説明

プラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】パネル強度を向上させたプラズマディスプレイパネルを実現することを目的とする。
【解決手段】本発明は、前面パネルを製造する工程と、放電セルを区画する隔壁を配した背面パネルを製造する工程と、前記前面パネルと前記背面パネルとを対向配置し、周囲を封着部材により封着する工程と、前記放電セル内を排気する排気工程とを有し、前記隔壁には結合部材を配し、前記封着工程における封着温度T0、前記結合部材の屈伏点T1、前記封着部材の屈伏点T2、および前記放電セル内の減圧を開始する温度T3とが、T0−T1≧30℃、T1<T2<T0、およびT1<T3≦T0の関係であることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示デバイスとしてのプラズマディスプレイパネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)は、高精細化、大画面化の実現が可能であることから、65インチクラスのテレビなどが製品化されている。近年、PDPは従来のNTSC方式に比べて走査線数が2倍以上のハイディフィニションテレビへの適用が進んでいるとともに、環境問題に配慮して鉛成分を含まないPDPが要求されている。
【0003】
PDPは、基本的には、前面パネルと背面パネルとで構成されている。前面パネルは、フロート法による硼硅酸ナトリウム系ガラスのガラス基板と、ガラス基板の一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極とバス電極とで構成される表示電極と、表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層とで構成されている。一方、背面パネルは、ガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のデータ電極と、データ電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色および青色それぞれに発光する蛍光体層とで構成されている。
【0004】
そして、前面パネルと背面パネルとは、表示電極とデータ電極とが互いに交差するように対向配置されるとともに、外周部を封止することにより密閉空間を形成し、その密閉空間に、キセノン(Xe)/ネオン(Ne)や、キセノン(Xe)/ネオン(Ne)/ヘリウム(He)などの放電ガスが充填されている。
【0005】
以上のような構成のPDPでは、前面パネルの表示電極と、背面パネルのデータ電極とが交差する各領域に発光の最小単位となる放電セルが構成されることとなる。
【0006】
近年、PDPにおいては、前面パネル、背面パネルに使用されるガラス基板として、板厚の薄いガラス基板が使用されるようになり、また高精細化に伴い、隔壁の幅が微細化されるに伴い、パネル強度の低下が課題となってきている。
【0007】
このような課題を解決するための手段の一例として、前面パネルと背面パネルとを隙間が生じないように密着させることにより、パネル強度を向上できることが知られており、またそのための一例として、背面パネルの隔壁の上面を前面パネルに接着させることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−204040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前面板と背面板を接着する際にはある程度の接着面積を確保しなければパネル製造工程・輸送工程での接着剥がれや、これに伴う表示不良を生じてしまう。また、接着面積が大きすぎると、封着時の排気不足になり駆動に要する各種電圧が大きくなってしまうという課題が存在する。
【0010】
本発明はこれらの課題を解決し、パネル強度を向上させた高品質な表示画像のPDPを実現する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、前面パネルを製造する工程と、放電セルを区画する隔壁を配した背面パネルを製造する工程と、前記前面パネルと前記背面パネルとを対向配置し、周囲を封着部材により封着する工程と、前記放電セル内を排気する排気工程とを有し、前記隔壁には結合部材を配し、前記封着工程における封着温度T0、前記結合部材の屈伏点T1、前記封着部材の屈伏点T2、および前記放電セル内の減圧を開始する温度T3とが、T0−T1≧30℃、T1<T2<T0、およびT1<T3≦T0の関係であることを特徴とするPDPの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前面パネルと背面パネルとが結合層により結合されることとなり、これにより前面パネルと背面パネルとが隙間が発生しないように密着させることができ、パネルの強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態におけるPDPの構造を示す斜視図
【図2】同PDPの放電セル構造を示す断面図
【図3】同PDPにおける要部構成を説明するための概略図
【図4】同PDPの製造工程を説明するための工程図
【図5】同PDPの製造工程において、封着工程、排気工程、放電ガス供給工程の温度プロファイルの一例を示す図
【図6】同PDPの製造工程における要部構成を説明するための概略図
【図7】同PDPの製造工程における要部構成を説明するための概略図
【図8】同PDPの画像表示部の構成を示す前面板側からみた平面図
【図9】同PDPの接着面積と接着強度、および駆動電圧の関係を示す図
【図10】同PDPの製造工程において、封着工程、排気工程、の温度プロファイルおよび圧力プロファイルの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)PDPの構造
図1は本発明の実施の形態におけるPDPの構造を示す斜視図、図2は放電セル構造を示す断面図である。PDPは、対向配置された前面パネルと背面パネルとの間に多数の放電セルが形成されている。
【0015】
前面パネルは、ガラス製の前面基板1上に1対の走査電極2と維持電極3とからなる表示電極4が互いに平行に複数対形成されている。この走査電極2および維持電極3は、走査電極2−維持電極3−維持電極3−走査電極2の配列で繰り返すパターンで形成されている。また、前面パネルの前面基板1上には、走査電極2および維持電極3よりなる一対の帯状の表示電極4とブラックストライプ(遮光層)5が互いに平行にそれぞれ複数列配置されている。前面基板1上には、表示電極4と遮光層5とを覆うようにコンデンサとしての働きをする誘電体層6が形成され、さらにその表面に酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層7が形成されている。
【0016】
ここで、前記走査電極2および維持電極3は、それぞれITO、SnO2、ZnO等の導電性金属酸化物からなる透明電極上にAgからなるバス電極を形成することにより構成されている。
【0017】
背面パネルは、ガラス製の背面基板8上に、複数の互いに平行なAgを主成分とする導電性材料からなるデータ電極9を形成し、そのデータ電極9を覆うように誘電体層10を形成するとともに、さらにその上に井桁状の隔壁11を形成し、そして誘電体層10の表面と隔壁11の側面とに、赤、緑、青各色の蛍光体層12を形成することにより構成されている。前記井桁状の隔壁11は、前記データ電極9に平行に形成される縦隔壁11aと前記データ電極9に交差する方向に形成される横隔壁11bとにより構成されている。
【0018】
そして、走査電極2および維持電極3とデータ電極9とが立体交差するように、前面パネルと背面パネルとが対向配置され、その外周部をガラスフリットなどからなる封着部材によって気密封着するとともに、封着されたPDP内部の放電空間13に、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)などの放電ガスを53kPa〜80kPaの圧力で封入することによりパネルが構成されている。ここで、走査電極2および維持電極3とデータ電極9とが対向する部分に放電セルが形成されている。なお、本発明においては、放電空間13に封入する放電ガスは、放電ガス中にキセノンの濃度が15%以上30%以下の体積%で含まれるように混合した放電ガスを用いている。
【0019】
ここで、本発明においては、前面パネルの誘電体層6は、粒径が100nm以下のシリカ微粒子を含む誘電体材料により構成するとともに、膜厚が20μm以下で比誘電率εが2以上4以下となるように構成している。
【0020】
すなわち、シロキサン高分子系の有機溶剤に、粒径が100nm以下、例えば粒径が8nm以上20nm以下で比誘電率εが4程度のシリカ微粒子を分散させた誘電体材料インク、または水系溶液に粒径が100nm以下、例えば粒径が8nm以上20nm以下で比誘電率εが4程度のコロイダルシリカなどのシリカ微粒子を分散させた誘電体材料インクを用い、表示電極4と遮光層5とを形成した後、前記表示電極4と遮光層5を覆うように前記前面基板1上にダイコート法などにより塗布し、その後乾燥および焼成を行うことにより膜厚が20μm以下で比誘電率εが2以上4以下の誘電体層6を形成している。
【0021】
ところで、本発明のように、PDPの前面パネルにおいて、表示電極4のバス電極部分の膜厚が約5μm程度であり、その表示電極4を覆うように形成する誘電体層6の膜厚を20μm以下で薄く形成すると、図3に示すように、前面パネルの誘電体層6およびその誘電体層6上に形成した保護層7の表面が表示電極4部分で盛り上がり、前面パネルの表面には、表示電極4に対応するように凹凸が形成されてしまう。なお、図3には、保護層7を省略して示している。
【0022】
このように凹凸が形成された前面パネルと背面パネルとを重ね合わせてパネルを構成すると、背面パネルのデータ電極9に平行に形成される列方向の隔壁11aと前面パネルとの間に隙間ができ、これによりパネル強度が低下してしまう。
【0023】
そこで、本発明においては、図3に示すように、背面パネルの隔壁11において、データ電極9に平行に形成される列方向の前記縦隔壁11aの最上部に前記前面パネルに結合するための結合層20を設けている。前記結合層20は、前記前面パネルと背面パネルとを前記封着部材であるガラスフリットにより封着する際の封着温度より低い屈伏点を有するとともに、軟化点が封着温度以上の特性を有し、かつBiを含有するガラス材料により構成している。なお、前記結合層20は、縦隔壁11aのみに設けるのではなく、横隔壁11bにも設けてもよい。
【0024】
すなわち、少なくとも前記縦隔壁11aの最上部に前記前面パネルに結合するためのガラス材料からなる結合層20を設け、前記前面パネルと背面パネルとを封着部材であるガラスフリットにより封着する際に、前記結合層20を構成するガラス材料の屈伏点以上で軟化点以下の封着温度を加えるとともに、前記前面パネルと背面パネルに全面に亘って均一に圧力を印加することにより前記結合層20を前面パネルに結合するものである。なお、前記前面パネルと背面パネルに全面に亘って均一に圧力を印加する方法としては、前面パネルと背面パネルとを封着部材により封着する際に、前記前面パネルと背面パネルとの間を減圧することにより前面パネルと背面パネルに全面に亘って均一に圧力を印加することが可能である。
【0025】
(2)PDPの製造方法
図4はPDPの製造工程を示すフローチャートであり、図4に示すように、PDPは、前面パネル作成工程及び背面パネル作成工程と、背面パネル作成工程により作成した背面パネルの画像表示領域外部に封着部材であるガラスフリットを塗布し、その後ガラスフリットの樹脂成分等を除去するために350℃程度の温度で仮焼成するフリット塗布工程と、前面パネル作成工程で作成した前面パネルとフリット塗布工程を終了した背面パネルとを貼付けて封着する封着工程と、この後放電空間内のガスを排気する排気工程と、この後真空排気されたパネル内部にNeおよびXeを主成分とする放電ガスを供給する放電ガス供給工程を経てパネルが完成される。
【0026】
図5は本発明の実施の形態に用いる封着工程、排気工程、放電ガス供給工程の温度プロファイルの一例を示す図である。すなわち、図5において、室温から封着部材であるガラスフリットの軟化点まで上昇させる期間(期間1)、軟化点から封着温度まで上昇させ、一定時間保持した後、軟化点まで低下させる期間(期間2)(以上、封着工程)、軟化点温度付近またはそれよりやや低い温度で一定時間保持した後、室温まで低下させる期間(期間3:排気工程)、室温まで低下した後、パネルの放電空間に放電ガスを供給する期間(期間4:放電ガス供給工程)である。
【0027】
ここでガラス材料の屈伏点とは、熱膨張曲線において見掛け上膨張が停止する温度と考えられており、約1010〜1011dPa・sの粘度に相当する温度とみなされている。
【0028】
また、ガラス材料の軟化点とは、ガラスが自重で顕著に軟化変形しはじめる温度で、約107.6dPa・sの粘度に相当する温度とみなされている。本実施の形態におけるガラスフリットの物性温度は後述する。
【0029】
また、封着温度とは、前面パネルと背面パネルとが封着部材であるガラスフリットにより封着される状態となる温度であり、本実施の形態における封着温度は後述する。
【0030】
図6は、前記背面パネル作成工程により作成した本発明による背面パネルを示す図であり、背面パネルは、ガラス製の背面基板8上に、複数の互いに平行なAgを主成分とする導電性材料からなるデータ電極9を形成し、そのデータ電極9を覆うように誘電体層10を形成するとともに、さらにその上に井桁状の隔壁11を形成した構成である。この隔壁11は、誘電体層10上に感光性のガラス材料を塗布した後、露光・現像工程を行うことにより井桁形状に成形し、その後、焼成工程を行うことにより、形成されている。また、隔壁11の縦隔壁11aの最上部には、Biを含有するガラス材料からなる結合層20が形成されている。
【0031】
ここで、上述したように、結合層20を構成するガラス材料としては、屈伏点が前記ガラスフリットにより封着する際の封着温度以下で、軟化点が前記ガラスフリットにより封着する際の封着温度以上の特性を備えている。また、隔壁11に使用するガラス材料は、その材料の屈伏点及び軟化点が封着温度以上となる特性を有するものである。
【0032】
このような結合層20を有する背面基板を用い、背面基板の画像表示領域外部に封着部材であるガラスフリットを塗布し、その後ガラスフリットの樹脂成分等を除去するために350℃程度の温度で仮焼成するフリット塗布工程を行った後、図5に示すような温度プロファイルで、前面基板と背面基板とを貼付けて封着する封着工程を行うことにより、図7に示すように、背面基板の結合層20が前面パネルに結合される。なお、前面基板と背面基板とを封着部材であるガラスフリットにより封着する際には、前記結合層20を構成するガラス材料の屈伏点温度以上で軟化点温度以下の封着温度を加えるとともに、前記前面基板と背面基板の間を減圧して、全面に亘って均一に圧力を印加することにより、結合層20を前面基板に隙間が生じることなく、結合することができる。
【0033】
ここで、封着部材としては、酸化ビスマスや酸化バナジウムを主成分としたガラスフリットが望ましい。この酸化ビスマスを主成分とするガラスフリットとしては、例えば、Bi23−B23−RO−MO系(ここでRは、Ba、Sr、Ca、Mgのいずれかであり、Mは、Cu、Sb、Feのいずれかである。)のガラス材料に、Al23、SiO2、コージライト等酸化物からなるフィラーを加えたものを用いることができる。また、酸化バナジウムを主成分とするフリットとしては、例えば、V25−BaO−TeO−WO系のガラス材料に、Al23、SiO2、コージライト等酸化物からなるフィラーを加えたものを用いることができる。
【0034】
結合層部材としては、組成として酸化ビスマスを含むガラスフリットが望ましい。この酸化ビスマスを含むガラスフリットとしては、例えば、Bi23−B23−ZnO−SiO2−RO系ガラス粉末を用い、これを例えば感光性のペーストとし、隔壁11上に塗布後、露光・現像によって所望の形状に形成することができる。また他の例として、Bi23−B23−ZnO−SiO2−RO系ガラス粉末を用い、これを印刷用のペーストとし、隔壁11上にシルク印刷することによって所望の形状に形成することができる。この酸化ビスマスを含むガラス材料、例えば、Bi23−B23−ZnO−SiO2−RO系ガラス粉末を用いた場合、そのガラス材料の屈伏点温度は、487℃から489℃に存在し、軟化点温度は530℃程度である。
【0035】
次に、前記結合層20を構成するガラス材料として、封着部材により封着する際の封着温度より低い屈伏点を有しかつ封着温度より高い軟化点を有するガラス材料により構成している理由について説明する。
【0036】
ガラス基板同士の封着(接着)は、一般に封着部材の軟化点温度以上で行う。ところがPDPの表示部内で結合層部材の軟化点温度以上で接着させると、接着層部材であるガラス層は所謂軟化流動領域にあり、接着層部材がセル内に流入したり、接着層からのガス放出量の増加により、セルの放電電圧が上昇したり輝度が低下すると言った不具合が発生していた。
【0037】
そこで、本発明者らが検討した結果、接着時に前面基板と背面基板とに全面に亘って均一に圧力を印加することにより、接着層材料の屈伏点以上の温度で接着可能であることを見出した。接着層材料の屈伏点以上、軟化点以下の所謂焼結領域にて電圧上昇や輝度低下と言った不具合を生ずることなく安定に接着することができた。
【0038】
このような本発明によれば、前面パネルと背面パネルとが結合層20により結合されることとなり、これにより前面パネルと背面パネルとが隙間が発生しないように密着させることができ、パネルの強度を向上させることができる。
【0039】
次に本発明の実施形態における前面パネルと背面パネルとの結合層20での接着面積について説明する。図8には、本発明の実施形態におけるPDPの画像表示部の構成を示す前面基板1側からみた平面図を示している。走査電極2と維持電極3は、マトリクス表示の各ラインにおいて、放電ギャップ50を挟んで隣接するように列方向に交互に配列されている。また、隔壁11によって区画され表示電極4とデータ電極9とが直交する部分を中心とした方形の領域により、単位発光領域としての放電セル51を構成している。
【0040】
隣接する放電セル間には、非放電領域52を形成し、前面パネルの領域にはコントラストを向上させる目的のブラックストライプ5が形成されている。同図に示すように、放電セル51は、当該放電セルの上下左右に位置する隣接放電セル(画像表示側からの位置)との、非放電領域52と隔壁11の中心位置で区画される。
【0041】
本発明の実施形態では放電セル51の面積をSと定義した時、前面パネルと背面パネルとが結合層20において接着している面積が、Sに対して10%〜30%であることを特徴としている。図8の平面図において接着している領域は、接着領域53で示している。なお同図においては、当該放電セル51の周辺のみ接着領域53を図示しているが、それ以外の隣接放電セルにおいても同様に接着領域が存在する。
【0042】
ここで、放電セル51の領域内における前面パネルと背面パネルとの接着面積をRとする。図9に放電セル51の面積Sと面積Rとの比R/Sに対する、接着強度の関係、および点灯に必要な駆動維持電圧の関係を示す。
【0043】
同図に示すように、前面パネルと背面パネルの接着強度は、接着面積に応じて線形的に向上していくことが分かる。なお接着強度に応じてPDPの強度も上がっていくことが確認されている。
【0044】
しかしながら、接着面積が小さい比R/S、10%以下の領域では製造段階での搬送過程で、振動に対する十分な接着強度が得られていないことに依る接着剥がれが生じることが分かった。前面パネルと背面パネルの隔壁とが接着して各放電セルが隔離された状態と、接着せずに隣接放電セル間に隙間がある状態とでは、放電特性が異なる。つまり、上記のようにPDP面内に部分的な剥がれを生じると、電圧特性が面内で異なってくるため表示不良となってしまう。
【0045】
また、逆に接着強度を高くするために接着面積を増大させすぎると、同図に示すように、駆動に必要な維持電圧が30%を越えるあたりから急激に増加することが明らかになった。これは接着面積の増大により隣接放電セル間の隔離が進行し、封着時に十分な排気ができないことに起因するものと考えられる。これらの事から、接着面積には最適範囲がある事を見出し、その値は10%から30%の間である事が望ましい。
【0046】
(3)封着排気工程
ここから本発明の実施形態における封着排気工程について説明する。図10は本発明の実施形態における封着排気工程の温度プロファイル(実線)、およびPDP内圧力プロファイル(破線)である。封着温度まで上昇してからの変化を拡大して示している。本発明の実施形態では、封着温度(T0)、結合部材を構成するガラス材料の屈伏点温度(T1)、封着部材のガラスフリットの屈伏点(T2)、および減圧開始温度(T3)の関係を規定しており、T0−T1≧30℃、T1<T2<T0、およびT1<T3≦T0、としている。これにより、結合層20と前面パネルとの接着をより強固にすることができる。なお同図ではT3=T0とした場合を示している。
【0047】
ここで結合層の屈伏点の測定方法について説明する。まず、素ガラス上にMgO保護膜を蒸着した試料基板aと、上記背面パネルと同様の構成を有した試料基板bとをそれぞれ基板面積5mm×5mmに切り出す。それら試料を保護膜と隔壁上層の結合層とが接触するように配置し、加熱炉内にて両試料基板側から一定の荷重をかける。そして試料基板間の変位量と温度との関係を測定し、その変位量が増加から減少に変化する温度を測定する。これが結合層・結合部材を構成するガラス材料の屈伏点(T1)となる。屈伏点の測定は、試料基板間の変位量と温度との関係において、変曲点付近の接線を見積もることにより行う。
【0048】
次に、上記の温度範囲とした実験結果について説明する。表1は封着温度T0と、結合層ガラス材料の屈伏点T1の関係を検討した結果を示す。
【0049】
【表1】

【0050】
T1を475℃一定とし、T0を490℃、495℃、500℃、505℃、510℃と条件を変え、PDPを作成し信頼性を評価した。信頼性評価として鋼球落下試験、およびPDP差圧試験とを行った。鋼球落下試験は、500gの鋼球を所定の高さから落下させ、接着が剥れる高さおよびPDPが割れる高さをPDP強度とした。PDP差圧試験とは、上記条件で作成した42インチPDPを減圧可能なチャンバー内に設置し、PDPを点灯した状態でチャンバー内の圧力を減圧していく。このとき、PDP内ガス圧P1、チャンバー内圧P2に対して、結合層の剥がれが生じ点灯状態が変化する圧力P1−P2を、PDP接着強度圧力Pとした。このPが大きければ、結合層がより強固に前面パネルと背面パネルとを結合していることになる。
【0051】
この結果、同表に示すように、T0−T1≧30℃となる条件での封着温度とすることで、鋼球落下試験およびPDP差圧試験が良好な結果を示すことがわかった。
【0052】
そして表2に、結合層ガラス材料の屈伏点T1と封着層ガラス材料の屈伏点T2との関係を検討した結果を示す。
【0053】
【表2】

【0054】
同様にT1を475℃一定とし、さらにT0を505℃一定とし、T2を470℃、490℃と条件を変え、PDPを作成し信頼性を評価した。信頼性評価としては、上記条件で作成したPDPに対し、梱包落下試験を施し、その後の隔壁チッピングによる放電セルの不灯数を評価した。評価数はPDPを10セットの不灯数の合計である。
【0055】
この結果によると、T2=470℃では、チッピングによるパネル不灯が増加した。しかし、T2=490℃では、不灯の発生は抑えられる。つまり、T1<T2<T0とすることで、PDPの不灯の発生を抑制し、信頼性を向上することができる。
【0056】
そして、結合層ガラス材料の屈伏点T1と減圧開始温度T3との関係は次のようになる。まず、上記のように、本発明の実施形態の構成を有するPDPを作成するためには、結合層20のガラス材料屈伏点T1よりも高い温度で封着する必要がある。これは結合層20と前面パネルが接着するためである。
【0057】
さらにPDP内部の減圧を開始する温度T3もT1より高くする必要がある。このようにすることによって、PDP内部を減圧することによって、PDP全面にほぼ均一の圧力をかけることが可能となり、この状態で結合層の粘度が低下しているため、結合層と前面パネルとの接着が均一に行われることとなる。つまり、T1<T3≦T0とすることで、PDPの結合を面内均一とすることができる。
【0058】
以上の検討結果から、本発明の実施形態では、T0−T1≧30℃、T1<T2<T0、およびT1<T3≦T0としている。そしてこの条件にてPDPを作成することにより、放電ガスの高ガス圧化およびパネル強度の向上が可能となるため、PDP高効率化およびTVセット構成のコスト削減効果をもたらすことができる。
【0059】
なお、保護膜7を酸化マグネシウムMgOおよび酸化カルシウムCaOとで形成したPDPに対して、上記PDP差圧試験を施したところ、同一作成条件に対して、耐圧が1.2倍となることがわかった。これはCaを含むことにより、結合層と保護膜との反応が促進したためと考えられる。
【0060】
以上のように本発明は、前面パネルと、放電セルを区画する隔壁を有した背面パネルとを、対向配置し、周囲を封着したプラズマディスプレイパネルであって、前記前面パネルと前記背面パネルとは、前記隔壁の上部において接着されており、前記放電空間を前面パネルまたは背面パネルに投影した面積に対して、前記接着されている面積は、10%以上、30%以下であることを特徴とする。これによって、製造工程・市場で剥がれ等による不良発生を抑えるに必要な接着性を確保するとともに、駆動電圧の上昇を抑えて、パネル強度の高い高品質なPDPを実現する事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように本発明は、パネル強度を向上させたプラズマディスプレイ装置を実現する上で有用な発明である。
【符号の説明】
【0062】
1 前面基板
2 走査電極
3 維持電極
4 表示電極
6 誘電体層
6a シリカ微粒子
8 背面基板
9 データ電極
11 隔壁
11a 縦隔壁
11b 横隔壁
12 蛍光体層
13 放電空間
20 結合層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面パネルを製造する工程と、放電セルを区画する隔壁を配した背面パネル製造する工程と、前記前面パネルと前記背面パネルとを対向配置し、周囲を封着部材により封着する工程と、前記放電セル内を排気する排気工程とを有し、
前記隔壁には結合部材を配し、
前記封着工程における封着温度T0、前記結合部材の屈伏点T1、前記封着部材の屈伏点T2、および前記放電セル内の減圧を開始する温度T3とが、T0−T1≧30℃、T1<T2<T0、およびT1<T3≦T0の関係であることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−151023(P2012−151023A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9629(P2011−9629)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】