説明

プラスチック成形品の製造方法、製造装置、及びその製造方法により作製されたプラスチック成形品

【課題】プラスチック成形品の製造において、柱状構造における柱部分の間隔を狭めて形成することができるように、電界印加セルと製造方法について工夫すること。
【解決手段】互いに不溶で誘電率が異なる少なくとも2種類の液体を、一対の電極が対向して配置されている電界印加セルに層状に充填する液体供給工程と、前記電極間に電界を印加して前記少なくとも2種類の液体のうち、誘電率の高い液体を電界方向に平行な向きに伸ばすように集め、柱状構造を形成する電界印加工程とを有し、
前記少なくとも2種類の液体のうち、少なくとも1つが未硬化の硬化性樹脂であり、この硬化性樹脂を前記柱状構造の形成後に硬化させるプラスチック成形品の製造方法を前提として、
前記電界印加セル(10)を構成する対抗電極基板(11,12)の少なくとも一方の電極基板(11)が、微小電極アレイ(1)と薄膜トランジスタ(TFT)アレイ(3)を備えており、前記微小電極アレイの一部の電極に対して局所的に電界を印加することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックによる微細・微小な(μm、nmオーダーの)凹凸構造を簡便に製造するプラスチック成形品の製造方法、及び製造装置に関するものである。この製造方法や製造装置は、光学素子や電気泳動型ディスプレイ等のプラスチック成形品の作製に応用することができる。
【背景技術】
【0002】
微細・微小な凹凸構造のプラスチック成形品の製造方法として、一対の電極が対向して配置されている電界印加セルに、互いに不溶で誘電率が異なる少なくとも2種類の液体(うち少なくとも一方は未硬化の硬化性樹脂)を層状、又は最も誘電率が高い液体を上記電極面上に液滴として存在させ、上記一対の電極間に電界を印加して、誘電率の高い液体により上記両電極間をつなぐ柱状の形状(柱状構造)を形成することが、例えば、特開2005−177971号公報(「プラスチック成形品の製造方法、製造装置及びその製造方法により製造されたプラスチック成形品」、特許文献1)に記載されているように、既に提案されている。
【0003】
上記特許文献1に記載された従来のプラスチック成形品の製造方法について、図4及び図5を参照しながら説明する。
図4に示されているように、電界印加セル20に対向して配置された一対の電極21,22の面上に、誘電率の高い液体層24と誘電率の低い液体層25を層状に形成し(図4(a))、上記一対の電極21,22間に電界を印加することにより、誘電率の高い液体層24を電界方向に平行な向きに伸ばすように集め、上記一対の電極21,22間をつなぐ柱状構造26を形成する(図4(b))。
上記誘電率の異なる2種類の液体のうち、少なくとも一方は未硬化の硬化性樹脂であるので、上記柱状構造26を形成後に該硬化性樹脂を硬化させて、μmオーダー又はnmオーダーのパターン構造を有するプラスチック成形品を作製することができる。
【0004】
また、図5に示されているように、電界印加セル20に対向して配置された一対の電極21,22のうち、一方の電極21の面上に誘電率の高い液体を液滴24aとして形成し、その上に誘電率の低い液体層25を層状に形成して(図5(a))、上記一対の電極21,22間に電界を印加することにより、誘電率の高い液滴24aを電界方向に平行な向きに伸ばすように集め、上記一対の電極21,22間をつなぐ柱状構造26を形成する(図5(b))。
上記誘電率の異なる2種類の液体のうち、少なくとも一方は未硬化の硬化性樹脂であるので、上記柱状構造26を形成後に該硬化性樹脂を硬化させて、μmオーダー又はnmオーダーのパターン構造を有するプラスチック成形品を作製することができる。
なお、図4及び図5における符号27は電源であり、符号28はスイッチである。
【0005】
さらに、上記特許文献1には、電界印加セルを構成する一対の電極のうち、少なくとも一方の電極が特定のパターンを有することにより、この特定のパターンの位置に選択的に柱状構造を形成することができるプラスチック成形品の製造方法についても、記載されている。
【特許文献1】特開2005−177971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来の製造方法において、図4に示すように、2種類の誘電率の異なる液体を層状に形成する場合には、誘電率の高い液体による柱状構造が発現する位置(形成される位置)を規定することができないという問題があった。
一方、図5に示すように、誘電率の高い液体を液滴として形成する場合には、隣接する柱状構造の距離が近すぎるとき電界の印加を続けていくと、硬化性樹脂の硬化によってパターン構造が保持される前に、合一してしまうという問題があった。
また、電界印加セルを構成する一対の電極のうち、少なくとも一方の電極が特定のパターンを有する場合には、該電極のパターニングによって柱状構造が発現する位置(形成される位置)を規定することができるが、しかし、この場合でも柱部分の幅が1に対して、スペースとして1以上の間隔が必要であるため、密接した(狭ピッチの)柱状構造を作製することは不可能である。
【0007】
そこで、本発明の技術課題は、上記の問題点を解決するために、プラスチック成形品の製造において、柱状構造における柱部分の間隔を狭めて形成することができるように、電界印加セルと製造方法について工夫することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、一対の対向する電極基板から成る電界印加セルのうち、少なくとも一方の電極基板に、微小電極アレイと薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))アレイを形成し、この微小電極アレイの各電極に対して選択的に電界を印加することにより、プラスチック成形品を製造することを特徴とするものである。
【0009】
(1) 本発明に係るプラスチック成形品の製造方法(請求項1に対応)は、互いに不溶で誘電率が異なる少なくとも2種類の液体を、一対の電極が対向して配置されている電界印加セルに層状に充填する液体供給工程と、
前記電極間に電界を印加して前記少なくとも2種類の液体のうち、誘電率の高い液体を電界方向に平行な向きに伸ばすように集め、柱状構造を形成する電界印加工程とを有し、
前記少なくとも2種類の液体のうち、少なくとも1つが未硬化の硬化性樹脂であり、この硬化性樹脂を前記柱状構造の形成後に硬化させるプラスチック成形品の製造方法を前提として、
前記電界印加セルを構成する対抗電極基板の少なくとも一方の電極基板が、微小電極アレイと薄膜トランジスタ(TFT)アレイを備えており、前記微小電極アレイの一部の電極に対して局所的に電界を印加することである。
【0010】
このような構成にすることによって、電界印加セルを構成する対向電極基板の少なくとも一方の電極基板が、微小電極アレイと薄膜トランジスタアレイを備えており、前記微小電極アレイのうち選択された一部の電極に対して局所的に電界を印加することができるので、選択された電極に対応した位置に柱状構造を形成(発現)することが可能である。
【0011】
(2) また、上記(1)のプラスチック成形品の製造方法において、局所的に電界を印加し、柱状構造が形成された領域のみの硬化性樹脂を局所的に硬化することができる。(請求項2に対応)
このような構成によれば、柱状構造が形成された領域のみの硬化性樹脂を局所的に硬化することができるので、微小電極アレイに対応した任意の位置に形成した柱状構造を固めることが可能である。
誘電率の異なる液体のうち、どれを未硬化の硬化性樹脂にするかによって、柱状構造のプラスチック成形品における柱部分を中実にするか、又は空洞にするかを選択することができる。
【0012】
(3) また、上記(2)のプラスチック成形品の製造方法において、硬化性樹脂が紫外線硬化樹脂であり、前記硬化性樹脂の硬化手段が紫外線の局所露光であってもよい。(請求項3に対応)
このような構成によれば、硬化性樹脂が紫外線硬化樹脂であり、その硬化手段が紫外線の局所露光であるので、紫外線の局部照射によって柱状構造の局部を硬化することが可能である。
【0013】
(4) また、上記(3)のプラスチック成形品の製造方法において、紫外線の局所露光がマスク露光であってもよい。(請求項4に対応)
このような構成によれば、紫外線の局所露光がマスク露光であるので、電極基板上に一括で露光することにより局所露光が可能である。
【0014】
(5) また、上記(1)〜(4)のプラスチック成形品の製造方法において、電界印加セルを構成する対抗電極基板の少なくとも一方の電極基板に構成されている微小電極アレイのうち、少なくとも1つおき以上の間隔をもった電極にのみ電界を印加して、少なくとも2種類の液体のうち、誘電率の高い液体を電界方向に平行な向きに伸ばすように集め、柱状構造を形成する選択的電界印加工程と、前記柱状構造部分を局所的に硬化する選択的硬化工程を、少なくとも2回以上繰り返すことができる。(請求項5に対応)
【0015】
このような構成によれば、微小電極アレイのうち、少なくとも1つおき以上の間隔をもった電極にのみ電界を印加して、柱状構造を形成する選択的電界印加工程と、前記柱状構造部分を局所的に硬化する選択的硬化工程を2回以上繰り返すことにより、密接した(狭ピッチの)柱状構造のプラスチック成形品を作製することが可能である。
例えば、微小電極アレイを密に形成しておき、1つおきの電極にのみ電界を印加して、電界が印加される電極の間隔を広くすることにより、隙間の粗い柱状構造を形成する電界印加工程と、この柱状構造の硬化部分を局所的に硬化する選択的硬化工程を行うことにより、隙間の粗い柱状構造のプラスチック成形品の中間製品を形成することができる。このような電界印加工程と選択的硬化工程を2回以上繰り返すことによって、密接した(狭ピッチの)柱状構造のプラスチック成形品を作製することができる。
【0016】
(6) また、上記(5)のプラスチック成形品の製造方法において、少なくとも2種類の液体のうち、未硬化の硬化性樹脂が最も低い誘電率の液体であってもよい。(請求項6に対応)
このような構成によれば、少なくとも2種類の液体のうち、未硬化の硬化性樹脂が最も低い誘電率の液体であるので、電界を印加することによって形成される柱状構造の外周部(柱状構造の最も低い誘電率の液体部分)を硬化することが可能である。
【0017】
(7) また、上記(6)のプラスチック成形品の製造方法において、少なくとも2種類の液体を層状に形成する工程において、未硬化の硬化性樹脂が、電界印加セルを構成する対向電極基板のうち、微小電極アレイと薄膜トランジスタアレイを有する電極基板側に形成されてもよい。(請求項7に対応)
このような構成によれば、未硬化の硬化性樹脂が、微小電極アレイと薄膜トランジスタアレイを有する電極基板側に形成されているので、該電極基板の微小電極部分以外の箇所が硬化樹脂で固められた柱状構造のプラスチック成形品を得ることができる。
【0018】
(8) また、上記(7)のプラスチック成形品の製造方法において、少なくとも2種類の液体のうち、誘電率の高い液体は温度、光等のエネルギーによって硬化しない液体であってもよい。(請求項8に対応)
このような構成によれば、少なくとも2種類の液体のうち、誘電率の高い液体は温度、光等のエネルギーによって硬化しない液体であるので、電界印加によって形成される柱状構造の外周部を硬化させた後、前記誘電率の高い液体を除去することが可能である。
【0019】
(9) また、上記(8)のプラスチック成形品の製造方法において、電界印加セルを構成する対抗電極基板の少なくとも一方の電極基板に構成されている微小電極アレイのうち、少なくとも1つおき以上の間隔をもった電極にのみ電界を印加して、少なくとも2種類の液体のうち、誘電率の高い液体を電界方向に平行な向きに伸ばすように集め、柱状構造を形成する選択的電界印加工程と、前記柱状構造部分の外周部を局所的に硬化する選択的硬化工程を、少なくとも2回以上繰り返すことによって、所定の電極位置に形成された柱状構造部分の外周部を硬化した後、誘電率の高い液体を除去することができる。(請求項9に対応)
【0020】
このような構成によれば、電界印加セルの少なくとも一方の電極基板に構成されている微小電極アレイのうち、少なくとも1つおき以上の間隔をもった電極にのみ電界を印加して、少なくとも2種類の液体のうち、誘電率の高い液体を電界方向に平行な向きに伸ばすように集め、柱状構造を形成する選択的電界印加工程と、前記柱状構造部分の外周部(柱状構造の誘電率が低い液体部分)を局所的に硬化する選択的硬化工程を、少なくとも2回以上繰り返すことによって、所定の微小電極位置に形成された柱状構造部分の外周部を硬化した後、誘電率の高い液体を除去することができるので、所定の微小電極部分以外の箇所が硬化樹脂で固められた柱状構造のプラスチック成形品を得ることができる。
【0021】
(10) 本発明に係るプラスチック成形品の製造装置(請求項10に対応)は、一対の電極が対向して配置され、この電極間に電界を印加し得る電界印加セルと、
少なくとも1つが未硬化の硬化性樹脂であり、互いに不溶で誘電率が異なる少なくとも2種類の液体を、前記電界印加セルに層状に充填する液体供給手段と、
前記硬化性樹脂を硬化させる樹脂硬化手段を備えて成り、
前記一対の電極間に電界を印加して、前記少なくとも2種類の液体のうち、誘電率の高い液体を電界方向に平行な向きに伸ばすように集めて柱状構造を形成し、前記硬化性樹脂を硬化させるプラスチック成形品の製造装置を前提として、
前記電界印加セルを構成する対抗電極基板の少なくとも一方の電極基板が、微小電極アレイと薄膜トランジスタ(TFT)アレイを備えており、前記微小電極アレイの一部の電極に対して局所的に電界を印加することである。
【0022】
このような構成にすることによって、電界印加セルを構成する対向電極基板の少なくとも一方の電極基板が、微小電極アレイと薄膜トランジスタアレイを備えており、前記微小電極アレイのうち選択された一部の電極に対して局所的に電界を印加することができるので、選択された電極に対応した位置に柱状構造を形成することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の効果を請求項にしたがって整理すると、次のとおりである。
(1) 請求項1及び請求項10に係る発明
電界印加セルの少なくとも一方の電極基板に設けられた微小電極アレイのうち、選択された一部の電極に対して局所的に電界を印加することができるので、選択された電極に対応した位置に柱状構造を形成することが可能であり、選択される電極によって任意の位置に任意の形状の柱状構造を形成することができる。
(2) 請求項2に係る発明
柱状構造が形成された領域のみの硬化性樹脂を局所的に硬化することができるので、微小電極アレイに対応した任意の位置に形成した柱状構造を固めることが可能である。
【0024】
(3) 請求項3に係る発明
硬化性樹脂が紫外線硬化樹脂であり、その硬化手段が紫外線の局所露光であるので、紫外線の局部照射によって柱状構造の局部を硬化することが可能である。
(4) 請求項4に係る発明
紫外線の局所露光がマスク露光であるので、電極基板上に一括で露光することにより局所露光が可能である。
【0025】
(5) 請求項5に係る発明
微小電極アレイのうち、少なくとも1つおき以上の間隔をもった電極にのみ電界を印加して、柱状構造を形成する選択的電界印加工程と、前記柱状構造部分を局所的に硬化する選択的硬化工程を2回以上繰り返すことにより、密接した(狭ピッチの)柱状構造のプラスチック成形品を作製することが可能である。
(6) 請求項6に係る発明
少なくとも2種類の液体のうち、未硬化の硬化性樹脂が最も低い誘電率の液体であるので、電界を印加することによって形成される柱状構造の外周部(柱状構造の最も低い誘電率の液体部分)を硬化することが可能である。
【0026】
(7) 請求項7に係る発明
未硬化の硬化性樹脂が、微小電極アレイと薄膜トランジスタアレイを有する電極基板側に形成されているので、該電極基板の微小電極部分以外の箇所が硬化樹脂で固められた柱状構造のプラスチック成形品を得ることができる。
(8) 請求項8に係る発明
少なくとも2種類の液体のうち、誘電率の高い液体は温度、光等のエネルギーによって硬化しない液体であるので、電界印加によって形成される柱状構造の外周部を硬化させた後、前記誘電率の高い液体を除去することが可能である。
【0027】
(9) 請求項9に係る発明
電界印加セルの少なくとも一方の電極基板に構成されている微小電極アレイのうち、少なくとも1つおき以上の間隔をもった電極にのみ電界を印加して、少なくとも2種類の液体のうち、誘電率の高い液体を電界方向に平行な向きに伸ばすように集め、柱状構造を形成する選択的電界印加工程と、前記柱状構造部分の外周部を局所的に硬化する選択的硬化工程を、少なくとも2回以上繰り返すことによって、所定の微小電極位置に形成された柱状構造部分の外周部を硬化した後、誘電率の高い液体を除去することができるので、所定の微小電極部分以外の箇所が硬化樹脂で固められた柱状構造のプラスチック成形品を得ることができる。
【0028】
(10) 請求項11に係る発明
請求項1〜請求項9のいずれかに記載のプラスチック成形品の製造方法により作製されるので、低コストのプラスチック成形品を得ることができる。
(11) 請求項12に係る発明
請求項9に記載のプラスチック成形品の製造方法により作製されたプラスチック成形品において、誘電率の高い液体を除去した跡に電気泳動物質を注入するので、電極基板の電極部分にホール構造が作製され、従来の位置合わせ工程が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施の形態について、図1〜図3を参照しながら説明する。図1〜図3は、プラスチック成形品の製造方法について説明する模式図であり、電界印加セルの動作状態を示している。
先ず、プラスチック成形品の製造方法に用いる電界印加セル10について説明する。
この電界印加セル10は、図1に示されているように、対向する一対の電極基板11,12を備えている。一方の電極基板(下部基板)11には、多数の微小電極1a,1b,1c…から成る微小電極アレイ1と、各微小電極1a,1b,1c…に対応する多数の薄膜トランジスタ3a,3b,3c…から成る薄膜トランジスタアレイ3を有しており、この微小電極アレイ1上には未硬化の硬化性樹脂であり誘電率が低い液体層5、例えば、紫外線硬化樹脂が製膜される。また、他方の電極基板(上部基板)12には全面に電極(全面電極)2を有しており、この全面電極2上には誘電率が高い液体層4、例えば、ウレタン修飾ポリプロピレングリコール(UPPG(Urethane modified poly propylene grychol))が製膜される。
上記誘電率の異なるそれぞれの液体層4,5が形成された各電極基板11,12を、膜厚50μmのスペーサを介して重ね合わせることにより、図1に示すような電界印加セル10を構成することができる。
【0030】
次に、図1に示された電界印加セル10を用いて、密接した柱状構造のプラスチック成形品を製造する方法について説明する。
先ず、図2に示されているように、スイッチ8をオンにすると共に、微小電極アレイ1の多数の微小電極のうち、所定の間隔(例えば、2ピクセルの間隔)を空けた微小電極1a,1dにのみ電圧(電界強度0.8V/μm)を印加するように、薄膜トランジスタアレイ3のうち所定の薄膜トランジスタ3a,3dのみをオンにする。その結果、電界が印加された微小電極1a,1d部分にのみ誘電率の高い液体の柱状構造6が形成される。
このように柱状構造6が形成されている状態で、図3に示されているように、電界を印加している微小電極1a,1dの位置に対応して開口13a,13dが設けられたフォトマスク13を介して紫外線UVを照射することにより、形成された柱状構造6の外周部(柱状構造6の柱部分の周囲にある紫外線硬化樹脂部分)を硬化させた。この状態で微小電極1a,1dへの電界の印加を止めても、柱状構造6の硬化した樹脂部分は固められて崩れることはない。
【0031】
次に、上述の第1工程と同様に、所定の間隔を空けた別の微小電極(例えば、微小電極1b,1e)に電界を印加して柱状構造を形成し、さらにフォトマスクを介して紫外線を照射して、形成された柱状構造の外周部を硬化させることにより、第2工程を実行する。このとき、第1工程で用いたフォトマスク13の位置をずらすことによって、同じフォトマスクを利用することができる。また、下部基板11上の電界を印加する微小電極の位置に合わせて、第1工程で用いたものとは異なるパターンのフォトマスクを用いることも可能である。
【0032】
このような工程を繰り返すことにより、全ての微小電極1a,1b,1c…に対応する位置に柱状構造6を形成する。この後、全面電極2を備える上部基板12を取り外すが、この全面電極2側には非樹脂系の液体を利用しているため、紫外線硬化樹脂を硬化した後でも容易に取り外すことができる。
次に、微小電極1a,1b,1c…を備える下部基板11と硬化樹脂成形品に付着した誘電率の高い液体を洗浄して除去することにより、下部基板11の微小電極1a,1b,1c…上に抜き構造が形成されたプラスチック成形品を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】は、本発明の実施の形態によるプラスチック成形品の製造方法に用いる電界印加セルの模式図であり、微小電極アレイに電界を印加していない状態を示す。
【図2】は、本発明の実施の形態によるプラスチック成形品の製造方法に用いる電界印加セルの模式図であり、所定の微小電極に電界を印加した状態を示す。
【図3】は、本発明の実施の形態によるプラスチック成形品の製造方法に用いる電界印加セルの模式図であり、所定の柱状構造を紫外線により硬化している状態を示す。
【図4】は、従来のプラスチック成形品の製造方法を説明する電界印加セルの模式図であり、(a)は電界印加セルに電界を印加しない状態を示し、(b)は電界を印加した状態を示す。
【図5】は、別の従来のプラスチック成形品の製造方法を説明する電界印加セルの模式図であり、(a)は電界印加セルに電界を印加しない状態を示し、(b)は電界を印加した状態を示す。
【符号の説明】
【0034】
1…微小電極アレイ 1a〜1f…微小電極
2…電極(全面電極) 3…薄膜トランジスタ(TFT)アレイ
3a〜3f…薄膜トランジスタ(TFT) 4…誘電率の高い液体(層)
5…誘電率の低い液体(層) 6…柱状構造
7…電源 8…スイッチ
10…電界印加セル 11…電極基板(下部基板)
12…電極基板(上部基板) 13…フォトマスク
13a,13d…開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに不溶で誘電率が異なる少なくとも2種類の液体を、一対の電極が対向して配置されている電界印加セルに層状に充填する液体供給工程と、
前記電極間に電界を印加して前記少なくとも2種類の液体のうち、誘電率の高い液体を電界方向に平行な向きに伸ばすように集め、柱状構造を形成する電界印加工程とを有し、
前記少なくとも2種類の液体のうち、少なくとも1つが未硬化の硬化性樹脂であり、この硬化性樹脂を前記柱状構造の形成後に硬化させるプラスチック成形品の製造方法において、
前記電界印加セルを構成する対抗電極基板の少なくとも一方の電極基板が、微小電極アレイと薄膜トランジスタアレイを備えており、前記微小電極アレイの一部の電極に対して局所的に電界を印加することを特徴とするプラスチック成形品の製造方法。
【請求項2】
前記局所的に電界を印加し、柱状構造が形成された領域のみの硬化性樹脂を局所的に硬化することを特徴とする請求項1に記載のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項3】
前記硬化性樹脂が紫外線硬化樹脂であり、前記硬化性樹脂の硬化手段が紫外線の局所露光であることを特徴とする請求項2に記載のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項4】
前記紫外線の局所露光がマスク露光であることを特徴とする請求項3に記載のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項5】
前記電界印加セルを構成する対抗電極基板の少なくとも一方の電極基板に構成されている微小電極アレイのうち、少なくとも1つおき以上の間隔をもった電極にのみ電界を印加して、前記少なくとも2種類の液体のうち、誘電率の高い液体を電界方向に平行な向きに伸ばすように集め、柱状構造を形成する選択的電界印加工程と、前記柱状構造部分を局所的に硬化する選択的硬化工程を、少なくとも2回以上繰り返すことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項6】
前記少なくとも2種類の液体のうち、未硬化の硬化性樹脂が最も低い誘電率の液体であることを特徴とする請求項5に記載のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項7】
前記少なくとも2種類の液体を層状に形成する工程において、未硬化の硬化性樹脂が、前記電界印加セルを構成する対向電極基板のうち、微小電極アレイと薄膜トランジスタアレイを有する電極基板側に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項8】
前記少なくとも2種類の液体のうち、誘電率の高い液体は温度、光等のエネルギーによって硬化しない液体であることを特徴とする請求項7に記載のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項9】
前記電界印加セルを構成する対抗電極基板の少なくとも一方の電極基板に構成されている微小電極アレイのうち、少なくとも1つおき以上の間隔をもった電極にのみ電界を印加して、前記少なくとも2種類の液体のうち、誘電率の高い液体を電界方向に平行な向きに伸ばすように集め、柱状構造を形成する選択的電界印加工程と、前記柱状構造部分の外周部を局所的に硬化する選択的硬化工程を、少なくとも2回以上繰り返すことによって、所定の電極位置に形成された柱状構造部分の外周部を硬化した後、誘電率の高い液体を除去することを特徴とする請求項8に記載のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項10】
一対の電極が対向して配置され、この電極間に電界を印加し得る電界印加セルと、
少なくとも1つが未硬化の硬化性樹脂であり、互いに不溶で誘電率が異なる少なくとも2種類の液体を、前記電界印加セルに層状に充填する液体供給手段と、
前記硬化性樹脂を硬化させる樹脂硬化手段を備えて成り、
前記一対の電極間に電界を印加して、前記少なくとも2種類の液体のうち、誘電率の高い液体を電界方向に平行な向きに伸ばすように集めて柱状構造を形成し、前記硬化性樹脂を硬化させるプラスチック成形品の製造装置において、
前記電界印加セルを構成する対抗電極基板の少なくとも一方の電極基板が、微小電極アレイと薄膜トランジスタアレイを備えており、前記微小電極アレイの一部の電極に対して局所的に電界を印加することを特徴とするプラスチック成形品の製造装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項9のいずれかに記載のプラスチック成形品の製造方法によって作製されたことを特徴とするプラスチック成形品。
【請求項12】
請求項9に記載のプラスチック成形品の製造方法によって作製されたプラスチック成形品において、前記誘電率の高い液体を除去した跡に電気泳動物質を注入し、電極基板によって封止することを特徴とする電気泳動ディスプレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−208207(P2009−208207A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54897(P2008−54897)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】