説明

プラスチック製フロアポストの製造方法

【課題】 製造コストを削減することができるプラスチック製フロアポストの製造方法を提供すること。
【解決手段】 床受け天板1の下面には略円形のガイド凸壁12を突設して、その内側に溶着部11を形成し、かつ、この溶着部11の接合面には少なくとも複数のアンカー孔13・13…を形成するとともに、同溶着部11の略中央には凹欠部14を形成する一方、
外周にネジスクリュー22を成形せしめたスクリューロッド2の基端部の外周縁には、止着凸縁21を成形するとともに、
この止着凸縁21を前記ガイド凸壁12に内接させた状態で前記床受け天板1の溶着部11の接合面に当接し、溶着手段Pにより前記スクリューロッド2の止着凸縁21および溶着部11を互いに加熱溶融し、この溶融したプラスチックを前記アンカー孔13に流入せしめ、この流入した溶融プラスチックを硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築資材として用いるプラスチック製フロアポストの改良、更に詳しくは、強度を損ねることなく、使用材料を軽減することができ、かつ、簡単に組み立てることができて、製造コストを削減することができるプラスチック製フロアポストの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、最近の床工事においては、現場における束立てなどの木工作業を極力少なくするために、アジャストボルト機構を利用した高さ調節式床束(フロアポスト)を用いて床を構築する床工法が一般に普及してきている。
【0003】
そこで、本願出願人においても、嘗て、建築用のフロアポストを開発するとともに、成形性に優れているという点から、プラスチックを使用材料として作製したものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、かかるプラスチック製のフロアポストにあっては、製品コストを少しでも削減するために、使用材料を軽減したり、軽量化を図る方策を講じる必要があった。
【0005】
ここで、従来のフロアポストの一例としては、まず、図9に示すように、ナット部材が裏面に一体に成形された天板部材Tと、ボルト部材Vを一体に備えたベース部材Bとで構成したものがある。
【0006】
しかしながら、天板部材Tにナット部分nを成形するには、金型の構造が複雑になって高価になってしまい、製造コストを引き上げてしまうという問題があった。しかも、これら別個の部品を施工現場で組み立てる手間がかかるため、職人の手を煩わせるという不満がある。更にまた、ボルト部材Vの長さが十分に取れず、全長のサイズが低い場合、高さ調整ができる範囲が多くとれないという問題がある。
【0007】
一方、図10に示すように、天板部材Tとボルト部分vとが一体成形して構成されているものにあっては、天板部材Tの裏面におけるボルト部分vに成形するリブ形状が、金型から脱型する際にスライド可能な形状にしか設計できないという問題がある。
【0008】
また、この際、ボルト部分vを中空成形にしていたのであるが、この中空部に挿入される金型は射出圧力によって振動を起こすおそれがあるため、設計可能な長さが制限されてしまうという問題がある。
【特許文献1】特開2003−74171号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来のプラスチック製のフロアポストに上記問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、強度を損ねることなく、使用材料を軽減することができ、かつ、簡単に組み立てることができて、製造コストを削減することができるプラスチック製フロアポストの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0011】
即ち、本発明は、フロア材を支持固定する床受け天板1を上端に備え、かつ、下端に配設したベース部材3に螺合するスクリューロッド2を正逆回転させることによって、前記フロア材のレベルを昇降調節可能なプラスチック製のフロアポストを作製するにあたり、
前記床受け天板1の下面には略円形のガイド凸壁12を突設して、その内側に溶着部11を形成し、かつ、この溶着部11の接合面には少なくとも複数のアンカー孔13・13…を形成するとともに、同溶着部11の略中央には凹欠部14を形成する一方、
棒状のプラスチック中空成形体であって、外周にネジスクリュー22を成形せしめたスクリューロッド2の基端部の外周縁には、止着凸縁21を成形するとともに、
この止着凸縁21を前記ガイド凸壁12に内接させた状態で前記床受け天板1の溶着部11の接合面に当接し、溶着手段Pにより前記スクリューロッド2の止着凸縁21および溶着部11を互いに加熱溶融し、この溶融したプラスチックを前記アンカー孔13に流入せしめ、
然る後、この流入した溶融プラスチックを硬化させることによって、床受け天板1とスクリューロッド2とを接合一体化するという技術的手段を採用した。
【0012】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、床受け天板1の溶着部11の接合面には肉盛状の溶け代15を形成して、この溶け代15の周囲には少なくとも複数のアンカー孔13・13…を形成し、溶着手段Pにより前記スクリューロッド2の止着凸縁21および溶着部11と前記溶け代15とを互いに加熱溶融し、この溶融したプラスチックを前記アンカー孔13に流入せしめるという技術的手段を採用することができる。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、床受け天板1における溶着部11中央の凹欠部14の周囲には、溶け代15を略円周状に形成し、当接するスクリューロッド2の基端部端面に沿って溶融できるようにするという技術的手段を採用することができる。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、スクリューロッド2の基端部の外周縁には、少なくとも複数の止着凸縁21・21…を放射状に成形し、これらの止着凸縁21・21…を前記ガイド凸壁12に内接させた状態で前記床受け天板1の溶着部11の接合面に当接するという技術的手段を採用することができる。
【0015】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、スクリューロッド2の止着凸縁21を略円板状に成形し、この止着凸縁21を前記ガイド凸壁12に内接させた状態で前記床受け天板1の溶着部11の接合面に当接するという技術的手段を採用することができる。
【0016】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、スクリューロッド2の止着凸縁21の接合面にアンカー孔21aを成形するという技術的手段を採用することができる。
【0017】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、溶着手段Pとして、超音波溶接機、ヒートシール機、超音波溶接機、高周波溶接機、ヒートプレス機、摩擦溶接機、溶剤塗布のうちの何れかを採用するという技術的手段を採用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にあっては、床受け天板の下面には略円形のガイド凸壁を突設して、その内域には溶着部を形成し、かつ、この溶着部の接合面には少なくとも複数のアンカー孔を形成するとともに、同溶着部の略中央には凹欠部を形成する一方、棒状のプラスチック中空成形体であって、外周にネジスクリューを成形せしめたスクリューロッドの基端部の外周縁には、止着凸縁を成形するとともに、この止着凸縁を前記ガイド凸壁に内接させた状態で前記床受け天板の溶着部の接合面に当接し、溶着手段により前記スクリューロッドの止着凸縁および溶着部を互いに加熱溶融し、この溶融したプラスチックを前記アンカー孔に流入せしめた後、この流入した溶融プラスチックを硬化させることによって、床受け天板とスクリューロッドとを接合一体化することができる。
【0019】
このように、各構成部品を個別に成形することができるため、複雑な金型構造の必要がなく、コストダウンが図れる。また、溶着一体化による組み立てに適している。更に、溶着対象面にアンカー孔を成形したことによって、流入した溶融プラスチックがこのアンカー孔内で硬化して、強化に固着することができる。
【0020】
また、ガイド凸壁を作製したことにより、床受け板の中心とスクリューロッドの中心との軸芯を一致させることができるので、製造精度が向上するばかりでなく、製造されるフロアポストは、支持荷重を中心に均一に受けることができる。
【0021】
このように、床受け天板の裏面において、アンカー孔や凹欠部などの肉盗みによる材料軽減および軽量化加工を施すことができ、かつ、簡単に組み立てることができて、製造コストを削減することができることから、産業上の利用価値は頗る大きいと云える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態を具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0023】
本発明の実施形態を図1から図8に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものは床受け天板であり、符号2で指示するものはスクリューロッド、また、符号3で指示するものはベース部材である。
【0024】
しかして、本実施形態におけるプラスチック製のフロアポストは、フロア材を支持固定する床受け天板1を上端に備え、かつ、下端に配設したベース部材3に螺合するスクリューロッド2を正逆回転させることによって、前記フロア材のレベルを昇降調節可能な器具である(図1参照)。
【0025】
本実施形態のフロアポストを作製するにあっては、まず、前記床受け天板1の下面には略円形のガイド凸壁12を突設して、その内域には溶着部11を形成し、かつ、この溶着部11の接合面には少なくとも複数のアンカー孔13・13…を形成するとともに、同溶着部11の略中央には凹欠部14を形成する(図2参照)。
【0026】
このように、アンカー孔13および凹欠部14を形成することにより、使用材料を軽減することができるのである。
【0027】
次に、棒状のプラスチック中空成形体であって、外周にネジスクリュー22を成形せしめたスクリューロッド2を作製する。このスクリューロッド2の基端部の外周縁には、止着凸縁21を成形する。本実施形態では、図示のように、少なくとも複数(例えば、5本)の止着凸縁21・21…を放射状に成形することができる。この際、更に、各止着凸縁21を等間隔に配設すれば、安定性を付与することもできて、より好ましい。
【0028】
本実施形態では、上記床受け天板1およびスクリューロッド2、ベース部材3は、ポリプロピレン(PP)を使用材料として、周知の射出成形法によって作製する。
【0029】
そして、これらの止着凸縁21・21…を前記ガイド凸壁12に内接させた状態で前記床受け天板1の溶着部11の接合面に当接させる。この際、ガイド凸壁12を略円形にすることにより、スクリューロッド2が多少回転しても、止着凸縁21の外縁部が確実に掛止するため、溶着部11に正確に位置決めして当接させることができ、床受け天板1の中心とスクリューロッド2の中心との軸芯を一致させることができる。
【0030】
次いで、溶着手段Pにより前記スクリューロッド2の止着凸縁21および溶着部11を互いに加熱溶融し(図3参照)、この溶融したプラスチックを前記アンカー孔13に流入せしめる。
【0031】
この溶着手段Pとしては、超音波溶接機を採用することができるけれども、その他に、ヒートシール機、高周波溶接機、ヒートプレス機、摩擦溶接機、溶剤塗布などを採用することもできる。
【0032】
然る後、このスクリューロッド2の止着凸縁21と床受け天板1の溶着部11との溶融プラスチックが前記アンカー孔13に流入し、これを硬化させることによって、床受け天板1とスクリューロッド2とを接合一体化することができる(図4および図5参照)。
【0033】
なお、本実施形態では、床受け天板1の溶着部11の接合面には肉盛状の溶け代15を形成することができ、この溶け代15の周囲には、前記同様に、少なくとも複数のアンカー孔13・13…を形成する。
【0034】
すると、前記同様に、溶着手段Pにより加熱溶着する場合に、当該溶け代15の部分が溶融し、この溶融したプラスチックを前記アンカー孔13に流入せしめることができるので、アンカー効果を向上せしめることができる。
【0035】
また、必要に応じて、更に、スクリューロッド2の止着凸縁21の接合面にアンカー孔21aを成形することもでき、このアンカー孔21aにも溶融プラスチックを流入させて、これを硬化させることによって、より確実に接合一体化させることもできる。
【0036】
更にまた、前記溶け代15を、床受け天板1における溶着部11中央の凹欠部14の周囲に、略円周状に形成することができ、当接するスクリューロッド2の基端部端面に沿って溶融できるようにすることもでき、この溶融した溶け代15のプラスチックが当該基端部の全周に亙り溶着でき、より強固に固着することができる。
【0037】
以上のようにして完成したフロアポストは、強度を損ねることなく、使用材料を軽減することができ、かつ、簡単に組み立てることができるので、製造コストの削減および軽量化が実現されているのである(図6参照)。なお、スクリューロッド2には、ベース部材3との固定のためのストッパ23を、適宜、配設することもできる。
【0038】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、スクリューロッド2の止着凸縁21の形状は、図7に示すように、略円板状に成形することもできるし、また、止着凸縁21を複数設ける場合における数量も、適宜設計変更することができる。
【0039】
また、床受け天板1の形状は円形のものに限らず、図8に示すような四角形のものや、多角形などに変更することができる。更にまた、床受け天板1および/またはスクリューロッド2、ベース部材3の使用材料はポリプロピレン(PP)に限らず、ポリエチレン(PE)やポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂を採用することもでき、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態のフロアポストを表わす分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の床受け天板を表わす説明断面図である。
【図3】本発明の実施形態の床受け天板とスクリューロッドとを溶着する工程を表わす斜視図である。
【図4】本発明の実施形態の床受け天板とスクリューロッドとを溶着した状態を表わす斜視図である。
【図5】本発明の実施形態の床受け天板とスクリューロッドとを溶着した状態を表わす説明断面図である。
【図6】本発明の実施形態のフロアポストを表わす全体斜視図である。
【図7】本発明の実施形態のフロアポストの変形例を表わす全体斜視図である。
【図8】本発明の実施形態のフロアポストの変形例を表わす全体斜視図である。
【図9】従来のフロアポストを表わす斜視図である。
【図10】従来のフロアポストを表わす斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 床受け天板
11 溶着部
12 ガイド凸壁
13 アンカー孔
14 凹欠部
15 溶け代
2 スクリューロッド
21 止着凸縁
21a アンカー孔
22 ネジスクリュー
23 ストッパ
3 ベース部材
P 溶着手段
T 天板部材
n ナット部分
v ボルト部分
V ボルト部材
B ベース部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロア材を支持固定する床受け天板1を上端に備え、かつ、下端に配設したベース部材3に螺合するスクリューロッド2を正逆回転させることによって、前記フロア材のレベルを昇降調節可能なプラスチック製のフロアポストを作製するにあたり、
前記床受け天板1の下面には略円形のガイド凸壁12を突設して、その内側に溶着部11を形成し、かつ、この溶着部11の接合面には少なくとも複数のアンカー孔13・13…を形成するとともに、同溶着部11の略中央には凹欠部14を形成する一方、
棒状のプラスチック中空成形体であって、外周にネジスクリュー22を成形せしめたスクリューロッド2の基端部の外周縁には、止着凸縁21を成形するとともに、
この止着凸縁21を前記ガイド凸壁12に内接させた状態で前記床受け天板1の溶着部11の接合面に当接し、溶着手段Pにより前記スクリューロッド2の止着凸縁21および溶着部11を互いに加熱溶融し、この溶融したプラスチックを前記アンカー孔13に流入せしめ、
然る後、この流入した溶融プラスチックを硬化させることによって、床受け天板1とスクリューロッド2とを接合一体化することを特徴とするプラスチック製フロアポストの製造方法。
【請求項2】
床受け天板1の溶着部11の接合面には肉盛状の溶け代15を形成して、この溶け代15の周囲には少なくとも複数のアンカー孔13・13…を形成し、溶着手段Pにより前記スクリューロッド2の止着凸縁21および溶着部11と前記溶け代15とを互いに加熱溶融し、この溶融したプラスチックを前記アンカー孔13に流入せしめることを特徴とする請求項1記載のプラスチック製フロアポストの製造方法。
【請求項3】
床受け天板1における溶着部11中央の凹欠部14の周囲には、溶け代15を略円周状に形成し、当接するスクリューロッド2の基端部端面に沿って溶融できるようにすることを特徴とする請求項2記載のプラスチック製フロアポストの製造方法。
【請求項4】
スクリューロッド2の基端部の外周縁には、少なくとも複数の止着凸縁21・21…を放射状に成形し、これらの止着凸縁21・21…を前記ガイド凸壁12に内接させた状態で前記床受け天板1の溶着部11の接合面に当接することを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載のプラスチック製フロアポストの製造方法。
【請求項5】
スクリューロッド2の止着凸縁21を略円板状に成形し、この止着凸縁21を前記ガイド凸壁12に内接させた状態で前記床受け天板1の溶着部11の接合面に当接することを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載のプラスチック製フロアポストの製造方法。
【請求項6】
スクリューロッド2の止着凸縁21の接合面にアンカー孔21aを成形することを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載のプラスチック製フロアポストの製造方法。
【請求項7】
溶着手段Pとして、超音波溶接機、ヒートシール機、超音波溶接機、高周波溶接機、ヒートプレス機、摩擦溶接機、溶剤塗布のうちの何れかを採用することを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載のプラスチック製フロアポストの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−107330(P2007−107330A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301237(P2005−301237)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【出願人】(390014029)株式会社八木熊 (31)
【Fターム(参考)】