説明

プラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】チップ管と背面板との接合を、チップ管の排気装置に接続する側を下側として行っても成型封止部材が下垂することがなく、もって、高信頼性、また環境面にも考慮がなされたPDPを実現する。
【解決手段】前面板と背面板とを対向配置するとともにその周囲で封着することにより形成された放電空間に対し、背面板に設けた貫通孔を介して連通する管状のチップ管を、封着材料により構成された成型封止部材を用いて背面板に接合する工程を備えるPDPの製造方法であって、成型封止部材23は、孔部を有する平板部23aと円筒部23bとを備え、円筒部23bの密度は平板部23aの密度より低く構成され、チップ管は、排気装置に接続する側を下側とし、他方側で成型封止部材の平板部を背面板との間に挟んだ状態とし、この状態で成型封止部材を加熱溶融し冷却固化させることで、チップ管と背面板とを接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型テレビジョンや公衆表示等に用いる平板型の表示装置であるプラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)の製造方法に関し、さらに詳しくはPDPの放電空間の内部を排気したり、放電空間の内部に放電ガスを封入するための、チップ管を備えるPDPの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PDPは、高精細化、大画面化の実現が可能であることから、65インチクラスのテレビジョン受像機や大型公衆表示装置等に向けて製品化が進み、現在では100インチを越える製品もリリースされている。特に、テレビジョン受像機向けのPDPでは従来のNTSC方式に比べて走査線数が2倍以上のフルスペックのハイビジョンヘの適用が進んでいる。
【0003】
基本的に、PDPは、前面板と背面板とで構成されている。前面板は、フロート法による硼珪酸ナトリウム系ガラスのガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極とバス電極とで構成される表示電極と、この表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、この誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層とで構成されている。一方、背面板は、排気および放電ガス封入(導入ともいう)用の細孔を設けたガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のアドレス電極(データ電極ともいう)と、アドレス電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色および青色それぞれに発光する蛍光体層とで構成されている。
【0004】
ここで、前面板と背面板とは、その周囲において、封着材料によって気密に接合(封着)され、また、放電空間内部の排気および/または放電空間内部への放電ガスの導入を目的として、背面板に設けた貫通孔を介して放電空間と気密に連通するチップ管(排気管とも言われる)が同じく封着材料によって背面板に接合されている。
【0005】
そして、放電空間の排気と放電ガス(Ne−Xeの場合、400Torr〜600Torrの圧力)の封入がチップ管を通して行われ、その後、チップ管を適当部分で局部的に加熱溶融(チップオフ)して気密封止することでPDPが完成する。
【0006】
完成したPDPは、表示電極に映像信号電圧を選択的に印加することによって放電させ、その放電によって発生した紫外線が各色蛍光体層を励起して赤色、緑色、青色の発光をさせてカラー画像表示を実現している。
【0007】
なお、上述したPDPの、誘電体層や、前面板と背面板との封着、および背面板とチップ管との接合に用いる封着材料には一般に酸化鉛を主成分とするフリットガラスが用いられている。フリットガラスには加熱しても結晶化せず非晶質の特性を残す非晶質系フリットガラスと、加熱により結晶化する結晶化フリットガラスがある。それぞれの材料に長短があり、製造工程とのマッチングを考慮して選択される。
【0008】
ここで、近年の環境問題への配慮から、PDPにおいても鉛成分を含まない「鉛フリー」、「鉛レス」と称する非鉛系の材料を用いることが求められている。封着材としては、鉛成分を含まない燐酸系(燐酸−酸化錫系等)の封着材料や、酸化ビスマス系の封着材の例が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−182584号公報
【特許文献2】特開2003−095697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図8に、従来のPDPの製造方法における、前面板2と背面板3とをその周囲で封着する工程、および背面板3とチップ管20とを接合する工程、の際の、各要素の設置の状態を模式的に断面図で示す。この図8を用いて、前面板2と背面板3とをその周囲で封着する工程、および背面板3とチップ管20とを接合する工程について、以下、説明する。
【0010】
背面板3の周囲の所定の位置にそれぞれ封止部材22を配置形成し、前面板2の表示電極と背面板3のデータ電極が交差するように所定の位置でアラインメントしてから固定治具(図示せず)で押さえて固定する。ここで封止部材22は、フリットガラスとフィラーとを混合して有機溶剤で混練したペースト状の封着材料を、厚膜印刷、インクジェット、ディスペンサーを備えた塗布装置などを用いて、背面板3の周囲の所定の位置に塗布形成した後、乾燥させたものである。
【0011】
一方、背面板3の例えばコーナ部の所定の位置に設けた貫通孔21の中心と成型封止部材123の孔部124の中心とが概略一致するように位置合わせして載置し、さらに、チップ管20の端部20aの開口部の中心と貫通孔21の中心とが概略一致するようにも位置合わせし、それぞれの位置合わせがずれないように固定治具(図示せず)で押さえて固定する。
【0012】
ここで、成型封止部材123は、フリットガラスとフィラーとを混合して溶剤で混練した材料を、型を用いて、図9にその概略形状を(a)上面図、(b)正面図、(c)側面図として示すように、孔部124を有する平板部123aと円筒部123bとを備える形状にプレス成型し、その後、溶剤を蒸発させるのに必要な温度で加熱焼成し、焼結固化することで形成したものである。
【0013】
以上、図7に示すような状態に各要素の配置を行い、この状態を保ったまま、封止部材22、成型封止部材123それぞれを、加熱溶融させた後に冷却固化させることで、前面板2と背面板3との封着、および背面板3とチップ管20との接合を行っている。
【0014】
ここで図8には、チップ管20の、接合される側の端部20aを下側とし、排気装置(図示せず)に接続される側の端部20bを上側とした配置の例を示しているが、このような配置の場合、排気装置は、大概、床面、すなわち、チップ管20より下方側に設置されることから、上向きに開口を有する状態に接合されたチップ管20と接続するためには、排気装置からの配管を必ず曲げる必要が生じ、配管が長くなってしまう。
【0015】
このため、図10(a)に示すように、図7に示す配置とはチップ管20を上下逆転させた配置とすることで、チップ管20の、排気装置に接続される側の端部20bを下側とする配置を採る場合がある。図10(a)に示す配置では、排気装置(図示せず)とチップ管20との接続に際して、配管を直結で短くできるため、配管が容易であると同時に排気抵抗を最小限とすることができ、排気時間を短縮できるという利点がある。
【0016】
しかしながら、図10(a)に示すような配置とした場合、成型封止部材123が鉛を含有するフリットガラスを主体とする封着材料で形成されている場合には、問題なく接合が可能であったが、非鉛のフリットガラスを主体とする封着材料で形成された成型封止部材123を用いる場合、封止部材22および成型封止部材123それぞれを加熱・溶融し、そして冷却固化させることで封着部27および接合部126とする際に、成型封止部材123は加熱・溶融時に下方に垂れ、そしてその状態のまま冷却・固化してしまい、その結果、図10(b)にその形状の例を模式的に断面図で示すように、接合部126が下方に垂れた、「下垂」が生じた状態となってしまう場合があった。
【0017】
接合部126が「下垂」した状態であると、チップ管20と背面板3との接合強度などが不十分となってしまい、その結果、背面板3に設けた貫通孔21を介しての放電空間17とチップ管20との連通の気密性に不具合が生じてしまう場合があった。ここで、鉛を含むフリットガラスでは下垂現象が発生しないのは、焼成中に鉛を含む高軟化点フリットガラスは軟化点を越えると結晶化が始まるので下垂することがないものと考えられる。
【0018】
本発明はこのような現状に鑑みなされたもので、非鉛のフリットガラスを主体とする封着材料により形成された成型封止部材を用いて、チップ管と背面板との接合を、チップ管の排気装置に接続する側を下方側として行っても、成型封止部材が下垂することがなく、もって、気密性に関し高信頼性を有し、また環境面にも考慮がなされたPDPを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を実現するために本発明のPDPの製造方法は、前面板と背面板とを対向配置するとともにその周囲で封着することにより形成された放電空間に対し、背面板に設けた貫通孔を介して連通する管状のチップ管を、封着材料により構成された成型封止部材を用いて背面板に接合する工程を備えるプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記成型封止部材は、孔部を有する平板部と円筒部とを備え、円筒部の密度は平板部の密度より低く構成され、前記チップ管は、排気装置に接続する側の端部を下方側とし、他方の側の端部で成型封止部材の平板部を背面板との間に挟んだ状態とし、この状態で成型封止部材を加熱溶融させた後、冷却固化させることで、チップ管と背面板とを接合するというものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、非鉛のフリットガラスを主体とする封着材料により形成された成型封止部材を用いて、チップ管と背面板との接合を、チップ管の排気装置に接続する側を下方側として行っても、成型封止部材が下垂することがなく、もって、気密性に関し高信頼性を有し、また環境面にも考慮がなされたPDPを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態によるPDPの製造方法について図面を用いて詳しく説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態によるPDPの製造方法により製造されるPDPの概略構造を示す断面斜視図である。図1に示すように、PDP1は前面ガラス基板5等よりなる前面板2と、背面ガラス基板11等よりなる背面板3とが対向して配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材料によって気密封着されている。
【0023】
封着されたPDP1内部の放電空間17には、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)等の放電ガスが400Torr〜600Torrの圧力で封入されている。
【0024】
前面板2の前面ガラス基板5上には、走査電極6および維持電極7よりなる一対の帯状の表示電極8が互いに平行にそれぞれ複数列配置されている。前面ガラス基板5上には表示電極8を覆うようにコンデンサとしての働きをする誘電体層9が形成され、さらにその表面に酸化マグネシウム(MgO)等からなる保護層10が形成されている。
【0025】
また、背面板3の背面ガラス基板11上には、前面板2の走査電極6および維持電極7と交差する方向に、複数の帯状のアドレス電極(データ電極ともいう)12が互いに平行に配置され、これを下地誘電体層13が被覆している。さらに、アドレス電極12間の下地誘電体層13上には放電空間17を区切る所定の高さの隔壁4が形成されている。また、隔壁4間の溝毎に、紫外線によって赤色、緑色および青色にそれぞれ発光する蛍光体層14R、14G、14Bが順次塗布されて形成されている。
【0026】
そして、走査電極6および維持電極7とアドレス電極12とが交差する位置に放電セルが形成され、表示電極8方向に並んだ赤色、緑色、青色の蛍光体層14R、14G、14Bを有する放電セルがカラー表示のための画素になる。
【0027】
次に、本発明の一実施の形態によるPDPの製造方法について説明する。
【0028】
まず、前面ガラス基板5上に、走査電極6および維持電極7を形成する。これらの走査電極6および維持電極7を構成する透明電極6a、7aと金属バス電極6b、7bは、フォトリソグラフィ法等を用いてパターンニングして形成される。透明電極6a、7aは薄膜プロセス等を用いて形成され、金属バス電極6b、7bは銀材料を含むペーストを所望の温度で焼成して固化している。
【0029】
その後、走査電極6、維持電極7を覆うように前面ガラス基板5上に誘電体ペーストをダイコート法等により塗布して誘電体ペースト層(誘電体材料層)を形成する。誘電体ペーストを塗布した後、所定の時間放置することによって塗布された誘電体ペースト表面がレベリングされて平坦な表面になる。その後、誘電体ペースト層を焼成固化することにより、走査電極6、維持電極7を覆う誘電体層9が形成される。なお、誘電体ペーストはガラス粉末等の誘電体材料、バインダおよび溶剤を含む塗料である。
【0030】
次に、誘電体層9上に酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層10を真空蒸着法により形成する。以上の工程により前面ガラス基板5上に所定の構成物(走査電極6および維持電極7からなる表示電極8、誘電体層9、保護層10)が形成され、前面板2が完成する。なお、上述した前面板2の各構成要素には、鉛を含む材料は用いられていない。
【0031】
一方、背面板3は次のようにして形成される。まず、背面ガラス基板11上に、銀材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や、金属膜を全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターンニングする方法等によりアドレス電極12用の構成物となる材料層を形成し、それを所望の温度で焼成することによりアドレス電極12を形成する。
【0032】
次に、アドレス電極12が形成された背面ガラス基板11上にダイコート法等によりアドレス電極12を覆うように誘電体ペーストを塗布して誘電体ペースト層を形成する。その後、誘電体ペースト層を焼成することにより下地誘電体層13を形成する。なお、誘電体ペーストはガラス粉末等の誘電体材料とバインダおよび溶剤を含んだ塗料である。
【0033】
その後、下地誘電体層13上に隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストを塗布して所定の形状にパターニングすることにより、隔壁材料層を形成した後、焼成することにより隔壁4を形成する。ここで、下地誘電体層13上に塗布した隔壁用ペーストをパターニングする方法としては、フォトリソグラフィ法やサンドブラスト法を用いることができる。
【0034】
そして、隔壁4を形成した背面ガラス基板11には、隣接する隔壁4間の下地誘電体層13上および隔壁4の側面に蛍光体材料を含む蛍光体ペーストを塗布し、焼成することにより蛍光体層14R、14G、14Bが形成される。以上の工程により、背面ガラス基板11上に所定の構成部材を有する背面板3が完成する。なお、上述した背面板3の各構成要素には、前面板2と同様に鉛を含む材料は用いられていない。
【0035】
引き続き、前面板2と背面板3とを、その周囲において、封着材料によって気密に接合(封着)する工程、および、放電空間17内部の排気および/または放電空間内部への放電ガスの導入を目的として、背面板3に設けた貫通孔を介して放電空間17と気密に連通するチップ管(排気管とも言われる)を、同じく封着材料によって背面板に接合する工程、を行う。
【0036】
図2に、本発明の一実施の形態によるPDPの製造方法における、前面板2と背面板3とをその周囲で封着する工程、および背面板3とチップ管20とを接合する工程、の際の、各要素の設置の状態を模式的に断面図で示す。この図2を用いて、本発明の一実施の形態によるPDPの製造方法における、前面板2と背面板3とをその周囲で封着する工程、および背面板3とチップ管20とを接合する工程について、以下、説明する。
【0037】
前面板と背面板とをその周囲において封着材料によって封着する工程、すなわち、気密に接合する工程においては、背面板3の周囲の所定の位置にそれぞれ封止部材22を配置形成し、前面板2の表示電極と背面板3のデータ電極が交差するように所定の位置でアラインメントしてから固定治具(図示せず)で押さえて固定する。ここで、封止部材22は、鉛成分を含まないフリットガラスとフィラーとを混合して有機溶剤で混練したペースト状の封着材料を、厚膜印刷やインクジェット、またはディスペンサーを備えた塗布装置などを用いて、背面板3の周囲の所定の位置に塗布形成した後、乾燥させたものである。
【0038】
ここで、フィラーとしては、耐熱性を有するもので、成型封止部材23の熱膨張係数を調整するとともに、成型封止部材23を構成するフリットガラスの流動状態をコントロールする目的に使用され、コージライト、フォルステライト、β−ユークリプタイト、ジルコン、ムライト、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化アルミニウム、石英ガラス等が特に好ましい材料として単独または混合して使用される。
【0039】
一方、背面板3とチップ管20とを接合する工程においては、背面板3の例えばコーナ部の所定の位置に設けた排気用の貫通孔21の中心と成型封止部材23の孔部24の中心とが概略一致するように、さらに、チップ管20の端部20aの開口部の中心と排気用の貫通孔21の中心とが概略一致するように、それぞれ位置合わせし、この位置合わせした状態を保ったまま、ずれが発生しないように固定治具(図示せず)で押さえて固定する。
【0040】
以上により、チップ管20は、チップ管ヘッド25に接続する側の端部20bを下方側とし、他方の側、すなわち背面板3と接合される側の端部20aで成型封止部材23の平板部23aを背面板3との間に挟んだ状態として固定する。
【0041】
ここで、成型封止部材23の概略形状を、図3に斜視図で、また図4に(a)上面図、(b)正面図、(c)側面図で示す。成型封止部材23は、非鉛のフリットガラスとフィラーを混合して溶剤で混線した材料を、型を用いて、図3、図4に示すように、孔部24を有する平板部23aと円筒部23bとを備える形状にプレス成型し、その後、溶剤を蒸発させるのに必要な温度で加熱焼成し、焼結固化することで形成したものである。なお、この場合のフィラーとしても、前面板と背面板との封着に用いる封着材料に加えるフィラーと同様の材料を用いることができる。
【0042】
以上、図2に示すような状態に各要素の配置を行い、この状態を保ったまま、封止部材22、成型封止部材23それぞれを、加熱溶融させた後に冷却固化させることで、図5に概略構成を断面図で示すように、封着部27および接合部26とし、前面板2と背面板3との封着、および背面板3とチップ管20との接合を行う。
【0043】
ここで、上述した本発明の一実施の形態によるPDPの製造方法において特徴的なことは、成型封止部材23の、円筒部23bの密度は平板部23aの密度より低く構成されていることである。
【0044】
すなわち、前述の通り、従来、成型封止部材を用いてチップ管を、排気装置に接続する側の端部を下方側として背面板に接合しようとした場合、非鉛のフリットガラスを主体とする封着材料で形成された成型封止部材を用いると「下垂」が発生してしまい、チップ管と背面板との接合強度などが不十分となってしまい、その結果、背面板に設けた貫通孔を介しての放電空間と排気管との連通の気密性に不具合が生じてしまう場合があり、また、この下垂は、図6に模式的に断面図で示すように、チップ管20の端部の開口部の中心と成型封止部材23の孔部24の中心とが極端にずれて位置合わせされた状態で、加熱・溶融される場合、図6中のA部において顕著となるという知見を、本発明者の検討により得ることができた。
【0045】
以上より、下垂の原因は以下のように考えられる。すなわち、成型封止部材23はその平板部23aをチップ管20により背面板3との間に挟まれた状態で支持されるが、チップ管20によって支持されない成型封止部材23の部分、つまり、平板部23aのチップ管20によって支持される領域の外側と円筒部23bの部分は、何らの支持もされない状態であり、この部分の重量が、成型封止部材23を加熱・軟化させた際の封着材料の表面張力に比べ大きい場合に下垂となってしまう、という考えである。
【0046】
そこで本発明の一実施の形態によるPDPの製造方法においては、成型封止部材として、孔部を有する平板部と円筒部とを備え、円筒部の密度は平板部の密度より低く構成されたものを用い、その上で、チップ管は、チップ管の排気装置に接続する側の端部を下方側とし、チップ管の他方側の端部で成型封止部材の平板部を背面板との間に挟んだ状態とし、この状態で成型封止部材を加熱溶融させた後、冷却固化させることで、チップ管と背面板とを接合している。
【0047】
すなわち、円筒部の密度を、平板部の密度より低く構成していることにより、チップ管によって支持されない成型封止部材の部分のうちの大部分を占める、円筒部の部分を軽量化し、もって、チップ管によって支持されない成型封止部材の部分の重量を成型封止部材の表面張力に比べて小さくすることを実現することで、軟化温度にまで加熱し溶融させた際に、下垂が発生してしまうということを抑制する、というものである。
【0048】
ここで、「下垂」の抑制には、成型封止部材全体の密度を低くすることによっても可能ではあるが、その場合は、特にチップ管の支持を受ける平板部での破壊強度が低くなってしまうことが問題となる。すなわち、成型封止部材の平板部はチップ管と背面板との間に挟み込まれた状態とすることから、平板部の密度をも低くしてしまうと、その部分で、割れ・クラックなどが生じ、確実な接合ができないという問題が発生してしまう場合があり、好ましくない。さらには、製造工程における成型封止部材のハンドリング時の強度確保の観点からも、成型封止部材全体の密度を低くすることは好ましくない。
【0049】
なお、成型封止部材の密度は、例えば成型条件(材料の充填量、プレス圧、焼結温度など)の選択により調節することが可能であり、上述したような成型封止部材のように個体内で異なる密度を持たせるためには、プレス圧を変化させ複数回プレスすることで実現可能である。
【0050】
すなわち、図4を用いて説明すると、封着材料を金型へ充填しプレス成型する際、まず、平板部23aの部分の封着材料を金型へ充填し初回のプレスし、その後、円筒部23bの部分の封着材料を金型へ充填し、平板部形成の際のプレス圧より弱い圧力で2回目のプレスすることで、孔部24を有する平板部23aと円筒部23bとを備え、円筒部23bの密度は平板部23aの密度より低く構成された成型封止部材23を得ることができる。
【0051】
なお、非鉛のフリットガラスでも、燐酸−酸化錫系および酸化バナジウム−酸化亜鉛−酸化バリウム系の非鉛の非晶質フリットガラスを用いた封着材料により形成された成型封止部材に比べ、酸化ビスマスを含む瑚珪酸系(Bi−B系)の非鉛の非晶質フリットガラスを用いた封着材料により形成された成型封止部材の方が、下垂が発生しにくい。これは、酸化ビスマスを含む醐珪酸系(Bi−B系)の非鉛の非晶質フリットガラスの方が、燐酸−酸化錫系および酸化バナジウム−酸化亜鉛一酸化バリウム系の非鉛の非晶質フリットガラスに比べ、表面張力が大きいことが原因として考えられる。
【0052】
よって、環境への配慮と下垂の発生しにくさの点から、非鉛のフリットガラスとして、酸化ビスマスを含む硯珪酸系(Bi−B系)の非晶質フリットガラスを使用することが望ましい。
【0053】
また以上の説明においては、、酸化ビスマスを含む剛珪酸系(Bi−B系)の非鉛の非晶質フリットガラスは、厳密にいえば、全く鉛を含まないことはなく、分析すると500PPM以下ではあるが、極微量レベルの鉛が検出される。しかしながら、欧州における環境に関するEC−RoHS指令の規定では1000PPM以下であれば鉛を含まないとみなすことができ、本発明の実施の形態においては「鉛を含まない」とか「非鉛」といった表現を用いている。
【0054】
また、以上の説明において、成型封止部材23は図4に示すような、平板部23aと円筒部23bとを備えた構成以外にも、図7に示すような、平板部23aと円筒部23bとを備えた構成であっても本発明の効果は同様に得られることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように本発明は、大画面、高精細のプラズマディスプレイ装置を提供する上で有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施の形態によるPDPの製造方法により製造されるPDPの概略構造を示す断面斜視図
【図2】本発明の一実施の形態によるPDPの製造方法における、前面板と背面板との封着工程、および背面板とチップ管とを接合工程の際の、各要素の設置の状態を模式的に示す断面図
【図3】成型封止部材の概略形状を示す斜視図
【図4】成型封止部材の概略形状を示す、(a)上面図、(b)正面図、(c)側面図
【図5】本発明の一実施の形態によるPDPの製造方法により製造されるPDPの、前面板と背面板との封着部、および背面板とチップ管との接合部を概略的に示す断面図
【図6】下垂の発生が顕著である構成を概略的に示す断面図
【図7】成型封止部材の概略形状を示す、(a)上面図、(b)正面図、(c)側面図
【図8】従来のPDPの製造方法における、前面板と背面板との封着工程、および背面板とチップ管とを接合工程の際の、各要素の設置の状態を模式的に示す断面図
【図9】成型封止部材の概略形状を示す、(a)上面図、(b)正面図、(c)側面図
【図10】従来のPDPの製造方法における、前面板と背面板との封着工程、および背面板とチップ管とを接合工程の際の、各要素の設置の状態を模式的に示す(a)(b)断面図
【符号の説明】
【0057】
1 プラズマディスプレイパネル(PDP)
2 前面板
3 背面板
4 隔壁
5 前面ガラス基板
6 走査電極
6a、7a 透明電極
6b、7b 金属バス電極
7 維持電極
8 表示電極
9 誘電体層
10 保護層
11 背面ガラス基板
12 アドレス電極
13 下地誘電体層
14R、14G、14B 蛍光体層
17 放電空間
20 チップ管
21 貫通孔
22 封止部材
23、123 成型封止部材
23a、123a 平板部
23b、123b 円筒部
24、124 孔部
25 チップ管ヘッド
26、126 接合部
27 封着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面板と背面板とを対向配置するとともにその周囲で封着することにより形成された放電空間に対し、背面板に設けた貫通孔を介して連通する管状のチップ管を、
封着材料により構成された成型封止部材を用いて背面板に接合する工程を備えるプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記成型封止部材は、孔部を有する平板部と円筒部とを備え、円筒部の密度は平板部の密度より低く構成され、
前記チップ管は、排気装置に接続する側の端部を下方側とし、他方の側の端部で成型封止部材の平板部を背面板との間に挟んだ状態とし、
この状態で成型封止部材を加熱溶融させた後、冷却固化させることで、チップ管と背面板とを接合するプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−135083(P2010−135083A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307171(P2008−307171)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】