説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】駆動時の振動音の発生を防止するとともに製造時に放電特性が低下するのを防止することが出来るPDPを提供する。
【解決手段】隔壁が行方向に延びる横壁と列方向に延びる縦壁を有する略格子形状を有しており、この隔壁の横壁と縦壁が交差する部分のうち任意の交差部分の一方の基板側に対向する面上にのみ接着層が形成されて、この接着層が一方の基板側に接着することにより一方の基板と他方の基板を互いに固定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プラズマディスプレイパネルの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)は、前面ガラス基板の背面に行方向に延びる複数の行電極対が形成され、前面ガラス基板と放電空間を介して対向する背面ガラス基板に列方向に延びる複数の列電極が形成され、行電極対と列電極が交差する部分の放電空間にそれぞれ放電セルが形成されて隔壁によってそれぞれ区画されており、各放電セル内にそれぞれ放電セル毎に色分けされた赤,緑,青の蛍光体層が形成された構成を備えている。
【0003】
そして、前面ガラス基板と背面ガラス基板の間には、放電空間の外周縁に沿って放電空間を密閉する封着層が形成されていて、この封着層によって前面ガラス基板と背面ガラス基板が互いに分離不能に固定されている。
【0004】
このような構成のPDPでは、行電極対の一方の行電極と列電極との間で選択的にアドレス放電が発生され、このアドレス放電によって選択された放電セル(発光セル)においてサステイン放電が発生されて赤,緑,青の蛍光体層が発光することにより、マトリクス表示による画像形成が行われる。
【0005】
従来、上記のような構成のPDPは、その駆動時に、各放電セルにおいてアドレス放電やサステイン放電等の各種放電が繰り返されることによって、放電空間に封入された放電ガスの膨張と収縮が繰り返され、さらに、行電極と列電極間に印加される電圧によって生じる静電気力によって、前面ガラス基板と背面ガラス基板間に反発と吸引が繰り返される。
【0006】
このため、PDPの駆動時に前面ガラス基板と背面ガラス基板に微小振動が発生し、前面ガラス基板と背面ガラス基板の間が、放電空間を密閉するために放電空間の外周縁に沿って形成された封着層のみによって互いに固定されている場合には、隔壁の頂部と前面ガラス基板側の構造物との間に接触と離間が繰り返されることによる異音やノイズが発生して、ユーザに不快感を与えてしまうという問題が生じる。
【0007】
従来のPDPには、隔壁の頂面が、対向する他方の基板の内面側に形成された接着層によって、他方の基板側に離間しないように接着されているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
この従来のPDPは、接着層が他方の基板の内面側にシール用ガラスフリットによって隔壁と同じパターンで形成されており、この接着層によって隔壁の頂面の全面が他方の基板の内面側に接着されていることによって、基板の微小振動による振動音の発生を防止する効果を有している。
【0009】
しかしながら、この従来のPDPは、接着層が隔壁と同じパターンで形成されていてその体積が大きいために、製造工程において接着層が加熱によって隔壁に溶着される際に、接着層を形成しているシール用ガラスフリットからの不純ガスの発生量が多く、このため、パネルの内部が汚染されて、例えば行電極を被覆する誘電体層を保護するためのMgO層の機能を低下させるなどの理由により、PDPの放電特性を悪化させてしまうといった問題を有している。
【0010】
【特許文献1】特開平3−263731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、上記のような従来のPDPが有している問題点を解決することをその技術的課題の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明によるPDPは、上記目的を達成するために、放電空間を介して一対の基板が対向され、一方の基板側に、行方向に延び列方向に並設された複数の行電極対が設けられ、他方の基板側に、列方向に延び行方向に並設された複数の列電極と、放電空間の列電極と行電極対が交差する部分にそれぞれ形成される単位発光領域を区画する隔壁と、この隔壁によって区画された単位発光領域内に形成された蛍光体層が設けられ、隔壁が行方向に延びる横壁と列方向に延びる縦壁を有する略格子形状を有しており、蛍光体層が単位発光領域ごとに異なる少なくとも三色の蛍光材によって形成されて色の異なる蛍光体層が行方向に順に配列されているプラズマディスプレイパネルにおいて、前記隔壁の横壁と縦壁が交差する部分のうち任意の交差部分の一方の基板側に対向する面上にのみ接着層が形成されて、この接着層が一方の基板側に接着することにより一方の基板と他方の基板を互いに固定していることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明は、放電空間を介して一対の基板が対向され、一方の基板側に、行方向に延び列方向に並設された複数の行電極対が設けられ、他方の基板側に、列方向に延び行方向に並設された複数の列電極と、放電空間の列電極と行電極対が交差する部分にそれぞれ形成される単位発光領域を区画する隔壁と、この隔壁によって区画された単位発光領域内に形成された蛍光体層が設けられ、隔壁が行方向に延びる横壁と列方向に延びる縦壁を有する略格子形状を有しており、蛍光体層が単位発光領域ごとに異なる少なくとも三色の蛍光材によって形成されて色の異なる蛍光体層が行方向に順に配列されているプラズマディスプレイパネルにおいて、前記隔壁の横壁と縦壁が交差する部分のうち任意の交差部分の一方の基板側に対向する面上にのみ接着層が形成されて、この接着層が一方の基板側に接着することにより一方の基板と他方の基板を互いに固定しているPDPを、その最良の実施形態としている。
【0014】
この実施形態のPDPによれば、PDPの表示領域内において、隔壁上に形成された接着層によって放電空間を介して互いに対向されている二枚の基板が互いに固定されているので、PDPの駆動時に基板が振動して駆動音が発生するのが防止される。
【0015】
そして、このPDPの表示領域内において二枚の基板を互いに固定する接着層が、隔壁の横壁と縦壁の交差部分のうちの任意の交差部分にのみ形成されていることによって、隔壁の全面に接着層が形成された従来のPDPに比べて、接着層を形成する材料を減少させることが出来るので、例えばガラスフリット材によって接着層を形成する場合のように、PDPの製造工程において接着層を加熱して一方の基板側に溶着させる際に、接着層から発生する不純ガスによって放電空間内が汚染されてPDPの放電特性が低下するのを防止することが出来る。
【0016】
上記実施形態のPDPにおいて、蛍光体層は単位発光領域ごとに第一色、第二色、及び第三色の色が異なる蛍光材によって形成され、隔壁の横壁と縦壁の交差部分のうちの、第一色及び第二色の蛍光体層が形成された隣接する単位発光領域の間に位置する縦壁と横壁の交差部分の面積が、他の交差部分よりも大きくなっていて、この面積が大きくなっている交差部分の面上にのみ接着層が形成されるようにするのが好ましい。
【0017】
これによって、振動音の発生防止に必要な接着層の一方の基板側との溶着面積を十分に確保することが出来、さらに、接着層を形成するガラスフリット材が放電セル内に食み出すのを防止して、PDP駆動時の輝度低下や発光効率の低下を防止することができる。
【0018】
また、上記実施形態のPDPにおいて、第一色、第二色、及び第三色の蛍光材のうち、第三色の蛍光材を最も高輝度としてもよい。
これによって、PDP全体の輝度低下を防止することができる。
また、上記実施形態のPDPにおいて、第一色、第二色、及び第三色の蛍光材のうち、第三色の蛍光材を最も低輝度としてもよい。
【0019】
この場合、各色の単位発光領域間の輝度のバランスが確保されてホワイトバランスを採ることが出来るようになる。
また、上記実施形態のPDPにおいて、蛍光体層を形成する蛍光材の色が赤,緑,青の三色であり、赤色の蛍光体層が形成された単位発光領域と青色の蛍光体層が形成された単位発光領域の間に位置する縦壁と横壁の交差部分の面積が他の交差部分よりも大きくなっているようにするのが好ましい。
【0020】
これによって、接着層を形成するために横壁と縦壁の交差部分の頂面の面積を大きくするのに伴って、蛍光体層を形成する蛍光材の特性により赤色の蛍光体層が形成された単位発光領域や青色の蛍光体層が形成された単位発光領域よりも輝度が高い緑色の蛍光体層が形成された単位発光領域の開口面積を減少させる必要がなくなって、PDP全体の輝度低下を防止することができる。
【0021】
なお、上記において横壁と縦壁の交差部分の面積を大きくする態様としては、単位発光領域を蛍光体層の色毎に列方向に配列して、横壁の列方向において隣接する赤色の蛍光体層が形成された単位発光領域の間および青色の蛍光体層が形成された単位発光領域の間に位置する部分の列方向の幅を、緑色の蛍光体層が形成された単位発光領域の間に位置する部分の幅よりも大きくする態様が挙げられる。
【0022】
また、上記実施形態のPDPにおいて、行電極対が、単位発光領域を挟んで列電極との間で放電を発生させる第1行電極とこの第1行電極との間で放電を発生させる第2行電極とによって構成され、行電極対の第1行電極と第2行電極が、隣接する行電極対間において交互に入れ替えて配置されて、第1行電極同士および第2行電極同士がそれぞれ互いに背中合わせに位置されており、隔壁の横壁が、それぞれ、隣接する行電極対の互いに背中合わせに位置する第1行電極または第2行電極に対向する位置に配置されていて、背中合わせに位置する第1行電極に対向する横壁と縦壁の交差部分の面上にのみ接着層が形成されるようにするのが好ましい。
【0023】
これによって、PDP駆動時のアドレス放電(発光させる放電セルを選択するために列電極との間で発生される放電)に関与しない行電極Xに対向する横壁の頂面の面積のみが拡大されるので、接着層の形成に伴ってアドレス放電の発生確率を低下させることなく振動音の発生を防止することが出来るようになる。
【0024】
また、上記実施形態のPDPにおいて、隣接する前記接着層間の間隔が、
f=(22/2πL2)×√(Eh2/12ρ)
L:接着層間の間隔
f:固有振動数
E:基板のヤング率
h:基板の厚さ
ρ:基板の密度
の式に基づいて、固有振動数が20kHzよりも大きくなる値に設定されるようにするのが好ましい。
【0025】
これによって、人間の可聴帯域における振動音の発生を有効に抑制しながら、接着層の数を最大限に減少させることが出来る。
【0026】
また、上記実施形態のPDPにおいて、隣接する前記接着層間の間隔が、
f=(22/2πL2)×√(Eh2/12ρ)
L:接着層間の間隔
f:固有振動数
E:基板のヤング率
h:基板の厚さ
ρ:基板の密度
の式に基づいて、固有振動数が4kHzよりも大きくなる値に設定されるようにするのが好ましい。
【0027】
これによって、耳障りで不快な振動音の発生を有効に抑制しながら、接着層の数を最大限に減少させることが出来る。
【実施例1】
【0028】
図1ないし5は、この発明の実施形態におけるPDPの第1実施例を示しており、図1はこの実施例におけるPDPの正面図,図2は図1のH−H線における断面図,図3は図1のV1−V1線における断面図,図4は図1のV2−V2線における断面図,図5は図1のV3−V3線における断面図である。
【0029】
この図1ないし5において、PDPの表示面を構成する前面ガラス基板1の背面に、複数の行電極対(X,Y)が、それぞれ行方向(図1の左右方向)に延びるとともに列方向(図1の上下方向)に互いに平行に並設されている。
【0030】
この行電極対(X,Y)を構成する行電極XとYは、それぞれ、前面ガラス基板1の行方向に帯状に延びる金属膜からバス電極Xa,Yaと、このバス電極Xa,Yaの等間隔位置に接続されているとともに、対になっている相手の行電極側に列方向に延びて互いに放電ギャップgを介して対向されるITO等からなる複数の透明電極Xb,Ybとによって構成されている。
【0031】
そして、この行電極対(X,Y)の行電極XとYの配置は、隣接する行電極対(X,Y)間で交互に入れ替えられていて、X−Y,Y−X,X−Y…のように隣接する行電極対(X,Y)間で行電極X同士および行電極Y同士が互いに背中合わせに位置されるようになっている。
【0032】
前面ガラス基板1の背面にはさらに誘電体層2が形成されて、行電極対(X,Y)が被覆されており、この誘電体層2の背面に酸化マグネシウム等によって保護層3が形成されて、誘電体層2の背面が被覆されている。
前面ガラス基板1には、背面ガラス基板4が所要の間隔を空けて平行に対向されている。
【0033】
この背面ガラス基板4の前面ガラス基板1に対向する面(内面)上には、複数の列電極Dが、それぞれ、行電極対(X,Y)の互いに放電ギャップgを介して対向して対になっている透明電極XbとYbに対向する位置において列方向(行電極対(X,Y)と直交する方向)に延びるように、互いに行方向に所要の間隔を開けて平行に並設されている。
【0034】
さらに、背面ガラス基板4の内面上には、列電極保護層(誘電体層)5が形成されて、この列電極保護層5によって列電極Dが被覆されている。
この列電極保護層5上に、隔壁6が形成されている。
【0035】
この隔壁6は、列方向に隣接する行電極対(X,Y)の互いに背中合わせに位置する二本のバス電極Xaとその間の帯状部分、および、互いに背中合わせに位置する二本のバス電極Yaとその間の帯状部分にそれぞれ対向する位置において行方向に延びる複数の横壁6Aと、隣接する列電極Dの間の部分に対向する位置においてそれぞれ列方向に延びる複数の縦壁6Bとによって略梯子形状に成形されている。
【0036】
そして、この隔壁6によって、前面ガラス基板1と背面ガラス基板5の間に形成される放電空間が、行電極対(X,Y)の互いに対になっている透明電極XbとYbに対向する部分毎に区画されて、それぞれ放電セルCが形成されている。
この隔壁6の形状については、後でさらに詳述する。
【0037】
各放電セルC内に面する隔壁6の横壁6Aと縦壁6Bの側面および列電極保護層5の表面には蛍光体層7が形成されて、これら五つの面が蛍光体層7によって覆われている。
【0038】
この蛍光体層7には、赤色蛍光材料によって形成された赤色蛍光体層7(R)と、緑色蛍光材料によって形成された緑色蛍光体層7(G)と、青色蛍光材料によって形成された青色蛍光体層7(B)があり、赤色蛍光体層7(R)が形成された赤色放電セルC(R)と緑色蛍光体層7(G)が形成された緑色放電セルC(G)と青色蛍光体層7(B)が形成された青色放電セルC(B)が、行方向にR−G−B−R−G−B…のように順に並ぶように配列されているとともに、列方向に同じ色の放電セルCが並ぶように配列されている。
【0039】
前面ガラス基板1と背面ガラス基板4の間には、放電空間の四方の外周縁に沿って図示しない封着層が形成されて、この封着層によって放電空間が密閉されているとともに、前面ガラス基板1と背面ガラス基板4が互いに分離不能に固定されている。
そして、放電空間内には、キセノンを含む放電ガスが封入されている。
【0040】
次に隔壁6の形状について、詳述する。
隔壁6の横壁6Aのうち、列方向に隣接する行電極対(X,Y)の互いに背中合わせに位置する二本のバス電極Xaとその間の帯状部分に対向する第1横壁6A1は、行方向に隣接する青色放電セルC(B)と赤色放電セルC(R)の間に位置する第1縦壁6B1と交差する部分を挟んだ両側の部分(列方向において隣接する青色放電セルC(B)の間に位置する部分と列方向において隣接する赤色放電セルC(R)の間に位置する部分)の行方向における幅d1が、列方向において隣接する緑色放電セルC(G)の間に位置する部分の幅d2よりも大きくなるように成形されている。
【0041】
すなわち、第1横壁6A1は、第1縦壁6B1との交差部分の前面ガラス基板1側から見た正面面積が、第1横壁6A1の他の部分の正面面積よりも大きくなるように成形されている。
【0042】
図示の例では、第1横壁6A1は、その列方向の幅d1が、列方向に隣接する青色放電セルC(B)間において、緑色放電セルC(G)と青色放電セルC(B)の間に位置する第3縦壁6B3との交差部分では第1横壁6A1の緑色放電セルC(G)間に位置する部分の幅d2と同じであるが、図1において左側から右方向に向かって徐々に大きくなって、第1縦壁6B1と第1横壁6A1が交差する部分において最大となり、その後、列方向に隣接する赤色放電セルC(R)間において、右方向に向かって徐々に小さくなって、隣接する赤色放電セルC(R)と緑色放電セルC(G)との間の位置する第2縦壁6B2と第1横壁6A1が交差する部分において再度、緑色放電セルC(G)間の部分の幅d2と同じになっていて、第1横壁6A1の第1縦壁6B1との交差部分6A1aの前面ガラス基板1側から見た正面形状が、略菱形になっている。
【0043】
隔壁6の横壁6Aのうち、互いに背中合わせに位置する二本のバス電極Yaに対向する第2横壁6A2は、従来のPDPと同様に、前面ガラス基板1側から見た正面形状が列方向の幅が行方向に沿って一定な帯状に成形されており、図示の例では、この第2横壁6A2の列方向の幅が、第1横壁6A1の緑色放電セルC(G)間の列方向の幅d2と同じ大きさに設定されている。
【0044】
この第1横壁6A1の第1縦壁6B1との各交差部分6A1aの頂面上には、ガラスフリット材によって、それぞれ、接着層8が形成されている。
【0045】
この接着層8は、PDPの製造工程において例えばスクリーン印刷等によってガラスフリット材が所要の精度で隔壁6の第1横壁6A1の交差部分6A1a上に形成され、図示の例では略円筒形状に成形されている。
【0046】
なお、第1横壁6A1の交差部分6A1aの頂面の面積は、このPDPの製造工程においてガラスフリット材を交差部分6A1a上に塗布する印刷装置の印刷精度に合わせて決定される。
【0047】
各接着層8は、PDPの製造工程における封着工程時に、背面ガラス基板4上に前面ガラス基板1が重ね合わされた状態で、この背面ガラス基板4上の周縁部に形成された図示しない封着層とともに加熱されて、前面ガラス基板1側の保護層3の内面に溶着されることにより、封着層とともに前面ガラス基板1を背面ガラス基板4に対して離間不能に固定する。
【0048】
上記PDPは、隔壁6の第1横壁6A1と第1縦壁6B1との交差部分6A1aの頂面上にそれぞれ形成された接着層8によって、PDPの表示領域内において、前面ガラス基板1側と背面ガラス基板4側との間が離間不能に固定されていることによって、PDP駆動時の前面ガラス基板と背面ガラス基板の微小振動によって振動音が発生するのを防止することが出来る。
【0049】
そして、上記PDPは、PDPの表示領域内において前面ガラス基板1側の保護層3と背面ガラス基板4側の隔壁6とを離間不能に固定する接着層8が、隔壁6の横壁6Aと縦壁6Bの交差部分のうち、選択された任意の交差部分の頂面上にのみ形成されていることによって、隔壁の頂面の全面に亘って接着層が形成されている従来のPDPの場合と比べて、接着層8の体積が小さく(すなわち、接着層8を形成するガラスフリット材の量が少なく)、このため、製造工程における封着工程時に、加熱によるガラスフリット材からの不純ガスの発生量を従来にPDPに比べて大幅に減少させることが出来るので、ガラスフリット材から発生する不純ガスによるパネルの内部の汚染の防止により、PDPの放電特性が低下するのを防止することが出来る。
【0050】
さらに、上記PDPは、隔壁6の接着層8が形成される横壁6Aと縦壁6Bの交差部分の頂面の面積が、他の横壁と縦壁の交差部分の頂面の面積よりも大きくなっていることによって、振動音の発生防止に必要な接着層8の前面ガラス基板1側との溶着面積を十分に確保することが出来、また、これによって、接着層8を形成するガラスフリット材が放電セル内に食み出すのを防止して、振動音の有効な発生防止とPDP駆動時の輝度低下や発光効率の低下の防止を行うことができる。
【0051】
さらに、上記PDPは、隔壁6の赤色放電セルC(R)と青色放電セルC(B)の間に位置する第1縦壁6B1と第1横壁6A1との交差部分6A1aの頂面の面積のみを拡大させているので、接着層8を形成するために横壁と縦壁の交差部分の頂面の面積を拡大させるのに伴って、蛍光体層を形成する蛍光材の特性により赤色放電セルC(R)や青色放電セルC(B)よりも輝度が高い緑色放電セルC(G)の開口面積を減少させる必要がなくなる。
【0052】
一般的に蛍光材の特性として、赤色や青色に比べて緑色の蛍光材は最も輝度が高く、パネル全体の輝度への寄与が5割以上と大きい。よって、緑色放電セルC(G)の開口面積を確保することによって、パネル全体の輝度低下を防止することができる。
【0053】
なお、蛍光体層を形成する蛍光材によって緑色放電セルC(G)以外の放電セルの輝度が最も大きくなるような場合には、他の二つの色の放電セル間に位置する縦壁と横壁が交差する部分の頂面の面積を拡大させるようにすれば良い。
【0054】
一方、蛍光材の特性として青色の蛍光材は最も輝度が低い。そこで、図示しないが、隔壁6の赤色放電セルC(R)と緑色放電セルC(G)の間に位置する第2縦壁6B2と第1横壁6A1との交差部分の頂面の面積のみを拡大し、そこに接着層8を形成してもよい。
【0055】
この場合、接着層8を形成するために横壁と縦壁の交差部分の頂面の面積を拡大させるのに伴って、蛍光体層を形成する蛍光材の特性により赤色放電セルC(R)や緑色放電セルC(G)よりも輝度が低い青色放電セルC(B)の開口面積を減少させる必要がなくなる。
【0056】
これによって、緑色放電セルC(G)と赤色放電セルC(R)および青色放電セルC(B)間の輝度のバランスが確保されるようになり、ホワイトバランスを採ることが出来るようになる。
【0057】
なお、蛍光体層を形成する蛍光材によって青色放電セルC(B)以外の放電セルの輝度が最も小さくなるような場合には、他の二つの色の放電セル間に位置する縦壁と横壁6が交差する部分の頂面の面積を拡大させるようにすれば良い。
【0058】
さらに、上記PDPは、行電極対(X,Y)の行電極XとYが、隣接する行電極対(X,Y)間で交互に入れ替わった配置になっており、隣接する行電極対(X,Y)の互いに背中合わせに位置される行電極Xに対向する第1横壁6A1と縦壁6Bとの交差部分の頂面の面積が拡大されていることによって、PDP駆動時のアドレス放電(発光させる放電セルを選択するために列電極との間で発生される放電)の発生確率を低下させることなく振動音の発生を防止することが出来る。
【0059】
すなわち、アドレス放電は行電極対(X,Y)の行電極Yと列電極D間で発生されるため、行電極Yに対向する横壁の頂面の面積を拡大させた場合には、行電極Yと列電極D間の対向面積が小さくなって、アドレス放電の発生確率が低下する虞があるが、上記PDPではアドレス放電に関与しない行電極Xに対向する横壁の頂面の面積のみが拡大されるので、アドレス放電の発生確率を低下させる虞は無い。
【0060】
さらに、一般的に、隔壁の横壁の縦壁と交差する部分の幅が他の部分の幅よりも大きくなるように成形されている場合には、PDPの製造工程において焼成される際に、この横壁の幅が大きくなっている部分が他の部分よりも盛り上がるため、上記PDPにおいては、第1横壁6A1の第1縦壁6B1との交差部分6A1aの高さが他の部分よりも大きくなって、この交差部分6A1a上に形成される接着層8が前面ガラス基板1側により強く押接されることになるので、前面ガラス基板1と背面ガラス基板4をより強固に固定して、振動音の発生を防止することが出来るようになる。
【0061】
なお、上記の実施例においては、接着層を形成するために必要な隔壁の頂面上の面積を確保するために、横壁の接着層が形成される縦壁との交差部分の幅が他の部分よりも大きくなるように成形されているが、隔壁の幅が全体的に大きく、隔壁の頂面が、接着層を形成するためのガラスフリット材を塗布するのに十分な面積を有している場合には、特に隔壁の横壁の縦壁との交差部分の幅を拡大させる必要はない。
【0062】
また、上記の実施例においては、列方向に隣接する放電セル間が隔壁の一本の横壁によって仕切られているPDPについて説明を行ったが、列方向に隣接する放電セル間がスリットを挟んで行方向に平行に延びる二本の横壁によって仕切られている場合でも良く、この場合には、隔壁の横壁と縦壁の交差部分の頂面上に接着層を形成する際に、隔壁の頂面上に塗布されたガラスフリット材が横壁間のスリット内に流れ込んでその塗布量が増えることになるが、ガラスフリット材が放電セル内に食み出すことはないので、PDPの放電特性に影響が生じる虞は無い。
【実施例2】
【0063】
前述した第1実施例のPDPにおいて、隔壁上に形成する接着層の数をさらに減少させるための実施例について、以下に説明を行う。
【0064】
この実施例は、PDPの駆動時の振動音の発生を効果的に防止するために必要な隣接する接着層間の距離を適正に設定することによって、隔壁上に形成される接着層の数の適正化を図るとともに、必要最小限の接着層を形成するようにすることによって、接着層の数(すなわち、接着層の形成のために使用されるガラスフリット材の量)を減少させるものである。
【0065】
一般に、PDPの駆動時の固有振動数f(Hz)は、
f=(22/2πL2)×√(Eh2/12ρ) … (1)
L(mm) :スパンの長さ
E(Pa) :基板のヤング率
h(mm) :基板の厚さ
ρ(Kg/m3):密度
の式によって求められる。
【0066】
上記式(1)において、スパンLは、図1において互いに隣接する接着層8間の間隔L1,L2,L3を示しており、PDPの駆動時の振動音の発生防止(厳密には、人間の可聴帯域での振動音や人間にとって特に耳障りで不快に感じられる帯域での振動音の低減)のために、PDPの駆動時の固有振動数fを予め設定することによって、接着層8間の間隔L1,L2,L3の最適値を求めることができる。
なお、上記式(1)から、スパンLが大きくなる程、固有振動数fは小さくなることが分かる。
【0067】
一般に人間の可聴帯域の上限値は20kHzと言われており、さらに、人間にとって特に耳障りで不快に感じられる帯域は3kHz〜4kHzと言われている。
【0068】
例えば、厚さhが1.8mm,ヤング率Eが80×109Pa,密度ρが2.5×103kg/m3の基板を有するPDPにおいて、f>20kHzとする(すなわち、PDPの固有振動数を人間の可聴帯域の上限値以上の値にする)ためには、上記の式(1)から、L1,L2,L3<22.6mmに設定する必要があることが分かる。
【0069】
従って、この場合には、隣接する接着層8の各間隔L1,L2,L3が、22.6mm未満で、PDPの構造において許容される最大値に設定されることによって、PDPから発生する振動音が人間には聞こえなくなり、人間の可聴帯域において振動音が発生するのが防止される。
【0070】
基板の条件が上記と同一の場合に、3kHz≦f≦4kHzとなる(すなわち、PDPの固有振動数が人間にとって特に耳障りで不快に感じられる帯域となる)のは、上記の式(1)から、50.7mm≦L1,L2,L3≦58.6mmである。
【0071】
従って、この場合には、隣接する接着層8の間隔L1,L2,L3が50.7mm未満、または、58.6mmよりも大きい値になるように設定すれば、耳障りで不快な振動音レベルが抑制される。
【0072】
なお、この場合に、接着層8の間隔L1,L2,L3をあまり大きな値に設定すると、隔壁の凹凸や基板の反りによっては接着層以外の部分で隔壁と前面ガラス基板とが接触して、その接触点を起因とする振動音が発生してしまうので好ましくない。
【0073】
接着層8の間隔L1,L2,L3を50.7mm未満のPDPの構造において可能な限り大きな値に設定した場合には、耳障りで不快な振動音レベルの発生を抑制することが出来るとともに、間隔L1,L2,L3を22.6mm未満に設定する場合よりも、隔壁上に形成される封着層の数が減少する。
【0074】
以上のことから、この実施例のPDPにおいて、人間の可聴帯域における振動音の発生を抑制するためには、接着層8の間隔L1,L2,L3の値として、式(1)においてf>20kHzとなるLのうち、PDPの構造上可能な最大値を設定すればよく、また、耳障りで不快な振動音の発生を抑制するとともに接着層8の数を減少させるためには、接着層8の間隔L1,L2,L3の値として、式(1)においてf>4kHzとなるLのうち、PDPの構造上可能な最大値を設定すれば良いことが分かる。
【0075】
この実施例におけるPDPは、上記のようにして、隣接する接着層8間の間隔L1,L2,L3が算出されることにより、人間の可聴帯域における振動音の発生を有効に抑制したり、耳障りで不快な振動音の発生を有効に抑制することが出来るとともに、必要最小限の接着層の形成が可能になって、接着層の形成のために使用されるガラスフリット材の量を減少させることが出来るので、製造工程においてガラスフリット材から発生する不純ガスの発生量をさらに減少させることが出来る。
【0076】
上記各実施例のPDPは、放電空間を介して一対の基板が対向され、一方の基板側に、行方向に延び列方向に並設された複数の行電極対が設けられ、他方の基板側に、列方向に延び行方向に並設された複数の列電極と、放電空間の列電極と行電極対が交差する部分にそれぞれ形成される単位発光領域を区画する隔壁と、この隔壁によって区画された単位発光領域内に形成された蛍光体層が設けられ、隔壁が行方向に延びる横壁と列方向に延びる縦壁を有する略格子形状を有しており、蛍光体層が単位発光領域ごとに異なる少なくとも三色の蛍光材によって形成されて色の異なる蛍光体層が行方向に順に配列されているプラズマディスプレイパネルにおいて、前記隔壁の横壁と縦壁が交差する部分のうち任意の交差部分の一方の基板側に対向する面上にのみ接着層が形成されて、この接着層が一方の基板側に接着することにより一方の基板と他方の基板を互いに固定しているPDPを、上位概念の実施形態としている。
【0077】
この実施形態のPDPによれば、PDPの表示領域内において、隔壁上に形成された接着層によって放電空間を介して互いに対向されている二枚の基板が互いに固定されているので、PDPの駆動時に基板が振動して駆動音が発生するのが防止され、そして、このPDPの表示領域内において二枚の基板を互いに固定する接着層が、隔壁の横壁と縦壁の交差部分のうちの任意の交差部分にのみ形成されていることによって、隔壁の全面に接着層が形成された従来のPDPに比べて、接着層を形成する材料を減少させることが出来るので、例えばガラスフリット材によって接着層を形成する場合のように、PDPの製造工程において接着層を加熱して一方の基板側に溶着させる際に、接着層から発生する不純ガスによって放電空間内が汚染されてPDPの放電特性が低下するのを防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】この発明の実施形態における第1実施例のPDPを示す正面図である。
【図2】図1のH−H線における断面図である。
【図3】図1のV1−V1線における断面図である。
【図4】図1のV2−V2線における断面図である。
【図5】図1のV3−V3線における断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 …前面ガラス基板(一方の基板)
2 …誘電体層
3 …保護層
4 …背面ガラス基板(他方の基板)
6 …隔壁
6A …横壁
6A1 …第1横壁
6A2 …第2横壁
6B …縦壁
6B1 …第1縦壁
6B2 …第2縦壁
6B3 …第3縦壁
6A1a …交差部分
7 …蛍光体層
7(R) …赤色蛍光体層
7(G) …緑色蛍光体層
7(B) …青色蛍光体層
8 …封着層
C …放電セル(単位発光領域)
C(R) …赤色放電セル(単位発光領域)
C(G) …緑色放電セル(単位発光領域)
C(B) …青色放電セル(単位発光領域)
X …行電極(第2行電極)
Y …行電極(第1行電極)
Xa,Ya …バス電極
Xb,Yb …透明電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間を介して一対の基板が対向され、一方の基板側に、行方向に延び列方向に並設された複数の行電極対が設けられ、他方の基板側に、列方向に延び行方向に並設された複数の列電極と、放電空間の列電極と行電極対が交差する部分にそれぞれ形成される単位発光領域を区画する隔壁と、この隔壁によって区画された単位発光領域内に形成された蛍光体層が設けられ、隔壁が行方向に延びる横壁と列方向に延びる縦壁を有する略格子形状を有しており、蛍光体層が単位発光領域ごとに異なる少なくとも三色の蛍光材によって形成されて色の異なる蛍光体層が行方向に順に配列されているプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記隔壁の横壁と縦壁が交差する部分のうち任意の交差部分の一方の基板側に対向する面上にのみ接着層が形成されて、この接着層が一方の基板側に接着することにより一方の基板と他方の基板を互いに固定していることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記蛍光体層は単位発光領域ごとに第一色,第二色,及び第三色の色が異なる蛍光材によって形成され、前記隔壁の横壁と縦壁の交差部分のうちの、前記第一色及び第二色の蛍光体層が形成された隣接する単位発光領域の間に位置する縦壁と横壁の交差部分の面積が、他の交差部分よりも大きくなっていて、この面積が大きくなっている交差部分の面上にのみ接着層が形成されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記第一色,第二色,及び第三色の蛍光材のうち、前記第三色の蛍光材が最も高輝度である請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記第一色,第二色,及び第三色の蛍光材のうち、前記第三色の蛍光材が最も低輝度である請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前記蛍光体層を形成する蛍光材の色が赤,緑,青の三色であり、赤色の蛍光体層が形成された単位発光領域と青色の蛍光体層が形成された単位発光領域の間に位置する縦壁と横壁の交差部分の面積が他の交差部分よりも大きくなっている請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
前記単位発光領域が蛍光体層の色毎に列方向に配列されており、横壁の列方向において隣接する赤色の蛍光体層が形成された単位発光領域の間および青色の蛍光体層が形成された単位発光領域の間に位置する部分の列方向の幅が、緑色の蛍光体層が形成された単位発光領域の間に位置する部分の幅よりも大きくなっている請求項5に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
前記行電極対が、単位発光領域を挟んで列電極との間で放電を発生させる第1行電極とこの第1行電極との間で放電を発生させる第2行電極とによって構成され、行電極対の第1行電極と第2行電極が、隣接する行電極対間において交互に入れ替えて配置されて、第1行電極同士および第2行電極同士がそれぞれ互いに背中合わせに位置されており、隔壁の横壁が、それぞれ、隣接する行電極対の互いに背中合わせに位置する第1行電極または第2行電極に対向する位置に配置されていて、背中合わせに位置する第1行電極に対向する横壁と縦壁の交差部分の面上にのみ接着層が形成されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
隣接する前記接着層間の間隔が、
f=(22/2πL2)×√(Eh2/12ρ)
L:接着層間の間隔
f:固有振動数
E:基板のヤング率
h:基板の厚さ
ρ:基板の密度
の式に基づいて、固有振動数が20kHzよりも大きくなる値に設定されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項9】
隣接する前記接着層間の間隔が、
f=(22/2πL2)×√(Eh2/12ρ)
L:接着層間の間隔
f:固有振動数
E:基板のヤング率
h:基板の厚さ
ρ:基板の密度
の式に基づいて、固有振動数が4kHzよりも大きくなる値に設定されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−176574(P2009−176574A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14192(P2008−14192)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】