内容物の高温充填時に白化しない容器を提供することが課題となる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、高温充填時に白化しない低温耐衝撃性に優れたプラスチック容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成するべく検討を重ねた結果、以下の(1)〜(5)の構成をもって、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
(1)ポリプロピレンと、直鎖状低密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンと、からなる混合樹脂組成物を用いて成形されることを特徴とするプラスチック容器。
(2)前記ポリプロピレンは、プロピレン−エチレンランダム共重合体であることを特徴とする(1)記載のプラスチック容器。
(3)混合樹脂組成物100重量部に対して、前記直鎖状低密度ポリエチレンを5重量部以上、前記低密度ポリエチレンを5重量部以上、且つ前記直鎖状低密度ポリエチレンと前記低密度ポリエチレンとの合計添加量が30重量部以下であることを特徴とする(1)または(2)記載のプラスチック容器。
(4)前記直鎖状低密度ポリエチレンの添加量が前記低密度ポリエチレンの添加量より大きいことを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のプラスチック容器。
(5)前記直鎖状低密度ポリエチレンの添加量と前記低密度ポリエチレンの添加量との差が10重量部以下であることを特徴とする(4)記載のプラスチック容器。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温充填時に白化しない低温耐衝撃性に優れたプラスチック容器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態のプラスチック容器は、内容物を高温で充填される容器であって、ポリプロピレンと、直鎖状低密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンと、の混合物からなる樹脂組成物からなることを特徴とする。なお、本発明は単層の容器に限られることなく、低温衝撃性及び透明性を損なわない範囲において、上記樹脂組成物を少なくとも1層以上有する多層容器とすることも可能である。
【0011】
ポリプロピレンと、直鎖状低密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンからなる混合樹脂組成物は、ポリプロピレン(PP)に、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)をブレンドした樹脂組成物である。
【0012】
混合樹脂組成物中の主成分であるプロピレン系重合体は、ポリプロピレン、プロピレン−α・オレフィン共重合体を挙げることができ、さらに詳しくはプロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体を挙げることができるが、この中でもプロピレン−エチレンランダム共重合体が透明性の点で好ましく、エチレン成分が2〜15mol%のMFRが1.0g/10min以上、特に外層に使用する場合は光沢性の点でエチレン成分が4mol%以上、MFRが3.0g/10min以上のプロピレン−エチレンランダム共重合体(r−PP)が好ましい。
【0013】
直鎖状低密度ポリエチレンは、チーグラー触媒により製造されたもの、メタロセン触媒により製造されたものを問わず用いることが出来るが、特にメタロセン系触媒を用いて重合した直鎖状超低密度ポリエチレンが耐衝撃性、光沢性、透明性向上の点で好ましい。また、直鎖状超低密度ポリエチレンMFRは1.0〜10.0g/10min、密度0.850〜0.910g/cc、Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)で規定される分子量分布は3.0付近ものもが好適に使用される。直鎖状超低密度ポリエチレンのMFRが10.0g/10minより大きい場合には得られた樹脂組成物は激しいドローダウンを示し、成形性が悪化するため、主たる樹脂との相溶性を侵さない範囲で低いMFRのものが適している。
【0014】
直鎖状低密度ポリエチレンの添加量は、ポリプロピレンと直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの混合物全体100重量部に対して、5重量部以上であることが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンの添加量が5重量部未満であると、低温衝撃性が損なわれるため、容器として好ましくない。
【0015】
低密度ポリエチレンは、エチレンを高圧で重合して得られる比較的高密度、好ましくは密度0.915〜0.930g/ccで、MFRが0.3〜3.0g/10minである高圧法低密度ポリエチレンが好ましい。高圧法低密度ポリエチレンの重合法としては、公知の方法が使用される。密度が0.915g/cc未満の高圧法低密度ポリエチレンを使用した場合には、容器(例えばボトル)のハンドリング性が悪くなる。一方、密度が0.930g/ccを超える高圧法低密度ポリエチレンを使用した場合には、容器(例えばボトル)のスクイズ性に必要な柔軟性と透明性を確保することが困難になるため好ましくない。
【0016】
低密度ポリエチレンの添加量は、ポリプロピレンと直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの混合物全体100重量部に対して、5重量部以上であることが好ましい。低密度ポリエチレンの添加量が5重量部未満であると、低密度ポリエチレンの分散性が悪く、ポリプロピレンと直鎖状低密度ポリエチレンとの混合物における高温での白化を防止することが困難となり、高温時における透明性が損なわれるため好ましくない。
【0017】
また、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの混合添加量は、ポリプロピレンと直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの混合物全体100重量部に対して、30重量部以下であることが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの混合添加量が30重量部より大きいと、透明性及び耐熱性が損なわれ、例えば高温充填後にアルミシールをする際に座屈してしまうため、好ましくない。
【0018】
さらに、直鎖状低密度ポリエチレンの添加量が低密度ポリエチレンの添加量より大きいことが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンの添加量の差が10重量部以下であることがさらに好ましい。混合添加量30重量部以下において、低密度ポリエチレンの添加量が直鎖状低密度ポリエチレンの添加量よりも大きい場合には、高温時における透明性が悪くなり、また、その差が10重量部より大きいと耐熱性が大きく損なわれてしまうため、好ましくない。
【0019】
また、多層容器として構成する場合は、上記混合樹脂組成物の隣接する層として、ガスバリア性を有する層、例えばエチレン酢酸ビニル共重合体、ポリアミド系樹脂、環状オレフィン系樹脂等からなる層を備えることが好ましく、この場合、容器に充填された内容物の酸化や劣化を抑制することができる。なお、ガスバリア層と前記混合樹脂組成物との間には、公知の接着性樹脂を用いて接着させることができる。
【0020】
本実施形態におけるプラスチック容器としては、特に限定されることなく各種形状の容器を用いることができ、これらのプラスチック容器は、ダイレクトブロー成形、インジェクションブロー成形等の公知の方法により製造することができる。
【0021】
本実施形態のプラスチック容器は、ポリプロピレンに直鎖状低密度ポリエチレンを有することで、低温衝撃性に非常に優れており、さらに低密度ポリエチレンを含有することで殺菌のためなど内容物を高温で充填する場合にも白化することがなく、例えば、ソース等の高温充填が行われる透明な食品用ボトルとして特に有用である。なお、食品用ボトルに限定されるものではなく、種々の容器に対して用いることができる。
【0022】
また、混合樹脂組成物100重量部に対して、直鎖状低密度ポリエチレンを5重量部以上、低密度ポリエチレンを5重量部以上、且つ直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの合計添加量が30重量部以下で構成することが低温衝撃性、白化防止の点でより好ましい。
【0023】
さらに、直鎖状低密度ポリエチレンの添加量が低密度ポリエチレンの添加量より大きくなるよう混合することで、低温衝撃性の非常に良好なプラスチック容器を得ることができる。
【0024】
また、直鎖状低密度ポリエチレンの添加量と低密度ポリエチレンの添加量との差が10重量部以下とすることにより、高温時における強度を高く保つことができるため、座屈強度を高く保持することが可能となり、充填後にアルミシールをする際の容器の座屈を防止することができる。
【0025】
[実施例]
以下、本発明の実施例と比較例を説明する。なお、ポリプロピレンと、直鎖状低密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンと、からなる樹脂組成物評価のため、前記樹脂組成物を厚さ1.5mm、幅25mmのシートとして押出成形し、評価を行った。
【0026】
[材料構成]
中間層5の材料構成につき、ポリプロピレン(r−PP)と、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と、低密度ポリエチレン(LDPE)の配合を種々に変更して試行し、下記の実施例1ないし4と比較例1ないし3を得た。
【0027】
[実施例1]
混合物合計100重量%として、ランダムポリプロピレン(r−PP 密度:0.890g/cm3、MFR(230℃、2.16kg):3.43g/10min、融点:132℃)を85重量%用い、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE 密度:0.895g/cm3、MFR(190℃、2.16kg):9.34g/10min、融点:99℃)を10重量%と、低密度ポリエチレン(LDPE 密度:0.919g/cm3、MFR(190℃、2.16kg):1.05g/10min、融点:107℃)を5重量%配合して混練し、得られた樹脂組成物の常温での透明性、高温(70℃)での透明性、低温衝撃性、剛性についての評価を行った。
【0028】
[実施例2]
実施例1の配合の割合を次の通りに変更した他は同じ条件にて樹脂組成物を作製し、評価を行った。
r−PP:LLDPE:LDPE=85:5:10
【0029】
[実施例3]
実施例1の配合の割合を次の通りに変更した他は同じ条件にて樹脂組成物を作製し、評価を行った。
r−PP:LLDPE:LDPE=70:15:15
【0030】
[実施例4]
実施例1の配合の割合を次の通りに変更した他は同じ条件にて樹脂組成物を作製し、評価を行った。
r−PP:LLDPE:LDPE=70:20:10
【0031】
[比較例1]
実施例1の配合の割合を次の通りに変更した他は同じ条件にて樹脂組成物を作製し、評価を行った。
r−PP:LLDPE:LDPE=87:10:3
【0032】
[比較例2]
実施例1の配合の割合を次の通りに変更した他は同じ条件にて樹脂組成物を作製し、評価を行った。
r−PP:LLDPE:LDPE=87:3:10
【0033】
[比較例3]
実施例1の配合の割合を次の通りに変更した他は同じ条件にて樹脂組成物を作製し、評価を行った。
r−PP:LLDPE:LDPE=65:20:15
【0034】
[比較例4]
実施例1の配合の割合を次の通りに変更した他は同じ条件にて樹脂組成物を作製し、評価を行った。
r−PP:LLDPE:LDPE=65:25:10
【0035】
[比較例5]
実施例1の配合の割合を次の通りに変更した他は同じ条件にて樹脂組成物を作製し、評価を行った。
r−PP:LLDPE:LDPE=70:10:20
【0036】
[実験方法]
(透明性)
島津製作所株式会社 UV−2400PCを用いて、縦50mm×横8mm×厚み1.5mmに押し出し成形を行った試験片を、常温または80℃(高温)に温めて450nmの波長の光線を照射し、その透過率を測定した。
なお、(常温又は高温での)透明性についての評価基準は下記の通りとした。
○:20%以上
△:10%以上20%未満
×:10%未満
【0037】
(低温衝撃性)
平均肉厚0.6mmでブロー成形した容器に−5℃の液体、約450mlを充填し、地上1.5mの高さから10回繰り返し落下させ、割れるまでの回数を測定した。同様の実験をそれぞれ10回行い、平均値を計測した。
なお、低温衝撃性についての評価基準は下記の通りとした。
○:8以上
△:4以上8未満
×:4未満
【0038】
(剛性)
23℃(常温)、あるいは80℃(高温)における引張弾性率をJIS K 7161に基づいて測定を行った。
なお、常温での剛性についての評価基準は下記の通りとした。
○:500MPa以上
△:400MPa以上500MPa未満
×:400MPa未満
また、高温での剛性についての評価基準は下記の通りとした。
○:100MPa以上
△:80MPa以上100MPa未満
×:80MPa未満
【0039】
【表1】

【0040】
上述した実施例及び比較例が開示したところにより明らかなように、内容物を高温で充填されるプラスチック容器の材料構成としては、ポリプロピレンと、直鎖状低密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンと、からなる混合樹脂組成物を用いて成形することを特徴とする。
【0041】
本発明によれば、上述した実施例で示したように、ポリプロピレンと直鎖状低密度ポリエチレンとの混合物に低密度ポリエチレン(LDPE)をブレンドすることにより、低温耐衝撃性が良好で高温においても白化することのない透明性に優れたプラスチック容器を得ることが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンと、直鎖状低密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンと、からなる混合樹脂組成物を用いて成形されることを特徴とするプラスチック容器。
【請求項2】
前記ポリプロピレンは、プロピレン−エチレンランダム共重合体であることを特徴とする請求項1記載のプラスチック容器。
【請求項3】
混合樹脂組成物100重量部に対して、前記直鎖状低密度ポリエチレンを5重量部以上、前記低密度ポリエチレンを5重量部以上、且つ前記直鎖状低密度ポリエチレンと前記低密度ポリエチレンとの合計添加量が30重量部以下であることを特徴とする請求項1または2記載のプラスチック容器。
【請求項4】
前記直鎖状低密度ポリエチレンの添加量が前記低密度ポリエチレンの添加量より大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプラスチック容器。
【請求項5】
前記直鎖状低密度ポリエチレンの添加量と前記低密度ポリエチレンの添加量との差が10重量部以下であることを特徴とする請求項4記載のプラスチック容器。