説明

プラズマディスプレイパネル誘電体層用のペースト、当該ペーストを用いたプラズマディスプレイパネル、および当該ペーストを用いたプラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】本発明は、高精細表示であっても、高信頼性・高品位画質を確保したPDPを実現しつつ、有害物質であるDBPなどの可塑剤の使用量を削減することを目的としている。
【解決手段】上記の課題を解決するために、本発明のペーストは、少なくとも一方の基板上に電極と誘電体層とを形成したPDPに用いる誘電体層用のペーストであって、ペーストはガラス材料および樹脂成分を含み、ペーストに含まれるアクリル樹脂の重量分率で表記した含有量が、ペースト総量に対して5重量%以上20重量%以下であって、ペーストに含まれる可塑剤の体積分率で表記した含有量が、ガラス材料に対して1.0体積%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示デバイスなどに用いるプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)は、高精細化、大画面化の実現が可能であることから、100インチクラスのテレビなどが製品化されている。近年、PDPは従来のNTSC方式に比べて走査線数が2倍以上のハイディフィニションテレビへの適用が進んでいるとともに、環境問題に配慮して鉛成分を含まないPDPも製品化されている。
【0003】
PDPは、基本的には、前面板と背面板とで構成されている。前面板は、フロート法による硼硅酸ナトリウム系ガラスのガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極とバス電極とで構成される表示電極と、この表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、この誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層とで構成されている。一方、背面板は、ガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のアドレス電極と、アドレス電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色および青色それぞれに発光する蛍光体層とで構成されている。
【0004】
前面板と背面板とはその電極形成面側を対向させて気密封着され、隔壁によって仕切られた放電空間にNe−Xeの放電ガスが55kPa〜80kPaの圧力で封入されている。PDPは、表示電極に映像信号電圧を選択的に印加することによって放電させ、その放電によって発生した紫外線が各色蛍光体層を励起して赤色、緑色、青色の発光をさせてカラー画像表示を実現している。
【0005】
表示電極のバス電極には導電性を確保するための銀電極が用いられ、誘電体層としては酸化鉛を主成分とする低融点ガラスが用いられている。そしてこれらは、バインダー樹脂、可塑剤、溶剤などの成分で構成されたペーストをスクリーン印刷法やダイコート法などを用いて、塗布し、乾燥後450℃から600℃程度で焼成する方法が知られている。そして近年の環境問題への配慮から誘電体層として鉛成分を含まない例が開示されている(例えば、特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−128430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、科学技術の進展や生活形態の多様化に伴い、生産・使用される化学物質は多種類にわたり、生活のあらゆる場面で利用されている。しかし、これらの化学物質の中には人の健康や生態系への有害な影響が懸念されている物質も多くある。その中でもフタル酸ジブチル(Dibutyl phthalate 以下、DBPとする。)などの可塑剤は催奇性、内分泌撹乱が疑われたりするなど有害性の高い物質であり使用量の削減、使用しないことが高く望まれている。一方、DBPなどの可塑剤はその名のとおり材料に柔軟性を与えることによりその材料を加工しやすくすることが出来る特徴から多種多様な材料に添加されている現状がある。
【0008】
一方で、PDPは従来のNTSC方式に比べて走査線数が2倍以上のハイディフィニションテレビへの適用が進んでおり、このようなハイビジョン化によって、走査線数が増加して表示電極の数が増加し、さらに表示電極間隔が小さくなる。そのため、表示電極を被覆する誘電体層も小さくなった表示電極間隔に空隙などなく形成される必要がある。空隙などが存在した場合、誘電体層に求められる絶縁耐圧特性が低下してしまう。そこで従来ではそうした誘電体層の形成には上記の可塑剤を含んだペーストを用いてスクリーン印刷法やダイコート法を用いて誘電体層を形成することにより空隙のない誘電体層を形成していた。
【0009】
しかしながら前述のとおりフタル酸ジブチルなどの可塑剤は催奇性、内分泌撹乱が疑われたりするなど有害性の高い物質であり、使用量の削減、使用しないことが高く望まれている。
【0010】
本発明は、このような上記の課題を解決して、高精細表示でも、高信頼性を確保したP
DPを実現しつつ、有害物質であるDBPなどの可塑剤の使用量を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明のペーストは、少なくとも一方の基板上に電極と誘電体層とを形成したPDPに用いる誘電体層用のペーストであって、ペーストはガラス材料および樹脂成分を含み、ペーストに含まれるアクリル樹脂の重量分率で表記した含有量が、ペースト総量に対して5重量%以上20重量%以下であって、ペーストに含まれる可塑剤の体積分率で表記した含有量が、ガラス材料に対して1.0体積%以下であることを特徴とする。また本発明のPDPは、少なくとも一方の基板上に電極と誘電体層とを形成したPDPであって、上記誘電体層用ペーストを用いて誘電体層を形成していることを特徴とする。さらに、少なくとも一方の基板上に電極と誘電体層とを形成する工程を有したPDPの製造方法であって、誘電体層を形成する工程において誘電体ペーストを用いた塗布工程が1回のみであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明は、高精細表示であっても、高信頼性・高品位画質を確保したPDPを実現しつつ、有害物質であるDBPなどの可塑剤の使用量を削減することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態におけるPDPの構造を示す斜視図
【図2】同PDPの前面板の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態におけるPDPについて図面を用いて説明する。
【0015】
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態におけるPDPの構造を示す斜視図である。PDPの基本構造は、一般的な交流面放電型PDPと同様である。図1に示すように、PDP1は前面ガラス基板3などよりなる前面板2と、背面ガラス基板11などよりなる背面板10とが対向して配置され、その外周部をガラスフリットなどからなる封着材によって気密封着されている。封着されたPDP1内部の放電空間16には、NeおよびXeなどの放電ガスが55kPa〜80kPaの圧力で封入されている。
【0016】
前面板2の前面ガラス基板3上には、走査電極4および維持電極5よりなる一対の帯状の表示電極6とブラックストライプ(遮光層)7が互いに平行にそれぞれ複数列配置されている。前面ガラス基板3上には表示電極6と遮光層7とを覆うようにコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成され、さらにその表面に酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層9が形成されている。
【0017】
また、背面板10の背面ガラス基板11上には、前面板2の走査電極4および維持電極5と直交する方向に、複数の帯状のアドレス電極12が互いに平行に配置され、これを下地誘電体層13が被覆している。さらに、アドレス電極12間の下地誘電体層13上には放電空間16を区切る所定の高さの隔壁14が形成されている。隔壁14間の溝にアドレス電極12毎に、紫外線によって赤色、青色および緑色にそれぞれ発光する蛍光体層15が順次塗布して形成されている。走査電極4および維持電極5とアドレス電極12とが交差する位置に放電セルが形成され、表示電極6方向に並んだ赤色、青色、緑色の蛍光体層15を有する放電セルがカラー表示のための画素になる。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態におけるPDPの誘電体層8の構成を示す前面板2の断面図である。図2は図1と上下反転させて示している。図2に示すように、フロート法などにより製造された前面ガラス基板3に、走査電極4と維持電極5よりなる表示電極6とブラックストライプ7がパターン形成されている。走査電極4と維持電極5はそれぞれインジウムスズ酸化物(ITO)や酸化スズ(SnO2)などからなる透明電極4a、5aと、透明電極4a、5a上に形成された金属バス電極4b、5bとにより構成されている。金属バス電極4b、5bは透明電極4a、5aの長手方向に導電性を付与する目的として用いられ、銀(Ag)材料を主成分とする導電性材料によって形成されている。
【0019】
誘電体層8は、前面ガラス基板3上に形成されたこれらの透明電極4a、5aと金属バス電極4b、5bとブラックストライプ7を覆って形成し、さらに誘電体層8上に保護層9を形成している。
【0020】
次に、PDPの製造方法について説明する。まず、前面ガラス基板3上に、走査電極4および維持電極5と遮光層7とを形成する。これらの透明電極4a、5aと金属バス電極4b、5bは、フォトリソグラフィ法などを用いてパターニングして形成される。透明電極4a、5aは薄膜プロセスなどを用いて形成され、金属バス電極4b、5bは銀(Ag)材料を含むペーストを所望の温度で焼成して固化している。また、遮光層7も同様に、黒色顔料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や黒色顔料をガラス基板の全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、焼成することにより形成される。
【0021】
次に、走査電極4、維持電極5および遮光層7を覆うように前面ガラス基板3上に誘電体ペーストをダイコート法などにより塗布して誘電体ペースト層(誘電体材料層)を形成する。誘電体ペーストを塗布した後、所定の時間放置することによって塗布された誘電体ペースト表面がレベリングされて平坦な表面になる。その後、誘電体ペースト層を焼成固化することにより、走査電極4、維持電極5および遮光層7を覆う誘電体層8が形成される。なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体材料、バインダーおよび溶剤を含む塗料である。次に、誘電体層8上に酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層9を真空蒸着法により形成する。以上の工程により前面ガラス基板3上に所定の構成物(走査電極4、維持電極5、遮光層7、誘電体層8、保護層9)が形成され、前面板2が完成する。
【0022】
一方、背面板10は次のようにして形成される。まず、背面ガラス基板11上に、銀(Ag)材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や、金属膜を全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする方法などによりアドレス電極12用の構成物となる材料層を形成し、それを所望の温度で焼成することによりアドレス電極12を形成する。次に、アドレス電極12が形成された背面ガラス基板11上にダイコート法などによりアドレス電極12を覆うように誘電体ペーストを塗布して誘電体ペースト層を形成する。その後、誘電体ペースト層を焼成することにより下地誘電体層13を形成する。なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体材料とバインダーおよび溶剤を含んだ塗料である。
【0023】
次に、下地誘電体層13上に隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストを塗布して所定の形状にパターニングすることにより、隔壁材料層を形成した後、焼成することにより隔壁14を形成する。ここで、下地誘電体層13上に塗布した隔壁用ペーストをパターニングする方法としては、フォトリソグラフィ法やサンドブラスト法を用いることができる。次に、隣接する隔壁14間の下地誘電体層13上および隔壁14の側面に蛍光体材料を含む蛍光体ペーストを塗布し、焼成することにより蛍光体層15が形成される。以上の工程により、背面ガラス基板11上に所定の構成部材を有する背面板10が完成する。
【0024】
このようにして所定の構成部材を備えた前面板2と背面板10とを走査電極4とアドレス電極12とが直交するように対向配置して、その周囲をガラスフリットで封着し、放電空間16にNe、Xeなどを含む放電ガスを封入することによりPDP1が完成する。
【0025】
次に前面板2の誘電体層8について詳細に説明する。従来、誘電体層を形成する方法として、誘電体ガラス粉体成分(以下、誘電体ガラス材料とする)とバインダー樹脂、可塑剤、溶剤などの成分で構成されたペーストをスクリーン印刷法やダイコート法などを用いて、電極を形成した基板上に塗布し、乾燥後450℃から600℃程度で焼成する方法や、誘電体ペーストをフィルム上に塗布、乾燥して、電極を形成した基板上に転写し、450℃から600℃程度で焼成するドライフィルム法が知られている。
【0026】
しかしながら、ドライフィルム法は前述したように生産時のコストが高いことや環境問題といった点で好ましくない。また、誘電体ペーストを用いたスクリーン印刷法やダイコート法では誘電体層の高耐電圧性を確保するため、表示電極6を空隙なく被覆する必要があり従来ではペーストを複数回塗布および焼成する方法がとられてきた。このため多くの生産設備が必要になり、さらに製造時のエネルギー消費の増大などコストアップとなっていた。
【0027】
すなわち、低コストで誘電体層8を形成するためには、誘電体ペーストを用いて塗布工程を1回のみとしつつ、絶縁耐圧性の高い誘電体層8を形成することが必要となる。そして誘電体ペーストを用いて塗布工程を1回のみとした場合、さらに次のような課題が発生する。
【0028】
表示電極6の成分に銀が含まれる場合、誘電体層8や前面ガラス基板3への銀イオンの拡散が生じる。そしてこの銀イオンの拡散によって、誘電体層8中のアルカリ金属イオンや前面ガラス基板3中に含まれる2価のスズイオンによって還元作用を受け、銀のコロイドを形成する。
【0029】
その結果、誘電体層やガラス基板が、黄色や褐色により強く着色するという黄変現象が発生するだけでなく、銀のコロイドの存在は誘電体層8の絶縁耐圧性を低下させることに繋がる。
【0030】
そして誘電体層8の形成において、誘電体ペーストを用いて塗布工程を1回のみとした場合、このような現象がより顕著に現出することが判明した。特に、近年のハイビジョン化によって、走査線数が増加して表示電極の数が増加し、さらに表示電極間隔が小さくなる。そのため黄変現象・誘電体層絶縁耐圧低下が顕著となり、画像品質を著しく損なうとともに誘電体層8の絶縁不良によって生産歩留まりを低下させる。
【0031】
これに対し従来技術では、誘電体ペーストにおける可塑剤の量を減らすことによって、黄変が緩和するという例が開示されている。しかしながら、発明者らが検討した結果、誘電体ペーストに含まれる可塑剤を、誘電体ガラス材料に対する体積分率で1.0体積%以下にした場合、誘電体ペーストを乾燥させた乾燥膜に50〜500μm程度の微小なクラックが入りやすく、このクラックは、焼成後に誘電体層8の絶縁破壊の発生原因となり、結果的に誘電体層8の絶縁耐圧性を劣化させてしまうことが判明した。
【0032】
これに対して、誘電体層8の誘電体ペーストについて、誘電体ペーストに含まれるアクリル樹脂を、ペースト総量に対する重量分率で5重量%以上20重量%以下とすることで、可塑剤を1.0%以下にしても、誘電体ペーストを乾燥させた乾燥膜に微小なクラックが発生しないことを見出した。これはアクリル樹脂を用いた乾燥膜自体に塑性があるためである。
【0033】
ここでアクリル樹脂の含有量を、ペースト総量に対して5重量%より低くした場合、十分な塑性が得られず、乾燥膜に50〜500μm程度の微小なクラックが入りやすくなる。また、同含有量を20重量%よりも大きくした場合、後の焼成工程を経ても誘電体層中に樹脂成分が残留するため、結果的にPDP放電空間に持ち込まれる残留ガスが増加し、画像表示状態を悪化することとなり、好ましくない。
【0034】
以上のように本発明の実施の形態では、誘電体層8の誘電体ペーストについて、誘電体ペーストに含まれるアクリル樹脂を、ペースト総量に対する重量分率で5重量%以上20重量%以下とし、かつ誘電体ペーストに含まれる可塑剤を、誘電体ガラス材料に対する体積分率で1.0体積%以下としている。これによって低コストで誘電体層8を形成しつつ、高い絶縁耐圧性を保持し、発光画素の欠点のない表示品質の優れたPDPを実現しつつ、有害物質であるDBPなどの可塑剤の使用量を削減することが出来る。
【0035】
次に本発明の実施の形態における誘電体層8の製造方法について詳細に説明する。誘電体層8に含まれる誘電体ガラス材料は、鉛(Pb)系成分以外を主成分とし、さらに酸化銅(CuO)やR2O(RはLi、Na、K、RbおよびCsから選ばれる少なくとも1種)を含有する材料組成により構成されている。
【0036】
これらの組成成分からなる誘電体材料を、湿式ジェットミルやボールミルで平均粒径が0.5μm〜3.0μmとなるように粉砕して誘電体ガラス材料の粉末を作製する。次にこの誘電体ガラス材料の粉末35重量%〜65重量%と、バインダー成分35重量%〜65重量%と、可塑剤を誘電体ガラス材料に対する体積分率で1.0体積%以下とを、三本ロールでよく混練してダイコート用あるいは印刷用の誘電体層用ペーストを作製する。
【0037】
バインダー成分はエチルセルロースあるいはアクリル樹脂を含む溶剤である。但し、アクリル樹脂についてはペースト総量に対する重量分率で5重量%以上20重量%である。また、分散剤としてグリセロールモノオレート、ソルビタンセスキオレヘート、ホモゲノール(Kaoコーポレーション社製品名)、アルキルアリル基のリン酸エステルなどを添加して印刷性を向上させてもよい。
【0038】
溶剤成分としてはターピネオールあるいはブチルカルビトールアセテートであるが、α−、β−、γ−テルピネオールなどのテルペン類、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エチレングリコールジアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールジアルキルエーテルアセテート類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジプロピレングリコールジアルキルエーテルアセテート類、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、トリプロピレングリコールジアルキルエーテル類、トリプロピレングリコールトリアルキルエーテル類、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、トリプロピレングリコールジアルキルエーテルアセテート類、トリプロピレングリコールトリアルキルエーテルアセテート類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類等も適宜選択できる。
【0039】
また、可塑剤としてはフタル酸ジブチルを用いているが、これも適宜フタル酸ジオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチルなどが選択できる。また必要に応じて分散剤としてグリセロールモノオレート、ソルビタンセスキオレヘート、ホモゲノール(Kaoコーポレーション社製品名)、アルキルアリル基のリン酸エステルなどを添加して印刷性を向上させてもよい。
【0040】
次に、この誘電体層用ペーストを用い、表示電極6を覆うように前面ガラス基板3にダイコート法あるいはスクリーン印刷法で印刷して乾燥させ、その後、誘電体材料の軟化点より少し高い温度の575℃〜600℃で焼成する。
【0041】
なお、誘電体層8の膜厚が小さいほどパネル輝度の向上と放電電圧を低減するという効果は顕著になるので、絶縁耐圧が低下しない範囲内であればできるだけ膜厚を小さく設定するのが望ましい。このような条件と可視光透過率の観点から、本発明の実施の形態では、誘電体層8の膜厚を41μm以下に設定している。
【0042】
(実施例)
本発明の実施形態におけるPDP1として、放電セルを42インチクラスのハイビジョンテレビに適合するように、隔壁14の高さを0.15mm、隔壁の間隔(セルピッチ)を0.15mm、表示電極6の電極間距離を0.06mmで電極の膜厚が6.0μmのものを作製し、Xeの含有量が体積分率15%のNe−Xe系の混合ガスを封入圧60kPaに封入したPDP1を作製してその性能を評価した。
【0043】
表1に実施検討した誘電体ペーストの可塑剤の含有量、エチルセルロース含有量、アクリル樹脂含有量を示す。そしてそのペーストを用いて作製した乾燥膜のクラック数の測定結果を示す。同表に示す誘電体ペーストを作製し、これらの誘電体層8を有したPDPを作製した。
【0044】
【表1】

【0045】
なお、表1に記載してある可塑剤の含有量、エチルセルロース含有量、アクリル樹脂含有量はこれまでの記述のとおり、可塑剤の含有量は誘電体ガラス材料に対しての体積分率、エチルセルロース含有量、アクリル樹脂含有量はペースト総量に対しての重量分率である。そして表1に示される誘電体ペーストから構成されるPDPの特性を評価するために、絶縁耐圧性を劣化させる指標として、誘電体層が形成された前面板の誘電体層の表面に存在する微小クラックの個数を計測した。その評価結果も表1に併せて示す。
【0046】
同表に示すように、比較例においては可塑剤が0.9体積%となっているが、アクリル樹脂を含まないため、微小クラックが2個発生しているため好ましくない。一方、実施例においては可塑剤を含まず、アクリル樹脂を8.8重量%含むため微小クラックの発生は見られない。
【0047】
以上のように、本発明のPDPは少なくとも一方の基板上に電極と誘電体層とを形成したPDPであって、誘電体層は誘電体ペーストを用いて形成し、誘電体ペーストに含まれるアクリル樹脂を、ペースト総量に対する重量分率で5重量%以上20重量%以下で、誘電体ペーストに含まれる可塑剤を、誘電体ガラス材料に対する体積分率で1.0体積%以下含むことを特徴とする。このような構成とすることで、高精細表示であっても、高信頼性・高品位画質を確保したPDPを実現しつつ、有害物質であるDBPなどの可塑剤の使用量を削減することが出来る。
【0048】
なお、以上に述べた各材料組成の含有量数値は、誘電体材料では±0.05%程度の測定誤差が存在し、焼成後の誘電体層では±0.1%程度の測定誤差が存在する。これらの誤差を含めた数値範囲の含有量での材料組成においても、本発明と同様の効果は得られる。また、鉛成分、ビスマス成分について「実質的に含有しない」というのは、不純物等で鉛成分またはビスマス成分を含んだ誘電体層についても本願発明に相当すると考える。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上述べてきたように、本発明は、高精細表示であっても、高信頼性・高品位画質を確保したPDPを実現しつつ、有害物質であるDBPなどの可塑剤の使用量を削減することが出来る点で有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 PDP
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
4a、5a 透明電極
4b、5b 金属バス電極
5 維持電極
6 表示電極
7 ブラックストライプ(遮光層)
8 誘電体層
9 保護層
10 背面板
11 背面ガラス基板
12 アドレス電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の基板上に電極と誘電体層とを形成したプラズマディスプレイパネルに用いる誘電体層用のペーストであって、前記ペーストはガラス材料および樹脂成分を含み、前記ペーストに含まれるアクリル樹脂の重量分率で表記した含有量が、前記ペースト総量に対して5重量%以上20重量%以下であって、前記ペーストに含まれる可塑剤の体積分率で表記した含有量が、前記ガラス材料に対して1.0体積%以下であることを特徴とするプラズマディスプレイパネルに用いる誘電体層用のペースト。
【請求項2】
少なくとも一方の基板上に電極と誘電体層とを形成したプラズマディスプレイパネルであって、請求項1に記載の誘電体層用ペーストを用いて前記誘電体層を形成していることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
少なくとも一方の基板上に電極と誘電体層とを形成する工程を有したプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記誘電体層を形成する工程において前記誘電体ペーストを用いた塗布工程が1回のみであることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−165487(P2011−165487A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27231(P2010−27231)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】