説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】高精細な微細セルへの蛍光体ペーストの塗布を良好に行い、もって高品質な画像表示が可能なプラズマディスプレイパネルを実現することを目的とする。
【解決手段】井桁状の隔壁34によって仕切られた放電セル51内に蛍光体層35を備え、蛍光体層35は、その塗布の際、一方向に走査しながら吐出することで、井桁状の隔壁34の少なくとも一部である横隔壁34bを跨ぐように連続的に形成され、横隔壁34bは、蛍光体層35の塗布の際の走査方向に対して凹形状であるプラズマディスプレイパネル10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示デバイスとして知られているプラズマディスプレイパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、双方向情報端末として大画面、壁掛けテレビへの期待が高まっており、そのための表示デバイスとして、液晶表示パネル、フィールドエミッションディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどの数多くのものがある。これらの表示デバイスの中でもプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」とも記す)は、自発光型で美しい画像表示ができ、大画面化が容易であるなどの理由から、視認性に優れた薄型表示デバイスとして注目されており、高精細化および大画面化に向けた開発が進められている。
【0003】
PDPは、表示電極、誘電体層、MgOによる保護層などの構成物を形成した前面板と、アドレス電極、隔壁、蛍光体層などの構成物を形成した背面板とを対向配置するとともに周囲を封着部材により封止して構成している。そして内部には微小な放電セルが形成され、この放電セルにはネオン(Ne)およびキセノン(Xe)などを混合した放電ガスを例えば66500Pa(約500Torr)程度の圧力で封入している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−131580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この大画面化PDPにおいても、高精細化が必須であり、放電セルの微細化に伴い、新たな課題が生じてきている。
【0005】
その一つが、蛍光体ペースト塗布時に蛍光体ペースト塗布がなされない箇所が発生してしまう「抜け」や、蛍光体ペーストが空気を含んだ状態で塗布されてしまう「泡ガミ」等の課題である。
【0006】
ここで、PDPにおいて現在主流の蛍光体形成プロセスとしては、大別して、パターン印刷方式とセル幅よりも狭い孔を通して基板の上下端の一方から他方に向かって一方向に走査しながら吐出することで連続的に塗布するディスペンサー方式を挙げることができる。しかしながら、微細化したセルへの蛍光体ペーストの塗布方式としては、印刷方式は原理上、ある程度の印刷版の伸びを利用しており、この伸びが経時変化を起こすため、微細セルへの均一な蛍光体ペースト投入が困難になる虞があるのに対し、ディスペンサー方式ではこの様な問題が生じず、したがって、微細セルに対する塗布方法としてはディスペンサー方式が有利であると考えられる。
【0007】
しかし、このディスペンサー方式において横方向の隔壁を有するセルに対する塗布では、横リブとの接触で塗布流が乱れる等により、前述したような、抜けや泡ガミ等の課題が発生する虞がある。このような抜けや泡ガミを包含した状態の蛍光体層であると、良好な画像表示を行う際の阻害要因となってしまう。
【0008】
本発明はこのような課題を鑑みてなされたもので、高精細な微細セルへの蛍光体ペーストの塗布を良好に行い、もって高品質な画像表示が可能なプラズマディスプレイパネルを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために本発明のプラズマディスプレイパネルは、井桁状の隔壁によって仕切られた放電セル内に蛍光体層を備え、蛍光体層は、その塗布の際、一方向に走査しながら吐出することで、井桁状の隔壁の少なくとも一部を跨ぐように連続的に形成され、前記井桁状隔壁の、前記蛍光体層が跨ぐ部分は、蛍光体層の塗布の際の走査方向に対して凹形状である、というものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高精細な微細セルに対しても蛍光体ペーストの塗布を良好に行うことが可能となり、もって高品質な画像表示が可能なプラズマディスプレイパネルを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態によるPDPについて、図面を用いて説明するが、本発明の実施の態様はこれに限定されるものではない。
【0012】
(実施の形態1)
まず、本発明の一実施の形態によるPDPの構造について図1を用いて説明する。
【0013】
図1は本発明の実施の形態1によるPDP10の構造を示す分解斜視図である。図1に示すように、PDP10は、前面板20と背面板30とから構成され、前面板20と背面板30とは放電空間40を形成するように対向配置されている。前面板20は、前面ガラス基板21上に、走査電極22と維持電極23とで対をなすストライプ状の複数の表示電極24が形成されている。隣接する表示電極24の間には、光遮蔽層(ブラックストライプ)25が形成されている。また、表示電極24と光遮蔽層25とを覆って誘電体層26が形成され、さらに誘電体層26を覆って酸化マグネシウム(MgO)等の保護層27が形成されている。
【0014】
また、背面板30は、背面ガラス基板31上に前面板20の表示電極24と交差する方向にアドレス電極32が形成され、アドレス電極32を覆って下地誘電体層33が設けられている。また、下地誘電体層33上には、アドレス電極32に対して交差しない方向の縦隔壁34aとアドレス電極32に対して交差する方向の横隔壁34bとにより井桁状に形成された隔壁34が設けられている。
【0015】
そして、間に放電空間40を形成するように、前面板20と背面板30とを表示電極24とアドレス電極32とを交差させて対向配置し、その周縁部を封着材で封着接合している。ここで、井桁状の隔壁34は、放電空間40を仕切ることで放電セル51を形成する。
【0016】
放電セル51内の、隔壁34の側面と下地誘電体層33の表面には蛍光体層35が設けられている。蛍光体層35は、放電セル51毎に、それぞれ赤色に発光する赤色蛍光体層、緑色に発光する緑色蛍光体層、青色に発光する青色蛍光体層が形成されている。
【0017】
放電空間40には、放電ガスとして、例えばネオン(Ne)とキセノン(Xe)との混合ガスなどが封入されている。
【0018】
そして、表示電極24に映像信号電圧を選択的に印加することによって放電ガスを放電させ、それによって発生した紫外線が各色の蛍光体層35を励起して、赤色、緑色、青色の各色を発光させることによりカラー画像を表示する。
【0019】
なお、図1は縦隔壁34aと横隔壁34bとはその隔壁高さが異なり、横隔壁34bが縦隔壁34aよりも低くなるようにしている場合を示しているが、高さが縦隔壁と横隔壁とで同じである井桁状の隔壁であっても良い。
【0020】
図2は、PDPを前面板20の前面ガラス基板21側からみた平面図を示している。走査電極22と維持電極23とにより対をなす表示電極24が、放電ギャップ50を挟んで配列されている。また、縦隔壁34aと横隔壁34bとによって仕切られる放電空間が単位発光領域としての放電セル51を構成する。なお、22a、23aは透明電極であり、22b、23bは金属材料などにより形成されるバス電極である。
【0021】
ここで、隣り合う表示電極24の間の部分には、非放電領域52が形成され、この領域に対応する前面ガラス基板21上にはコントラストを向上させる目的で光遮蔽層(ブラックストライプ層)25を形成している。したがって、横隔壁34bは非放電領域52に形成され、横隔壁34bに対応する位置に光遮蔽層25が形成され、横隔壁34bは光遮蔽層25からはみ出ない構成となっている。
【0022】
ここで、蛍光体層35(図1)の形成には、大別して印刷方式とディスペンサー方式とがあるが、高精細化に伴う微細放電セルへの蛍光体層形成にはディスペンサー方式の方が有利であり、そこで以下の説明はディスペンサー方式を対象としたものである。
【0023】
このディスペンサー方式は、縦隔壁34aに平行な方向に走査しながら、小さな孔から蛍光体ペーストを吐出することで、横隔壁34bを跨ぐように、すなわち、横隔壁34b上にも塗布されるように連続的に蛍光体層を形成する方法である。
【0024】
このディスペンサー方式では、吐出した蛍光体ペーストの流れ、すなわち塗布流が横隔壁34bにぶつかると、塗布流が乱れ、このことにより塗布された蛍光体層には、抜け・泡ガミ等が発生する虞が生じた。特に、1920×1080のフルHDのような高精細化での微細セルにおいては、蛍光体ペースト吐出の孔のサイズが必然的に小さくなるため、蛍光体ペーストの塗布流の安定性確保がより困難になることも一因となる。
【0025】
そこで本願発明者らが検討を行った結果、横隔壁34bを、蛍光体層の塗布の際の走査方向に対して凹形状とすると、塗布流が横隔壁34bに衝突する際の乱れが緩和され、その結果、抜け・泡ガミなどの課題の発生が抑制されることを見出した。
【0026】
具体的な構成の一例を図3に示す。図3では、蛍光体を上側から下側に向かって塗布する場合の、塗布方向60と横隔壁34bの凹形状との関係を示す。図3に示すように、前記井桁状隔壁34の、前記蛍光体層が跨ぐ部分である横隔壁34bは、蛍光体層の塗布の際の走査方向60に対して凹形状となるように折れ曲がっている。また、凹形状の別の例として、図4に示すように湾曲させた形状を挙げることもできる。
【0027】
以上、横隔壁34bを図3や図4に示すような、蛍光体層の塗布の際の走査方向60に対して凹形状とすることで、蛍光体塗布時の塗布流の乱れが抑制され、その結果、抜けや泡ガミ等の課題の発生を抑制することが可能となる。
【0028】
なお以上の例では、折れ曲がった横隔壁34bの例として図3に示すような一箇所で折れ曲がった横隔壁を挙げたが、特にこれに限るものではなく、例えば図5に示すように、2箇所以上で折れ曲がった横隔壁34bであっても構わないことは当然である。
【0029】
(実施の形態2)
図6は、本発明の一実施の形態である実施の形態2における、塗布方向60と横隔壁134bの凹形状との関係を示す。本実施の形態では、実施の形態1において説明した、井桁状隔壁34の、蛍光体層が跨ぐ部分である横隔壁34bの凹形状に対して、蛍光体層の塗布の際の走査方向に対して手前側61のみが凹形状となっており、反対側は平坦(フラット)になっている、というものである。
【0030】
横隔壁134bをこのような形状とすることで、実施の形態1での横隔壁34bに比べ、隔壁現像時の安定性を確保でき隔壁形成を容易にすることができる。また、横隔壁の形状変化による焼成収縮応力の変化も抑制することができる。
【0031】
このように、蛍光体塗布時の不具合を抑制する目的を達成すれば、横隔壁の形状はこれらに限るものではなく、頂部の屈曲及び湾曲に対して底部が追随しない場合でも同様な効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように本発明は、高精細で高品質な画像表示が可能なプラズマディスプレイパネルを提供する上で有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態によるPDPの構造を示す分解斜視図
【図2】本発明の一実施の形態によるPDPを前面板の前面ガラス基板側からみた平面図
【図3】本発明の一実施の形態によるPDPにおける塗布方向と横隔壁の凹形状との関係を示す図
【図4】同じく、本発明の一実施の形態によるPDPにおける塗布方向と横隔壁の凹形状との関係を示す図
【図5】同じく、本発明の一実施の形態によるPDPにおける塗布方向と横隔壁の凹形状との関係を示す図
【図6】同じく、本発明の一実施の形態によるPDPにおける塗布方向と横隔壁の凹形状との関係を示す図
【符号の説明】
【0034】
10 プラズマディスプレイパネル
20 前面板
21 前面ガラス基板
22 走査電極
22a、23a 透明電極
22b、23b バス電極
23 維持電極
24 表示電極
25 光遮蔽層
26 誘電体層
27 保護層
30 背面板
31 背面ガラス基板
32 アドレス電極
33 下地誘電体層
34 隔壁
34a 縦隔壁
34b 横隔壁
35 蛍光体層
40 放電空間
50 放電ギャップ
51 放電セル
52 非放電領域
60 蛍光体塗布方向
134b 横隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
井桁状の隔壁によって仕切られた放電セル内に蛍光体層を備え、
蛍光体層は、その塗布の際、一方向に走査しながら吐出することで、井桁状の隔壁の少なくとも一部を跨ぐように連続的に形成され、
前記井桁状隔壁の、前記蛍光体層が跨ぐ部分は、蛍光体層の塗布の際の走査方向に対して凹形状であるプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記井桁状隔壁の、前記蛍光体層が跨ぐ部分の凹形状が、
蛍光体層の塗布の際の走査方向に対して、手前側のみ凹形状となっている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記井桁状隔壁の、前記蛍光体層が跨ぐ部分の凹形状が、
前面板が備える光遮蔽層を形成している領域からはみ出ていない請求項1または2に記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−199728(P2009−199728A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36817(P2008−36817)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】