プラズマディスプレイパネル及びプラズマディスプレイパネルの製造方法
【課題】保護膜を劣化させることなく、プラズマディスプレイパネルの密封を行う手段を提供する。
【解決手段】シール層101の表示面側に突起部107を設ける。突起部107はゲッター層107a及び隔壁状構造材107bを含んで構成される。ゲッター層107aは保護膜102と同じ素材で構成される。シール層101溶着時に発生する二酸化炭素及び水蒸気をゲッター層107aに吸着させると共に、隔壁状構造材107bにより物理的に表示面へのガス流入を防ぐ。
【解決手段】シール層101の表示面側に突起部107を設ける。突起部107はゲッター層107a及び隔壁状構造材107bを含んで構成される。ゲッター層107aは保護膜102と同じ素材で構成される。シール層101溶着時に発生する二酸化炭素及び水蒸気をゲッター層107aに吸着させると共に、隔壁状構造材107bにより物理的に表示面へのガス流入を防ぐ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,表示装置に用いるプラズマディスプレイパネルの製造方法,及びその製造方法に適したプラズマディスプレイパネルの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP)は、前面基板と背面基板を対向してはり合わせ、基板周辺でシール層を用いて封着し、内部に放電ガスを封入した構成をとる。
【0003】
通常のPDPは、前面側のガラス基板に表示電極となる維持電極対、及び放電バス電極を有し、背面側のガラス基板にアドレス電極を有する3電極の面放電型構造をとる。
【0004】
通常のPDPでは、放電を仕切るための隔壁(リブ)よりも厚くシール層を形成し、前面側ガラス基板、背面側ガラス基板を位置合わせして重ねる。その後に、パネル全体を加熱することでシール層を軟化させ、前面側ガラス基板と背面側ガラス基板を封着してパネルを形成する。
【0005】
図1は、一般的なプラズマディスプレイパネルを表示面から見た図である。また、図2は、図1のa−a´断面を矢印方向から見た図である。なお本図では、前面側ガラス基板の保護膜の下に形成されている誘電体層、及び電極は省略している。
【0006】
本図では、前面側ガラス基板1003と背面側ガラス基板1004の間を、低融点ガラスを主成分とするシール層1001で密閉することで、気密放電空間を形成している。個々の発光セルは、背面側ガラス基板1004に設けられたリブ1005で仕切られる。
【0007】
リブの頂面と対向する前面側ガラス基板1003には図示しない電極、及び誘電体層が配置される。この電極を保護するために、保護膜1002が設けられる。この一般的なプラズマディスプレイパネルを形成する際には、加熱によりシール層1001を軟化して行う。この加熱方法の一例として、特開2005−347200号公報(特許文献1)では、平面型画像表示装置の2枚の基板間に配置されたスペーサの固定の例として、レーザ加熱装置等による固定部材を加熱溶融してスペーサと基板を接着する固定手法が開示されている。
【0008】
シール層の主成分である低融点ガラスの加熱溶融時には二酸化炭素、水等のガス1101が発生するが、これらは排気管1006から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−347200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしシール層を加熱溶融させる封着方法では、シール層1001加熱時にその主成分である低融点ガラス中に含まれる水、二酸化炭素が放出され、保護膜1002に吸着され、保護膜1002が汚染される虞があった。結果、保護膜材料の種類によっては保護膜1002が本来の機能を果たさず、プラズマディスプレイパネルないしはそれを用いた製品の性能が低下する。
【0011】
本発明の目的は、保護膜を劣化させることなく、プラズマディスプレイパネルの密封を行う手段を提供することにある。
【0012】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0014】
本発明の代表的な実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルは、前面側基板と、背面側基板と、前面側基板と背面側基板との距離が一定となる様に前面側基板と背面側基板との間の放電空間を仕切る複数の支持用リブと、前面側基板と背面側基板との間の放電空間に放電ガスを気密密閉するためのシール層と、を有し、シール層の内周に沿った位置に隔壁状の突起部(以下、隔壁状構造材と表記する)を有し、該突起部表面、若しくは該突起部分の対向する部分にガス吸着層を有することを特徴とする。
【0015】
このプラズマディスプレイパネルにおいて、シール層は嵩上げ用リブにより嵩上げされていることを特徴としても良い。
【0016】
このプラズマディスプレイパネルにおいて、嵩上げ用リブと隔壁状構造材が背面側基板に設けられ、嵩上げ用リブと隔壁状構造材が支持用リブと同時に形成され、その高さが前記支持用リブの高さと略等しい、又は支持用リブより低いことを特徴としても良い。
【0017】
また、このプラズマディスプレイパネルにおいて、嵩上げ用リブと隔壁状構造材が前面側基板に設けられ、嵩上げ用リブと隔壁状構造材が同時に形成され、隔壁状構造材表面にガス吸着層が構成されることを特徴としても良い。
【0018】
このプラズマディスプレイパネルにおいて、隔壁状構造材が平面視で破線状、又は点線状に配置されることを特徴としても良い。
【0019】
このプラズマディスプレイパネルにおいて、ガス吸着層が前面側基板の保護膜と同一の素材で形成されていることを特徴としても良い。
【0020】
このプラズマディスプレイパネルにおいて、ガス吸着層が前面側基板の保護膜上に形成された電子供給層であることを特徴としても良い。
【0021】
このプラズマディスプレイパネルにおいて、更にガス吸着層の部分に局所加熱時に与えられる熱又は光を吸収する吸収層を有することを特徴としても良い。
【0022】
これらのプラズマディスプレイパネルの製造方法において、シール層の封着中に該プラズマディスプレイパネル内にガスを導入し、該プラズマディスプレイパネルのパネル内圧を該プラズマディスプレイパネルのパネル外の圧力より高くすることを特徴としても良い。
【0023】
これらのプラズマディスプレイパネルの製造方法において、シール層を局所加熱方式により前面側基板と背面側基板とを封着することを特徴としても良い。
【0024】
これらのプラズマディスプレイパネルの製造方法において、封着後にガス吸着層に吸着したガスを脱離、排気することを特徴としても良い。
【発明の効果】
【0025】
本発明のプラズマディスプレイパネルにより、製造時に発生するガス吸着による保護膜の劣化を抑制し、プラズマディスプレイパネルの設計時に想定する性能を十分発揮させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】一般的なプラズマディスプレイパネルを表示面から見た図である。
【図2】図2は、図1のa−a´断面を矢印方向から見た図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルを表示面から見た図である。
【図4】図3のb−b´断面を矢印方向から見た図である。
【図5】シール層の形成のバリエーションを表す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルの断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルの断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に関わる前面側ガラス基板の詳細を表す断面図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルの断面図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルを表示面から見た図である。
【図11】図10のc領域の拡大図である。
【図12】本発明の第6の実施の形態に関わる封着排気工程のプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明する。しかし、特に明示した場合を除き、それは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部又は全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合、及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものでなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0028】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素は、特に明示した場合、及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合を除き、必ずしも必須のものでないことは言うまでもない。
【0029】
以下、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0030】
(第1の実施の形態)
図3は、本発明の第1の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルを表示面から見た図である。また、図4は、図3のb−b´断面を矢印方向から見た図である。なお本図でも、前面側ガラス基板の保護膜の下に形成されている誘電体層、及び電極は省略している。また、図5はシール層101の形成のバリエーションを表す図である。
【0031】
本実施の形態でも、前面側ガラス基板103と背面側ガラス基板104の間を、シールガラスを主成分とするシール層101で密閉する。
【0032】
シール層101は、シール材料(無鉛等の低融点ガラスフリットやフィラー等)により構成される。プラズマディスプレイパネル内に導入される放電ガスの外部への漏出や大気の流入を防ぐために封着(ここではレーザ光の照射による)後は気密性を有することが必須となる。通常は、樹脂等のバインダ成分と溶剤も含むシールペースト材料を塗布し、乾燥と仮焼成を行って溶剤とバインダ成分を除去した状態で封着工程を行う。
【0033】
本発明の実施の形態では、シール層101はシール層101aと嵩上げ用リブ101bを含んで構成している。
【0034】
シール層101aは、上述のシール材料からなる加熱による溶融対象である。
【0035】
一方、嵩上げ用リブ101bは、シール層101aに用いるシール材料を減らすための嵩上げ用の構造体である。シール材料自体が減れば、シール材料の加熱によって発生する二酸化炭素、水等のガス111の量が減ることを目的としたものである。
【0036】
ただし、製品としてのプラズマディスプレイパネルに気密性があれば良いのであって、シール層101aのみを含み、嵩上げ用リブ101bは存在しない構成としても良い。これは図5(d)で述べる。
【0037】
図5(a)は、嵩上げ用リブ101bがガスバリア性を有する場合の模式図である。嵩上げ用リブ101bがガスバリア性を有する場合には、嵩上げ用リブ101bの頂面にのみシール層101aを形成するだけでよい。
【0038】
一方、図5(b)及び(c)は、嵩上げ用リブ101bがガスバリア性を持たない場合の模式図である。嵩上げ用リブ101bがガスバリア性を持たない場合には、嵩上げ用リブ101bの頂面から背面側ガラス基板104にいたるまでの側面(嵩上げ用リブ101bの片側面でも、図5(c)のように両側面でも良い)にシール層101aを形成する。シール層101aは、バインダ成分を除去する仮焼成後において、図5(b)、又は図5(c)の形状になっていれば良い。シール材料を塗布する時点でそのように塗布しても良いし、図5(a)の様にリブ頂面付近にシール材料を塗布しておいて仮焼成時に流動させて図5(b)、又は図5(c)の様に形成しても良い。
【0039】
また、嵩上げ用リブ101bを省略し、シール層101aのみでシール層101を構成しても良い。図5(d)はシール層101aのみでシール層101を構成した図である。
【0040】
前面側ガラス基板103は表示電極となる維持電極対及びバス電極を形成した後、誘電体層や保護膜102を形成したものである。
【0041】
保護膜102は、表示電極となる維持電極対、及びバス電極、誘電体層を保護する保護膜である。保護膜102の材料としてはCaOやSrO、SrCaO等が適用できる。この保護膜102が、製造時に発生するガスによって劣化するのを防ぐことが本発明の目的である。この保護膜102上にはMgOの粉体等による電子供給層を更に設けても良い。
【0042】
これに加え、本実施の形態では、内外2列の突起部107が前面側ガラス基板103に設けられている。
【0043】
突起部107は、加熱時にシール層101aから発生するガスが保護膜102に接触するのを物理的に防ぐための突出部であるとともに、化学的にも保護膜102を防護するものである。図3及び突起部107の目的からも明らかな通り、突起部107はシール層101の内周部に配置される。
【0044】
突起部107は、ゲッター層107a及び隔壁状構造材107bを含んで構成される。
【0045】
ゲッター層107aは、シール層101から発生するガスを吸着することで保護膜102を化学的に保護する。ゲッター層107aの材料は保護膜102と同じ材料を用いる。すなわち、ゲッター層107aにガスを反応させることで無害化することを図っている。なお、ここではゲッター層107aと保護膜102に同じ素材を用いることを考えているが、発生するガスに対して、保護膜102よりもガス吸収性の良いものを用いてゲッター層107aを構成しても良い。また、保護膜102上に設けられる電子供給層をゲッター層107aとしても良いし、ゲッター層107aに与えても良い。
【0046】
隔壁状構造材107bは、保護膜102へのガスの流入を物理的に防ぐと共に、表示領域外周を伝って排気口106からガスを外部に排気するための流路としての機能を持つ壁である。この隔壁状構造材107bを設けることで、ゲッター層107aの表面積が大きくなり、反応を促すことが可能となる。また、隔壁状構造材107bと嵩上げ用リブ101bを同時に形成することで工程数の増加を抑制することが可能となる。
【0047】
なお、突起部107は、その内外の排気経路と考えた場合に、排気経路のコンダクタンスが低くなるような隔壁であることが望ましい。
【0048】
背面側ガラス基板104は、アドレス電極及び誘電体層等を形成した後に、支持用リブ105をサンドブラスト法等で形成したものである。
【0049】
支持用リブ105は、個々の発光セルを分離するためのリブである。支持用リブ105は背面側ガラス基板104の表面にサンドブラスト法等で形成される。
【0050】
排気口106はシール層101で発生したガスやパネル内のガスを外部に排気するための排気口である。本実施の形態では排気口106は背面側ガラス基板104に存在すると想定しているが、前面側ガラス基板103に設けても良い。シール層101による封着固定、及び放電ガスの封入が終わると排気口は密封される。
【0051】
なお、図3上では、排気口106は突起部107直下にあるように記載されている。しかし、シール層101と突起部107の間、若しくは複数ある突起部107の間に排気口106を設けても良い。
【0052】
以上のように構成することで、加熱時にシール層101から発生するガスを保護膜102に到達させないことが可能となる。また、シール層101から発生するガスが保護膜102に到達したとしても、ゲッター層107aにおいて無害化が進んでいるため、実質的な影響を抑え込むことが可能となる。
【0053】
(第2の実施の形態)
次に本発明の第2の実施の形態について図を用いて説明する。
【0054】
第1の実施の形態では、前面側ガラス基板103に嵩上げ用リブ101bと隔壁状構造材107bを形成した。
【0055】
これに対し本実施の形態では、背面側ガラス基板104上に嵩上げリブ101bと隔壁状構造材107bを設ける点で特徴がある。
【0056】
図6は、本発明の第2の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルの断面図である。
【0057】
この図からも明らかな通り、本実施の形態の嵩上げ用リブ101bと隔壁状構造材107bは背面側ガラス基板104に設けられる。
【0058】
また本実施の形態では、隔壁状構造材107b上にはゲッター層107aは塗布されない。第1の実施の形態のゲッター層107aに代えて、保護膜102を隔壁状構造材107bと対向する位置まで広げて形成する。
【0059】
このようにすることで、シール層101内周部の隔壁状構造材107bを背面側ガラス基板104の支持用リブ105と同時に形成すること、及びゲッター層107aの形成工程を省略できる。これにより工程数の増加を抑制することが可能となる。
【0060】
また、表示領域の支持用リブ105の幅よりも嵩上げ用リブ101bの幅を太くすることで高さ方向の焼成収縮率が大きくなって低いリブを形成できる。結果として嵩上げ用リブ101bとシール層101aの高さの和で支持用リブ105と略同じ高さにすることが可能となる。
【0061】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について図を用いて説明する。
【0062】
図7は本発明の第3の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルの断面図である。
【0063】
この図7と、第2の実施の形態にかかわる図6との相違点は、隔壁状構造材107bに対向する位置の保護膜102に積層する形でガス脱離用の熱吸収層108を設ける点にある。
【0064】
このガス脱離用の熱吸収層108は、加熱することによりこれらのシール層101aから発生し、隔壁状構造材107bに対向する位置の保護膜102付近に吸着されたガスを保護膜102から脱離させるための熱、若しくはその熱を発生するために用いられるレーザ光等の光を吸収する層である。なお、ここでいう「加熱」は摂氏350〜400度を想定している。この温度では真空雰囲気下において酸化マグネシウムMgOから二酸化炭素CO2、水H2Oを脱離でき、また酸化カルシウムCaOから水H2Oを脱離できる十分な温度だからである。ただし、厳密にこの温度で無ければならないわけではなく、上記脱離機能を発揮できる温度であれば良い。
【0065】
この加熱により、隔壁状構造材107bに対向する位置の保護膜102に吸着したガスを脱離する点が本実施の形態の特徴である。すなわち、シール層101封着後のパネル内排気工程で内部に滞留するガスを排気口106から真空引きする際に、このガス脱離用の熱吸収層108を脱離機能が発揮できる温度まで加熱する。このようにすると、外部及びガス脱離用の熱吸収層108により加熱された保護膜102から二酸化炭素、水等が脱離され、これらのガスも排気口106から外部に排出される。
【0066】
図8は、本発明の第3の実施の形態に関わる前面側ガラス基板103の詳細を表す断面図である。
【0067】
この前面側ガラス基板103は、ガラス板201、電極202、誘電体層203、保護膜102及びガス脱離用の熱吸収層108を含んで構成される。
【0068】
ガラス板201は、前面側ガラス基板103の構造部材となるほぼ透明なガラス板等である。このガラス板201を通して製品としてのプラズマディスプレイは映像を表示することになる為、ガラス板201の透過性はきわめて重要となる。
【0069】
電極202は、前面側ガラス基板103が有する電極である。一般的には、ガス脱離用の熱吸収層108を形成する位置は表示領域外となるので、表示電極となる維持電極対に繋がるバス電極がこれに当たる。バス電極は、一般的にAgなどの不透明な電極が用いられるが、透過性等を考慮し、ガス脱離用の熱吸収層108が積層される位置の電極202は、Ag電極の幅を細くメッシュ状や短冊状に構成しても良いし、又はITO等で構成しても良い。
【0070】
誘電体層203は、放電のための電荷(壁電荷)を蓄積する誘電体の層である。
【0071】
ここで、ガス脱離用の熱吸収層108は誘電体層203と電極202の間に配置されることを想定する。ただし電極202が無い部分については、誘電体層203とガラス板201の間に配置される。なお、ガス脱離用の熱吸収層108を黒色材料で形成することで、明所コントラストを向上させるために前面側ガラス基板に設けられる黒帯としての機能をガス脱離用の熱吸収層108が併せ持つ。このため黒帯と同時に形成することが可能となり、工程数の増大を抑止できる。
【0072】
以上のように保護膜102(特に隔壁状構造材107bと対向する箇所のもの)に吸着したガスを製造段階で排気することで、パネル内部にこれらのガスが残留することを防ぐことが可能となる。
【0073】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について図を用いて説明する。
【0074】
図9は、本発明の第4の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルの断面図である。
【0075】
すなわち、前面側ガラス基板103と背面側ガラス基板104の双方に隔壁状構造材107bを設ける。そして、シール層101溶融時にこれらの隔壁状構造材107bが嵌合するようにする。
【0076】
これにより、表示領域側にガスが進入する際の流入経路の長さが延び、ゲッター層107aでのガスの吸収、及びクランク状区間の層状化に伴う物理的なガスの進入の抑止を図ることが可能となる。
【0077】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態について図を用いて説明する。
【0078】
図10は、本発明の第5の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルを表示面から見た図である。また、図11は、図10のC領域の拡大図である。
【0079】
本発明の第5の実施の形態は、突起部107の形状を考察するものである。すなわち、突起部107を内外2列にするような場合に、突起部107を破線状にする。図11(a)は、この2列の突起部107双方を破線状にした場合の図である。
【0080】
破線状にすることで、突起部107の隔壁状構造材107bの表面積が増加できる。結果隔壁状構造材107b上に設けられたゲッター層107aの表面積も増え、シール層101から発生するガスの吸着確率を上げることが可能となる。
【0081】
また図11(a)に示すように、突起部107の欠落部を内側の突起部と外側の突起部で交互に配置する。このようにクランク形状を形成することで、シール層101から発生するガスの直線的な進入経路を防ぎ、吸着確率を高めることが可能となる。
【0082】
この変形例として、図11(b)のように、外側の突起部を破線状にし、内側の突起部を直線状に形成することで、さらに表示領域側への進入を物理的に防ぐことが可能となる。
【0083】
(第6の実施の形態)
最後に第6の実施の形態について説明する。
【0084】
図12は、本発明の第6の実施の形態に関わる封着排気工程のプロファイルである。これを用いて本発明の第6の実施の形態について説明する。
【0085】
まず、シール層101封着の一般的なプロセスについて説明する。
【0086】
前面側ガラス基板103と背面側ガラス基板104を重ねた状態で昇温を開始し、シール層101のシール層101aが軟化する状態まで温度を上げる(図12A点)。この温度上昇の際、シール層101aの表面に吸着されたガスが脱離される温度(図12#1)及びシール層101a内部に内包されたガスが放出される温度(図12#2)を通った後に図12A点に到達する。
【0087】
その後、シール層101のシール層101aによりパネル内が気密状態になる温度をキープする(図12封着)。
【0088】
所定の封着時間経過後(図12B点)は、そこから降温を始めシール材料が流動しない温度になってから、排気口106からパネル内を真空排気する(図12C点)。そして放電ガスを封入した後、排気口106を閉栓し、封着排気、ガス導入のパネル化工程が終了する。
【0089】
本実施の形態では、少なくともシール層101a中のガスが放出され始める以前、すなわち図12#2以前にパネル内に不活性ガスを導入し、パネル内圧をパネル外圧より高く保持する。ここでパネル内に導入する「不活性ガス」とは、水、二酸化炭素を極力含まない高純度の希ガスや酸素ガス、窒素ガスが適している。
【0090】
本実施の形態では、封着温度付近(図12A点)では、シール層101aが軟化しパネル内が気密状態になる。従って、その直前でパネル内へのガス導入をやめる。このとき、パネル内が気密状態になる直前なので、自然にパネル外へガスが漏れることで、パネル内圧がほぼパネル外圧と等しくなる。
【0091】
その後、パネル内排気工程を開始し、シール層101a由来のガス及び「不活性ガス」等のパネル内のガスを真空引きしてパネル内圧を減圧していく。
【0092】
このように、シール層101a由来のガスが放出される際に、不活性ガスを一旦パネル内に導入し、封着前のパネル内外の圧力差を用いて、真空引き等による排気工程を始める前からシール層101a由来のガスをパネル外へ放出することで、シール層101a由来のガスの保護膜102への吸着を防止する。なお、不活性ガスは、排気口106から導入され、隔壁状構造材107bとシール層101の間の隙間に沿ってガスが流れ、シール層101の内側の部分を局所的に加圧できるため、パネル内外の圧力差を形成しやすい利点がある。
【0093】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの製造段階におけるシール層由来の二酸化炭素、水等のガスの排出及び排出したプラズマディスプレイパネルを念頭に置く。
【符号の説明】
【0095】
101…シール層、101a…シール層、101b…嵩上げ用リブ、
102…保護膜、103…前面側ガラス基板、104…背面側ガラス基板、
105…支持用リブ、106…排気口、107…突起部、
107a…ゲッター層、107b…隔壁状構造材、108…ガス脱離用の熱吸収層、
111…二酸化炭素、水等のガス。
【技術分野】
【0001】
本発明は,表示装置に用いるプラズマディスプレイパネルの製造方法,及びその製造方法に適したプラズマディスプレイパネルの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP)は、前面基板と背面基板を対向してはり合わせ、基板周辺でシール層を用いて封着し、内部に放電ガスを封入した構成をとる。
【0003】
通常のPDPは、前面側のガラス基板に表示電極となる維持電極対、及び放電バス電極を有し、背面側のガラス基板にアドレス電極を有する3電極の面放電型構造をとる。
【0004】
通常のPDPでは、放電を仕切るための隔壁(リブ)よりも厚くシール層を形成し、前面側ガラス基板、背面側ガラス基板を位置合わせして重ねる。その後に、パネル全体を加熱することでシール層を軟化させ、前面側ガラス基板と背面側ガラス基板を封着してパネルを形成する。
【0005】
図1は、一般的なプラズマディスプレイパネルを表示面から見た図である。また、図2は、図1のa−a´断面を矢印方向から見た図である。なお本図では、前面側ガラス基板の保護膜の下に形成されている誘電体層、及び電極は省略している。
【0006】
本図では、前面側ガラス基板1003と背面側ガラス基板1004の間を、低融点ガラスを主成分とするシール層1001で密閉することで、気密放電空間を形成している。個々の発光セルは、背面側ガラス基板1004に設けられたリブ1005で仕切られる。
【0007】
リブの頂面と対向する前面側ガラス基板1003には図示しない電極、及び誘電体層が配置される。この電極を保護するために、保護膜1002が設けられる。この一般的なプラズマディスプレイパネルを形成する際には、加熱によりシール層1001を軟化して行う。この加熱方法の一例として、特開2005−347200号公報(特許文献1)では、平面型画像表示装置の2枚の基板間に配置されたスペーサの固定の例として、レーザ加熱装置等による固定部材を加熱溶融してスペーサと基板を接着する固定手法が開示されている。
【0008】
シール層の主成分である低融点ガラスの加熱溶融時には二酸化炭素、水等のガス1101が発生するが、これらは排気管1006から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−347200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしシール層を加熱溶融させる封着方法では、シール層1001加熱時にその主成分である低融点ガラス中に含まれる水、二酸化炭素が放出され、保護膜1002に吸着され、保護膜1002が汚染される虞があった。結果、保護膜材料の種類によっては保護膜1002が本来の機能を果たさず、プラズマディスプレイパネルないしはそれを用いた製品の性能が低下する。
【0011】
本発明の目的は、保護膜を劣化させることなく、プラズマディスプレイパネルの密封を行う手段を提供することにある。
【0012】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0014】
本発明の代表的な実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルは、前面側基板と、背面側基板と、前面側基板と背面側基板との距離が一定となる様に前面側基板と背面側基板との間の放電空間を仕切る複数の支持用リブと、前面側基板と背面側基板との間の放電空間に放電ガスを気密密閉するためのシール層と、を有し、シール層の内周に沿った位置に隔壁状の突起部(以下、隔壁状構造材と表記する)を有し、該突起部表面、若しくは該突起部分の対向する部分にガス吸着層を有することを特徴とする。
【0015】
このプラズマディスプレイパネルにおいて、シール層は嵩上げ用リブにより嵩上げされていることを特徴としても良い。
【0016】
このプラズマディスプレイパネルにおいて、嵩上げ用リブと隔壁状構造材が背面側基板に設けられ、嵩上げ用リブと隔壁状構造材が支持用リブと同時に形成され、その高さが前記支持用リブの高さと略等しい、又は支持用リブより低いことを特徴としても良い。
【0017】
また、このプラズマディスプレイパネルにおいて、嵩上げ用リブと隔壁状構造材が前面側基板に設けられ、嵩上げ用リブと隔壁状構造材が同時に形成され、隔壁状構造材表面にガス吸着層が構成されることを特徴としても良い。
【0018】
このプラズマディスプレイパネルにおいて、隔壁状構造材が平面視で破線状、又は点線状に配置されることを特徴としても良い。
【0019】
このプラズマディスプレイパネルにおいて、ガス吸着層が前面側基板の保護膜と同一の素材で形成されていることを特徴としても良い。
【0020】
このプラズマディスプレイパネルにおいて、ガス吸着層が前面側基板の保護膜上に形成された電子供給層であることを特徴としても良い。
【0021】
このプラズマディスプレイパネルにおいて、更にガス吸着層の部分に局所加熱時に与えられる熱又は光を吸収する吸収層を有することを特徴としても良い。
【0022】
これらのプラズマディスプレイパネルの製造方法において、シール層の封着中に該プラズマディスプレイパネル内にガスを導入し、該プラズマディスプレイパネルのパネル内圧を該プラズマディスプレイパネルのパネル外の圧力より高くすることを特徴としても良い。
【0023】
これらのプラズマディスプレイパネルの製造方法において、シール層を局所加熱方式により前面側基板と背面側基板とを封着することを特徴としても良い。
【0024】
これらのプラズマディスプレイパネルの製造方法において、封着後にガス吸着層に吸着したガスを脱離、排気することを特徴としても良い。
【発明の効果】
【0025】
本発明のプラズマディスプレイパネルにより、製造時に発生するガス吸着による保護膜の劣化を抑制し、プラズマディスプレイパネルの設計時に想定する性能を十分発揮させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】一般的なプラズマディスプレイパネルを表示面から見た図である。
【図2】図2は、図1のa−a´断面を矢印方向から見た図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルを表示面から見た図である。
【図4】図3のb−b´断面を矢印方向から見た図である。
【図5】シール層の形成のバリエーションを表す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルの断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルの断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に関わる前面側ガラス基板の詳細を表す断面図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルの断面図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルを表示面から見た図である。
【図11】図10のc領域の拡大図である。
【図12】本発明の第6の実施の形態に関わる封着排気工程のプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明する。しかし、特に明示した場合を除き、それは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部又は全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合、及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものでなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0028】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素は、特に明示した場合、及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合を除き、必ずしも必須のものでないことは言うまでもない。
【0029】
以下、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0030】
(第1の実施の形態)
図3は、本発明の第1の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルを表示面から見た図である。また、図4は、図3のb−b´断面を矢印方向から見た図である。なお本図でも、前面側ガラス基板の保護膜の下に形成されている誘電体層、及び電極は省略している。また、図5はシール層101の形成のバリエーションを表す図である。
【0031】
本実施の形態でも、前面側ガラス基板103と背面側ガラス基板104の間を、シールガラスを主成分とするシール層101で密閉する。
【0032】
シール層101は、シール材料(無鉛等の低融点ガラスフリットやフィラー等)により構成される。プラズマディスプレイパネル内に導入される放電ガスの外部への漏出や大気の流入を防ぐために封着(ここではレーザ光の照射による)後は気密性を有することが必須となる。通常は、樹脂等のバインダ成分と溶剤も含むシールペースト材料を塗布し、乾燥と仮焼成を行って溶剤とバインダ成分を除去した状態で封着工程を行う。
【0033】
本発明の実施の形態では、シール層101はシール層101aと嵩上げ用リブ101bを含んで構成している。
【0034】
シール層101aは、上述のシール材料からなる加熱による溶融対象である。
【0035】
一方、嵩上げ用リブ101bは、シール層101aに用いるシール材料を減らすための嵩上げ用の構造体である。シール材料自体が減れば、シール材料の加熱によって発生する二酸化炭素、水等のガス111の量が減ることを目的としたものである。
【0036】
ただし、製品としてのプラズマディスプレイパネルに気密性があれば良いのであって、シール層101aのみを含み、嵩上げ用リブ101bは存在しない構成としても良い。これは図5(d)で述べる。
【0037】
図5(a)は、嵩上げ用リブ101bがガスバリア性を有する場合の模式図である。嵩上げ用リブ101bがガスバリア性を有する場合には、嵩上げ用リブ101bの頂面にのみシール層101aを形成するだけでよい。
【0038】
一方、図5(b)及び(c)は、嵩上げ用リブ101bがガスバリア性を持たない場合の模式図である。嵩上げ用リブ101bがガスバリア性を持たない場合には、嵩上げ用リブ101bの頂面から背面側ガラス基板104にいたるまでの側面(嵩上げ用リブ101bの片側面でも、図5(c)のように両側面でも良い)にシール層101aを形成する。シール層101aは、バインダ成分を除去する仮焼成後において、図5(b)、又は図5(c)の形状になっていれば良い。シール材料を塗布する時点でそのように塗布しても良いし、図5(a)の様にリブ頂面付近にシール材料を塗布しておいて仮焼成時に流動させて図5(b)、又は図5(c)の様に形成しても良い。
【0039】
また、嵩上げ用リブ101bを省略し、シール層101aのみでシール層101を構成しても良い。図5(d)はシール層101aのみでシール層101を構成した図である。
【0040】
前面側ガラス基板103は表示電極となる維持電極対及びバス電極を形成した後、誘電体層や保護膜102を形成したものである。
【0041】
保護膜102は、表示電極となる維持電極対、及びバス電極、誘電体層を保護する保護膜である。保護膜102の材料としてはCaOやSrO、SrCaO等が適用できる。この保護膜102が、製造時に発生するガスによって劣化するのを防ぐことが本発明の目的である。この保護膜102上にはMgOの粉体等による電子供給層を更に設けても良い。
【0042】
これに加え、本実施の形態では、内外2列の突起部107が前面側ガラス基板103に設けられている。
【0043】
突起部107は、加熱時にシール層101aから発生するガスが保護膜102に接触するのを物理的に防ぐための突出部であるとともに、化学的にも保護膜102を防護するものである。図3及び突起部107の目的からも明らかな通り、突起部107はシール層101の内周部に配置される。
【0044】
突起部107は、ゲッター層107a及び隔壁状構造材107bを含んで構成される。
【0045】
ゲッター層107aは、シール層101から発生するガスを吸着することで保護膜102を化学的に保護する。ゲッター層107aの材料は保護膜102と同じ材料を用いる。すなわち、ゲッター層107aにガスを反応させることで無害化することを図っている。なお、ここではゲッター層107aと保護膜102に同じ素材を用いることを考えているが、発生するガスに対して、保護膜102よりもガス吸収性の良いものを用いてゲッター層107aを構成しても良い。また、保護膜102上に設けられる電子供給層をゲッター層107aとしても良いし、ゲッター層107aに与えても良い。
【0046】
隔壁状構造材107bは、保護膜102へのガスの流入を物理的に防ぐと共に、表示領域外周を伝って排気口106からガスを外部に排気するための流路としての機能を持つ壁である。この隔壁状構造材107bを設けることで、ゲッター層107aの表面積が大きくなり、反応を促すことが可能となる。また、隔壁状構造材107bと嵩上げ用リブ101bを同時に形成することで工程数の増加を抑制することが可能となる。
【0047】
なお、突起部107は、その内外の排気経路と考えた場合に、排気経路のコンダクタンスが低くなるような隔壁であることが望ましい。
【0048】
背面側ガラス基板104は、アドレス電極及び誘電体層等を形成した後に、支持用リブ105をサンドブラスト法等で形成したものである。
【0049】
支持用リブ105は、個々の発光セルを分離するためのリブである。支持用リブ105は背面側ガラス基板104の表面にサンドブラスト法等で形成される。
【0050】
排気口106はシール層101で発生したガスやパネル内のガスを外部に排気するための排気口である。本実施の形態では排気口106は背面側ガラス基板104に存在すると想定しているが、前面側ガラス基板103に設けても良い。シール層101による封着固定、及び放電ガスの封入が終わると排気口は密封される。
【0051】
なお、図3上では、排気口106は突起部107直下にあるように記載されている。しかし、シール層101と突起部107の間、若しくは複数ある突起部107の間に排気口106を設けても良い。
【0052】
以上のように構成することで、加熱時にシール層101から発生するガスを保護膜102に到達させないことが可能となる。また、シール層101から発生するガスが保護膜102に到達したとしても、ゲッター層107aにおいて無害化が進んでいるため、実質的な影響を抑え込むことが可能となる。
【0053】
(第2の実施の形態)
次に本発明の第2の実施の形態について図を用いて説明する。
【0054】
第1の実施の形態では、前面側ガラス基板103に嵩上げ用リブ101bと隔壁状構造材107bを形成した。
【0055】
これに対し本実施の形態では、背面側ガラス基板104上に嵩上げリブ101bと隔壁状構造材107bを設ける点で特徴がある。
【0056】
図6は、本発明の第2の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルの断面図である。
【0057】
この図からも明らかな通り、本実施の形態の嵩上げ用リブ101bと隔壁状構造材107bは背面側ガラス基板104に設けられる。
【0058】
また本実施の形態では、隔壁状構造材107b上にはゲッター層107aは塗布されない。第1の実施の形態のゲッター層107aに代えて、保護膜102を隔壁状構造材107bと対向する位置まで広げて形成する。
【0059】
このようにすることで、シール層101内周部の隔壁状構造材107bを背面側ガラス基板104の支持用リブ105と同時に形成すること、及びゲッター層107aの形成工程を省略できる。これにより工程数の増加を抑制することが可能となる。
【0060】
また、表示領域の支持用リブ105の幅よりも嵩上げ用リブ101bの幅を太くすることで高さ方向の焼成収縮率が大きくなって低いリブを形成できる。結果として嵩上げ用リブ101bとシール層101aの高さの和で支持用リブ105と略同じ高さにすることが可能となる。
【0061】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について図を用いて説明する。
【0062】
図7は本発明の第3の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルの断面図である。
【0063】
この図7と、第2の実施の形態にかかわる図6との相違点は、隔壁状構造材107bに対向する位置の保護膜102に積層する形でガス脱離用の熱吸収層108を設ける点にある。
【0064】
このガス脱離用の熱吸収層108は、加熱することによりこれらのシール層101aから発生し、隔壁状構造材107bに対向する位置の保護膜102付近に吸着されたガスを保護膜102から脱離させるための熱、若しくはその熱を発生するために用いられるレーザ光等の光を吸収する層である。なお、ここでいう「加熱」は摂氏350〜400度を想定している。この温度では真空雰囲気下において酸化マグネシウムMgOから二酸化炭素CO2、水H2Oを脱離でき、また酸化カルシウムCaOから水H2Oを脱離できる十分な温度だからである。ただし、厳密にこの温度で無ければならないわけではなく、上記脱離機能を発揮できる温度であれば良い。
【0065】
この加熱により、隔壁状構造材107bに対向する位置の保護膜102に吸着したガスを脱離する点が本実施の形態の特徴である。すなわち、シール層101封着後のパネル内排気工程で内部に滞留するガスを排気口106から真空引きする際に、このガス脱離用の熱吸収層108を脱離機能が発揮できる温度まで加熱する。このようにすると、外部及びガス脱離用の熱吸収層108により加熱された保護膜102から二酸化炭素、水等が脱離され、これらのガスも排気口106から外部に排出される。
【0066】
図8は、本発明の第3の実施の形態に関わる前面側ガラス基板103の詳細を表す断面図である。
【0067】
この前面側ガラス基板103は、ガラス板201、電極202、誘電体層203、保護膜102及びガス脱離用の熱吸収層108を含んで構成される。
【0068】
ガラス板201は、前面側ガラス基板103の構造部材となるほぼ透明なガラス板等である。このガラス板201を通して製品としてのプラズマディスプレイは映像を表示することになる為、ガラス板201の透過性はきわめて重要となる。
【0069】
電極202は、前面側ガラス基板103が有する電極である。一般的には、ガス脱離用の熱吸収層108を形成する位置は表示領域外となるので、表示電極となる維持電極対に繋がるバス電極がこれに当たる。バス電極は、一般的にAgなどの不透明な電極が用いられるが、透過性等を考慮し、ガス脱離用の熱吸収層108が積層される位置の電極202は、Ag電極の幅を細くメッシュ状や短冊状に構成しても良いし、又はITO等で構成しても良い。
【0070】
誘電体層203は、放電のための電荷(壁電荷)を蓄積する誘電体の層である。
【0071】
ここで、ガス脱離用の熱吸収層108は誘電体層203と電極202の間に配置されることを想定する。ただし電極202が無い部分については、誘電体層203とガラス板201の間に配置される。なお、ガス脱離用の熱吸収層108を黒色材料で形成することで、明所コントラストを向上させるために前面側ガラス基板に設けられる黒帯としての機能をガス脱離用の熱吸収層108が併せ持つ。このため黒帯と同時に形成することが可能となり、工程数の増大を抑止できる。
【0072】
以上のように保護膜102(特に隔壁状構造材107bと対向する箇所のもの)に吸着したガスを製造段階で排気することで、パネル内部にこれらのガスが残留することを防ぐことが可能となる。
【0073】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について図を用いて説明する。
【0074】
図9は、本発明の第4の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルの断面図である。
【0075】
すなわち、前面側ガラス基板103と背面側ガラス基板104の双方に隔壁状構造材107bを設ける。そして、シール層101溶融時にこれらの隔壁状構造材107bが嵌合するようにする。
【0076】
これにより、表示領域側にガスが進入する際の流入経路の長さが延び、ゲッター層107aでのガスの吸収、及びクランク状区間の層状化に伴う物理的なガスの進入の抑止を図ることが可能となる。
【0077】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態について図を用いて説明する。
【0078】
図10は、本発明の第5の実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルを表示面から見た図である。また、図11は、図10のC領域の拡大図である。
【0079】
本発明の第5の実施の形態は、突起部107の形状を考察するものである。すなわち、突起部107を内外2列にするような場合に、突起部107を破線状にする。図11(a)は、この2列の突起部107双方を破線状にした場合の図である。
【0080】
破線状にすることで、突起部107の隔壁状構造材107bの表面積が増加できる。結果隔壁状構造材107b上に設けられたゲッター層107aの表面積も増え、シール層101から発生するガスの吸着確率を上げることが可能となる。
【0081】
また図11(a)に示すように、突起部107の欠落部を内側の突起部と外側の突起部で交互に配置する。このようにクランク形状を形成することで、シール層101から発生するガスの直線的な進入経路を防ぎ、吸着確率を高めることが可能となる。
【0082】
この変形例として、図11(b)のように、外側の突起部を破線状にし、内側の突起部を直線状に形成することで、さらに表示領域側への進入を物理的に防ぐことが可能となる。
【0083】
(第6の実施の形態)
最後に第6の実施の形態について説明する。
【0084】
図12は、本発明の第6の実施の形態に関わる封着排気工程のプロファイルである。これを用いて本発明の第6の実施の形態について説明する。
【0085】
まず、シール層101封着の一般的なプロセスについて説明する。
【0086】
前面側ガラス基板103と背面側ガラス基板104を重ねた状態で昇温を開始し、シール層101のシール層101aが軟化する状態まで温度を上げる(図12A点)。この温度上昇の際、シール層101aの表面に吸着されたガスが脱離される温度(図12#1)及びシール層101a内部に内包されたガスが放出される温度(図12#2)を通った後に図12A点に到達する。
【0087】
その後、シール層101のシール層101aによりパネル内が気密状態になる温度をキープする(図12封着)。
【0088】
所定の封着時間経過後(図12B点)は、そこから降温を始めシール材料が流動しない温度になってから、排気口106からパネル内を真空排気する(図12C点)。そして放電ガスを封入した後、排気口106を閉栓し、封着排気、ガス導入のパネル化工程が終了する。
【0089】
本実施の形態では、少なくともシール層101a中のガスが放出され始める以前、すなわち図12#2以前にパネル内に不活性ガスを導入し、パネル内圧をパネル外圧より高く保持する。ここでパネル内に導入する「不活性ガス」とは、水、二酸化炭素を極力含まない高純度の希ガスや酸素ガス、窒素ガスが適している。
【0090】
本実施の形態では、封着温度付近(図12A点)では、シール層101aが軟化しパネル内が気密状態になる。従って、その直前でパネル内へのガス導入をやめる。このとき、パネル内が気密状態になる直前なので、自然にパネル外へガスが漏れることで、パネル内圧がほぼパネル外圧と等しくなる。
【0091】
その後、パネル内排気工程を開始し、シール層101a由来のガス及び「不活性ガス」等のパネル内のガスを真空引きしてパネル内圧を減圧していく。
【0092】
このように、シール層101a由来のガスが放出される際に、不活性ガスを一旦パネル内に導入し、封着前のパネル内外の圧力差を用いて、真空引き等による排気工程を始める前からシール層101a由来のガスをパネル外へ放出することで、シール層101a由来のガスの保護膜102への吸着を防止する。なお、不活性ガスは、排気口106から導入され、隔壁状構造材107bとシール層101の間の隙間に沿ってガスが流れ、シール層101の内側の部分を局所的に加圧できるため、パネル内外の圧力差を形成しやすい利点がある。
【0093】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの製造段階におけるシール層由来の二酸化炭素、水等のガスの排出及び排出したプラズマディスプレイパネルを念頭に置く。
【符号の説明】
【0095】
101…シール層、101a…シール層、101b…嵩上げ用リブ、
102…保護膜、103…前面側ガラス基板、104…背面側ガラス基板、
105…支持用リブ、106…排気口、107…突起部、
107a…ゲッター層、107b…隔壁状構造材、108…ガス脱離用の熱吸収層、
111…二酸化炭素、水等のガス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面側基板と、背面側基板と、前記前面側基板と前記背面側基板との距離が一定となる様に前記前面側基板と前記背面側基板との間の放電空間を仕切る複数の支持用リブと、前記前面側基板と前記背面側基板との間の放電空間に放電ガスを気密密閉するためのシール層と、を有するプラズマディスプレイパネルであって、
前記シール層の内周に沿った位置に隔壁状の突起部を有し、該突起部表面、若しくは該突起部の対向する部分にガス吸着層を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記シール層は嵩上げ用リブにより嵩上げされていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
請求項2に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記嵩上げ用リブと前記隔壁状の突起部が前記背面側基板に設けられ、
前記嵩上げ用リブと前記隔壁状の突起部が前記支持用リブと同時に形成され、その高さが前記支持用リブの高さと略等しい、又は支持用リブより低いことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
請求項2に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記嵩上げ用リブと前記隔壁状の突起部が前記前面側基板に設けられ、
前記嵩上げ用リブと前記隔壁状の突起部が同時に形成され、前記隔壁状の突起部表面に前記ガス吸着層が構成されることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、前記隔壁状の突起部が平面視で破線状、又は点線状に配置されることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、前記ガス吸着層が前記前面側基板の保護膜と同一の素材で形成されていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、前記ガス吸着層が前記前面側基板の保護膜上に形成された電子供給層であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、更に前記ガス吸着層の部分に局所加熱時に与えられる熱又は光を吸収する吸収層を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法において、前記シール層の封着中に該プラズマディスプレイパネル内にガスを導入し、該プラズマディスプレイパネルのパネル内圧を該プラズマディスプレイパネルのパネル外の圧力より高くすることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法において、前記シール層を局所加熱方式により前記前面側基板と前記背面側基板とを封着することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法において、封着後に前記ガス吸着層に吸着したガスを脱離、排気することを特徴とするプラズマディスプレイの製造方法。
【請求項1】
前面側基板と、背面側基板と、前記前面側基板と前記背面側基板との距離が一定となる様に前記前面側基板と前記背面側基板との間の放電空間を仕切る複数の支持用リブと、前記前面側基板と前記背面側基板との間の放電空間に放電ガスを気密密閉するためのシール層と、を有するプラズマディスプレイパネルであって、
前記シール層の内周に沿った位置に隔壁状の突起部を有し、該突起部表面、若しくは該突起部の対向する部分にガス吸着層を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記シール層は嵩上げ用リブにより嵩上げされていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
請求項2に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記嵩上げ用リブと前記隔壁状の突起部が前記背面側基板に設けられ、
前記嵩上げ用リブと前記隔壁状の突起部が前記支持用リブと同時に形成され、その高さが前記支持用リブの高さと略等しい、又は支持用リブより低いことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
請求項2に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記嵩上げ用リブと前記隔壁状の突起部が前記前面側基板に設けられ、
前記嵩上げ用リブと前記隔壁状の突起部が同時に形成され、前記隔壁状の突起部表面に前記ガス吸着層が構成されることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、前記隔壁状の突起部が平面視で破線状、又は点線状に配置されることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、前記ガス吸着層が前記前面側基板の保護膜と同一の素材で形成されていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、前記ガス吸着層が前記前面側基板の保護膜上に形成された電子供給層であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、更に前記ガス吸着層の部分に局所加熱時に与えられる熱又は光を吸収する吸収層を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法において、前記シール層の封着中に該プラズマディスプレイパネル内にガスを導入し、該プラズマディスプレイパネルのパネル内圧を該プラズマディスプレイパネルのパネル外の圧力より高くすることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法において、前記シール層を局所加熱方式により前記前面側基板と前記背面側基板とを封着することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法において、封着後に前記ガス吸着層に吸着したガスを脱離、排気することを特徴とするプラズマディスプレイの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−84480(P2012−84480A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231674(P2010−231674)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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