プラスチック製マイクロ流体分離および検出プラットフォーム
複数のマイクロ流体チャネルおよびある検出窓を含み、ここに、検出窓は薄いプラスチックを含み;検出窓は、各マイクロ流体チャネルの検出領域を含む、プラスチック電気泳動分離チップが提供される。かかるチップは支持体に結合でき、開口部を支持体に設けて、薄いプラスチック検出窓で電気泳動チップ中の試料の検出を可能にする。さらに、プラスチック電気泳動分離チップ上の複数の試料を電気泳動的に分離および検出する方法が記載される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2007年4月4日付けで出願した米国仮出願シリアル番号60/921,802;2007年8月13日付けで出願した米国仮出願シリアル番号60/964,502;および2008年2月12日付けで出願した米国仮出願シリアル番号61/028,073(各々をここに出典明示してそのすべてを本明細書の一部とみなす)の米国特許法第119条(e)下の出願日の利益を主張する。また、本願は、「Methods For Rapid Multiplexed Amplification Of Target Nucleic Acids」を表題とするアトニー整理番号08−318−US;および「Integrated Nucleic Acid Analysis」を表題とするアトニー整理番号07−801−USの本願と同日出願のそれらの2つの米国出願をここに出典明示してそのすべてを本明細書の一部とみなす。
【0002】
本発明は、レーザー誘起蛍光による検出を含む電気泳動による核酸配列決定および断片サイジングの分野にある。この分析はプラスチック電気泳動チップで行なわれる。
【背景技術】
【0003】
1970年代のDNA塩基配列決定技術の出現以来(Maxam & Gilbert, 1977, Proc Natl Acad Sci USA 74: 560-564; Sangerら, 1977, Proc Natl Acad Sci USA 74: 5463-5467)、これらの技術を利用する広範囲の適用が開発された。並行して、DNA塩基配列決定を行うためのますます精巧な計測器が導入された。例えば、1986年には、Applied Biosystems社は、サンガー配列決定方法によって生成されたDNA断片の分離に基づいた自動DNAシークエンサーを商業化し;DNA断片を1組の4つの蛍光色素で標識し、キャピラリー電気泳動により分離した(Smithら, 1986, Nature 321: 674-679)。結果として、サンガー配列決定は、最近30年間最も広範囲に利用されている配列決定方法となっている。
【0004】
より最近では、様々な新しい配列決定方法および関連する計測器が開発され続けている。「次世代」の方法(Metzker, 2005, Genome Research 15: 1767-1776に概説)と称されたこれらの化学は、パイロシークエンス法、段階的ライゲーションによる配列解読および単一分子シーケンシングを含む。次世代配列決定方法に研究を駆動する主要な目的は、一般的に高速大量処理のゲノム配列決定を行ない、特に完全なゲノム配列を得ることのコストを低減することである。次世代技術の1塩基対当たりのコストはサンガー配列決定のものよりいくつかのケースにおいて少ないこともあるが、(サンガーを含めた)これらの方法のすべてが、コストがかかり、かなりの時間、労働および実験装置を必要とする。
【0005】
所与のゲノムから非常に大量の配列データを得ることに対する現在の注目は、迅速に比較的少量のゲノム配列を獲得する価値を否定しない。例えば、多数の一般的なヒト疾患は、完全なヒトゲノムを生成するのに必要とされるより小オーダーの大きさでDNA塩基配列の1000個未満の塩基対に基づいて診断できる。同様に、短いタンデムリピート分析によって生成された20個未満の特定のDNA断片セットのサイズの正確な決定は、所与の個体を同定するのに十分である。
【0006】
所与のヒト、動物または病原体のゲノムの部分集合の(核酸配列決定または断片サイジングによる)迅速な同定として定義される、集中核酸分析を可能にする機器および技術の開発につきまだ対処されていない必要性が存在する。集中核酸分析は、エンドユーザがリアルタイムの臨床的、法医学または他の決定を行うのを可能とするであろう。その適用に依存して、集中核酸分析は、当該技術分野において、病院の検査室、医師のオフィス、病床を含めた様々な周囲環境、あるいは法医学または環境上の適用の場合において行なわれ得る。
【0007】
核酸(DNAおよびRNA)配列決定に関して、臨床適用は、細菌性、真菌性およびウイルス性の疾患の診断(生物体の薬物耐性プロフィールの決定を含む)、癌(化学療法への反応性の決定を含む)、および遺伝性または他の一般的な疾患(薬物に対する反応性の決定を含む)を含む。また、集中した核酸配列決定は、薬理ゲノミクス解析およびある種の法医学適用(例えば、ミトコンドリアDNA配列決定を含む)に良好に適している。
【0008】
核酸断片サイジングに関して、集中核酸分析は、法医学および臨床適用に利用できる。例えば、あるタイプのヒトの同定は、短いタンデムリピート(STR)解析に基づいている(Edwardsら, 1991, Am J Hum Genet 49(4)746:756)。STR解析において、一連のプライマーを利用して、可変数のある短いタンデムリピートを含むあるゲノム領域を増幅する。得られたバンドのサイズは、(典型的にはキャピラリー電気泳動を用いる)核酸断片サイジングによって決定され、STR対立遺伝子のセットの各メンバーのサイズは、ユニークに個体を同定する。STRタイピングは、ヒトの法医学的遺伝子同定のための世界的な基準になっており、個体ならびにその個体の遺伝親類の同定を可能にする唯一のバイオメトリック技術である。臨床適用において、核酸断片サイジングを用いて、所与の障害(例えば、フリードライヒ運動失調症においてのごときヌクレオチド反復領域の特徴的な欠失または挿入を探す、またはその反復領域のサイズを決定することによる)を診断できる(Pandolfo, M., 2006, Methods Mol. Med 126: 197-216)。また、断片サイジングは感染病原体の同定に有用であり;DNA指紋法は病原体診断に利用できる。
【0009】
集中核酸分析の適用は、前記で説明されたものに限定されない。集中核酸分析を利用して、配列決定および断片サイジングの双方により臨床および環境上の試料において生物兵器病原体を同定できる。また、獣医学的および食物試験についての適用は、前記のものを映し出す。また、競走馬の育種および追跡のごとき獣医学的同定の適用、家畜繁殖およびペット同定は、開示された本発明の使用の範囲内にある。集中核酸分析の研究適用は多数である。要約すれば、集中核酸分析にはいくつかの産業を劇的に変化させる可能性を有する。
【0010】
既存の高速大量処理の毛細管ベースのシークエンサーおよび次世代シークエンサーは、タイムリーでかつコスト効率の良い方法で集中した核酸分析を行うことができない。それらの技術によって追求された規模の経済性は、非常に大量の配列データを得て解析するコストを低下させることにより駆動される。ルーチンの使用にそれらの方法を行うための集中核酸分析ができる機器およびシステムについては、それらは、ある種の「理想的な」特性および特徴を所有するように設計されるすべきである。特に、機器およびシステムは、できる限り迅速に動作可能なデータの生成を可能にするように結果を迅速に(理想的には何分間かのうちに)生成するべきである。それらは操作するのが容易であるべきであり、試薬および消耗品は安価であるべきである。加えて、いくつかの適用については、核酸分離がディスポ製品中で行なわれることは有用であり;これは、劇的に試料汚染の可能性を低減させる。これらの特性を達成するために、ポリマーベースのバイオチップは、ガラスおよびシリコンのごとき他の材料より、分離基材としてより良好に適する。
【0011】
プラスチックチップ上でDNA断片サイジングを達成する試みは、McCormick(Anal Chem 69(14):2626 1997))によって報告され、それは、ΦX174 RF DNAのHaeIII制限断片の分離を示す。その分離は、単一レーンのチップにおいて単一試料で行うが、しかしながら、貧弱な分解能の分離および貧弱な感度を示した。さらに、そのシステムは、単一フルオロフォアからの発光を単に検出できた。Sassi(J Chromatogr A, 894(1-2):203 2000)は、STRサイジング用の16の流動的に分離された分離レーンよりなるアクリルチップの使用を報告したが、このアプローチもまた貧弱な分解能および低感度を示した。この低いシステム感度は、同時の16のレーンの分離および検出を行う場合、対立形質の手段(法医学的分析に厳密に必要とされる内部サイジング標準)の検出を防止した。システムの信号対雑音比を増加させる試みを表わす2Hzの走査速度の使用は、分解能および精度の双方の分解を引き起こした。最後に、このシステムは、単一のフルオロフォアからの発光を単に検出できた。Shi(Electrophoresis 24(19-20):3371 2003およびShi, 2006, Electrophoresis 27(10):3703)は、単一試料の単一レーンのプラスチック分離デバイスにおいて、2色および4色の分離および検出を報告した。4.5cmのチャネルが単一ベースの分解能を提供することが報告されたが、実際には、1塩基対の間隔を空けた対立遺伝子の出現によって証拠づけられるように、分解能は貧弱である(TH01 9.3および10の対立遺伝子のピーク−対−谷の比率は、それに接近する)。より長い分離チャネル(6、10および18cm)を持つデバイスは、4.5cmのデバイスと比較して、解析用のより高い分解能を達成するようにこの研究において用いた。10および18cm長のデバイスの分解能は、分解能につき最適化したふるい用マトリックス組成物を用いた場合にデバイスが層剥離したので、制限された。
【0012】
実際上、プラスチックは、核酸配列決定および断片サイジングのために設計されたバイオチップに使用されるいくつかの主な障害を示すことが判明した。プラスチック材料の自己蛍光は、可視範囲の450〜800nmの波長の検出と干渉する(Puriska, 2005, Lab Chip 5(12):1348; Wabuyele, 2001 Electrophoresis 22(18):3939-48; Hawkins and Yager 2003 Lab Chip, 3(4): 248-52)。
【0013】
これらの波長は、サンガーの配列決定およびSTRサイジング用の市販キットに用いられる。さらに、既存のプラスチックデバイスは、一般的に用いられる基材に対して低結合強度および一般的に用いられるふるい用マトリックスでの貧弱な効率結果を有する。最後に、チャネルの内部表面は、ふるい用マトリックスおよびDNA試料と干渉する結果、電気浸透の流れおよびDNA−対−壁相互作用により貧弱な分解能を生じる(Kan, 2004, Electrophoresis 25(21-22):3564)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
結果的に、高分解能にて集中核酸分析を行うことができ、高い信号対雑音比を持つ安価な複数レーンのプラスチック・バイオチップについての実質的に対処されていない必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、高分解能にて集中核酸分析を行うことができ、高い信号対雑音比を持つ安価な複数レーンのプラスチック・バイオチップ、ならびにかかるチップを用いる方法を提供する。
【0016】
第1の態様において、本発明は、プラスチック分離チップ、特に、陽極部分、陰極部分および陽極部分と陰極部分との間のセンター部分を含む電気泳動チップを提供し、ここに、陰極部分は、少なくとも1つの第1のビア(via)を含み;陽極部分は少なくとも1つの第2のビアを含み;およびセンター部分は、複数のマイクロ流体チャネルおよび検出窓を含み、各マイクロ流体チャネルは分離領域および検出領域を有し;各マイクロ流体チャネルは、少なくとも1つの第1のビアおよび少なくとも1つの第2のビアと流体連通(in fluid communication)し;複数のマイクロ流体チャネルは実質的に同一面にあり;複数のマイクロ流体チャネルは、センター部分内で相互に交差せず;検出窓は薄いプラスチックを含み;および、検出窓は、各マイクロ流体チャネルの検出領域を含む。検出領域の外側のチップの部分は、同一の厚みのものであり得るか、または検出領域のそれより大きな厚みのものであり得る。
【0017】
第2の態様において、本発明は、陽極部分、陰極部分および陽極部分と陰極部分との間のセンター部分を含む頂部および底部表面を有する支持体を含むデバイスを提供し、ここに、センター部分は検出窓の開口部を含み、陽極部分は少なくとも1つの陽極ウェルを含み、陰極部分は少なくとも1つの陰極ウェルを含み;装置は、さらに、頂部および底部表面を有する第1の態様によるチップを含み、チップの頂部表面は、支持体の底部表面と接触し、マイクロ流体チャネルは、それらのビアを介して陰極および陽極のウェルと流体連通し;チップは、支持体に固定して取付けられる。
【0018】
第3態様において、本発明は、複数の試料を同時に電気泳動的に分離および検出する方法を提供し、この方法は、第1の態様によるマイクロチップ上で複数のマイクロ流体チャネルの各々に複数の試料を供し;複数のマイクロ流体チャネルを横切る電位を印加して、分離チャネルに試料を注入し、複数の分析試料の各々を含む検出可能な種を分離し;次いで、検出窓で複数の分離された試料を含む検出可能な種の各々を検出することを含む。
【0019】
本発明の特定の好ましい具体例は、ある種の好ましい具体例の以下のより詳細な記載および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の様々な具体例によるマイクロ流体分離および検出チップを示す。
【図2】図2は、本発明の様々な具体例によるマイクロ流体分離および検出チップを構築するために用いることができる別々の支持体およびチップ層を示す。
【図3】図3は、本発明の様々な具体例によるマイクロ流体分離および検出チップを構築するために用いることができる別々のデバイス層を示す。
【図4】図4は、本発明の様々な具体例によるマイクロ流体分離の陽極部および検出チップの拡大図を示す。
【図5】図5は、本発明の様々な具体例による注入チャネルを有するマイクロ流体分離および検出チップを示す。
【図6】図6は、本発明の様々な具体例によるマイクロ流体分離および検出チップの模式図である。
【図7】図7は、エンボス加工のために利用したスタックを示す。
【図8】図8は、3/8"の厚みのアクリル板(GE Plastic)からのCNCミリングによって作製したチップ支持体を示す;(頂部)平面図;底部(側面図)。
【図9】図9は、典型的なガラス分離チップと比較した、プラスチックチップの低自己蛍光を示す;(a)組み立てたプラスチックチップ(Pchip2);(b)組み立てたプラスチックチップ(Pchip1);(c)プラスチックカバー層のみ;(d)厚み1.4mmのガラスチップ;(e)厚み0.7mmのガラスチップ;(f)プラスチック基材のみ。
【図10】図10は、5色標識したキット(ABI AmpFlSTR Identifilerキット)からの対立形質ラダーのための対立遺伝子と呼ばれるプロフィールである;頂部から底部へ:青色、緑色、黄色、赤色、オレンジ色の検出シグナル。
【図11】図11は、9947AのヒトゲノムDNAについての対立遺伝子と呼ばれるSTRプロフィールである:頂部から底部へ:青色、緑色、黄色、赤色、オレンジ色の検出シグナル;全プロフィールは1.0ngのDNAテンプレートで達成される。
【図12】図12は、480bpまでについてのR>0.4での分解能を示し、これは、480bpまでのその単一ベースの分解能を示す;頂部から底部へ:青色、緑色、黄色、赤色、オレンジ色の検出シグナル。
【図13】図13は、1ヌクレオチドによって分離される2つの対立遺伝子(THO1 9.3および10)の分解能を示す。
【図14】図14はpGEM断片のDNA配列決定解析である;頂部から底部へ:青色、緑色、黄色および赤色の検出シグナル。
【図15】図15は、pGEM断片のDNA配列決定解析を示す合成した4つの塩基対グラフである。
【図16】図16は、支持体(上部)およびチップ(底部)層を示す直接的な動電学的な試料注入のチップデザインの分離模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、約1塩基対だけサイズにおいて異なり、少なくとも1.0ngの濃度レベルのDNAテンプレートにて核酸種の分離を検出できるプラスチック分離チップを提供する。
【0022】
STR分析につき分析される試料の最低レベルは、多重PCR反応に先立ち800未満のコピー、400未満のコピー、200未満のコピー、100未満のコピー、50未満のコピー、30未満のコピー、10未満のコピーまたは1コピーの核酸テンプレートを含む核酸テンプレートよりなる。配列決定のために分析される最低濃度の試料は、サンガー配列決定反応に対する入力として、0.5ピコモル未満、0.1ピコモル未満、0.01ピコモル未満の核酸テンプレートよりなる。
【0023】
本願明細書に用いた「注入チャネル」なる語句は、それが交差するマイクロ流体チャネルへの試料の導入を可能にする、交差チャネルを意味する。交差チャネルは、単一のクロスチャネル、単一のT連結、またはオフセットの2重のT連結配置にあることができる。
【0024】
本願明細書に用いた「流体連通」なる語句とは、流体が2つのチャンバー、成分または領域の間に流れることができるように一緒に連結された2つのチャンバー、あるいは流体を含有する他の成分または領域をいう。従って、「流体連通」する2つのチャンバーは、例えば、2つのチャンバー間のマイクロ流体チャネルによって一緒に接続でき、その結果、流体は2つのチャンバー間に自由に流れることができる。かかるマイクロ流体チャネルは、チャンバー間の流体連通を遮断および/または制御するために、閉じるかまたは閉塞できるその中の1以上のバルブを所望により含むことができる。
【0025】
本願明細書に用いた「蛍光色素」なる語句は、光源での励起に際して、色素が380〜850nmの波長を有する光を発光することを意味する。好ましくは、色素は、約450〜800nmの間の波長を有する光を発光し;より好ましくは、色素は、約495〜775nmの間の波長を有する光を発光する。
【0026】
本願明細書に用いた「自己蛍光」なる用語は、光照射下で注目するフルオロフォア以外の物質により生成された蛍光を意味する。
【0027】
本願明細書に用いた「実質的に蛍光を発しない」なる語句は、光照射(例えば、約350〜500nm、400〜500nmまたは450〜500nmの間の1以上の波長;特に、488nm;レーザー照射)に付された場合に参照された対象(例えば、固体または溶液)からのバックグラウンド蛍光シグナル(例えば、380〜850nm;400〜800nm;450〜800nm;500〜800nmまたは495〜775nm)が、厚み0.7mmのボロフロートガラスよりなる従来のガラスマイクロ流体デバイスからのものより低いバックグラウンドを有することを意味する。
【0028】
本願明細書に用いた「ノルボルネンベースのポリマー」なる用語は、ノルボルネン含有モノマーが当業者に知られた方法(例えば、米国特許第4,945,135号;第5,198,511号;第5,312,940号;および第5,342,909号参照)により開環メタセシス重合によって重合される場合のノルボルネン部分を含む少なくとも1つのモノマーから調製されたポリマーを意味する。
【0029】
本明細書に用いた「ポリ(メチルメタクリレート)または「PMMA」なる用語は、メタクリル酸メチルの合成ポリマーを意味し、限定されるものではないが、商標名Plexiglas(商標)、Limacryl(商標)、R-Cast(商標)、Perspex(商標)、Plazcryl(商標)、Acrylex(商標)、ACrylite(商標)、ACrylplast(商標)、Altuglas(商標)、Polycast(商標)およびLucite(商標)下で販売されるもの、ならびに米国特許第5,561,208号、第5,462,995号および第5,334,424号(各々をここに出典明示して本明細書の一部とみなす)に記載されたそれらのポリマーを含む。
【0030】
本願明細書に用いた「ポリカーボネート」なる用語は、炭酸、グリコールまたは二価のフェノールのポリエステルを意味する。かかるグリコールまたは二価のフェノールの例は、p−キシリエングリコール、2,2−ビス(4−オキシフェニル)プロパン、ビス(4−オキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)エタン、1,1−ビス(オキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(オキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(オキシフェニル)ブタンおよびその混合物であり、それらは、限定されるものではないが、Calibre(商標)、Makrolon (商標)、 Panlite (商標)、Makroclear (商標)、Cyrolon (商標)、Lexan (商標)およびTuffak (商標)下で販売されたものを含む。
【0031】
本願明細書に用いた「核酸」なる用語は、一本鎖または二本鎖のDNAおよびRNA、ならびに改変された塩基、糖および骨格を含む代替的な核酸のいずれかまたは全ての形態を包含することを意図される。かくして、「核酸」なる用語は、限定されるものではないが、一本鎖または二本鎖のDNAもしくはRNA(および部分的に一本酸または部分的に二本鎖であり得るその形態)、cDNA、アプタマー、ペプチド核酸(「PNA」)、2’−5’DNA(DNAのAコンフォメーションとマッチするベース間隔を有する短くされた骨格を持つ合成物質;2’−5’DNAは、通常、BコンフォメーションのDNAとハイブリダイズしないが、RNAと容易にハイブリダイズするであろう)および、ロックされた核酸(「LNA」)を含むことが理解されるであろう。核酸類似体は、塩基対特性の類似するまたは改善された結合、ハイブリダイゼーションを有する天然のヌクレオチドの公知の類似体を含む。プリンおよびピリミジンの「類似」形態は、当該技術分野においてよく知られ、限定されるものではないが、アジリジニルシトシン、4−アセチルシトシン、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュードウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルクエオシン、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N−6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸および2,6−ジアミノプリンを含む。本発明によって供されるDNA骨格類似体は、燐酸ジエステルおよびホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホナート、ホスホラアミデート、アルキルホスホトリエステル、スルファメート、3’−チオアセタール、メチレン(メチルイミノ)、3’−N−カルバマート、モルホリノカルバマートおよびペプチド核酸(PNA)、メチルホスホナート結合、交互メチルホスホナートならびにホスホジエステル結合(Strauss-Soukup, 1997, Biochemistry 36:8692-8698)および米国特許第6,664,057号に言及されたベンジルホスホナート結合を含む;また、Oligonucleotides And Analogues, A Practical Approach, Edited By F. Eckstein, IRL Press At Oxford University Press (1991); Antisense Strategies, Annals Of The New York Academy Of Sciences, Volume 600, Eds. Baserga And Denhardt (NYAS 1992); Milligan, 1993, J. Med. Chem. 36:1923-1937; Antisense Research And Applications (1993, CRC Press)参照。本明細書における核酸は、当業者に知られたいずれかの手段により細胞から抽出または合成的に調製でき;例えば、核酸は、化学的に合成できるか、あるいは他のソースのうちのcDNAまたはmRNAから転写または逆転写できる。
【0032】
本願明細書に用いた「ビア(via)」なる用語は、固体物質の頂部および底部間の流体接続を可能とする固体物質中に形成された貫通孔を意味する。
【0033】
本発明の様々な具体例による典型的な電気泳動チップを図1に示す。チップ(100)は陽極部分(101)、陰極部分(102)および陽極部分と陰極部分との間のセンター部分(103)を含む。陰極部分は、少なくとも1つの第1のビア(104)を含み、陽極部分は、少なくとも1つのビア(105)を含む。センター部分は、複数のマイクロ流体チャネル(106)、および検出窓(107)を含み、各マイクロ流体チャネルは、分離領域および検出領域を有し;ここに、各マイクロ流体チャネルは、少なくとも1つの第1のビアおよび少なくとも1つの第2のビアと流体連通している。複数のマイクロ流体チャネルは、実質的に同一面にあり、センター部分内で相互に交差しない。各マイクロ流体チャネルは、試料の励起および/または検出を行うことができる領域を有する。複数のマイクロ流体チャネルの励起および検出領域を包含する領域は、検出窓として知られ、この窓は、薄いプラスチックを含む。
【0034】
本明細書に用いた「薄いプラスチック」なる語句は、参照材料が、(その最小寸法で)1mm未満、750μm未満、650μm未満、500μm未満、400μm未満、300μm未満、200μm未満または100μm未満の厚みを有するプラスチックを含むか;または、参照材料が、25〜2000μm、25〜1000μm、25〜750μm、25〜500μm、25〜400μm、25〜300μmまたは25〜200μmの範囲の厚みを有するプラスチックを含む。チップが検出窓において薄いように設計されるが、検出領域の外側のチップの複数の部分は、同一の厚み、または検出領域のものより大きい厚みのものであり得る。
【0035】
図1のチップは4つのマイクロ流体チャネルを有するように例示のために示されるが、しかしながら、かかる開示は、限定することを意図せず、むしろ、当業者が、チップが一つのチャネルを持つチップおよび2以上のチャネルを持つチップを含めた交互の数のマイクロ流体チャネル(以下に)を含むことができることを容易に認識するであろう。本願明細書に用いた「複数」なる用語は、2以上、4以上、8以上、16以上、32以上、48以上、64以上、96以上、128以上、256以上、384以上、512以上または1024以上;あるいは2〜4、2〜8、2〜16、2〜32、2〜48、2〜64、2〜96、2〜128、2〜384、2〜512、2〜1024のマイクロ流体チャネルを意味する。
【0036】
チップ(250)は、図3に示された基材層(360)およびカバー層(370)よりなる。複数の溝(361)は、基材層にパターン化される。一連のビア(すなわち、穴部を通って)(371、372)はカバーに形成されて、マイクロ流体チャネルへの流体のアクセスを供し、そのビアは、チップの陽極および陰極部分においてマイクロ流体チャネルの終わりに位置できる。別法として、ビアは、カバー層の代わりに基材層において形成して、同じ機能性を達成できる。基材層の頂部表面はカバー層の底部表面と結合して、マイクロ流体チャネルを形成する。ポリマーベースのマイクロ流体システムを作成するための技術は、BeckerおよびGartner (Becker, 2000, Electrophoresis 21: 12-26 およびBecker, 2008, Electrophoresis 390(1):89)(ここに出典明示してその全てを本明細書の一部とみなす)により広範囲に概説されている。いずれの数のこれらのプロセスを用いても、本願明細書に記載されたプラスチック分離チップを作成できる。
【0037】
特に、当該プラスチック分離チップは、生成される構造のネガティブなマスター型を用いて薄い熱可塑性フィルムの加熱エンボス法によって調製できる。マスター型は、電鋳法を用いて固体基材中で調製されたデバイスを複製することにより調製できる。固体基材は、当業者に知られた標準的な写真石版およびケミカルエッチング方法によってパターン化される板ガラスであり得る。基材およびカバー層は、加熱および圧力の適用により拡散結合される。
【0038】
チップの基材およびカバー層は、限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリ(アクリレート)(例えば、ポリ(メタクリル酸メチル))、ポリ(カーボネート)および不飽和、部分的不飽和もしくは飽和の環状オレフィンポリマー(COP)、または不飽和、部分的不飽和もしくは飽和の環状オレフィン共重合体(COC)(例えば、ZEONOR(商標)、ZEONEX(商標)またはTOPAS(商標))を含めた様々なプラスチック基材から構成できる。特に、COPおよびCOCは、それらが他のポリマーと比較して可視波長範囲で光学的に固有の低い自己蛍光を示すので、本チップ適用に有利である。
【0039】
本プロセスに利用したプラスチック基材およびカバー層の厚みは、チップからの自己蛍光を最小限にするために薄いままとする。プラスチック基材およびカバー層は、各々、独立して、2mm未満、1mm未満、750μm未満、650μm未満、500μm未満、400μm未満、300μm未満、200μm未満または100μm未満の厚みを有することができるか;あるいは、プラスチック基材およびカバー層は、各々、独立して、25〜2000μm、25〜1000μm、25〜750μm、25〜650mm、25〜500μm、25〜400μm、25〜300μm、25〜200μmまたは25〜100μmの範囲の厚みを有するプラスチックを含む。
【0040】
一つの具体例において、図2に例示されるように、チップ(250)は、頂部および底部表面を有する支持体(201)に取付けられ、それは、陽極部分(202)、陰極部分(203)および陽極部分と陰極部分との間のセンター部分(204)を含み、ここに、センター部分は検出窓(205)を含み、陽極部分は少なくとも1つの陽極ウェル(206)を含み、および陰極部分は少なくとも1つの陰極ウェル(207)を含む。上へのビア穴部を持つチップの頂部表面は、支持体の底部表面と接触し、チップは、固定的に支持体に取り付ける。チップは、当業者に知られた方法、例えば、拡散結合、溶媒結合および接着結合により支持体に取り付けることができる。
【0041】
支持体層は、限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリ(アクリレート)(例えば、ポリ(メタクリル酸メチル))、ポリ(カーボネート)、および不飽和、部分的に不飽和または飽和した環状オレフィンポリマー(COP)または不飽和、部分的に不飽和または飽和した環状オレフィン共重合体(COC)(例えば、ZEONOR(商標), ZEONEX(商標)またはTOPAS(商標))を含めた様々なプラスチック基材から構築できる。本プロセスに利用されるプラスチック支持体の厚みは、構造的な剛性を供し、リザーバ中の十分な容積の試料および緩衝液を可能とするために、十分に厚い。プラスチック支持体の厚みは、100〜15,000μmの範囲であろう。
【0042】
別法として、チップは、固体支持体上に溝をパターン化することにより作製して、チップ基材および支持体構造の双方を一緒に形成できる。カバー層を支持体に結合させて、その構造を完成できる。この配置において、マイクロ流体チャネルの検出部分と一致する支持体およびチップの検出窓の厚みは、自己蛍光を最小限にするように薄いままとする。この部分のチップの厚みは、1000μm未満、750μm未満、500μm未満または250μm未満であるか;または25〜1000μm、25〜750μmまたは25〜500μmの範囲にある。
【0043】
複数のマイクロ流体チャネルの各々は、少なくとも10μm、50μm、100μm、200μm、500μmまたは1mmの深さを有することができるか;あるいは1〜1000μm、10〜100μm、10〜50μmまたは25〜50μmの範囲の深さを有することができる。複数のマイクロ流体チャネルは、、少なくとも25μm、50μm、100μm、200μm、500μmまたは1mmの幅を有することができるか;あるいは、25〜1000μm、25〜200μmまたは50〜200μmの範囲の幅を有することができる。各チャネルのマイクロチャネル断面は、実質的に正方形、長方形、円形、半円、楕円、三角形、台形の断面を有することができる。当業者ならば、マイクロ流体チャネルが、深さ、幅および断面が均一であっても、そうでなくてもよいことを認識するであろう。
【0044】
複数のマイクロ流体チャネル(106)の各々は、分離領域(108)および検出領域(109)を含む。分離領域は、約2〜50cm、10〜50cm、2〜25cm、10〜25cmの分離長を持つチャネルを典型的に有する。分離長は、試料注入点と試料検出点との間のチャネルの部分として定義される。分離長は、典型的には、陰極リザーバと陽極リザーバとの間にわたる分離チャネルの全体長未満である。
【0045】
複数の試料の同時解析は、本願明細書に記載されたいずれかの分離チップへの別々の分離チャネルにおいて各試料を注入およびスタックすることにより行うことができる。分離チャネルに沿った電場の適用は、当業者が精通しているであろうように、例えば、チャネル(以下に)の表面に存在する電荷に依存して、分離チャネルの陰極部分から陽極部分に、または陽極部分から陰極部分にチャネルに沿って試料を移動させる。ふるい用マトリックスを介する試料の移動は、サイズに基づき種を分離する。
【0046】
分離された試料が検出窓を通過すると、試料内の各種に付着した色素ラベルを励起でき、得られた蛍光を検出できる。検出窓は、典型的には各チャネルの分離領域の終点にて複数のマイクロチャネルの各々の検出領域の一部を覆う。典型的には、複数のマイクロ流体チャネルの各々のための検出領域は、実質的にチャネルに沿った同じ位置にあり、検出窓が支持体のセンター部分において一つの位置にあることができる。
【0047】
複数の試料を複数の試料または緩衝液のウェルに同時に注入するためのインジェクターをチップに有利に設けて、同時の複数の試料分離および検出を可能にする。かかるインジェクターは、例えば、複数のマイクロ流体チャネルの1つのマイクロ流体チャネルに複数の試料の1つの試料を供する。インジェクターは、当業者に知られたいずれかの方法、例えば、試料を分離チャネルに連結する針またはチューブまたはチャネルを介した電気泳動輸送、空気作動または液体作動により、試料をチャネルに導入できる。
【0048】
ある具体例において、試料はチップの陰極リザーバを介してチップに負荷できる。各試料の注入容積は、当業者に知られた方法による陰極ウェルの1つを介して導入できる。例えば、試料は、分離チャネルおよび/または分離チャネルの交差チャネルならびに試料および廃棄物ウェルの適切なバイアスを介して注入でき、試料ウェル中の一部分の試料(すなわち、注入容積)は、分離チャネルに供される。試料注入後に、さらなる緩衝液は、各陰極ウェルに導入され;十分な容積を供して、ウェル中のいずれかの残存する試料を希釈できる。例えば、ある容積の緩衝液は、試料の注入容積の少なくとも約5、10、25、50、または100倍である陰極ウェルへ導入される。別法として、ある容積の緩衝液は、試料の注入容積の約5〜100倍、5〜50倍、10〜50倍の範囲にある陰極ウェルに導入される。
【0049】
他の具体例において、複数のマイクロ流体チャネルの各々は、さらに、試料の導入のための注入チャネルを含む。例えば、参照が図4になされ;そこには、陰極部分(401)を示し、センター部分(403)の断面に隣接するチップ(400)の拡大図が示されている。陰極部分は、少なくとも1つの第2のビア(405)を含み、センター部分は複数のマイクロ流体チャネル(406)を含む。各マイクロ流体チャネルは、チップの陰極部分内に、各マイクロ流体チャネル用の試料(409)および廃棄物(410)ウェルを含む注入チャネル(408)をさらに含む。
【0050】
注入チャネルは、単一の交差チャネル(図4に示す)、単一のT字路またはオフセット2重T字路配置であり得る。いくらかの具体例において、注入チャネルは、試料の注入容積を最小限にするオフセット2重T字路配置であり、それによって、分離分解能を改善する。注入チャネルからマイクロ流体チャネルへの試料の注入は、試料、廃棄物、陽極および陰極ウェルでの適切な電位の印加を通じた電気泳動注入を含めた当業者に知られた方法により達成できる。
【0051】
マイクロ流体分離および検出チップの別法の具体例を図5に示す。チップ(500)は、陽極部分(501)、陰極部分(502)およびセンター部分(503)を含む。陰極部分は、各マイクロ流体チャネル(506)のための1つの第1のビア(504)を含み、陽極部分は、各マイクロ流体チャネル(506)のための少なくとも1つの第2のビア(505)を含む。センター部分は、複数のマイクロ流体チャネル(506)および検出窓(507)を含み、各マイクロ流体チャネルは、分離領域および検出領域を含み;ここに、各マイクロ流体チャネルは、1つの第1のビアおよび1つの第2のビアと流体連通する。複数のマイクロ流体チャネルは、実質的に同一面にあり、センター部分内で相互に交差しない。検出窓は薄いプラスチックを含み、各マイクロ流体チャネルの検出領域の一部を覆う。
【0052】
この場合には、注入チャネルは、各マイクロ流体チャネルのための陽極(第2)および陰極(第1)のビアを優先して省略される。各試料の注入容積は、当業者に知られた方法(前記)により一つの陰極ビアを介して導入される。試料注入後に、さらなる緩衝液は、各陰極緩衝液ウェルに導入され;十分な容積を有利に供して、ウェル中でいずれかの残存する試料を希釈し、それにより、試料注入の延長から導入されたバックグラウンドシグナルを媒介して、検出窓で観察された信号対雑音比を改善する。例えば、ある量の緩衝液は、試料の注入容積の少なくとも約5、10、25、50または100倍である陰極ウェルに導入される。別法として、ある容積の緩衝液は、試料の注入容積の約5〜100倍、5〜50倍、10〜50倍の範囲にある陽極緩衝液ウェルに導入される。
【0053】
マイクロ流体チャネル内の試料の電気泳動分離は、マイクロチップ上のマイクロチャネルを横切る電位差の印加によって供される。高電圧は、典型的には、陰極ウェルおよび陽極ウェルに、各々、陰極および陽極を配置し、マイクロ流体チャネルの分離部分に沿って電場を確立し、次いで陰極端から、分離部分を通って、検出部分、最終的には陽極に試料(例えば、核酸)を移動させることにより、マイクロ流体チャネルの端を横切って印加する。効率的な分離のために必要な電場は、しばしば、50V/cm〜600V/cmの範囲にある。電源からの電圧は、電極を介して印加され、緩衝液を陽極および陰極リザーバ中で用いて、電極とふるい用ポリマーとの間の電気的接触を供する。
【0054】
試料分離に必要な高電圧は、陰極および陽極ウェル中にある緩衝液と接触する電極で分離チャネルに印加される。緩衝液と接触する電極で存在する高電圧により、緩衝液水分子は加水分解する結果、OH−、H+、またH2ガスを形成する。この形成の結果、経時的に緩衝液のpHが変化し、緩衝液内に気泡を形成する。緩衝液のpH変化は、陽極および陰極リザーバ(例えば、1X TTE; Amresco)中の緩衝液の十分な使用を通じて減弱して、電極とふるい用マトリックスとの間の接触を提供できる。緩衝液内に生成された気泡は、チャネルをブロックするふるい用マトリックスへ移動する傾向を有する結果、核酸の貧弱な分離を生じる。
【0055】
電極で形成される気泡は、以下の方法のうちの1つまたは組合せを用いてチャネルへの移動を防止できる。第1に、リザーバ内の電極を上げて、チャネルにおいてアクセスホールから離れて気泡発生源(電極)を移動できる。第2に、ガラスフリット、ポリマーフリットまたは高分子膜またはポリマーフィルターを陰極アクセスホールと電極の端との間に挿入できる。特に、ポリマーフリット(例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK))を陰極アクセスホールと電極の端との間に挿入できる。
【0056】
フリット、膜またはフィルターを非導電性となり、電極で形成された気泡が細孔を通過するのを防止する細孔サイズを持つように選択する。電極とふるい用マトリックスとの間のフリット、ポリマー膜またはフィルターの挿入の結果として、電気分解プロセスから形成された気泡が、チャネルに入ることを防止する。この実行は、チャネルにおける気泡遮断に起因する破壊を低下および/または消失できる。
【0057】
複数の試料よりなる同時分析用の分離デバイスは電気的に接続され、共用電源を用いて、複数のチャネルに同時にバイアスをかけることができる。さらに、チップおよび機器の物理的な制約は、全てのチャネルが、長さ、深さおよび幅に関して同一の物理的配置を有するのを通常可能にしないであろう。
【0058】
複数のマイクロ流体チャネルの各々のための実質的に同一の電気泳動注入および分離条件を達成するために、個々のデバイスの各チャネル区間は、本質的に同一の抵抗を有し、かくして、本質的に同一の電場を有するべきである。実質的に同一の電場、すなわち、複数のマイクロ流体チャネルの各々を横切る電場は約+/−5%を越えて異ならないことが、複数のマイクロ流体チャネルの各々の長さ、幅および深さの双方を同時に調整して、チャネルの各セグメントの抵抗を調整することにより確立できる。各セグメントの抵抗Rは、以下の関係により記載できる。
【0059】
【数1】
【0060】
[式中、ρは比抵抗であり、ιは長さであって、Aはチャネルの断面積である。]
【0061】
分離チップのチャネルの壁に常在の表面電荷は、電気浸透および試料−対−壁の相互作用を生じかねない。これらの効果は、マイクロ流体チャネルの内部壁に表面コーティングを適用することにより最小化できる。かかる表面コーティングおよび修飾は、当業者に知られた方法を介して達成できる(例えば、Ludwigおよび Belder, 2003 Electrophoresis 24(15):2481-6)。
【0062】
表面修飾についての多数の候補物は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリジメチルアクリルアミド(PDMA)、ポリ(ビニルピロリジノン)、ジメチルアクリルアミド(DEA)、ジエチルアクリルアミド(DEA)、ポリ(ジエチルアクリルアミド)(PDEA)およびそれらの混合物、例えば、PDMA:PDEAのを含めて利用可能である。
【0063】
加えて、電気泳動の適用の使用のために、複数のマイクロ流体チャネルの各々は、ふるい用マトリックスで有利に充填される。かかるふるい用マトリックスは、非限定例において、線形ポリアクリルアミド(PAA)、ポリジメチルアクリルアミド(PDMA)、ポリジエチルアクリルアミド(PDEA)、ポリビニルピロリジノン(PVP)および、例えば、PVP:PAA、PDMA:PAA、PDEA:PAA、PDEA:PDMA:PAAを含めたそれらの組合せを含むことができる。ある具体例において、ふるい用マトリックスは、0.1〜50重量%のポリアクリルアミドを含む。また、多数のふるい用マトリックスは動力学的な自己コーティング能力を所有する。本発明の電気泳動分離チップのこれらの具体例を用いて実施されると、核酸は陽極から陰極端へふるい用マトリックスを通って電気泳動的に移動し、その中でサイズ分離される。前記のように、チャネルの内部壁をコーティングして、電気浸透の影響および核酸−対−壁相互作用を最小限にできる。
【0064】
分解能、特に、本明細書中の電気泳動分解能は、時を違えず(または塩基サイズにより)分離された2つのピークを明白に識別する能力である。分解能(R)は、以下の式により定義される:
【0065】
【数2】
【0066】
[式中、tはnthピークの移動時間であり、hwはnthピークの全幅および半値であって、Δbは、その2つのピーク間の塩基数の差である]。単一塩基対分解能は、Rが0.4を超える点で定義される。視覚的には、ピーク−対−谷比が0.7を超えるものである場合、2つのピークは相互に区別可能である。Rおよびピーク−対−谷の必要条件の双方を高分解能を有するために満たさなければならなく、分解能も、ある範囲の断片サイズに特有であると考えることができる。STR解析範囲における対立遺伝子についての断片サイズの範囲は90から400bpの範囲にあり、この範囲の断片サイズを横切る単一塩基対分解能はSTR解析に必要である。配列決定解析のための断片サイズは、1200bpまでの範囲にある。1レーン当たりの長い読取り長およびデータスループットを達成する能力は、部分的に、チップが単一塩基対分解能を生成できる範囲により決定される。
【0067】
光学的検出システムについての検出限界は、信号対雑音比(SNR)によって定義される。この比率は、信号を汚す信号電力−対−雑音電力(雑音電力の標準偏差)の比として定義される。高SNRは、シグナルが存在するというより高い確実性を示す。3の信号対雑音比は、シグナルの存在の確信的な同定を許容できるものとして一般的に定義される(Gilder, 2007, J Forensic Sci. 52(1): 97)。
【0068】
核酸試料中の複数の核酸種を分析および検出する場合、チップの検出窓においてプラスチックからの自己蛍光は、強力に蛍光バックグラウンドの一因となる。本発明の電気泳動の分離チップの有利な特徴は、薄い検出窓を用いて、プラスチックからのバックグラウンド蛍光を最小限にすることである。このバックグラウンドレベルは、マイクロ流体分離チップを作製するために一般的に用いられる基材であるborofloat(登録商標)と比較される。薄いプラスチック窓の使用では、分析のための蛍光標識断片を生成するPCRプロセスにおけるテンプレート核酸の最低1000コピー、300コピー、100コピー、30コピー、10コピー、1コピーが検出できる。また、配列決定反応のための核酸テンプレートの最低0.5ピコモル、0.1ピコモル、0.01ピコモルまたは0.001ピコモルが検出できる。
【0069】
分離および検出チップの適用
本発明の様々な態様の適用は、核酸同定および配列決定の双方につき広範囲に広がる。ヒト同定における使用の例は、犯罪法医学および国土安全保障、例えば、軍事検問所、国境および港、空港ならびに集団災害現場での同定を含む。また、競走馬の育種および追跡、家畜の育種を含めた獣医学的同定適用ならびにペット同定は、開示された電気泳動チップの用途の範囲内である。
【0070】
さらに、本発明の機器を高耐久化でき、それにより、その機器は、結果がリアルタイムで用いることができる分野において作動できる。従って、その機器は軍事検問所、国境および港、空港ならびに集団災害現場で用いることができる。
【0071】
核酸配列決定に対するその技術の適用は4つの領域:例えば、細菌感染および抗体感受性、ウイルス感染(同定および薬物耐性プロファイリング)、遺伝子疾患、複合疾患(喘息、心臓疾患、糖尿病)およびゲノム薬理学を含めたヒトの臨床診断;獣医学的な臨床診断;再配列決定および完了を含めた研究配列決定;例えば、炭疽菌(B.anthracis)およびエボラウイルス検出を含めた生物兵器剤同定;および食品安全性に分割できる。いくつかの例を次に記載する。
【0072】
HIVの患者は、薬物耐性試験を必要とする。今日、耐性を確立するのに何週間もかかり得る。薬物耐性株は、その時間の間に根付くことができる。患者が医師のオフィスで待っている間の1〜2時間以内に回答を供することができる機器およびシステムについての満たされていない必要性が存在する。本発明による電気泳動の分離チップの使用は、頻繁な薬物耐性モニタリング、抗ウイルス剤のより臨床的およびコスト的に有効な使用およびより良好な患者予後を可能にする。
【0073】
菌血症の患者はショック状態にある。今日、原因物質が抗生物質耐性であるかどうかおよびその同一性を決定するのに何日もかかりかねない。その間、患者は、患者に重大な副作用を生じかねなく、かつ今日一般的な抗菌性耐性の増大の一因となる広域抗生物質で治療されなければならない。加えて、かかる処置は部分的に最適であり得る。本発明による電気泳動分離チップの使用は、1〜2時間で病原体の抗生物質耐性プロフィールの同定を可能して、より有効な標的処置、抗生物質毒性における低減、およびより良好な患者予後に導く。患者および公衆衛生に対する利点は相補的である。
【0074】
癌の患者は手術を受けている。目下、患者が手術台上にいる間に腫瘍試料を病理に持って行く。
単純な組織病理学系統の結果に基づいて、外科医がどれくらい積極的でなければならないかに関する決定を行っている。本発明による電気泳動分離チップの使用は、組織病理学を1時間未満での癌の確定的な核酸診断に置き換えることができ、良好に通知された外科的決定がなされるのを可能とする。
【0075】
以下の実施例は、本発明の特定の具体例およびその様々な使用の例示である。それらは、説明の目的だけに記載され、本発明の制限として取られるべきではない。
【0076】
実施例
実施例1
チップデザインおよび電気泳動
実施例1A:チップデザイン
本発明のデバイスの特定の具体例の模式図を図6に示す。このマイクロ流体デバイスは、各々ダブルTクロスインジェクターを持つ16のマイクロチャネルよりなった。チャネルの横断面の寸法(幅90μmおよび深さ40μm)ならびに陽極とクロスインジェクターとの間のチャネルの長さ(25cm)は、すべてのチャネルにつき等しかった。各チャネルについての分離長(交差と励起/検出窓との間の距離)は、16〜20cmの範囲にある。陰極ウェルとインジェクターとの間の横断面の面積は、全ての抵抗および、従って、陰極と交差との間の電場がバイアス下で本質的に等しいように調節した。これにより、試料によって経験された電場が、試料が負荷された分離チャネルにかかわらず同一であることを保証した。すべてのチャネルについての交差電圧は本質的に同一であった。試料注入のための試料入口および試料廃棄アームは、双方とも長さ2.5mmであった。双方のチャネル間のオフセットは500μmであった。
【0077】
実施例1B:チップおよび支持体作製
チップは、加熱エンボス法によりパターン化し、穿孔してアクセスホールを形成し、次いで、拡散結合させてチャネルを密閉した。マスターを化学的湿式エッチングプロセスを用いて、写真平版によりガラスに作製した。次いで、このガラスマスターを用いて、電気鋳造することによりニッケル・コバルトエンボスツールを作製して、ガラスマスターのネガティブ複製を生成した。
Zenor(商標)−1420Rフィルムのシート(5"×2"のサイズおよび188μmの厚み)を基材材料として用いた。これらのシートにおいては、陰極、陽極、試料および廃液アクセスホールを穿孔により形成した。この後、基材へエンボスツール上のチップデザイン特徴を加熱エンボスした。エンボス法は、図7に示すスタックを135℃の15分間の加熱水圧プレスおよび1250psiの圧縮圧力に入れることにより達成した。スタックは、1250psiの圧縮力下に保持し、放出に先立ち38℃に冷却させた。ノルボルネンモノマーを含有する薄い熱可塑性ポリマーでのこのチップの製作は、励起および検出窓での低バックグラウンド蛍光を生じさせた。高結合強度の分散結合の達成は、高粘度ふるい用マトリックスの使用を可能とした。
【0078】
基材の拡散結合は、基材上へのZenor(商標)−1420Rフィルムのシート(5"×2"のサイズおよび188μmの厚み)を整列させ、このスタックを加熱および圧力に付して達成した。接着剤をフィルムのシート間に適用せず;結合を完全に加熱および圧力によって達成した。チップの最終の厚みは約376μmであった。この方法により作製した分離チップをテストして、破壊前に少なくとも830psiの圧力に耐えることができることを示した。
【0079】
図8は、3/8"の厚みのアクリル板(GE Plastic)からCNCミリングにより作製したチップ支持体を示す。チップ支持体は3つの主要部分:陰極ボード、センター部品および陽極ボードよりなった。陰極ボードは陰極ウェル、試料および廃棄物ウェルならびに配列穴部を含んだ。陽極ボードは陽極ウェルおよび配列穴部を含んだ。陰極ボードおよび陽極ボードの双方は、試料注入につき十分な試料容積および電気泳動用につき十分な緩衝液容積を供するために厚み3/8"であった。センター部分は厚み0.04"であり、マイクロチャネル中へのレーザー誘起蛍光検出用の「検出窓」として開口部を有した。この配置を用いて、分離チップからの自己蛍光は、約376μmの厚みの基材により支配されるようになる。分離チップは、両側の圧力感受性接着剤でチップ支持体に付着させた。接着剤を分離緩衝液およびふるい用マトリックスに不活性となるように選択した。支持体および分離チップを感圧エポキシで付着させた。励起および検出領域におけるプラスチックの厚みは、この領域において担体上でカットアウトを作成することにより最小限にした。
【0080】
Zenor(商標)−1420Rの光学発光スペクトルは、蛍光色素で蛍光検出を制限した570nmのラマン発光ピークを有する。図9は、典型的なガラス分離チップ(Glass 1.4mmおよびGlass 0.7mm)と比較したプラスチックチップ(PChiplおよびPChp2)の低自己蛍光を示す。プラスチックチップの低自己蛍光は、COPポリマーを選択し、検出領域におけるデバイスの厚みを最小限にすることにより、および薄いフィルムでデバイスを作製することにより達成した。
【0081】
実施例1C:表面修飾およびふるい用マトリックス
表面修飾は、最初に脱イオン水、続いて1M NaOHでマイクロチャネル表面を予め処理することにより達成した。窒素フラッシュを適用して、チャネルから流体を除去した。表面処理後に、チャネルを介して0.1%(w/v)のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)溶液を流し、それに続いて、室温にて一晩インキュベートした。高純度窒素を用いて、チャネルを通じてフラッシュして、チャネルの内部の流体を除去した。
【0082】
これらの実験に用いたふるい用マトリックスは、7M尿素および1X TTE(Amresco)緩衝液中の4%線形ポリアクリルアミド(LPA)であった。
【0083】
実施例1D:電気泳動STRサイジング
核酸分析の電気泳動の分離および分析は、Genebench−FX(商標)シリーズ100(Network Biosystems, Inc., Woburn, MA) で行った。この機器は、プラスチック分離チップおよびチップ支持体を受入れ、チップおよび機器の間の良好な光学的、電気的および熱カップリングを可能にするように構成した。チャンバーの温度を操作の全体にわたって50℃に維持した。
【0084】
DNAサイジング実験では、ヒトのゲノムDNAを、ABI AmpFISTRキット(Applied Biosystems Inc., Foster City, CA)で増幅した。PCR生成物(2.7μL)を0.3μLのサイジング標準および10μLのホルムアミドと混合して、分析のために試料ウェルに負荷した。アッセイは、陽極ウェルに3900Vの電位差を印加し、陰極ウェルをアースすることにより、試料導入に先立って6分間156V/cmで行う予めの電気泳動よりなった。DNA試料は、18秒間350V/cmの電場を印加することにより導入することに続いて、試料および廃棄物ウェルを横切る350V/cmの電場を印加し、同時に陰極および陽極のウェルを横切る15.6V/cmの電場を印加することにより、1.2分間2重の負荷を行った。試料注入後に、電気泳動DNA分離を、40分間800Vの障害電圧を維持しつつ、陰極および陽極を横切る156V/cmの電場を印加することにより行なった。
【0085】
DNA配列決定実験については、M13プラスミドをGE Amersham DYEnamic(商標) ET色素ターミネーターサイクル配列決定キット(GE Healthcare)でサイクル配列決定し、エタノール沈殿させ、次いで10μL脱イオン水中に再懸濁させた。分離アッセイは、陽極ウェルにて3900Vの電位差を印加し、陰極ウェルをアースすることにより、試料導入に先立ち6分間156V/cmで行う予めの電気泳動よりなった。DNA試料は、60秒間350V/cmの電場を印加することにより導入した。試料注入後に、電気泳動のDNA分離を60分間400Vの障害電圧を維持しつつ陰極および陽極のウェルを横切る156V/cmの電場を印加することにより行なった。DNA分離分解能をPeakfit(登録商標)からのピーク情報(ピーク間隔およびピーク幅)を抽出することにより計算した。
【0086】
分離の成功をプラスチックチップにおける16レーン中で同時に達成した。図10は、5色標識キット(ABI AmpFlSTR Identifilerキット)から対立形質ラダーにつき対立遺伝子と呼ばれるプロフィールを示す。これらの結果は、本発明のデバイスがプラスチックチップにおいて5色で分離でき、明らかに、単一塩基対だけに同等な距離によって間隔を空けたものを含めた対立遺伝子を解析できることを示した(THO 1、対立遺伝子9.3および10)。図11は、9947AのヒトゲノムDNAについての対立遺伝子と呼ばれるSTRプロフィールを示し、これは、全プロフィールが1.0ngのDNAテンプレートで達成されたことを示している。図12は、>480bpまでについてR>0.4での分解能を示し、これは480bpまでの単一塩基分解能を示す。図13は、1ヌクレオチドだけ間隔が空いた2つの対立遺伝子が、曖昧さなくして明確に分離できることを示すことによるこの分解能を示す。図14および15は、単一塩基対の分解能を示すDNA配列決定プロフィールを示す。
【0087】
実施例2
動電学的注入プラスチックチップ
実施例2A:チップデザイン
本発明の電気泳動の分離チップのもう一つの配置は、分離のために単一チャネルを用いる。各試料を動電学的な試料注入により分離チャネルに導入する。この別法のアプローチは、小試料容積の使用および分離プロセスにおけるかなりの単純化を可能とする。動電学的な試料注入についてのチップデザインの模式図を支持体および分離チップ領域を示す図16の分離図で示す。このデバイスは、分離長が有効には20cmである16のマイクロチャネルよりなる。各チャネルは、各末端にアクセスホールを有する。チャネルは幅90μmおよび深さ40μmである。
【0088】
実施例2b:デバイス作製
図16のデバイスは上記の断面図に記載された手順に従って作製される。要約すると、アクセスホール(直径が1mm)は188μmの厚みを持つCOPフィルム(Zeonor(商標)1420R)に形成される。次いで、チャネルパターン(幅90μmおよび深さ40μm)を加熱エンボス法により形成する。COP(Zeonor(商標)1420R)のカバーを基材に拡散結合して、チャネルを密閉する。
【0089】
実施例2C:電気泳動
デバイスを上記の断面図に記載したチャネルに表面修飾を適用することにより、分離のために調製する。これに続いて、チャネルをふるい用マトリックスで充填する。試料を試料/陰極リザーバに負荷する。注入場を電極を介して試料に適用して、負に帯電したDNAを分離チャネルに注入する。チャネルへのDNAの注入に続いて、緩衝液(1X TTE;Ameresco)を試料容積の10倍容積で試料/陰極リザーバに添加する。電場を陰極および陽極を横切って印加して、分離チャネルの下の注入プラグからDNAを分離する。この添加は、試料/陰極にある試料を希釈するように機能し、緩衝液を負荷するに先立ち試料を取り出す必要性はない。分離および検出をGenebench−FX(商標)シリーズ100機器で行い、データ分析を先の実施例に記載されたソフトウェアで行う。
【0090】
実施例3
DNA配列決定
DNA配列決定分析については、DNAテンプレートをPCR酵素SpeedSTAR HS(Takara, Madison, WI)(U/μL):0.025、Fast緩衝液1:1x、dNTP:0.25mM、プライマー(順方向):250nMおよびプライマー(逆方向):250nMよりなる反応ミックス中で増幅する。所望のレベルの鋳型DNAをミックスに添加する。DI水またはTE緩衝液(トリス10mMまたはEDTA0.1mM)を10μLの全容積まで反応ミックスに添加する。PCR反応ミックスの熱サイクルは、製造者の推奨したプロトコールに従い、95℃での60秒間のホットスタート活性化、30サイクルの変性、アニーリングおよび伸長(98℃で5秒間、55℃で10〜15秒間、次いで、72℃での5〜10秒/kbp)よりなった。
【0091】
全PCR生成物を30K MWCO UFフィルター(Pall, East Hills, NY)を用い、製造者のプロトコールに従い、きれいにする。DI水中のDNAよりなるきれいにした生成物を希釈するか、あるいは配列決定反応用のテンプレートとしてその全てを適用する。
【0092】
PCRテンプレートのサイクル配列決定は、以下の反応ミックスで半分強度の反応にてDYEnamic(商標) ETターミネーターサイクル配列決定キット(GE Amersham Biosciences)を用いて行なった。配列決定プレミックス:4μL、希釈緩衝液:4μL、プライマー(10μM):5pmol。DNAテンプレートを配列決定反応ミックスに添加した。DI水を20μlの全容積まで反応ミックスに添加した。製造者の推奨したサイクリングプロトコールに従い、用いたサイクリング条件は、30サイクルの(95℃で20秒間、50℃で15秒間、60℃で60秒間)よりなった。
【0093】
配列決定反応ミックスをエタノール沈澱によりきれいにした。沈殿生成物を13μlのDI水に再懸濁し、分離および検出用の試料として用いた。
【0094】
STR分析については、増幅は、以下のものよりなる反応ミックスを用いて10μL反応で実行した:PCR酵素SpeedSTAR HS(Takara、Madison、WI)(U/μL):0.0315、Fast緩衝液1:1x、プライマーセット:2μl、Fast緩衝液1:1x、dNTPs:200μM、プライマー(順/逆方向):2μLよりなる(AmpFlSTR Profiler(商標), COFiler(商標)または Identifiler(商標) (Applied Biosystems, Foster City, CA)より)。
【0095】
サイクリングプロトコールは、95℃で60秒間のホットスタート活性化に続いて、28サイクルの変性、アニーリングおよび伸長(98℃で4秒間、59℃で15秒間、72℃で5秒間)および72℃での60秒間の最終伸長よりなる酵素製造者の条件に従った。PCR生成物は、分離および検出用試料として用いた。また、別法として、PCR生成物を精製し、分離および検出用試料として用いることができる。
【0096】
前記の開示は本発明のある特定の具体例を強調し、それに対するすべての変形または代替的な等価物が、添付した特許請求の範囲に記載された本発明の精神および範囲内にあることは理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2007年4月4日付けで出願した米国仮出願シリアル番号60/921,802;2007年8月13日付けで出願した米国仮出願シリアル番号60/964,502;および2008年2月12日付けで出願した米国仮出願シリアル番号61/028,073(各々をここに出典明示してそのすべてを本明細書の一部とみなす)の米国特許法第119条(e)下の出願日の利益を主張する。また、本願は、「Methods For Rapid Multiplexed Amplification Of Target Nucleic Acids」を表題とするアトニー整理番号08−318−US;および「Integrated Nucleic Acid Analysis」を表題とするアトニー整理番号07−801−USの本願と同日出願のそれらの2つの米国出願をここに出典明示してそのすべてを本明細書の一部とみなす。
【0002】
本発明は、レーザー誘起蛍光による検出を含む電気泳動による核酸配列決定および断片サイジングの分野にある。この分析はプラスチック電気泳動チップで行なわれる。
【背景技術】
【0003】
1970年代のDNA塩基配列決定技術の出現以来(Maxam & Gilbert, 1977, Proc Natl Acad Sci USA 74: 560-564; Sangerら, 1977, Proc Natl Acad Sci USA 74: 5463-5467)、これらの技術を利用する広範囲の適用が開発された。並行して、DNA塩基配列決定を行うためのますます精巧な計測器が導入された。例えば、1986年には、Applied Biosystems社は、サンガー配列決定方法によって生成されたDNA断片の分離に基づいた自動DNAシークエンサーを商業化し;DNA断片を1組の4つの蛍光色素で標識し、キャピラリー電気泳動により分離した(Smithら, 1986, Nature 321: 674-679)。結果として、サンガー配列決定は、最近30年間最も広範囲に利用されている配列決定方法となっている。
【0004】
より最近では、様々な新しい配列決定方法および関連する計測器が開発され続けている。「次世代」の方法(Metzker, 2005, Genome Research 15: 1767-1776に概説)と称されたこれらの化学は、パイロシークエンス法、段階的ライゲーションによる配列解読および単一分子シーケンシングを含む。次世代配列決定方法に研究を駆動する主要な目的は、一般的に高速大量処理のゲノム配列決定を行ない、特に完全なゲノム配列を得ることのコストを低減することである。次世代技術の1塩基対当たりのコストはサンガー配列決定のものよりいくつかのケースにおいて少ないこともあるが、(サンガーを含めた)これらの方法のすべてが、コストがかかり、かなりの時間、労働および実験装置を必要とする。
【0005】
所与のゲノムから非常に大量の配列データを得ることに対する現在の注目は、迅速に比較的少量のゲノム配列を獲得する価値を否定しない。例えば、多数の一般的なヒト疾患は、完全なヒトゲノムを生成するのに必要とされるより小オーダーの大きさでDNA塩基配列の1000個未満の塩基対に基づいて診断できる。同様に、短いタンデムリピート分析によって生成された20個未満の特定のDNA断片セットのサイズの正確な決定は、所与の個体を同定するのに十分である。
【0006】
所与のヒト、動物または病原体のゲノムの部分集合の(核酸配列決定または断片サイジングによる)迅速な同定として定義される、集中核酸分析を可能にする機器および技術の開発につきまだ対処されていない必要性が存在する。集中核酸分析は、エンドユーザがリアルタイムの臨床的、法医学または他の決定を行うのを可能とするであろう。その適用に依存して、集中核酸分析は、当該技術分野において、病院の検査室、医師のオフィス、病床を含めた様々な周囲環境、あるいは法医学または環境上の適用の場合において行なわれ得る。
【0007】
核酸(DNAおよびRNA)配列決定に関して、臨床適用は、細菌性、真菌性およびウイルス性の疾患の診断(生物体の薬物耐性プロフィールの決定を含む)、癌(化学療法への反応性の決定を含む)、および遺伝性または他の一般的な疾患(薬物に対する反応性の決定を含む)を含む。また、集中した核酸配列決定は、薬理ゲノミクス解析およびある種の法医学適用(例えば、ミトコンドリアDNA配列決定を含む)に良好に適している。
【0008】
核酸断片サイジングに関して、集中核酸分析は、法医学および臨床適用に利用できる。例えば、あるタイプのヒトの同定は、短いタンデムリピート(STR)解析に基づいている(Edwardsら, 1991, Am J Hum Genet 49(4)746:756)。STR解析において、一連のプライマーを利用して、可変数のある短いタンデムリピートを含むあるゲノム領域を増幅する。得られたバンドのサイズは、(典型的にはキャピラリー電気泳動を用いる)核酸断片サイジングによって決定され、STR対立遺伝子のセットの各メンバーのサイズは、ユニークに個体を同定する。STRタイピングは、ヒトの法医学的遺伝子同定のための世界的な基準になっており、個体ならびにその個体の遺伝親類の同定を可能にする唯一のバイオメトリック技術である。臨床適用において、核酸断片サイジングを用いて、所与の障害(例えば、フリードライヒ運動失調症においてのごときヌクレオチド反復領域の特徴的な欠失または挿入を探す、またはその反復領域のサイズを決定することによる)を診断できる(Pandolfo, M., 2006, Methods Mol. Med 126: 197-216)。また、断片サイジングは感染病原体の同定に有用であり;DNA指紋法は病原体診断に利用できる。
【0009】
集中核酸分析の適用は、前記で説明されたものに限定されない。集中核酸分析を利用して、配列決定および断片サイジングの双方により臨床および環境上の試料において生物兵器病原体を同定できる。また、獣医学的および食物試験についての適用は、前記のものを映し出す。また、競走馬の育種および追跡のごとき獣医学的同定の適用、家畜繁殖およびペット同定は、開示された本発明の使用の範囲内にある。集中核酸分析の研究適用は多数である。要約すれば、集中核酸分析にはいくつかの産業を劇的に変化させる可能性を有する。
【0010】
既存の高速大量処理の毛細管ベースのシークエンサーおよび次世代シークエンサーは、タイムリーでかつコスト効率の良い方法で集中した核酸分析を行うことができない。それらの技術によって追求された規模の経済性は、非常に大量の配列データを得て解析するコストを低下させることにより駆動される。ルーチンの使用にそれらの方法を行うための集中核酸分析ができる機器およびシステムについては、それらは、ある種の「理想的な」特性および特徴を所有するように設計されるすべきである。特に、機器およびシステムは、できる限り迅速に動作可能なデータの生成を可能にするように結果を迅速に(理想的には何分間かのうちに)生成するべきである。それらは操作するのが容易であるべきであり、試薬および消耗品は安価であるべきである。加えて、いくつかの適用については、核酸分離がディスポ製品中で行なわれることは有用であり;これは、劇的に試料汚染の可能性を低減させる。これらの特性を達成するために、ポリマーベースのバイオチップは、ガラスおよびシリコンのごとき他の材料より、分離基材としてより良好に適する。
【0011】
プラスチックチップ上でDNA断片サイジングを達成する試みは、McCormick(Anal Chem 69(14):2626 1997))によって報告され、それは、ΦX174 RF DNAのHaeIII制限断片の分離を示す。その分離は、単一レーンのチップにおいて単一試料で行うが、しかしながら、貧弱な分解能の分離および貧弱な感度を示した。さらに、そのシステムは、単一フルオロフォアからの発光を単に検出できた。Sassi(J Chromatogr A, 894(1-2):203 2000)は、STRサイジング用の16の流動的に分離された分離レーンよりなるアクリルチップの使用を報告したが、このアプローチもまた貧弱な分解能および低感度を示した。この低いシステム感度は、同時の16のレーンの分離および検出を行う場合、対立形質の手段(法医学的分析に厳密に必要とされる内部サイジング標準)の検出を防止した。システムの信号対雑音比を増加させる試みを表わす2Hzの走査速度の使用は、分解能および精度の双方の分解を引き起こした。最後に、このシステムは、単一のフルオロフォアからの発光を単に検出できた。Shi(Electrophoresis 24(19-20):3371 2003およびShi, 2006, Electrophoresis 27(10):3703)は、単一試料の単一レーンのプラスチック分離デバイスにおいて、2色および4色の分離および検出を報告した。4.5cmのチャネルが単一ベースの分解能を提供することが報告されたが、実際には、1塩基対の間隔を空けた対立遺伝子の出現によって証拠づけられるように、分解能は貧弱である(TH01 9.3および10の対立遺伝子のピーク−対−谷の比率は、それに接近する)。より長い分離チャネル(6、10および18cm)を持つデバイスは、4.5cmのデバイスと比較して、解析用のより高い分解能を達成するようにこの研究において用いた。10および18cm長のデバイスの分解能は、分解能につき最適化したふるい用マトリックス組成物を用いた場合にデバイスが層剥離したので、制限された。
【0012】
実際上、プラスチックは、核酸配列決定および断片サイジングのために設計されたバイオチップに使用されるいくつかの主な障害を示すことが判明した。プラスチック材料の自己蛍光は、可視範囲の450〜800nmの波長の検出と干渉する(Puriska, 2005, Lab Chip 5(12):1348; Wabuyele, 2001 Electrophoresis 22(18):3939-48; Hawkins and Yager 2003 Lab Chip, 3(4): 248-52)。
【0013】
これらの波長は、サンガーの配列決定およびSTRサイジング用の市販キットに用いられる。さらに、既存のプラスチックデバイスは、一般的に用いられる基材に対して低結合強度および一般的に用いられるふるい用マトリックスでの貧弱な効率結果を有する。最後に、チャネルの内部表面は、ふるい用マトリックスおよびDNA試料と干渉する結果、電気浸透の流れおよびDNA−対−壁相互作用により貧弱な分解能を生じる(Kan, 2004, Electrophoresis 25(21-22):3564)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
結果的に、高分解能にて集中核酸分析を行うことができ、高い信号対雑音比を持つ安価な複数レーンのプラスチック・バイオチップについての実質的に対処されていない必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、高分解能にて集中核酸分析を行うことができ、高い信号対雑音比を持つ安価な複数レーンのプラスチック・バイオチップ、ならびにかかるチップを用いる方法を提供する。
【0016】
第1の態様において、本発明は、プラスチック分離チップ、特に、陽極部分、陰極部分および陽極部分と陰極部分との間のセンター部分を含む電気泳動チップを提供し、ここに、陰極部分は、少なくとも1つの第1のビア(via)を含み;陽極部分は少なくとも1つの第2のビアを含み;およびセンター部分は、複数のマイクロ流体チャネルおよび検出窓を含み、各マイクロ流体チャネルは分離領域および検出領域を有し;各マイクロ流体チャネルは、少なくとも1つの第1のビアおよび少なくとも1つの第2のビアと流体連通(in fluid communication)し;複数のマイクロ流体チャネルは実質的に同一面にあり;複数のマイクロ流体チャネルは、センター部分内で相互に交差せず;検出窓は薄いプラスチックを含み;および、検出窓は、各マイクロ流体チャネルの検出領域を含む。検出領域の外側のチップの部分は、同一の厚みのものであり得るか、または検出領域のそれより大きな厚みのものであり得る。
【0017】
第2の態様において、本発明は、陽極部分、陰極部分および陽極部分と陰極部分との間のセンター部分を含む頂部および底部表面を有する支持体を含むデバイスを提供し、ここに、センター部分は検出窓の開口部を含み、陽極部分は少なくとも1つの陽極ウェルを含み、陰極部分は少なくとも1つの陰極ウェルを含み;装置は、さらに、頂部および底部表面を有する第1の態様によるチップを含み、チップの頂部表面は、支持体の底部表面と接触し、マイクロ流体チャネルは、それらのビアを介して陰極および陽極のウェルと流体連通し;チップは、支持体に固定して取付けられる。
【0018】
第3態様において、本発明は、複数の試料を同時に電気泳動的に分離および検出する方法を提供し、この方法は、第1の態様によるマイクロチップ上で複数のマイクロ流体チャネルの各々に複数の試料を供し;複数のマイクロ流体チャネルを横切る電位を印加して、分離チャネルに試料を注入し、複数の分析試料の各々を含む検出可能な種を分離し;次いで、検出窓で複数の分離された試料を含む検出可能な種の各々を検出することを含む。
【0019】
本発明の特定の好ましい具体例は、ある種の好ましい具体例の以下のより詳細な記載および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の様々な具体例によるマイクロ流体分離および検出チップを示す。
【図2】図2は、本発明の様々な具体例によるマイクロ流体分離および検出チップを構築するために用いることができる別々の支持体およびチップ層を示す。
【図3】図3は、本発明の様々な具体例によるマイクロ流体分離および検出チップを構築するために用いることができる別々のデバイス層を示す。
【図4】図4は、本発明の様々な具体例によるマイクロ流体分離の陽極部および検出チップの拡大図を示す。
【図5】図5は、本発明の様々な具体例による注入チャネルを有するマイクロ流体分離および検出チップを示す。
【図6】図6は、本発明の様々な具体例によるマイクロ流体分離および検出チップの模式図である。
【図7】図7は、エンボス加工のために利用したスタックを示す。
【図8】図8は、3/8"の厚みのアクリル板(GE Plastic)からのCNCミリングによって作製したチップ支持体を示す;(頂部)平面図;底部(側面図)。
【図9】図9は、典型的なガラス分離チップと比較した、プラスチックチップの低自己蛍光を示す;(a)組み立てたプラスチックチップ(Pchip2);(b)組み立てたプラスチックチップ(Pchip1);(c)プラスチックカバー層のみ;(d)厚み1.4mmのガラスチップ;(e)厚み0.7mmのガラスチップ;(f)プラスチック基材のみ。
【図10】図10は、5色標識したキット(ABI AmpFlSTR Identifilerキット)からの対立形質ラダーのための対立遺伝子と呼ばれるプロフィールである;頂部から底部へ:青色、緑色、黄色、赤色、オレンジ色の検出シグナル。
【図11】図11は、9947AのヒトゲノムDNAについての対立遺伝子と呼ばれるSTRプロフィールである:頂部から底部へ:青色、緑色、黄色、赤色、オレンジ色の検出シグナル;全プロフィールは1.0ngのDNAテンプレートで達成される。
【図12】図12は、480bpまでについてのR>0.4での分解能を示し、これは、480bpまでのその単一ベースの分解能を示す;頂部から底部へ:青色、緑色、黄色、赤色、オレンジ色の検出シグナル。
【図13】図13は、1ヌクレオチドによって分離される2つの対立遺伝子(THO1 9.3および10)の分解能を示す。
【図14】図14はpGEM断片のDNA配列決定解析である;頂部から底部へ:青色、緑色、黄色および赤色の検出シグナル。
【図15】図15は、pGEM断片のDNA配列決定解析を示す合成した4つの塩基対グラフである。
【図16】図16は、支持体(上部)およびチップ(底部)層を示す直接的な動電学的な試料注入のチップデザインの分離模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、約1塩基対だけサイズにおいて異なり、少なくとも1.0ngの濃度レベルのDNAテンプレートにて核酸種の分離を検出できるプラスチック分離チップを提供する。
【0022】
STR分析につき分析される試料の最低レベルは、多重PCR反応に先立ち800未満のコピー、400未満のコピー、200未満のコピー、100未満のコピー、50未満のコピー、30未満のコピー、10未満のコピーまたは1コピーの核酸テンプレートを含む核酸テンプレートよりなる。配列決定のために分析される最低濃度の試料は、サンガー配列決定反応に対する入力として、0.5ピコモル未満、0.1ピコモル未満、0.01ピコモル未満の核酸テンプレートよりなる。
【0023】
本願明細書に用いた「注入チャネル」なる語句は、それが交差するマイクロ流体チャネルへの試料の導入を可能にする、交差チャネルを意味する。交差チャネルは、単一のクロスチャネル、単一のT連結、またはオフセットの2重のT連結配置にあることができる。
【0024】
本願明細書に用いた「流体連通」なる語句とは、流体が2つのチャンバー、成分または領域の間に流れることができるように一緒に連結された2つのチャンバー、あるいは流体を含有する他の成分または領域をいう。従って、「流体連通」する2つのチャンバーは、例えば、2つのチャンバー間のマイクロ流体チャネルによって一緒に接続でき、その結果、流体は2つのチャンバー間に自由に流れることができる。かかるマイクロ流体チャネルは、チャンバー間の流体連通を遮断および/または制御するために、閉じるかまたは閉塞できるその中の1以上のバルブを所望により含むことができる。
【0025】
本願明細書に用いた「蛍光色素」なる語句は、光源での励起に際して、色素が380〜850nmの波長を有する光を発光することを意味する。好ましくは、色素は、約450〜800nmの間の波長を有する光を発光し;より好ましくは、色素は、約495〜775nmの間の波長を有する光を発光する。
【0026】
本願明細書に用いた「自己蛍光」なる用語は、光照射下で注目するフルオロフォア以外の物質により生成された蛍光を意味する。
【0027】
本願明細書に用いた「実質的に蛍光を発しない」なる語句は、光照射(例えば、約350〜500nm、400〜500nmまたは450〜500nmの間の1以上の波長;特に、488nm;レーザー照射)に付された場合に参照された対象(例えば、固体または溶液)からのバックグラウンド蛍光シグナル(例えば、380〜850nm;400〜800nm;450〜800nm;500〜800nmまたは495〜775nm)が、厚み0.7mmのボロフロートガラスよりなる従来のガラスマイクロ流体デバイスからのものより低いバックグラウンドを有することを意味する。
【0028】
本願明細書に用いた「ノルボルネンベースのポリマー」なる用語は、ノルボルネン含有モノマーが当業者に知られた方法(例えば、米国特許第4,945,135号;第5,198,511号;第5,312,940号;および第5,342,909号参照)により開環メタセシス重合によって重合される場合のノルボルネン部分を含む少なくとも1つのモノマーから調製されたポリマーを意味する。
【0029】
本明細書に用いた「ポリ(メチルメタクリレート)または「PMMA」なる用語は、メタクリル酸メチルの合成ポリマーを意味し、限定されるものではないが、商標名Plexiglas(商標)、Limacryl(商標)、R-Cast(商標)、Perspex(商標)、Plazcryl(商標)、Acrylex(商標)、ACrylite(商標)、ACrylplast(商標)、Altuglas(商標)、Polycast(商標)およびLucite(商標)下で販売されるもの、ならびに米国特許第5,561,208号、第5,462,995号および第5,334,424号(各々をここに出典明示して本明細書の一部とみなす)に記載されたそれらのポリマーを含む。
【0030】
本願明細書に用いた「ポリカーボネート」なる用語は、炭酸、グリコールまたは二価のフェノールのポリエステルを意味する。かかるグリコールまたは二価のフェノールの例は、p−キシリエングリコール、2,2−ビス(4−オキシフェニル)プロパン、ビス(4−オキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)エタン、1,1−ビス(オキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(オキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(オキシフェニル)ブタンおよびその混合物であり、それらは、限定されるものではないが、Calibre(商標)、Makrolon (商標)、 Panlite (商標)、Makroclear (商標)、Cyrolon (商標)、Lexan (商標)およびTuffak (商標)下で販売されたものを含む。
【0031】
本願明細書に用いた「核酸」なる用語は、一本鎖または二本鎖のDNAおよびRNA、ならびに改変された塩基、糖および骨格を含む代替的な核酸のいずれかまたは全ての形態を包含することを意図される。かくして、「核酸」なる用語は、限定されるものではないが、一本鎖または二本鎖のDNAもしくはRNA(および部分的に一本酸または部分的に二本鎖であり得るその形態)、cDNA、アプタマー、ペプチド核酸(「PNA」)、2’−5’DNA(DNAのAコンフォメーションとマッチするベース間隔を有する短くされた骨格を持つ合成物質;2’−5’DNAは、通常、BコンフォメーションのDNAとハイブリダイズしないが、RNAと容易にハイブリダイズするであろう)および、ロックされた核酸(「LNA」)を含むことが理解されるであろう。核酸類似体は、塩基対特性の類似するまたは改善された結合、ハイブリダイゼーションを有する天然のヌクレオチドの公知の類似体を含む。プリンおよびピリミジンの「類似」形態は、当該技術分野においてよく知られ、限定されるものではないが、アジリジニルシトシン、4−アセチルシトシン、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュードウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルクエオシン、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N−6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸および2,6−ジアミノプリンを含む。本発明によって供されるDNA骨格類似体は、燐酸ジエステルおよびホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホナート、ホスホラアミデート、アルキルホスホトリエステル、スルファメート、3’−チオアセタール、メチレン(メチルイミノ)、3’−N−カルバマート、モルホリノカルバマートおよびペプチド核酸(PNA)、メチルホスホナート結合、交互メチルホスホナートならびにホスホジエステル結合(Strauss-Soukup, 1997, Biochemistry 36:8692-8698)および米国特許第6,664,057号に言及されたベンジルホスホナート結合を含む;また、Oligonucleotides And Analogues, A Practical Approach, Edited By F. Eckstein, IRL Press At Oxford University Press (1991); Antisense Strategies, Annals Of The New York Academy Of Sciences, Volume 600, Eds. Baserga And Denhardt (NYAS 1992); Milligan, 1993, J. Med. Chem. 36:1923-1937; Antisense Research And Applications (1993, CRC Press)参照。本明細書における核酸は、当業者に知られたいずれかの手段により細胞から抽出または合成的に調製でき;例えば、核酸は、化学的に合成できるか、あるいは他のソースのうちのcDNAまたはmRNAから転写または逆転写できる。
【0032】
本願明細書に用いた「ビア(via)」なる用語は、固体物質の頂部および底部間の流体接続を可能とする固体物質中に形成された貫通孔を意味する。
【0033】
本発明の様々な具体例による典型的な電気泳動チップを図1に示す。チップ(100)は陽極部分(101)、陰極部分(102)および陽極部分と陰極部分との間のセンター部分(103)を含む。陰極部分は、少なくとも1つの第1のビア(104)を含み、陽極部分は、少なくとも1つのビア(105)を含む。センター部分は、複数のマイクロ流体チャネル(106)、および検出窓(107)を含み、各マイクロ流体チャネルは、分離領域および検出領域を有し;ここに、各マイクロ流体チャネルは、少なくとも1つの第1のビアおよび少なくとも1つの第2のビアと流体連通している。複数のマイクロ流体チャネルは、実質的に同一面にあり、センター部分内で相互に交差しない。各マイクロ流体チャネルは、試料の励起および/または検出を行うことができる領域を有する。複数のマイクロ流体チャネルの励起および検出領域を包含する領域は、検出窓として知られ、この窓は、薄いプラスチックを含む。
【0034】
本明細書に用いた「薄いプラスチック」なる語句は、参照材料が、(その最小寸法で)1mm未満、750μm未満、650μm未満、500μm未満、400μm未満、300μm未満、200μm未満または100μm未満の厚みを有するプラスチックを含むか;または、参照材料が、25〜2000μm、25〜1000μm、25〜750μm、25〜500μm、25〜400μm、25〜300μmまたは25〜200μmの範囲の厚みを有するプラスチックを含む。チップが検出窓において薄いように設計されるが、検出領域の外側のチップの複数の部分は、同一の厚み、または検出領域のものより大きい厚みのものであり得る。
【0035】
図1のチップは4つのマイクロ流体チャネルを有するように例示のために示されるが、しかしながら、かかる開示は、限定することを意図せず、むしろ、当業者が、チップが一つのチャネルを持つチップおよび2以上のチャネルを持つチップを含めた交互の数のマイクロ流体チャネル(以下に)を含むことができることを容易に認識するであろう。本願明細書に用いた「複数」なる用語は、2以上、4以上、8以上、16以上、32以上、48以上、64以上、96以上、128以上、256以上、384以上、512以上または1024以上;あるいは2〜4、2〜8、2〜16、2〜32、2〜48、2〜64、2〜96、2〜128、2〜384、2〜512、2〜1024のマイクロ流体チャネルを意味する。
【0036】
チップ(250)は、図3に示された基材層(360)およびカバー層(370)よりなる。複数の溝(361)は、基材層にパターン化される。一連のビア(すなわち、穴部を通って)(371、372)はカバーに形成されて、マイクロ流体チャネルへの流体のアクセスを供し、そのビアは、チップの陽極および陰極部分においてマイクロ流体チャネルの終わりに位置できる。別法として、ビアは、カバー層の代わりに基材層において形成して、同じ機能性を達成できる。基材層の頂部表面はカバー層の底部表面と結合して、マイクロ流体チャネルを形成する。ポリマーベースのマイクロ流体システムを作成するための技術は、BeckerおよびGartner (Becker, 2000, Electrophoresis 21: 12-26 およびBecker, 2008, Electrophoresis 390(1):89)(ここに出典明示してその全てを本明細書の一部とみなす)により広範囲に概説されている。いずれの数のこれらのプロセスを用いても、本願明細書に記載されたプラスチック分離チップを作成できる。
【0037】
特に、当該プラスチック分離チップは、生成される構造のネガティブなマスター型を用いて薄い熱可塑性フィルムの加熱エンボス法によって調製できる。マスター型は、電鋳法を用いて固体基材中で調製されたデバイスを複製することにより調製できる。固体基材は、当業者に知られた標準的な写真石版およびケミカルエッチング方法によってパターン化される板ガラスであり得る。基材およびカバー層は、加熱および圧力の適用により拡散結合される。
【0038】
チップの基材およびカバー層は、限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリ(アクリレート)(例えば、ポリ(メタクリル酸メチル))、ポリ(カーボネート)および不飽和、部分的不飽和もしくは飽和の環状オレフィンポリマー(COP)、または不飽和、部分的不飽和もしくは飽和の環状オレフィン共重合体(COC)(例えば、ZEONOR(商標)、ZEONEX(商標)またはTOPAS(商標))を含めた様々なプラスチック基材から構成できる。特に、COPおよびCOCは、それらが他のポリマーと比較して可視波長範囲で光学的に固有の低い自己蛍光を示すので、本チップ適用に有利である。
【0039】
本プロセスに利用したプラスチック基材およびカバー層の厚みは、チップからの自己蛍光を最小限にするために薄いままとする。プラスチック基材およびカバー層は、各々、独立して、2mm未満、1mm未満、750μm未満、650μm未満、500μm未満、400μm未満、300μm未満、200μm未満または100μm未満の厚みを有することができるか;あるいは、プラスチック基材およびカバー層は、各々、独立して、25〜2000μm、25〜1000μm、25〜750μm、25〜650mm、25〜500μm、25〜400μm、25〜300μm、25〜200μmまたは25〜100μmの範囲の厚みを有するプラスチックを含む。
【0040】
一つの具体例において、図2に例示されるように、チップ(250)は、頂部および底部表面を有する支持体(201)に取付けられ、それは、陽極部分(202)、陰極部分(203)および陽極部分と陰極部分との間のセンター部分(204)を含み、ここに、センター部分は検出窓(205)を含み、陽極部分は少なくとも1つの陽極ウェル(206)を含み、および陰極部分は少なくとも1つの陰極ウェル(207)を含む。上へのビア穴部を持つチップの頂部表面は、支持体の底部表面と接触し、チップは、固定的に支持体に取り付ける。チップは、当業者に知られた方法、例えば、拡散結合、溶媒結合および接着結合により支持体に取り付けることができる。
【0041】
支持体層は、限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリ(アクリレート)(例えば、ポリ(メタクリル酸メチル))、ポリ(カーボネート)、および不飽和、部分的に不飽和または飽和した環状オレフィンポリマー(COP)または不飽和、部分的に不飽和または飽和した環状オレフィン共重合体(COC)(例えば、ZEONOR(商標), ZEONEX(商標)またはTOPAS(商標))を含めた様々なプラスチック基材から構築できる。本プロセスに利用されるプラスチック支持体の厚みは、構造的な剛性を供し、リザーバ中の十分な容積の試料および緩衝液を可能とするために、十分に厚い。プラスチック支持体の厚みは、100〜15,000μmの範囲であろう。
【0042】
別法として、チップは、固体支持体上に溝をパターン化することにより作製して、チップ基材および支持体構造の双方を一緒に形成できる。カバー層を支持体に結合させて、その構造を完成できる。この配置において、マイクロ流体チャネルの検出部分と一致する支持体およびチップの検出窓の厚みは、自己蛍光を最小限にするように薄いままとする。この部分のチップの厚みは、1000μm未満、750μm未満、500μm未満または250μm未満であるか;または25〜1000μm、25〜750μmまたは25〜500μmの範囲にある。
【0043】
複数のマイクロ流体チャネルの各々は、少なくとも10μm、50μm、100μm、200μm、500μmまたは1mmの深さを有することができるか;あるいは1〜1000μm、10〜100μm、10〜50μmまたは25〜50μmの範囲の深さを有することができる。複数のマイクロ流体チャネルは、、少なくとも25μm、50μm、100μm、200μm、500μmまたは1mmの幅を有することができるか;あるいは、25〜1000μm、25〜200μmまたは50〜200μmの範囲の幅を有することができる。各チャネルのマイクロチャネル断面は、実質的に正方形、長方形、円形、半円、楕円、三角形、台形の断面を有することができる。当業者ならば、マイクロ流体チャネルが、深さ、幅および断面が均一であっても、そうでなくてもよいことを認識するであろう。
【0044】
複数のマイクロ流体チャネル(106)の各々は、分離領域(108)および検出領域(109)を含む。分離領域は、約2〜50cm、10〜50cm、2〜25cm、10〜25cmの分離長を持つチャネルを典型的に有する。分離長は、試料注入点と試料検出点との間のチャネルの部分として定義される。分離長は、典型的には、陰極リザーバと陽極リザーバとの間にわたる分離チャネルの全体長未満である。
【0045】
複数の試料の同時解析は、本願明細書に記載されたいずれかの分離チップへの別々の分離チャネルにおいて各試料を注入およびスタックすることにより行うことができる。分離チャネルに沿った電場の適用は、当業者が精通しているであろうように、例えば、チャネル(以下に)の表面に存在する電荷に依存して、分離チャネルの陰極部分から陽極部分に、または陽極部分から陰極部分にチャネルに沿って試料を移動させる。ふるい用マトリックスを介する試料の移動は、サイズに基づき種を分離する。
【0046】
分離された試料が検出窓を通過すると、試料内の各種に付着した色素ラベルを励起でき、得られた蛍光を検出できる。検出窓は、典型的には各チャネルの分離領域の終点にて複数のマイクロチャネルの各々の検出領域の一部を覆う。典型的には、複数のマイクロ流体チャネルの各々のための検出領域は、実質的にチャネルに沿った同じ位置にあり、検出窓が支持体のセンター部分において一つの位置にあることができる。
【0047】
複数の試料を複数の試料または緩衝液のウェルに同時に注入するためのインジェクターをチップに有利に設けて、同時の複数の試料分離および検出を可能にする。かかるインジェクターは、例えば、複数のマイクロ流体チャネルの1つのマイクロ流体チャネルに複数の試料の1つの試料を供する。インジェクターは、当業者に知られたいずれかの方法、例えば、試料を分離チャネルに連結する針またはチューブまたはチャネルを介した電気泳動輸送、空気作動または液体作動により、試料をチャネルに導入できる。
【0048】
ある具体例において、試料はチップの陰極リザーバを介してチップに負荷できる。各試料の注入容積は、当業者に知られた方法による陰極ウェルの1つを介して導入できる。例えば、試料は、分離チャネルおよび/または分離チャネルの交差チャネルならびに試料および廃棄物ウェルの適切なバイアスを介して注入でき、試料ウェル中の一部分の試料(すなわち、注入容積)は、分離チャネルに供される。試料注入後に、さらなる緩衝液は、各陰極ウェルに導入され;十分な容積を供して、ウェル中のいずれかの残存する試料を希釈できる。例えば、ある容積の緩衝液は、試料の注入容積の少なくとも約5、10、25、50、または100倍である陰極ウェルへ導入される。別法として、ある容積の緩衝液は、試料の注入容積の約5〜100倍、5〜50倍、10〜50倍の範囲にある陰極ウェルに導入される。
【0049】
他の具体例において、複数のマイクロ流体チャネルの各々は、さらに、試料の導入のための注入チャネルを含む。例えば、参照が図4になされ;そこには、陰極部分(401)を示し、センター部分(403)の断面に隣接するチップ(400)の拡大図が示されている。陰極部分は、少なくとも1つの第2のビア(405)を含み、センター部分は複数のマイクロ流体チャネル(406)を含む。各マイクロ流体チャネルは、チップの陰極部分内に、各マイクロ流体チャネル用の試料(409)および廃棄物(410)ウェルを含む注入チャネル(408)をさらに含む。
【0050】
注入チャネルは、単一の交差チャネル(図4に示す)、単一のT字路またはオフセット2重T字路配置であり得る。いくらかの具体例において、注入チャネルは、試料の注入容積を最小限にするオフセット2重T字路配置であり、それによって、分離分解能を改善する。注入チャネルからマイクロ流体チャネルへの試料の注入は、試料、廃棄物、陽極および陰極ウェルでの適切な電位の印加を通じた電気泳動注入を含めた当業者に知られた方法により達成できる。
【0051】
マイクロ流体分離および検出チップの別法の具体例を図5に示す。チップ(500)は、陽極部分(501)、陰極部分(502)およびセンター部分(503)を含む。陰極部分は、各マイクロ流体チャネル(506)のための1つの第1のビア(504)を含み、陽極部分は、各マイクロ流体チャネル(506)のための少なくとも1つの第2のビア(505)を含む。センター部分は、複数のマイクロ流体チャネル(506)および検出窓(507)を含み、各マイクロ流体チャネルは、分離領域および検出領域を含み;ここに、各マイクロ流体チャネルは、1つの第1のビアおよび1つの第2のビアと流体連通する。複数のマイクロ流体チャネルは、実質的に同一面にあり、センター部分内で相互に交差しない。検出窓は薄いプラスチックを含み、各マイクロ流体チャネルの検出領域の一部を覆う。
【0052】
この場合には、注入チャネルは、各マイクロ流体チャネルのための陽極(第2)および陰極(第1)のビアを優先して省略される。各試料の注入容積は、当業者に知られた方法(前記)により一つの陰極ビアを介して導入される。試料注入後に、さらなる緩衝液は、各陰極緩衝液ウェルに導入され;十分な容積を有利に供して、ウェル中でいずれかの残存する試料を希釈し、それにより、試料注入の延長から導入されたバックグラウンドシグナルを媒介して、検出窓で観察された信号対雑音比を改善する。例えば、ある量の緩衝液は、試料の注入容積の少なくとも約5、10、25、50または100倍である陰極ウェルに導入される。別法として、ある容積の緩衝液は、試料の注入容積の約5〜100倍、5〜50倍、10〜50倍の範囲にある陽極緩衝液ウェルに導入される。
【0053】
マイクロ流体チャネル内の試料の電気泳動分離は、マイクロチップ上のマイクロチャネルを横切る電位差の印加によって供される。高電圧は、典型的には、陰極ウェルおよび陽極ウェルに、各々、陰極および陽極を配置し、マイクロ流体チャネルの分離部分に沿って電場を確立し、次いで陰極端から、分離部分を通って、検出部分、最終的には陽極に試料(例えば、核酸)を移動させることにより、マイクロ流体チャネルの端を横切って印加する。効率的な分離のために必要な電場は、しばしば、50V/cm〜600V/cmの範囲にある。電源からの電圧は、電極を介して印加され、緩衝液を陽極および陰極リザーバ中で用いて、電極とふるい用ポリマーとの間の電気的接触を供する。
【0054】
試料分離に必要な高電圧は、陰極および陽極ウェル中にある緩衝液と接触する電極で分離チャネルに印加される。緩衝液と接触する電極で存在する高電圧により、緩衝液水分子は加水分解する結果、OH−、H+、またH2ガスを形成する。この形成の結果、経時的に緩衝液のpHが変化し、緩衝液内に気泡を形成する。緩衝液のpH変化は、陽極および陰極リザーバ(例えば、1X TTE; Amresco)中の緩衝液の十分な使用を通じて減弱して、電極とふるい用マトリックスとの間の接触を提供できる。緩衝液内に生成された気泡は、チャネルをブロックするふるい用マトリックスへ移動する傾向を有する結果、核酸の貧弱な分離を生じる。
【0055】
電極で形成される気泡は、以下の方法のうちの1つまたは組合せを用いてチャネルへの移動を防止できる。第1に、リザーバ内の電極を上げて、チャネルにおいてアクセスホールから離れて気泡発生源(電極)を移動できる。第2に、ガラスフリット、ポリマーフリットまたは高分子膜またはポリマーフィルターを陰極アクセスホールと電極の端との間に挿入できる。特に、ポリマーフリット(例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK))を陰極アクセスホールと電極の端との間に挿入できる。
【0056】
フリット、膜またはフィルターを非導電性となり、電極で形成された気泡が細孔を通過するのを防止する細孔サイズを持つように選択する。電極とふるい用マトリックスとの間のフリット、ポリマー膜またはフィルターの挿入の結果として、電気分解プロセスから形成された気泡が、チャネルに入ることを防止する。この実行は、チャネルにおける気泡遮断に起因する破壊を低下および/または消失できる。
【0057】
複数の試料よりなる同時分析用の分離デバイスは電気的に接続され、共用電源を用いて、複数のチャネルに同時にバイアスをかけることができる。さらに、チップおよび機器の物理的な制約は、全てのチャネルが、長さ、深さおよび幅に関して同一の物理的配置を有するのを通常可能にしないであろう。
【0058】
複数のマイクロ流体チャネルの各々のための実質的に同一の電気泳動注入および分離条件を達成するために、個々のデバイスの各チャネル区間は、本質的に同一の抵抗を有し、かくして、本質的に同一の電場を有するべきである。実質的に同一の電場、すなわち、複数のマイクロ流体チャネルの各々を横切る電場は約+/−5%を越えて異ならないことが、複数のマイクロ流体チャネルの各々の長さ、幅および深さの双方を同時に調整して、チャネルの各セグメントの抵抗を調整することにより確立できる。各セグメントの抵抗Rは、以下の関係により記載できる。
【0059】
【数1】
【0060】
[式中、ρは比抵抗であり、ιは長さであって、Aはチャネルの断面積である。]
【0061】
分離チップのチャネルの壁に常在の表面電荷は、電気浸透および試料−対−壁の相互作用を生じかねない。これらの効果は、マイクロ流体チャネルの内部壁に表面コーティングを適用することにより最小化できる。かかる表面コーティングおよび修飾は、当業者に知られた方法を介して達成できる(例えば、Ludwigおよび Belder, 2003 Electrophoresis 24(15):2481-6)。
【0062】
表面修飾についての多数の候補物は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリジメチルアクリルアミド(PDMA)、ポリ(ビニルピロリジノン)、ジメチルアクリルアミド(DEA)、ジエチルアクリルアミド(DEA)、ポリ(ジエチルアクリルアミド)(PDEA)およびそれらの混合物、例えば、PDMA:PDEAのを含めて利用可能である。
【0063】
加えて、電気泳動の適用の使用のために、複数のマイクロ流体チャネルの各々は、ふるい用マトリックスで有利に充填される。かかるふるい用マトリックスは、非限定例において、線形ポリアクリルアミド(PAA)、ポリジメチルアクリルアミド(PDMA)、ポリジエチルアクリルアミド(PDEA)、ポリビニルピロリジノン(PVP)および、例えば、PVP:PAA、PDMA:PAA、PDEA:PAA、PDEA:PDMA:PAAを含めたそれらの組合せを含むことができる。ある具体例において、ふるい用マトリックスは、0.1〜50重量%のポリアクリルアミドを含む。また、多数のふるい用マトリックスは動力学的な自己コーティング能力を所有する。本発明の電気泳動分離チップのこれらの具体例を用いて実施されると、核酸は陽極から陰極端へふるい用マトリックスを通って電気泳動的に移動し、その中でサイズ分離される。前記のように、チャネルの内部壁をコーティングして、電気浸透の影響および核酸−対−壁相互作用を最小限にできる。
【0064】
分解能、特に、本明細書中の電気泳動分解能は、時を違えず(または塩基サイズにより)分離された2つのピークを明白に識別する能力である。分解能(R)は、以下の式により定義される:
【0065】
【数2】
【0066】
[式中、tはnthピークの移動時間であり、hwはnthピークの全幅および半値であって、Δbは、その2つのピーク間の塩基数の差である]。単一塩基対分解能は、Rが0.4を超える点で定義される。視覚的には、ピーク−対−谷比が0.7を超えるものである場合、2つのピークは相互に区別可能である。Rおよびピーク−対−谷の必要条件の双方を高分解能を有するために満たさなければならなく、分解能も、ある範囲の断片サイズに特有であると考えることができる。STR解析範囲における対立遺伝子についての断片サイズの範囲は90から400bpの範囲にあり、この範囲の断片サイズを横切る単一塩基対分解能はSTR解析に必要である。配列決定解析のための断片サイズは、1200bpまでの範囲にある。1レーン当たりの長い読取り長およびデータスループットを達成する能力は、部分的に、チップが単一塩基対分解能を生成できる範囲により決定される。
【0067】
光学的検出システムについての検出限界は、信号対雑音比(SNR)によって定義される。この比率は、信号を汚す信号電力−対−雑音電力(雑音電力の標準偏差)の比として定義される。高SNRは、シグナルが存在するというより高い確実性を示す。3の信号対雑音比は、シグナルの存在の確信的な同定を許容できるものとして一般的に定義される(Gilder, 2007, J Forensic Sci. 52(1): 97)。
【0068】
核酸試料中の複数の核酸種を分析および検出する場合、チップの検出窓においてプラスチックからの自己蛍光は、強力に蛍光バックグラウンドの一因となる。本発明の電気泳動の分離チップの有利な特徴は、薄い検出窓を用いて、プラスチックからのバックグラウンド蛍光を最小限にすることである。このバックグラウンドレベルは、マイクロ流体分離チップを作製するために一般的に用いられる基材であるborofloat(登録商標)と比較される。薄いプラスチック窓の使用では、分析のための蛍光標識断片を生成するPCRプロセスにおけるテンプレート核酸の最低1000コピー、300コピー、100コピー、30コピー、10コピー、1コピーが検出できる。また、配列決定反応のための核酸テンプレートの最低0.5ピコモル、0.1ピコモル、0.01ピコモルまたは0.001ピコモルが検出できる。
【0069】
分離および検出チップの適用
本発明の様々な態様の適用は、核酸同定および配列決定の双方につき広範囲に広がる。ヒト同定における使用の例は、犯罪法医学および国土安全保障、例えば、軍事検問所、国境および港、空港ならびに集団災害現場での同定を含む。また、競走馬の育種および追跡、家畜の育種を含めた獣医学的同定適用ならびにペット同定は、開示された電気泳動チップの用途の範囲内である。
【0070】
さらに、本発明の機器を高耐久化でき、それにより、その機器は、結果がリアルタイムで用いることができる分野において作動できる。従って、その機器は軍事検問所、国境および港、空港ならびに集団災害現場で用いることができる。
【0071】
核酸配列決定に対するその技術の適用は4つの領域:例えば、細菌感染および抗体感受性、ウイルス感染(同定および薬物耐性プロファイリング)、遺伝子疾患、複合疾患(喘息、心臓疾患、糖尿病)およびゲノム薬理学を含めたヒトの臨床診断;獣医学的な臨床診断;再配列決定および完了を含めた研究配列決定;例えば、炭疽菌(B.anthracis)およびエボラウイルス検出を含めた生物兵器剤同定;および食品安全性に分割できる。いくつかの例を次に記載する。
【0072】
HIVの患者は、薬物耐性試験を必要とする。今日、耐性を確立するのに何週間もかかり得る。薬物耐性株は、その時間の間に根付くことができる。患者が医師のオフィスで待っている間の1〜2時間以内に回答を供することができる機器およびシステムについての満たされていない必要性が存在する。本発明による電気泳動の分離チップの使用は、頻繁な薬物耐性モニタリング、抗ウイルス剤のより臨床的およびコスト的に有効な使用およびより良好な患者予後を可能にする。
【0073】
菌血症の患者はショック状態にある。今日、原因物質が抗生物質耐性であるかどうかおよびその同一性を決定するのに何日もかかりかねない。その間、患者は、患者に重大な副作用を生じかねなく、かつ今日一般的な抗菌性耐性の増大の一因となる広域抗生物質で治療されなければならない。加えて、かかる処置は部分的に最適であり得る。本発明による電気泳動分離チップの使用は、1〜2時間で病原体の抗生物質耐性プロフィールの同定を可能して、より有効な標的処置、抗生物質毒性における低減、およびより良好な患者予後に導く。患者および公衆衛生に対する利点は相補的である。
【0074】
癌の患者は手術を受けている。目下、患者が手術台上にいる間に腫瘍試料を病理に持って行く。
単純な組織病理学系統の結果に基づいて、外科医がどれくらい積極的でなければならないかに関する決定を行っている。本発明による電気泳動分離チップの使用は、組織病理学を1時間未満での癌の確定的な核酸診断に置き換えることができ、良好に通知された外科的決定がなされるのを可能とする。
【0075】
以下の実施例は、本発明の特定の具体例およびその様々な使用の例示である。それらは、説明の目的だけに記載され、本発明の制限として取られるべきではない。
【0076】
実施例
実施例1
チップデザインおよび電気泳動
実施例1A:チップデザイン
本発明のデバイスの特定の具体例の模式図を図6に示す。このマイクロ流体デバイスは、各々ダブルTクロスインジェクターを持つ16のマイクロチャネルよりなった。チャネルの横断面の寸法(幅90μmおよび深さ40μm)ならびに陽極とクロスインジェクターとの間のチャネルの長さ(25cm)は、すべてのチャネルにつき等しかった。各チャネルについての分離長(交差と励起/検出窓との間の距離)は、16〜20cmの範囲にある。陰極ウェルとインジェクターとの間の横断面の面積は、全ての抵抗および、従って、陰極と交差との間の電場がバイアス下で本質的に等しいように調節した。これにより、試料によって経験された電場が、試料が負荷された分離チャネルにかかわらず同一であることを保証した。すべてのチャネルについての交差電圧は本質的に同一であった。試料注入のための試料入口および試料廃棄アームは、双方とも長さ2.5mmであった。双方のチャネル間のオフセットは500μmであった。
【0077】
実施例1B:チップおよび支持体作製
チップは、加熱エンボス法によりパターン化し、穿孔してアクセスホールを形成し、次いで、拡散結合させてチャネルを密閉した。マスターを化学的湿式エッチングプロセスを用いて、写真平版によりガラスに作製した。次いで、このガラスマスターを用いて、電気鋳造することによりニッケル・コバルトエンボスツールを作製して、ガラスマスターのネガティブ複製を生成した。
Zenor(商標)−1420Rフィルムのシート(5"×2"のサイズおよび188μmの厚み)を基材材料として用いた。これらのシートにおいては、陰極、陽極、試料および廃液アクセスホールを穿孔により形成した。この後、基材へエンボスツール上のチップデザイン特徴を加熱エンボスした。エンボス法は、図7に示すスタックを135℃の15分間の加熱水圧プレスおよび1250psiの圧縮圧力に入れることにより達成した。スタックは、1250psiの圧縮力下に保持し、放出に先立ち38℃に冷却させた。ノルボルネンモノマーを含有する薄い熱可塑性ポリマーでのこのチップの製作は、励起および検出窓での低バックグラウンド蛍光を生じさせた。高結合強度の分散結合の達成は、高粘度ふるい用マトリックスの使用を可能とした。
【0078】
基材の拡散結合は、基材上へのZenor(商標)−1420Rフィルムのシート(5"×2"のサイズおよび188μmの厚み)を整列させ、このスタックを加熱および圧力に付して達成した。接着剤をフィルムのシート間に適用せず;結合を完全に加熱および圧力によって達成した。チップの最終の厚みは約376μmであった。この方法により作製した分離チップをテストして、破壊前に少なくとも830psiの圧力に耐えることができることを示した。
【0079】
図8は、3/8"の厚みのアクリル板(GE Plastic)からCNCミリングにより作製したチップ支持体を示す。チップ支持体は3つの主要部分:陰極ボード、センター部品および陽極ボードよりなった。陰極ボードは陰極ウェル、試料および廃棄物ウェルならびに配列穴部を含んだ。陽極ボードは陽極ウェルおよび配列穴部を含んだ。陰極ボードおよび陽極ボードの双方は、試料注入につき十分な試料容積および電気泳動用につき十分な緩衝液容積を供するために厚み3/8"であった。センター部分は厚み0.04"であり、マイクロチャネル中へのレーザー誘起蛍光検出用の「検出窓」として開口部を有した。この配置を用いて、分離チップからの自己蛍光は、約376μmの厚みの基材により支配されるようになる。分離チップは、両側の圧力感受性接着剤でチップ支持体に付着させた。接着剤を分離緩衝液およびふるい用マトリックスに不活性となるように選択した。支持体および分離チップを感圧エポキシで付着させた。励起および検出領域におけるプラスチックの厚みは、この領域において担体上でカットアウトを作成することにより最小限にした。
【0080】
Zenor(商標)−1420Rの光学発光スペクトルは、蛍光色素で蛍光検出を制限した570nmのラマン発光ピークを有する。図9は、典型的なガラス分離チップ(Glass 1.4mmおよびGlass 0.7mm)と比較したプラスチックチップ(PChiplおよびPChp2)の低自己蛍光を示す。プラスチックチップの低自己蛍光は、COPポリマーを選択し、検出領域におけるデバイスの厚みを最小限にすることにより、および薄いフィルムでデバイスを作製することにより達成した。
【0081】
実施例1C:表面修飾およびふるい用マトリックス
表面修飾は、最初に脱イオン水、続いて1M NaOHでマイクロチャネル表面を予め処理することにより達成した。窒素フラッシュを適用して、チャネルから流体を除去した。表面処理後に、チャネルを介して0.1%(w/v)のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)溶液を流し、それに続いて、室温にて一晩インキュベートした。高純度窒素を用いて、チャネルを通じてフラッシュして、チャネルの内部の流体を除去した。
【0082】
これらの実験に用いたふるい用マトリックスは、7M尿素および1X TTE(Amresco)緩衝液中の4%線形ポリアクリルアミド(LPA)であった。
【0083】
実施例1D:電気泳動STRサイジング
核酸分析の電気泳動の分離および分析は、Genebench−FX(商標)シリーズ100(Network Biosystems, Inc., Woburn, MA) で行った。この機器は、プラスチック分離チップおよびチップ支持体を受入れ、チップおよび機器の間の良好な光学的、電気的および熱カップリングを可能にするように構成した。チャンバーの温度を操作の全体にわたって50℃に維持した。
【0084】
DNAサイジング実験では、ヒトのゲノムDNAを、ABI AmpFISTRキット(Applied Biosystems Inc., Foster City, CA)で増幅した。PCR生成物(2.7μL)を0.3μLのサイジング標準および10μLのホルムアミドと混合して、分析のために試料ウェルに負荷した。アッセイは、陽極ウェルに3900Vの電位差を印加し、陰極ウェルをアースすることにより、試料導入に先立って6分間156V/cmで行う予めの電気泳動よりなった。DNA試料は、18秒間350V/cmの電場を印加することにより導入することに続いて、試料および廃棄物ウェルを横切る350V/cmの電場を印加し、同時に陰極および陽極のウェルを横切る15.6V/cmの電場を印加することにより、1.2分間2重の負荷を行った。試料注入後に、電気泳動DNA分離を、40分間800Vの障害電圧を維持しつつ、陰極および陽極を横切る156V/cmの電場を印加することにより行なった。
【0085】
DNA配列決定実験については、M13プラスミドをGE Amersham DYEnamic(商標) ET色素ターミネーターサイクル配列決定キット(GE Healthcare)でサイクル配列決定し、エタノール沈殿させ、次いで10μL脱イオン水中に再懸濁させた。分離アッセイは、陽極ウェルにて3900Vの電位差を印加し、陰極ウェルをアースすることにより、試料導入に先立ち6分間156V/cmで行う予めの電気泳動よりなった。DNA試料は、60秒間350V/cmの電場を印加することにより導入した。試料注入後に、電気泳動のDNA分離を60分間400Vの障害電圧を維持しつつ陰極および陽極のウェルを横切る156V/cmの電場を印加することにより行なった。DNA分離分解能をPeakfit(登録商標)からのピーク情報(ピーク間隔およびピーク幅)を抽出することにより計算した。
【0086】
分離の成功をプラスチックチップにおける16レーン中で同時に達成した。図10は、5色標識キット(ABI AmpFlSTR Identifilerキット)から対立形質ラダーにつき対立遺伝子と呼ばれるプロフィールを示す。これらの結果は、本発明のデバイスがプラスチックチップにおいて5色で分離でき、明らかに、単一塩基対だけに同等な距離によって間隔を空けたものを含めた対立遺伝子を解析できることを示した(THO 1、対立遺伝子9.3および10)。図11は、9947AのヒトゲノムDNAについての対立遺伝子と呼ばれるSTRプロフィールを示し、これは、全プロフィールが1.0ngのDNAテンプレートで達成されたことを示している。図12は、>480bpまでについてR>0.4での分解能を示し、これは480bpまでの単一塩基分解能を示す。図13は、1ヌクレオチドだけ間隔が空いた2つの対立遺伝子が、曖昧さなくして明確に分離できることを示すことによるこの分解能を示す。図14および15は、単一塩基対の分解能を示すDNA配列決定プロフィールを示す。
【0087】
実施例2
動電学的注入プラスチックチップ
実施例2A:チップデザイン
本発明の電気泳動の分離チップのもう一つの配置は、分離のために単一チャネルを用いる。各試料を動電学的な試料注入により分離チャネルに導入する。この別法のアプローチは、小試料容積の使用および分離プロセスにおけるかなりの単純化を可能とする。動電学的な試料注入についてのチップデザインの模式図を支持体および分離チップ領域を示す図16の分離図で示す。このデバイスは、分離長が有効には20cmである16のマイクロチャネルよりなる。各チャネルは、各末端にアクセスホールを有する。チャネルは幅90μmおよび深さ40μmである。
【0088】
実施例2b:デバイス作製
図16のデバイスは上記の断面図に記載された手順に従って作製される。要約すると、アクセスホール(直径が1mm)は188μmの厚みを持つCOPフィルム(Zeonor(商標)1420R)に形成される。次いで、チャネルパターン(幅90μmおよび深さ40μm)を加熱エンボス法により形成する。COP(Zeonor(商標)1420R)のカバーを基材に拡散結合して、チャネルを密閉する。
【0089】
実施例2C:電気泳動
デバイスを上記の断面図に記載したチャネルに表面修飾を適用することにより、分離のために調製する。これに続いて、チャネルをふるい用マトリックスで充填する。試料を試料/陰極リザーバに負荷する。注入場を電極を介して試料に適用して、負に帯電したDNAを分離チャネルに注入する。チャネルへのDNAの注入に続いて、緩衝液(1X TTE;Ameresco)を試料容積の10倍容積で試料/陰極リザーバに添加する。電場を陰極および陽極を横切って印加して、分離チャネルの下の注入プラグからDNAを分離する。この添加は、試料/陰極にある試料を希釈するように機能し、緩衝液を負荷するに先立ち試料を取り出す必要性はない。分離および検出をGenebench−FX(商標)シリーズ100機器で行い、データ分析を先の実施例に記載されたソフトウェアで行う。
【0090】
実施例3
DNA配列決定
DNA配列決定分析については、DNAテンプレートをPCR酵素SpeedSTAR HS(Takara, Madison, WI)(U/μL):0.025、Fast緩衝液1:1x、dNTP:0.25mM、プライマー(順方向):250nMおよびプライマー(逆方向):250nMよりなる反応ミックス中で増幅する。所望のレベルの鋳型DNAをミックスに添加する。DI水またはTE緩衝液(トリス10mMまたはEDTA0.1mM)を10μLの全容積まで反応ミックスに添加する。PCR反応ミックスの熱サイクルは、製造者の推奨したプロトコールに従い、95℃での60秒間のホットスタート活性化、30サイクルの変性、アニーリングおよび伸長(98℃で5秒間、55℃で10〜15秒間、次いで、72℃での5〜10秒/kbp)よりなった。
【0091】
全PCR生成物を30K MWCO UFフィルター(Pall, East Hills, NY)を用い、製造者のプロトコールに従い、きれいにする。DI水中のDNAよりなるきれいにした生成物を希釈するか、あるいは配列決定反応用のテンプレートとしてその全てを適用する。
【0092】
PCRテンプレートのサイクル配列決定は、以下の反応ミックスで半分強度の反応にてDYEnamic(商標) ETターミネーターサイクル配列決定キット(GE Amersham Biosciences)を用いて行なった。配列決定プレミックス:4μL、希釈緩衝液:4μL、プライマー(10μM):5pmol。DNAテンプレートを配列決定反応ミックスに添加した。DI水を20μlの全容積まで反応ミックスに添加した。製造者の推奨したサイクリングプロトコールに従い、用いたサイクリング条件は、30サイクルの(95℃で20秒間、50℃で15秒間、60℃で60秒間)よりなった。
【0093】
配列決定反応ミックスをエタノール沈澱によりきれいにした。沈殿生成物を13μlのDI水に再懸濁し、分離および検出用の試料として用いた。
【0094】
STR分析については、増幅は、以下のものよりなる反応ミックスを用いて10μL反応で実行した:PCR酵素SpeedSTAR HS(Takara、Madison、WI)(U/μL):0.0315、Fast緩衝液1:1x、プライマーセット:2μl、Fast緩衝液1:1x、dNTPs:200μM、プライマー(順/逆方向):2μLよりなる(AmpFlSTR Profiler(商標), COFiler(商標)または Identifiler(商標) (Applied Biosystems, Foster City, CA)より)。
【0095】
サイクリングプロトコールは、95℃で60秒間のホットスタート活性化に続いて、28サイクルの変性、アニーリングおよび伸長(98℃で4秒間、59℃で15秒間、72℃で5秒間)および72℃での60秒間の最終伸長よりなる酵素製造者の条件に従った。PCR生成物は、分離および検出用試料として用いた。また、別法として、PCR生成物を精製し、分離および検出用試料として用いることができる。
【0096】
前記の開示は本発明のある特定の具体例を強調し、それに対するすべての変形または代替的な等価物が、添付した特許請求の範囲に記載された本発明の精神および範囲内にあることは理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極部分、陰極部分、ならびに陽極部分と陰極部分との間のセンター部分を含む電気泳動分離チップであって、
陰極部分は、少なくとも1つの第1のビアを含み:
陽極部分は、少なくとも1つの第2のビアを含み:および
センター部分は、1または複数のマイクロチャネルおよび1つの検出窓を含み、各マイクロ流体チャネルは、分離領域および検出領域を有し;ここに、
各マイクロ流体チャネルは、少なくとも1つの第1のビアおよび少なくとも1つの第2のビアと流体連通し;
複数のマイクロ流体チャネルは、実質的に同一面にあり;
複数のマイクロ流体チャネルは、センター部分内で相互に交差せず;
検出窓は薄いプラスチックを含み;および
検出窓は、各マイクロ流体チャネルの検出領域の一部を覆う該チップ。
【請求項2】
薄いプラスチック領域が、ポリエチレン、ポリ(アクリレート)、ポリ(カーボネート)および不飽和、部分的不飽和もしくは飽和の環状オレフィンポリマー(COP)、不飽和、部分的不飽和もしくは飽和の環状オレフィン共重合体(COC)またはノルボルネン熱可塑性ポリマーを含む請求項1記載のチップ。
【請求項3】
薄いプラスチックが、ZEONOR(商標)、ZEONEX(商標)またはTOPAS(商標)ポリマーを含む請求項1記載のチップ。
【請求項4】
薄いプラスチックが約300μm未満の厚みを有する請求項1記載のチップ。
【請求項5】
薄いプラスチックが約500μm未満の厚みを有する請求項1記載のチップ。
【請求項6】
薄いプラスチックが、1ミリメートル以下の厚みを有する請求項1記載のチップ。
【請求項7】
各マイクロ流体チャネルが、2cm〜50cmの分離長を有する請求項1記載のチップ。
【請求項8】
複数のマイクロ流体チャネルの各々が、注入チャネルをさらに含む請求項1記載のチップ。
【請求項9】
薄いプラスチックが、約450〜500nmの間の波長で励起される場合に、本質的に500〜800nmの間の波長を有する蛍光を発しない請求項1記載のチップ。
【請求項10】
薄いプラスチックが約488nmの波長で励起される請求項9記載のチップ。
【請求項11】
断片サイジング適用のために生成された核酸試料中の複数の核酸種が、PCR増幅用の核酸テンプレートの単一コピーで始めて3を超える信号対雑音で検出できる請求項1記載のチップ。
【請求項12】
DNA配列決定適用のために生成された核酸試料中の複数の核酸種が、PCR増幅用の核酸テンプレートの単一コピーで始めて3を超える信号対雑音で検出できる請求項1記載のチップ。
【請求項13】
複数のマイクロ流体チャネルの各々が、表面コーティングをさらに含む請求項1記載のチップ。
【請求項14】
表面コーティングが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)(PDMA)、ポリ(ビニルピロリジノン)、ジメチルアクリルアミド DEA、ジエチルアクリルアミド、ポリ(ジエチルアクリルアミド)およびそれらの混合物である請求項13記載のチップ。
【請求項15】
複数のマイクロ流体チャネルの各々が、ふるい用マトリックスをさらに含む請求項13記載のチップ。
【請求項16】
ふるい用マトリックスが、線形または架橋ポリ(N,N−ジアルキルアクリルアミド)、線形ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリビニルピロリジノンまたはそれらの組合せを含む請求項15記載のチップ。
【請求項17】
ふるい用マトリックスが、1〜15重量%のポリアクリルアミドを含む請求項16記載のチップ。
【請求項18】
各陰極ウェルおよび各マイクロ流体チャネル間の多孔層を含み、ここに、多孔層は、陰極ウェルから各マイクロ流体チャネルへのガス気泡の通過を実質的にブロックできることをさらに含む請求項1記載のチップ。
【請求項19】
多孔質層が、ガラスフリット、ポリマーフリット、ポリマー膜またはポリマーフィルターを含む請求項18記載のチップ。
【請求項20】
核酸試料中の複数の核酸種を該核酸試料の電気泳動分析後に、単一塩基分解能で検出できる請求項1記載のチップ。
【請求項21】
少なくとも2つの試料を複数のマイクロ流体チャネルに同時に注入するためのインジェクターをさらに含む請求項1記載のチップ。
【請求項22】
陽極部分、陰極部分、ならびに陽極部分と陰極部分との間のセンター部分を含む頂部および底部表面を有する支持体を含む装置であって、ここに、
センター部分は検出窓にて開口部を含み、
陽極部分は少なくとも1つの陽極ウェルを含み、および
陰極部分は少なくとも1つの陰極ウェルを含み;
装置は、さらに、
頂部および底部表面を有する請求項1記載のチップを含み、ここに、
チップの頂部表面は、支持体の底部表面と接触し、
マイクロ流体チャネルはビアを介して陰極および陽極ウェルと流体連通し;および
チップは、支持体に固定して取付けられる該装置。
【請求項23】
分離チップが、各々頂部および底部表面を有する基材層およびカバー層を含み、ここに、
基材層は、その頂部表面における複数のマイクロ流体溝を含み;および
カバー層は、チップ支持体の各陽極および陰極ウェルについての1つのビアを含み、ここに、
基材層の頂部表面は、カバー層の底部表面と接触し、それにより、分離チップ中の複数の
マイクロ流体チャネルを一緒に形成する請求項22記載の装置。
【請求項24】
基材層およびカバー層が加熱結合される請求項23の装置。
【請求項25】
複数の試料を電気泳動的に分離および検出する方法であって、
複数の試料を請求項1に記載のマイクロチップ上の複数のマイクロ流体チャネルの各々に供し;
複数のマイクロ流体チャネルを横切る電位を印加して、複数の分析試料の各々を含む検出可能な種を分離し;
検出窓にて複数の分離された試料を含む検出可能な種の各々を検出することを同時に含むことを特徴とする該方法。
【請求項26】
複数のマイクロ流体チャネルの各々を横切って実質的に同一の電場を維持する工程をさらに含むことを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項27】
本質的に同一の電場が、複数のマイクロ流体チャネルの各々の各部分の抵抗を平衡させることにより、複数のマイクロ流体チャネルの各々を横切って維持されることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項28】
検出可能な種が核酸を含むことを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項29】
検出可能な種が、核酸に機能的に付着した色素を含むことを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項1】
陽極部分、陰極部分、ならびに陽極部分と陰極部分との間のセンター部分を含む電気泳動分離チップであって、
陰極部分は、少なくとも1つの第1のビアを含み:
陽極部分は、少なくとも1つの第2のビアを含み:および
センター部分は、1または複数のマイクロチャネルおよび1つの検出窓を含み、各マイクロ流体チャネルは、分離領域および検出領域を有し;ここに、
各マイクロ流体チャネルは、少なくとも1つの第1のビアおよび少なくとも1つの第2のビアと流体連通し;
複数のマイクロ流体チャネルは、実質的に同一面にあり;
複数のマイクロ流体チャネルは、センター部分内で相互に交差せず;
検出窓は薄いプラスチックを含み;および
検出窓は、各マイクロ流体チャネルの検出領域の一部を覆う該チップ。
【請求項2】
薄いプラスチック領域が、ポリエチレン、ポリ(アクリレート)、ポリ(カーボネート)および不飽和、部分的不飽和もしくは飽和の環状オレフィンポリマー(COP)、不飽和、部分的不飽和もしくは飽和の環状オレフィン共重合体(COC)またはノルボルネン熱可塑性ポリマーを含む請求項1記載のチップ。
【請求項3】
薄いプラスチックが、ZEONOR(商標)、ZEONEX(商標)またはTOPAS(商標)ポリマーを含む請求項1記載のチップ。
【請求項4】
薄いプラスチックが約300μm未満の厚みを有する請求項1記載のチップ。
【請求項5】
薄いプラスチックが約500μm未満の厚みを有する請求項1記載のチップ。
【請求項6】
薄いプラスチックが、1ミリメートル以下の厚みを有する請求項1記載のチップ。
【請求項7】
各マイクロ流体チャネルが、2cm〜50cmの分離長を有する請求項1記載のチップ。
【請求項8】
複数のマイクロ流体チャネルの各々が、注入チャネルをさらに含む請求項1記載のチップ。
【請求項9】
薄いプラスチックが、約450〜500nmの間の波長で励起される場合に、本質的に500〜800nmの間の波長を有する蛍光を発しない請求項1記載のチップ。
【請求項10】
薄いプラスチックが約488nmの波長で励起される請求項9記載のチップ。
【請求項11】
断片サイジング適用のために生成された核酸試料中の複数の核酸種が、PCR増幅用の核酸テンプレートの単一コピーで始めて3を超える信号対雑音で検出できる請求項1記載のチップ。
【請求項12】
DNA配列決定適用のために生成された核酸試料中の複数の核酸種が、PCR増幅用の核酸テンプレートの単一コピーで始めて3を超える信号対雑音で検出できる請求項1記載のチップ。
【請求項13】
複数のマイクロ流体チャネルの各々が、表面コーティングをさらに含む請求項1記載のチップ。
【請求項14】
表面コーティングが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)(PDMA)、ポリ(ビニルピロリジノン)、ジメチルアクリルアミド DEA、ジエチルアクリルアミド、ポリ(ジエチルアクリルアミド)およびそれらの混合物である請求項13記載のチップ。
【請求項15】
複数のマイクロ流体チャネルの各々が、ふるい用マトリックスをさらに含む請求項13記載のチップ。
【請求項16】
ふるい用マトリックスが、線形または架橋ポリ(N,N−ジアルキルアクリルアミド)、線形ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリビニルピロリジノンまたはそれらの組合せを含む請求項15記載のチップ。
【請求項17】
ふるい用マトリックスが、1〜15重量%のポリアクリルアミドを含む請求項16記載のチップ。
【請求項18】
各陰極ウェルおよび各マイクロ流体チャネル間の多孔層を含み、ここに、多孔層は、陰極ウェルから各マイクロ流体チャネルへのガス気泡の通過を実質的にブロックできることをさらに含む請求項1記載のチップ。
【請求項19】
多孔質層が、ガラスフリット、ポリマーフリット、ポリマー膜またはポリマーフィルターを含む請求項18記載のチップ。
【請求項20】
核酸試料中の複数の核酸種を該核酸試料の電気泳動分析後に、単一塩基分解能で検出できる請求項1記載のチップ。
【請求項21】
少なくとも2つの試料を複数のマイクロ流体チャネルに同時に注入するためのインジェクターをさらに含む請求項1記載のチップ。
【請求項22】
陽極部分、陰極部分、ならびに陽極部分と陰極部分との間のセンター部分を含む頂部および底部表面を有する支持体を含む装置であって、ここに、
センター部分は検出窓にて開口部を含み、
陽極部分は少なくとも1つの陽極ウェルを含み、および
陰極部分は少なくとも1つの陰極ウェルを含み;
装置は、さらに、
頂部および底部表面を有する請求項1記載のチップを含み、ここに、
チップの頂部表面は、支持体の底部表面と接触し、
マイクロ流体チャネルはビアを介して陰極および陽極ウェルと流体連通し;および
チップは、支持体に固定して取付けられる該装置。
【請求項23】
分離チップが、各々頂部および底部表面を有する基材層およびカバー層を含み、ここに、
基材層は、その頂部表面における複数のマイクロ流体溝を含み;および
カバー層は、チップ支持体の各陽極および陰極ウェルについての1つのビアを含み、ここに、
基材層の頂部表面は、カバー層の底部表面と接触し、それにより、分離チップ中の複数の
マイクロ流体チャネルを一緒に形成する請求項22記載の装置。
【請求項24】
基材層およびカバー層が加熱結合される請求項23の装置。
【請求項25】
複数の試料を電気泳動的に分離および検出する方法であって、
複数の試料を請求項1に記載のマイクロチップ上の複数のマイクロ流体チャネルの各々に供し;
複数のマイクロ流体チャネルを横切る電位を印加して、複数の分析試料の各々を含む検出可能な種を分離し;
検出窓にて複数の分離された試料を含む検出可能な種の各々を検出することを同時に含むことを特徴とする該方法。
【請求項26】
複数のマイクロ流体チャネルの各々を横切って実質的に同一の電場を維持する工程をさらに含むことを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項27】
本質的に同一の電場が、複数のマイクロ流体チャネルの各々の各部分の抵抗を平衡させることにより、複数のマイクロ流体チャネルの各々を横切って維持されることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項28】
検出可能な種が核酸を含むことを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項29】
検出可能な種が、核酸に機能的に付着した色素を含むことを特徴とする請求項28記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2010−523976(P2010−523976A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502139(P2010−502139)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/004405
【国際公開番号】WO2008/124064
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(507382050)ネットワーク・バイオシステムズ・インコーポレーテッド (7)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/004405
【国際公開番号】WO2008/124064
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(507382050)ネットワーク・バイオシステムズ・インコーポレーテッド (7)
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