説明

プラズマディスプレイパネル製造装置及びプラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】クリップを使用せずにパネルを封着できるプラズマディスプレイパネル製造装置及びプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】
支持部材13を、第一の板6を間に挟んで封着部材7と対面して第一の板6の表面に接触させ、弾性部材22を、第二の板5を間に挟んで封着部材7と対面して第二の板5の表面に接触させ、第一、第二の板6、5を加熱装置16からの輻射熱によって加熱して封着部材7を軟化させ、弾性部材22を、第二の板5の表面の、支持部材13を通る法線方向に押圧して、封着部材7を第一、第二の板6、5に環状に密着させ、処理対象物20の加熱を停止し、封着部材7を固化させて第一の板6と第二の板5とを間に隙間を存した状態で互いに固定させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル製造装置及びプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネルは、フロントパネル(前面板)とリアパネル(背面板)から構成されている。その製造方法では、背面板の外周部に環状の低融点ガラスである封着部材を配置した後、封着部材を間に挟んで前面板と背面板を重ね合わせる。次いで封着工程として、低融点ガラスを軟化させた後、固化させて前面板と背面板を固定する。このとき、前面板と背面板を互いに対向させ、一定の外力で互いに押圧した状態を維持する必要がある。
【0003】
従来のプラズマディスプレイパネル製造装置では、特許文献1、2に記載されているように、パネルを相互に対向させた状態を維持するために、重ね合わせたパネルの外周部にクリップを取り付けて封着を行っていた。
【0004】
しかしながら、重ね合わせたパネルにクリップを取り付けて封着を行った場合には、クリップと、クリップを取り付ける装置及び取り付ける時間と、封着が終わった後にクリップを取り外す装置及び取り外す時間が必要になり、多くの装置と時間が必要になるという不都合があった。
また真空槽内でのクリップの取り付けは困難であり、真空槽内でパネルの位置決め作業から封着までを行う真空一貫で行う場合に問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−273284号公報
【特許文献2】特開2007−103161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、クリップを使用せずにパネルを封着できるプラズマディスプレイパネル製造装置及びプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、第一の板と、第二の板と、前記第一、第二の板の間に配置された環状の封着部材で構成された処理対象物の前記封着部材を軟化させた後、固化させて前記第一の板と前記第二の板とを間に隙間を存した状態で互いに固定させるプラズマディスプレイパネル製造装置であって、真空槽と、前記真空槽内に配置され、前記処理対象物の前記第一の板の表面の周辺部分と接触する複数の支持部材と、前記支持部材を前記第一の板に接触させ、前記支持部材によって前記処理対象物を支持した状態で、前記処理対象物を間に挟んで前記支持部材と対面して前記第二の板の表面に接触する弾性部材と、前記弾性部材を、前記第二の板表面の、前記支持部材を通る法線方向に押圧する押圧装置と、前記処理対象物を輻射熱によって加熱し、前記封着部材を軟化させる加熱装置と、を有するプラズマディスプレイパネル製造装置である。
本発明はプラズマディスプレイパネル製造装置であって、前記弾性部材は、前記封着部材が軟化する温度よりも高い耐熱性のあるバネを有するプラズマディスプレイパネル製造装置である。
本発明はプラズマディスプレイパネル製造装置であって、前記加熱装置は、前記支持部材が挿入された第一の貫通孔を有する第一の加熱部と、前記弾性部材が挿入された第二の貫通孔を有する第二の加熱部と、を有するプラズマディスプレイパネル製造装置である。
本発明はプラズマディスプレイパネル製造装置であって、前記処理対象物の前記第一の板に設けられたガス導入孔にチップ管を取り付けるチップ管取り付け装置を有し、前記チップ管取り付け装置は、前記真空槽内に配置され、前記チップ管の一端を、前記第一の板表面の、前記ガス導入孔の開口と対面できる位置に保持するチップ管保持部と、前記支持部材を前記第一の板に接触させ、前記支持部材によって前記処理対象物を支持した状態で、前記チップ管保持部を、前記第一の板表面の、前記ガス導入孔を通る法線方向に押圧する押し当てバネと、前記チップ管の前記一端とは逆の他端が気密に挿入された中空の筒部と、を有し、前記筒部には、放電ガスを放出する放電ガス導入装置と、内部空間を真空排気する補助真空排気装置とがそれぞれ気密に接続され、前記第一の加熱部には、前記チップ管取り付け装置が挿入された第三の貫通孔が設けられたプラズマディスプレイパネル製造装置である。
本発明は、プラズマディスプレイパネル製造装置を用いたプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記真空槽内を真空排気した後、前記真空槽内の真空雰囲気を維持しながら前記処理対象物を前記真空槽内に搬入し、前記支持部材を、前記第一の板を間に挟んで前記封着部材と対面して前記第一の板の表面に接触させ、前記弾性部材を、前記第二の板を間に挟んで前記封着部材と対面して前記第二の板の表面に接触させ、前記第一、第二の板を加熱して前記封着部材を軟化させ、前記弾性部材を、前記第二の板の表面の、前記支持部材を通る法線方向に押圧して、前記封着部材を前記第一、第二の板に密着させ、前記処理対象物の加熱を停止し、前記封着部材を固化させて前記第一の板と前記第二の板とを間に隙間を存した状態で互いに固定させるプラズマディスプレイパネルの製造方法である。
本発明は、プラズマディスプレイパネル製造装置を用いたプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記真空槽内を真空排気した後、前記真空槽内の真空雰囲気を維持しながら前記処理対象物を前記真空槽内に搬入し、前記支持部材を、前記第一の板を間に挟んで前記封着部材と対面して前記第一の板の表面に接触させ、前記弾性部材を、前記第二の板を間に挟んで前記封着部材と対面して前記第二の板の表面に接触させ、前記チップ管の一端を、環状のチップ管接着部材を間に挟んで前記第一の板の表面の前記ガス導入孔の開口を取り囲んで接触させ、前記第一、第二の板を輻射熱によって加熱して前記封着部材と前記チップ管接着部材を軟化させ、前記弾性部材を、前記第二の板の表面の、前記支持部材を通る法線方向に押圧して、前記封着部材を前記第一、第二の板に密着させ、前記チップ管保持部を、前記第一の板の表面の、前記ガス導入孔を通る法線方向に押圧して、前記チップ管接着部材を前記第一の板の表面と前記チップ管に密着させ、前記処理対象物の加熱を停止し、前記封着部材を固化させて前記第一の板と前記第二の板とを間に隙間を存した状態で互いに固定させ、前記チップ管接着部材を固化させて前記ガス導入孔と前記チップ管を連通した状態で固定するプラズマディスプレイパネルの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
封着工程からクリップの取り付け及び取り外す作業を無くすことができる。そのため、クリップの取り付け、取り外し装置及びその時間が不要になり、パネル作成時間を短縮できる。
クリップを使用しないので、真空槽内でパネルの位置決め作業から封着までを真空一貫で行うことが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のプラズマディスプレイパネル製造装置の封着室の一例の内部構成図
【図2】プラズマディスプレイパネル製造装置の一例の平面図
【図3】(a)封着室のA−A線切断断面図 (b)同B−B線切断断面図
【図4】チップ管取り付け装置の内部構成図
【図5】(a)(b):支持部材と弾性部材の位置関係を説明するための模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
<プラズマディスプレイパネル製造装置の構造>
本発明のプラズマディスプレイパネル製造装置の構造を説明する。図2はプラズマディスプレイパネル製造装置1の一例の平面図を示している。
【0011】
プラズマディスプレイパネル製造装置1は、成膜室2と、プリべーク室3と、重ね合わせ室4と、封着室10とを有している。
成膜室2とプリべーク室3は重ね合わせ室4にそれぞれ接続され、重ね合わせ室4は封着室10に接続されている。
【0012】
封着室10の構造を説明する。図1は封着室10の一例の内部構成図、図3(a)は同A−A線切断断面図、図3(b)は同B−B線切断断面図を示している。
封着室10に搬入される処理対象物20は、第一の板6と、第二の板5と、第一、第二の板6、5の間に配置された環状の封着部材7とを有している。
【0013】
封着室10は、真空槽11と、真空槽11内に配置され、処理対象物20の第一の板6と接触する複数の支持部材13と、支持部材13を第一の板6に接触させ、支持部材13によって処理対象物20を支持した状態で、処理対象物20を間に挟んで支持部材13と対面して第二の板5の表面に接触する弾性部材22と、弾性部材22を、第二の板5表面の、支持部材13を通る法線方向に押圧する押圧装置21と、処理対象物20を輻射熱によって加熱し、封着部材7を軟化させる加熱装置16とを有している。
【0014】
真空槽11には真空排気装置12が接続され、内部を真空排気できるように構成されている。
真空槽11の内側には、表面が平面状にされた台座18が配置されている。
【0015】
支持部材13はここでは棒状に形成され、台座18の表面上に環状に並んで配置され、それぞれ台座18の表面に対して直角に固定されている。
ここでは台座18の表面は四角形であり、支持部材13は四角形の各辺に沿って三個以上ずつ並んで配置されている。
【0016】
不図示の搬送装置により処理対象物20を真空槽11内に搬入し、支持部材13を処理対象物20の第一の板6表面の周辺部分と接触させて、支持部材13によって処理対象物20を支持させると、各支持部材13は図3(b)に示すように第一の板6を間に挟んで封着部材7と対面するようになっている。
【0017】
図1を参照し、押圧装置21はここでは昇降装置15と補助支持部材19とを有している。補助支持部材19は剛体であり、板部19aと軸部19bとを有している。軸部19bは板部19aの裏面の中心に直角に固定されている。
【0018】
補助支持部材19は軸部19bが固定された裏面とは逆の表面を台座18の支持部材13が固定された表面と平行に対面させて真空槽11内に配置され、軸部19bの先端は真空槽11の壁面を気密に貫通して、真空槽11の外側に配置された昇降装置15に接続されている。
【0019】
昇降装置15はここではモーターを有しており、モーターの動力を軸部19bに伝達して、補助支持部材19を台座18の表面の法線方向に沿って移動できるように構成されている。
【0020】
弾性部材22は凸部17と弾性体14とを有している。
凸部17は棒状に形成され、板部19aの表面の周辺部分に板部19aの表面と直角に固定されている。
弾性体14は封着部材7が軟化する温度より高い耐熱性を有するバネであり、ここではインコネル(登録商標)の板バネを用いている。弾性体14は凸部17の先端にそれぞれ固定されている。
【0021】
昇降装置15により補助支持部材19を台座18に近づく方向に移動させると、弾性部材22も一緒に移動し、弾性部材22は処理対象物20を間に挟んで支持部材13と対面して第二の板5の表面に接触するようになっている。
【0022】
弾性部材22を第二の板5の表面と接触させた状態で、昇降装置15により補助支持部材19を台座18に近づく方向に移動させると、凸部17は剛体であり変形せず、弾性体14は第二の板5表面の支持部材13を通る法線方向に押圧されて縮められ、伸びる方向の弾性力により第二の板5を封着部材7に押しつけるようになっている。
【0023】
図5(a)、(b)は支持部材13と弾性部材22の位置関係を説明するための模式図である。
本発明では弾性部材22が処理対象物20を間に挟んで支持部材13と対面して第二の板5の表面に接触するように構成されているならば、図5(a)に示すように凸部17の先端にそれぞれ別個の弾性体14が固定された構成に限定されず、図5(b)に示すように一個の弾性体14が凸部17の並んだ方向に沿って延設され、二個以上の凸部17の先端に一個の弾性体14が共通に固定された構成も含まれる。
【0024】
加熱装置16は、支持部材13が挿入された第一の貫通孔を有する第一の加熱部16aと、弾性部材22が挿入された第二の貫通孔を有する第二の加熱部16bと、を有している。
第一の加熱部16aは、第一の板6の外周より外周が大きく、支持部材13の長手方向の長さより厚みが薄い平板形状にされたシースヒーターであり、台座18の表面と対面して配置され、支持部材13の先端は第一の貫通孔に挿入されて第一の加熱部16aの表面から突き出している。
【0025】
第一の加熱部16aを発熱させると、第一の貫通孔よりも第一の加熱部16aの中心に近い部分と遠い部分からは均一に輻射熱が放出され、第一の板6の表面の支持部材13との接触部分よりも中心に近い部分と遠い部分は均一な温度に加熱され、すなわち第一の板6の表面の封着部材7のリングの内側と外側は均一な温度に加熱されるようになっている。
【0026】
また、第一の貫通孔の内周側面と支持部材13の外周側面との間には隙間が開けられ、第一の加熱部16aの熱は支持部材13に直接伝わらないようになっている。
第二の加熱部16bは、第二の板5の外周より外周が大きく、凸部17の高さより厚みが薄い平板形状にされたシースヒーターであり、板部19aの表面と対面して配置され、凸部17の先端は第二の貫通孔に挿入されて第二の加熱部16bの表面から突き出している。
【0027】
第二の加熱部16bを発熱させると、第二の貫通孔よりも第二の加熱部16bの中心に近い部分と遠い部分からは均一に輻射熱が放出され、第二の板5の表面の弾性部材22との接触部分よりも中心に近い部分と遠い部分は均一な温度に加熱され、すなわち第二の板5の表面の封着部材7のリングの内側と外側は均一な温度に加熱されるようになっている。
【0028】
また、第二の貫通孔の内周側面と凸部17の外周側面との間には隙間が開けられ、第二の加熱部16bの熱は弾性部材22に直接伝わらないようになっている。
第一、第二の加熱部16a、16bの表面全体からの輻射熱により第一、第二の板6、5の表面全体が均一な温度で昇温されて、第一、第二の板6、5の熱伝導により封着部材7は加熱されて軟化する。弾性部材22の弾性体14は封着部材7を軟化させる温度よりも高い耐熱性を有するバネであり、輻射熱で加熱されても弾性を維持するようになっている。
【0029】
封着室10は、処理対象物20の有するガス導入孔9にチップ管41を取り付けるチップ管取り付け装置40を有している。
図4はチップ管取り付け装置40の内部構成図を示している。
チップ管41は漏斗形状の漏斗部41aと、漏斗部41aの突端に接続された足部41bとを有している。漏斗部41aの足部41bとは逆の開口部には、環状のチップ管接着部材49が配置されている。チップ管接着部材49はここでは封着部材7と同じ材質である。
【0030】
チップ管取り付け装置40は、真空槽11内に配置され、チップ管41の一端の漏斗部41aを、第一の板6表面のガス導入孔9の開口と対面できる位置に保持するチップ管保持部42と、チップ管保持部42を間に挟んで第一の板6とは逆側に配置され、チップ管41の前記一端とは逆の他端の足部41bが気密に挿入された中空の筒部47と、一端がチップ管保持部42に接触し、他端が筒部47の外壁面に接触する押し当てバネ44と、チップ管41の足部41bの途中を加熱して封止する封止用ヒーター45とを有している。
【0031】
筒部47の内壁面とチップ管41の足部41bの外周側面との間の隙間には封止部46が配置され、封止部46により筒部47の内壁面と足部41bの外周側面との間の隙間は気密に塞がれている。
【0032】
支持部材13を第一の板6に接触させる前は、チップ管保持部42に保持されたチップ管41の先端のチップ管接着部材49は、支持部材13の先端よりも弾性部材22に近い側に突き出して配置されている。
【0033】
不図示の搬送装置により、処理対象物20の第一の板6の表面を支持部材13に接触させると、チップ管接着部材49は第一の板6の表面のガス導入孔9の開口の周囲を取り囲んで接触し、押し当てバネ44はチップ管保持部42と筒部47との間で押し縮められる。押し当てバネ44の伸びる方向の弾性力により、チップ管41は第一の板6の表面のガス導入孔9を通る法線方向に押圧され、チップ管接着部材49を第一の板6の表面に押しつけるようになっている。
【0034】
筒部47の内壁面と封止部46とで取り囲まれた空間には配管54が気密に接続されている。配管54は真空槽11の壁面を気密に貫通して真空槽11の外側まで延ばされ、バルブ53を介して補助真空排気装置51と放電ガス導入装置52に接続されている。
【0035】
補助真空排気装置51は配管54と筒部47を通ってチップ管41の内部空間を真空排気できるように構成され、放電ガス導入装置52は配管54と筒部47を通ってチップ管41の内部空間に放電ガスを導入できるように構成されている。
【0036】
ここでは第一の加熱部16aにはチップ管取り付け装置40が挿入された第三の貫通孔が形成されている。第三の貫通孔の内周側面とチップ管取り付け装置40との間には隙間が開けられ、第一の加熱部16aの熱がチップ管取り付け装置40に直接伝わらないようになっている。
【0037】
<プラズマディスプレイパネルの製造方法>
上述のプラズマディスプレイパネル製造装置1を用いたプラズマディスプレイパネルの製造方法を説明する。
【0038】
図2を参照し、成膜室2と重ね合わせ室4と封着室10には不図示の真空排気装置が接続され、内部を真空排気できるようになっている。プリベーク室3には不図示の真空排気装置と不活性ガスを放出するガス導入装置が接続され、内部を真空雰囲気にも大気圧にもできるようになっている。
【0039】
成膜室2と重ね合わせ室4と封着室10を真空排気し、以後真空排気を継続して真空雰囲気を維持する。プリべーク室3内に不活性ガスを流して大気圧にしておく。
ここでは表面の中央部に予め透明電極と誘電体層が順に積層して形成された前面板を第二の板5と呼び、表面の中央部の表示領域に予めアドレス電極とリブ(隔壁)が形成され、表示領域の外側を環状に取り囲んで封着部材となる低融点フリットガラスが塗布された背面板を第一の板6と呼ぶ。フリットガラスの軟化する温度(ガラス転移点)はここでは470℃である。
【0040】
成膜室2内の真空雰囲気を維持しながら、第二の板5を成膜室2に搬入する。
成膜室2は保護膜材料を保持する材料容器2aと電子銃2bを有している。材料容器2a内には保護膜材料としてここではMgOが配置されている。
【0041】
保護膜材料の蒸気が付着する位置に第二の板5を配置した後、電子銃2bから保護膜材料に電子ビームを照射して保護膜材料を蒸発させ、第二の板5の表面の誘電体層に密着して保護膜を成膜する。
保護膜を成膜した後、成膜室2内と重ね合わせ室4内の真空雰囲気を維持しながら、第二の板5を成膜室2から重ね合わせ室4に搬送する。
【0042】
また、プリべーク室3内のガス雰囲気を維持しながら、第一の板6をプリべーク室3に搬入する。
プリべーク室3では、第一の板6を加熱して脱ガス処理を行う。脱ガス処理を行った後、プリべーク室3内を真空排気し、真空雰囲気にする。
プリべーク室3内と重ね合わせ室4内の真空雰囲気を維持しながら、第一の板6をプリべーク室3から重ね合わせ室4に搬送する。
【0043】
重ね合わせ室4はCCDカメラ等の撮像装置4aと、第一、第二の板6、5の板のいずれか一方又は両方を移動させる不図示の移動装置を有している。
第一の板6と第二の板5は、第一の板6の封着部材が形成された面と第二の板5の保護膜が形成された面が互いに対面して重ね合わせ室4内に配置される。
【0044】
第二の板5と第一の板6には予め一乃至複数の位置合わせマーク5a、6aがそれぞれ形成されている。第二の板5の位置合わせマーク5aは、第二の板5と第一の板6を対面させて第二の板5の有する透明電極と第一の板6の有するアドレス電極とを所定の相対位置関係に配置したときに第一の板6の位置合わせマーク6aと重なる位置に配置されている。
【0045】
撮像装置4aは第二の板5と第一の板6の位置合わせマーク5a、6aの位置をそれぞれ検出し、移動装置は第二の板5と第一の板6を相対的に移動させて、第二の板5と第一の板6の位置合わせマーク5a、6aの位置のズレをゼロにする。
第二の板5と第一の板6の位置合わせマーク5a、6aの位置のズレをゼロに維持しながら、移動装置は第二の板5の保護膜が形成された面を第一の板6の封着部材が形成された面に接触させる。
このようにして、第一の板6と、第二の板5と、第一、第二の板6、5の間に配置された環状の封着部材7とを有する処理対象物20が形成される。
【0046】
次いで、重ね合わせ室4内と封着室10内の真空雰囲気を維持しながら、不図示の搬送装置により処理対象物20を重ね合わせ室4から封着室10内に搬送する。
ここでは第一、第二の板6、5は水平にされて重ねられ、第二の板5は自重により封着部材7に押しつけられて封着部材7との間に摩擦力が生じており、搬送に伴う振動では第二の板5と第一の板6との間に横ずれは起こらず、位置合わせされた状態が維持されるようになっている。
【0047】
封着室10での封着方法を説明する。
図4を参照し、チップ管取り付け装置40には予めチップ管41が装着されている。このときチップ管41の先端に配置されたチップ管接着部材49は、支持部材13の先端よりも弾性部材22に近い側に突き出して配置されている。
【0048】
図1を参照し、真空排気装置12により真空槽11内は真空排気され、真空雰囲気を維持されている。
不図示の搬送装置により真空槽11内の真空雰囲気を維持しながら処理対象物20を真空槽11内に搬入し、第一の板6の表面を支持部材13と接触させて、支持部材13により処理対象物20を支持させる。チップ管接着部材49はガス導入孔9の開口の周囲を取り囲んで第一の板6の表面に接触し、押し当てバネ44は押し縮められ、押し当てバネ44の伸びる方向の弾性力によりチップ管接着部材49は第一の板6の表面に押しつけられる。
【0049】
昇降装置15により、弾性部材22と第一の加熱部16aを一緒に移動させ、弾性部材22の弾性体14を第二の板5の表面と接触させ、第二の板5の表面の保持部材13を通る法線方向に押圧して縮ませる。弾性体14は伸びる方向の弾性力である第一の押圧力で第二の板5を封着部材7に押しつける。クリップを使う方法よりも短時間で押しつける力を発生できる。
【0050】
真空槽11内には熱電対の温度計測器55が配置され、処理対象物20の温度を計測するようになっている。封着部材7が軟化する温度はあらかじめ求められている。ここでは軟化する温度は470℃である。
【0051】
押圧装置21は、処理対象物20の温度が封着部材7が軟化する温度に達したとき、補助支持部材19を台座18に近づく方向に所定距離移動させ、弾性体14をさらに押圧するように構成されている。
【0052】
補助真空排気装置51により、第一の板6と第二の板5との間の隙間を真空排気する。以後真空排気を継続する。
第一の加熱部16aと第二の加熱部16bからそれぞれ輻射熱を放出させて、第一、第二の板6、5を加熱する。
【0053】
第一、第二の板6、5の温度が封着部材7が軟化する温度以上になると、第一、第二の板6、5の熱伝導により封着部材7は軟化し、第一の板6の熱伝導によりチップ管接着部材49は軟化する。
【0054】
このとき弾性体14は押圧装置21により押圧されて第一の押圧力よりも大きい第二の押圧力で第二の板5を封着部材7に押しつける。封着部材7は第一、第二の板6、5の間に挟まれて厚み方向に押し潰され、第二の板5は第一の板6に予め形成されたリブの先端と接触して移動が止まる。封着部材7は押し潰されて第一、第二の板6、5に密着する。
【0055】
図3(a)、(b)を参照し、各支持部材13と弾性部材22の弾性体14はそれぞれ封着部材7のリングに沿って環状に配置され、各支持部材13は第一の板6と封着部材7と第二の板5を間に挟んで弾性部材22の弾性体14と対面しており、封着部材7はリングの長手方向に亘って均等な圧力で厚み方向に押し潰され、第一、第二の板6、5に環状に密着するようになっている。
【0056】
弾性体14の弾性力で押しつけるので、剛体により一定の力で機械的に押しつける場合よりも、封着部材7をリングの長手方向に亘って均等な圧力で押し潰すことができる。
【0057】
図1を参照し、封着部材7が第一、第二の板6、5に環状に密着すると、封着部材7は第一の板6と第二の板5の間の封着空間8を環状に取り囲んで、封着空間8を真空槽11の内部空間から遮断する。
【0058】
一方、チップ管接着部材49は押し当てバネ44の弾性力により第一の板6に押しつけられており、チップ管接着部材49が加熱されて軟化すると、チップ管接着部材49は厚み方向に押し潰され、第一の板6の表面とチップ管41の開口部にそれぞれ環状に密着する。
【0059】
チップ管接着部材49のリングは封着部材7のリングより小さく、チップ管41を第一の板6の表面の、ガス導入孔9を通る法線方向に押圧すると、チップ管接着部材49はリングの長手方向に亘って均等な圧力で押し潰されるようになっている。
【0060】
チップ管41の開口部がチップ管接着部材49によりガス導入孔9の開口の周囲を環状に取り囲んで第一の板6に密着すると、封着空間8とチップ管41の内部空間はガス導入孔9を通って接続される。
【0061】
処理対象物20が加熱装置16により加熱されると、第一、第二の板6、5の表面や封着部材7からガスが放出される。真空槽11内に放出されたガスは真空排気装置12により真空排気される。一方、処理対象物20から封着空間8に放出されたガスは、補助真空排気装置51によりガス導入孔9とチップ管41の内部空間を通って真空排気される。
【0062】
真空排気装置12と補助真空排気装置51による真空排気を継続しながら、第一の加熱部16aと第二の加熱部16bからの輻射熱の放出を停止して、処理対象物20を冷却する。封着部材7とチップ管接着部材49も冷却されて、固化する。第一の板6と第二の板5は、間に隙間を存した状態で互いに固定される。
処理対象物20の温度を室温まで降温させた後、バルブ53を切り替えて補助真空排気装置51による真空排気を停止し、放電ガス導入装置52からチップ管41の内部空間に放電ガスを導入させると、放電ガスはガス導入孔9を通って封着空間8に導入される。放電ガスにはここではキセノンを含有するガスを使用する。
【0063】
封着空間8に放電ガスを導入した後、封止用ヒーター45でチップ管41の途中を加熱して封じ切る。
昇降装置15により、補助支持部材19を台座18から離れる方向に移動させて、弾性部材22を第二の板5の表面から離間させる。クリップを使う方法よりも短時間で押しつける力を解消できる。
真空槽11内の真空雰囲気を維持しながら処理対象物20をチップ管41と一緒に真空槽11から搬出する。
【0064】
次いで、不図示の搬送装置により、真空槽11内の真空雰囲気を維持しながら、別のチップ管41を真空槽11内に搬入し、チップ管取り付け装置40に装着する。このときチップ管41の先端は、支持部材13の先端より弾性部材22に近い側に配置される。
【0065】
次いで、不図示の搬送装置により、真空槽11内の真空雰囲気を維持しながら、別の処理対象物20を真空槽11内に搬入し、上述の方法により封着工程を行う。上記工程を繰り返して、複数枚の処理対象物20を順に封着できる。
本発明によれば上記実施例のように第二の板5と第一の板6の位置合わせ作業から封着作業までを真空一貫で行うことができる。
【0066】
図1では支持部材13の鉛直上方に弾性部材22が配置されているが、処理対象物20を間に挟んで支持部材13と弾性部材22が対面して第一の板6の表面と第二の板5の表面にそれぞれ接触できるならば、本発明はこの構成に限定されず、弾性部材22の鉛直上方に支持部材13が配置されていてもよいし、弾性部材22に対して一の水平方向に支持部材13が配置され、処理対象物20は立てられた状態で弾性部材22と支持部材13との間に配置されるように構成してもよい。
【0067】
上記実施例では保護膜が形成される前面板を第一の板と呼び、封着部材が塗布される背面板を第二の板と呼んで、支持部材13を背面板の表面と接触させ、弾性部材22を前面板の表面と接触させたが、保護膜が形成される前面板を第二の板と呼び、封着部材が塗布される背面板を第一の板と呼んで、支持部材13を前面板の表面と接触させ、弾性部材22を背面板の表面と接触させてもよい。支持部材13を前面板の表面と接触させ、弾性部材22を背面板の表面と接触させる場合には、予めチップ管取り付け装置40を処理対象物20が配置される位置よりも弾性部材22に近い側に配置しておく。
【符号の説明】
【0068】
1……プラズマディスプレイパネル製造装置
5……第二の板
6……第一の板
7……封着部材
11……真空槽
13……支持部材
16……加熱装置
16a……第一の加熱部
16b……第二の加熱部
20……処理対象物
21……押圧装置
22……弾性部材
40……チップ管取り付け装置
41……チップ管
42……チップ管保持部
44……押し当てバネ
47……筒部
51……補助真空排気装置
52……放電ガス導入装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の板と、第二の板と、前記第一、第二の板の間に配置された環状の封着部材で構成された処理対象物の前記封着部材を軟化させた後、固化させて前記第一の板と前記第二の板とを間に隙間を存した状態で互いに固定させるプラズマディスプレイパネル製造装置であって、
真空槽と、
前記真空槽内に配置され、前記処理対象物の前記第一の板の表面の周辺部分と接触する複数の支持部材と、
前記支持部材を前記第一の板に接触させ、前記支持部材によって前記処理対象物を支持した状態で、前記処理対象物を間に挟んで前記支持部材と対面して前記第二の板の表面に接触する弾性部材と、
前記弾性部材を、前記第二の板表面の、前記支持部材を通る法線方向に押圧する押圧装置と、
前記処理対象物を輻射熱によって加熱し、前記封着部材を軟化させる加熱装置と、
を有するプラズマディスプレイパネル製造装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記封着部材が軟化する温度よりも高い耐熱性のあるバネを有する請求項1記載のプラズマディスプレイパネル製造装置。
【請求項3】
前記加熱装置は、前記支持部材が挿入された第一の貫通孔を有する第一の加熱部と、前記弾性部材が挿入された第二の貫通孔を有する第二の加熱部と、を有する請求項1記載のプラズマディスプレイパネル製造装置。
【請求項4】
前記処理対象物の前記第一の板に設けられたガス導入孔にチップ管を取り付けるチップ管取り付け装置を有し、
前記チップ管取り付け装置は、
前記真空槽内に配置され、前記チップ管の一端を、前記第一の板表面の、前記ガス導入孔の開口と対面できる位置に保持するチップ管保持部と、
前記支持部材を前記第一の板に接触させ、前記支持部材によって前記処理対象物を支持した状態で、前記チップ管保持部を、前記第一の板表面の、前記ガス導入孔を通る法線方向に押圧する押し当てバネと、
前記チップ管の前記一端とは逆の他端が気密に挿入された中空の筒部と、
を有し、
前記筒部には、放電ガスを放出する放電ガス導入装置と、内部空間を真空排気する補助真空排気装置とがそれぞれ気密に接続され、
前記第一の加熱部には、前記チップ管取り付け装置が挿入された第三の貫通孔が設けられた請求項3記載のプラズマディスプレイパネル製造装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のプラズマディスプレイパネル製造装置を用いたプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記真空槽内を真空排気した後、前記真空槽内の真空雰囲気を維持しながら前記処理対象物を前記真空槽内に搬入し、
前記支持部材を、前記第一の板を間に挟んで前記封着部材と対面して前記第一の板の表面に接触させ、前記弾性部材を、前記第二の板を間に挟んで前記封着部材と対面して前記第二の板の表面に接触させ、
前記第一、第二の板を加熱して前記封着部材を軟化させ、前記弾性部材を、前記第二の板の表面の、前記支持部材を通る法線方向に押圧して、前記封着部材を前記第一、第二の板に密着させ、
前記処理対象物の加熱を停止し、前記封着部材を固化させて前記第一の板と前記第二の板とを間に隙間を存した状態で互いに固定させるプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項6】
請求項4記載のプラズマディスプレイパネル製造装置を用いたプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記真空槽内を真空排気した後、前記真空槽内の真空雰囲気を維持しながら前記処理対象物を前記真空槽内に搬入し、
前記支持部材を、前記第一の板を間に挟んで前記封着部材と対面して前記第一の板の表面に接触させ、前記弾性部材を、前記第二の板を間に挟んで前記封着部材と対面して前記第二の板の表面に接触させ、前記チップ管の一端を、環状のチップ管接着部材を間に挟んで前記第一の板の表面の前記ガス導入孔の開口を取り囲んで接触させ、
前記第一、第二の板を輻射熱によって加熱して前記封着部材と前記チップ管接着部材を軟化させ、前記弾性部材を、前記第二の板の表面の、前記支持部材を通る法線方向に押圧して、前記封着部材を前記第一、第二の板に密着させ、前記チップ管保持部を、前記第一の板の表面の、前記ガス導入孔を通る法線方向に押圧して、前記チップ管接着部材を前記第一の板の表面と前記チップ管に密着させ、
前記処理対象物の加熱を停止し、前記封着部材を固化させて前記第一の板と前記第二の板とを間に隙間を存した状態で互いに固定させ、前記チップ管接着部材を固化させて前記ガス導入孔と前記チップ管を連通した状態で固定するプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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